行動に影響を与える選択フレーミング...明治大学...

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法律論叢第 91 巻第 1 号(2018.10【翻 訳】 行動に影響を与える選択フレーミング ――「ナッジ」と規制をめぐる議論 ―― ルイジ・コミネッリ 明訳 目 次 1. イントロダクション 2. 「ナッジ」の範囲を定義する 3. ナッジ概念に対する批判 4. 終わりに――可能な一つの妥協点 本稿は、2017 11 10 日に明治大学主催(法学部比較法研究所後援)で行わ れたミラノ大学准教授ルイジ・コミネッリ(Luigi Cominelli)氏の国際交流基金 事業セミナー講演をもとにした論攷の翻訳である。 1. イントロダクション 行動科学は、伝統的に社会科学が担ってきた分野にますます影響を与えるよ うになっている。2017 年のノーベル経済学賞はリチャード・セイラー(Richard Thaler)に与えられたが、これは経済学、心理学、法学、認知科学といった伝統 的な学問領域を交錯させる有用性と重要性を反映したものである。セイラーと法 学者のキャス・サンスティン(Cass Sunstein)は、リバタリアン・パターナリズ ム(Thaler & Sunstein, 2003)の哲学に想を得た新しい規制手法を推し進めるた めに、今や有名となった「ナッジ」(Thaler & Sunstein, 2009)という概念をあ みだした。「ナッジ」は伝統的な「命令と統制」という規制態度とは一線を画しつ つ、かつ全面的な規制緩和をも避け、個人の情報収集と、意思決定に特徴的なバイ 395

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法律論叢第 91巻第 1号(2018.10)

【翻 訳】

行動に影響を与える選択フレーミング――「ナッジ」と規制をめぐる議論――

ルイジ・コミネッリ小 林 史 明訳

目 次1. イントロダクション2.「ナッジ」の範囲を定義する3. ナッジ概念に対する批判4. 終わりに――可能な一つの妥協点

本稿は、2017年 11月 10日に明治大学主催(法学部比較法研究所後援)で行わ

れたミラノ大学准教授ルイジ・コミネッリ(Luigi Cominelli)氏の国際交流基金

事業セミナー講演をもとにした論攷の翻訳である。

1. イントロダクション

行動科学は、伝統的に社会科学が担ってきた分野にますます影響を与えるよ

うになっている。2017年のノーベル経済学賞はリチャード・セイラー(Richard

Thaler)に与えられたが、これは経済学、心理学、法学、認知科学といった伝統

的な学問領域を交錯させる有用性と重要性を反映したものである。セイラーと法

学者のキャス・サンスティン(Cass Sunstein)は、リバタリアン・パターナリズ

ム(Thaler & Sunstein, 2003)の哲学に想を得た新しい規制手法を推し進めるた

めに、今や有名となった「ナッジ」(Thaler & Sunstein, 2009)という概念をあ

みだした。「ナッジ」は伝統的な「命令と統制」という規制態度とは一線を画しつ

つ、かつ全面的な規制緩和をも避け、個人の情報収集と、意思決定に特徴的なバイ

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法律論叢 91巻 1号

アスとヒューリスティックを利用することで人間行動に取り組むものである。こ

うして「ナッジ」は、社会的行動の統制コストを減少させることで、他の伝統的な

規制手段のオルタナティヴとなりうる(Baldwin, 2014: 831)。

広義の認知主義者の最初をデヴィッド・ヒューム(David Hume)(『人間本性論』1739年)に求めるならば、この問題は想像以上に古いものとなる。認知と人間行動

の相互作用という問題は、フレーミング概念(Kahneman & Tversky, 1974, 2000)

や、私たちを非合理性あるいは別様の合理性(Jones et al., 2001)に陥らせる認知

的誤りや認知バイアスの認識(Ariely, 2009)によって、比較的近年になって成熟した

ものであり、最終的には現在の神経科学の成果につながっている(Felsen & Reiner,

2015)。法制度に焦点を合わせた社会科学の研究者は、今や心理学、動物行動学、神経

科学の成果を横断し、人間の動物性が規範的な社会的実践に及ぼすインパクトについ

て理論的、経験的な研究をおこなっている(Beckstrom, 1989; Frolik, Fikentscher

& Dieker, 1999; Goodenough & Prehn, 2006; Goodenough & Tucker, 2010;

Gruter, 1979; Jones, 2006; Jones & Goldsmith, 2005)。とりわけ今日では、19

世紀の形式主義的な合理性概念は、なぜ人間社会が規範を有しているのか、またな

ぜ人間が規範を尊重したり破ったりするのかを評価する唯一の要素ではないし、お

そらく主要なものでもない(Sacco, 2015)。現時点では、政治的権力が社会を規

制しようとするときに科学をどの程度考慮するかも変わってきているように思わ

れる。脅しと処罰による伝統的な規制のコストと変動する実効性という問題に直

面させられた今こそ、オルタナティヴを検討することが適切だと思われる。

立法府の委員会は、法案を作成する前に専門家(経済学者、法律家、社会学者)か

ら意見聴取をするが、今ではそれも主に行動科学者からなる機関や部署に支えられて

いる。イギリスの「行動洞察チーム(The Behavioral Insights Team (BIT))」や

アメリカの「社会科学・行動科学チーム(Social and Behavioral Sciences Team)」

は最初の最も良く知られた例であるが、もはや珍しいものではない。最近では、行

動科学を何らかの形で政策決定過程のなかに制度化している国が 51にもなるとさ

れている(1)。この傾向は国際的領域においても顕著である。世界銀行や国連は、

(1) Assessing the Global Impact of the Behavioural Sciences on Public Policy (2014):https://changingbehaviours.files.wordpress.com/2014/09/nudgedesignfinal.pdf,accessed on Oct. 27, 2017.

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行動に影響を与える選択フレーミング(小林)

行動科学の原理をたとえば腐敗防止の分野で、持続可能性や開発に関わる政策に利

用したいと考えている。ナッジ概念の具体的な応用については、これまで消費者保

護(Rangone, 2012)、臓器提供(Den Hartogh, 2013)、紛争解決の最善の方法

の選択(Watkins, 2010)といった特定の分野で分析されてきた。

イギリスの行動洞察チームは最新の年次報告書のなかで、混雑した病院への患者

の流入を減らし、不必要なガス消費を抑え、スピード違反の罰金件数を減らす一方

で、有名大学入学を認められた恵まれない状況にある集団出身の学生割合を上昇さ

せ、任意の退職準備貯蓄制度に参加する労働者を増加させたと明言している(2)。

本稿ではまず、政治哲学においてリバタリアン・パターナリズムと定義されるで

あろう諸前提を参照しながら、今も議論され再定義されている「ナッジ」の現時点

での定義と範囲の概要を述べたい(第 2節)。次に、ナッジ概念に対する最も説得

力のある批判に焦点を合わせたあと(第 3節)、このテーマのバランスの取れた結

論を導き出したいと思う(第 4節)。

2.「ナッジ」の範囲を定義する

「ナッジする」という動詞は「優しく押す」とか「肘で突く」ことを意味するこ

とがあるが、政策形成の文脈においては、直感的かつ容易に理解できる奨励という

概念を比喩的に表現している。このような介入の目的が、個人の選択の自由を侵

害しないで行動に影響を与えることだという理解を伝えるために、セイラーとサ

ンスティンは今や有名となった学生食堂の例を挙げる。その学生食堂では、ジャ

ンク・フードを禁止したりメニューから外したりするのではなく、目の高さの位

置に健康的な食品を配置することで、食習慣の改善策を実施している(Thaler &

Sunstein, 2009: 5-6)。広く用いられているナッジの例を挙げると、たとえば一定

の食品への栄養成分表示、タバコのパッケージへの生々しい写真や抑止的文章表

示の義務付け、オプト・アウトの余地のある社会保障政策への自動加入などがあ

る(Sunstein, 2017: 19)。ナッジの適用範囲は、個人の現在の決定が将来の福利

(2) The Behavioural Insights Team Update Report 2016-17: http://38r8om2xjhhl25mw24492dir.wpengine.netdna-cdn.com/wp-content/uploads/2017/10/BIT Update-16-17 E .pdf, accessed on Oct. 27, 2017.

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(well-being)に影響する領域である、健康と社会的ケアに特に向けられているよ

うにみえる。もちろん国家財政にも大きなインパクトを有している。

ナッジであるためには、その介入が正か負かを問わず重大な物質的インセンティ

ヴを含んではならない。課税、助成、個人的自由の剝奪などはナッジとは見なされ

得ない(Sunstein, 2015: 512)。ナッジは、情報を効果的に提供したり、何らか

の選択を容易にしたり、あるいは単に惰性を利用することで機能する。常にという

わけではないが、ナッジにとって認知バイアスはなくてはならないものである。あ

る情報を明らかにすることで、たとえバイアスが存在しないときでもある選択を導

くことができる(無知それ自体が一つのバイアスでもあるので)(Sunstein, 2015:

513)。ナッジの狙いは、経験的証拠に基づく意思決定アーキテクチャの枠組みを

提供し、立法の道徳主義的なパターナリズムを克服することにある。自己への害を

引き起こすバイアスを無視し、他者を害するバイアスに直面した際には厳しい制裁

を課すパターナリスティックな選択肢は、もはや採用することができない。たとえ

ば、社会的に望ましい行動を奨励しようとする場合に、人々の行動が社会的に許容

しうる平均よりも良いと伝えるのは得策ではない。なぜなら結局は悪化してしま

うからである(Thaler & Sunstein, 2009: 74)。期日通りに納税し制裁を課され

ていない人々の割合を知らされると実際に納税率は高くなるようだが、支払った税

金の使途、税法違反に対する制裁、あるいは納税申告用の支援について知らされて

も同じ効果は得られない。同様に、投票しない人の多さを非難しても投票率は一般

的に上昇しない(Thaler & Sunstein, 2009: 72)。

ナッジによって選択アーキテクチャを変更することで、つまり選択肢の提示され

るフレームを作ることによって、社会的に問題の少ない結果を達成することがで

きるはずである。選択肢の構造化やフレーミングの利用がより効果的だと思われ

るのは、個人が自身の行動の結果についてフィードバックされない状況、あるい

は選択の結果がかなり遅れてやってくる場合である(Thaler & Sunstein, 2009:

83-84)。最も効果的な戦略はデフォルト選択を設定することである。ただし、と

ても簡単にその選択から離脱することができるのでなければならない。臓器移植

や任意的社会保障への加入について考えてみると、ほとんどの国で明示的な同意を

要求している。これは当然そうすべきだというほど一般的な行動ではないのだか

ら驚くべきことではない。もしこれらの徳の高い選択が前提とされるならば、簡単

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行動に影響を与える選択フレーミング(小林)

な陳述によってオプト・アウトができたとしても状況は大きく異なるだろう。

究極的には気づかぬうちに意思を操作されてしまうようにみえるナッジを、どの

程度許容し、肯定的に捉えるかについては様々な文化圏で研究されている。許容レ

ベルはほとんどの国で高く、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリス、ドイ

ツ、フランス、イタリアでは似たパターンが見られた(Sunstein, 2017: 17)。し

かしスウェーデンの許容レベルはアメリカよりも高いことが指摘されている。お

そらく公的な介入に好意的な国柄のためだろう(Hagman, Andersson, Vastfjall,

& Tinghog, 2015: 449)。デンマーク、ハンガリー、日本では許容レベルがやや低

いが、イタリアとイギリスは他のヨーロッパ諸国と比べると高い(ただしイタリア

は、スーパーマーケットのレジ付近に「甘いものを置かない」という項目だけ例外

的に低かった)(Sunstein, 2017: 34)。中国と韓国は他のすべての地域よりも許

容レベルが高いようである。他の人口統計学的特徴と比較すると、唯一ジェンダー

だけが何らかの影響を与えているようで、女性は男性よりも一般的にナッジに好意

的であった(Sunstein, 2017: 36)。

「リバタリアン・パターナリズム」という矛盾した表現を著者たちが使用するに

至ったナッジ採用の背後にある理論的根拠は、ナッジが伝統的規制にとって代わる

べきだというものではなくそれを補完する手段を提供するというものである。つ

まり、各人の行為者性と統制を両立させるところにある。コンピューターや携帯

電話のデフォルト設定は、GPSナビと同じくナッジを説明する効果的な比喩であ

る(Sunstein, 2017: 1)。つまり、これらはガイドして方向付けてはくれるが、最

後には無視する自由を常に残してくれる仕組である。実際よりも速く走っている

という印象をドライヴァーに与える路面に描かれた道路標識が現実に命を救って

いるように、命を救うことができる「制度的補装具(institutional prosthetics)」

なのである(Trout, 2005: 427)。

リベラルなパターナリズムは、ナッジを通じて政治的中道や穏健な「第三の道」

(Giddens, 1998)を行く最初の試みでも唯一の試みでもない。そうした試みは、

漸進的改革を支持するが、「保守派、穏健派、リベラル派、リバタリアンと自認して

いる者、およびその他の多くの人々」(Amir & Lobel, 2008: 2118)に訴えかける

ことによって、すなわち政治の分極化によって、うまく行かないことになる。ナッ

ジとは反対に、「命令と統制」による規制は、全面的な規制緩和と同様にラディカ

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法律論叢 91巻 1号

ルな改革事例に頼りがちである。そのため、完全に強制的な方策か、完全にリバタ

リアン的な方策のどちらかを結果的に生み出すことになる(Sunstein, 2000)。立

法による介入は漸進主義と非侵襲性という基準に基づくべきだという考え方は、個

人がときに自らに不利な行動をとってしまうことを念頭に、さまざま表現で示さ

れてきた。ときに限定を付け加えられながらも(たとえば「非対称パターナリズ

ム(asymmetric paternalism)」(Whitman & Rizzo, 2015: 410))パターナリ

スティックと言われることもあれば、「法によるバイアス除去」(Jolls & Sunstein,

2004)と言われることもある。

3. ナッジ概念に対する批判

社会的に最善の結果を生み出すためにヒューリスティックを活用するという考

え方はたしかに批判にさらされている。しかも、そこに見られる批判は多様かつ多

面的な性質のものである。そこでまず、政治的で価値に基づく批判、つまりリバタ

リアン・パターナリズムそのものの哲学に反対するものと、心理学的認知に関する

批判、すなわち認知バイアス理論が妥当かとか、規制調整のパラメータとして実際

に有用かといった点に着目するものとを区別する必要がある。

第一の批判から検討しよう。リバタリアン・パターナリズムは実際にはほとんど

リバタリアンではないから結局ごまかしに過ぎないと主張する者がいる。ボール

ドウィンは、たとえば情報開示の義務付けや惰性によるデフォルト・ルールへのつ

なぎ止め以外のインセンティヴの形態には、感情的要素を利用する隠れたパターナ

リスティックなアプローチを採用しているものがあると強調している(Baldwin,

2014)。これはいわゆる「拷問的(third degree)」ナッジのことであり、タバコの

パッケージにある恐怖を煽るメッセージがその一例である。これについては露骨に

人を操るものだと考える者もいる。つまり、このようなナッジは事実上オプト・ア

ウトを排除するだろうから、規制者と市民との信頼関係(loyal relationship)から

外れているというのである(Baldwin, 2014: 836)。行政がこのような方策を直接

用いることができるとなると、その手段を用いるか否かの選択が立法府において公

に議論されなくなり、ナッジは「個人を尊重しない社会統制(disrespectful social

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行動に影響を与える選択フレーミング(小林)

control)」と化してしまう(Hausman & Welch, 2010: 134)。またミッチェルは、

ナッジは結局一種のパターナリズムの偽装であり、さらにいえば「合理的な主体か

ら合理的でない主体」への富の隠れた再分配を引き起こすかもしれないと述べてい

る(Mitchell, 2015: 1247-1248)。

個人の意思決定にバイアスがかかってしまうということだけではなくそれ以上の

批判をおこなう者もいる。ナッジ理論は、ナッジの設計を担当する慈悲深く合理的

な公務員が存在することを暗に前提しているようだが、そんなものは実際には存在

しない(Niskanen, 1971)。政府の行動であっても同じような認知的誤りに陥る

ことがある(Lodge & Wegrich, 2016: 253)ので、「限定合理性」(Simon, 1958)

のうちにしかないのである。政府の意思決定プロセスの無秩序さといい加減さは

「ゴミ箱」に喩えられ強調されてきたが、政府の計画や方策はゴミ箱に棄てられ

たあとに、偶然か誤った理由で拾われて復活するに過ぎない(Cohen, March, &

Olsen, 1972)。

「リバタリアン・パターナリズム」はいくつかの点で「価値中立性」というリバタ

リアンの個人主義的な原理に反している(Amir & Lobel, 2008: 2120)。同じ調子

でナッジは「福祉主義的(welfaristic)」だという意見もある(Guala & Mittone,

2015: 386)。リバタリアン・パターナリズムに反して「社会重視的(pro-social)」

と定義されうるナッジの形もある。つまりゴミのリサイクルを促進するナッジとか、

オプト・アウトの可能性は別として、個人資産をチャリティへ配分するデフォルト・

ルールなどは、自己重視(pro-self)のナッジとは「認識論的に異なる」(Hagman

et al., 2015: 441)だろう。自己重視のナッジは自己利益につながる選択へと個人

を導くものであるから、社会重視的ナッジはあまり受け入れられない押し付けがま

しいものとなるだろう。

次に心理学的な批判の分析に移ろう。これらの批判は当初、体系的な認知バ

イアス論に向けられていた(Arrow, Mnookin, Ross, Tversky, & Wilson, 1995;

Kahneman & Tversky, 1974, 2000)。ギガレンツァーはこの種の異論を数多く展

開している。たとえば、選択の非合理性を縮減する教育の価値や、認知バイアスと

いう当のその概念にみられる非一貫性に焦点を合わせている。これらの主張は明

確なので、ここで要約して説明する価値があるだろう。この異論は、リバタリア

ン・パターナリズムの哲学から、セイラーとサンスティンがその存在を想定してい

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法律論叢 91巻 1号

るヒューリスティックの効果にまで及んでいる。ギガレンツァーによると、リバタ

リアン・パターナリズムには、個人の行動を変更させることに既得権益を有する組

織の態度を無視しておきながら、ただ個人だけを非難していることに主たる欠陥が

ある。つまり、ナッジを用いること自体に対する反対ではなく、自覚的な個人の

教育を放棄してナッジという近道を使うことへの批判である(Gigerenzer, 2015:

363)。ギガレンツァーは、ナッジの発案者が、その概念から重要な実質的インセ

ンティヴを含むものは何であれ排除したこと、たとえば少額であろうとも金銭的報

酬が提供されるような場合を例示してそれらを排除していたことからして、ナッジ

の定義が混乱してきていると指摘している。また、ランダム化試験による経験的研

究の例を挙げ、それとセイラーとサンスティンが主張する幾つかのナッジの有効性

と矛盾しているようだと述べている(Gigerenzer, 2015: 363)。ナッジは、意思

決定プロセスにおける心理的要因を官僚に気づかせるという賞賛されるべき効果

をもたらしたが、消費者をはじめとする弱者の権利を十分に保護しなかったり、必

要とあらば強制的手法を用いることの言い訳にもなりうる。

再度、行動心理学の観点に立ち、ギガレンツァーは認知心理学と行動経済学の

ヴィジョンが人間本性や知性についてのカリカチュアへと至らせると主張する。反

対に、バイアス除去の困難について悲観的になることも時期尚早である。十分な視

覚的、数値的な援助があれば、子供でさえリスクや不確実性について学ぶことがで

きるからだ(Gigerenzer, 2015: 364)。ラクリンスキーによれば、認知的誤りを

正すナッジよりももっとよい治療法は「単純な経験」である(Rachlinski, 2002:

1212)。きわめて限定的な論理法則を用い、したがって合理性の「生態学的性質」

をきちんと反映していないテストに基づいていることになるため、個人の体系的な

非合理性については実際のところ決定的な証拠が何もない。これらのテストは、い

かなる反証をも事実上除去する「確証バイアス」にしたがって選択的に報告されて

いる。つまり、リバタリアン・パターナリズムが言及する認知バイアスは体系的

であるどころかむしろ非体系的である(Gigerenzer, 2015: 371)。いずれにせよ、

自然なヒューリスティックに由来する「誤り」(利用可能性、自信過剰、後知恵、

自己奉仕、フレーミング、現状維持、アンカリング・調整)は、しばしば合理的で

あると称される他の論理・統計モデルより必ずしも悪いわけではない。

根本的な非合理性に関する選択的な証拠提示は、些細な問題ではなく、すべての

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行動に影響を与える選択フレーミング(小林)

社会科学に関わる問題である。実際、認知的誤りの発見を試みる研究で公刊された

ものは、全体のうち僅かな割合しかないのではないかという疑いがある。ほとんど

の研究は、なんらの誤りも示すことができず、したがってオリジナルな発見に至ら

なかったからこそ、引き出しにはいったまま公刊されていないのかもしれない(い

わゆる「ファイル引き出し問題」)。これは、可視性が欠如しているために帰無仮説

の反証につながる研究に大きな価値が認められている科学において、長く議論され

ている問題である。実際に、何も新しいことを証明しない研究こそ公刊されるべき

であると主張されてきた(『帰無仮説支持論文誌(Journal of Articles in Support

of the Null Hypothesis)』は数年前に刊行がはじまった)。この種の研究は、誤っ

た偽の科学仮説を取り除くために科学にとって必要である。そうでなければ、もし

かすると再現不可能なプロセスが用いられていれば、誰かが偶然それを証明する

まで存在し続けてしまうことになるだろう。ヒューリスティックの根本的な非合

理性を伴う実験の構築それ自体が、はっきりと著者がそれを許容していることに

よって、誤解を生じさせ、決定がなされた現実の条件を反映していないのである

(Mitchell, 2002: 1973)。引き出しに残されたままの研究は、ほとんどの場合、平

均的人間が実質的に合理的な仕方で意思決定できることを証明しているかもしれ

ない(Mitchell, 2002: 1966-1967)。

本能的なシステム(システム 1)が支配的な場面では、ナッジが意思決定に介入

し誘導を行っている。ギガレンツァーはこの二元的モデルが過度の単純化である

と批判している。フロイトのモデルのように今や時代遅れと批判される人間精神

のモデルでさえ 3つの決定システムを擁していれば、洗練度で二元的システムを凌

駕しているだろう。リスク教育への投資、それを可能なかぎり早く、とにかく個人

がリスクのある行動をとり始める前に始めることが、おそらくより良い解決策とな

るだろう(Gigerenzer, 2015: 379)。教育的施策は、意思決定に影響を与えるフ

レーミングや社会心理的要因の存在に注意するよう個人に警告する一助となるだ

ろう(Lecouteux, 2015: 407)。

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4. 終わりに――可能な一つの妥協点

ナッジはつねに何らかの形で存在してきているが、それが今これほど激しく議論

されているという事実は、おそらく立法に関する議論の「利用可能性バイアス」の

確認でもある。そのような異質な、弱い規制のカテゴリーは、現在のような形では

じめて批判の対象になるまでは、同じ規制というラベルで標示されてこなかったの

である。ギガレンツァーは、乳がんの自発的なスクリーニング検査に関する興味

深い例を報告している。いくつかの国では、51歳以上の女性が、所定日時に実施

される任意のマンモグラフィ検査の招待状を受け取った。このスクリーニング検

査は、10年後の女性の死亡者数を 1000人中 5人から 4人に減少させる。招待状

では、より説得力を増すためにこの差を 20%以上の相対リスク減少として、また

しばしばそれを 30%に切り上げて報告している(Gigerenzer, 2015: 362)。した

がって、これが統計的フレーミングに基づく実質的な操作であることは疑いない。

しかしまた、1人の命を救うことの価値が、1000通の手紙を送る費用と、健康な

被験者のスクリーニングにかかる時間を正当化することもまた疑いがないだろう。

また、ナッジが合理的な主体からより合理的でない主体への隠れた再分配を引き

起こしているとのミッチェルの主張(2015)は疑わしい。合理的でない人々がよ

り健康的な食品を食べるよう誘発されるという事実は、消費の低迷に必然的につな

がるわけではないだろう。それゆえ、より慎重な消費行動をする合理的な主体を犠

牲にする食堂の価格上昇につながるわけでもないだろう。しかし、情報開示義務

が、時間的・管理上の負担の両面で追加コストを発生させることは事実である。こ

のような追加コストは合理的選択者にも影響を与えるが、コストが低いままであれ

ば、おそらくは許容可能な社会的負担であろう。疾病や栄養不足のコストでさえ最

終的には部分的に社会負担となるからである。また、社会重視と自己重視のナッジ

の区別を中心に展開されるハグマンの批判(Hagman, 2015)は虚構のようにみ

える。一見、自己重視にみえるナッジも、何らかの形でより大きな社会的効用につ

ながることはあるからである。

これまで言及してきたいくつかの異論を克服するために、ミルズ(Mills, 2015)

は、ナッジが個人の自律を尊重していると見なされうる基準の採用を提案してい

る。その基準とは、成熟した個人の真正の目的に適っていること、容易に回避可能

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行動に影響を与える選択フレーミング(小林)

なこと、適切に宣伝されそれが宣伝であると認識可能であること、透明性があるこ

とである。この基準に従うと、少なくとも 3タイプのナッジが適格となるという。

個人化されたデフォルト・ルール、選択促進(ただし抗しがたいものになってはい

けない)、フレーミングされた情報の提供、である(Mills, 2015: 502)。同様のこ

とを念頭にウィルキンソンは、操作的なナッジと非操作的なナッジを区別すべきだ

が、そのような区別を実際におこなうことは非常に困難であるので、形式的ではな

い、つまり簡単に実行できる効果的なオプト・アウトの保障が生産的であると結論

づけた。

正当化のさらなるパラメータは、議会の法案によってナッジが創設されることか

もしれない。超法規的なナッジは公的な吟味の影響をほとんど受けることがない

が、公的な熟議プロセスを経て決定されたナッジだけは、個人の自律を縮小させ

たなどと批判されるべきではない、十分な承認可能性を持っている(Lepenies &

Małecka, 2015: 435)。

ナッジの評価に影響を与える大きな違いはナッジの教育レベルに関連している。

教育的ナッジは立法プロセスにもとづいているが、非教育的ナッジは、人々に十分

な情報提供をせずに選択をフレーミングすることによって、人々の恐怖や希望を用

いる本能的な意思決定システムに頼っている(Sunstein, 2017: 7)。許容レベル

は教育的ナッジのほうが高いが、それも有効性の程度によってケース・バイ・ケー

スで大きく変化する(Sunstein, 2017: 9)。ナッジの許容性をめぐる抽象的判断

は、端的に言えば有効性のプラグマティックな評価に移行する。これらの異論に対

するサンスティンの最終的な回答は、私たちにとって今日最も稀少な 2つの資源、

つまり認知に割くエネルギーと時間を解放することで、非教育的なナッジでさえも

実は自律を促進しているというものだ(Sunstein, 2014)。これは、技術的問題に

関する選択を強制することもひとつのパターナリズムだと主張することによって、

批判的な議論を乗り越えるものである。事実上唯一の可能な代替案は、強制的な義

務を作り出すこと、すなわち旧来の強制的な規範を採用することしかないという

(Sunstein, 2017: 89)。コンピューターや電子機器をセットアップするとき、よ

り優れた賢明な人にセットされたデフォルト設定に従うか(なぜなら人は自分にそ

の能力があるとか、そんなことをしている時間があるとも思っていないから)、あ

るいは設定を自力で詳細にカスタマイズするかどうかの明示的選択を求められる。

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法律論叢 91巻 1号

このような事態と類似したシステムに従うのがより賢明だろう。この選択を「単純

化された積極的選択」と呼ぶことができるだろう。許容可能なリバタリアン・パ

ターナリズムの形態は、「選択要求」ではなくて「選択奨励」と呼ばれるべきであ

る(Sunstein, 2017: 106)。

他の何かもっと良いもの、良くみえるもののために、ナッジ概念を放棄できるか

どうかを言うのはまだ早い。ナッジというラベルは、今日さまざまな問題に直面し

たときに、多面的でさまざまなツールで介入する必要がある規制の柔軟性に気づか

せてくれている。ナッジは概念的に純粋な公式ではない。ナッジは時には過度に

拡張され、成功の裡で予期せぬ犠牲も生じた。これについて発案者はナッジ概念を

狭めるために速やかに介入することはせず、そのリスクを自己愛的に受け入れたの

である。私がここまで報告してきた議論は、争点に関する根本的な不一致を解消

するには至っていない。争点は、個人の自律と集団的福祉は何を目指しているの

か、そしてその両者の境界線はどこにあるのかに関する各人の感覚に結びついてい

る。そうとはいえ、ナッジを通じて、規制が個人によって異なる認知能力にますま

すプラグマティックに対応していくべきことは明らかである(Rachlinski, 1982:

126)。しかしながら、選択アーキテクチャ、そしてフレーミングは避けることが

できないから、ナッジは除去不可能だと考えるナッジ概念の提唱者に私は強く同意

する。中立的なフレームなど存在しない。したがって、これを別様にフレーミング

するためには、もっとも適切な、あるいはもっとも不適切でないナッジをオープン

に選択することが大事である(Sunstein, 2015: 521)。健康、貯蓄、および教育

の保護と貧困からの保護を含む憲法というチャートから直接引き出すことができ

る価値の階層構造を尊重することで、今日この選択を行うことがすでに可能である

と信じている。

(明治大学法学部専任講師)

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