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1 神奈川大学 大学院工学研究科 機械工学専攻 教授 山崎 音振動を伝えない筐体・システム設計手法 2017年12月5日

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神奈川大学 大学院工学研究科

機械工学専攻

教授 山崎 徹

音振動を伝えない筐体・システム設計手法

2017年12月5日

Page 2: 音振動を伝えない筐体・システム設計手法 › var › rev0 › 0000 › 5241 › 2017...「振動や騒音の小さくするための対策立案技術」 4. 計測システムの開発を加速すること

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研究分野の背景

自動車,船舶,航空機,建物,医療機器,OA機器,精密

機器,工作機械,楽器,などの「振動・騒音」を伴う工業製

品分野においては,

➢設計初期段階から振動や騒音を考慮した設計技術

➢振動や騒音の小さくするための対策立案技術

が求められている。

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従来技術とその問題点(その1)

設計末期段階で振動・騒音問題が発覚し,

慌てて“切った貼った”により,ピーク値や発生振動数を

チューニングして対策しているのが現状である.

0.1

1

10

100

Frequency [Hz]

Accele

ra

nce

Infinite Theory

FEMDiscrete response

Mean response

周波数

振動・騒音

コンポ試作

コンセプト検討

コンポ品質確認

製品品質確認

詳細設計

システム性能確認初期設計・システム設計

V&V

V&V

V&V

作込過程 検証過程

設計末期

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従来技術とその問題点(その2)

その結果,以下のような問題が・・・

✓設計末期の時間がない中での手戻りが発生!

✓制振材を使おう!吸音しよう!といったコスト・重量増の対策しか思いつかない!

✓低騒音という商品性のために多大なリソースが必要

✓ピークが複数,広帯域問題では対策が困難!

振動・騒音問題のフロントローディングが期待される

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従来技術=“ピークにのみ”

新技術=“応答の平均も”

新技術により,

➢複数のピーク,広帯域問題にも有効

➢設計初期段階での活用が可能に.

➢振動・騒音を設計の早い段階から考えられるため,開

発コストの1/2~1/3程度への削減が期待される.

新技術の特長・従来技術との比較(その1)

0.1

1

10

100

Frequency [Hz]

Accele

rance

Infinite Theory

FEMDiscrete response

Mean response

周波数

振動・騒音

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6

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 10

0.05

0.1

0.15

0.2

[m]

[m]

長い平板の振動エネルギー流れの可視化例

新技術の特長・従来技術との比較(その2)

• 従来技術での対策立案は,一自由度系の考えと振動

モード(ゆれやすい形)に基づくものくらいしか・・・

• 新技術では,振動・騒音のエネルギーの流れ(下図)を

求め,流れから「こちらに逃がす」「こちらへは流さない」

「流れを塞き止める」「流れを留める」など発送が豊か

に!

• 設計技術(PC上)

トラブルシューティ

ング技術(実験)

としても活用可能

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新技術

112 12

1

sc L

S

Subsystem.1

E1

Subsystem.2

E2

P1 P2

Pd1 Pd2

P12

P21

i

i

d

ij

i i

ij

P E

P E

部品間の伝搬=SEA 部品間&部品内=振動インテンシティ:SI

減衰点

加振点

本技術のベースとなる,振動エネルギー伝搬解析手法

部品1から2への伝搬特性

数式で表せる表面積Sなど大まかな量

初期設計が可能!ちなみに,SEAはこれで全設計段階

で適用可能に.

部品1 部品2

平板のある周波数での振動エネルギーの流れ

可視化・伝搬経路・音源探査

流さなければよい!

対策立案が容易!

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加速度/力

新技術

0 500 1000 1500 200010

-2

10-1

100

101

102

Frequency [Hz]

Accele

rance [

m/s2 /

N]

InfiniteFEM

0 500 1000 1500 200010

-2

10-1

100

101

102

Frequency [Hz]

Accele

rance [

m/s2 /

N]

InfiniteFEM

右図:空缶105個の応答振動・騒音はばらつきやすい!

減衰が小さいとピークがはっきり

ピークがばらつきやすい

モード視点

本技術の動機(その1)

周波数

105個同じ特性ではない!

減衰が大きいと基線

基線はばらつかない

伝搬視点

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新技術本技術の動機(その2)

Q:振動・騒音を下げるには?

A1:ピークを下げる・ずらす

=固有振動特性

=モード視点

第2段階設計=味付け設計

A2:全体を下げる

=入れない,伝えない

=入射・透過

=伝搬視点

第1段階設計=素性の良い設計

0.1

1

10

100

Frequency [Hz]

Accele

rance

Infinite Theory

FEMDiscrete response

Mean response

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新技術V字型設計+振動エネルギー伝搬解析+二段階設計=あらゆる振動騒音問題に!

FEMなどの詳細解析と共に,SEAなど大局的手法の活用も!!

AND THEN “薄く・軽く”+“静かに” Japan AS NO.1!

コンポ試作

コンセプト検討

コンポ品質確認

製品品質確認

詳細設計

システム性能確認初期設計・システム設計

V&V

V&V

V&V

作込過程 検証過程

概念設計

機能設計

構造設計

解析SEA的

解析SEA的FEM-SEA的

SI的

SEA的?

実験SEA的

実験SEA的FEM-SEA的SI的

実験SEA的

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新技術エネルギー流れの簡単計測用

「シート型エネルギー流れ計測システム」

システム概要

Shaker

Line concentrator

Acrylic plate

16ch SI Probe

システム試作品

板のエネルギー流れ

計測例(センサーの比較)

開発要件(1)一度に多数のセンサで測定(2)同時性を確保した測定・通信(3)流れの可視化ソフト(4)脱着しやすいシート(5)壊れにくい

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新技術の適用事例(その1)

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 350010

-5

10-4

10-3

10-2

10-1

Frequency [Hz]

Kin

etic

en

erg

y n

orm

aliz

ed b

y P

in

Optimized (0.01)

Change large area (0.01)

Change small area (0.01)

2枚平板構造物モードと波動の両視点による機械構造物の振動低減設計,自動車技術会論文集,47巻6号,pp.1373-1379,2016-11

2mm

4mm

Optimized

Large area

Small area

2mm

2mm 4mm

2mm 4mm

1段階設計左板の板厚を設計2mmから4mmに.

2段階設計特定の周波数で,振動エネルギー流れを阻害するように,境界部を構造変更 対象周波数域

2mm

→4mm

1段階設計

2段階設計

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新技術の適用事例(その2)

8枚平板構造物 振動エネルギー流れの促進と抑制に基づく低振動構造設計,自動車技術会2017年春季大会学術講演会講演予稿集,20175061,pp.336-341,2017-51段階設計(板厚最適化)

2段階設計(流れから)

目標:#3と#4の振動の低減結果の意図:#5から8の振動を増やす

=#3と#4に伝えない!0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

x[m]

y[m

]

0 50 100 150 20010

-6

10-4

10-2

100

102

Frequency [Hz]

Kin

eti

c e

nerg

y n

orm

ali

zed b

y P

in

Initial:0.01

1st step:0.01

2nd step B:0.011段階設計

2段階設計

板厚変更部

ここに流さない!

ここに流さない!

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新技術の適用事例(その3)

サスクロスメンバ 波動とモードの両視点を用いた二段階設計の適用,日本機械学会[No.17-13] Dynamics and Design Conference 2017 講演論文集,407pdf,2017-8

1段階設計板厚を設計

2段階設計従来手法を用いた構造設計

100 200 300 400 500 600 700 800 900 100010

-6

10-5

10-4

10-3

Frequency [Hz]

Kin

etic

en

erg

y n

orm

aliz

ed b

y P

in

Initial1st step2nd step

2段階設計

1段階設計

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新技術の適用事例(その4)

初期設計 概念設計段階でのSEAを用いた振動伝搬の最適化手法,日本機械学会Dynamics and Design Conference 2014 USB論文集,631.pdf,2014-8

#1

#2#3

#4

#5

結果の意図

入力から“伝えない”ように,

首を長くし,そこで減らす

#1

#2

#3

#4

#5

最適化

部品間の結合の長さ,

表面積を設計

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新技術の適用事例(その5)

初期設計 現在研究中,2018年度に複数の実機応用結果を学会発表する予定

VEPAによる構造物諸元の最適化をする

・既存構造物を低振動する構造物諸元の最適化・低振動構造に向けた設計コンセプトの獲得・設計指針の獲得

・素性の良い設計の実現

・低振動低騒音化のポイントの獲得

・低振動低騒音構造レイアウトの獲得・他性能との両立化が容易

・初期の仕様設計の段階から

低振動設計を実現

・概念設計モデル構築技術

NV性能のフロントローディングを実現する‼

VEPAによる新規レイアウト設計をする

板厚最適化

入力

低振動化

入力

低振動化

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想定される用途

「設計の初期段階から振動や騒音を考慮した設計技術」

振動・騒音を早めに把握し,素性の良い製品設計を

行える

振動・騒音以外の強度などの他性能を表す数式化

ができれば,他性能と両立した構造設計ができる

「振動や騒音の小さくするための対策立案技術」

PC上で低振動騒音構造の具体的な検討ができる

既存商品のトラブルシューティング,故障個所予知

などもできる

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実用化に向けた課題

「設計の初期段階から振動や騒音を考慮した設計技術」

1. 既存レイアウトにおけるリファイン設計はほぼ完了

2. 新規レイアウトにおける部品配置の制約は,対象機械に依存するため,個々の設計法の構築

3. 他性能との両立(他性能の評価法を知りたい)

「振動や騒音の小さくするための対策立案技術」

4. 計測システムの開発を加速すること

5. 実機の適用事例を増やすこと

6. 対策すべき箇所の特定だけでなく,その箇所の具体的な変更仕様を決める方法を確立すること

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企業への期待

製造メーカの皆さまへ

• 紹介技術をより有効的に発展,適用していくために,御社エンジニアをプロジェクト付きで,神奈川大学の社会人博士として業務派遣してください.

• 紹介技術に基づく計測システムやCAEツールの共同開発のご支援をお願いしたい.

計測システム・ソフトウェア関連企業の皆さまへ

• 紹介技術に基づく計測システムやCAEツールの共同開発をお願いしたい.

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本技術に関する知的財産権(その1)

【1】

• 発明の名称 :振動インテンシティの制御方法

• 特許番号 :5067654

• 特許権者 :学校法人神奈川大学

• 発明者 :山崎徹

【2】

• 発明の名称 :振動解析方法

• 特許番号 : 5077757

• 特許権者 :学校法人神奈川大学

• 発明者 :山崎徹

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【3】

• 発明の名称 :振動検出装置,振動特性計測システム

および振動特性計測方法

• 特許番号 :6078860

• 特許権者 :学校法人神奈川大学

• 発明者 : 山崎徹,菊地通,中村弘毅

本技術に関する知的財産権(その2)

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産学連携の経歴

• 1998年(研究室設立)~現在に至るまで

共同研究・受託研究・奨学寄附金

自動車業界,造船業界,家電業界,インフラ業界,

医療機器業界,など,40社ほど

一度開始すると平均8年くらい

• 2007年~ 株式会社先端技術開発研究所設立

• 2014年~ (一社)次世代音振基盤技術研究会設立

• その他,国関係委員,学会関係委員,多数

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お問い合わせ先

神奈川大学研究支援部

産官学連携コーディネーター 尾谷 敬造

TEL 045-481 - 5661(代)

FAX 045-481 - 2764

e-mail fs130175kp@kanagawa-u.ac.jp