空調ダクト系消音 計システムcaddus” ·...
TRANSCRIPT
小特集 ビル施設と総合管理
空調ダクト系消音
∪・D・C・〔534・833・5:534・835.44:る97.9〕.001.24:る81.32.0る
計システム"CADDUS”ComputerAided NoiseControIDesign SYStemSforAir-ConditioningDucts
空調ダクト系の消音設計は,これまで,発生する馬重苦を予測した後,経験的に消
音器を組み合わせて対応してきた。しかし,この方法では特に静寂な環境が要求さ
れるオーディトリアム,スタジオなどの消音設計を的確に行なうことが困難であった。
そこで,従来の騒音予測の機能に加え,ダクト系騒音の伝搬性二状計算結果から許
容騒音値を満足するためのダクト設計,消音器設計,消音器レイアウト設計を行な
えるソフトウェアCADDUSを開発した。
本論文ではCADDUSの消音設計方法と機能,及びホ】ル空調設備への適用結果
について述べる。
l】 緒 言
静寂なオーディトリアム,スタジオ内の騒音レベルはほと
んど空調設備からの騒音によって決定されるため,厳密な消
音対策が必要である。既にオランダのBronswerk社1),オー
ストラリア住宅建設局2)及び国内数社では空調設備から発生
する騒音の予測技術を確立し,各種条件【Fでの騒音を予測で
きるようになってし、る。
日立プラント建設株式会社でも予測技術を確立したが,3)・4)
これらの技術はいずれも発生する騒音の予測だけにとどまり,
騒音制御のためのダクト設計や消音器位置,構造については,
経験的に消音器を組み介わせて対応しているのが現状である。
そこで,従来の騒音予測計算の機能に加え,施主から要求
された案内騒音許容値を満足するための消音設計計算までを
一貫して処j哩する新しい設計システムCADDUS(Noise Con-
troIComputer Aided Design System for Air-Conditioning
エルポ,へント\
直管ダクト\
分岐ダクト\
他のエレメント\
ダンパ\
給気チャンバ\
送風機\
//′
▲-●■
や、
せ、
心房怠竺
+【 ⊥
TT吹出口
室内
吸込口
+L.
く、、
払
心扁咽
や+_ +_
T
室内
T
室内
耶
空調境
\
句
1軋
、
〟′ /′′ /// /ソ/ /// 〝/
図l 基本的な空調設備の構成 空調設備での主音源は送風機である
が,ダクト系の長さ,管内;未達によってはすペてのダクトエレメントを音源と
して扱う必要がある。
高橋 稔* 肌乃0γ伽Tαたαんαざん~
浅見欽一郎* 打ゴれ,吉cんゴγaA5αmよ
後藤哲夫** re加o Go亡a
矢作秋弘** Aふよん~γO mんαgg
Duct System)を開発した。
本論‾丈では,このシステムを開発するに当たって検討した
消音設計方法の基本内容とシステムの機能,及びホール空調
設備への適用結果について述べる。
白 空調ダクト系騒音の予測方法
図1に基本的な空調設備の構成を示す。空調ダクト系は,
送風機,吹出口(r吸込口)など9種類のダクトエレメントによ
って構成されてし、る。ダクト系での主音源は送風機であるか,
空調機械室と室内までのダクト長さや管内流速によっては,
ダンパ,分岐ダクトをはじめとする他のエレメントからの気
流発生青もすべて音源として扱わなければならない。
そこで本システムでは,表1に示すように全ダクトエレメ
ントの減音特件,気流発生書特性を計算するとともに,直管
ダクトにつし、ては外部にある騒音源からの侵入音による音圧
上昇や透過による減音についても計算を行なっている3)・4)。
田 浦書設計方法
本システムでは原設計の消音性能が不十分な場合と過剰な
場合のいずれに対しても対応が可能である。ここでは原設計
が消音に対し不十分な場合の対東について述べる。これは与
えられた室内騒音許容値を満足するための騒音対策方法を決
表l ダクト騒音予測での計算項目 本システムでは,ダクト系を構
成するすべてのダクトエレメントの減書.気流発生書特性を計算するとともに,
直管ダクトについては外部騒音からの侵入音の影響や透過による減音について
も計算を行なっている。
No, ダクトエレメント名音響特性計算項目
減書 1気う充発生書 透過書と侵入音
l 空 調 機 ○
2 送 風 機 (⊃
3 絵 気 チ ャ ン バ ⊂)
4 エ ル ポ,ベ ン ド ⊂) ⊂)
5 ダ ン ハ ⊂)
6 分 岐 ダ ク ト ⊂) ○
7 直 管 ダ ク ト ⊂) C〉 ○
8 吹 出 口,吸 込 口 ⊂) ○
9 他のエ レメ ント ○ (⊃
18 室 内 室 内 音 場計算
*日立プラント建設株式会社研究所 **
日立プラント建設株式会社
408 日立評論 VO+.66 No.6(ほ侶4-6)
志する重要な部分であり,特に吹出口あるいは吸込口での騒
音低減の目標パワーレベルの設定と対策音源の割出しを正し
く行なうことが必要である。次にこれらの手順を示す。
3.1吹出ロ(吹込口)の目標パワーレベルの設定
ホール内にはパワーレベル,距離減衰効果の異なる数多く
の音源が点在しており,それからの到達音圧レベルが重畳さ
れ安富点の普圧レベルを形成している。そこで本システムで
は,ホール内の全音源を(1)室内騒音許容値を上回り,受音点
の音庄レベルに大きく影響している音源群,(2)許容値は下回
っているがdB合成したときに影響している音源群,(3)受音点書庄レベルに影響しない音源群に分類し,下式で吹出口(吸込
口)の目標パワーレベルを設定する方法を考案した5)。
Plγエ′~-=PⅣん一Ⅳ凡……‥……‥……・…
SPん>ⅣCノの場合
〃凡=5PムーⅣC/+10loglOSl・(51+52)
SPエ∫≦ⅣCノの場合
Ⅳ凡=1010glO52…
ここに PⅣ上′∠
Plγん
Sf)ム
〃C′
パワーレベル
・(1)
・(2)
・‥‥‥…(3)
:特定昔i偵吉の目標パワーレベル
:・現二状のパワーレベル
:特定者i噴からの到達音庄レーベル
:検索周波数での許容音庄レベル
Sl :ⅣCJを上回っている音源数
\
⊂}‾句ダクトエレメント
「這対策エレメント
注:略語説明
PW+(PowerJevel)NC(Noise Criterjo[)
10
NO
NO
対策エレメントの選 択
対策エレメントの選 択
S2:ⅣCノと同等か,下回っているか貴書∴!大
の書庄レベルに寄与している音源数
3.2 ダクト系音源の割出しと消音対策
日立プラント建設株式会社がこれまで消音設計を行なって
きた秦野市文化会館をはじめとするホ【ル空調設備の実証結
果から,吹出口あるいは吸込口から放射される空調騒音の主
要因を次の3タイプに分類した。
(1)吹出口(吸込口)器具自体からの;て流発生音
(2)ダクト内部の特定エレメントの気流発生音
(3)ダクト系各所で累積された騒音
そこでこれらの点に着眼し,図2にホす消音対一策設計法を開
発した。ここでは消音対策を2段階に分けて進める。第1段階で
は,伝搬件状計算結果の中で卓越した音源に対する対策をす
る。すなわち,許容値を最も上回っている周波数を,伝搬性状計
算結果のデータファイルの中から摘出し,対策検討のための具
体的対策方法を決定する。第2段階では,吹出口(吸込【りから送
風機側に向かって川貞番に対策エレメントを選択し,対策方法を
決定する。これらの処理を中心にして複雑な空調ダクト系に対
する騒音制御のためのダクト設計や消音器設計を可能にした。
d 設計システムCADDUSの開発
図3にCADDUSのソフトウェア構成を示す。ソフトウェア
デー
タ 入 力
プ ロ グ ラ ム
検 索 周 波 数の設 定
卓越した
スペクトルか
YES
特定エレメントの消音対策
対策エレメント以降
の伝封劉生状計算
目標PWLは満足か
YES
コ土日
圧レ
ベ
ル
NO l ・ lヽ■NC曲線
周波数
許容NC値
は満足か
NO
検索周波数,ダクト
ルートの設定
末端エレメントから
の消音対策
対策エレメント以降
の伝矧生状計算
目標PWL
は満足か
YES
許容NCイ直
は満足か
YES
YES
NO
出 力 制 御プ ロ グ ラ ム
図2 消音対策設計の手順
消音対策設計は2段階に分けて進めて
いる。第l段階が,伝搬性状計算結果
の中で卓越した音源に対する対策であ
り,第2段階が吹出口(吸込ロ)から送
風機側に向かって対策を進めてゆく方
法である。
空調ダクト系消音設計システム"CADDUS” 409
CADDUS
START
データ
インプット
デー・タ
チェ ック
インプット
情 報
ダクト系
騒音予測
騒 音
予測情報
透過害・侵入
書予測
Beranek法
YES外部騒音
予測は必要か
NO
室内畜場予測方法は イメージ法
室内書場
情 報
清音対策は必要か
NO
YES消書対策
YES
過消音対策
対策情報
過講書対策は必要か
NO
出力制御
プリ ンタ出力
END
プロット
テープ
X-Yプロッタ
作 図
対策情報
図3 CADDUSのソフトウェア構成 室内騒音予測値が許容値を満足
Lていない場合には講書対策を,逆に満足Lている場合は過剰な消音設備を摘
出できるように構成Lた。
開発に当たっては複雑なダクト系を人力するため,特にイン
プットデータのチェック機能を強化するとともに,近い将来,
対話形システムに拡張することを考慮し柔軟性のあるソフト
ウェアにまとめた。CADDUSの機能構成は図4に示すとおり
である。
血 清水市新庁舎議事堂空調設備への適用
国5に議事堂の全景を示す。収容人員は141人である。室内
馬蚤書許容値はNC-30であり,吹出口器具はアネモ形,ノズル
形を併用している。原設計と消音設計(改良設計)時のダクト
内の騒音伝搬性状予測結果の比較を図6に示す。横軸は送風
機から吹出Hまでのエレメントのつながりを示している。本
ダクト系では原設計で目標PWL27dBに近い値が得られたが,
気流吉村策のため更に2個の吸音エルボを加えることにより
目標値以下になることが分かった。図7にこの対策を行なっ
た後の床面から高さ1.5mの平面内での室内騒音分布曲線を示
す。騒音レベルに大差はないが給気ダクト系の分岐点の下側
と運気ダクト系の吸込口付近の騒音が高いことが分かる。騒
音レベルの最大値は38.5dB(A)であり,NC曲線による評価結
果でも許容値を満足できる予測結果を得た。完成後の騒音測
定結果からも設計どおりNC-30を満足していることが実証で
きた。
計算対象の空調方式
セントラル空調方式
各階空調方 式
パッケージ
空調方式
ファンコイル
空調方式
ダクト系騒音予測結果
1.全エレメントの音響特性
2伝力削生状
室内畜場予測結果
1.騒音レベル
2ノ(ンドレベル
3.音源寄与度
消音設計用目標
パワーレベル
計算 結果
消書対策結果
1.ダクト寸法
2.消音器構造
3.消音器配置
過消音対策結果
1.不用消音器リスト
2.室内騒音予測結果
出力情報
ダクト系騒音伝搬性状図
NC曲線評価図
等騒音分布図
注:略語説明
CADDUS(Noise Co=trOIComputer Aided Design System for
Aけ-Cond山0ning Duct System)
図4 CADDUSの機能 cADDUSではダクト内部と室内での騒音予測だ
けでなく,室内等量書許容値を満足するためのダクト寸法の見直L,消音器設計,
消音器の配置を自動的に算出L出力することができる。
図5 清水市新庁舎議事堂の全景 議員,傍聴者など合わせて141人を
収容することができる。室内騒音許容値はNC-30であり,ホール天井内ダクト
の気)売書対策を重点的に行なった。
図8に実測値と消音設計予測値の比較結果を示す。期待ど
おり両者は63Hz~2kHzで±5dB以内で一致しており,OA
(オールパス)値では±3dB以内で一致している。
CADDUSはこのほか,新橋演舞場,常陽第百文芸ホールな
どの建設に適用し,同様な実証結果を得た。
l司 結 言
従来の騒音予測計算機能だけでなく,消音設計までを一貫
して行なえる新しい空調ダクト系消音設計システムCADDUS
を開発し,次に述べるような効果を得た。
(1)騒音制御のためのダクト設計,消音器設計,消音器レイ
アウト設計が可能になった。
且且
410 日立評論 VO+,66 No.6(1984-6)
90
80
★_★ 注:◇(原設計)
(皿ヱ+≧m
ミてユーPソ、柵煉
02
ダクト内の等量書伝搬性状図(500Hz)
暮-★
SAAAB SABAD SADAF SAFAG
部品番号 1 3 4 5 6 7 8 9 10111214 1 2 3 4 1 2 1 2 3 4 5 6 7 8
原設計 ロロ国昭♂喝口『□『口□ ▽♂田口 ▽□ ▽□『□『□囚¢
改良設計 喝 喝
(m)20
18
16
14
12
10
一一
サ気還ロ
09
08
07
37.5
令・----や-----一--¢----¢-一一-
_+1
1
1
1
ト く:コ給気
38.5
⊂二〉還気
37,5
37.5
37.0
37.5
--サーーー37.5
37.0
4 6 8 10121416(m)柑
注:○(吹出口),⊂二ニコ(吸込口),-----(給気ダクト系),========ご(通気ダクト系)
図了 議事堂内の等島重苦分布曲線 静電プロッタによる消音対策後の
室内騒音分布曲線〔高さ:床面からl.5m.単位:dB(A)〕の作図結果を示す。
(2)バンドレベルで±5dB以内,OA値で±3dB以内の高い
精度で消音設計が可能になった。
(3)清水市新庁舎議事堂,新橋演舞場,常陽第百文芸ホール
の建設に適用し,いずれも施主の要求を満足した。
CADDUSは現在,郡山市民文化センター(大ホール2,000人,
小ホール800人),勝田市文化会館(大ホール1,400人,小ホー
ル400人)の建設に適用中である。
今後は本ソフトウェアを対話形のシステムに発展させてゆ
く予定である。
終わりに,本システムの適用に当たり御協力をいただいた
株式会社日本設計事務所,株式会社佐藤武夫設計事務所,三
菱地所株式会社,鹿島建設株式会社の関係各位に対し深謝の
意を表わす次第である。
12
ハリ
O
O
6
5
A-
(聖)ユ「て上世軸+八てト1へヘ七
30
20
10
\\
N鮎
●k予測値実測値-○- -●一議事堂前部
「△-「▲一議事堂後部
ダクトエレメントシンボル
直管ダクト
『 工ルポ,ベンド
[コ チャンバ
企 吐出口,吸込口
(フ 送風機
⊂『 分 岐
巨] ノイズレスユニット
♂ ダンパ
甲 侵入音
瀦 吸音材
S サイズ変更
× 撤 去
AB 吸音材コード変更
図6 ダクト内の馬毒害伝
搬性状予測結果 x-Y
プロッタによる作図結果を示
Lた。消音設計計算の結果,
本ダクト系にはダクト末端部
分に2個の8及音エルボが必要
であることが分・かった。
NC-70
NC-60
NC-50
NC-40
許容値
NC-30
NC-20
63 125 250 5(泊 1,000 2,000 4,000
オクターブバンド中心周波数(Hz)
図8 清水市新庁舎議事堂での騒音予測値と実測値の比重交 完成後,
琶重苦ラ則定を行なった。実測値と予測値を対比した結果,期待どおり両者は63Hz~
2kHzで±5dB以内で一致L,許容値NC-30を満足していることが分かった。
参考文献
1)S.G.F.Bendien,et al.:Calculating the Sound Production
of an Air・Conditioning Duct System by Computer,The
Heating Vent.Eng.(1975-11)
2)M.M.David:The Development of an AnalyticalTechnique
and Data for the AcousticalAnalysis ofan Air-Conditioning
DuctSystem,TbelOICAContributedPapers,Cl-5.2(1980)
3)平田,外:空調用給排気ダクト系の騒音予測計算プログラム
の開発,日立評論,61,2,131~136(昭54-2)
4)M.Takahashi,et al.:Noise LevelPrediction Method for
Air-Conditioning Duct System,Inter・Noise81Proceedings,
497-502(1981)
5)高橋,外:空調ダクト設備のための動的消音設計システム,
日本音響学会講盲寅論文集,559~560(昭58-10)