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透析室に求められること ~体重管理からみるVA管理~ 臨床工学技士 川原田貴士 第32回日本医工学治療学会 甲府富士屋ホテル 平成28年3月19日(土)シンポジウム6「バスキュラーアクセスを再考する」

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透析室に求められること~体重管理からみるVA管理~

臨床工学技士 川原田貴士

第32回日本医工学治療学会 甲府富士屋ホテル

平成28年3月19日(土)シンポジウム6「バスキュラーアクセスを再考する」

#1 近年、超音波診断装置(以下、エコー)によるバスキュラー

アクセス(以下、VA)管理が主流となってきている。当院でも

VA管理のひとつとしてエコーを使用している。

#2 一時開存率の延長は、その後の透析室での患者管理やVA

管理が重要である。

#3 当院では、透析室の患者管理として2015年より体組成計

(BCM)を積極的に活用し、体重管理からのVA管理を行い

VA寿命や一次開存率の延長に取り組んできた。

【背景】

VAIVTからVAIVTまでの管理は、透析室がカギを握る!

開存期間の延長は、透析室の取り組みで決まる!

VAIVT VAIVT VAIVT

VAエコー

VAエコー

透析室 透析室

VAエコー

VAエコー

VAエコー

【背景】

透析室で何ができるのか?

•理学的所見「診・聴・触」

•穿刺部位の選択(穿刺部位を増やす)

•除水制限(リフィリングの観察)

•患者指導(水分管理)

•適正体重管理(正しいDW)

•VAマッサージ(ミルキング) 6月透析医学会(大阪)にて詳しく

透析室で何ができるのか?

•理学的所見「診・聴・触」

•穿刺部位の選択(穿刺部位を増やす)

•除水制限(リフィリングの観察)

•患者指導(水分管理)

•適正体重管理(正しいDW)

•VAマッサージ(ミルキング)

2015年月別閉塞症例数(当院VA外来)

76 6

2

910 10

13

9

5

89

0

2

4

6

8

10

12

14

・他施設:82例・維持患者:12例

年間閉塞数:94例

2015年福岡県月別平均気温(参考データ:気象庁HP)

7.9 7.611.1

16.2

20.722.6

26 27.4

23.2

18.916

10.3

0

5

10

15

20

25

30

7 6 6

2

9 10 1013

9

58 97.9 7.6

11.1

16.2

20.722.6

26 27.4

23.2

18.916

10.3

0

5

10

15

20

25

30

閉塞症例数 平均気温

2015年月別平均気温と閉塞数

7 6 6

2

9 10 10

13

9

5

8 97.9 7.6

11.1

16.2

20.722.6

2627.4

23.2

18.916

10.3

0

5

10

15

20

25

30

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

閉塞症例数 平均気温

2015年月別平均気温と閉塞数

•平均気温の上昇とともに閉塞数も上昇。

•気温の最も高い8月に閉塞数が最も多い。

•冬場に閉塞数が再上昇。

27.4

13

7 6 6

2

9 10 10

13

9

5

8 97.9 7.6

11.1

16.2

20.722.6

2627.4

23.2

18.916

10.3

0

5

10

15

20

25

30

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

閉塞症例数 平均気温

2015年月別平均気温と閉塞数

•平均気温の上昇とともに閉塞数も上昇。

•気温の最も高い8月に閉塞数が最も多い。

•冬場に閉塞数が再上昇。

VA外来でのヒヤリング

最近、血圧はどれぐらいですか?

汗は結構かきますか?

昨日は外出してましたか?

最近の心胸比は覚えてますか?

普段どれくらい除水してますか?

透析中は問題なく経過してますか?

VA外来での閉塞患者の返答(水分に関して)• 「畑仕事で水分補給はほとんどしませんでした。」

• 「外出して大量に汗をかきました。」

• 「私は、水分をとらないように気を付けています。」

・「サウナで体重落そうと思って・・・。」

• 「飲み会で飲み過ぎて・・・嘔吐しました。」 などなど

夏場の閉塞は血管内脱水による突然閉塞や水分管理に厳格な方に多い。

患者指導(水分管理)~少しまとめ~※夏場の食欲低下や夏バテにより、DWを下げるのは当然ですが

•季節(気温)に応じた、柔軟な水分補給の指導が必要。

•脱水による体のしくみ、VAとの関わりを理解してもらう。

•自身の発汗量を把握し、適切な水分補給を促す。

VA外来や透析室での適切な指導が閉塞軽減へのカギ

透析室で何ができるのか?

•理学的所見「診・聴・触」

•穿刺部位の選択(穿刺部位を増やす)

•除水制限(リフィリングの観察)

•患者指導(水分管理)

•適正体重管理(正しいDW)

•VAマッサージ(ミルキング)

DWの見極め

•心胸比(胸部レントゲン)•血圧(自宅・透析中)•血液データ(h-ANP、BNPなど)•浮腫(手指・下肢)•吊り(手指・下肢)•血液濃縮(透析後半)•透析後シャント音

DWの見極め

•心胸比(胸部レントゲン)•血圧(自宅・透析中)•血液データ(h-ANP、BNPなど)•浮腫(手指・下肢)•吊り(手指・下肢)•血液濃縮(透析後半)•透析後シャント音

多くの施設が見極め項目

DWの見極め

•心胸比(胸部レントゲン)•血圧(自宅・透析中)•血液データ(h-ANP、BNPなど)•浮腫(手指・下肢)•吊り(手指・下肢)•血液濃縮(透析後半)•透析後シャント音•BCM測定 当院で追加した項目

BCM

ody

omposition

onitor

BCMとは?

BCM®は電気抵抗の原理を使った体組成分析装置である。

体内に微弱な電流を流し、その電気抵抗を利用して水分量や体脂肪、筋肉量を間接的に求める最新の方法が採用されている。家庭用体脂肪計を想像するとわかりやすい。

BCM(BodyCompositionMonitor:体組成計)

電気は水分に沿って流れ、水分の量によって伝導性が違う。・脂肪の多い人(筋肉の少ない人)⇒電気抵抗値が大きい・脂肪の少ない人(筋肉の多い人)⇒電気抵抗値が小さい

この電気抵抗値の違いを元に分析し、数値で示される。

プレゼニウスメディカル社製 BCM

<基礎情報の入力>①身長②体重③年齢④性別

BCM(BodyCompostionMonitor:体組成計)

3分の検査

BCM(BodyCompostionMonitor:体組成計)

BCM結果

過剰水分量[L]

理想乾燥体重[kg]

DWと理想の差[kg]

肥満係数[kg/m2]

BCM(BodyCompostionMonitor:体組成計)

70 60 54

13.418

30

0%

20%

40%

60%

80%

100%

新生児(3.5kg) 成人(70kg) 高齢者(65kg)

年齢による体水分の変化

水分 たんぱく 脂肪 無機塩類

脂肪

細胞の中

細胞の外

脂肪以外

筋肉

細胞の中

細胞の外

皮膚・臓器・必須脂質骨・ミネラル

過剰水分

BCM

血圧

心胸比 脂肪

細胞の中

細胞の外

脂肪以外

筋肉

細胞の中

細胞の外

皮膚・臓器・必須脂質骨・ミネラル

過剰水分

ドライウエイト

すべての結果を考慮し、DWを評価していく。

例えば・・・

血圧が高いですね!心胸比は問題ないし、ドライウエイトを下げましょう!

シャント閉塞!!!

BCMの結果、過剰水分はなかった血圧や心胸比だけで判断することは危険かもしれない。

7 6 6

2

9 10 10

13

9

5

8 97.9 7.6

11.1

16.2

20.722.6

2627.4

23.2

18.916

10.3

0

5

10

15

20

25

30

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

閉塞症例数 平均気温

2015年月別平均気温と閉塞数

•冬場に閉塞数が再上昇。

DWが夏(痩せていた時期)のまま。

食欲が増して太ったら、DWは上げましょう。

22例中13例が体液不足

【目的】

•頻回VAIVT症例におけるBCMによる体重管理について検証した。

【期間】

• 2014年1月~2015年12月

【対象】

• PTAを施行した当院維持透析患者108症例中頻回PTA95症例(21名)

• AVF:16名、AVG:5名

当院での検証

【方法】

①頻回PTA患者へBCMを実施し、DWと理想体重の差を算出

②2014年(BCM消極的活用)と2015年(BCM積極的活用)の

VA一次開存率をKaplan-Meier法にて算出

当院での検証

【結果①】

DWとの誤差平均-0.72㎏(T検定)体液不足最大値:4.0㎏不足

体液過剰最大値:0.8㎏過剰

頻回PTA患者には、1.0㎏以上の体液過剰はいなかった

【結果②】 3ヶ月開存率

2015年;74.2%

2014年;39.6%

P=NS

【考察】

#1 BCMによって、体液不足が開存期間短縮の原因と

なることが示唆された。

#2 DWを適正に管理することで、一次開存率の延長

がみられた。

#3 DWが厳しめに設定されている患者に頻回PTAの

傾向がみられた。

【結語】

VA管理において患者の体重管理・水分(体液)管理は重要な役割を担っているといえる。

第32回日本医工学治療学会CO I 開示

筆頭発表者名 川原田 貴士

演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある

企業などはありません。