頭部外傷とicp - jsepticinjury patients:icp monitor group • treatment goals: a. icp ≤ 20...
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頭部外傷とICP
慈恵ICU火曜勉強会
2013.3.26
粕谷容子
Introduction
• 頭蓋内圧(ICP)測定は,重症外傷性脳損傷ケアの標準と考えられ使われているが,高所得国でも治療でのその有効性ははっきりしていないJ Trauma. 2008;64:854–862, Can. J. Neurol. Sci. 2000; 27: 143-147, Intensive Care Med.2001;27:400-406
• 重症外傷性脳損傷の管理ガイドラインでもモニタリングの有効性ははっきりと示されていないJOURNAL OF NEUROTRAUMA 29:2022–2029 ( July 20, 2012), JOURNAL OF NEUROTRAUMA;24, Supplement 1, 2007
• 外傷性脳損傷の管理での頭蓋内圧モニタリングの正確な無作為試験や,信頼性のあるコホート研究もほとんどない
Guidelines for the Management of Severe Traumatic Brain Injury 3rd Editionより
GCS 3-8点 かつ 頭部CT異常 (血腫、挫傷、腫脹、ヘルニア、脳底槽の圧迫) があるすべての救命可能な患者で ICPをモニターすることをすすめる
頭部CT所見が正常な重症頭部外傷では 入院時に以下の2つ以上の要件を満たす場合に ICPモニタリングが検討される ・年齢> 40 ・片側または両側の運動麻痺 ・sBP<90mmHg
強い推奨のある標準治療なし
2012.6.12勉強会 ICPモニタリングの意義 より抜粋
Guidelines for the Management of Severe Traumatic Brain Injury 3rd Editionより
Medline search ~ April 2006
強い推奨はない
ICP >20mmHgで治療介入を 開始することをすすめる
ICP値、臨床所見、頭部CT所見を 組み合わせて治療の要否を決定するのが よいかもしれない
2012.6.12勉強会 ICPモニタリングの意義 より抜粋
In a randomized controlled trial in 3 trauma centers in Bolivia, test the effect on outcomes of management of severe TBI guided by information from ICP monitors vs. a standard empiric protocol.
Ongoing…??
2012.6.12勉強会 ICPモニタリングの意義 より抜粋
N Engl J Med 2012;367:2471-81.
Benchmark Evidence from South American Trials: Treatment of Intracranial Pressure (BEST:TRIP) trial
Introduction
目的
重症外傷性脳損傷患者に対するICPモニタリング
⇒医療アウトカムや患者結果を改善するか?
仮説①:
ICPモニタリングを使用した管理プロトコル
⇒死亡率を低下させる
6か月後の神経精神学および機能回復の改善
仮説②
合併症を減らしICU滞在を短縮させる
Methods Study Design:
• multicenter、RCT
ボリビア4施設、エクアドル2施設:
集中治療専門医
24時間体制のCTと脳神経外科対応
外傷患者の多い施設
• 圧測定群(ICP) vs 画像・臨床検査群(ICE)
Eligibility:
• 13歳以上
• 入院時,または受傷後48時間以内にGCS≦8(患者が挿管されている場合M1~5)となった症例
Inclusion and exclusion criteria
除外:GCS3で両側瞳
孔散大で生存不可能と考えられる症例
Methods
Group Assignments and Interventions: • GCS:3-5 or 挿管時M:1-2 vs. GCS:6-8 or 挿管時M:3-5 • 40歳以下vs. 40歳以上
• 人工換気,鎮静,鎮痛を含む標準的治療とCT(ベースライン時,48時間,5〜7日後)
• 非神経学的問題は、両群ともに積極的に管理
• 圧測定群(ICP):ガイドラインに従って,実質内モニターをできるだけ早く挿入し,ICP20mmHg未満を維持するように治療
• 画像・臨床検査群(ICE):頭蓋内圧亢進徴候に軽度の過換気(PCO2:30~
35mm Hg)と脳室ドレナージ⇒高用量バルビツール剤の投与⇒さらなる神経学的悪化や頭蓋内圧亢進には追加治療
Treatment Protocols - General
Guidelines for the Management of Severe Traumatic Brain Injury Patients:ICP Monitor Group
• Treatment Goals:
a. ICP ≤ 20 mmHg
b. Cerebral Perfusion Pressure (CPP) 50-70 mmHg
c. Arterial blood oxygen saturation (SaO2) > 90% or PaO2 > 60 mm Hg
• Initial Therapeutic Interventions:
a. 0.9% NaCl to obtain a CVP of 10-12 cmH2O
b. MAP > 70 mmHg
c. Maintain PaCO2 35-40 mmHg if CT is normal
Guidelines for the Management of Severe Traumatic Brain Injury Patients:ICP Monitor Group
• ICP Monitor with Elevated ICP Treatment algorithm:
5分以内に改善しないICP上昇はBasic treatment開始,20分以
内に反応なければSecond tier therapyへ
① Basic treatment
・可能であれば脳室ドレナージ
・筋弛緩薬
・ Mild hyperventilation (PaCO2 30-35 mmHg)
・ Hypotension, Hypovolemia, Hyponatremia
⇒ 0.25-1 gm/kg 20%Mannitol bolus(plasma osmolarity < 320なら追加)
・ plasma osmolarity > 360,tonicity > 380,serum sodium > 160
⇒ 5%NaCl solution 100ml volus(plasma osmolarity < 360
and serum sodium < 160で追加)
Guidelines for the Management of Severe Traumatic Brain Injury Patients:ICP Monitor Group
• 神経学的悪化時(Decrease in the motor GCS > 2,New loss of pupil reactivity, Interval development of pupil asymmetry of > 2mm,New focal motor deficit,Herniation syndrome)
・20%Mannitol bolus
・Maintain PaCO2 of 25-30 mmHg
⇒改善なければHigh dose IV barbiturates(Thiopental 2.5-4 mg/kg/hr IV continuous infusion for 3days),低血圧防止
② Second tier therapy
・外減圧術
・ High dose IV barbiturates(Thiopental 2.5-4 mg/kg/hr IV)
・ Hyperventilation(PaCO2 25-30 mmHg)
・低体温
Guidelines for the Management of Severe Traumatic Brain Injury Patients:Imaging and Clinical Exam (ICE) Group
Methods
primary outcome :21項目
•生存期間
• 命令応答時間
• 退院時Galveston Orientation and Amnesia Test [GOAT]
•3ヶ月後・6ヶ月後[GOAT]Extended Glasgow Outcome Scale [GOS-E] Disability Rating Scale[DRS]による機能状態と見当識の評価
•6カ月後のMMSEなどによる神経精神学的状態15項目
21項目の平均を0から100のスケールで計測
Methods secondary outcomes: • ICU滞在期間(ICU日数とICUで脳治療を受けた日数の合計)
• 全身合併症
• 入院期間
• 人工呼吸・高用量バルビツレート・減圧術・集中治療の日数
⇒治療の継続は、損傷から最後の脳治療への日数と定義
最後の脳治療後1日以上生存した患者のデータを分析
時間あたりの治療数を合計することによって,脳治療を統合
Methods
Methods
Statistical Analysis:
• N=324
GOS-Eで良好または中程度の障害を残した患者が10%増加;検出力 80%
• 半数が6ヶ月後に中間解析された
• Primary outcomeはthe blocked Wilcoxon test(有意水準0.05)で解析され,オッズ比と信頼区間も得た
• Coxモデルは生存率を分析、有意水準0.01は仮説②を検証するために使用
• 感度分析は脳治療を受けた後1日以上生存した対象に行われた
Result
・期間:2008年9月-2011年10月 ・528人の適格患者のうち、204(39%)は 割り付け前に除外 ・92%が6ヵ月間、または、死亡まで追跡 ・プロトコル除外例はわずかだった
Study Participants:
Result
・2つの治療群はすべてのベースライン特徴が類似 ・交通事件が損傷の主因 ・研究対象の45%が救急車で最初の病院
へ搬送され,そのほとんどは研究参加病院へ転送された
・最初の病院への到着までの時間の中央値は1.0時間,搬送時間2.7時間
・損傷から研究参加病院への到着までの時間の中央値は3.1時間
・記録がなく入院前の介入や初期の二次性病態(低酸素血症または血圧低下)に関する正確な情報を得ることができなかった
Result Clinical Outcomes:
primary outcomeは2群間に有意差は見られなかった
Result ・2群の14日死亡率は圧測定群21% 画像・臨床検査群30% (hazard ratio, 1.36; 95% confidence interval [CI], 0.87 to 2.11; P = 0.18),6ヵ月死亡率はそれぞれ39%と41% (hazard ratio, 1.10; 95% CI, 0.77 to 1.57; P = 0.60) ・性別,部位,CT所見,年齢にも差がなかった
Result Processes of Care:
・ICU入院期間,人工換気の日数 に差はなし ・神経学的悪化率は2群間に有意差なし(P=0.52)
・非神経性合併症も有意差はないが,圧測定群の褥瘡性潰瘍が高い(12% vs 5%; P = 0.03) ・ICP管理期間は圧測定群で3.6日,治療生存者全体で4.0日 ・ICP>20mm Hgは全患者の7人(20% )治療生存者で5人(13%) ・始めICP>20mm Hgは全患者の37%,圧測定群の29%,全患者の79%と圧測定群76%は常にICP>20mm Hg
・脳治療を受けた期間は画像・臨床検査群で長い(3.4日 vs 4.8日 P=0.002 )
Result
• 脳治療の総数は画像・臨床検査群に多かった(P<0.001)
• 高張性食塩水と過換気による治療は,画像・臨床検査群で有意に高く(72% vs 58%,P=0.008,73% vs 60%,P=0.003),マンニ
トール,高張性食塩水による治療期間も画像・臨床検査群で長かった(21 hours vs. 13 hours for mannitol, 21 hours vs. 10 hours for hypertonic saline)
• 高用量バルビツレート使用は圧測定群に多かった( 24% vs. 13%,P=0.02)
• 外減圧術数は両群に差がなかった(P=0.81)
Result Adverse Events:
有害事象は両群間で差がなかった
Discussion
• 結果は,重症外傷性脳損傷での神経学的検査とCTによる管理に対するICPモニタリングによる管理の有用性を支持しなかった
• ICP測定は重症外傷性脳損傷の治療の基本とされ,その信条は20mm Hg以下
⇒多くのnon randomized controlled trialsで20mmHgに保つ治療
を支持しガイドラインでの勧告につながったが,反対文献もあるGuidelines for the management of severe head injury - revision.J Neurotrauma 2000;17:457-62., Crit
Care Med 2005;33:2207-13., J Trauma 2008;64:335-40., J Neurosurg 1986;65:820-4.
Discussion
• CSFドレナージは一時的に上昇した脳圧を下げる手段として
有効であるが,重症外傷性脳損傷の転帰を改善することは示されていないNeurosurg Focus 2001;11(4):E1., Brain Inj 2010;24:706-21.
• 本研究においてICPの推移,CT所見と瞳孔反応は,重症度と相関していた
• 研究結果は重症外傷性脳損傷患者の短期または長期的な回復の改善にICPモニタリングによる治療の優位性を支持していない
⇒集学的モニタリングおよび重症外傷性脳損傷の標準的治療の一環としてのICPモニタリングの意味の再評価が必要と考える
Discussion
Limitation:
• 入院前の蘇生術はボリビアとエクアドルでは高収入国に比べて進んでおらず,重症患者は病院に到達するまでに死亡する可能性が高い
⇒本研究の患者は脳損傷が高収入国より重篤でない可能性があり,損傷の重症度を増加させるような二次性病態(低酸素血症や血圧低下)にも帰着するかもしれない
• 6か月死亡率では14日以降の死亡率が高く(35%),ICU退室
後のリハビリやさらなる医療資源の限界と関係しているかもしれない
Discussion
Limitation:
• モニタリングに基づく介入アルゴリズムを調べると,画像·臨
床検査群プロトコルの頭蓋内圧コントロールは優れている可能性があるJ Neurosurg 1986;65:820-4.
• ICP群プロトコールの有効性の欠如は,用いられる治療薬の毒性,ICPの閾値の使用などの他の要因に起因する可能性がある
• さらに外傷性脳障害の型の区別の欠如(治療が違ってくる),ICPを重症度としてより,治療の因子として考えていることなどが関係している
Editorial
治療中のICP管理は転帰を改善するというが,異論もある ①集中治療室(ICU)退室後の治療法が北米や欧州と違っている可能性
② ICP測定用実質内モニターはCSFドレナージの作用がない ③ICP測定は頭蓋内圧亢進によって引き起こされる早期の損傷を低減させるという点では異論はない
④治療開始のICP管理の閾値が20mmHgでは低すぎる可能性: 適度な脳外傷の患者は治療不要で,非常に高いICPとびまん性脳損傷の重傷を負った患者の転帰は不変?
Editorial
• 外減圧術の目的は頭蓋内の平均圧力を下げることだが,臨床では上部中脳,視床,網様体賦活系領域の部分的圧迫が関係し,その損傷は脳の全体圧ではなく機械的偏位が関係する
⇒ICPと脳幹圧迫とは,頭蓋内圧亢進の別の指標として見ることができる
• 昏迷,昏睡,瞳孔の拡大は脳幹圧迫を示すが,ICUでの鎮静などで神経学的所見が正確に評価できないときには,ICP測定は有効なアプローチのままである
• 将来的には脳幹の早期圧迫を検出する他の手段が見つかることが期待される
感想
• 今回の結果からは,ICPモニターの有用性は示されなかった。
• 十分な症状観察と迅速な画像診断が可能ならば,ICPは参考程度であり合併症も考慮すると不要かもしれない。