食育キャラクター「食まるファイブ」活用による食育推進 · 2010 年度...
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2010 年度 大学教育研究重点配分経費成果報告書
食育キャラクター「食まるファイブ」活用による食育推進
家政教育講座 西村敬子
Ⅰ.はじめに
様々な食の問題に対処するために平成 17年 6 月に食育基本法が公布され、国・地方自治体・
学校・家庭において食育が試みられてきた。そして、平成 18 年度から実施されていた第 1
次「食育推進基本計画」は平成 22 年度で終了を迎え、平成 23 年度より第 2 次の取り組み
が始まる。また平成 23 年 4 月より小学校において全面実施が始まる新学習指導要領におい
て食育を行うことが示されており、子どもたちが食育の実践者となることが期待されてい
る。今までの「食育という言葉の周知」から「食育を実践」していく時代に入ったと言え
よう。
2006 年に誕生した本学の食育キャラクター「食まるファイブ」は、2008 年度における愛
知県からの「学園で食育!モデル事業委託業務(事業名「食まるファイブ」と一緒にバラ
ンスのよい食生活をしよう!)の受託事業、2008~2009 年度における本大学教育重点配分
経費の採択による研究により、子どもたちの食生活の質の向上に寄与してきた。
そこで、今年度はさらに「バランスのよい食生活をしよう」とする子どもたちを増加さ
せ、一人でも多くの子どもたちが健康で生き生き暮らせるようにしたいと考えた。本研究
では、学外連携により「食まるファイブ」の認知度を上げることと、食まるファイブの活
用方法について検討し、以下の成果を得た。
Ⅱ.研究方法
1.学外連携による「食まるファイブ」の活用
(1)ランチョンマットの販売
2009 年度に食まるファイブが印刷されたランチョンマット 2600 枚を、小・中学校の関
係者や児童・生徒をはじめ多くの人に販売した。
(2)「食まる弁当」の販売
卵製品の製造・販売を行っているクレフォートグループ㈱、イオンリテール及びミニス
トップと連携し、「食まるファイブ」を用いた弁当を作製・販売をすることとした。「食ま
るファイブ」全員がそろったバランスのよい弁当を製造・販売することで、子どもから大人
まで食事バランスの重要性について考えるきっかけを作りたいと考えた。
(3)食育劇の上演
本学西村研究室の学生による食育劇を岡崎市立秦梨小学校、及び桑名市立在良小学校に
おいて行った。さらに「愛知県緊急雇用創出基金事業」として、子どもたちにバランスよ
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く食べることの大切さを伝えるために、食育劇「食まるファイブ-メタボ軍をやっつけろ
-」が平成 22 年 9 月 2 日(木)から 10 月 30 日(土)まで、愛知県内の小学校 60 校(名
古屋 1校、尾張 24 校、西三河 20 校、東三河 15 校)で上演された。
上演時間は 20 分程度、登場人物は 10 名(食まるファイブ-りきまる・ベジまる・にく
まる・フルーツまる・ほねまる、メタボ大魔王、メタボ将軍-肥満将軍・糖尿病将軍・高
血圧将軍・コレステロール将軍)である。
劇のあらすじは以下の通りである。
食まるファイブが『バランスよく食べることの大切さ』を伝えるために学校へやって来て、子どもたちに自己紹介をしていま
す。そこへ、メタボ大魔王とメタボ将軍たちが、子どもたちの体をメタボリックシンドロームにしようと狙ってやってきました。食
まるファイブは、メタボ将軍をやっつけようと攻撃しますが、なかなか力が出ません。
それは、なぜかを考えると・・・・・。
(4)「食まるポロシャツ」による食育PR
様々な活動の努力により小学校等における食まるファイブの認知度が上がっており、子
どもたちの給食残食率の減少や偏食の改善に役立っている。しかし、本学学生の認知度は、
まだ十分とはいえない。そこで本学事務職員の協力を得て、省エネに関連した執務室の軽
装励行期間に合わせ、食まるポロシャツの着用による本学学生への認知度をさらに上げる
取り組みを行った。
(5)ポスター等の配布
資料 1 に示す「食まるファイブ」と「食事バランスガイド」のポスター、及び「食まる
ファイブ」画像の CD を作製して研究協力校等に配布し、子どもたちへの食育啓発を行っ
た。このポスターは「食事バランスガイド」をよりわかりやすくするため、食事バランス
ガイドの5つのエリアに、食ま
るファイブの5人がそれぞれの
属するエリアに描かれている。 資料 1
そのため、食まるファイブと ポスター
食事バランスガイドの関連性
が一目でわかり、子どもたち
にとって食事バランスガイド
がより身近で興味の持ちやす
いものとなる。
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2.「食まるファイブ」活用マニュアルの作成
「食まるファイブ」を活用することで、子どもの食に対する意識の高まりや、学びに対
する意欲の向上が感じられ、子どもたちの反響はとても高かった。しかし、一方で活動が
単発的に終わってしまい、意識の定着・望ましい食行動の習慣化にまで結び付けることは
難しかった。子どもたちが食まるファイブを活用した食育活動の中で身に付けたものを、
自身の食事や生活に結び付けて定着させ、習慣にしていけるような活動が必要であると考
え、「食まるファイブ」を活用した食育のマニュアルを作成した。
Ⅱ.結果及び考察
1.ランチョンマットの販売
食育関係者からの要望のあった、2009 年度に食まるファイブが印刷されたランチョンマ
ット 2600 枚は、小・中学校の関係者や児童生徒をはじめ多くの人に好評で、完売した。「食
まるランチョンマット作り」は子どもたちにとってキャラクターが印刷されているので大
変好評であった。家庭科において手縫いやミシン縫いの基礎を学ぶだけでなく、ランチョ
ンマットに食まる達が印刷されているので、子どもたちは和食の配膳方法を学ぶことがで
きた。また、刈谷市アクアモールにおいて親子でランチョンマット作りを行った。このラ
ンチョンマットは縫製の基礎を学ぶだけでなく、食文化の学びに有効であると高い評価を
得た。
食まるランチョンマット ランチョンマットの活用 ランチョンマット
(於:刈谷アクアモール)
2.「食まる弁当」の販売
卵製品の製造・販売を行っているクレフォートグループ㈱,及びイオンリテール,ミニ
ストップと連携し,「食まるファイブ」を用いた弁当を作成・販売することとした。「食ま
るファイブ」全員がそろったバランスの良い弁当を作成・販売することで,弁当を手に取
れば,大人から子どもまですべての人が食事バランスの重要性について考えられるきっか
けをつくりたいと考えた。また,家庭でも作れるような簡単でしかもおいしい料理を提供
することで,家庭で食についての会話をするきっかけになってほしいと考えた。
弁当のメニューは以下の通りである。
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「食まるファイブバランス弁当」
「しょくまる 5 バランス弁当」
「しょくまる5 おにぎりセット」
「しょくまる5 おにぎりセット」
「食まるファイブおにぎり弁当」
・食まるファイブに見立てたおにぎり:青菜,のりたまご,鮭フレーク,ごま塩,ゆかり)
イオンリテール、ミニストップにおいて「しょくまる 5 バランス弁当」と「しょくまる
5 おにぎりセット」を販売した。当初 6 月から 7 月まで 35,000 食の販売予定であったが、
好評であったため、8 月 30 日まで販売が延長され 70,000 食以上が販売された。これを食べ
た人から「おいしかったし、栄養も考えられていてよかった。」、「野菜がたくさんたべられ
てよい。」、「彩が豊かだった。」という感想が得られた。
中日新聞(朝刊) 2010.6.15
この弁当販売は新聞やテレビなど、多くのメデイアに取り上げられ、「食まる」をアピー
ルすることが出来た。
この市販された弁当をもとに、刈谷市立日高小学校では同じ弁当を作る「親子料理教室」
が開かれた。
弁当作り 食まる弁当-日高バージョン-
・ご飯(ふりかけ:たまご若菜,鮭フレーク,じゃこ,ゆかり)
・ナスピザ(枝豆入り)
・小松菜の胡麻和え
・鶏のなべ照り
・ミートボール
・たまご焼き
・切干大根の煮物
・ポテトサラダ(ドライリンゴ入り)
・ゆで野菜(にんじん:コンソメ,キャベツ:麺つゆ
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また蒲郡東小学校では 6 年生の児童がこの弁当にどの食まるが入っているか検討し、そ
の後家庭科の授業において、「食まる弁当ー蒲郡東部小学校バージョンー」を作った。
食まる弁当ー蒲郡東部小学校バージョンー
子どもたちは地域の名産である「めひかり」や「みかん」等を使い、食まる 5 人の揃っ
たバランスのよい弁当を作製していた。
3.食育劇の上演
本学学生による「食まる」の劇の上演も行ったが、前年度に引き続き本年度も愛知県
緊急雇用創出基金事業としての食育劇が、豊田市立東保見小学校をはじめ、平成 22 年 9
月 2 日から 10 月 30 日まで小学校 60 校で上演された。この劇は、子どもたちに大変好評
で、バランスよく食べることの重要性が認識されたことが、日常会話の中に、食まるの
話題が頻繁に登場しているという報告から分かる。
4.「食まるポロシャツ」による食育PR
小学校等に「食まるファイブ」を紹介してきたため、子どもたちの「食まる認知度」は
上り、子どもたちの給食残食率の減少や偏食の改善に役立ってきた。しかし本学学生の「食
まる認知度」はまだ十分とは言えない。そこで、本学事務官の協力を得て、食まるポロシ
ャツの着用による本学学生への認知度をさらに上げる取り組みを行ったところ、食まるの
認知度が上り、「食まると一緒に食育に取り込みたい」と言う学生が増加した。
「食まるポロシャツ」による食育 PR
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5.ポスター、CD の配布
「食まるファイブ」と「食事バランスガイド」のポスター、及び「食まるファイブ」画
像の CD を作製して研究協力校等に配布し、子どもたちへの食育啓発を行った。
桑名市役所
本学教務課におけるポスターの掲示
今までの、手袋のスタイルの「食まるファイブ」はその仲間が何であるか分かりにくか
った。そこで、それぞれの食まるの頭上にそれぞれの仲間の食品を乗せ、アピールしたと
ころ、初めて食まるに接した子どもたちでも、それぞれの料理の特徴を掴むことが出来た。
3 代目
食まる
バランス
食まる
6.「食まるファイブを取り入れた食育実践の手引き」の作成
小学校において食育を行う際に「食まるファイブ」を活用するためのマニュアルを作成
した。
食生活は、食習慣のみを考えればよいものではなく、生活習慣とも密接に関わっている。
健康に暮らすためには栄養のバランスよく食べるだけではなく、水分の補給・運動が必要
である。また、動物や植物の命をいただくことへの感謝の気持ち、食事を作ってくれる人
への感謝の気持ちを持つことや、共に食べることによる豊かな心の涵養が必要である。そ
こで、食まるの 5 つとこれらの 3 つを合わせて「食まるエイトミッション」とし、日高小
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学校養護教諭杉浦文子氏と共に、刈谷市立日高小学校において食育実践を行った。この「食
まるエイトミッション」を用いて自己チェッをすることで、生活バランスを整えながらも
食生活を考えることができる指導方法について検討した。その結果を踏まえ、授業案等を
作成した。
日高小学校において食まるファイブと共にバランスのよい食生活について学んできた子
どもたち(児童保健委員)は、食まるカレンダーを作製し、地域の保育園等に配布してい
る。
児童が作製したカレンダー
Ⅴ.まとめ
これらの取り組みにより、食まるファイブの知名度が上がり、特に子どもたちが食まる
ファイブと共にバランスのよい食生活をしようとする姿が見られた。知立市の食育推進計
画や刈谷市の食育推進計画に食まるファイブの取り組みが掲載され、食まると共に食育推
進に取り組もうという提案がされている。「食まるファイブ」は愛知県農政局食育推進課や
食生活改善推進員、養護教諭の助力を得て、今後さらに活躍の場が広がり、子どもたちが
健康になるための役に立つと考えられる。
食育で取り扱う分野は「食と健康」、「食と心」、「食と文化」、「食と環境」と多岐にわた
り、これらをトータルで捉えていく必要がある。今後は、食まるファイブの認知度を上げ
るとともに、食料自給率などの経済の分野にも着目し、キャラクターを活用した有効な食
育指導方法を開発する必要があると考える。
以上