道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担...道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担...

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担 ―都道府県管理の道路を対象とした推計― *1 赤井 伸郎 *2 竹本 亨 *3 要  約 今後の人口減少によって地方財政が厳しさを増す中で,寿命を迎えた社会インフラの更 新費は拡大することが予想されており,その影響を分析する必要がある。本稿では,都道 府県が管理する道路ストックを管理者別の超長期の投資データから推計し,2040 年度ま での必要な更新費を推計した。その結果,新規投資を抑制しない場合には 2040 年度の更 新費は現在の 2.6 倍となり,更新だけで 2012 年度の財政支出を超えることがわかった。 そこで,将来の財政支出を現在の水準に抑制すると,2040年度には約半数の自治体で 100% の更新が不可能となる一方で,残り半数は新規投資も可能という格差が生じた。こ れを改善するためには,インフラの長寿命化が効果的であることがわかった。しかし,こ れらの分析は人口減少を考慮していない。人口減少に対応した推計を行ったところ,長寿 命化を行っても効果は限定的であり,コンパクトシティーに代表される都市構造の変革を 伴った集約化を通じてインフラ総量を節減することも必要である。 キーワード:道路インフラ,更新費,人口減少 JEL Classification:H54, H72, R4, R5 Ⅰ.はじめに 今後,人口減少や高齢化が進み,地方財政は ますます厳しくなることが予想されている。そ の一方で,道路等のインフラが寿命を迎え,そ の更新のために必要な費用は拡大する可能性が ある。そこで,インフラの更新が将来の地方財 政に与える影響を検討するために,まずはその 更新費用を正確に把握する必要がある。特に, 道路は日本経済を支えるもっとも重要なインフ ラの一つである。しかし,道路法に「更新」と いう用語もなく,道路統計年報にも過去の更新 費用のみを抽出した値は存在しない。さらに, 道路は国・都道府県・市町村と複数の政府が管 理を行っており,財源も地方の自主財源に加え て国庫支出金や地方交付税でまかなわれてい * 1 総務省自治財政局から様々な情報・アドバイスを頂いた。ここに記して感謝したい。 * 2 大阪大学大学院国際公共政策研究科教授 * 3 帝塚山大学経済学部准教授 - 113 - 〈財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 27 年第4号(通巻第 124 号)2015 年 10 月〉

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担 ―都道府県管理の道路を対象とした推計―*1

赤井 伸郎*2

竹本 亨*3

要  約 今後の人口減少によって地方財政が厳しさを増す中で,寿命を迎えた社会インフラの更新費は拡大することが予想されており,その影響を分析する必要がある。本稿では,都道府県が管理する道路ストックを管理者別の超長期の投資データから推計し,2040 年度までの必要な更新費を推計した。その結果,新規投資を抑制しない場合には 2040 年度の更新費は現在の 2.6 倍となり,更新だけで 2012 年度の財政支出を超えることがわかった。そこで,将来の財政支出を現在の水準に抑制すると,2040 年度には約半数の自治体で100% の更新が不可能となる一方で,残り半数は新規投資も可能という格差が生じた。これを改善するためには,インフラの長寿命化が効果的であることがわかった。しかし,これらの分析は人口減少を考慮していない。人口減少に対応した推計を行ったところ,長寿命化を行っても効果は限定的であり,コンパクトシティーに代表される都市構造の変革を伴った集約化を通じてインフラ総量を節減することも必要である。

 キーワード:道路インフラ,更新費,人口減少 JEL Classification:H54, H72, R4, R5

Ⅰ.はじめに

今後,人口減少や高齢化が進み,地方財政はますます厳しくなることが予想されている。その一方で,道路等のインフラが寿命を迎え,その更新のために必要な費用は拡大する可能性がある。そこで,インフラの更新が将来の地方財政に与える影響を検討するために,まずはその更新費用を正確に把握する必要がある。特に,

道路は日本経済を支えるもっとも重要なインフラの一つである。しかし,道路法に「更新」という用語もなく,道路統計年報にも過去の更新費用のみを抽出した値は存在しない。さらに,道路は国・都道府県・市町村と複数の政府が管理を行っており,財源も地方の自主財源に加えて国庫支出金や地方交付税でまかなわれてい

* 1 総務省自治財政局から様々な情報・アドバイスを頂いた。ここに記して感謝したい。* 2 大阪大学大学院国際公共政策研究科教授* 3 帝塚山大学経済学部准教授

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〈財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 27 年第4号(通巻第 124 号)2015 年 10 月〉

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る。したがって,これらの複雑な制度を紐解き,自治体別に将来の更新費用を推計することは有意義であると考える。 本稿では,都道府県が管理する道路への過去の投資データから毎年の除却額を推計し,自治体別の粗資本ストック(以下では,これを道路ストックと呼ぶ)と将来の負担額を推計する。推計した除却額は,その年に経年や災害によって更新が必要となる道路ストックのことであるから,これを必要更新費と定義する。上述のように更新費に関するデータは存在しないため,過去の更新費についてもこのようにして推計する必要がある。そして,複数のシナリオ,例えば現在の新規投資の水準を維持するなど,のもとでの将来の必要更新費について推計し,2040年度までの新規投資抑制の効果やインフラの長寿命化の効果を都道府県別に分析する。現実には財政が厳しいために必要な更新が先延ばしされているケースや個々の事情で特別に長持ちしているケースもあるかもしれないが,できるだけ恣意性を排除し統一的な基準で将来の財政負担を保守的に見積もり,自治体間の比較を行うことが本稿の目的である。なお,対象とする道路は,都道府県が管理する一般国道(指定区間外)と都道府県道である1)。 道路ストックを推計した先行研究(内閣府政策統括官(2012)や中東(2012)など)に加え,全国の道路を対象にした将来の更新費や維持費を分析した研究(国土交通省(2010)や樺(2012)2),西村・宮崎(2012)など)や特定の自治体が管理する道路を対象にした研究(長野・南(2003)や総務省自治財政局財政調査課(2012)など)は存在する。しかし,全国の都道府県が管理する道路を対象に管理者別に分析

した研究はない3)。財政運営は自治体別になされるため,管理者別の推計が必要となろう。 管理者別に推計する場合に問題となるのは,管理者別の投資額が容易には入手できない点である。内閣府政策統括官(2012)では都道府県別の投資額を利用しているが,これは各都道府県に所在する全道路4),つまり一般国道から市町村道までの道路に対する投資額である。このように推計したストックを道路面積や実延長で按分することで,管理者別の道路ストックを推計するという方法5)もあるが,その場合には面積当たり等のコストが道路種別に関して一定であると仮定していることになる。しかしながら,多くの場合には国道は設備も立派であるため,この仮定は都道府県の道路ストックを過大に推計してしまう可能性が高い。 道路統計年報には,都道府県および政令指定都市(以下では,政令市と略す)毎の道路種別の事業費が掲載されている。また,一般国道(指定区間外)および都道府県道は都道府県または政令市のみが管理者であるため,この二つの道路については掲載されたデータは実質的に管理者別のデータと言える。そこで,本稿では都道府県が管理する道路ストックに限定して分析を行った。具体的には,道路統計年報のデータから一般国道(指定区間外)と都道府県道に対する投資額を抽出して,PI 法(Perpetual Inventory Method,恒久棚卸法)で各都道府県が管理する道路ストックを推計した。これが本稿の一つ目の主要な貢献である。その際に,詳細なデータを利用して内閣府政策統括官(2012)の問題点をいくつか改善し,より精緻な推計が可能となった。 本稿の二つ目の主要な貢献は,2040 年まで

1)有料道路は料金収入で管理されており,基本的には一般会計に影響を及ぼさないので除外する。2)樺(2012)は都道府県別に推計しているが,それは地理的な意味であって市町村など他の政府が管理する

道路も含んでおり,管理者別ではない。3)市町村が管理する道路を対象に管理者別に分析した研究としては,赤井・竹本・上村(2013)がある。4)本稿は,都道府県が「管理する」道路の推計を行っている。しかし,国などが管理する道路も各県には存

在する。これら他の政府が管理する道路も含めた全体を指す場合には,「所在する」道路と表現する。5)この方法で市町村について推計した研究に赤井・竹本・上村(2013)がある。

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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の必要更新費を推計した点である。新規投資を続けた場合や抑制した場合,インフラを長寿命化させた場合など複数のシナリオに基づき将来の必要更新費を推計し,各都道府県が現在の道路ストックの水準を維持できるか分析した。さらに,国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口を利用し,人口減少を加味した場合の各自治体の財政負担力を考慮した分析を行った。 本稿は以下のように構成される。まずⅡ節で

道路事業費とストックの関係,Ⅲ節で道路管理者とその負担について概観する。次に,Ⅳ節で推計方法を説明する。そして,Ⅴ節でこれまでの投資額と道路ストックの推移,Ⅵ節で新規投資抑制の効果と都道府県別の将来の状況についての分析,Ⅶ節で人口減少を考慮した分析,Ⅷ節でインフラの長寿命化の効果に関する分析を示す。最後にⅨ節で本稿の結果をまとめる。

Ⅱ.道路事業費とストックの関係

Ⅱ- 1.道路事業費の分類 道路管理者が行う道路法上の管理行為には,道路の新設,改築6),維持,修繕,災害復旧その他の管理がある(図 1 の左)。 国土交通省の「国道(国管理)の維持管理等に関する検討会」では,道路の維持管理に関する用語を次のように定義している。まず,道路管理者が行うすべての道路法上の管理行為(道

路の新設,改築,維持,修繕,災害復旧その他の管理)を「管理」と定義している。次に,管理のうち維持と修繕を次のように定義している。

 維持: 道路の機能及び構造の保持を目的とする日常的な行為(巡回,清掃,除草,剪定,除雪,舗装のパッチング等)7)。

 修繕: 道路の損傷した構造を当初の状態に回

図 1 道路管理者が行う管理行為

(出所) 筆者作成

6)拡幅や橋梁架替等によって既設の道路の機能を向上させる行為。改良と呼ばれることもある。7)維持と修繕を合わせた「維持修繕」や「維持補修」という用語や,さらに災害復旧その他の管理行為を合

わせた「維持管理」という用語が使われることもある。

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復させる行為や付加的に必要な機能及び構造の強化を目的とする行為(橋梁,トンネル,舗装等の劣化・損傷部分の補修,耐震補強,法面補強,防雪対策等)8)。

 また,一般には「更新」という用語も頻繁に使われるが,道路法上には存在しない用語である。「今後の社会資本の維持管理・更新のあり方について(答申)」では,「更新費」について,「老朽化等に伴い機能が低下した施設等を取り替え,同程度の機能に再整備することなどに要する費用。(原則として耐震基準の改正等への対応に伴う機能向上は含む。)」としている。そこで,「更新」を以下のように定義する。

 更新: 老朽化等に伴い機能が低下した施設等を取り替え,同程度の機能に再整備する等の行為。具体的な工事の態様により,改築と修繕のいずれかに該当する。

 ただし,「改築」のすべてが「更新」に含まれるわけではない。改築の中には,老朽化していなくても増加した交通量に対応するために行われる場合もある。そこで,本稿ではそのような改築に新設を加えた投資を「新規投資」と呼ぶことにする。つまり,維持以外の管理による財政支出を投資とし,更新と災害復旧以外の投資を新規投資と定義する。よって,本稿は道路の管理を新規投資と更新,維持,災害復旧の四つに分類する(図 1 の右)。Ⅵ節以降では,この分類に従って分析を行う。なお,データ(道路統計年報)を使用する際には,更新費を抽出できないため,新設・改築と修繕,災害復旧という分類を使用する(Ⅱ-2,3節を参照)。 最後に,維持と更新について将来の負担という点から違いを述べる。まず,維持は巡回や清掃といった日常的な費用で,ストック水準に依存している。そのため,ストックが急激に増加

しない限りは,その費用は大きくは増加しない。一方で,更新は,ストック水準だけでなくその年齢構成によっても必要額は大きく異なる。例えば,ストックのうちの多くが最近投資されたもので,その年齢が若ければ更新の必要も小さい。それに対して,経年化が進み耐用年数を過ぎたものが多いと多額の更新費が発生するようになる。さらに,過去に多額の新規投資をしてしまうと,仮に途中から新規投資を抑制したとしてもいずれ更新のための莫大な財政支出が必要となる。そのため,道路の管理者からすると,維持とは異なり,更新は将来の “隠れた” 財政負担となっており,これを明らかにするのが本稿の貢献である。

Ⅱ- 2.ストックを増加させる要因 前小節で説明した用語のうち,新設と改築,修繕(または新規投資と更新),災害復旧が,道路ストックを増加させる要因となる。維持は道路ストックを保持するために必要であるが,道路ストックそのものを増加させるわけではない。また,内閣府政策統括官(2012)および本稿における(新規投資と更新を除く)これらの用語とデータ(道路統計年報)の関係を整理すると,図 2 のようになる。 内閣府政策統括官(2012)では,新設・改築,維持,修繕,災害復旧と道路統計年報の費目を以下のように対応させている。

 新設・改築=>  道路統計年報の建設的経費から用地補償費を除いた額

 維持=>     道路統計年報の維持的経費のうちの地方単独事業費

 修繕=>     道路統計年報の維持的経費のうちの直轄事業費と国庫補助事業費

 災害復旧=>  災害復旧費

 本稿では,これらを以下のように修正して対

8)災害復旧に含まれるものは除く。補修と呼ばれることもある。

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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応させた(詳細はⅣ- 3 節を参照)。

 新設・改築=>  道路統計年報の建設的経費から用地補償費を除いた額

 維持=>     道路統計年報の維持的経費のうちの工種別内訳の「維持」

 修繕=>     道路統計年報の維持的経費のうちの上記以外

 災害復旧=>   災害復旧費から用地補償費を除いた額

Ⅱ-3.ストックを減少させる要因 道路ストックを減少させる要因としては,経年によるものと災害によるものの二つがある。まず,経年によるものを見ていく。内閣府政策統括官(2012)では,経年による道路ストックの減少が図 3 のように釣鐘型の残存関数に従って進むと仮定している。この釣鐘型の残存関数は,「資産の使用開始後徐々に除却が大きくなり,耐用年数付近でピークに達し,耐用年数経

過後は徐々に小さくなるとする考え方」(内閣府政策統括官(2012))に基づいている。本稿も内閣府政策統括官(2012)と同じ釣鐘型の残存関数を採用する。 そして,内閣府政策統括官(2012)では『減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40 年 3 月 31 日大蔵省令第 15 号)』による耐用年数を用いて,道路本体と橋りょう,舗装の耐用年数をそれぞれ 60 年,52.5 年,10 年と設定している。ただし,道路本体と橋りょう,舗装を区別せずにまとめて推計しているため,これら三つの耐用年数をそれぞれに対する投資額により加重平均して算出した 50 年を平均耐用年数として使用している。それに対して,本稿では道路本体と橋りょう,舗装の三つに分けて道路ストックを推計しており,平均値の 50 年ではなく,それぞれの耐用年数を平均耐用年数として使用した,つまり,道路本体は 60 年,橋りょうは 52.5 年,舗装は 10 年である。 次に,災害によるものを見ていく。内閣府政策統括官(2012)では,「災害によりすべての

図 2 用語とデータ(道路統計年報)の対応関係

(出所) 筆者作成

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〈財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 27 年第4号(通巻第 124 号)2015 年 10 月〉

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年代のストックが被災し,その際,どの年代のストックも同じ程度被害を受ける(=同じ確率で除却される)と仮定」している。例えば,2010 年度に 2008 年度と 2009 年度に投資された道路ストックのみがそれぞれ 100 億円と 200

億円分残存していた場合に,30 億円分の道路ストックが災害によって減少したとする。その場合には,両年度に投資された道路ストックの災害による減少額はそれぞれ 10 億円と 20 億円となる。

Ⅲ.管理と負担

Ⅲ- 1.道路管理者と負担 すべての道路法上の道路は,高速自動車国道と一般国道,都道府県道,市町村道の 4 種類に分類できる9)。それぞれの実延長等や管理者とその直接負担割合をまとめたものが表 1 である。 一般国道は,指定区間(直轄国道とも通称される)と指定区間外(補助国道とも通称される)に区別され,前者の道路管理者は国土交通大臣,後者のそれは都道府県または政令市というように管理者が異なる。さらに,都道府県道も政令市に所在する部分の道路管理者は政令市で,そ

れ以外は都道府県というように管理者が異なっている。

Ⅲ- 2.道路事業費と(負担平準化としての)地方交付税交付金

 本稿では,道路管理者(都道府県)別に将来の必要更新費を推計するが,最終的な負担がどのように帰着するのかは重要であろう。なぜならば、自治体間の必要更新費に差が生じても,国からの補助金によって地方自治体の実質負担には差が生じないかもしれないからである。そ

9)これ以外に,道路法によらない道路として,道路運送法による一般自動車道(伊豆スカイラインなど 28 事業者による 33 路線,合計 323.3km),森林組合法による林道,自然公園法による公園道,漁港法による漁港道がある(詳細は,長野・南(2003)などを参照)。

図 3 経年による残存道路ストック(ワイブル分布)

(出所) 内閣府政策統括官(2012)を参考にして筆者作成

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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こで,国と地方間の財政関係を整理しておく。道路関係のような地方自治体にとって必要な歳出に関しては,国によって財源保障がなされている。すなわち,地方自治体において適切な財政運営を行うための財源を国が保障する仕組みが存在している。具体的には,地方自治体が直接徴収する地方税以外の主要な財源として,各省庁からの補助金である国庫支出金(使途を特定して地方自治体に交付される補助金の総称で,国庫負担金・国庫補助金・国庫委託金からなる)と地方交付税交付金(以下,地方交付税と略す)がある。将来における地方自治体の実質負担としての道路事業費を考える上で,国庫支出金や地方交付税の動きは重要である。国庫支出金は,プロジェクトベースで配分されるため透明性があるが,地方交付税は原則として一般財源であり,その中身を確認しておくことが将来の実質負担を考える上で欠かせない。 地方交付税のうち普通交付税の交付額は,各

自治体で計算される基準財政需要額と基準財政収入額との差額を基準として決定される。基準財政収入額は,地方税収等の独自財源から計算されるもので道路政策とは独立である。一方で,基準財政需要額は,道路インフラに関わるコストを含む財政需要全体を計算したものである。以下では,基準財政需要額において道路インフラに関わるコスト(財政需要)がどの様に計算されているのかを確認する。道路橋りょう費は,以下の算式で計算されている。

 基準財政需要額における道路橋りょう費  =測定単位×単位費用×補正係数

 この算定は,道路維持費と道路改良費(一般道路改築費)に分けて行われる。これまでの定義との対応としては,道路維持費が維持と修繕に,道路改良費(一般道路改築費)が新設と改築に対応すると考えられる。

表 1 道路管理者とその負担

一般国道(指定区間)

一般国道(指定区間外)

都道府県道 市町村道

実延長 23,517km 31,915km 129,375km 1,023,962km

面積10) 376km2 361km2 1,260km2 5,369km2

管理者

新設・改築 国交大臣国交大臣(実質的には,都道府県,政令市)11)

都道府県,政令市

市町村

維持 ・ 修繕・災害復旧

国交大臣都道府県,政令市12)

都道府県,政令市

市町村

管理者の直接負担割合

新設・改築 2/3 1/2 1/2 以上 1/2 以上

修繕 全額 1/2 以上 1/2 1/2

維持 全額 全額 全額 全額

(出所)『道路統計年報 2014』の掲載データより筆者作成

10)道路部の面積。11)工事の規模が小さい場合やその他政令で定める特別の事情により都道府県がその工事を施行することが適

当であると認められる場合については,都道府県(政令市)が工事を行うこととされている。さらに,当分の間,一般国道の新設や改築について都道府県(政令市)が行うこととすることができるとされており,実態は,都道府県(政令市)が新設や改築を実施している。

12)工事が高度の技術を要する場合,高度の機械力を使用して実施することが適当であると認める場合又は都道府県の区域の境界に係る場合においては,国土交通大臣が自らこれを行うことができるとされている。

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〈財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 27 年第4号(通巻第 124 号)2015 年 10 月〉

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 まず,道路維持費について説明する。測定単位は,道路の面積である。この面積には,都道府県が管理を行っている一般国道(指定区間外)も含まれる。単位費用は,標準団体の一般財源所要額から算定されている。具体的には,モデルとなる団体(標準団体)を想定し,これまでの実額をベースにして,その団体においてコストがどのくらいかかるのかを算定する。この想定額から国庫支出金相当額を減額し,標準団体の測定単位で除して単位費用を算出する。補正係数は,各種の要素によって単位費用に差異のある点を補足する係数である。道路橋りょう費(測定単位:道路の面積)における補正は,交通量に応じた補正(密度補正(県),種別補正

(市)),交通安全施設の維持管理に係る補正(普通態容補正(県)),行政質量等に係る補正(普通態容補正(市)),寒冷補正(県,市)である。そして,これら単位費用と補正係数に,各都道府県の測定単位を掛け合わせた額がそれぞれの基準財政需要額となる。なお,一般国道(指定区間外)と都道府県道は合体して算定されており,「一般国道(指定区間外)と都道府県道について,少なくとも道路維持費の負担に関する限りは違いがない」と解釈できる。 次に,道路改良費(一般道路改築費)について説明する。測定単位は,道路の延長である。指定区間も含めた一般国道と都道府県道のすべてのコストについて標準団体をベースに算定する。これは,指定区間における直轄負担金もコストに含めて計算していることになる。ただし,新設や改築など投資を伴うものは,起債により,年度を超えて負担額を平準化する措置が取られる。そのため,標準団体における起債の償還額(地方債元利償還金相当額)も算定して標準団体の一般財源所要額に加えられる。そして,道

路維持費と同様に,総額から国庫支出金を減額し,標準団体の測定単位で除して単位費用を算出する。道路橋りょう費(測定単位:道路の延長)における補正は,行政組織間の経費の補正(普通態容補正(市)),道路延長・整備比率・交通事故比率の補正(投資補正(市)),未整備延長比率・人口・面積の補正(投資態容補正(県)),寒冷補正(県,市)である。これら単位費用と補正係数に各都道府県の測定単位を掛け合わせた額がそれぞれの基準財政需要額となる。この方式は,標準的な事業費を算定するという意味で,標準事業費方式と呼ばれる。 このように,事業費の算定には標準事業費方式が取られているため,実際の更新(改築・修繕)における老朽化の度合いによるコスト差は,地方交付税の算定において十分に考慮されていない13)。これまでは,老朽化に直面する道路は少なく,老朽化が深刻な財政負担をもたらす要因として捉えられてこなかった経緯があると思われる。したがって,本稿で推計する新規投資額および更新費で生じた自治体間の差は,そのまま自治体間の実質負担の差となる可能性があることに注意すべきである。

13)この標準事業費方式では十分に捉えきれない事業費に関しては,事業費補正と呼ばれる方式で,実額を算定する方法も採られてきた。事業費補正方式では,更新を含めて実施された事業を対象にして交付税措置されるため,自治体の道路ストックの年齢構成や財政力の差を調整する機能も備えている。ただし,現在は大部分が標準事業費方式に移行しており,事業費補正方式は縮減されてきている。道路についても 2010 年度から地方単独事業への事業費補正そのものが廃止された。詳細は以下を参照。http://www.soumu.go.jp/main_content/000030013.pdf

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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Ⅳ.推計方法

Ⅳ-1.道路ストックの推計方法 本小節では,各都道府県が管理する道路ストックの推計方法を説明する。この方法は内閣府政策統括官(2012)における推計方法を修正したもので,PI 法を採用している。PI 法は投資額の積み上げに基づく手法で,「再調達価額を毎年度積み上げるとともに,耐用年数を経る等その機能を果たさなくなった資産については除却・償却することにより,資本ストックを推計する方法」(内閣府政策統括官(2012))である。 まず,投資は新設・改築に修繕を合わせたものと災害復旧に大別できる。都道府県 k が管理する道路に s 年度に投資された前者の名目投資額を 2005 年基準のデフレーター(補論 1 を参照)で実質化したものを xs

k,後者の名目投資額を同様に実質化したものを ys

k と表す。 次に,除却は経年によるもの(以下では,通常除却と呼ぶ)と災害によるもの(以下では,災害除却と呼ぶ)がある。各年の災害除却額は,その年の災害復旧費と等しいと仮定する。通常除却額は除却関数 fh(h は投資からの経過年)

を仮定して推計する。本稿では,以下のワイブル分布による除却関数を用いる。

  

  [m=4, η: 平均耐用年数での累積除去率が 0.5 となるように設定14)]

 除却関数を使用した推計方法について,表 2を例にして説明する。t 年度に投資された道路ストック xt

k+ytk は,t+1 年度に(xt

k+ytk)×f1,t

+2 年度に(xtk+yt

k)× f2 だけ除却される。ただし,t+2 年度には t+1 年度に投資された道路ストックも存在するため,その分の除却(xk

t+1+ykt+1)×f1

も発生する。そのため,t+2 年度の(災害除却を考慮しない)通常除却額は          となる。 この様にして,前年までに投資された道路ストックについて,それぞれの除却額を計算し,それらを合計してその年の通常除却額を算出する。ただし,表 2 の通常除却額の計算例は,災害除却によるストックの減少を考慮していない。例えば,投資の 80 年後でも累積除却率は

fh = ( ) e- m h m-1 m

η η( )h

η

dkt+2=∑s=t(xks+yks)×ft+2-st+1̂

表 2 (災害除却を考慮しない)通常除却額の計算例

t+1 年度 t+2 年度 t+3 年度

t 年度に投資t+1 年度に投資t+2 年度に投資t+3 年度に投資

(xtk+yt

k)× f10

(xtk+yt

k)× f2(xk

t+1+ykt+1)×f1

0

(xtk+yt

k)× f3(xk

t+1+ykt+1)×f2

(xkt+2+yk

t+2)×f10

通常除却額 d̂tk+1=(xk

t+ykt)×f1

(出所) 筆者作成

dkt+2=∑s=t(xks+yks)×ft+2-st+1̂ dkt+3=∑s=t(xks+yks)×ft+3-st+2̂

14)平均耐用年数が 60 年の場合の尺度係数ηは 66.305、52.5 年は 58.086、10 年は 11.507、70 年は 77.265、80年は 88.224 である。

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1 ではないため,道路ストックは残存しており,81 年以降も正の通常除却額が算出されている。しかし,災害除却による減少を加味すると道路ストックはゼロとなっているはずである。つまり,このままでは除却が重複することになる。そこで,災害除却を考慮した道路ストックがゼロになった時点で,それ以降の通常除却もゼロとする。 よって,t 年度の都道府県 k が管理する道路の通常除却額 dt

k は以下のように算出される。

  dkt=∑s=1905(xks+yks)×ft-s×χZ(s)ktt-1

 ここで,χZ(s)tk は以下のような特性関数である。

  

 また,Z(s)tk は s 年度に投資された道路ストッ

クの中で t 年度に残存しているストックで,以下のようになる。

  

Z(s)tk={

∑u=1905 Z(u)kt-1t-1

Z(s)kt-1

,0}×

max{Z(s)kt-1-(xk

s+yks)×ft-s-yk

t

xks+yk

s

if t>s

if t=s

 この式の max の中の左の第 2 項は通常除却で,第 3 項は災害除却である。この第 3 項(=s 年度に投資された道路ストックの t 年度の災害除却額)は,t 年度の災害除却額の合計(=t 年度の災害復旧費 yt

k)に t - 1 年度に存在するすべての道路ストック(=∑s=1905Z(s)kt-1)t-1 に対する s 年度に投資された道路ストック Z(s)k

t-1

の割合を掛けて算出する。これは,「災害によりすべての年代のストックが被災し,その際,

どの年代のストックも同じ程度被害を受ける(=同じ確率で除却される)と仮定」(内閣府政策統括官(2012))していることになる。 以上から,t 年度の都道府県 k が管理する道路ストック Rt

k は以下のように算出される。

  Rkt=∑ts=1905(xks+yks)-(dks+yks)=Rkt-1+xkt-dkt

Ⅳ-2.必要更新費の推計方法 その年に経年や災害によって除却されたストックをすべて更新するために必要な投資額を必要更新費と定義する15)16)。除却されるストックをすべて更新するためには,通常除却額 dt

k

と災害除却額 ytk の合計に等しい額を投資すれ

ば良いので,t 年度の必要更新費 ntk は以下のよ

うになる。  nt

k=dtk+yt

k

 こ の 式 か ら わ か る よ う に,必 要 更 新 費 nt

k は t - 1 年 度 ま で の 過 去 の 投 資 の 流 列t-1(dk

t=∑s=1905(xks+yk

s)×ft-s×χZ(s)kt )と t 年度の災害

除却額(ytk)に依存している。この事は,将来

の必要更新費を推計する際に特に注意が必要である。なぜならば,2013 年度以降の各年の投資額をどのように仮定するかで,その投資に対する除却額も異なり,将来の必要更新費が変化するからである。なお,本稿では 2013 年度以降の災害除却額 yt

k は 2001~10 年度17)の 10 年間の平均値(yk)と仮定する。

Ⅳ-3.データについて 本稿では,1905~2012 年度の名目投資額とデフレーターを使用した。名目投資額については,A) 1956~2012 年度については『道路統計年報 1958』から『道路統計年報 2014』までの

=1 if Z(s)k

t > 00 if Z(s)k

t = 0{χZ(s)kt

15)橋りょうやトンネル,舗装以外の道路本体についても更新は必要である。国土交通省(2010)の管理者に対するアンケート結果によると,道路本体について全ての構造物を更新すると回答した管理者が半数を占め,逆にまったく更新しないと回答した管理者は 10% であった。

16)本稿では更新した際の費用が新設時と同額であると仮定する。国土交通省(2010)においては,管理者へのアンケートを基にして,更新費の新設費に対する割合を橋りょう 150%,舗装 110%,道路本体 90% と仮定している。しかし,これはアンケートを基にしており,客観性が低いと思われる。本稿では,恣意性を排除するため,三つとも 100% と設定した。今後,実態に基づいた推計に向けて,データの整備が求められよう。

17)2011 年度は東日本大震災直後で前年の 10 倍以上となっており,平均から除外した。

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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掲載データを,B) 1905~55 年度は『道路統計年報 2014』の表 151-1(道路投資の推移)に掲載されているデータを利用した。デフレーターについては補論 1 を参照されたい。さらに,A)の期間内である 1963~2010 年度に政令市に移行した 14 市が所在する 11 道府県18)について,移行後に政令市が管理する道路に対する移行前の投資額をデータから除いた。これは,政令市に移行すると市内のそれまで都道府県が管理していた道路の管理が政令市に移るため,都道府県が過去に行った投資による道路ストックも移るからである。 名目投資額のデータ A)と B)について,年度毎に以下のように加工して使用した。

A) 一般国道と主要地方道,一般都道府県道に関するそれぞれの一般道路事業費と都市計画街路事業費のうち国庫補助事業と単独事業について19),都道府県別に以下の値を合計して道路本体と橋りょう,舗装別の新設・改築と修繕を合わせた名目投資額を算出した。

 道路本体: 工種別内訳の「道路改良」と「その他修繕」,「調査」,「その他」の合計から「うち用地補償費」を除いた値

 橋りょう: 同「橋梁整備」と「橋梁補修」を

合計した値 舗  装: 同「舗装新設」と「舗装補修」を

合計した値

さらに,一般国道と主要地方道,一般都道府県道に関するそれぞれの道路災害復旧事業費について20),都道府県別に以下の値を合計して道路と橋りょう別の災害復旧費を算出した。

 災害復旧費 (道路):合計の工種別内訳の「道路災害」,ただし一般国道についてはその値から直轄事業の工種別内訳の「道路災害」を除いた値

 災害復旧費 (橋りょう):同「橋梁災害」,ただし一般国道については道路と同様

 なお,1974 年度以前のデータには分類方法に異なる点があり,補論 2 のように対応した。

B)「建設的経費」と「維持的経費」の合計に21),以下の割合を掛けて,都道府県別の道路本体と橋りょう,舗装別の新設・改築と修繕を合わせた名目投資額を算出した。

 道路本体: 各都道府県の上記 A)の道路本体の名目投資額を,その年度の(全

18)北海道,宮城県,埼玉県,千葉県,神奈川県,新潟県,静岡県,大阪府,岡山県,広島県,福岡県の 11 道府県である。2012 年 4 月 1 日に熊本市も政令市に移行しているが,利用するデータの年度が足りないため同様の対応ができなかった。そのため,熊本県について推計された道路ストックは政令市に移行後の熊本市が管理する道路も含む。ただし,Ⅵ節とⅦ節でのシミュレーションでは 2008~10 年度の財政支出を基準にしているため,不整合は生じていない。

19)道路統計年報の表番号は年度によって異なるので,『道路統計年報 2014』を例にすると,これらは表 100~102,105~107,116~118,121~123 に掲載されたデータである。

20)『道路統計年報 2014』を例にすると,これらは表 130~132 に掲載されたデータである。21)「建設的経費」と「維持的経費」には失業対策事業費などの一般道路事業費と都市計画街路事業費以外の財

政支出が含まれている。それを取り除くために,『道路統計年報 2014』の表 151-2 に掲載されたデータを使って算出した「建設的経費」に占める一般道路事業費(表 151-2 の「道路」)と都市計画街路事業費(同「街路」)の合計の割合の 1956~58 年度の平均値を,各年度の「建設的経費」に掛けるという方法で調整を行った。「維持的経費」についても同様の調整を行った。なお,このようにして調整した「建設的経費」と「維持的経費」には,維持に関する財政支出と用地補償費が含まれているが,これらに掛け算する「割合」の分母には維持に関する財政支出と用地補償費が含まれ,分子には含まれないため,最終的に算出される名目投資額には維持に関する財政支出と用地補償費は含まれないことになる。

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国のすべての道路種別の道路に関する)一般道路事業費と都市計画街路事業費の合計で除した値の1956~58 年度の平均値22)

 橋りょう: 各都道府県の上記 A)の橋りょうの名目投資額を,道路本体の場合と同じ値で除した値の 1956~58 年度の平均値

 舗  装: 各都道府県の上記 A)の舗装の名目投資額を,道路本体の場合と同じ値で除した値の 1956~58 年度の平均値

 さらに,「災害復旧費」に以下の割合を掛けて,道路と橋りょう別の災害復旧費を算出した。

 災害復旧費 (道路):各都道府県の上記 A)の災害復旧費(道路)の名目投資額を,その年度の道路災害復旧事業費の(全国のすべての道路種別の道路に関する)合計で除した値の 1956~58 年度の平均値23)

 災害復旧費 (橋りょう):各都道府県の上記A)の橋りょうの名目投資額を,災害復旧費(道路)の場合と同じ値で除した値の 1956~58 年度の平均値

 最後に、上記の政令市が関係する 11 道府県の補正について説明する。指定日の翌年度から3 年度分の各政令市とそれが所在する道府県の道路本体と橋りょう,舗装別の三つの名目投資額のそれぞれの平均比率を算出し,それを指定日の前年度まで毎年度の各名目投資額に掛けるという方法で補正を行った。例えば,1963 年

度に北九州市,1972 年度に福岡市が政令市に移行した福岡県では,1905~71 年度における各年度の補正後の三つの名目投資額 x̂ t

I を以下のようにして算出した。なお,t は年度,l は福岡県,i は福岡市,j は北九州市,xt

l は補正前を示す。

  xIt={̂

α×xIt  if 1963 ≤ t ≤ 1971

α×β×xIt  if t ≤ 1962

 ここで,αとβは以下のようにして算出した割合である。

α=(     +     +     )/3xI1973 xI1974 xI1975

xi1973+xl1973 xi1974+xl1974 xi1975+xl1975

β=(     +     +     )/3xI1964 xI1965 xI1966

xj1964+xl1964 xj1965+xl1965 xj1966+xl1966

 さらに,道路の災害復旧費については,αとβを計算する際に使用するデータを指定日の翌年度から3年度分の名目投資額から指定日の年度末の道路面積(細目がある年度では道路面積の道路部)24)に変更し,それ以外は上記と同様にして補正を行った。橋りょうの災害復旧費も指定日の年度末の橋梁延長を利用して補正を行った。

22)これらは,『道路統計年報 1958』と『同 1959』,『同 1960』のそれぞれの表 49 と 69 に掲載されたデータである。

23)これらは,『道路統計年報 1958』と『同 1959』,『同 1960』のそれぞれの表 93 に掲載されたデータである。24)は福岡市を例にすると,『道路統計年報 1974』の表 5-2,9,10 に掲載されたデータである。なお,対象と

した 14 政令市のうち北九州市のみ該当年度のデータが未掲載のため,『道路統計年報 1973』に掲載された1971 年度のデータを使用した。

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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Ⅴ.これまでの投資額と道路ストックの推移

Ⅴ-1.これまでの投資額 1956 年度から 2012 年度までの投資額の推移を表したのが,図 4 である。これは,道路本体と橋りょう,舗装の三つに関する新設・改築と修繕の合計額と,道路と橋りょうの二つに関する災害復旧費の合計 5 項目からなる積み上げ棒グラフである。なお,値はすべて 2005 年基準のデフレーター(補論 1 を参照)で実質化したものである。さらに,政令市が管理する道路に対する投資は,政令市への移行前も含めて除くなどの補正を行っており(それ以外の補正も含めて,詳細はⅥ- 3 節を参照),これは年度間での比較可能なグラフである。 1956~72 年度の 17 年間は,826 億円から 1兆 3,907 億円まで約 17 倍という急激な増加となった。その後は数年度の例外を除き 1 兆 5千億円程度で安定していたが,1986 年度から再度の増加に転じ,最も投資額が多かったのは

1996 年度の 2 兆 9,440 億円で,それをピークに減少していった。2012 年度は,ピークの約半分となる 1 兆 3,778 億円で,35 年前をも下回る金額となっている。 また,投資の内訳も変化している。ピークの1969 年度に全体の 34.7% の割合を占めた舗装の新設・改築と修繕の合計額が,ほぼ一貫して割合を下げていき 2012 年度には 10.8% になっている。それに対して,道路本体の新設・改築と修繕の合計額が占める割合は 1956 年度の29.7% から 2012 年度には 70.5% にまで上昇している。この変化は 1990 年代中頃までほぼ一貫して進行し,それ以降はほぼ一定となった。橋りょうの新設・改築と修繕の合計額の割合は1957 年度の 28.9% から 1967 年度の 13% まで低下し,その後は概ね 12~15% の間で安定している。

図 4 過去の投資額(1956 年度~2012 年度)

(出所) 『道路統計年報 1958』から『同 2014』までの掲載データより筆者作成

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Ⅴ-2.これまでの道路ストックの推移 推計した 1956 年度から 2012 年度までの道路ストックの推移を表したのが,図 5 である。道路ストックの中の道路本体は,1956 年度に4,854 億円であったのが,2012 年度には 56 兆2,874 億円へと 116 倍に,橋りょうは 4,383 億円から 11 兆 1,984 億円へと 26 倍に,舗装は1,015 億円から 1 兆 7,225 億円へと 17 倍にそれぞれ増加した。その結果,合計額では 1 兆 251億円から 69 兆 2,083 億円へと 68 倍に増加した。ただし,道路本体と橋りょうは一貫して増加しているのに対して,舗装は 1995 年度の 3兆 1,067 億円がピークで,それ以降は減少に転じている。

 対前年度増減率では,道路本体と橋りょうは1965 年度が最も高く,それぞれ 23.0% と 10.4%であった。それ以降は多少上下しながらもほぼ一貫して下がっていき,2011 年度に最低の増減 率 で あ る 1.5% と 1.0% と な っ た。 舗 装 も1961 年度の 29.0% をピークにして急激に低下し,1980~2000 年度の間は 0% 前後で推移し,それ以降は 5% 前後のマイナスとなった。まとめると,1956 年度から 2012 年度まで道路ストック全体としては一貫して増加を続けてきた。しかし,その増加率は低下しており,このままの傾向が続けばいずれはピークを迎える可能性が高い。なお,舗装はすでにピークの55.4% の水準である。

Ⅵ.2040 年度までの更新費の推計結果

 本節では三つのシナリオを設定し,それぞれ の場合の 2013~2040 年度の負担額の推移を明

図 5 これまでの道路ストックの推移(1956 年度~2012 年度)

(出所) 本稿の推計結果より筆者作成

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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らかにする。具体的には,①新規投資を現在の水準で維持した場合,②新規投資をゼロとした(更新は 100% 行う)場合,③財政支出を現在の水準で維持した場合,である。なお,将来の新規投資額をどのように仮定するかで,将来の必要更新費は変化して財政負担も異なってくることに注意されたい。本稿ではすべてのシナリオで,2013 年度以降の災害復旧費を 2001~10年度の平均と仮定している(Ⅳ-2節を参照)。

Ⅵ- 1.新規投資を現在の水準で維持した場合 最初に,2013~40 年度の新規投資を 2008~10 年度の平均水準25)とした場合の新規投資額と更新費を推計する。このケースでは毎年の更新費は必要更新費と同額とし,その年に経年や

災害によって除却されたストックをすべて更新することとする。 推計した 2013~40 年度の新規投資額と更新費を表したのが,図 6 である。2013 年度には2,807 億円だった道路本体の更新費が,2040 年度には 1 兆 46 億円と 3.6 倍に増加する。同様に,橋りょうの更新費は 836 億円から 2,407 億円へと 2.9 倍に,舗装の更新費は 1,925 億円から 2,061 億円へと 1.1 倍に増加する。その結果,合計額では 5,567 億円から 1 兆 4,514 億円へと2.6 倍に増加する。これに毎年の新規投資額 1兆 651 億円が加わると,財政支出の総額は 1 兆6,218 億 円 か ら 2040 年 度 に は 1.6 倍 の 2 兆5,165 億円となる。これは過去のピーク期である 1992~2002 年度に近い水準である。

25)2008~10 年度の新規投資額は,各年度の新設・改築と修繕の合計額から必要更新費を除いた額である。なお,2010 年度までしか含めなかった理由は,2011 年度以降では東日本大震災の影響を大きく受けている可能性を考慮したためである。また,岡山県と神奈川県については,2009 年 4 月 1 日に岡山市,2010 年 4 月 1 日に相模原市が政令市に移行した影響がこの平均値に残るため,2008 年度の岡山県と 2008~09 年度の神奈川県については,Ⅴ- 1 節で行ったのと同様の調整をした値を使用した。

図 6 新規投資を現在の水準で維持した場合の新規投資額と更新費の推移(2013 年度~2040 年度,全国総計)

(出所) 本稿の推計結果より筆者作成

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Ⅵ- 2.新規投資をゼロとした(更新は 100%行う)場合

 次に,2013 年度から一切の新規投資をゼロとして,更新のみを行った場合を考える。ここでは,毎年の更新費は必要更新費と同額とし,その年に経年や災害によって除却されたストックをすべて更新することとする。 推計した 2013~40 年度の更新費を表したのが,図 7 である。前小節と異なり,道路ストックは 2013 年度から増加しない。その結果,2040 年度には道路本体の更新費が 9,774 億円,橋りょうの更新費は 2,342 億円,舗装の更新費は 1,652 億円となり,前小節の場合と比べてそれぞれ 272 億円(3%),65 億円(3%),409 億円(20%)少ない。そのため,合計額では 1 兆3,768 億円となり前小節の場合を 746 億円(5%)下回る。 新規投資をまったく行わないというかなり厳しいシナリオであるが,その結果,新規投資を続けた場合と比べて更新費自体は,全国で 700億円以上の節約が可能となっている。ただし,

道路本体と橋りょうの平均耐用年数は 50 年以上と長く,投資後 20 年くらいまでは除却額も僅かで,2040 年度までの効果はほんの一部に過ぎない。むしろ 2040 年度以降の超長期にその違いが顕在化するものと思われる。

Ⅵ- 3.財政支出を現在の水準で維持した場合 前小節のように新規投資をゼロとするのはあまり現実的とは言えないかもしれないが,それにも関わらず 2040 年度の更新費は 1 兆 3,768億円となり,2012 年度の財政支出とほぼ等しい。さらに,これは全国の総計であって,一部の都道府県では状況はもっと深刻かもしれない。 そこで,各都道府県の制約を考慮し,維持を除いた(各都道府県の)財政支出の総額を現在の水準で維持した場合を推計する。すなわち,2040 年度までの各都道府県の道路 3 部門のそれぞれの財政支出額26)を 2008~10 年度の平均水準(これを財政支出(総額)と呼ぶ)とする。ここでは,必要更新費が財政支出(総額)を下回る場合には,毎年の更新費は必要更新費と同

図 7 新規投資をゼロとした場合の更新費の推移(2013 年度~2040 年度,全国総計)

(出所) 本稿の推計結果より筆者作成

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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額とし,残額を新規投資に振り向ける。必要更新費が財政支出(総額)を超える場合には,毎年の更新費は財政支出(総額)と同額となり,新規投資はゼロとなる。後者の場合には,更新費が必要更新費を下回るため,その年に経年や災害によって除却されたストックのすべて更新することができないことになる(この更新できない分を更新不足額と呼ぶ)。 推計した 2013~40 年度の新規投資額と更新費,更新不足額を表したのが,図 8 である。2040 年度の道路本体の更新費は 9,212 億円,橋りょうの更新費は 1,788 億円,舗装の更新費は1,572 億円となり,更新費全体では 1 兆 2,572億円である。これらの値は新規投資をゼロとした場合(Ⅵ- 2 節)と比べて,道路本体で 562億円(6%),橋りょうで 554 億円(24%),舗装で 80 億円(5%)の合計 1,196 億円(9%)の

減少となった。これは,その年に必要な更新を行わなかった効果(更新不足額)に加え,過去に更新しなかったことで減ったストックの更新費が発生しなかった効果も含まれる。 ただし,2040 年度の更新不足額は,道路本体で 784 億円,橋りょうで 596 億円の合計 1,380億円である。これは上記の新規投資をゼロとした場合と比べた減少額を 191 億円も上回る。この理由は,都道府県によって状況が異なるためである。先程の更新不足額は全国集計の値であり,すべての都道府県で更新不足が発生しているわけではない。都道府県別に見れば,3 部門すべて又は一部において,必要更新費が(その都道府県の)財政支出(総額)を下回り新規投資が行われ続ける都道府県も存在する。その結果,2040 年度でも 2,299 億円もの新規投資が存在する。

26)具体的には,都道府県別に道路本体と橋りょう,舗装の三つの部門ごとに新設・改築と修繕の合計額について 2008~10 年度の平均額を計算し,それをその部門の財政支出(総額)とした。

図 8 財政支出を現在の水準で維持した場合の新規投資額と更新費,更新不足額の推移(2013 年度~2040 年度,全国総計)

(出所) 本稿の推計結果より筆者作成

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 このように(一部の都道府県が)新規投資を続けたため,新規投資をゼロとした場合と比べて,ストックが増加した都道府県が存在する。ストックが増加すれば,その分だけ後年度の更新費は増加する。これが,更新不足額分だけ更新費を削減したにもかかわらず,新規投資をゼロとした場合と比べた更新費の減少がそれに及ばない理由である。つまり,一部の県がストックを削減しながらも,別の県がストックを増加させているということが原因と言える。

Ⅵ-4.都道府県別の新規投資額と更新不足額 ここでは,前小節での都道府県別の状況を詳しく見てみる。すでに述べたように,必要更新費が財政支出(総額)を下回る場合にはその差額が新規投資となり,必要更新費が財政支出(総額)を超える場合にはその差額は更新不足額となる。ただし,道路本体と橋りょう,舗装のどれかで更新不足額が発生した場合に,まずは他の部門の新規投資額で補填することとする。そ

のため,都道府県別には新規投資額(正の値)となるか,更新不足額(負の値)となるかのどちらかである。 2010,2020,2030,2040 年度の 47 都道府県の新規投資額または更新不足額を表したのが,図 9 である。縦軸で正の値が新規投資額を,負の値が更新不足額を表す。鹿児島県を例に説明す る と,2010 年 度 は 251 億 円,2020 年 度 は187 億円,2030 年度は 90 億円の新規投資額であるのに対して,2040 年度は 8 億円の更新不足額となる。2010 と 2020 年度には,47 都道府県のすべてで新規投資が可能である。しかし,2030 年度には 5 県で,2040 年度には 21 府県で100% の更新が不可能となり,更新不足額が発生する。

Ⅵ-5.道路ストックの年齢構成の違い 前小節で示したように,都道府県によって新規投資が可能であったり更新不足が発生したりと大きな差が生じているのは,将来時点での道

図 9 財政支出を現在の水準で維持した場合の新規投資額と更新不足額(2010,2020,2030,2040 年度,都道府県別)

(出所) 本稿の推計結果より筆者作成

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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路ストック当たりの必要更新費が都道府県間で異なることから生じている。すなわち,老朽化の度合いに差があり,必要更新費が異なってくるからである。この点を見るために,道路ストックの年齢構成27)を表したのが図 10 である。この図は,2010 年度における 47 都道府県の道路ストックを,投資された年度によって,1970年 度 以 前,1971 ~ 80 年 度,1981 ~ 90 年 度,1991~2000 年度,2001~10 年度の五つの期間に分けて,それぞれの全体に対する割合を示したものである。例えば,青森県や東京都,山梨県,兵庫県,島根県,愛媛県,福岡県,佐賀県,大分県などは過去 20 年間に投資された年齢の若い道路ストックの割合が高いことがわかる。年齢の若い道路ストックの割合が高いと,そうでない県と比べて道路ストックは同じでも,必要更新費は少なくて済む。 一般的には,都道府県間での負担の差は(負

担平準化としての)地方交付税で調整される。しかしながら,Ⅲ- 2 節で述べたように,現在では標準事業費方式の算定により道路に関する地方交付税の大部分が措置されており,基準財政需要額はほぼ道路面積に応じた額となっている。そのため,道路面積当たりの必要更新費に差があると,更新に必要な財源が十分でない場合があり得る。その点を見るために,47 都道府県の道路面積当たり必要更新費を表したのが図 11 である。東京都と神奈川県を除くと,平均値は平方キロメートル当たり 3.1 億円で,その平均値の 0.7 倍となる 2 億円程度から 1.3 倍の 4億円程度までとばらつきがあることがわかる。 したがって,実際の更新における老朽化の差は地方交付税では十分に対応できておらず,図9 に現れる差は自治体が独自に対応しなければならない差であると言えよう。

27)同様のものとしては,浜潟・人見(2009)がストックでウェイト付けされた社会資本の投資からの平均経過年数を都道府県別に算出したものがある。

図 10 47 都道府県の年代別道路ストック(2010 年度)

(出所) 本稿の推計結果より筆者作成

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図 12 都道府県別将来推計人口の 2010 年度比

(出所)  『日本の地域別将来推計人口(平成 25年 3月推計)』の掲載データより筆者作成

図 11 47 都道府県の道路面積当たり必要更新費(2010 年度)

(出所) 本稿の推計結果より筆者作成

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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Ⅶ.人口減少を考慮した財政負担力と更新費

 今後の日本は人口の減少が予想され,特に2040 年度までの期間では生産年齢人口は多少の出生率の上昇があってもほぼ確実に減少する。そのため,前節のように総額では同水準の財政支出であっても,一人当たりの租税負担の程度は異なってくる。そこで,本節では住民一人当たりの租税負担に着目して,一人当たりの財政負担を現在の水準で維持した場合について分析を行う。

Ⅶ-1.将来人口 最初に 2040 年度までの将来推計人口を概観する。『日本の地域別将来推計人口(平成 25 年3 月推計)』による各都道府県の 2025 年度と2040 年度の総人口の 2010 年度に対する割合(%)と,同様にした生産年齢人口の割合(%)をまとめたものが,図 12 である。 総人口を見ると,2010 年度に対する割合で最も高いのが沖縄県で,2025 年度が 102%,2040 年度が 98% である。また,最も低いのが秋田県で,2025 年度が 82%,2040 年度が 64%である。しかし,生産年齢人口はさらに低下している。2010 年度に対する割合で最も高いのが,2025 年度は東京都の 95%,2040 年度は沖縄の 84% で,最も低いのがともに秋田県で,72% と 54% である。

Ⅶ-2.一人当たりの財政負担を現在の水準で維持した場合

 次に,更新を含めた一人当たりの財政負担を現在の水準で維持した場合を推計する。2040年度までの各都道府県の道路 3 部門のそれぞれの財政支出額を 2008~10 年度の一人当たり平

均水準にその年の将来推計人口を掛けた値(これを財政支出(一人当たり)と呼ぶ)とする28)。ここでは,必要更新費が財政支出(一人当たり)を下回る場合には,毎年の更新費は必要更新費と同額とし,残額を新規投資に振り向ける。必要更新費が財政支出(一人当たり)を超える場合には,毎年の更新費は財政支出(一人当たり)と同額となり,新規投資はゼロとなる。後者の場合には,更新費が必要更新費を下回るため,その年に経年や災害によって除却されたストックのすべて更新することができない。 推計した 2013~40 年度の新規投資額と更新費,更新不足額を表したのが,図 13 である。2040 年度の道路本体の更新費は 7,359 億円,橋りょうの更新費は 1,331 億円,舗装の更新費は1,093 億円となり,更新費全体では 9,783 億円である。これらの値は,一人当たりでなく財政支出の総額を現在の水準で維持した場合(Ⅵ-3節)と比べて,道路本体で 1,853 億円(20%),橋りょうで 457 億円(26%),舗装で 479 億円(30%),全体で 2,789 億円(22%)少ない。 さらに,新規投資額も 2040 年度には 645 億円となり,Ⅵ-3 節の場合と比べて 1,655 億円(72%)も少ない。その結果,更新費に新規投資額を加えた財政支出の総額は,2040 年度に 1兆 428 億円となり,Ⅵ-3 節の場合と比べて4,443 億円(30%)も少ない。 これはⅥ- 3 節の場合と同じく,その年に必要な更新を行わなかった効果(更新不足額)と過去に更新しなかったことで減ったストックの更新費が発生しなかった効果の結果である。ただし,人口が減少しても一人当たりの負担額を増やさないようにしたため,Ⅵ- 3 節の場合よ

28)具体的には,都道府県別に道路本体と橋りょう,舗装の三つの部門ごとに新設・改築と修繕の合計額について 2008~10 年度の平均値を計算し,それを 2010 年の国勢調査人口(生産年齢人口)で除した値に,s 年度の将来推計人口(生産年齢人口)を掛けた金額を,s 年度のそれぞれの部門の財政支出(一人当たり)とした。

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〈財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 27 年第4号(通巻第 124 号)2015 年 10 月〉

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図 13 一人当たりの財政負担を現在の水準で維持した場合の新規投資額と更新費,更新不足額の推移(2013 年度~2040 年度,全国総計)

(出所)本稿の推計結果より筆者作成

りも財政支出のキャップはきつくなっており,その分だけ新規投資や更新は少ない。その結果,2040 年度の必要更新費は,Ⅵ-3 節の場合と比べて 331 億円(2%)も減少した。

Ⅶ- 3.都道府県別の新規投資額と更新不足額 ここでは,前小節での都道府県別の状況を詳しく見てみる。仮定等はⅥ- 4 節と同様である。2010,2020,2030,2040 年度の 47 都道府県の新規投資額と更新不足額を表したのが,図 14である。縦軸で正の値が新規投資額を,負の値が更新不足額を表す。 2010 年度には,47 都道府県のすべてで新規投資が可能である。しかし,2020 年度には 1 県,2030 年度には 17 県,2040 年度には 44 道府県で 100% の更新が不可能となり,更新不足額が発生する。 このように都道府県間で差が生じるのは,Ⅵ-4 節と同様の「将来時点での道路ストック

当たりの必要更新費が都道府県間で異なる」という点に加え,人口減少のスピードが都道府県間で異なっているからである。財政支出(一人当たり)は現在の一人当たり水準に将来人口を掛けた値であるから,将来人口の減少率の都道府県間の差が影響する。すなわち,老朽化の度合いと人口減少のスピードの両方で生じた差が,このような更新における都道府県間の差を生んでいる。Ⅲ-2 節で述べたように,標準事業費方式の算定は道路面積にほぼ比例しているが,地方交付税の補正項目には交通量や人口も含まれており,減少する人口に比例して措置される額も減少する可能性が高い。したがって,地方交付税は老朽化の差には対応できていないにもかかわらず人口減少には比例しており,一人当たり歳出を固定した図 14 で現れる差も,(人口減少を考慮した場合に)自治体が独自に対応しなければならない差であると言えよう。

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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Ⅷ.長寿命化の効果

Ⅷ-1.平均耐用年数の仮定の再検討 Ⅵ節で明らかになったように,このままでは一部の県で十分な更新ができなくなるというような都道府県格差が生じることが予想される。さらに,Ⅶ節のように人口減少による財政負担力の低下を考慮に入れると,ほとんどの道府県で更新不足が発生する状態となる。 このような状況の中で,これまでの分析で仮定してきたことの中に再検討が必要な点がある。それは,各ストックの平均耐用年数の設定である。道路本体 60 年,橋りょう 52.5 年というのは,これまでの更新の実績からは妥当なように思われるかもしれない。しかしながら,「架替理由のうち,改良工事,機能上の問題の占める割合が多く,併せて 70%~80% で推移して

いる。これに続き,損傷による架替が 10%~20% を占めている。」(国土技術政策総合研究所(2008))というように,多くのケースでの更新の理由が耐用年数を超えたためという訳ではないようである。今後は,多少の混雑などを理由にして,まだ使用できる道路ストックを更新することを止めれば,耐用年数は長くなるのではないだろうか。 さらに,近年注目されている「予防保全」が十分に広まって機能するようになれば,技術的にも無理なく耐用年数を伸ばすことが可能になると思われる。

Ⅷ-2.長寿命化の効果 ここでは,長寿命化のシミュレーションとし

図 14 一人当たりの財政負担を現在の水準で維持した場合の新規投資額と更新不足額(2010,2020,2030,2040 年度,都道府県別)

(出所) 本稿の推計結果より筆者作成

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〈財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 27 年第4号(通巻第 124 号)2015 年 10 月〉

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て,道路本体の平均耐用年数を 70 年,橋りょうを 80 年に設定した場合の効果を分析する。Ⅵ- 3 節のケースについて長寿命化した場合の2010,2020,2030,2040 年度の 47 都道府県の新規投資額と更新不足額を表したのが,図 15である。 図 15 では,2030 年度でも 47 都道府県のすべてで新規投資が可能である。さらに 2040 年度に更新不足が発生する県の数も 21 府県から2 県にまで減少する。以上より,長寿命化が実現すれば,財政運営の柔軟性が保たれることがわかる。 同様にⅦ- 2 節のケースについて長寿命化し

た場合を表したのが図 16 である。図 16 でも,更新不足額が発生するのは 2030 年度に 1 県,2040 年度に 19 県となり,長寿命化前と比べると状況は大きく改善しているものの,いまだ,2040 年度に 19 県が残る状況にあるともいえる。 財政支出の総額を現在の水準で維持した場合の分析からは,インフラの長寿命化は自治体の財政にとって効果的な解決策の一つと言える。しかしながら,人口減少を考慮して,一人当たりの財政負担を現在の水準に維持した場合には,長寿命化だけでは,十分に問題を解決できるわけではないことも確かとなった。

Ⅸ.おわりに

 本稿は,道路インフラを維持するための更新 費が将来的にどの様になるのかを,財政負担の

図 15 Ⅵ- 3 節のケースを長寿命化した場合の新規投資額と更新不足額(2010,2020,2030,2040 年度,都道府県別)

(出所) 本稿の推計結果より筆者作成

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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責任を持つ管理者(都道府県)を対象に,できるだけ恣意性を排除し統一的な基準で推計した。まず,新規投資を抑制することで更新費に対して将来的にどのくらいの効果が現れるのかを分析した。その結果,新規投資を抑制しない場合には 2040 年度の更新費は現在の 2.6 倍となることがわかった。そこで,2013 年度以降の新規投資をゼロに抑制すると,2040 年度では抑制しない場合と比べて 5% 程度の更新費の縮減が可能となった。ただし,新規投資の抑制による効果は長期にわたって現れてくるものであり,2040 年度以降にはさらに大きなものになると思われる。 新規投資をゼロとするのはあまり現実的とは言えないが,そのような厳しいシナリオでさえも 2040 年度には更新費だけで 2012 年度の財政支出とほぼ同額となってしまう。さらに,これは全国の総計でのことであって,都道府県によって状況は異なるはずである。そこで,都道府県別に将来の財政支出を現在の水準に抑制し

たシミュレーションを行った。その結果,2040年度には 100% の更新が不可能となる自治体が全体の約半数に達した。その一方で,新規投資を続けることができる自治体も半数存在する。つまり,都道府県間で道路インフラの更新や新規投資に関する状況に大きな格差が生じている。更新費の財政負担は,国からの交付税を通じて軽減されるが,現行の制度の下では,自治体間の老朽化の差を反映していないため,全国の標準レベルよりも老朽化が進む自治体においては財政負担が大きくなる。 このような現在の道路ストックを維持できないことへの対策として,インフラの長寿命化が考えられる。そこで,長寿命化の効果をシミュレーションすると,更新不足の問題はかなり改善されて,2040 年度に 100% の更新が不可能となるのは 2 県にまで減少し,自治体の財政運営の柔軟性が確保できることがわかった。 しかしながら,ここまでの分析は人口の減少を考慮していない。更新費の財政負担に関して,

図 16 Ⅶ- 2 節のケースを長寿命化した場合の新規投資額と更新不足額(2010,2020,2030,2040 年度,都道府県別)

(出所) 本稿の推計結果より筆者作成

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〈財務省財務総合政策研究所「フィナンシャル・レビュー」平成 27 年第4号(通巻第 124 号)2015 年 10 月〉

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人口減少は一人当たりベースでの負担を加速させる。そこで,将来の一人当たりの財政負担を現在の水準に抑制した場合についてシミュレーションを行った。その結果,さらに多くの道府県で 100% の更新が不可能となり,その数は2040 年度に 44 までになった。これに対する長寿命化の効果を見てみると,全体的に状況を大きく改善させはするが,2040 年度でまだ半数近い自治体が 100% の更新が不可能という状況になることがわかった。つまり,人口減少まで考慮に入れると,現在の道路インフラを維持するためには,インフラの長寿命化だけでは対処が十分ではないということである。 最後に,将来に向けて重要となる点を述べて,本稿を締めくくることにしたい。本稿では,更新費を節約する方法として,新規投資の抑制や長寿命化の効果を検証した。しかしながら,これらの方法にも人口減少への対応としては限界がある。インフラは非競合性のある財(追加的な利用による限界費用が小さい)であるため,利用者が多い場合には利点が大きい一方で,利用者が減っても必要なインフラの総量は減らず,維持や更新のコストも下がりにくい。例え

ば,人口減少で交通量が 1/5 になったからと言って,5m 幅の道路を 1m 幅にするわけにはいかないのである。しかしながら,コンパクトシティーに代表されるように都市構造を変革することで,集約化を通じてインフラ総量を節減すれば,生活水準を落とさずに将来の更新費用を節減できる可能性は残されている。二箇所に掛かっていた橋を単純に一つにしたのでは住民の利便性は下がるだけであるが,居住地のコンパクト化と同時に行うことで利便性の低下は最小限にできるはずである。人口減少により負担能力は減っていくのであるから,長寿命化だけでなく集約化によるインフラ量自体の削減も必要である。そして,それを全国的に促すための国の仕組みづくりも大事である。実際,公共施設に関しては,平成 27 年度の地方債計画において,集約化・複合化・転用・除却に対する地方財政措置(地方債の起債と交付税充当)が実施されている。これは,すべての老朽化した施設をそのまま更新するのではなく,集約化した上で更新することにより総量を縮減することを目指した交付税措置である。道路インフラに関しても,この方向性の検討が有用であろう。

参 考 文 献

赤井伸郎・竹本亨・上村敏之(2013)「インフラ維持更新費の将来シミュレーション」日本財政学会第 70 回大会報告論文。

大川一司・高松信清・山本有造(1974)『国民所得(長期経済統計)』東洋経済新報社。

樺克裕(2012)「社会資本の維持・更新と行政投資:シミュレーションによる都道府県別行政投資の将来推計」齊藤慎編『地方分権化への挑戦:「新しい公共」の経済分析』pp. 203-232。

国土技術政策総合研究所(2008)「橋梁の架替に関する調査結果(IV)」国総研資料第 444 号。

国土交通省(2010)「ストック型社会における社会資本の整備 ・ 維持管理 ・ 更新のあり方に

関する調査 報告書」総務省自治財政局財政調査課(2012)「公共施

設及びインフラ資産の将来の更新費用の比較分析に関する調査結果」

内閣府政策統括官(2012)『日本の社会資本2012』。

中東雅樹(2012)「日本の道路資本ストックの現状:OECD の資本測定方法による道路資本ストック推計」『新潟大学経済論集』第 93巻第 1 号。

長野幸司・南衛(2003)「社会資本の維持更新に関する研究」『国土交通政策研究』第 32 号。

西村隆司・宮崎智視(2012)「社会資本の維持・更新投資額の将来推計と PPP 導入効果の計

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担

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測」『会計検査研究』第 46 号。浜潟純大・人見和美(2009)「都道府県別社会

資本ストックデータ(1980-2004)の開発」『電力中央研究所報告』Y08006。

補  論  1

 本稿では,内閣府政策統括官(2012)に掲載された道路部門のデフレーターを使用した。ただし,その数値は 1952 年からしか掲載されていないため,1905~51 年については次のデータを使用した。それは,①大川・高松・山本(1974)に掲載された 1985~1940 年の粗国内固定資本形成デフレーターおよび,② 1930~71 年の(粗国内資本形成の)粗固定資本形成デフレーター,③建設工事費デフレーター(平成 17 年度基準)の 1951~2010 年の道路総合デフレーターである。しかし,②は 1951 年までと 52 年からで基準年が異なっており,一つの長期データとしては使えない(1951 年までを②- 1 と表記する)。①と②- 1 については基準年も同じため,①の1936 年までのデータに②- 1 の 1937 年からのデータを統合した。次に,その統合したデータを③の 1951~52 年の値を以下のように利用して,内閣府政策統括官(2012)の道路部門デフレーターに統合した。

  

  

 ここで,Ct は t 年の(内閣府政策統括官(2012)の)道路部門デフレーター,At は t 年の③のデフレーター,Bt は t 年の②- 1 のデフレーターである。 表 3 がその一覧である。これは内閣府政策統括官(2012)と同じく 2005 暦年基準のデフレーターである。1952 年以降の値は内閣府政策統括官(2012)を参照されたい。なお,1945 年については大川・高松・山本(1974)で値が欠損していたため算出ができなかった。そのため,本稿の分析では 1944 年の値 0.286 と同じと仮定して使用した。

~C1951=C1952×A1951A1952

~C1950=C1952×   ×A1951A1952

B1950B1951

表3 デフレーター(1905~51 年)

年度 デフレーター 年度 デフレーター 年度 デフレーター 年度 デフレーター

1905 0.051 1917 0.094 1929 0.093 1941 0.1621906 0.052 1918 0.110 1930 0.079 1942 0.1991907 0.057 1919 0.107 1931 0.074 1943 0.2341908 0.053 1920 0.121 1932 0.073 1944 0.2861909 0.050 1921 0.090 1933 0.080 1945 ―1910 0.050 1922 0.104 1934 0.082 1946 2.4101911 0.051 1923 0.110 1935 0.083 1947 6.1491912 0.056 1924 0.119 1936 0.085 1948 12.3811913 0.055 1925 0.101 1937 0.106 1949 16.7851914 0.053 1926 0.102 1938 0.111 1950 21.0221915 0.056 1927 0.100 1939 0.124 1951 29.3481916 0.069 1928 0.096 1940 0.150

(出所) 補論 1 で示した参考文献およびデータを基に算出した値より筆者作成

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補  論  2

 1956~74 年度の道路本体と橋りょう,舗装別の新設・改築と修繕を合わせた名目投資額を算出する際に,以下のように対応した。A) 1956~63 年度:一般国道の一般道路事業

費と都市計画街路事業費が,それぞれ一級国道と二級国道に分けて集計されている。そこで,両事業費とも二級国道の値のみを算入した。

B) 1964~74 年度:一般国道の一般道路事業費と都市計画街路事業費が,それぞれ旧一級国道と旧二級国道に分けて集計されている。そこで,両事業費とも旧二級国道の値のみを算入した。

C) 1956~71 年度:すべての沖縄県に関するデータが欠損値となっている。そこで,す

べての値をゼロとした。D) 1956~69 年度:すべての用地補償費が欠

損値となっている。そこで,1970~72 年度の各都道府県におけるすべての用地補償費を道路本体の新設・改築と修繕を合わせた名目投資額で除した比率の平均値を,各年度の道路本体に掛けて算出した用地補償費を,道路本体の新設・改築と修繕を合わせた名目投資額から除いた。さらに,道路災害復旧事業費についても同様にして,用地補償費を除いた。

E) 1956~66 年度:工種別内訳に特殊改良という項目が追加されている。そこで,この項目の値を道路本体に算入した。

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道路インフラの将来更新費と自治体別の財政負担