頭頸部癌の診断と治療

栃木県立がんセンター

頭頸科

中谷宏章

第7回市民公開講座（2010.11.13)

自己紹介

生まれ：愛媛県北宇和郡鬼北町

自己紹介

1982年5月：愛媛大学耳鼻科

1983年2月：高知医科大耳鼻科

1985年5月：仁淀地区国民健康保険組合病院（高知県）

1987年5月：高知医科大耳鼻科

1987年12月：アメリカ留学

1989年12月：高知医科大耳鼻科（→2003年高知大学）

2009年11月：栃木県立がんセンター頭頸科

生まれ：愛媛県北宇和郡鬼北町

本日のお話の内容

頭頸部がんとは？

頭頸部がんの診断

頭頸部がんの治療

頭頸部がんとは？

頭頸科（とうけいか）とは？

頭頸部外科 Head and Neck Surgery

Head：脳・顔面・口・鼻・眼などNeck：首・のど・気管・上部食道など

脳（脳外科）、眼（眼科）、歯（歯科）以外の領域

＝頭頸部領域 ＝耳鼻咽喉科が扱う領域

頭頸部腫瘍

頭頸部領域に発生する腫瘍

良性腫瘍

悪性腫瘍 頭頸部がん

頭頸部がんとは？

頭頸部領域に発生するがんの“総称”

喉頭がん

下咽頭がん

頸部食道がん

口腔がん

（舌がん等）

中咽頭がん

鼻・副鼻腔がん

（上顎がん等）

上咽頭がん

甲状腺がん

唾液腺がん（耳下腺がん等）

外耳がん

中耳がん

代表的な頭頸部がん

鼻のがん（上顎がん）

口のがん（舌がん）

のどのがん（喉頭がん、下咽頭がん）

唾液腺がん（耳下腺がん）

甲状腺がん

上顎（洞）がん

上顎洞

前頭洞

篩骨洞

鼻内所見

副鼻腔の一つである上顎洞に発生するがん

舌がん

喉頭がん

声門癌

声門上癌

下咽頭がん

耳下腺がん

甲状腺がん

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

35000

1975 1980 1985 1990 1995 2000 20005 2010 2015

口腔

咽頭

鼻・副鼻腔

喉頭

甲状腺

計

（21 CLIENT 領域の臨床17, 頭頸部腫瘍から）

全癌総数の約5％10人/10万人

頭頸部癌の部位別罹患数年次推移

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

鼻副鼻腔 口腔 中咽頭 下咽頭 喉頭 甲状腺

2003

2004

2005

2006

2010

0

5

10

15

20

25

30

35

40

45

50

鼻副鼻腔 口腔 中咽頭 下咽頭 喉頭 甲状腺

2003

2004

2005

2006

2010

高知大

がんセンター

頭頸部がん患者の受診数 （高知大学と栃木県立がんセンター）栃木県人口/高知県人口＝200万/80万＝2.5（倍）

頭頸部がんの診断

頭頸部がんの診断

自己診断

病院での診断

自己診断

一般的ながんの特徴を知る

自覚症状からがんを疑う

初発症状を見逃さない

頭頸部がんに特徴的な症状を知る

がんの症状の特徴

痛み

出血

硬いしこり

症状が次第に悪化

がん治療以外の治療は効果がない

初発症状を見逃さない

耳のがんの初発症状

耳痛

耳漏

耳出血

外耳道

鼓膜

誘因なく発症する

外耳炎や中耳炎のような症状

鼻のがんの初発症状

鼻閉（急速に悪化）

鼻漏

鼻出血（片側、持続、少量）

鼻内痛、頬部痛

誘因（風邪）なく発症する片側のみ

鼻炎やちくのうのような症状

口のがんの初発症状

口内痛（舌痛）

出血

硬いしこり

口の中は観察できる

・治らないアフタ（潰瘍）

・硬い

口内炎のような症状

のど（咽頭）のがんの初発症状

のどの痛み

耳つまり（上咽頭がん）

炎症症状（発熱・咳など）を伴わない

咽頭炎のような症状

のど（喉頭）のがんの初発症状

声のかすれ

のどの痛み

炎症症状（発熱・咳など）を伴わない

喉頭炎のような症状

唾液腺がんの初発症状

しこり

痛み

耳下腺：耳の下や前

顎下腺：あごの下

炎症症状（発熱・発赤）を伴わない

良性腫瘍やリンパ節炎のような症状

甲状腺がんの初発症状

前頸部のしこり

側頸部のしこり（リンパ節）

炎症症状（発熱・発赤）を伴わない

良性腫瘍やリンパ節炎のような症状

病院での診断手順

1.どこが悪いか、何がんが疑われるか：問診

2.がんの確認：視診・触診・超音波検査1）視診・肉眼：口腔がん・内視鏡：鼻のがん、咽頭がん、喉頭がん・顕微鏡：耳のがん2）触診唾液腺がん、甲状腺がん、転移リンパ節3）超音波検査唾液腺がん、甲状腺がん、転移リンパ節

病院での診断手順

1）肉眼：口腔がん2）内視鏡下：鼻のがん、咽頭がん、喉頭がん3）顕微鏡下：耳のがん4）超音波下：唾液腺がん、甲状腺がん、転移リンパ節（細胞診）

3. がんの確定診断：組織検査

4. がんの病期診断：各種画像検査胸部レ線、CT、MRI、PET

5. 全身状態のチェック：各種全身検査胸部レ線、血液検査、心電図、呼吸機能検査

頭頸部がんの治療

頭頸部がんの治療

放射線治療

抗がん剤治療

手術治療

頭頸部がんは領域に応じた臨床的特徴をもち、治療法も一様ではない

頭頸部がんの治療

放射線治療

抗がん剤治療

手術治療

上咽頭がん+

頭頸部がんの治療

放射線治療

抗がん剤治療

手術治療

唾液腺がん

甲状腺がん

頭頸部がんの治療戦略

放射線治療

抗がん剤治療

手術治療

早期がん

進行がん

頭頸科領域の特徴

日常生活を送る上で重要な臓器・感覚器が集中

美容的に重要な顔面を含む

できる限り機能と形態を温存する治療

早期がんの治療

放射線治療（+抗がん剤治療）

手術治療

→

臓器を温存する

→ 小手術

進行がんの治療

1）広範切除手術

2）機能・形態温存手術

3）集学的治療

例：上顎がん

上あごをとる

上あごを作る

がんを消す

機能や形態を大きく損なう

種々の再建手術を駆使

放射線+抗がん剤+手術

中咽頭がん（T3N2bM0, 79M）抗がん剤

1回目 抗がん剤2回目治療前

超選択的動注化学療法

腫瘍の栄養動脈内にカテーテルを挿入し、抗癌剤を投与する治療法

高濃度の抗癌剤暴露

抗腫瘍効果が高い

舌動脈

総頸動脈

動注用 カテーテル

腫瘍の栄養動脈

内頚静脈

中和剤用 カテーテル

CDDPを用いた超選択的動注療法

動注用 カテーテル

総頸動脈

内頚静脈

中和剤用 カテーテル

腫瘍の栄養動脈

CDDPを用いた超選択的動注療法

超選択動注化学療法の実際

治療前 動注後

上顎がんに対する動注治療

上顎がん例の治療後の顔貌

動注1回後 2回後 最終

治療前

3回後

喉頭がんに対する動注治療

進行癌における治療結果

原発がんの制御率

腫瘍消失

75%腫瘍縮小

21%

奏効率 96%

大きな手術が激減

おわりに

頭頸科領域は人が日常・社会生活を行うために重要な器

官と顔面を持つ.

頭頸部がんは領域に応じた臨床的特徴を持ち、治療法や

予後が異なる.

頭頸部がんの治療は様々な機能障害や容貌の変化をも

たらし、治療後のQOLは悪化する.

できる限り早期に治療を行うことが重要.

進行がんにおいても根治的かつQOLの高い治療が可能

となってきた.

ご清聴ありがとうございました

頭頸部癌の診断と治療スライド番号 2スライド番号 3本日のお話の内容頭頸部がんとは？頭頸科（とうけいか）とは？頭頸部腫瘍スライド番号 8代表的な頭頸部がん上顎（洞）がん舌がん喉頭がんスライド番号 13スライド番号 14スライド番号 15スライド番号 16スライド番号 17スライド番号 18頭頸部がんの診断スライド番号 20スライド番号 21耳のがんの初発症状鼻のがんの初発症状口のがんの初発症状のど（咽頭）のがんの初発症状のど（喉頭）のがんの初発症状唾液腺がんの初発症状甲状腺がんの初発症状スライド番号 29スライド番号 30頭頸部がんの治療頭頸部がんの治療スライド番号 33スライド番号 34スライド番号 35スライド番号 36早期がんの治療スライド番号 38スライド番号 39スライド番号 40スライド番号 41スライド番号 42超選択動注化学療法の実際スライド番号 44スライド番号 45スライド番号 46進行癌における治療結果おわりにスライド番号 49