南大沢駅にほど近い首都大学東京の南大沢キャンパス1号館の … ·...

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平成27年9月1日(火)から4日(金) までの4日間、京王電鉄相模原線の南大沢 駅近くの首都大学東京(2005年に都立 大学、都立科学技術大学、都立保健科学大 学、都立短期大学が統合)の南大沢キャン パスで日本行動計量学会第43回年次大 会があり、ラウンドテーブルや講演会、特 別セッションなどが開催されました。 9月2日(水)午前10時から12時ま で、特別セッション第5会場で「企業が求 めるデータサイエンス教育の展開」をテー マの講演がありました。 実践女子大学の竹内光悦先生の司会で ①NTTデータ数理システムの小木しの ぶ部長が「データから情報を引き出す力」、 ②QCサークル京浜地区顧問で日本品質 管理学会TQE特別委員会委員の前川恒 久氏が「企業ニーズと乖離する学校教育」、 ③東京大学大学院教授の竹村彰通先生が 「データサイエンスを専門に学ぶ大学教 育の展望」をテーマに発表を行いました。 小木部長はお客様との間で直接、技術的 なデータサイエンス上のシステム開発な どに係わる立場から、お客様が求めるデー タの展開、データから情報を引き出すため に処理などを扱うサイエンティストの必 要性などを40分間、プレゼンテーション をおこないました。 続いて日本品質管理学会のTQE特別 委員会委員の前川委員は、長年にわたり企 業内研修を担当してきた経験から、バブル 崩壊後の日本では採用した新入社員の学 力低下が目立ち、学力レベル向上に向け、 学校教育の在り方に疑問を提起しました。 最後に登壇した東京大学大学院情報理 工学系研究科数理情報学専攻の教授・竹村 先生は企業が求めるデータサイエンティ ストを育成するための新たな学部を、滋賀 大学に起ち上げるべく取組んでいますが、 東京と彦根を二足のワラジで飛び歩く、こ れがなかなかの難題のよう、そんな様子を ご紹介頂きました。 南大沢駅にほど近い首都大学東京の南大沢キャンパス1号館の大小10会議室を使っての 日本行動計量学会の第43回年次大会の一環として開催されたシンポジウム レポート作成:前川 恒久 QCサークル京浜地区・顧問 (一社)日本品質管理学会 TQE特別委員会・委員

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Page 1: 南大沢駅にほど近い首都大学東京の南大沢キャンパス1号館の … · 多くの講座が開かれているそうです。 一方データサイエンティストと言う範

平成27年9月1日(火)から4日(金)までの4日間、京王電鉄相模原線の南大沢駅近くの首都大学東京(2005年に都立大学、都立科学技術大学、都立保健科学大学、都立短期大学が統合)の南大沢キャンパスで日本行動計量学会第43回年次大会があり、ラウンドテーブルや講演会、特別セッションなどが開催されました。 9月2日(水)午前10時から12時ま

で、特別セッション第5会場で「企業が求めるデータサイエンス教育の展開」をテーマの講演がありました。 実践女子大学の竹内光悦先生の司会で

①NTTデータ数理システムの小木しのぶ部長が「データから情報を引き出す力」、②QCサークル京浜地区顧問で日本品質管理学会TQE特別委員会委員の前川恒久氏が「企業ニーズと乖離する学校教育」、③東京大学大学院教授の竹村彰通先生が「データサイエンスを専門に学ぶ大学教育の展望」をテーマに発表を行いました。

小木部長はお客様との間で直接、技術的なデータサイエンス上のシステム開発などに係わる立場から、お客様が求めるデータの展開、データから情報を引き出すために処理などを扱うサイエンティストの必要性などを40分間、プレゼンテーションをおこないました。

続いて日本品質管理学会のTQE特別委員会委員の前川委員は、長年にわたり企業内研修を担当してきた経験から、バブル崩壊後の日本では採用した新入社員の学力低下が目立ち、学力レベル向上に向け、学校教育の在り方に疑問を提起しました。 最後に登壇した東京大学大学院情報理

工学系研究科数理情報学専攻の教授・竹村先生は企業が求めるデータサイエンティストを育成するための新たな学部を、滋賀大学に起ち上げるべく取組んでいますが、東京と彦根を二足のワラジで飛び歩く、これがなかなかの難題のよう、そんな様子をご紹介頂きました。

南大沢駅にほど近い首都大学東京の南大沢キャンパス1号館の大小10会議室を使っての 日本行動計量学会の第43回年次大会の一環として開催されたシンポジウム

((一一社社))日日本本品品質質管管理理学学会会TTQQEE特特別別委委員員会会22001155年年99月月22日日((水水))

レポート作成:前川 恒久 QCサークル京浜地区・顧問 (一社)日本品質管理学会 TQE特別委員会・委員

Page 2: 南大沢駅にほど近い首都大学東京の南大沢キャンパス1号館の … · 多くの講座が開かれているそうです。 一方データサイエンティストと言う範

最初に登壇したNTTデータ数理システムの小木しのぶ部長、データの収集から分析、情報をもとに計画、計画をシミュレーションを行い、実行すると言う一連の作業の中で、お客様と打合せていて考え方の違いに驚かされると言います。 ビッグデータの時代になってデータの

活用に注目が集まるが、その前に統計解析があることが理解されない、データを活かすためにはむしろその前段にある解析能力を持ったデータサイエンティストの必要性が高まっているといいます。 しかし数年前からデータサイエンティ

ストの不足が明らかになり、育成が急務だが、育成する機関が日本には無いのが実情、そうしたニーズに応えるため世の中では多くの講座が開かれているそうです。

一方データサイエンティストと言う範

疇には入らないまでも、企業内には情報を処理活用するための人材は多く、彼らの分

析能力を高め、活用することも一つの方法なのかも知れません。

データ解析やデータマイニングなどで・・・・

ビッグデータ時代、関心は高いが・・・・ データの収集から活用までの流れは・・・・

最初のプレゼンターNTTデータ数理システムの小木部長、データを扱う企業として 多くのお客様と接する中で、お客様との間でデータに対する大きな考え方の違いがあると指摘

Page 3: 南大沢駅にほど近い首都大学東京の南大沢キャンパス1号館の … · 多くの講座が開かれているそうです。 一方データサイエンティストと言う範

続いて長年、企業内で研修講師を務めて

きたQCサークル京浜地区顧問で日本品

質管理学会TQE特別委員会委員の前川

氏が登壇、バブル崩壊後に入社してくる新

入社員の学力レベルが低下していること

が問題になり、典型である“統計能力”の

低下の原因は米国や英連邦諸国との教育

期間の差が背景にあると説明しました。

がが社会に供給され社会に供給され続けてい続けている点る点!?!?

実績値実績値

大きな問題「学校教育と産業界のニーズとの乖離」

産業界産業界の方向の方向

教育界の方向?教育界の方向?

問題なのは企業問題なのは企業が求める能力にが求める能力に届かない届かない新卒者新卒者

象徴的な出来事が今年4月のトヨタ自

動車の新入社員研修の5ヵ月間を1年間

に延長と言う発表に表れています。

他の企業、特に中小企業はさらに厳しい

状況に置かれており、原因は教育界が目指

す方向と企業が期待する能力との間に大

きな乖離があるためと指摘しました。

新入社員の中には“データの採り方”を

理解できない者もおり、企業は社員教育の

強化を求められていますが、社内の「品質

管理研修」の中の基礎講座で実施した折り

紙の犬の顔やヘソ飛行機と言う簡単な演

習を通じて“データの採り方”や「問題発

見プロセス」あるいは「問題解決プロセス」

を指導してきたことを紹介しました。

正確に“犬の顔”の大きさを測ります正確に“測る”(検査)

左右両耳先端を1/10mm単位で測ります

基本となるデータ収集、データの“見え

る化”により問題を具体的に見つけ、その

真因を見極め、問題解決を図る「問題解決

プロセス」を、演習を通じて習得し、問題

解決力を身に付ける演習の紹介でした。

ミカちゃんは140㎜~144㎜の幅、キッコちゃん141㎜~142㎜の幅

(単位:㎜)犬の顔の横の寸法

136137138139

140141142143144145

Mik①

Mik②

Mik③

Mik④

Mik⑤

Nak①

Nak②

Nak③

Nak④

Nak⑤

Han①

Han②

Han④

Han⑤

Kik①

Kik②

Kik③

Kik④

Kik⑤

Oik①

Oik②

Oik④

Oik⑤

Han③

Oik③

Page 4: 南大沢駅にほど近い首都大学東京の南大沢キャンパス1号館の … · 多くの講座が開かれているそうです。 一方データサイエンティストと言う範

最後に登壇したのが東京大学大学院情

報理工学系研究科数理情報学専攻教授で、

滋賀大学が新設を申請する準備作業中の

データサイエンス教育研究推進室長でも

ある竹村彰通先生です。

前2名の発表でも指摘されたとおり、日

本では多くの大学が授業の中でデータを

活用すべく統計教育を行っていますが「デ

ータサイエンス」と銘打って教える大学は

無く、滋賀大学が再来年の開講を目指して

「データサイエンス教育」と明記した学科

を新設するため申請準備をしており、竹村

先生が責任者として奮闘しています。

そうした学科新設の申請のための裏話

や苦労談などが紹介されました。

欧米の多くの大学に「統計学部」があり

ますが、日本ではこの数年、ようやく数大

学が新設したに留まっていますが、データ

サイエンティストの育成とさらに大幅な

遅れが出ていることが知られています。

そうした背景から日本での“データサイ

エンティスト”育成の学部新設に向けて申

請に取組むことは注目に値します。

特に米国ではデータサイエンティスト

に対する社会的な評価が高く、日本でも高

まることが期待されることから、竹村先生

の取組みが成功することを祈ります。

以上3名の講師による講演終了後には

質疑応答が行われ、12時過ぎ、予定され

た講演は終了しました。