設備投資計画におけるリスク評価 -...
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• 設備投資意思決定における伝統的なリスク評価の方法①回収期間の短縮や回収期間法の適用 回収期間を短縮してリスクを織り込む(5年!3年)②高い割引率の適用 リスクの高いプロジェクトには高い割引率を適用③期待値による計算④ディシジョン・ツリーを書く
設備投資計画におけるリスク評価• 期待値による計算のケース
200億円の投資によって,A案(3年後): 好景気 270億円(60%),不景気 160億円(40%)B案(5年後): 好景気 300億円(70%),不景気 180億円(30%)資本コストを5%としたときの正味現在価値で投資意思決定を行う。
設備投資計画におけるリスク評価
• A案(270!0.6+160!0.4)/(1.05)" 200 = "5
• B案(300!0.7+180!0.3)/(1.05)" 200 = 7
3
5
• ディシジョン・ツリーで考える場合
設備投資計画におけるリスク評価
200億円投資
A案 3年
B案 5年
270(0.6)
160(0.4)300(0.7)
180(0.3)
=162
= 64
= 54
= 210
+
+
=226
=264
現在価値195億円
現在価値207億円
• リアル・オプションとは経営環境は激しく変化し,実際に全てのシナリオを投資案に組み込むのは難しい。動態的な状況の中で多様な選択肢を持つ。!これを組み入れた投資計算をリアル・オプションという。
• 拡張正味現在価値環境変化などを考慮した投資案の評価を行った場合の正味現在価値拡張NPV=NPV+リアル・オプションの価値
リアル・オプションの意義と概要
• リアル・オプションの計算方法①金融オプションの評価方法を実物資産に適用②モンテカルロ・シミュレーションを用いて評価
• リアル・オプションの種類①延期オプション 事業に必要な最低限の投資を行ったうえで,将来の状況を 見通せるようになってから更なる投資の可否を決定する。②拡張オプション 投資後,事業が有利になる見通しがある場合
リアル・オプションの意義と概要 リアル・オプションの意義と概要
• リアル・オプションの種類③縮小オプション 投資後,事業が不利になる見通しがある場合④撤退オプション 事業撤退を選択肢に入れる場合⑤段階オプション 段階的に事業を進めていき,十分な見通しが立つ場合にのみ 次のステップに入れるオプション
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測
• 設備投資の意思決定計算において必要とする情報!投資案を採用することで新たに発生すると予想される 現金流入額と流出額(=キャッシュ・フロー)に関する 情報である。
• しかしながら,設備投資案の採用により年々得られる税引後イン・キャッシュ・フローの増分と,会計上の税引後当期純利益の増分は,通常一致しない。
☞減価償却費などの非現金支出費用が影響を及ぼす。
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測• 法人税などによる増分キャッシュ・フロー
現金支出費用
会計上の損益計算(設備投資による増加分)
製品売上収入(売上高)
利益税引後利益 法人税
税率
現金支出費用<COF>
キャッシュ・フロー(設備投資による増加分)
製品売上収入<CIF>企業内部に
残るCF
税引後CIF
法人税<COF>
税率
税引後純現金流入額= (製品売上収入"現金支出費用)!(1"法人税率)
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測• 減価償却費による法人税節約額
現金支出費用
会計上の損益計算(設備投資による増加分)
製品売上収入(売上高)
利益税引後利益 法人税
現金支出費用<COF>
キャッシュ・フロー(設備投資による増加分)
製品売上収入<CIF>
利益
減価償却費
タックス・シールド:減価償却費による法人税節約額
減価償却費
税引後純現金流入額=(製品売上収入"現金支出費用)! (1 " 法人税率)+ 減価償却費! 法人税率
CF利益+減価償却費税引後
CIF法人税<COF>
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測• 例題を考えてみましょう。
• 問1:法人税を考慮しない場合新設備Xへの投資案を採用すれば,新たに生じることになるCF項目は以下のようになる。①設備Xへの初期投資額 100,000千円②と③ 投資案から生じる年々の経済効果
採用後 採用前 差額
製品売上高 325,000千円 210,000千円 115,000千円
現金支出費用 170,000千円 90,000千円 80,000千円
減価償却費 53,000千円 35,000千円 18,000千円
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測• 問1:法人税を考慮しない場合(続き)④投資終了時(5年度末)における固定資産の売却収入: 6,000千円
• 以上から,毎年生じるCFは下図のようになる。
現時点 1年度末 2年度末 3年度末 4年度末 5年度末
収入6,000
収入115,000 115,000 115,000 115,000 115,000
支出 100,000 80,000 80,000 80,000 80,000 80,000
NETCF -100,000 35,000 35,000 35,000 35,000 41,000
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測• 問2:法人税を考慮する場合①設備Xへの初期投資額 100,000千円②~④ 税引後売上収入:115,000千円 !(1 " 0.5)=57,500千円 税引後現金支出費用: 80,000千円 !(1 " 0.5)=40,000千円 減価償却費による法人税節約額: 18,000千円 ! 0.5 = 9,000千円⑤投資終了時における固定資産の売却収入:6,000千円⑥設備売却損による法人税節約額: 4,000千円 ! 0.5=2,000千円
• 以上から,毎年生じるキャッシュ・フローは下図のようになる。
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測
現時点 1年度末 2年度末 3年度末 4年度末 5年度末
収入
2,000
収入6,000
収入9,000 9,000 9,000 9,000 9,000
収入
57,500 57,500 57,500 57,500 57,500
支出 100,000 40,000 40,000 40,000 40,000 40,000
NETCF -100,000 26,500 26,500 26,500 26,500 34,500
• 問3:正味現在価値の計算!問2で求めたCFを5%の資本コスト率で割引計算し, 正味現在価値を求める。1年度末から5年度末のCFの現在価値は120,997.1千円と求められるので,正味現在価値は20,997.1千円となる。
設備投資におけるキャッシュ・フローの予測
基本管理会計⑧短期利益計画と損益分岐点分析
• 目標利益の設定!利益計画の策定!売上高と生産高,コストの計画を策定する。
• 損益分岐点(CVP)分析費用と収益が分岐する点を算定するための分析損益分岐点を算出する過程を通じて原価(Cost),操業度(Volume),利益(Profit)の関係を分析する。!短期利益計画設定の技法として使われる。
• 固定費と変動費固定費:操業度の増減に関わらず総額で変化しない原価変動費:操業度の増減に応じて比例的に変化する原価
損益分岐点分析の経営への活用
• 限界利益(貢献利益)=売上高 " 変動費
• 損益計算書を用いて概念整理をすると,
損益分岐点分析の経営への活用
売上高
売上原価
売上総利益
販管費
営業利益
1,000,000
500,000
500,000
300,000
200,000
売上高 1,000,000
営業利益 200,000
変動費
限界(貢献)利益
固定費
600,000
400,000
200,000
• 損益分岐点図表
損益分岐点分析の経営への活用
金額
売上高(操業度)
固定費
変動費損益分岐点
売上高線利益
• 損益分岐点売上高損益分岐点" 固定費 " 変動費= 0(ゼロ)
目標利益達成へのアプローチ・固定費の削減 例)人件費の見直し・変動費の削減 例)製造単価・売上高の増加 例)販売価格の見直し
損益分岐点分析の経営への活用• 損益分岐点図表で貢献利益の意味を理解する。
金額
売上高(操業度)
固定費
変動費
営業利益
"貢献利益
売上高線
• 貢献利益は,固定費を賄い,かつどれだけの営業利益を生み出しているのかを測定する指標である。
• 例題を解いてみましょう。
• 例題の解答損益分岐点での売上数量をXとすると,損益分岐点売上高は利益ゼロの点である。よって, 400X = 300X + 3,000,000
100X = 3,000,000 X = 30,000
損益分岐点分析の経営への活用
損益分岐点売上高 =固定費貢献利益率 =
固定費
1 "変動費売上高
損益分岐点売上高は12,000,000円
• 変動費,固定費が情報として与えられている際の損益分岐点売上高の求め方
損益分岐点分析の経営への活用• 例題②を解いてみましょう。
• 例題②の解答先の式にそれぞれの式を代入すると,
損益分岐点売上高 =700,000
500,000
1,000,000
= 1,400,000
現在の計画では20万円の赤字になるが,140万円以上売り上げる計画を立てれば損益分岐点を超える(利益が生まれる)。
1"
• 固定費,変動費の増減固定費が高くなると経営の不安定さが増す。例)装置産業(鉄鋼,石油化学,映画館,遊園地)!売上高,変動費,固定費,目標利益の関係を考える。
• 貢献利益の意味を図示して考える。
損益分岐点分析の展開と前提
売上高1,000,000
変動費600,000
貢献利益400,000
貢献利益400,000
固定費200,000
営業利益200,000
固定費300,000
100,000
貢献利益に占める固定費の割合が多くなると,営業利益が小さくなる。
損益分岐点分析の展開と前提
• 例題の続き③例題②で,固定費が200,000円増えて900,000円になると 損益分岐点売上高はいくらになるか。
④例題②で,変動費が200,000円減少して300,000円になった とき,固定費が変わらないとすると損益分岐点売上高は いくらになるか。
• 解答①固定費が増加したとき
損益分岐点分析の展開と前提
損益分岐点売上高 =900,000
= 1,800,0000.5
金額
売上高(操業度)
固定費
変動費損益分岐点
売上高(操業度)
固定費
変動費
損益分岐点
1,400,000
700,000
900,000
1,800,000
損益分岐点分析の展開と前提②変動費が減少したとき
損益分岐点売上高 =700,000
= 1,000,0000.7
売上高(操業度)
固定費
変動費
損益分岐点700,000
1,000,000
損益分岐点1,400,000 変動費
• 目標利益売上高の算定短期利益計画では目標利益を定める必要がある。!損益分岐点分析に目標利益を付け加えれば, 目標利益売上高を算出できる。
損益分岐点分析の展開と前提
目標利益売上高 =固定費+目標利益
1 "変動費売上高
• 例題を解いてみましょう。
• 解答目標利益は限界利益(貢献利益)の増加と考えればよい。したがって,下記のような計算式になる。
損益分岐点分析の展開と前提
目標利益売上高 =700,000+100,000
1 "500,000
1,000,000
= 1,600,000
売上高 1,000,000
営業利益 △200,000
変動費限界利益固定費
500,000
500,000
700,000
売上高 1,600,000
営業利益 100,000
変動費限界利益固定費
800,000
800,000
700,000
• 一定の目標売上利益率を達成するための売上高
損益分岐点分析の展開と前提
目標売上利益率の売上高 =固定費
1 "変動費売上高( )+目標売上利益率
• 例題を解いてみましょう。• 解答目標売上利益率の売上高 =
700,000
1 " 50%(変動費率)( )+15%
= 700,000÷0.35
= 2,000,000
損益分岐点分析の展開と前提• 安全余裕率計画売上高と損益分岐点売上高の関係から,企業の安全性を示す指標として用いられる。
安全余裕率 = 計画売上高計画売上高 " 損益分岐点売上高
損益分岐点比率 = 現在の売上高損益分岐点売上高
• 損益分岐点比率損益分岐点の売上高が現在の売上高の何%水準かを表すもので,この比率が低いほど企業の収益構造が優れていると言える。
損益分岐点分析の展開と前提• 例題を解いてみましょう。
=2,000,000
1,400,000
= 70%
• 解答
安全余裕率 =2,000,000
2,000,000"1,400,000
= 30%
損益分岐点比率
• 解答①損益分岐点の売上高(と販売量)
損益分岐点分析の展開と前提
損益分岐点売上高=貢献利益率固定費
で求められる。
貢献利益率=売価 " 変動費
売価=
@400 " @120
@400= 0.7
よって,損益分岐点売上高=
0.7
42,000=60,000円
このときの,販売量は,60,000 ÷ @400円 = 150個
損益分岐点分析の展開と前提• 解答(つづき)②目標利益140,000円を達成するための売上高と販売量
目標利益における売上高=貢献利益率
固定費+目標利益で求められる。
目標利益売上高=42,000+140,000
0.7= 260,000
よって,
このときの,販売量は,260,000 ÷ @400円 = 650個
損益分岐点分析の展開と前提• 解答(つづき)③目標利益率 45%を達成するための売上高と販売量
目標利益率における売上高
貢献利益率"目標利益率
固定費で求められる。
目標利益率売上高=42,000
0.7 " 0.45=168,000
よって,
このときの,販売量は,168,000 ÷ @400円 = 420個
=
• 解答(つづき)④安全余裕率
安全余裕率予想売上高
予想売上高 " 損益分岐点売上高で求められる。=
損益分岐点分析の展開と前提
安全余裕率=200,000 " 60,000
200,000=70%
よって,
多品種製品の利益計画• 多品種製品のCVP分析製造・販売する製品の構成割合が事前に決まっている場合,その割合で構成できる最小のセットを作り,そのセットを1つの製品であるかのように考え,単一製品のCVP分析と同様の分析を行う。
• 例題の解答①損益分岐点における売上高 製品Aを2個,製品Bを3個で1つのセットと考える。 損益分岐点での売上高は販売セット数をXとすると, (3,000!2+1,500!3)! X = (1,800!2+900!3)!X +2,100,000
X=2,100,000÷4,200 なので, X= 500
よって,製品Aは1,000個,製品Bは1,500個となる。
多品種製品の利益計画
• 例題の解答つづき②損益分岐点売上高は 10,500!500=5,250,000円
③目標営業利益840,000円を達成する売上販売数量をYと すると, 10,500Y = 6,300Y + 2,100,000 + 840,000
4,200Y = 2,940,000
Y = 700
よって,製品Aが1,400個,製品Bが2,100個となる。