血液透析用グラフトにおける 過剰血流に対する対処法...2014/10/18  · 1100 760...

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52回日本人工臓器学会大会 20141018日(土) 15501720 京王プラザホテル札幌2F エミネンスホールB 血液透析用グラフトの問題点と今後の期待 池田バスキュラーアクセス・透析・内科クリニック 池田 潔 血液透析用グラフトにおける 過剰血流に対する対処法

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Page 1: 血液透析用グラフトにおける 過剰血流に対する対処法...2014/10/18  · 1100 760 1040(22カ月後) 1382 男 41 2013/10/29 瘤除去部graft置換 動脈部縫縮

第52回日本人工臓器学会大会 2014年10月18日(土) 15:50~17:20

京王プラザホテル札幌2F エミネンスホールB

血液透析用グラフトの問題点と今後の期待

池田バスキュラーアクセス・透析・内科クリニック

池田 潔

血液透析用グラフトにおける 過剰血流に対する対処法

Page 2: 血液透析用グラフトにおける 過剰血流に対する対処法...2014/10/18  · 1100 760 1040(22カ月後) 1382 男 41 2013/10/29 瘤除去部graft置換 動脈部縫縮

血液透析用グラフトの問題点

① 易感染性

→ 対策 グラフト管理で感染率はカテーテルと同等の報告あり。

② 過剰血流による以下の症状 1)スチール症候群 2)心負荷による動悸等の心不全症状 3)drainage vein の短期再狭窄 → 対策 グラフトの部分縫縮、部分結紮、部分置換

③ Seroma の形成 → 対策 PUグラフトによる置換術

④ 穿刺部位の部分破裂、グラフトの荒廃による閉塞、 遺残グラフト感染

② 過剰血流による以下の症状 1)スチール症候群 2)心負荷による動悸等の心不全症状 3)drainage vein の短期再狭窄 → 対策 グラフトの部分縫縮、部分結紮、部分置換,,

Page 3: 血液透析用グラフトにおける 過剰血流に対する対処法...2014/10/18  · 1100 760 1040(22カ月後) 1382 男 41 2013/10/29 瘤除去部graft置換 動脈部縫縮

Case 性別 年齢 手術日 手術理由 術後症状 の有無 (+/-)

1927 男 69 2012/07/17 過剰血流によるシャント肢の

腫脹 ―

1460 女 77 2012/07/19 瘤の増大と過剰血流 ―

1587 男 51 2012/10/15 スチール症候群による冷感・

疼痛 ―

1382 男 41 2013/10/29 瘤の短期間の増大 ―

1868 女 75 2014/05/27 過剰血流による動悸・

倦怠感 ―

1317 男 72 2014/07/11 過剰血流による下肢の

倦怠感 ―

#1 過剰血流による手術症例

Page 4: 血液透析用グラフトにおける 過剰血流に対する対処法...2014/10/18  · 1100 760 1040(22カ月後) 1382 男 41 2013/10/29 瘤除去部graft置換 動脈部縫縮

Case 性別 年齢 手術日 手術方法 人工血管 術前 血流量

1927 男 69 2012/07/17 graft部分置換 INTERING 4mmx4cm

3300

1460 女 77 2012/07/19 瘤除去・graft 部分置換

INTERING 4mmx3cm

1150

1587 男 51 2012/10/15 graftの一部切除

縫縮 ATRIUM

6mm 1100

1382 男 41 2013/10/29 瘤除去部graft置換 動脈部分縫縮

INTERING 4mmx3cm

2200

1868 女 75 2014/05/27 ナイロン糸による

graft縫縮2cm ? 1550

1317 男 72 2014/07/11 ナイロン糸による

graft縫縮4cm ATRIUM 1650

#2 過剰血流graftの血流量コントロール術

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① 術式の有効性の判断をBモードによる上腕動脈の血流測定に よって、術前、術中、術直後と長期間の経過観察を行った。 ② 症状の消失の有無で実効性を判定した。

方法

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R.I.=PSV-EDV/PSV P.I.=PSV-EDV/TAMV

R.I.・ P.I.の計算式

PSV:収縮期最大速度 EDV:拡張期最大速度 TAMV:平均血流速度

PSV EDV TAMV

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Case 1927 : 69才・男

DSA所見

手術理由:

過剰血流によるシャント肢の腫脹

手術方法:

graft部分置換

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Case 1927 : 69才・男

オペ前

RI 0.35

PI 0.45

血流量 3300

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Case 1927 : 69才・男

オペ後

RI 0.48

PI 0.70

血流量 1000

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Case 1460 : 77才・女 手術理由:瘤の増大と過剰血流

手術方法:瘤除去・graft部分置換

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Case 1460 : 77才・女

オペ前

RI 0.48

PI 0.73

血流量 1150

Page 12: 血液透析用グラフトにおける 過剰血流に対する対処法...2014/10/18  · 1100 760 1040(22カ月後) 1382 男 41 2013/10/29 瘤除去部graft置換 動脈部縫縮

Case 1460 : 77才・女

オペ後

RI 0.50

PI 0.75

血流量 600

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Case 1587 : 51才・男 手術理由:スチール症候群による冷感・疼痛

手術方法:graftの一部切除・縫縮

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Case 1587 : 51才・男

オペ前

RI 0.38

PI 0.50

血流量 1100

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Case 1587 : 51才・男

オペ後

RI 0.36

PI 0.45

血流量 760

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Case 1382 : 41才・男

DSA所見

手術理由:

瘤の短期間の増大

手術方法:

瘤除去部graft置換・動脈部縫縮

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Case 1382 : 41才・男

オペ前

RI 0.40

PI 0.57

血流量 2200

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Case 1382 : 41才・男

オペ後

RI 069

PI 1.46

血流量 980

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Case 1868 : 72才・女 手術理由:過剰血流による動悸・倦怠感

手術方法:ナイロン糸によるgraft縫縮2cm

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Case 1868 : 72才・女

オペ前

RI 0.42

PI 0.54

血流量 1550

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Case 1868 : 72才・女

オペ後

RI 0.54

PI 0.80

血流量 560

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年齢 性別 透析歴 原疾患 シャント

75 男 5年1か月 慢性糸球体腎炎 左前腕 AVG

Case 1317 :

DSA所見

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Case 1317 : 75才・男 手術理由:過剰血流による下肢の倦怠感

手術方法:ナイロン糸によるgraft縫縮4cm

Page 24: 血液透析用グラフトにおける 過剰血流に対する対処法...2014/10/18  · 1100 760 1040(22カ月後) 1382 男 41 2013/10/29 瘤除去部graft置換 動脈部縫縮

Case 1317 : 75才・男 バンディング(2014.7.11)

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Case 1317 : 75才・男

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

1.4

1.6

1.8

2

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

02

:25

:51

02

:26

:39

02

:27

:44

02

:46

:10

02

:46

:52

02

:47

:20

02

:48

:04

02

:48

:21

02

:48

:53

02

:49

:56

02

:50

:05

02

:50

:23

02

:50

:42

02

:51

:08

02

:51

:38

02

:52

:03

02

:52

:29

02

:52

:45

00

:53

:32

02

:53

:53

02

:54

:10

02

:54

:33

02

:54

:51

03

:04

:36

03

:04

:47

03

:05

:10

03

:05

:25

血管エコーの経過

血流量 RI PI

バンディング(2014.7.11)

流量 PI・RI

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Case 1317 : 75才・男 経過(2014.10.4)

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0

500

1000

1500

2000

2500

3000

3500

オペ前 オペ後 経過

血流量の経過 1317 1868 1927 1460 1382 1587

ml/分

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Case 性別 年齢 手術日 手術方法 術前 血流量

術後 血流量

最新 血流量

1927 男 69 2012/07/17 graft部分置換 3300 1000 1700( 2カ月後)

1460 女 77 2012/07/19 瘤除去・graft 部分置換

1150 600 980(26カ月後)

1587 男 51 2012/10/15 graftの一部切除

縫縮 1100 760 1040(22カ月後)

1382 男 41 2013/10/29 瘤除去部graft置換 動脈部縫縮

2200 980 1300(12カ月後)

1868 女 75 2014/05/27 ナイロン糸による

graft縫縮2cm 1550 560 1100( 3カ月後)

1317 男 72 2014/07/11 ナイロン糸による

graft縫縮4cm 1650 540 560( 3カ月後)

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結果

#1 グラフトを6mmから部分的に4cmx径4mmに置 換変更した症例では、短期に血流量が術前の血流 量に戻った。 #2 血流量を術中にモニターしながらグラフトを4cm に渡ってナイロン糸で縫縮を行った症例では、血流 が維持された。

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まとめ

過剰血流対策には、グラフトの4cm以上に対して縫縮することで、問題が解決できた症例を経験した。

今後はグラフト移植後の血流量をモニタリングし、早期に対策を実行することも透析維持に重要と考えられた。