大雪による温室の被害とその対策...2015/8/19 1...

7
2015/8/19 1 大雪による温室の被害とその対策 農研機構 農村工学研究所 森山英樹 ① 温室の種類 ② 温室の設計積雪荷重 20142月大雪の被害 ④ 雪害対策 2015810日 気象研究所(15min温室の種類 -パイプハウス- 温室の種類 -鉄骨補強パイプハウス- 温室の種類 -鉄骨ハウス- 温室の種類 -スリークオータ型- 温室の種類 -フェンロー型-

Upload: others

Post on 27-Feb-2021

4 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 大雪による温室の被害とその対策...2015/8/19 1 大雪による温室の被害とその対策 農研機構農村工学研究所 森山英樹 ①温室の種類 ②温室の設計積雪荷重

2015/8/19

1

大雪による温室の被害とその対策農研機構 農村工学研究所森山英樹

① 温室の種類② 温室の設計積雪荷重③ 2014年2月大雪の被害④ 雪害対策

2015年8月10日 気象研究所(15min)

温室の種類 -パイプハウス-

温室の種類 -鉄骨補強パイプハウス- 温室の種類 -鉄骨ハウス-

温室の種類 -スリークオータ型- 温室の種類 -フェンロー型-

Page 2: 大雪による温室の被害とその対策...2015/8/19 1 大雪による温室の被害とその対策 農研機構農村工学研究所 森山英樹 ①温室の種類 ②温室の設計積雪荷重

2015/8/19

2

温室の種類 -フェンロー型- 温室の種類 -低コスト耐候性ハウス(雪)-

低コスト耐候性ハウス(雪対策)では融雪装置を装備した単棟しか認められていない

間口アーチパイプ間隔

棟高

棟直管 アーチパイプ

桁行直管

合掌

垂木

つなぎ梁

軒梁

陸梁

基礎

間口

軒高

柱間隔

筋交

谷棟

合掌垂木

つなぎ梁

軒梁陸梁

基礎

間口

軒高

柱間隔

筋交

温室の種類

パイプハウス

鉄骨補強パイプハウス

アングルハウス

ガラス室果樹用ハウス

鉄骨ハウス

アングルハウス

温室は骨組や被覆材の材料、架構、基礎の有無、接合方法等によって上記のように区分されます。

タイプごとに被災モード、被災原因が異なります。

温室の種類温室の設計積雪荷重2014年2月大雪の被害雪害対策

温室の設計積雪荷重

被覆材の有無

連棟数融雪装置

なし

あり

連棟

なし

あり

単棟

荷重①

荷重②

荷重③④

荷重①:多雪地域では30 kgf/m2

荷重②:積雪荷重=最大積雪深×単位体積重量

荷重③:新積雪重量を採用できる

*1 被覆材条件:ガラスハウス、もしくは滑雪を妨げ

ない留め方の硬質板・硬質フィルムか過度のたわみのない軟質フィルムで常時栽培・暖房しているハウス

被覆材

条件*1満たさない

荷重②

満たす

整備

条件*2満たさない

荷重②⑤

満たす *2 整備条件:軒下の除雪、被覆材の整備、および

密閉度の確保

荷重⑤:屋根勾配を考慮した低減値を採用できる

30 kgf/m2

条件*3

満たさない荷重③⑤

満たす荷重⑥

荷重⑥:30 kgf/m2を採用できる

荷重④:80 kgf/m2を超える場合でも80 kgf/m2を採用できる

*3 30 kgf/m2条件:加温施設で屋根付近の室温が4℃以上、屋根勾配が20度以上、被覆材がガラス、

硬質板もしくは硬質フィルムで滑落阻害要因がないハウス

設計積雪荷重(荷重①~⑥)

温室の種類温室の設計積雪荷重2014年2月大雪の被害雪害対策

Page 3: 大雪による温室の被害とその対策...2015/8/19 1 大雪による温室の被害とその対策 農研機構農村工学研究所 森山英樹 ①温室の種類 ②温室の設計積雪荷重

2015/8/19

3

強風被害が圧倒的

園芸施設共済金の災害別支出金の割合(1988-1997)

風害

風水害

雪害・風雪害

その他

48%

26%

8%

18%

農林水産省(1997)

単棟パイプハウス 屋根の陥没

陥没した屋根

屋根の陥没

単棟パイプハウス 屋根の陥没 補強用臨時中柱の例

臨時中柱の例

臨時中柱の例

補強用臨時中柱の例

偏分布荷重の影響

補強用臨時中柱の転倒

転倒した中柱

Page 4: 大雪による温室の被害とその対策...2015/8/19 1 大雪による温室の被害とその対策 農研機構農村工学研究所 森山英樹 ①温室の種類 ②温室の設計積雪荷重

2015/8/19

4

転倒した柱

コンクリート基礎

鉄骨補強パイプハウス 柱基礎接合部の破壊

基礎

柱基礎接合用角鋼

鉄骨補強パイプハウス 接合部の破壊

柱梁接合部の破壊

転倒した柱

谷樋

部材の腐食

鉄骨補強パイプハウス 接合部の破壊

柱基礎接合部の破壊

鉄骨補強パイプハウス 接合部の破壊

基礎

柱基礎接合部の破壊

鉄骨ハウス 接合部の破壊

転倒した柱

基礎

鉄骨補強パイプハウス 基礎の沈下

盛土における基礎の沈下・谷樋から越流

沈下した基礎

Page 5: 大雪による温室の被害とその対策...2015/8/19 1 大雪による温室の被害とその対策 農研機構農村工学研究所 森山英樹 ①温室の種類 ②温室の設計積雪荷重

2015/8/19

5

フェンロー型 屋根の陥没

柱の転倒・ラチス梁の破断

フェンロー型 ラチス梁の破断

屋根屋根

ラチス梁上弦材

ラチス梁下弦材

ラチス

破断

柱柱

基礎 基礎

ほ か

• 断線による暖房停止• 温室へのアプローチ不足や遮断による現場作業の不徹底(巻き上げによる除荷の失敗・暖房装置の作動遅れ)

• 降雪中途からの暖房機作動による屋根上融雪の失敗

• 移動式カーテン展張による屋根面への加熱失敗

温室の種類温室の設計積雪荷重2014年2月大雪の被害雪害対策

対策 単棟パイプハウスのブレース

棟高の63-70%

ブレースアーチパイプ

G.L.

Moriyama et al. (2008)

パイプハウス(間口6000 mm、棟高3160 mm )に対し

てブレース(直径3.2 mmのなまし鉄線)を設置する。

156 N/m2(応力解析、屋根全面荷重)

471 N/m2(座屈解析、屋根全面荷重)

ブレースなし ブレース補強

生産者は日陰を嫌います

強度が3倍に増加

対策 単棟パイプハウスのブレース

Page 6: 大雪による温室の被害とその対策...2015/8/19 1 大雪による温室の被害とその対策 農研機構農村工学研究所 森山英樹 ①温室の種類 ②温室の設計積雪荷重

2015/8/19

6

対策 パイプ断面係数の増加直径 肉厚 断面係数

(mm) (mm) (cm3)

19.1 1.2 0.284

22.2 1.2 0.394

25.4 1.2 0.527

31.8 1.6 1.090

38.1 1.8 1.780

42.7 2.0 2.490

0.000 0.500 1.000 1.500 2.000 2.500

φ19.1-1.2

φ22.2-1.2

φ25.4-1.2

φ31.8-1.6

φ38.1-1.8

φ42.7-2.0

断面係数 (cm3)

対策 筋交の増加

力 力

基礎 基礎

柱間の筋交数生産者の理解降雪や強風前の再確認設置が容易な接合金具の開発

対策 柱基礎接合部の強度増加柱梁接合部への方杖の追加ベースプレート厚さの増加接合用角形鋼管内へのコンクリート充填

柱基礎接合用角形鋼管

コンクリート

ボルト穴保持用の木もしくは塩ビ管

コンクリート基礎

コンクリート不要箇所を塞ぐための木片

転倒した柱

コンクリート基礎

基礎

柱基礎接合用角鋼

対策 柱基礎接合部の強度増加

柱梁接合部への方杖の追加ベースプレート厚さの増加接合用角形鋼管内へのコンクリート充填

L=45mm

d

y

中立軸

コンクリート

柱基礎接合用角形鋼管

中空

柱基礎接合用角形鋼管の断面図

𝐿

2− 𝑑 𝑦2 + 60 𝐿 − 𝑑 𝑑𝑦 + 30(−𝐿2 + 3𝐿𝑑 − 2𝑑2)𝑑 = 0

断面一次モーメントの釣り合いから

L = 45 mm,d = 2.3 mmとするとy = 19.0 mm

鉄の降伏応力sを235 N/mm2,コンクリートの圧縮限界をその1/15とすると,この中立軸に対するコンクリート換算の断面二次モーメントIは1 896 702 mm4

この接合部の破壊はコンクリートの圧潰で決定されるため,接合部が許容できる曲げモーメントMは

𝑀 =

𝐼𝜎

𝑦

から1567 kN mmとなる。コンクリートを充填しない場合は1250 kNmmであるため,理論上,曲げ耐力を25 %増加することができる。

森山ら(2014)

断熱のための移動式カーテンの開放 対策 運用による対策 -融雪・落雪-

降水量判断は気象情報や降雪シミュレーションを参考にする。

降雪初期から屋根面の融雪・落雪を開始する。(融雪)暖房機によって極力高い室温を維持する。移動式カーテンは開放する。

単棟施設は滑落阻害要因(ネット被覆、フィルムのたるみ、劣化)の除去も必要。

雪を極力積もらせない

Page 7: 大雪による温室の被害とその対策...2015/8/19 1 大雪による温室の被害とその対策 農研機構農村工学研究所 森山英樹 ①温室の種類 ②温室の設計積雪荷重

2015/8/19

7

ま と め

• 非多雪における設計積雪荷重以上の降雪により多くの温室が被災した

• 単棟ハウスは屋根上の滑雪阻害要因によって被災した

• 連棟ハウスは谷部における積雪荷重の集中によって被害を受けた

• 融雪開始判断材料の必要性• 接合部補強の必要性• 経年劣化に対するメンテナンス(とその理解度向上)の重要性