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78 健康長寿県プロジェクト編 青森県の子供の生活環境と生活習慣の研究を 踏まえた人口減少克服と健康長寿への提言 青森中央学院大学 ギアゼミナール 上田 真理子 新川 麗美 PROJECT 1

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健康長寿県プロジェクト編

青森県の子供の生活環境と生活習慣の研究を

踏まえた人口減少克服と健康長寿への提言

青森中央学院大学 ギアゼミナール

上田 真理子

新川 麗美

PROJECT 1

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(1)現在の青森県

青森県の平均寿命は着実に延びてきている。しかし、全国平均と比べると依然格差があり、全国順位

は、男性、女性ともに最下位が続いている。82項で詳しく述べるが、人口減少の大きな原因は平均寿

命の短さである。また、悪性新生物、心疾患、脳血管疾患の三大死因の死亡率を年齢階階級別に全国と

比べると、本県の男性は比較的若い世代の死亡率が高いことが指摘されている。しかし、特定死因を除

去した場合では平均寿命の延びが期待できるとともに、不慮の事故等を除去した場合の平均寿命の伸び

は全国を上回っているとされている。以上から、これらの死因への対策が平均寿命の延伸のために重要

になると考えられる。

更に、不適切な食生活や運動不足などに起因する肥満は、心疾患や脳血管疾患などの生活習慣病を発

症する大きな要因と言われている。本県の肥満傾向児の出現率を男女別、年齢別に見てみると、男女と

も全ての年齢において全国を上回っている。2013年の全国保健統一調査によると、7歳、9歳、

14歳の肥満出現率が全国ワースト1位になっている。幼少時からの積み重ねによる生活習慣病発症の

リスクを少なくするためにも、健康への意識を子どもの頃から高めるとともに、適切な生活習慣を身に

つけていくことが重要である。

図1:青森県教育委員会スポーツ健康課 「平成25年度児童生徒の健康・体力」)

図1は、青森県の子どもと全国の子どもの肥満傾向児の出現率を表したグラフである。これを見ても

分かるように、どの年代においても、全国を上回っていることが分かる。

7.7%8.9%

12.0%13.3% 13.7% 13.5% 13.3%

12.2% 11.9%

13.9%13.1% 12.9%

4.1%5.4%

6.8%

8.3%9.5% 9.4% 9.6%

8.4% 7.9%

9.6% 9.1% 9.4%

0.0%

2.0%

4.0%

6.0%

8.0%

10.0%

12.0%

14.0%

16.0%

小1 小2 小3 小4 小5 小6 中1 中2 中3 高1 高2 高3

肥満傾向児の出現率(青森県男女)

青森県 全国

1 青森県の現状と取組

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(2)青森県の人口減少と平均寿命

青森県基本計画によると、青森県の人口は昭和58年をピークに減少傾向が続き平成22年の国勢調

査では137万3000人となった。以前のそれと比べると、6万3000人減少し、減少幅は過去最

大である。(図2)今後もこの傾向が続くと予想されており、国立社会保障・人口問題研究所によると、

平成52年の青森県の人口は93万2000人とされ、ついに100万人を下回る。また、減少率は平

成17年から平成22年及び平成22年から平成52年推計ともに、全国で2番目に高い。

では、なぜここまで人口減少が進んでいるのだろうか。

図2:年齢3区分別人口・人口構成割合の推移と将来推計(青森県)

出所:総務省「国勢調査」

国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)

その原因の一つは、出産適齢世代の晩婚化・未婚化などによる少子化である。青森県の少子化の現状

を出生数と合計特殊出生率から見てみる。(図3)出生数は、数年前までは1万人を超えていた。しか

し、平成21年は1万人を下回る9523人であった。それ以降は横ばいとなっていたが、平成24年

は今までよりもさらに減少し9168人となった。前年よりも363人減少していることになる。

次に、合計特殊出生率の観点から見てみる。合計特殊出生率とは、一人の女性が一生の間に産むと推

定されている子供の数のことであり、その年の15才から49歳までの女性の各年齢別出生率を合計し

たものである。

青森県では平成21年の1.26が今まで最も低かった。その後の平成22年、23年は1.38と

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上昇したが、平成24年は0.02ポイント減少の1.36となった。全国と比較してみると、平成2

年から平成17年までは全国を上回っていたが、平成18年以降は全国を下回っている。

このように、青森県の人口減少は急激に進行している。人口減少が進むと労働力人口の減少、消費活

動の低迷など青森県の社会経済に様々な影響を与えるため、人口減少のスピードを少しでも緩やかにし、

将来的には人口の増加につなげることが重要となる。

図3:出生数と合計特殊出生率の推移

出所:厚生労働省「人口動態統計」

また、日々変化する社会経済環境の中で、地域の活力を維持していくために女性の存在が注目されて

いる。青森県の女性の労働力率は全国と比べて、年齢階級別では全国を上回っている。この結果から、

本県の女性は労働を優先しなくてはならない状況にあり、それが未婚化、晩婚化につながり、子供を産

む年齢が遅れることで出生率の低下につながると考えられる。そして、子供が生まれないため人口が増

えないという人口減少サイクルが確立し始めているのではないだろうか。

なお、人口減少は青森県だけの問題というわけではない。全国においても同様である。国立社会保障・

人口問題研究所によると、平成22年は人口約1億2805万7000人だったのに対し、平成52年

には約1億727万6000人と約2000万人の人口が減少すると考えられている。(図4)

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図4:年齢3区分別人口・人口構成割合の推移と将来推計(全国)

出所:総務省「国勢調査」

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成24年1月推計)(出生中位・死亡中位仮定)

人口減少の原因には、青森県の全国平均よりも短い平均寿命も考えられる。本県の平均寿命は男女と

も延びており、平成22年で男性は77.28年、女性は85.34年である。(図5)しかし、全国

平均は男性79.59年、女性86.35年と、差が開いている。全国順位を見てみると、男性女性と

もに全国最下位が続いている。(なお、男性は昭和60年、女性は平成12年からである。)悪性新生物、

心疾患、脳血管疾患の三大死因の死亡率を年齢階級別に全国のものと比べると、青森県の男性は悪性新

生物が40歳代から、心疾患は50歳代からがかかりやすく、比較的若い世代の死亡率が高い。特定の

死因を除いた場合の平均寿命を見ると、男性の場合、悪性新生物を除去すると4.01年、心疾患では

1.73年寿命が延びることが期待される。不慮の事故や自殺の割合も全国平均よりも高いため、これ

らの死因を止めることができれば平均寿命が延び、人口の減少をくいとめることができる可能性がある。

(図6)

また、本県の肥満傾向児の出現率を男女、年齢別にみると、どちらもすべての年齢で全国平均を上回

っている。肥満は、心疾患や脳血管疾患などの生活習慣病を発症する大きな要因といわれており、食生

活の乱れや運動不足が起因している。つまり、幼少時から肥満だと将来生活習慣病を発症するリスクが

上がるため、適切な生活習慣を身に付け、子供のころから健康への意識を高める必要がある。それには、

両親など周囲の大人の協力が必要不可欠である。

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図5:都道府県別平均寿命の分布

出所:厚生労働省「平成22年都道府県別生命表」

図6:特定死因を除去した場合の平均寿命の延び

出所:厚生労働省「平成22年都道府県別生命表」

なお、平成22年度都道府県別生命表によると、平均寿命のトップは男性80.88年、女性87.

18年でともに長野県であった。しかしながら、昭和40年代の長野県は脳卒中による死亡率が高く、

男性の平均寿命は全国平均を上回っていたものの、女性は全国平均を下回り、課題を抱えていた。これ

に対して、食生活の改善を始めとした健康づくりに取り組んだ結果、平成2年以降の男性の平均寿命は

継続してトップであり、女性も上位5位以内に入るなど大きな改善が見られた。この点から、青森県も

健康づくりに取り組めば平均寿命が高くなる可能性があるということがわかる。

さらに、県外転出も人口減少の原因である。生まれた年代別に青森県の人口の変化を調べてみると、

15歳から24歳にかけての年齢層の人口が特に減少している。この年代は、中学校・高等学校及び大

(単位:年)

うち交通事故

青森県(男) 4.01 1.73 1.10 0.71 0.13 0.91 0.19 0.23 0.14

全  国(男) 3.86 1.48 0.94 0.55 0.17 0.77 0.15 0.23 0.12

青森県(女) 3.21 1.56 1.11 0.36 0.08 0.34 0.19 0.12 0.12

全  国(女) 2.96 1.54 0.96 0.34 0.07 0.35 0.17 0.11 0.10

※ 特定死因を除去した場合の平均寿命の伸びとは、ある死因が克服されたと仮定した場合の平均寿命の延びである。

肝疾患 糖尿病悪性新生物 心疾患 脳血管疾患 不慮の事故 自殺 腎不全

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学生の年齢に当たり、新卒者の相当数が、進学や就職のために県外に出ていることがわかる。近年の高

等学校の卒業生の進路を調べてみると、大学や専門学校等に進学する割合が昔に比べて増加している。

反対に就職する割合は減少している。以上のことから、希望する進学先や就職先が青森県内にないため、

やむを得ず県外に出ていく若者が多いのではないかと考えられる。また、大学進学のために県外に転出

する一方で、ほかの県の学生が県内大学等への進学のために転入をしている。しかし、転出者数が転入

者数を上回るのが現状である。この状況をくいとめる為の一番の方法は、希望する進学先や就職先が青

森県内に増えることである。しかし、それは簡単にできることではない。お金がかかるし、期間も長期

にわたる。したがって、すぐに実行することは難しいだろう。

(3)既存の取組

青森県で平均寿命の延伸と子どもの健康を守るために取り組んでいるのは、以下のものである。

① 学校での食育の授業

② 保育所発!子ども元気スリムプラン事業

③ あおもり食命人育成事業

④ 味感を育む「だし活」事業

① 学校での食育の授業

具体的には、小学校や保育園を中心に食育の授業をしている。小学校では、実際に食物を栽培し、収

穫、調理をしてみんなで食べるというものである。食べ物の大切さやありがたさを学ぶだけではなく、

近所に住む郷土料理の上手な高齢者の方を学校に招き、その地域の食文化について教わったりしている。

保育園では、箸の使い方、手を洗う習慣を身に付けさせる。また、子どもたちに栄養バランスも教えて

いる。例えば、赤、黄、緑の食品を分類する取組である。赤は、肉とか魚とかタンパク源、黄色は砂糖

などご飯とかエネルギー源のもの、緑は野菜や果物とかミネラル、ビタミンがとれるものであることを

子どもたちに教える。しかし、子どもたちが完全に理解するのは難しく、りんごは赤だから、赤の食品

だとよく間違えたりする。そして、給食やお弁当の時間に、「赤はありますか。」と質問を投げかけるな

どにより栄養バランスに興味をもってもらう取組をしている。その他、家庭科の時間や、社会科の時間

に食べ物の流通過程を勉強するなど、様々なものと組み合わせて行っている。

② 保育所発!子ども元気スリムプラン事業

県は本年度から、子どもの肥満予防を目指す「保育所発!子供元気スリムプラン事業」実施している。

県内30保育所で歩数計を使って活動量の記録や、センサーでかむ回数を数えるなど、現状を把握した

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上で健康の意識づくりを進める。また、県内の保育所に通う約2万人を対象に生活習慣などを調査・分

析する。そして、5~17歳のすべての年代で肥満傾向児どもの割合が全国平均より高い本県で、肥満

予防の有効な施策につなげる。

2014年8月上旬に青森甲田保育所で、かむ回数をカウントする「そしゃくセンサー」を顎に着け

た年長組の子どもたちが、ご飯を口に入れ、もぐもぐとかみ続けていくと、センサーのメロディーが軽

やかに響いた。

「たくさんかむことを意識することで、素材のおいしさを味わうことができ、大食いにもならない。

脳の発達にもいい」と園長は語る。同園では、そしゃくの大切さを紙芝居や絵本を通して学び、来年1

月にも同じメニューでかむ回数が増えたか調べる。同園が参加している「子ども元気スリムプラン事業」

は、県が保育連合会に委託して2カ年で実施する。

県内30のモデル保育所を3グループに分け、かむ回数、運動量、野菜を食べる量について調べ、そ

れぞれ、子どもたちに対する支援・指導を通して、正しい生活習慣を身につけてもらう。このほか、ア

ンケートなどを通して各家庭で野菜を多く食べてもらう保育園もある。

また、保育園児の全県的な調査がこれまで実施されていないことから、この事業において、県内46

8の保育所に通う3~5歳児の約2万人の身長、体重、生活習慣を調べ、来年2月にも集計、分析する

こととなっている。

③ あおもり食命人育成事業

「あおもり食命人」とは、「新鮮で安全・安心な旬の県産食材を活かした健康的な食事(=いのちを

支える食)をつくる人」という意味の造語である。

本県の地産地消を進めるため、県内の優れた料理人を「あおもり食の達人」として認定し、本県の多

種多様な農林水産物を使った料理等の活用や普及を促進しながら、県内料理人のレベルアップと 青森

県を訪れるお客様に対して「あおもりならではの食」を提供することにより、青森の食の魅力発信して

いくことを目的としている。

県は、青森県卓越技能者表彰を受賞している調理人のうち、 県産食材を使った伝統的な料理や新た

な創作料理の普及活動を積極的に行うとともに、県の事業に協力していただける方を「あおもり食の達

人」として、これまで30名認定している。

また、「あおもり食命人」制度には他の狙いもある。健康的な食生活のためには家庭での塩分を減ら

していくことが大切だが、現在の生活様式では難しい。なぜならば、現在は共働き世帯が多く、食費の

半分をお惣菜などのために使っている家庭が半数を占めるなど、食事について自分達ですべて調理する

機会が少なくなっている。別の言い方をすれば、現在の家庭では、他人が作った総菜などの「できあが

りもの」が食卓に登る機会が多いのである。このような状況から、総菜などを作る食産業の人、例えば、

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レストランの人、スーパーの人たちに減塩方法などを勉強してもらう講習会を実施している。そして、

講習会を受けた人に「食命人」という称号を授与している。

結果として、この「食命人」が調理した総菜等を購入することで、家庭では手軽に減塩をすることが

できるのである。

④ 味感を育む「だし活」事業

2014年度より、本県の豊富な農林水産物を使用した「だし商品」を開発するとともに、だしのう

ま味を活かした減塩を推進することにより、県民の健康寿命の延伸と生産者の所得向上を図ることを目

的とする「味感を育む『だし活』事業」を実施している。

青森県は、コンブやサメ、シイタケなど県産素材を使って料理用の「だしパック」を開発し、減塩を

奨励して健康寿命アップに結び付ける事業に乗り出す。学校給食用と家庭用の製品を作り、子どものこ

ろから薄味に慣れてもらうことで生活習慣病の予防につなげる。県内にはだしの素材と成り得る未活用

の農林水産物が多くあるとともに、「だしパック」の開発を通じて生産者らの所得向上も狙う。

担当の県総合販売戦略課では、農林水産物の販売や加工、学校給食や流通などの関係者らで年数回の

勉強会を開催している。また、市場に出回らない小魚類を含む素材の選定作業やマーケティング、試作

品やパッケージデザインの製作などに取り組んでいる。

2015年度までの2カ年で学校給食用と家庭用の各2種類の「だし商品」を開発する。並行して、

県の栄養職員や給食施設担当者らを対象に研修会を開くほか、家庭科の授業などでだしに関するPRも

行う。また、給食施設向けのレシピの作成や学生・社員食堂での「だし活給食」の提供、量販店を会場

にした試飲会など、需要開拓の活動も展開するなど、中食、外食産業との連携も視野に入れている。

(1)東洋経済の都市データパック(2014年版)「住みよさランキング2014」のランキングの

検証

では、人口を増加させるために何をすれば良いのか。今回、私は若者ではなく子育てをする30代以

降の家庭に注目した。子育て世代をターゲットとした理由は、若者世代よりも人口増加への寄与が高い

と考えられるためである。もし彼らが青森県に移住してもらうことができれば、より人口が増加するの

ではないかと考えたからである。青森県には、最初に述べたように豊かな自然・豊富な食材が自慢であ

ると私は考える。しかし、実際に他の人々は青森県をどのように評価しているのか。私の考えとどこが

同じでどこが違うのかを明らかにするために、①東洋経済の都市データパック(2014年版)「住み

よさランキング2014」のランキング、②英国の情報誌「MONOCLE モノクル」(2014年版)「世

2 三冊の雑誌の比較を通じた検証

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界で最も住みやすい25都市ランキング」、③Courrier Japon 2013 年 10 月号の異なる指標を使用する3

冊を比較することで青森県の現状を検証していく。

最初に東洋経済の都市データパック(2014年版)「住みよさランキング2014」のランキング

を検証する。住みよさランキングでは、安心度(①病院・一般診療所病床数②介護老人福祉施設・介護

老人保健施設定員数③出生数④保育所定員数-待機児童数)、利便度(⑤小売業年間販売額⑥大型小売

店店舗面積)、快適度(⑦汚水処理人口普及率⑧都市公園面積⑨転入・転出人口比率⑩新設住宅着工戸

数)、富裕度(⑪財政力指数⑫地方税収入額⑬課税対象所得)、住居水準充実度(⑭住宅延べ床面積⑮持

家世帯比率)の計5つを総合評価して決定している。その結果は、1位は千葉県印西市、2位は福井県

坂井市、3位が石川県野々市市、4位が愛知県長久手市、5位が茨城県守谷市であった。(図7)私は

東京、京都、大阪など主要都市がランクインすると考えていたため、注目する点が違うとランキングが

こんなにも変わると知り、改めて周りの意見は重要だと思った。ここでは、上位3市がランクインした

理由を述べる。

図7:「住みよさランキング」総合評価トップ50より上位10を抜粋

出所:東洋経済の都市データパック(2014年版)「住みよさランキング2014」のランキング トップ10

千葉県印西市は、80年代半ばに北総線「千葉ニュータウン中央」駅が開業し、ニュータウンへの入

居が始まった。それに伴い人口流入が開始した。人口が増えると公共施設等が整備され暮らしやすくな

る。そのため「快適度」は全国6位とトップクラスである。また、国道464号沿い等で多くの大型商

業施設が相次いで開業している。このことから「利便度」も5位と高い位置にある。そして地盤の堅さ

から、金融機関の事務センター等も多数立地しており、人口当たりの税収も高い。そのため「富裕度」

市名 総合評価

(都道府県名) 偏差値 安心度 利便度 快適度 裕福度居住水準充実度

1 1 印西(千葉) 61.12 629 5 6 42 86

2 4 坂井(福井) 57.92 50 90 219 387 13

3 2 野々市(石川) 57.88 2 1 7 241 763

4 6 長久手(愛媛) 57.63 211 31 1 18 740

5 3 守谷(茨城) 57.40 666 12 29 37 397

6 8 鯖江(福井) 57.37 30 90 105 418 64

7 13 かほく(石川) 57.31 71 17 133 552 37

8 5 本巣(岐阜) 57.10 170 11 428 313 56

9 19 能美(石川) 57.08 58 423 8 288 79

10 31 名取(宮城) 56.79 576 3 13 239 441

前年順位

順位

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は42位、「住居水準充実度」は86位である。しかし、人口当たりの病床数、高齢者人口当たりの介

護施設定員では全国平均以下という水準であり「安心度」は629位と下位に位置している。

福井県坂井市は、2006年に4つの町が合併して誕生した市で、人口規模は福井県内第2位である。

高い持ち家比率及び広い住宅の保有という状況を反映し、「住居水準充実度」は全国13位と上位に位

置している。その一方で、福井市のベットタウンとしての性格も持ち、坂井市に住む就業者の20%以

上が福井市に通勤している状況(以下、20%通勤圏という。)に該当したため指標の補正が行われた。

その結果、元のランキング順位が高い水準にあったこともあり、更に順位が上昇した項目があった。例

えば、前年の「安心度」が93位なのに対し、今回は50位と大幅に上昇した。このようなこともあり

2位にランクインした。ちなみに、「利便度」は90位、「快適度」は219位、「富裕度」は387位

となっている。

石川県野々市市は、市内に石川県立大学、金沢工業大学が立地していることもあり、平均年齢39.

7歳と人口構成は若いことが特徴である。また金沢市のベットタウンとして都市化が進み、幹線道路沿

いに大型商業施設が数多く立ち並んでいる。それにより近隣から買い物客が集まるため「利便度」が全

国1位である。住民基本台帳ベースの人口増加率(2013年/2010年)では人口の流入が全国2

位で、住宅戸数の増加もあり「快適度」が7位と全国でもトップクラスである。金沢市の近郊という事

で介護施設なども充実している。野々市市は金沢市の20%通勤圏のため「人口当たり病院・一般診療

所病床数」の指標に金沢市の数値を採用したこともあり「安心度」は全国2位となっている。しかし、

若年層世帯が多いため、持ち家世帯比率が低く「住居水準充実度」は763位と低い。なお、「富裕度」

は241位である。

青森県内の結果を見てみると、県内トップ3は平川市で155位、弘前市で332位、十和田市で3

95位であった。(図8)このランキングは全体で790位まであるため、今あげた市の順位はそこま

で低くはなかったが、高いわけでもない。しかし、八戸市563位、青森市580位と中心部の順位が

ふるわなかった。また、黒石市668位、むつ市677位と下位に位置している市もあるため、それら

の市は特にアピールする内容の工夫が必要となる。青森県内は自然がどの市にも豊富にあるため、それ

以外のアピールポイントを挙げる必要があると考える。

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図8:住みよさランキングの算出に用いた指標

住みよさランキングの指標 調査年次 県内市町村のランキン

グ順位

安心度

①病院・一般診療所病床数(人口当たり)

②介護老人福祉施設・介護老人保健施設

定員数(65歳以上人口当たり)

③出生数

(15~49歳女性人口当たり)

④保育所定員数-待機児童数

(0~4歳人口当たり)

12年10月

12年10月

12年度

12年10月

12年4月

十和田 189位

弘前 208位

八戸 473位

青森 505位

利便度

⑤小売業年間販売額(人口当たり)

⑥大型小売店店舗面積(人口当たり)

12年2月

13年4月

十和田 177位

弘前 224位

青森 311位

八戸 324位

快適度

⑦汚水処理人口普及率

⑧都市公園面積(人口当たり)

⑨転入・転出人口比率

⑩新設住宅着工戸数(世帯当たり)

13年3月

12年3月

10~12年度

10~12年度

弘前 381位

十和田 498位

八戸 508位

青森 512位

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富裕度

⑪財政力指数

⑫地方税収入額(人口当たり)

⑬課税対象所得(納税義務者1人当たり)

12年度

12年度

12年度

八戸 419位

青森 486位

弘前 545位

十和田 645位

住居水準充実度

⑭住宅延べ床面積(世帯当たり)

⑮持ち家世帯比率

08年10月

10年10月

十和田 366位

弘前 395位

青森 522位

八戸 555位

出所:東洋経済の都市データパック(2014年版)「住みよさランキング2014」(青森県の主要都市抜粋)

(2)英国の情報誌「MONOCLEモノクル」(2014年版)「世界で最も住みやすい25の都市ランキン

グ」の検証

次に、英国の情報誌「MONOCLE モノクル」(2014年版)の「世界で最も住みやすい25の都市

ランキング」を検証する。(図9)モノクルの指標は①都市の経済面②都市の社会面③機能面④毎日の

暮らしやすさ⑤人々に幸せをもたらす=クオリティ・オブ・ライフの高さなどが挙げられている。25

都市のうち上位5カ国を上げると、1位はコペンハーゲン(デンマークの首都)2位は東京(日本)3

位はメルボルン(オーストラリア)4位はストックホルム(スウェーデン)5位はヘルシンキ(フィン

ランド)となっている。日本は東京以外にも9位に京都、10位に福岡がランクインと健闘していた。

2013年版では東京は4位、福岡が12位、京都が13位であったため順位が上昇している。このラ

ンキングでは、東京・京都など主要都市が入っていた。

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図9:2014年度 世界で最も住みやすい25の都市ランキング

英「モノクル」誌が選んだ

世界で最も住みやすい25の都市ランキングより上位10

1位 コペンハーゲン(デンマーク)

2位 東京(日本)

3位 メルボルン(オーストラリア)

4位 ストックホルム(スウェーデン)

5位 ヘルシンキ(フィンランド)

6位 ウィーン(オーストリア)

7位 チューリッヒ(スイス)

8位 ミュンヘン(ドイツ)

9位 京都(日本)

10位 福岡(日本)

出所:英国の情報誌「MONOCLEモノクル」(2014年版)「世界で最も住みやすい25都市ランキング」

(3)Courrier Japon 2013年 10月号 の検証

最後にCourrier Japon 2013 年の 10月号を検証する。Courrie Japonの指標は①一日にできるかぎり多く

のことを気持ちよく体験させてくれる街②住民同士の摩擦が少ない③充実した報道機関や教育制度④

治安、交通の便⑤基本的なインフラ⑥自然環境の豊かさなどがあげられる。この雑誌はランキングが書

かれているわけではないが、デンマークのコペンハーゲンの名前がよくあげられていた。コペンハーゲ

ンは、子育てがしやすい場所である。なぜなら、医療や子育て支援制度が充実しているからだ。それを

実現できる理由としては、デンマークは税金が高く、人口が少ないからだと考えられる。また街として

も魅力的であり、年季の入った歴史地区や宮殿などデザインは人目を引くものがある。もちろん生活費

が高く、冬は凍りつくほど寒い気候など問題があるが、それらを暮らしやすさが上回る。また、デンマ

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ークの人々は習慣、規則に従う。それもあり、街はとても安全である。だからこそ、デンマークのコペ

ンハーゲンは最も幸福な国で、世界で最も住みやすい都市と呼ばれているのではないか。

今まで述べてきたランキングについて検証する。東洋経済の「住みよさランキング2014」とモノ

クルの「世界で最も住みやすい25都市ランキング」ではランキングの対象範囲が違う。そのため、住

みよさランキングでは上位に入っていた印西市のある千葉県や坂井市のある福井県がモノクル誌にラ

ンクインしていなかった。また、住みよさランキングについては住居水準充実度があるが、これは都会

よりも田舎の方が上位に位置している。したがって、この二つのランキングで違いが出た理由は、生活

するために何を優先しているかが違うためである。両方のランキングで上位に入るという事は困難なた

め、何を売りにしていくかを定め、ランキングをどちらか一点に絞ると良い。Courrier Japon ではランキ

ングはないが、モノクル誌と評価の内容が似ていた。この2冊は日本でいう県単位での結果を出してい

たため、市一つ一つが魅力的でなければランクインは難しいだろう。

では、実際に青森県民は自分が暮らしている県についてどのように考えているのかデータを収集する

ためにインタビューを実施した。実際に子育てを行っている30代以降の家庭10件を対象に行い、そ

の結果を記載する。なお、質問は以下のとおりである。

【質問項目】

①どんな仕事をしているか。

②その仕事を通じて子供の生活環境に影響があると思うか。

③子育ての環境についてどう思うか。

実際に質問をしてみて、学生と実際に子育てをしている人の考え方の違いに驚いた。

インタビューをした結果、特に子育ての環境について不安に思っている人が多いことがわかった。そ

の中でも特に気になった内容を下記に述べる。

【気になった回答】

①共働きなので子供を預ける所がもっとあればいいと思う。(特に平日の夜。)

②運動をすることができる場所が少ない。(特に冬場は確保がさらに難しい。)

③子育てをする人たちのサポート機関が欲しい。

④子育てにお金がもう少しかからないようになってほしい。

⑤自転車専用の道が欲しい。

3 青森県民の意識に関する調査結果

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⑥困った時に気軽に相談できる場所がほしい。

⑦予防接種(インフルエンザなど)も無料にしてくれたらもっと子供に予防接種をさせてあげること

ができる。

これらの声を通じてわかったことは、現在の子育てをする家庭は共働きが多いという事である。そし

て、共働きをしなくてはならない理由の多くは、子育てをするのにお金がかかるからというものだった。

共働きをするために、子供を幼稚園や保育所に預けないといけない。子供が体調を崩したときは迎えに

いかないといけないが仕事をなかなか抜けることができない。また、夜勤など夜遅くまで仕事をしない

といけなくなった時に預ける場所がないというのが青森県の子育ての現状である。逆を言えば、今子育

てをしている家庭で最も必要なのは、子育てをする人たちのサポートの充実化など、子育て支援をもっ

と行うことではないかと考えられる。近くに祖父、祖母がいる家庭は子供を頼むことができるため、少

しは精神的に楽だと思う。しかし、そうではない家庭は、サポートをしてくれる場所がないと精神的負

担も大きい。

したがって、現在もサポートをする機関が全くないわけではないが、もっと気軽に使うことができる

ようになれば一番良いと考えられる。また、子育て支援が手厚いものになることが望ましい。また、青

森県の子供の肥満率が高い理由の一つに、運動する場所が少ないこともあげられるのではないかと考え

た。これらを改善することができれば、健康な子どもを育てる環境が整い、青森で暮らしたいと移住を

考える人が増えるのではないか。

(1)生活環境について

今まで改善点をいくつか述べたが、実際に活動するためには莫大なお金、時間が必要となる。そこで、

すぐにできることはないだろうかと考えてみた。そこで注目したのが、第二章で述べたランキングであ

る。移住を希望する人が、どこの県で暮らそうか考えるときにランキングは参考になるものである。し

たがって、もしランキングの上位に本県がランクインしていれば、青森県に住みたいと思う人が増える

のではないか。既存のランキングでは青森県は上位に入っていない。なぜならば、今まで述べてきたラ

ンキングは、どちらかというと首都圏を対象としている。しかし、選定に用いた指標とは別の観点から

みれば、青森県の良いところはまだまだある。そこで新しい、青森県の良さを反映できるようなランキ

ングを発信することができればよいのではないか。

まずは東洋経済の「住みよさランキング2014」に注目してみる。このランキングは①安心度②利

便度③快適度④富裕度⑤住居水準充実度の計5つで成り立っていた。では、青森県がこのランキングで

上位になるためには、前述の5つの指標にどのような要素を加えればよいのだろう。それが可能となる

4 提 案

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ような指標の修正案をこれから述べる。①安心度は現在、病院数や出生数など狭い分野のことしか書か

れていない。したがって、人口及び病院が多い地域が必然的に上位となる。しかし、これだけでは安心

という事は出来ない。なぜなら、人口が多い地域の方が事件や犯罪が起こりやすいためである。したが

って、私は安心して暮らしていくために必要な「治安の良さ」「犯罪数の少なさ」といった内容も入れ

るべきだと考える。②利便度の内容は、店舗の年間販売額及び店舗面積しかない。しかし、利便度とは

店舗で販売する食品も評価するべきだと考える。おいしく新鮮なものを手に入れやすいということも利

便度の内容に入るのではないか。そして、青森県は海の幸・山の幸が豊富にあり、しかも都会と比べ新

鮮で安く手に入る。つまり、食材の新鮮さと手に入りやすさも取り入れるべきである。③快適度につい

ては、都市公園面積や汚水処理人口普及率などがあげられているが、快適とはそれだけではない。春は

桜を、夏は海を、秋は紅葉を、冬は雪と四季を感じ生活することで得られる快適というものもある。④

富裕度は財政力等があげられるが、青森県が首都圏にこの点で勝ることは極めて難しいことである。し

かし、何も財政力だけが富裕を決めるわけではない。自然環境の豊かさという値段をつけることのでき

ない財産が青森県にはある。自然の中で過ごせば心も満たされるのではないか。⑤住居水準充実度につ

いては、住宅延べ床面積や持ち家世帯比率があげられている。これには首都圏よりも坪単価や物価の値

段が安いこと、先ほども述べたように海の幸・山の幸が豊富でおいしい食材が食べられるという事から

満足感が味わえる。(図10)

「住みよさランキング2014」で本県の中で上位に挙げられた地域は実際に人口が増えている、も

しくは緩やかな減少となっているのかについても調査した。(図11)その結果、人口が急激に減少し

ている地域、緩やかに減少している地域と様々であった。世帯数が増えても人口が減少している地域が

多いため、青森県に移住してもらうだけではなく、子育て支援にも力を入れることがこれから先も重要

となる。

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図10:住みよさランキングから考えた修正案

住みよさランキングの指標 修正案

安心度 現在の安心度は病院数や出生数など狭い分野

しか書かれていない。よってここに「治安の良

さ」「犯罪の少なさ」といった内容も取り入れ

るべきではないか

利便度 食材の新鮮さがすごい。また、新鮮な食材を手

に入れやすい。

快適度 美しい自然に包まれ四季を感じることができ

るということは青森など限られた場所でしか

できないので取りいれるべきである。

富裕度 自然環境の豊かさも富裕の一つとしてあげら

れるのではないか

住居水準充実度 都会に比べて物価が安い。農業漁業が盛んで豊

富な食がある。生活リズムがゆたか。

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図11:平成22年国勢調査人口速報集計結果による市町村別人口・世帯数(単位:人、世帯)

出所:平成22年国勢調査人口速報集計結果による市町村別人口・世帯数

平 成 22 年 平 成 17 年 増 減 増減率(%) 平 成 22 年 平 成 17 年 増 減 増減率(%)

県 1,373,164 1,436,657 △ 63,493 △ 4.4 513,311 510,779 2,532 0.5

市 部 1,054,452 1,096,028 △ 41,576 △ 3.8 402,612 399,238 3,374 0.8

町 村 部 318,712 340,629 △ 21,917 △ 6.4 110,699 111,541 △ 842 △ 0.8

青 森 市 299,429 311,386 △ 11,957 △ 3.8 119,317 118,407 910 0.8

弘 前 市 183,534 189,043 △ 5,509 △ 2.9 70,219 69,251 968 1.4

八 戸 市 237,473 244,700 △ 7,227 △ 3.0 91,925 90,308 1,617 1.8

黒 石 市 36,117 38,455 △ 2,338 △ 6.1 11,795 11,843 △ 48 △ 0.4

五 所 川 原 市 58,423 62,181 △ 3,758 △ 6.0 21,274 22,067 △ 793 △ 3.6

十 和 田 市 66,123 68,359 △ 2,236 △ 3.3 25,549 25,358 191 0.8

三 沢 市 41,260 42,425 △ 1,165 △ 2.7 16,246 15,946 300 1.9

む つ 市 61,053 64,052 △ 2,999 △ 4.7 24,756 24,476 280 1.1

つ が る 市 37,261 40,091 △ 2,830 △ 7.1 11,469 11,508 △ 39 △ 0.3

平 川 市 33,779 35,336 △ 1,557 △ 4.4 10,062 10,074 △ 12 △ 0.1

東 津 軽 郡 計 25,942 28,919 △ 2,977 △ 10.3 9,436 9,737 △ 301 △ 3.1

平 内 町 12,363 13,483 △ 1,120 △ 8.3 4,198 4,295 △ 97 △ 2.3

今 別 町 3,218 3,816 △ 598 △ 15.7 1,379 1,476 △ 97 △ 6.6

蓬 田 村 3,268 3,405 △ 137 △ 4.0 1,070 997 73 7.3

外 ヶ 浜 町 7,093 8,215 △ 1,122 △ 13.7 2,789 2,969 △ 180 △ 6.1

西 津 軽 郡 計 21,139 23,572 △ 2,433 △ 10.3 7,591 7,975 △ 384 △ 4.8

鰺 ヶ 沢 町 11,446 12,662 △ 1,216 △ 9.6 4,059 4,239 △ 180 △ 4.2

深 浦 町 9,693 10,910 △ 1,217 △ 11.2 3,532 3,736 △ 204 △ 5.5

中 津 軽 郡 計 1,594 1,597 △ 3 △ 0.2 570 469 101 21.5

西 目 屋 村 1,594 1,597 △ 3 △ 0.2 570 469 101 21.5

南 津 軽 郡 計 35,157 37,079 △ 1,922 △ 5.2 10,964 11,084 △ 120 △ 1.1

藤 崎 町 16,022 16,617 △ 595 △ 3.6 4,910 4,888 22 0.5

大 鰐 町 10,982 11,921 △ 939 △ 7.9 3,648 3,794 △ 146 △ 3.8

田 舎 館 村 8,153 8,541 △ 388 △ 4.5 2,406 2,402 4 0.2

北 津 軽 郡 計 42,239 45,624 △ 3,385 △ 7.4 13,543 13,728 △ 185 △ 1.3

板 柳 町 15,229 16,222 △ 993 △ 6.1 4,770 4,858 △ 88 △ 1.8

鶴 田 町 14,266 15,218 △ 952 △ 6.3 4,402 4,394 8 0.2

中 泊 町 12,744 14,184 △ 1,440 △ 10.2 4,371 4,476 △ 105 △ 2.3

上 北 郡 計 100,574 104,805 △ 4,231 △ 4.0 35,750 35,564 186 0.5

野 辺 地 町 14,304 15,218 △ 914 △ 6.0 5,766 5,880 △ 114 △ 1.9

七 戸 町 16,763 18,471 △ 1,708 △ 9.2 5,712 5,823 △ 111 △ 1.9

六 戸 町 10,242 10,430 △ 188 △ 1.8 3,304 3,231 73 2.3

横 浜 町 4,880 5,097 △ 217 △ 4.3 1,884 1,872 12 0.6

東 北 町 19,105 20,016 △ 911 △ 4.6 6,004 6,020 △ 16 △ 0.3

六 ヶ 所 村 11,092 11,401 △ 309 △ 2.7 4,751 4,729 22 0.5

お い ら せ 町 24,188 24,172 16 0.1 8,329 8,009 320 4.0

下 北 郡 計 18,480 19,700 △ 1,220 △ 6.2 7,430 6,755 675 10.0

大 間 町 6,340 6,212 128 2.1 2,636 2,179 457 21.0

東 通 村 7,253 8,042 △ 789 △ 9.8 2,710 2,623 87 3.3

風 間 浦 村 2,465 2,603 △ 138 △ 5.3 1,096 931 165 17.7

佐 井 村 2,422 2,843 △ 421 △ 14.8 988 1,022 △ 34 △ 3.3

三 戸 郡 計 73,587 79,333 △ 5,746 △ 7.2 25,415 26,229 △ 814 △ 3.1

三 戸 町 11,300 12,261 △ 961 △ 7.8 3,960 4,145 △ 185 △ 4.5

五 戸 町 18,718 20,138 △ 1,420 △ 7.1 6,171 6,347 △ 176 △ 2.8

田 子 町 6,176 6,883 △ 707 △ 10.3 2,086 2,223 △ 137 △ 6.2

南 部 町 19,840 21,552 △ 1,712 △ 7.9 6,619 6,819 △ 200 △ 2.9

階 上 町 14,702 15,356 △ 654 △ 4.3 5,705 5,786 △ 81 △ 1.4

新 郷 村 2,851 3,143 △ 292 △ 9.3 874 909 △ 35 △ 3.9

注) 平成17年の人口及び世帯数は、平成22年10月1日現在の市町村の境域に基づいて組替えたものである。

下北郡

三戸郡

市町村名 人   口

中郡

南津軽郡

北津軽郡

上北郡

世  帯  数

市     部

東津軽郡

西郡

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次に「モノクル」誌の「世界で最も住みやすい25都市ランキング」からも考察する。

このランキングで上位に入っている都市で青森県と環境が似ている都市はないか調査した。その結果、

ストックホルム、ヘルシンキなど上位にランクインしている都市にも四季がある場所があった。これは、

本県と似ている部分であろう。では、青森県と何が違いランキングに入っているのか。今回は1位のコ

ペンハーゲンと比較してみる。コペンハーゲンは、青森県と比べても、夏は涼しく冬は寒い。それでも

コペンハーゲンは最も幸福な国といわれている。その最たる理由は、子育て環境と高齢者福祉の充実だ

と考える。その点については、青森県と比べると税金が高い。消費税は25%、所得税は約50%であ

る。そのかわり、医療費、大学卒業までの教育費、出産費、介護福祉費は基本的に無料である。また、

学生の間は返済義務のない生活支援金が貰えることも嬉しい。人口が少ないからこそ、社会保障制度を

徹底できるのかもしれない。

一方で生活費が高いため、生活は確かに大変かもしれない。この点だけを見れば、青森県の方が優れ

ているだろう。それでもここまで子育て等の支援が充実しているのであれば生活費の高さも納得できる。

また、青森県は三大死因の死亡率が高い。生活習慣を改善することができればそのリスクが減少する

のではないか。改善することができれば「青森県は生活習慣がしっかりしているため長生きができる」

という新しいアピールポイントができるのではないか。

(2)子どもの生活習慣について

Ⅰ 睡眠について

それぞれの年代別で必要な睡眠時間は、以下の通りである。

新生児(1~2か月) 1日10.5~18時間

乳児(3~11か月) 夜間に9~12時間と、昼寝に1~4回の30分~2時間の昼寝

幼児(1~3歳) 1日12~14時間

学童前期(3~5歳) 11~13時間

学童期(6~12歳) 10~11時間

ティーンエイジャー(11~17歳) 8.5~9.25時間

(出典・寝装・インテリアマネジメント2007)

睡眠不足は、成長の遅れや食欲不振・注意や集中力の低下・眠気・易疲労感などをもたらす。子ども

の場合、眠気をうまく意識することができずに、イライラ・多動・衝動行為などとしてみられることも

少なくない。

代表的な子どもの睡眠障害に、睡眠時無呼吸症候群が挙げられる。

子どもの睡眠時無呼吸症候群の主な原因は、アデノイド(鼻と咽の間にあるリンパ組織)・扁桃肥大

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である。3~6歳の児童に最も多い。症状としては、夜間のいびきや無呼吸・睡眠中の陥没呼吸・起床

時の不機嫌などがみられる。この年代は習慣的に昼寝をすることが少なくないので、日中の過眠よりも

多動・衝動行為・学習障害などがみられることが多いといわれている。このように、睡眠障害は子ども

の成長に大きな影響を及ぼす。

Ⅱ 不眠・睡眠不足と生活習慣病との悪循環

近年、子どもの肥満が増加しており、小学校高学年から中学生では肥満にともなう睡眠時無呼吸症候

群が多くみられる。子どもの肥満は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病を合併することが

多く、食事や生活習慣を見直し、減量指導が必要となる。

出所:e-ヘルスネット

http://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-003.html

Ⅲ 栄養、カロリーについて

3~5歳児の一日に摂取すべきカロリーは男児の場合は1300Kcal/日、女児の場合は1250

Kcal/日となっている。

また、子どもの食事と栄養について、青森中央短期大学の久保薫先生に取材を行った。質問内容とそ

れに対する回答は以下の通りである。

【質問項目】

①子供が一番摂取しなくてはならない栄養素は何か。

②青森県は肥満児が多いが、どうしたら減少すると思うか。

③栄養のバランスを意識付けるためには。

④日にお菓子をどれくらい食べてよいのか。

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⑤青森県の人は塩分を摂取しすぎと言われているが、減らすためにはどのような味付けをしたらよいの

か。

【 回 答 】

① 「どの栄養素もまんべんなく取るということ。食べ方というのは、朝ご飯を食べないで、昼と夜

だけ食べる、ということではなく、子どもだからある程度、その子供の生活のリズムに合わせて、

食べるということは、子供にとっては一番大切である。」

② 「栄養のバランス、食品のこと、食事のバランス、これのどこかがおかしい。子どもというのは、

親が食事を提供するものだ。小学校の高学年になると、子どもは食生活を営める。であるから、親

が子どものことを良く考えて、子どもに合った食生活を支援してあげる、提供してあげるというこ

とが、改善の一番ではないかと考える。子どもの栄養バランスが崩れる根本には、母親の働き方が

挙げられる。女性の働く時間などが例である。ただ単に、食事のことだけではなく、子育てをうま

くいかせるためには家族の協力などが不可欠だ。母親だけではなく、祖父や祖母が子どものために、

母親が帰ってくる前に子どもの生活リズムに合わせて食事を提供することが解決への一歩ではな

いか。」

③ 「全部手作りである必要はない。できるだけ多くの食品をとることが大切である。この食品には

ある栄養素が多いけど、他の栄養素が少ないという場合もあるが、他の食品で補える。数多く、い

ろんなものを食べるということが簡単な方法だ。それらを感覚的に覚えていくことが、一生使える

能力となる。」

④ 「普通であれば、午後一回が適当である。回数としては、休日だったら、朝ご飯と昼ご飯の間に

一回、昼ご飯と夜ご飯の間に一回位が適当である。また、夕ご飯と寝る前に一回位のおやつが必要

だ。しかし、一概におやつというと、甘いものやお茶、ジュースというものを想像しがちだが、果

物とか蒸かした芋や豆類でもよい。

特に小さい子供は、朝昼晩の 3回の食事だけだと栄養がとれないので、おやつで栄養を補う必要

がある。」

⑤ 「塩分ばかり摂取すると、脳卒中になる人が多い。東北地方は寒い地域なので、漬け物などで塩

分を多く摂取することが有名である。春夏秋でとれた野菜を塩漬けして、漬物にして保存しておく。

そして、冬の間、それで野菜を摂取する。

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今は塩漬けにしなくても、冷蔵庫があるため野菜を口にすることはできるが、漬け物は食文化な

ので無くすことはできない。また、最近のデータでは、外食や総菜など誰かが作ったものを買って

家庭で食べる内食が多くなっていることを示している。そのような食生活をおくる世帯が50%近

くを占めている。いくら家庭で減塩をしても、外食などで摂取する塩分が多いと、結局は意味のな

いものになってしまう。外食や内食でも減塩をすることが大切だ。購入者もどこの店の惣菜だった

ら、減塩されたものなのかと気を付けて選ばないといけない。」

久保先生のお話から、カロリーを気にするよりも、とにかく楽しんで食事をするということや、その

子供の生活のリズムに合わせた食事の時間が一番大切だということが分かった。しかし、現在は共働き

の家庭が増えており、そのような食事が難しくなっている。そして、その影響もあって子どもの生活習

慣も乱れてしまっている。

Ⅳ 運動について

外遊びをする時間が長い幼児ほど、体力が高い傾向にある。しかし、4割を超える幼児の外遊びをす

る時間が1日1時間未満だった。一日にどれだけ体を動かすと動きの獲得がスムーズにいくのかという

明快なデータを示すことは困難だが、多くの幼児が体を動かす実現可能な時間として、わかりやすい指

標を立てる必要がある。このことから「毎日、合計60分以上」体を動かすことが望ましいことを目安

とされてきた。

しかし、時間だけが問題なのではなく、様々な遊びを中心として、散歩やお手伝いなど、多様な動き

を経験することが大切である。また、本来ならば、幼児がいっぱい体を動かして遊びをする上では、外

でのびのびと遊ぶことが望ましいが、施設などの環境や天候、季節などの影響もあることから、幼児が

体を動かす時間は、屋内も含め1日の生活の中での時間として設定されている。なお、世界保健機関

(WHO)をはじめとして、多くの区域では、幼児を含む子どもの心身の健康的な発達のために「毎日、

合計60分以上の中強度から高強度の身体活動」を推奨しており。この目安は現在の世界的なスタンダ

ードとされている。

青森県の子供の生活環境と生活習慣の研究を踏まえた人口減少克服と健康長寿への提言のために研

究を進めてきたが、どちらも先を見据え、長い時間をかけて行う必要があると考える。また、人口減少

という問題を他人任せにせず、一人ひとりが真摯に受け止めなくては今後の解決は難しいだろう。今ま

で気にしていなかった問題を今回知ることができたため、私自身もできることから行動に移したいと思

う。人口が減るということは、その県独自の文化も消失することを意味する。青森県には、津軽弁、南

5 まとめ

Page 24: 青森県の子供の生活環境と生活習慣の研究を 踏まえ …...81 上昇したが、平成24年は0.02ポイント減少の1.36となった。全国と比較してみると、平成2

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部弁、津軽塗などなくしてはならないものが豊富にある。これらを守るために、そして青森県で生活し

ていくために県民一人ひとりが協力していくことが、今後の課題となるだろう。

一方で、保健の観点で短命県の問題を考察してきたが、栄養、運動などという個々の側面に注目する

だけでは、根本的に生活習慣の改善、その結果、平均寿命の延伸を達成することは難しいと思われる。

子どもの生活習慣は、かなり乱れたものになっている。最近では、ゲームやテレビを見て夜遅くまで

起きている子どもたちが増えている。また、共働きの家庭が増えているため、保育園への迎えが遅くな

り、ご飯を食べる時間なども遅くなってしまうということも多い。

青森県では、「だし活」や「あおもり食命人」など、減塩や栄養面について食生活を正そうとしてい

るが、それだけではなく、親の働き方にも目を向けるべきである。

子どもの生活習慣を正してあげられるのは、親だと思うので、生活習慣を身に付けるべきである5歳

くらいまでは、退社の時間を1時間早くする配慮をすることや、残業は極力させないようにすることな

ど、親の働き方も見直すことが大切である。

上田真理子

今回のプロジェクトに参加し、青森県には様々な問題があることを改めて知りました。しかし、一人

ひとりが問題を意識していれば解決できることもあるのではないかと思います。生活習慣や、健康に関

しては自分自身で注意したりしていくことで、防ぐことが可能だと思います。そして、青森県にはまだ

まだたくさんの魅力があると感じました。その魅力を発信していくために、今後も何か力になりたいと

思いました。

青森県の人口減少は大きな問題ですが、これからの活動次第で人口増加は可能だと思います。改めて

青森県の現状を知り、調査をするという経験をすることができてよかったです。私一人ではとても微力

であまり力になれるとは思いませんが、それでもできることから一つずつ活動していきたいと思います。

現在は情報が簡単に発信できるため、青森県の魅力を伝えることから始めてみたいと思います。

○ 調査に参加しての感想