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財務戦略の考え方 しきや会計&コンサルティング Copyright 2014 しきや会計&コンサルティング All rights reserved 平成27年10月改訂版

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財務戦略の考え方

しきや会計&コンサルティング

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平成27年10月改訂版

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はじめに

• 本レジュメでは、次のような問題意識をお持ちの中小企業の経営者を対象に内容が構成されています。

• 銀行から財務改善を要求されているため、財務改善のポイントを理解したい

• 経営者保証を外したいと考えているが、財務的な要求事項をクリアするポイントを理解したい

• 設備投資を検討しているが、適切な財務計画のポイントを理解したい

• 経営計画の目標設定に明確な判断基準が欲しい

• 財務戦略とはどういうものか、どういう使い方ができるのか理解したい

• 安定経営に役立つ財務戦略を策定したい

• 企業の成長に役立つ財務戦略を策定したい

• 合理的な財務戦略に基づかない財務計画は、目論み通りに進まないばかりか、時には思わぬ信用リスクを抱え込む原

因ともなります。

• 本レジュメでは、財務戦略を策定する上で必要な基礎知識を明らかにし、財務戦略の合理的な策定プロセスとはどうい

うものか事例を用いてわかりやすく解説しています。

• 中小企業の資金調達環境を十分に考慮し、これだけ理解すれば財務戦略が分かる・使えるという内容になっています。

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セミナーの構成

Ⅰ 財務戦略の目的

• 財務戦略の目的について問題提起

規模 規模の利益 資金力

Ⅱ 財務の視点

• 財務戦略の前提となる財務の視点を深く掘り下げる

総資本 自己金融能力

Ⅲ 財務戦略の策定プロセスに必要な機能

• 財務戦略の策定に不可欠な2つの機能を提示

静的な分析 動的な分析

Ⅳ 財務戦略の策定プロセスに必要なスキル

• 財務戦略の策定に不可欠な2つのスキルを提示

信用リスクの測定 財務指標分析

Ⅴ ケーススタディ

• 財務戦略の策定プロセスを事例を用いて紹介

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キーワード

キーワード

キーワード

キーワード

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Ⅰ 財務戦略の目的

1. 財務戦略の目的は、相反する2つのインセンティブをバランスさせること

2. 論点

① 規模とは?規模の利益とは?資金力とは?

② 2つのインセンティブは相反するのか?

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財務的な破綻を回避したい

規模の利益を享受したい

財務的な破綻とは、規模を維持するための資金力が不足すること

規模の利益とは、規模が拡大するにつれて平均コストが下がることにより生み出される利益のこと

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Ⅱ 財務の視点>規模

従業者規模

• 財務における規模とは、 売上高規模 ではなく、総資本の規模のこと

資本金規模

• 総資本 = 負債 + 自己資本

他人資本

借入金 + 企業間信用

支払手形

買掛金

未払金等

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Ⅱ 財務の視点>規模の利益

総資本に比例して利益額・利益率は増加する

規模の利益は統計的な事実

規模の利益を追求することは

企業にとって当然の選択

すなわち

• 現在の利益を維持するためには、現在の総資本を維持するのが合理的

• より多くの利益を獲得したいならば、総資本の拡大を目指すのが合理的

・・

中小企業庁「中小企業実態基本調査」平成23年度 全産業平均(従業者規模別)より作成

千円 ・ %

総資本規模別 経常利益(棒グラフ) 経常利益率(折れ線グラフ)

4,291千円958千円

18,300千円

84,770千円

総資本

1.4%

1.6%

2.4%

2.9%

8,000万円 2億1,000万円 6億1,000万円 22億円

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Ⅱ 財務の視点>資金力

資金力 = 自己金融能力 + 資金調達力

では、自己金融能力とは何か?資金調達力とは何か?

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Ⅱ 財務の視点>資金力>自己金融能力

1. 自己金融とは、自社が生み出したキャッシュフローを新たな資金源として再投資すること

自己金融能力とは、規模に見合ったキャッシュフローを生み出す力のこと

2. 自己金融能力は、2つの財務指標で測定される

3. 重要なポイント

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自己資本(純資産)

総資本自己資本比率 = × 100 (%)

総資本に対する現在の収益力と

総資本に対する過去の収益力の蓄積が大きいほど、自己金融能力が高い

・ 自己金融能力は、総資本の大きさに反比例する(トレードオフの関係)

当期純利益総資本

総資本当期純利益率 = × 100(%)

・ 自己金融能力は、当期純利益・自己資本の大きさに比例する

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力

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6

5

3.4

中小企業庁「我が国の中小企業の実態」(平成22年)を基に作成

23.9

17.7

9.5

8.1

7.8

5.5

90 100

85.5

46.5

30 40 50 60 70 80

その他 

関連会社 

取引先 

ベンチャーキャピタル 

中小企業投資育成株式会社 

親族・知人(役員含む) 

役員(代表者・親族・知人を含まず) 

政府系金融機関 

自己資金(キャッシュフロー) 

代表者 

民間金融機関 

10 20

中小企業の85.5%が民間金融機関から資金調達した実績がある

間接金融以外の主な資金調達先は自己金融と代表者等からの調達

直接金融による資金調達実績のある中小企業は少ない

中小企業は資金調達の大半を銀行融資に依存している

資金調達力とは、銀行融資を受ける能力のこと

銀行融資の仕組みを理解する必要がある

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力>銀行融資の仕組み>融資判断は2ステップ

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(ステップ2)

内部格付制度

基本的な取引方針貸出条件の決定

個々の融資案件について融資の可否・貸出条件を決定

保証・担保の状況資金使途

(ステップ1)

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力>銀行融資の仕組み>内部格付制度の仕組み

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1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

月次試算表・決算書

定性要因の反映

基本的な取引方針・貸出条件の決定

1

2

3

4

5

6

7 要注意先

8 要管理先

9 破綻懸念先

10 実質破綻先

11 破綻先

正常先

実態財務の反映

財務定量モデルによる採点

一次格付 信用格付 債務者区分

出所 日本銀行「内部格付制度と信用リスク計量化」(2013年)を参考に作成

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力>銀行融資の仕組み>内部格付制度>実態財務の反映

1. 実態財務とは

① 貸借対照表に計上されている資産のうち、将来的にキャッシュフローとなる資産に裏打ちされた自己資本

② 企業会計原則等、信頼できる会計基準に基づいて計算された当期純利益

2. 基本的な考え方

① 貸借対照表に計上されている資産のうち、将来的にキャッシュフローとならない資産を自己資本から控除

② 当期費用に計上すべき費用のうち、未計上の費用を当期純利益から控除

3. 反映例

① 不良債権・不良在庫

② 減価償却未済額(累計)

③ 減価償却未済額(当期)

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自己資本から控除

当期純利益から控除

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力>銀行融資の仕組み>内部格付制度>財務定量モデル

1. 財務定量モデルとは、デフォルト確率を推定するモデル

2. デフォルト確率とは、企業が債務不履行(デフォルト)に陥る確率 = 企業が破綻する確率

3. 推定手順

4. 財務定量モデルのポイント

財務定量モデルの精度は、統計モデルの選択よりも、デフォルト事象と関連の深い財務指標の選択に依存している

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財務指標を選択 統計モデルに代入 デフォルト確率の推定

デフォルト事象と関連の深い財務指標とは?

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力>銀行融資の仕組み>内部格付制度>財務定量モデル>デフォルト事象と関連の深い財務指標

1. 格付機関が採用している財務指標の組合せ

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財務指標 相関係数 財務指標 相関係数

留保利益率 0.58 有利子負債比率 -0.64

有利子負債比率 -0.57 留保利益率 0.61

総キャピタライゼーション比率 -0.54 総キャピタライゼーション比率 -0.59

固定長期適合率 -0.48 自己資本比率 0.56

有利子負債/EBITDA -0.48 固定長期適合率 -0.5

自己資本比率 0.47 有利子負債/EBITDA -0.49

ムーディーズ S&P自己資本

総資本

利益剰余金

総資本

有利子負債

総資本

有利子負債

有利子負債+自己資本

固定資産

固定負債+自己資本

有利子負債

利益概念の一種

相関係数がマイナス → 数値が小さいほどデフォルト確率が低い指標

有利子負債/EBITDA = ×100(%)

有利子負債比率 = ×100(%)

総キャピタライゼーション比率 = ×100(%)

固定長期適合率 = ×100(%)

自己資本比率 = ×100(%)

留保利益率 = ×100(%)

相関係数がプラス → 数値が大きいほどデフォルト確率が低い指標

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力>銀行融資の仕組み>内部格付制度>財務定量モデル>デフォルト事象と関連の深い財務指標

2. 財務指標の相関関係

① 有利子負債比率は、自己資本比率とトレードオフの関係にある

有利子負債比率は、自己資本比率と相関性が高い

② 総キャピタライゼーション比率は、自己資本が大きいほど低くなる

総キャピタライゼーション比率は、自己資本比率と相関性が高い

③ 固定長期適合率は、固定資産が小さいほど低くなるが、固定資産は総資本と相関性が高い

固定長期適合率は、自己資本比率の逆数と相関性が高い

④ 留保利益率は、自己資本比率と極めて相関性が高い

相関性の高い財務指標を省略することで、デフォルト事象と関連の深い財務指標の本質がわかる

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力>銀行融資の仕組み>内部格付制度>財務定量モデル>デフォルト事象と関連の深い財務指標

3. デフォルト事象と関連の深い財務指標の本質

① 自己資本比率

② 有利子負債/EBITDA

③ 二つの財務指標は、総資本・当期純利益・自己資本の3つの要素で構成される。また、総資本が小さいほど

有利に評価され、当期純利益・自己資本が大きいほど有利に評価される。

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これらの財務指標は、自己金融能力を測定する財務指標に他ならない

自己資本

総資本自己資本比率 = ×100(%)

有利子負債

税引前当期純利益+支払利息+減価償却費有利子負債/EBITDA = ×100(%)

総資本が小さいほど、また、自己資本が大きいほど比率が高くなる

有利子負債は総資本と相関性が高く、EBITDAは当期純利益と相関性が高い

総資本が小さいほど、また、当期純利益が大きいほど比率が低くなる・

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力>銀行融資の仕組み>内部格付制度の本質>財務定量モデルの本質

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自己金融能力が高い デフォルト確率が低い 信用格付が高い

自己金融能力が低い デフォルト確率が高い 信用格付が低い

内部格付制度は、自己金融能力を測定して信用格付するシステム

財務定量モデルの本質は、自己金融能力の測定にある

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力の本質

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黒字で自己金融能力が高い時は、銀行融資を返済したい

資金余力

赤字で自己金融能力が低下したときは、信用格付が低下するので融資を減らしたい

経営者の想い 銀行のロジック

自己金融 銀行融資 自己金融 銀行融資

赤字で自己金融能力が低下したときは、銀行融資で補てんしたい

晴れの日

雨の日

黒字で自己金融能力が高い時は、信用格付が上がるので融資が伸ばせる

自己金融 銀行融資 自己金融 銀行融資

自己金融 銀行融資

自己金融 銀行融資 資金不足

自己金融 銀行融資

自己金融 銀行融資

資金調達力の本質を表すロジック : 『 銀行は晴れた日に傘を差し出し、雨が降ったら取り上げる 』

資金調達力は自己金融能力に比例して伸縮する

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Ⅱ 財務の視点>資金力の本質

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資金力 = 自己金融能力 + 資金調達力

資金力 = 自己金融能力 + 自己金融能力に比例して伸縮

資金力≒自己金融能力

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力>銀行融資の仕組み>信用格付・債務者区分の定義

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信用格付 信用格付の定義 債務者区分

財務内容が良好で、債務履行の確実性は高い事業環境等が大きく変化した場合にはその確実性が低下する可能性がある財務内容は一応良好で、債務履行の確実性に当面問題はない事業環境が変化した場合、その確実性が低下する可能性がある財務内容は一応良好で、債務履行の確実性に当面問題はない事業環境が変化した場合、その確実性が低下する懸念がやや大きい債務履行の確実性は認められる事業環境が変化した場合、履行能力が損なわれる要素が見受けられる債務履行の確実性が先行き十分とはいえない事業環境が変化すれば履行能力が損なわれる可能性がある業況推移に注意を要する業況、財務内容に問題がある債務の履行状況に支障をきたす懸念が大きい業況、財務内容に重大な問題がある債務の履行状況に問題が発生しているかそれに近い状態経営難の状態経営改善計画等の進捗状況が芳しくない今後、経営破綻に陥る可能性が高い深刻な経営難の状態実質的な破たん状態

10 実質破綻先

11 法的・形式的な破綻の事実が発生している 破綻先

7 要注意先

8 要管理先

9 破綻懸念先

1 財務内容が優れており、債務履行の確実性が最も高い

正常先

2

3

4

5

6

出所 日本銀行「内部格付制度に基づく信用リスク管理の高度化」(2005年)を参考に作成

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力>銀行融資の仕組み>資金調達力の目安

信用格付が高いほど、資金調達力は大きい

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出所 金融庁「預金等受入金融機関に係る検査マニュアル(金融検査マニュアル)」より作成

信用格付 債務者区分 優良担保を提供 優良保証を提供 正常な運転資金 一般担保を提供 一般保証を提供 無担保・無保証

1 ○ ○ ○ ○ ○ ○

2 ○ ○ ○ ○ ○ ○

3 ○ ○ ○ ○ ○ ○

4 ○ ○ ○ ○ ○ ○

5 ○ ○ ○ ○ ○ △

6 ○ ○ ○ ○ ○ △

7 要注意先 ○ ○ ○ △ △ ×

8 要管理先 ○ ○ △ × × × ↓

9 破綻懸念先 ○ ○ × × × × 融資不適格

10 実質破綻先 ○ ○ × × × ×

11 破綻先 ○ ○ × × × ×

  優良担保 預金、満期返戻金のある保険、国債など → 時価or時価×70%~95%で評価

  優良保証 信用保証協会の保証、金融機関の保証、上場かつ有配の一般事業会社の保証など → 保証額で評価

  正常な運転資金 (売上債権)+(棚卸資産)-(仕入債務)

  一般担保 不動産担保、工場財団担保、債権動産担保(ABL) → 時価×70%で評価

  一般保証 親会社等の保証、経営者保証 → 保証能力の範囲内

  無担保無保証 担保・保証によって保全されていない融資 → 債務償還年数10年以内に収まる範囲内

担保・保証の状況および資金使途信用格付・債務者区分

正常先

○:資金調達可 △:状況によっては資金調達できない場合もある ×:資金調達不可

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Ⅱ 財務の視点>資金力>資金調達力>銀行融資の仕組み>グループ企業の信用格付も重要

1. 銀行の目線

① 中小企業の経営者と、経営者が関わる全ての企業(グループ企業)は一体のもの

② よって、グループ企業の信用格付が融資判断に影響することがある

③ 特に、グループ企業間での資金のやり取り・債務保証が行われている場合は、

グループ企業を一体と見なした信用格付を重視する

2. グループ企業の範囲

• 資本関係、かつ、支配関係がある企業(親・子会社)

• 代表者が支配している企業

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100%出資100%出資

20%出資

C社

X社

B社

A社

100%出資

経営者

60%出資

100%出資

Y社

グループ企業

一体

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ここまでのまとめ と 新たな問題提起

ここまでのまとめ

• 規模の利益は統計的な事実であり、規模の利益を追求することは、企業にとって当然の選択

• 財務的な破綻を回避するため、規模に見合った資金力を確保することは、企業にとって当然の義務

• 規模とは総資本のことであり、 資金力とは自己金融能力のこと

• 総資本と自己金融能力はトレードオフの関係にあるため、規模と資金力は自然の流れではバランスしない

新たな問題提起

• 規模と資金力をバランスさせるには、財務的に合理的な意思決定・計画 = 財務戦略が必要

• では、財務戦略を策定するには何が必要か?

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Ⅲ 財務戦略の策定プロセスに必要な機能

1. 静的に分析する機能

• 現状認識する機能

• 財務内容の局面を判断する機能

• すでに起こった出来事の評価(事後の計算)

• 銀行の信用格付、格付機関の信用格付は静的な分析を目的としている

2. 動的に分析する機能

• 試行錯誤する機能

• 選択肢を示す機能

• 今から起こる出来事の予想

• タラレバの試算・検討

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Ⅳ 財務戦略の策定プロセスに必要なスキル

1. 信用リスクを測定するスキル

• 信用格付のスキル

• 財務内容をマクロ的に分析するスキル

• 財務戦略の大局的な意思決定に明確な根拠を与えることができる

2. 財務指標分析のスキル

• 従来からある財務指標分析のスキル

• 財務内容をミクロ的に分析するスキル

• 財務戦略の目標設定や計画の方向性を探ることができる

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Ⅳ 財務戦略の策定プロセスに必要なスキル>信用リスクの測定

1. 概要

① デフォルト判別モデルを応用して信用リスクを測定

② デフォルト判別モデルとは、デフォルトと非デフォルトを判別する財務定量モデル

2区分の信用格付モデル

2. 判別の手順

① 実態財務に基づく財務指標の組合せを選択

② 財務指標を統計モデルに代入し、格付スコアを算定

③ 格付スコア < 判別値 k のとき、デフォルトと判定

④ 判別値 k は、統計的に高い確率でデフォルトと非デフォルトを区分する値

3. デフォルト判別モデルの背景

① もともと株式投資のリスク回避のために開発されたモデル

② 上場企業の財務データだけでなく、母集団10万社から抽出された中堅中小企業の財務データが統計処理

③ 金融情報サービスに採用された実績

④ 信用格付機関と同等の判別結果

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信頼性の高い財務定量モデル

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Ⅳ 財務戦略の策定プロセスに必要なスキル>信用リスクの測定>判別値 k の意味

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継続企業群の分布

判別値 k

格付スコア

企業数

0 k

デフォルト企業群の分布

格付スコアの分布図

判別値 k は、判別率が最適となる格付スコア

デフォルト企業の86%が 格付スコア< k 継続企業の75%が 格付スコア≧ k (判別率80%)

デフォルト企業の14%が 格付スコア≧ k 継続企業の25%が 格付スコア< k (誤判別率20%)

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Ⅳ 財務戦略の策定プロセスに必要なスキル>信用リスクの測定>判別値 k の分類

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正常先

2 1

破綻先 実質破綻先 破綻懸念先 要管理先 要注意先

11 10 9 8 7 6

企業数 判別値 k

継続企業群の分布

デフォルト企業群の分布

格付スコア

5 4 3

判別値 k を信用格付7(要注意先)に分類すれば、信用格付の定義とぴったり当てはまる

デフォルト判別モデルと信用格付の照合

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Ⅳ 財務戦略の策定プロセスに必要なスキル>信用リスクの測定>新しい価値

1. 自社の最新データを用いて財務内容の良否を直接判定できる

(参考) 業種平均と比較分析して間接的に良否判定する手法の問題点

a) 時点の不一致(次ページ図1)

・ 業種平均の統計データは1~2年遅れ

事業環境が異なるので単純比較できない

b) 業種平均が目標になるとは限らない(業種平均の信用リスク水準が不明)

・ 業種平均の信用リスクは毎年変動する(次ページ図2)

・ 業種ごとに信用リスクは異なる(次ページ図3)

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Ⅳ 財務戦略の策定プロセスに必要なスキル>信用リスクの測定>新しい価値>参考図

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帝国データバンク 全国企業財務諸表分析統計 平成24年度

中小企業庁 中小企業実態基本調査 平成23年度

CRD 経営自己診断システム 平成24年度

日本政策金融公庫 小企業の経営指標 平成23年度

平成25年12月時点

機関の名称 統計の名称 最新年度

4-5+

5-

7+

9平成20年度

平成21年度

平成22年度

平成23年度

7

8

6

正常先

5

4

信用格付

4

5 5 5

8

4-

5-

5+

6+5-

8+

6+

小売業

不動産・物品賃貸

専門技術

宿泊・飲食

生活関連・娯楽

サー

ビス業

合計

建設業

製造業

情報通信業

運輸郵便業

卸売業

9

7

8

正常先

6↑

5

4

信用格付

(図1)主な統計の最新データ

(図2)情報通信業 年度推移 (図3)平成23年度 業種別業種平均

出所 中小企業庁「中小企業実態基本調査」より算出(図2・図3)

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Ⅳ 財務戦略の策定プロセスに必要なスキル>信用リスクの測定>新しい価値

2. 業種平均との比較分析をより明確に、より有効に活用できる

① 明確さ

・ 信用リスクが数値化されるので、財務内容の優劣がはっきり分かる

② 有効性

・ 業種平均は景気変動を映す鏡

・ 業種平均の推移と自社の推移を比較することで、より有効な検証ができる

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(検証2)

平成22年度は、景気が悪化したにもかかわらず、業績が改善している→ 改善要因を検証

(検証3)

平成23年度は、景気変動の伸びに比べて業績の改善が今一つ→ 阻害要因を検証

(検証1)

平成21年度は、景気変動がないにもかかわらず、業績が悪化している→ 悪化要因を検証

4

5 ● ●

● ● ● ● ● ●

6 ● ●

7

H24 H25

年度

信用格付

H20 H21 H22 H23

5-

6

5-

6

5

5-

5-

5-5-

5

5+自社の推移

業種平均の推移

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Ⅳ 財務戦略の策定プロセスに必要なスキル>信用リスクの測定>新しい価値

3. 財務改善を自己完結できる

• 経営者にとって、立場の強い銀行に経営の主導権を握られることは抵抗感が強い

• また、「銀行管理」という風評被害は避けたい。

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信用リスクを測定するスキルがあれば、経営の自由度を確保しながら財務改善を自己完結できる

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Ⅳ 財務戦略の策定プロセスに必要なスキル>財務指標分析の概要

財務指標分析は、4つの比較分析

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統計的に有意な数値との比較分析

借入金依存率等

理論的に望ましい数値との比較分析

流動比率等

業種平均との比較分析

全ての指標

自社時系列との比較分析

全ての指標

これらを総合勘案することで、財務戦略の方向性を探ることができる

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最終まとめ

• 規模の利益は統計的な事実であり、規模の利益を追求することは、企業にとって当然の選択

• 財務的な破綻を回避するため、規模に見合った資金力を確保することは、企業にとって当然の義務

• 規模とは総資本のことであり、 資金力とは自己金融能力のこと

• 総資本と自己金融能力はトレードオフの関係にあるため、規模と資金力は自然の流れではバランスしない

• 規模と資金力をバランスさせるには、財務的に合理的な意思決定・計画 = 財務戦略が必要

• 財務戦略の策定プロセスには、静的な分析と動的な分析の2つの機能が必要

• 財務戦略の策定プロセスには、信用リスクの測定と財務指標分析の2つのツールが必要

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