提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77...

35
提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転換を 2018年1月 「エネルギー基本計画」と「長期低排出発展戦略」の議論を誤らないために

Upload: others

Post on 05-Apr-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

提言

脱炭素社会を実現するエネルギー政策への転換を

2018年1月

「エネルギー基本計画」と「長期低排出発展戦略」の議論を誤らないために

Page 2: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

目次

要旨 ................................................................................................................... 1

1. はじめに:自然エネルギー電力の活用を脱炭素戦略の中心に ....................................... 3

2. 脱炭素を達成するために必要な3つの基本政策 ........................................................ 5

2-1 基本政策1:2050年までに電力を自然エネルギー100%へ ..................................... 5

(1) 世界で進む自然エネルギー電力の拡大と劇的な低価格化 .................................... 5

(2) エネルギー基本計画に高い自然エネルギー導入目標を設定する ............................ 8

(3) コスト低下を阻む人為的な障害の除去 ........................................................... 9

(4) 電力系統への接続拡大と電力システムの柔軟性の向上 ..................................... 10

2-2 基本政策2:石炭火力発電を一刻も早くフェーズアウトさせる ............................... 12

(1) 世界の石炭火力発電からの撤退政策 ............................................................ 12

(2) 日本だけで進む石炭火力依存 .................................................................... 13

(3) ダイベストメントの標的になる日本企業 ...................................................... 16

(4) パリ協定の約束履行に向け、日本でも早期に石炭火力の全廃を .......................... 17

2-3 基本政策3:エネルギー効率化を第1のエネルギー源に ....................................... 18

(1) エネルギー効率化は第 1のエネルギ―源 ...................................................... 18

(2) 英・独に抜かれた日本のエネルギー生産性 ................................................... 19

(3) 産業部門に対してだけ排出増加を認めている現在のエネルギー基本計画 .............. 20

(4) 建築分野における大きな削減ポテンシャル ................................................... 24

(5) EV導入の加速化 ................................................................................... 25

3. 電力の脱炭素化に関するその他の論点:原子力発電と CCSの活用にリアリティがあるか ....... 27

3-1 既にピークアウトした原子力発電 .................................................................... 27

3-2 原子力発電の新設コストの高騰 ...................................................................... 28

3-3 停滞する二酸化炭素回収・貯留(CCS)の導入 ................................................... 30

4. おわりに ...................................................................................................... 31

公益財団法人 自然エネルギー財団とは

自然エネルギー財団は、東日本大震災および福島第一原子力発電所の事故を受けて、孫 正義(ソフトバンクグループ代表)を設立者・会長として 2011年 8月に設立されました。安心・安全で豊かな社会の実現には自然エネルギーの普及が不可欠であるという信念から、自然エネルギーを基盤とした社会を構築することを目的として活動しています。

Page 3: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

1

要旨

はじめに

過去数年、世界の自然エネルギー電力は導入量が急増し、価格が劇的に低下した。世界は今、脱炭素化社会の実現に向け、エネルギー効率化に加え、安価な自然エネルギー電力という、もう一つの強力な手段を手にしたと言える。

日本でも脱炭素社会の実現に向け、自然エネルギー電力の活用を中心に据え、その基礎の上に熱や燃料も含めたエネルギー全般の脱炭素化を実現する戦略を打ち立てる必要がある。

脱炭素を達成するために必要な 3つの基本政策

基本政策1:2050年までに電力を自然エネルギー100%へ

2017年には、風力発電で 1.77セント/kWh、太陽光発電で 1.79セント/kWhという世界最安値が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の導入が急速に進んでいる。日本でも安価な自然エネルギーを実現し、まず電力を自然エネルギー100%に転換することを目指すべきである。

・エネルギー基本計画に高いエネルギー導入目標を設定する

太陽光発電と風力発電は、「22%~24%」という国の 2030年目標を上回るテンポで導入が進んでおり、現在の目標は、民間投資を継続的に拡大するインセンティブになりえていない。各国では 2030年に 40%程度の導入目標をたてている。日本でも国内外の投資を呼び込むため、大幅な目標の引き上げが必要である。

・コスト低下を阻む人為的な障害の除去

日本の自然エネルギーコストを引き下げていくためには、既存電力会社が系統接続を拒み、無制限、無保証の出力抑制を行えるような仕組み、また風力発電などの農地への立地を困難にする硬直的な規制など、人為的な障害を除去する必要がある。

・電力系統への接続拡大と電力システムの柔軟性の向上

日本では、太陽光、風力といった変動型の自然エネルギーは、まだ 4.8%しか導入されておらず、運用に技術的問題が生じるレベルではない。欧米の先進事例では、気象予測に基づく発電量予測、出力調整力の高い火力発電の柔軟な運用、広域運用、デマンドマネジメントの活用などにより、既に20%から 40%程度の変動電源を系統に取り込んでいる。大量の変動電源を安定的に電力系統に取り込むことは全く可能であり、変動性を理由に自然エネルギーが電力供給に占める役割を限定する議論は妥当ではない。

基本政策2:石炭火力発電を一刻も早くフェーズアウトさせる

世界が石炭火力発電からの撤退政策を打ち出している中で、日本では 43基の新増設プロジェクトが進んでいる。大量の新増設は、温室効果ガス削減目標の達成を困難にするだけでなく、火力発電の設備利用率を下げ、ビジネスとしてのリスクを増大させている。石炭火力は、「最先端」の発電設備でも通常の天然ガス火力より 2倍以上の二酸化炭素を排出する。こうした石炭火力を国内外で拡大しようとする日本の政策は、世界の気候変動対策を損なうとともに、日本の国際的な評価を低下させ、日本企業のイメージ悪化をも招く政策と言わざるを得ない。

Page 4: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

2

石炭火力からのフェーズアウトをエネルギーの基本政策に位置づけ、カーボンプライシングの早期導入、新設火力発電の排出係数規制の導入などの方策をとるべきである。

基本政策3:エネルギーの効率化を第1のエネルギー源に

日本では省エネが高度に進んでおり、改善の余地が小さいという主張がされるが、1980、90年台の日本のエネルギー生産性の伸びは鈍く、90年代後半からは英・独に抜かれている。また、現行基本計画では、産業部門だけが 2030年目標において排出増加が認められており、更に高い目標の設定が必要である。

建築分野では、エネルギー性能基準の義務化は緒に就いたばかりで、多くの住宅・建築物がカバーされておらず、既存の建築物の対策はほとんど進んでいない。新築・既存の双方で対策強化すべきである。

運輸部門の対策も現行計画での言及が薄い。特に電気自動車については、世界の動きをとらえ、普及加速のための政策が必要である。

その他の論点-原子力発電とCCSの活用にリアリティがあるか

世界の原子力発電の発電量は、2006 年にピークを記録し 2016 年の発電量はそこから 7%減少している。新たな原子炉の建設開始も既に 90年代に入ってから、大幅に減少している。その最大の要因は建設費の高騰である。日本では、原発の発電コストは、火力発電や自然エネルギー電力より安いという主張が行われているが、そのコスト試算で用いられた建設費は、実際に欧米で現在進んでいる新設プロジェクトのコストの半分以下である。

一方、二酸化炭素回収・貯留は火力発電所や工場などの CO2 排出対策に必須とされてきたが、現在世界で操業中の大規模 CCS プロジェクトは 17 件にすぎず、火力発電所の排出を貯留しているのは2件だけである。

CCSは、電力化の困難な産業での利用などはありうるかもしれないが、自然エネルギー発電コストが低下した現在、低炭素の電力供給の手法としての意義は殆ど失われていると言わざるを得ない。

おわりに

日本のエネルギー政策では、「3E+S」が基本的視点とされてきた。自然エネルギーは、安全で、環境への適合性が高いことに加え、過去数年の劇的な価格低下と大量導入により、経済性と安定供給という点でも他のエネルギー源に比べ優位になってきた。

国内に核燃料資源がなく、化石燃料資源も殆どない日本は、欧米各国などとくらべても、脱化石燃料、脱原子力発電を進めることに合理性が高い。四季折々の多彩な自然を享受する日本は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスという自然エネルギーを視野に入れれば、決して資源小国ではなく、持続可能なエネルギー資源に恵まれた豊かな国である。

自然エネルギーのポテンシャルを活用することが、エネルギー資源の輸入依存を脱し、エネルギー安全保障を確立する最善の道である。

Page 5: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

3

1. はじめに:自然エネルギー電力の活用を脱炭素戦略の中心に

2015 年のパリ協定締結により、脱炭素化に向かう世界の動きがいよいよ本格化した。今世紀後半に温室効果ガスの排出を実質的にゼロにするというパリ協定の目標を確実に達成するために、世界各国では、2050 年を展望しながら 2030 年時点の、より具体的な政策目標が示されるようになってきた(表1)。

(表 1)主要各国の GHG削減目標と 2030年の自然エネルギー導入率(目標) 2050年目標 2030年目標 自然エネ(電力部門) 1990年比 1990年比 2030年

ドイツ 80~95%削減 55% 40-45% by 2025(50%以上 by 2030)

英国 80%以上削減 57% 2032年

30% by 2020

フランス 75%に削減 40% 40% by 2030

EU 80~95%削減 40%削減 45% by 2030

アメリカ80%以上削減 (2005年比)

26-28%(2025年 05年比)

カリフォルニア州50% by 2030ニューヨーク州50% by 2030

日本 80%削減 (基準年?)

18%/25.4% (90比/05比)

22-24% by 2030

出典:環境省「各国の長期戦略について」2017.12、REN21 Global Status Report等より作成

日本では昨年夏から2014年に策定された現行エネルギー基本計画の見直しに関する議論が開始されている。また 2016年の先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)で「2020 年の期限より十分早く」国連に提出することが決められた「長期低排出発展戦略」策定に向けた議論は、これまで環境省、経済産業省で別々におこなわれてきたが、本年春以降は、政府全体で統一的に進められることになった。

脱炭素社会の実現をめざす世界と日本の議論を比べると、最も大きな違いがあるのは自然エネルギーの役割についての認識である。過去数年、世界の自然エネルギー電力は導入量が急増しているだけでなく、価格が劇的に低下し、既に多くの国と地域で、石炭火力発電と原子力発電を含む他のどの電源よりも安価な電源になった。後述するように、太陽光発電と風力発電のコストは、条件の良いところでは、1kWhあたり 2セントを下回るまでに至っており、今後ますます安価になることが予測されている。

世界は今、脱炭素化社会の実現に向け、エネルギー効率化に加え、安価な自然エネルギー電力という、もう一つの強力な手段を手にしたと言える。

この認識をもとに、欧州各国、米国各州だけでなく、中国やインドなどの新興国も含め、多くの国と地域が、自然エネルギー電力の最大限の活用を、脱炭素化社会への移行を実現する中心的な戦略として位置付けている。ガソリン車・ディーゼル車から電気自動車への転換をめざす政策が、世界各国で急速に拡大しているのも、この戦略の具体化の一つに他ならない。

Page 6: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

4

日本のエネルギー政策の中で欠落しているのは、自然エネルギー電力を脱炭素社会実現の中心に据える戦略である。日本では後述するように、人為的につくられた様々な障害によって、自然エネルギー電力の価格が未だに高く、その供給量も限られている。いまなすべきなのは、導入拡大と価格低下を阻む障害を除去し、日本でも安価な自然エネルギーの大量導入を実現することである。しかし、政府や経済界の一部には、「自然エネルギーの変動性」など、世界的には既に対応が進み、大量導入の障害とはされていない課題を持ち出し、これを理由に石炭火力や原子力発電など旧来の技術に固執してエネルギー転換を遅らせる傾向すらある。

日本がエネルギー転換に逡巡する間にも、世界では自然エネルギーの急速な拡大が進み、海外の先進企業は、新興国、発展途上国も含めた新たなエネルギー市場を開拓している。このままでは日本において、パリ協定がめざす脱炭素化の実現が困難になるだけでなく、日本経済の新たな成長に向けた地盤が一つ一つ失われていく。

これから本格的に始まる「長期低排出発展戦略」策定とエネルギー基本計画見直しの議論においては、自然エネルギー電力の活用を中心に据え、その基礎の上に熱や燃料も含めたエネルギー全般の脱炭素化を実現する戦略を打ち立てる必要がある。これは、気候変動対策だけでなく、日本の成長戦略の観点からも必須の戦略である。

自然エネルギー財団は、エネルギー基本計画と「長期低排出発展戦略」が、日本における脱炭素社会の実現に至る道筋を明確に示すものになるよう様々な政策提案を行っていく予定である。今回は、電力を中心に脱炭素の実現に必要な3つの基本的な論点に絞って、政策を提起する。

Page 7: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

5

2. 脱炭素を達成するために必要な3つの基本政策

2-1 基本政策1:2050年までに電力を自然エネルギー100%へ(1) 世界で進む自然エネルギー電力の拡大と劇的な低価格化

世界では、自然エネルギー電力の拡大を中心とするエネルギー転換が急速に進んでいる。2017 年末の正確な導入量はまだ公表されていないが、風力発電の設備容量は5億 kWを大きく超え、太陽光発電は4億kWを超えたものと推計される(図1、2)。風力発電の設備容量は、既に 2015年に原子力発電を上回っていたが、2017年には太陽光発電も原子力発電を超えたものと考えられる。

(図 1) 世界の風力発電 設備容量と毎年の増加量(2006~2017年)

出典:REN21, Renewables 2017 Global Status Report より作成、2017年は各種資料による財団見込み。

(図2)世界の太陽光発電 設備容量と毎年の増加量(2006~2017年)

出典:REN21, Renewables 2017 Global Status Reportより作成、2017年は各種資料による財団見込み

発電量に関しても、自然エネルギーは、世界の電力の 24.5%を供給するまでになっている(2016年推計)。これは原子力の 2倍以上の水準であり、その差は年ごとに拡大している。

15 20 2738

3941

4536

5264

55

0

100

200

300

400

500

600

2 0 0 6 2 0 0 7 2 0 0 8 2 0 0 9 2 0 1 0 2 0 1 1 2 0 1 2 2 0 1 3 2 0 1 4 2 0 1 5 2 0 1 6 2 0 1 7

GW

毎年の増加量

前年の設備容量

479425

362313

279232

155192

1168969

500↑

1.4 2.5 6.6 8 1730

2938

4051

75

0

50

100

150

200

250

300

350

400

450

2 0 0 6 2 0 0 7 2 0 0 8 2 0 0 9 2 0 1 0 2 0 1 1 2 0 1 2 2 0 1 3 2 0 1 4 2 0 1 5 2 0 1 6 2 0 1 7

GW

毎年の 増加量

前年の 設備容量

228

303

177 137

99

23 16 8 6

400↑

40 70

Page 8: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

6

導入量の拡大とともに、劇的な価格低下が進んでいる。自然エネルギー導入策として多くの国で入札制度(オークション)が採用されているが、その価格は年を追うごとに低下を続け、2017 年には風力発電で 1.77 セント/kWh、太陽光発電で 1.79 セント/kWh という世界最安値を記録した(図3)。これは今のところ風況や日照などの条件に恵まれた地域で実現しているものだが、特別に自然環境の良い国でなくても、発電コストは数セント台に低下している。

(図3)大規模太陽光発電入札価格の推移

出典:IRENA, Rethinking Energy 2017より作成

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が 2018 年 1 月に公表した報告書 1によれば、世界全体で2017年に新たに運転を開始した陸上風力発電コストは、加重平均で 6セント/kWhにまで低下している。太陽光発電のコストも急速に低下して、2010年の 36セント/kWhから 2017年には 10セント/kWhへ、実に 73%も減少した。こうした価格低下は今後も継続すると見込まれる。IRENAのレポートは、「既に商用段階にある自然エネルギーの発電コストは方法の違いにかかわらず、2020年までには化石燃料による火力発電と同等になるだろう。しかも大半は火力発電の中でも最低水準のケースに匹敵する」と述べている。具体的には、陸上風力は 5セント/kWhに、太陽光は 6セント/kWhに、集光型の太陽熱発電(Concentrating solar power)と洋上風力は 6~10セント/kWhになると予測している。

1 Renewable Power Generation Costs in 2017

Page 9: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

7

(図4)世界の自然エネルギー発電コスト(事業用均等化発電コスト)

出典:IRENA, Renewable Power Generation Costs in 2017

注:円の直径は発電設備の規模(Capacity)を表し、円の中心の位置がコストを示す。太線は各年に稼働した発電設備の全世界加重平均による均等化発電コスト。 資本コストは OECD(経済協力開発機構)加盟国と中国では 7.5%、その他の国では 10%を適用。緑色の帯は化石燃料による火力発電コストの範囲を示している。

こうしたコスト低下の結果、自然エネルギーは既に均等化発電コスト(LCOE)の標準価格での比較で、図 5のように石炭、天然ガス発電の価格と比較しても日本以外では十分競争力ある価格となっている。実際、ドイツ、イギリス、インド、中国など世界の多くの地域で自然エネルギーは火力発電より安価になった。

2016米ドル/

kWh

集光型 太陽熱

洋上風力 陸上風力 太陽光 地熱 水 力

Page 10: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

8

(図 5)世界の主要国における発電コストの比較(LCOE、2017年上期)

出典:ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)

日本においても自然エネルギーは、固定価格買取制度(FIT)の導入以来 5 年でその発電量に占める割合を 15%を超えるまで増大させ(2016年)、多くの原子炉が稼働停止中の原子力発電に代わり、主力電源の一角を占めるようになった。太陽光発電の買取価格が同じ期間に半減するなど、コストも低下傾向にある。

しかし、世界の動向と比べれば、特に風力発電導入の立ち遅れが著しいことに端的にあらわされるように、日本に存在する豊かなポテンシャルが十分にいかされていない。発電コストは太陽光発電も風力発電も世界の 2倍以上の水準にある。

環境省が 2017年 3月に策定した「長期低炭素ビジョン」では、2050年の電源構成を「低炭素電源が 9割以上」としているが、その内訳については再生可能エネルギー、原子力発電、CCS付火力発電の三つを併記するだけで、個々の割合は明らかにしていない。後述するように原子力発電と CCS付火力発電の導入は高コスト化、立地の困難などの課題を逃れることができず、世界的にもその導入は停滞している。この二つの技術は脱炭素化を担う電源にはなりえない。

脱炭素社会への転換をめざす基本政策の第1として、2050年までにまず電力の 100%を自然エネルギーで供給することをめざす必要がある。この長期戦略を前提に、当面、具体的には以下の方策が求められる。

(2) エネルギー基本計画に高い自然エネルギー導入目標を設定する

現在のエネルギー基本計画の目標は、2030年度に「22%~24%」となっている。これに対し、各国の自然エネルギーの導入目標は、表1(P1)にあるように、2030年までに 40%程度というレベルが標準といっていい。その背景にあるのは、2050 年で 80%以上の温室効果ガス削減を実現するには、早期に現在の電力需要の全てを脱炭素化することが必要であり、その中間目標として 2030年までに自然エネルギーの電源割合を大幅に引き上げなくてはならないという認識である。

Page 11: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

9

自然エネルギー電力への投資を高いレベルで安定的に進めていくためには、国が揺るぎのない高い政策目標を掲げることが欠かせない。国の「22%~24%」目標に対応する 2030 年度の太陽光発電導入目標は 64GWであるが、2016年末の時点で既に 42GWが導入済みであり、国内出荷量の動向からみて、2017年末までには、49GW程度に達していると推測できる。この場合、2030年度に 64GWに到達するには、毎年 1GW強の導入で足りることになる。導入の遅れている風力発電でも、現在、環境アセスメント中の事業が実現すれば、それだけで国の 2030 年度目標である 10GWに達する。

「22%~24%」という現在の目標は、太陽光発電にとっても風力発電にとっても、民間投資を継続的に拡大するインセンティブになりえていない。国内外の投資を呼び込むため、大幅な目標の引き上げが必要である。

(3) コスト低下を阻む人為的な障害の除去

国や経済界の議論の中でも、最近では、自然エネルギーが世界的に安価になっていることは認識されるようになってきた。その上で日本の高い自然エネルギー電力コストの引き下げが、導入拡大のための課題として提起されている。

自然エネルギー財団のこれまでの研究成果によれば、日本の自然エネルギーコストを国際価格よりも引き上げている中心的な要因は、太陽電池モジュールや風力タービン等といった機器のコスト差ではなく、開発費や工事費といったコストが海外に比べて非常に高いことにある。こうした要素の高コスト化には、電力制度、土地利用規制制度、環境影響評価制度など、既存の電力会社や国が作り出してきた人為的な障害が大きな影響を与えている。

日照や国土面積などの自然的条件が、日本の自然エネルギーコストを宿命的に高いものにしているわけではない。日照量が日本より劣るドイツでも日本よりはるかに安い 1kWhあたり 4.91ユーロセント(約 6.7円)という太陽光発電が実現しているのは、その端的な証である。

これらの人為的な障害については、これまで自然エネルギー財団の種々の報告書で詳しく解明してきたので繰り返さないが、代表的には以下のようなものがある。

既存電力会社が事実上、恣意的に自然エネルギー電源の接続を拒否することができ、接続した場合でも無制限で無保証の出力抑制を行える系統運用制度

これにより、有望な地域への立地を制約するとともに、系統接続にかかる時間とコストを引き上げ、事業リスクを高めることで資金調達コストを高める。電力システム改革の一環として、系統運用ルールの見直しが進んでいるが、依然として既存電源を優先したルールや変動性自然エネルギーに過度に系統費用を負担させる仕組みが残っている。結果として、新規に接続しようとする自然エネルギー電源に過剰な負担が強いられる。

風力発電など、農業との共存が可能な自然エネルギー電源の牧場など農業地への立地を規制する硬直的な土地利用規制制度

これにより、土木工事費が低廉な平地での開発が妨げられるとともに、許認可のために多くの時間とコストを費やすことを強いられる結果になっている。利用可能な土地が限られるために、開発の困難な場所で事業化せざるをえない可能性が増え、工事費が増加したり、設備利用率の低い場所で事業化せざるをえなくなる可能性がある。風力発電においては、山地で立地する場合に、平地での立地に比べて土木工事費が二倍程度になる。

Page 12: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

10

国が真剣に日本の自然エネルギーコストの低下をめざすのであれば、これらの不合理な人為的障害を除去することが必要である。

コスト低下を進める方策として、昨年から日本でも大規模太陽光発電に対し入札制度が導入された。入札制度が世界的には価格低下の成果を発揮していることは確かだが、日本で十分にその効力を発揮し大量に安価な自然エネルギー電力の拡大につながるようにするためには、その前提として、太陽光発電や風力発電の接続と活用を阻害する現在の系統運用ルールや立地を困難にする硬直的な土地利用規制など、人為的障害を除去しなければならない。

(4) 電力系統への接続拡大と電力システムの柔軟性の向上

自然エネルギー電力の導入拡大にあたり、コストと共にもう一つの課題として指摘されるのは、電力システムの柔軟性の向上である。太陽光発電と風力発電は変動型の自然エネルギー電源であり、その発電量は日照や風況という気象条件で変動する。電力系統の安定的な運営のためには、電力の需要量と供給量は常に等しくする必要がある。変動型電源の導入を拡大していくために、電力の需要量と供給量を調整しマッチさせることができるよう、電力システムの柔軟性の向上が必要なことは間違いない。

太陽光発電などの拡大が進む中で、国のエネルギー政策の議論の中でも、盛んに柔軟性向上に関する議論が行われるようになっている。この議論を自然エネルギー導入拡大に向けた建設的なものにしていくためには、いくつかの注意すべき点がある。

第1は、日本における変動型電源の導入割合(2016 年)は、未だ 4.8%にすぎず、国全体としては、電力系統の安定性確保を理由に太陽光発電や風力発電の導入を抑制しなければならない状態では、全くない、ということである。既に適用可能な柔軟性対策を評価した国際エネルギー機関(IEA)の報告書「電力の変革」2によると、年間発電量に対する変動型電源のシェアが5%から 10%程度と低い段階では、電力システムの運用に技術的に大きな問題はないとされている。

第 2は、自然エネルギーの導入で先行する欧州各国、米国のいくつかの州では、電力の供給側と需要側の双方において、電力システムの柔軟性を向上させる様々な手法を活用し、図6に示すように、日本よりずっと高い割合の変動電源を安定的に系統に取り込んでいるということである。

2 The Power of Transformation (IEA): https://www.iea.org/publications/freepublications/publication/The_power_of_Transformation.pdf 邦訳 「電力の変革」:http://www.nedo.go.jp/content/100643823.pdf

Page 13: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

11

(図6)消費電力量に占める自然エネルギーの割合

出典:IEA, Electricity Information 2017, Renewables Information 2017,

World Energy Statistics 2017, and Statistics onlineより作成

頻繁に使われている手法には、気象予測に基づく発電量予測、出力調整力の高い火力発電の柔軟な運用、デマンドマネジメントの活用などがあり、今後は急速に低価格化が進む蓄電池の活用も進むと見込まれる。送電網の国際連系による広域化も変動調整には有効な手法である。スペインは国際連系が小さい中でも 20%を超える変動型電源の系統に取り込んでいる一方、デンマークは緊密な国際連系網を活用し 40%近い比率を達成している。

こうした先進事例が示すように、大量の変動電源を安定的に電力系統に取り込むことは全く可能であり、変動性を理由に自然エネルギーが電力供給に占める役割を限定する議論は妥当ではない。また、電力系統への接続を制限する理由とするべきではない。

上記の IEAの報告書も、「変動型電源のシェアを 25%から 40%とすることは、電力システムの現状の柔軟性の水準を想定しても、技術的側面から達成可能である」と述べている。

また、柔軟性の向上に関する日本の議論では、変動に対応する出力調整が可能だという理由で、「自然エネルギーには火力発電が不可欠」などという議論が行われることがある。柔軟に出力を調整できる火力発電が、当面の間、系統運用の安定性のために一定の役割を果たしうることは確かである。しかし、それは柔軟性確保のために、現在のような火力発電が将来も必須の存在だということではない。

将来的には二酸化炭素を排出する火力発電ではなく、他の方法で電力システムの柔軟性を確保していく必要があり、自然エネルギー100%の実現に向けた柔軟性確保の方策が検討されている。柔軟性確保の名目で、石炭火力も含む火力発電の延命や増強を進めるのは、脱炭素社会への移行を視野にいれた妥当な選択ではない。

4.8 4.0 3.5

22.2

12.5

19.3

13.4

5.7 6.5

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

0

5

10

15

20

25

日本 中国(2015)

インド(2015)

スペイン イタリア ドイツ イギリス フランス アメリカ

%

太陽光

風力

風力 + 太陽光

Page 14: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

12

2-2 基本政策2:石炭火力発電を一刻も早くフェーズアウトさせる 日本のエネルギー政策の中で、脱炭素化をめざす世界の潮流と最も大きく乖離しているのは、石炭

火力発電への執着である。石炭火力は、「最先端」の発電設備でも通常の天然ガス火力より 2 倍以上の二酸化炭素を排出する。こうした石炭火力を国内外で拡大しようとする日本の政策は、世界の気候変動対策を損なうとともに、日本の国際的な評価を低下させ、日本企業のイメージ悪化をも招く最悪の政策と言わざるを得ない。

2050 年に 80%削減するという日本自身が掲げる目標、またパリ協定が決めた 2℃目標を見据え、2030年までのできるだけ早い時期に、フェーズアウトさせることが必要である。

(1) 世界の石炭火力発電からの撤退政策

11月にボンで開催された COP23で、カナダと英国政府がイニシアティブをとった「石炭火力からの撤退連盟」(Powering Past Coal Alliance)が発足した。26の国と 8地方政府、24企業等が参加し 3、石炭火力発電所を廃止すること、国内外の全ての石炭に対する投資を止めることを宣言した。カナダは 2030年まで、英国は 2025年まで、フランスは 2021年までに石炭発電をゼロにする目標を定めている。発電に占める石炭比率の高いドイツでも褐炭発電所を段階的に削減する方針である。

(表2)主要各国の石炭発電の(撤退)目標

英国 ドイツ フランス カナダ 日本

目標年度 2025年 0%

2020 年までに褐炭発電所を 2.7GW 分(13%)削減

2021年 0%

2030年 0%

2030年 26%

出典:各種資料より財団作成

(図7)英国における石炭発電の発電量の低下

出典:UK Government - Department for Business, Energy & Industrial Strategy, Energy Trends: Electricityより作成

3 2017年 12月現在

0

50

100

150

200

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

TWh

石炭

石油

ガス

原子力

自然エネルギー

Page 15: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

13

石炭火力への依存度の高さや脱石炭政策の進展の度合は国により異なるものの、気候変動と大気汚染問題、自然エネルギーの低コスト化に押され、世界中で石炭発電は減退している。EU では石炭発電は、2012年をピークに減少を続けている。中でも英国では、2012年から 2016年で 74%の削減を記録した(図7)。古いプラント閉鎖に加え、カーボンプライシング(2013 年にフロア価格設定 9ポンド/トン、2015年に 18ポンドに引き上げ)の成果で 2012年以降石炭発電は急速に減少、天然ガスへの転換が進んだとされる。

米国ではトランプ政権が石炭火力擁護の方針をとっているが、オバマ政権からの政策転換にもかかわらず、天然ガスと自然エネルギーの価格の低下が最大の要因になり、また石炭火力プラントの老朽化、脱石炭を進める NGO の活動も相まって、全米で廃炉が続いており、石炭発電の総量も大きく下がってきている(図8)。今年1月には、連邦エネルギー規制委員会が、トランプ政権が提案した原子力・石炭火力への優遇策導入を拒否する決定を行った。

(図8)米国における石炭発電量の低下

出典:US EIA, Electric Power Annualより作成

(2) 日本だけで進む石炭火力依存

上記のように G7各国のうち、日本以外の国々では、既存発電所の閉鎖が進み、今後の新設計画も存在しない。しかし日本では、2011 年以降、全国で 43 基、合計約 1900 万 kWの新設計画が進行中である。石炭火力は 2016 年でも、総発受電量の 30%を占めている。国のエネルギーミックスでは 2030年度に石炭発電で 26%の電力供給を見込んでいる。

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2013

2014

2015

2016

TWh

石炭

石油

ガス

原子力

自然エネルギー

Page 16: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

14

経済産業省の検討でも、計画中の新増設計画が実施されれば、老朽火力の廃炉分を考慮しても、石炭火力は 2026年度までに 1,612kW増加する 4。既存設備容量は 4125 万 kWで、4割程度の増加になる。現行のエネルギー基本計画は、石炭火力を「重要なベースロード電源」と位置付けており、環境省が大規模発電所の環境アセスメントに際して気候変動対策の見地からの異議を表明することがあっても、開設が進むという状況が続いている。環境アセスメント制度での意見表明以外に、石炭火力発電開発を抑制する方法がないという現状は、脱炭素化を進める上での決定的な制度的欠陥と言わざるを得ない。

(図9)2016年度電源別発受電量内訳

出典:資源エネルギー庁「電力調査統計」(2017年 6月参照)より作成

石炭火力発電の新増設は、気候変動対策の観点から大きな問題があるだけでなく、ビジネスとしてもリスクが高い。2017 年 7 月の自然エネルギー財団レポート 5では、このまま大量に新設の石炭火力発電所が建設されれば、設備利用率の低下が予想され、56%にまで割り込むこと、原子力発電所の再稼働や、エネルギー効率化のさらなる進展によっては、50%を割り込むと考えられ、ビジネスリスクが無視できないものとなっていることを明らかにした。

4 資源エネルギー庁「火力発電に係る昨今の状況」2017年 10月

5 報告書 日本における石炭火力新増設のビジネスリスク ―設備利用率低下による事業性への影響―

原子力2%

石炭30%

LNG41%

石油等その他11% 揚水

1%風力1%

太陽光5% 地熱

0%

バイオエネルギー1%

一般水力9%

自然エネ15%

Page 17: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

15

(図 10)火力新増設計画が実現した場合の火力の設備利用率の独自推計

出典:自然エネルギー財団 (2017)「日本における石炭火力新増設のビジネスリスク」

さらには、国は石炭火力発電技術を「クリーンコール技術」と称して、途上国への石炭プラント輸出を積極的に進めている。しかし、図 11 に示すように、国が「次世代火力発電技術」と位置付ける「石炭ガス化複合発電(IGCC)」であっても、その CO2 排出量は、通常の天然ガス火力の 2 倍に及ぶ。加えて、「環境・持続社会」研究センターによれば、南アジア、東南アジアで運転・建設・計画中の石炭火力発電用ボイラー支援のうち、国が「最新技術」と位置付ける USC(超々臨界)ボイラーは12.09GWの施設容量のうち、2GWだけで、残り 10GWが従来型の SCボイラーである。中国や韓国からも USC ボイラーは提供されており、日本が格別にエネルギー効率の高いプラントを輸出しているわけではない。

(図 11)火力設備の技術・燃料別の発電量当たり CO2排出量

出典:環境省「カーボンプライシングのあり方に関する検討会」2017.6.2資料

Page 18: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

16

また、国際協力銀行が支援した石炭発電設備のうち、約半分で脱硫装置が設置されていないことも明らかになっている。大気汚染に関して、日本国内の基準に比べて何十倍もの高いレベルの汚染物質を放出している事実も示されている。

こうした発電所の輸出によって、輸出先の国のエネルギー構造を石炭火力依存にロックインし、地域の公害を助長している日本の政策は世界の大きな非難にさらされている。

(3) ダイベストメントの標的になる日本企業

日本が石炭火力を擁護している間に、世界では様々な主体が石炭・化石燃料関連の会社・プロジェクトから資本を引き揚げるダイベストメントが加速している。ダイベストメントの調査を継続して行っている国際的団体(Arabella Advisors)6によれば、2016 年末時点でダイベストメントを実施する組織や個人は、76か国 688組織、58,399人に及び、その資産は 5兆ドルに達するという。(図12)。2016年に自然エネルギー財団のレポート 7で概要を紹介したように、当初は、大学や慈善関係のファンド、公的基金の団体が中心であったが、今日では地方政府や一般銀行・会社にも広がり、部分的撤退から全般的な撤退へと拡大してきている。EU 議会は銀行、年金基金、保険会社などすべての政府、民間の金融機関に対して、パリ協定の目標に沿ってより積極的な融資、投資判断を行い、化石燃料からのダイベストメントを呼びかけている。2017 年 12 月にはパリで開催された気候サミットに合わせて仏保険大手アクサが、これまでの 5倍の金額の全面撤退を行うと公表した。投資のみならず、石炭発電プロジェクト等に対する保険サービスも停止するとしている。

(図 12)ダイベストメントの拡大:実施した組織、個人の数と試算規模(2015 vs. 2016年調査)

出典:Arabella Advisors, The Global Fossil Fuel Divestment and Clean Energy Investment Movement 2016

6 企業・その他組織が社会貢献活動を効果的に実施するためのガイダンスを目的に 2005年に組織されたアドバイ

ザリー・グループ。

7 報告書 世界の石炭ビジネスと政策の動向 ~パリ協定後の投融資を誤らないために~ 2016年 10月 18日公表

Page 19: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

17

こうしたダイベストメントの広がりの中で、日本の石炭関連企業は、その標的になっている。2017年 11月に発表されたドイツの NGOウルゲバルトのデータベース『Global Coal Exit List(脱石炭リスト)』には、日本企業では、丸紅、電源開発、中部、関西、中国、東京電力など 22社がリストアップされている。また、こうした石炭関連企業やプロジェクトに融資をしている金融機関も、バンク・トラックやシエラクラブなどのNGOが連盟で出版した「化石燃料ファイナンス・スコアカード 2017」で厳しい評価を受け、日本の大手銀行3社が 4つの基準すべてにおいて Fの落第点を得ている。ますます世界の目が日本に厳しくなっていることは確かだ。

(4) パリ協定の約束履行に向け、日本でも早期に石炭火力の全廃を

石炭のフェーズアウト戦略が既に多くの政府に採用され、なおも拡大しているのは、気候変動対策を進めるうえで、石炭使用の継続が致命的であるからだ。パリ協定の目標を達成するためには、早急な政策転換が必要とされることが明らかになってきた。上述の「石炭火力からの撤退連盟」の声明では、ドイツのシンクタンク、クライメット・アナリティックス(Climate Analytics)の研究 8を引用し、2030年までに OECD諸国と EUで、全世界では 2050年までに石炭火力発電の全廃が必要であるとして、早急な政策転換を呼びかけている。

国際エネルギー機関(IEA)が 2017 年に公表した「サスティナブル・デベロップメント・シナリオ(SDGsやパリ協定の目標に対応したシナリオ)」では、世界の発電量に占める石炭火力のシェアを現在の 37%から、2040年時点では 6%まで大幅に削減が必要としている。

現在のエネルギー基本計画の 26%という目標自体、パリ協定の目標を達成する意思が希薄と受け取られても仕方のないものといえるだろう。さらに現在の新増設計画が実行されれば、石炭火力の発電量はこの 26%を大きく上回る可能性もある。

ビジネスとしても大きな不安材料を抱え、日本がパリ協定の目標を達成することを困難にする石炭火力発電所に対して、今後も投資を続けるのが賢い日本の選択とはとてもいえない。石炭火力からのフェーズアウトをエネルギーの基本政策に位置づけ、カーボンプライシングの早期導入、石炭火力が達成できない水準の新設火力発電の排出係数規制の導入などの方策をとるべきである。

8 Climate Analytics, http://climateanalytics.org/files/climateanalytics-coalreport_nov2016_1.pdf

Page 20: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

18

2-3 基本政策3:エネルギー効率化を第1のエネルギー源に (1) エネルギー効率化は第 1のエネルギ―源

国際エネルギー機関(IEA)は、2013 年に初めて出版した「エネルギー効率マーケットレポート2013」で、IEA メンバー11 か国において、1974 年以降にエネルギー効率の改善で削減できたエネルギー量を累積算定した。その結果、エネルギーの効率化により消費されずに済んだエネルギー量は、2010年時点のエネルギー消費の 65%に相当し、他のどの燃料消費よりも多いとして、エネルギー効率化を「第 1の燃料」と位置付けた(図 13)。2010年には EUの Energy 2020戦略で、エネルギー効率化が第 1 の政策優先度を与えられており、近年、その重要性が再認識されるようになっている。

(図 13)エネルギーの効率化の改善により削減されたエネルギー消費量

出典:IEA, Energy Efficiency Market Report 2013

2014年以降、世界の CO2排出が安定化してきたが、最大の貢献をしたのはエネルギー効率の改善である(図 14)。またエネルギーの効率化は、温室効果ガスの削減にとどまらず、エネルギーへの出費を抑え、大気汚染を低減し、エネルギーセキュリティを高めるなど、多様な便益(コ・ベネフィット)をもたらす。

エネルギー効率化は、世界的には、自然エネルギーとともに、サスティナブルなエネルギーシステムに向かう最重要な手段として認識されている。これに対し、今回のエネルギー基本計画の検討資料(「『エネルギー基本計画』の検討~全体像~」、以下「検討資料」)では、省エネルギーは、「再エネ・原子力・化石燃料に並ぶ第4のエネルギー源に」との位置づけにとどまっている 9。エネルギー自給率が低く、CO2排出削減が命題である我が国においてこそ、エネルギー効率化は、最優先の政策課題として位置づけ、取り組む必要がある。

9 資源エネルギー庁(2017.11.28)「エネルギー基本計画」の検討~全体像~、4頁

エネルギー効率化が改善されなければ

使用されていたエネルギー量(推計)

石炭 電力 最終エネルギー消費

石油 その他

ガス 回避されたエネルギー消費量

回避分は 2010 年の最終エネ

ルギー消費量の 65%に相当

Page 21: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

19

(図 14)安定化した世界の CO2排出量(エネルギー起源)と、その要因分析

出典:IEA, Energy Efficiency 2017

(2) 英・独に抜かれた日本のエネルギー生産性

「検討資料」は、日本のエネルギーの消費効率が他国と比較してトップクラスにあると評価している 10。エネルギーの効率化については、これまでも、日本では既に高度に進んでおり、もはや改善の余地が小さい、という主張が行われてきた。しかし、エネルギー生産性(エネルギー消費量あたりのGDP)を主要国と比較してみると、日本は 90年代中頃までは英、独を凌いでいたが、その後追い越され、近年では水をあけられていることがわかる(図 15)。

(図 15)主要国のエネルギー生産性の推移(一次エネルギーあたりの GDP(購買力平価))

出典:IEA, CO2 Emission from Fuel Combustion 2017より作成

10 同上7頁

0.00

0.05

0.10

0.15

0.20

0.25

0.30

0.35

1971

1973

1975

1977

1979

1981

1983

1985

1987

1989

1991

1993

1995

1997

1999

2001

2003

2005

2007

2009

2011

2013

2015

米ドル

(200

5年価格

)/M

J

日本 米国 ドイツ 英国 フランス

2014 GDP 燃料転換 省エネ 2016 排出量 成長 再エネ等 排出量

排出量(

10億トン

CO2e

q)

排出量(

10億トン

CO2e

q)

Page 22: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

20

またエネルギー生産性の改善率をみてみても、日本が省エネ対策の進展を誇る 70~80年代であっても、ドイツ、英国、米国と同レベルであったことがわかる。日本の改善率は 90 年代ではこれらの国々の後塵を拝し、2010 年以降は持ち直しているが、なお、より高い改善率を示す英国には追いついていない。(図 16)。他にもデンマークなどエネルギー生産性でさらに上を行く国もあり、更なるエネルギー効率化を進める必要があることを示している。

(図 16)主要国のエネルギー生産性の改善率(1990年値を1とした指数)の推移

出典:IEA, CO2 Emission from Fuel Combustion 2017より作成

(3) 産業部門に対してだけ排出増加を認めている現在のエネルギー基本計画

長期エネルギー需給見通しで設定された全部門合計の 2030目標のエネルギー消費量は、原油換算で 326百万 klであり、2013年から 35百万 kl、約 10%の削減が必要である。

これに対し、2013年から 2015年までの 2年間の削減実績は、11.9百万 klであり、既に必要削減量の 34%が達成された計算になる。2030年までの省エネ目標が、2年間だけで3分の1強を達成したという結果は、目標設定の妥当性への疑問を生む。

特に、問題があるのは産業部門である。業務、家庭、運輸という他の3部門が 10%台から 20%台の削減目標を設定しているのに対し、産業部門だけが、2013 年時点からの排出量増加を許される目標設定になっている。産業部門の 2013年から 2015年までの 2年間の削減実績が、2030目標に対して 127%という超過達成になっているのは、もともと排出増加を許すという緩い目標になっているためである。

産業部門はエネルギー消費合計のほぼ半分占める最大の部門であり、この部門で高い目標設定を置くことにより、日本全体の削減に大きく貢献することができる。

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

1.40

1.60

1.80

2.00

1971

1973

1975

1977

1979

1981

1983

1985

1987

1989

1991

1993

1995

1997

1999

2001

2003

2005

2007

2009

2011

2013

2015

1900年を1とした値

日本 米国 ドイツ 英国 フランス

Page 23: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

21

(表3)エネルギー基本計画における 2030年目標 原油換算(百万kl) 産 業 業 務 家 庭 運 輸 合 計

2030年目標エネルギー消費量 170 56 38 62 326 2013年からの増減量 +9 -9 -14 -21 -35 2013からの増減率 +6% -14% -27% -25% -10% 2013~15年の削減量(実際) -2.4 -1.8 -4.1 -3.6 -11.9 必要削減量に対する達成率 127% 20% 29% 17% 34%

出典:資源エネルギー庁、2017.8.9,11.28資料等より作成

産業部門での省エネ目標の設定は、①業界ごとに、2030 年における主要生産物の生産水準を基準として設定し、これに 2013年時点のエネルギー原単位を乗じることで、省エネ対策を実施しない場合のエネルギー消費量(レファレンス値)を算定し、②この結果から可能と想定するエネルギー削減対策による削減量を差し引く、という形で計算されている。産業部門では、2030 年の生産量設定、可能な削減対策のどちらも、業界の自主計画である「低炭素社会実行計画」をもとにしている。

例えば、鉄鋼業界の 2030年時点の生産水準の指標として使われているのは粗鋼生産である。図 17に示すように、粗鋼生産量はリーマンショック後の急激な落ち込みを除けば、2007 年度のピーク値1.2億トン以降、逓減傾向にある。2013年度には、1.1億トンであったが、2016年度には 1.05億トンと微減し、2017 年も暦年のデータは 1.05 億トンである。今後、一転増加する要因は示されていないが、2030 年の水準としては、2007 年度と同じ 1.2 億トンと設定された。この数値は 1950年来の最高値と同レベルである。

また石油化学産業においては、エチレンが主要業種として指標となっている。経済産業省が産業構造審議会に対して 2017 年 3 月に提出した資料は、「装置産業を中心に過剰供給構造が存在」と指摘するとともに、エチレンの生産量は 2012年から 2020年の 8年で、610万トンから 470万トンへと大きく減少すると予測している。エネルギー基本計画のレファレンス値は 570 万トンと設定されており、2020年の予測値から 100万トン増加することになる。こうした想定の妥当性についての検証が必要と考えられる。

(図 17)粗鋼生産量の推移 (図 18)エチレンの生産量の予測

出典:

出典:日本鉄鋼連盟 粗鋼生産 資源エネルギー庁製造業をめぐる現状と政策課題 2017.3

0.60

0.70

0.80

0.90

1.00

1.10

1.20

1.30

2005 2007 2009 2011 2013 2015

億トン

Page 24: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

22

削減対策については、素材製造業で、省エネ法のベンチマーク制度における対策を 50%程度導入し、非素材製造業で、ESCO事業等での対策効果を見込むといった、ごく控えめな対策を積み上げるだけで、産業部門全体大幅な削減効果が見込めるという指摘もある 11。

また、現在日本では粗鋼生産の約 8割を高炉で製造しているが、米国や EUでは電炉の比率が高い(図 19)。高炉から電炉への転換で CO2 排出量は、4分の1から3分の1と大幅な削減が見込めるとされるが、現在の削減計画には、高炉から電炉への生産転換といった構造的対策は盛り込まれていない。また板ガラスなどその他の素材産業においても、電炉が活用できるところも多い。

このように現在の産業部門の 2030年目標値は、そもそものレファレンス値が高く見積もられるとともに、削減ポテンシャルが見逃される傾向にある。

(図 19)主要国の電炉鋼比率(粗鋼生産量に占める割合)

出典:世界鉄鋼協会 Steel Statistical Yearbook 2017, 2015

11 歌川学・外岡豊「2050 年に向けた日本のエネルギー需給検討:2050 年に向けた技術対策および人口減社会

のスリム化によるエネルギー需給と CO2 削減可能性」2015

0

10

20

30

40

50

60

70

80

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016

中国

日本

インド

米国

EU28

Page 25: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

23

2030 年目標は、最終目標ではなく、脱炭素化を目指す 2050年目標に向けてさらに大幅な削減を進めなくてはならない中間点である。産業界はじめ様々な関係ステークホルダーが協働するためのぶれない道標として、また新たな産業分野の拡大や技術革新を生み出す機運を醸成する牽引役としての役割を果たすことを期待されている。特に産業部門では、1990 年代以降のエネルギー効率の改善が停滞している(図 20)。さらに高い目標を継続して示すことを求めたい。

(図 20)製造業のエネルギー消費原単位の推移

出典:資源エネルギー庁 エネルギー白書 2017

0.0

20.0

40.0

60.0

80.0

100.0

120.0

1970 731975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2014

1970年度=

100

Page 26: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

24

(4) 建築分野における大きな削減ポテンシャル

業務・家庭部門のエネルギー消費のほとんどが、建築物において使用され、建築物の性能、態様が大きく影響を及ぼす。建築部門は、大きなエネルギー効率化が見込めるにもかかわらず、現状では十分に対策が進んでいない分野である。しかし現在のエネルギー基本計画では、この分野への言及が限定的である。

国際的にみて、日本の住宅、建築物の省エネレベルは低い。特に既存の住宅ストックは約4割がどの断熱基準も満たさない、断熱がないに等しい住宅とされる 12。新築建築物であっても、断熱性能は決して高いとは言えない。建築物の省エネルギー基準は 2017年に改訂強化されたが、以前の 1999年省エネ基準と比較しても、これを満たす住宅は、大規模住宅でも約半分、中規模(300 ㎡~2000㎡)住宅で 3割が満たすに過ぎず、非住宅でも中規模では、6割台だ 13。

全世界的に必須の取り組みとされる建築物のエネルギー基準は、日本では、ようやく 2017年に適応の義務化が開始された。2020年まで順次対象が拡大されるが、義務となるのは 2000 ㎡超の非住宅のみで、中規模は届出のみ、300㎡未満の小規模建築は努力義務に過ぎない。義務対象の建築物は、面積割合で全体の 36%、棟数では 0.6%にとどまる。

建築物に対する日本の省エネ基準は、欧州の主要国やアメリカと比較すると、義務対象が限定されていること、その基準の将来的強化が明示されていないなど、まだまだ不十分な点が多い。EU 指令では、基準設定とその強化は、気候変動の対策目標に整合しており、将来的にはゼロエミッション建築(ZEB)に向かうことが定められている。日本の建築基準は今のところ 2030年や 2050年のエネルギー削減目標との整合性が見えない。日本でもゼロエミッション住宅・建築(ZEH・ZEB)のロードマップが示されているが、一般の建物の建築基準とは非連続であり、ギャップが大きい。実施体制でも、施工検査等で欧米に大きく立ち遅れている。

既存建築物に対する対策の不在も目立つ。EU やアメリカの先進都市で、建築基準を既存建築の改修等に対応させたり、補助やエネルギー事業者が出資する支援の仕組みを導入するなど、既存建物についての規制・支援を強化している動きが活発になっているのとは好対照である。

建築/住宅のエネルギー効率を評価、ラベリングする制度も、エネルギー対策に関心の高いユーザー、消費者行動を奨励し、省エネ建築の市場での評価を高めるために重要な制度であるが、日本ではいまだ任意のままであり、ベンチマーク制度も国レベルでは成立していない。

日本でも、まず性能表示の義務化を実施するとともに、新築基準の対象拡大と強化、既存への対策強化を実施していく必要がある。

12 国交省 2012年「住宅ストック約 5000万戸の断熱性能」 13 国交省 2014年、面積割合。

Page 27: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

25

(表4)主要国と日本の建築エネルギー規制(新築建築物)

出典: 水石、伊香賀、村上、田辺「諸外国における住宅・建築物の省エネルギー規制の動向に関する調査研究」2013.2をもとに作成

(5) EV導入の加速化

現行のエネルギー基本計画では、運輸部門も建物分野と同様に言及の薄い分野である。運輸部門の更なる脱炭素化のカギを握るのが EV(電気自動車)をはじめとするゼロエミッション車の普及であるが、エネルギー基本計画に関する国の検討資料では、これまでのところ「今後は、EV/PHVや FCVの普及加速が課題」と言及されているだけで、具体的な政策は提起されていない。この間にも、各国の政策スタンスは、急速にガソリン・ディーゼル車から EV車導入促進へと転換している。日本の政策は後れをとっていないだろうか。

今、世界を牽引しているのがカリフォルニア州だ。2040~50年に新車販売のほぼすべてをゼロエミッション車(ZEV)にすることを目指している。そのための対策として州内の販売台数に占める ZEV車の最低割合を規定する「ZEV 規制」が実施されているが、2018 年(2017 年後半)からさらに強化され、ハイブリッド車を ZEV対象車から除外、BEV(蓄電池 EV)、FCV(燃料電池車)、PHEV(プラグイン・ハイブリッド車)、HICE(水素エンジン車)に限定されることになり、電気自動車の拡大導入は決定的となった。対象自動車メーカーも GM、フォード、クライスラー、トヨタ、日産、ホンダの 6 社から中堅メーカー含む 12 社に拡大された。同基準を採用する方針を示している 9 州も含め、全米の市場の 4分の 1を占めることになる。

中国においても 2019年から ZEV規制の導入が予定されており、販売車の 10%と規定される。中国の EVメーカーの伸長と合わせて非常に大きなインパクトが予想される。

米国 英国 フランス ドイツ 日本

エネルギー 規制

モデル建築コード 州ごとに採用、規定 一部州を除き適合義務

政府が建築法の一部として省エネ基準を規定 適合義務

同左

連邦政府がエネルギー基準を規定、州の建築法との整合を求める。適合義務

政府が建築エネルギー法を規定、2020までに段階的に適合義務化(基準法連動)

規制対象 新築、増改築する全ての建築 同左 同左 同左

大規模非住宅(2000㎡~)大規模住宅、中規模(300~2000)は届出、300㎡未満は努力義務

基準強化

3年ごとに強化、2020までに 2004年比50%基準強化

3年ごとに強化、CO2基準(2016年のZEH,2019年ZEB基準予定は撤回)

5~7年程度で強化、2020年にZEH,ZEB基準

3~7年程度で強化、2020年にZEH,ZEB基準

性能表示ラベリング、ベンチマーク

加州でエネルギー性能表示義務 18都市、2州でベンチマーク義務 など

取引時証書提示義務(EU指令に基づくエネルギー性能評価のラベル)

同左 同左 自治体でCASBEE新築などの義務制度

Page 28: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

26

一方、欧州でも英国が、2030年 EVも含めた燃費規制基準に強化、新車販売の 60%を EVに転換させ、ICE 車(ガソリン、ディーゼル車などの内燃機関車)の販売を 40 年に終了するという政策を発表した。フランスも 40 年までに温室効果ガスを排出する自動車の販売終了の方針を出している。ノルウェーやオランダ、ドイツ等では、EV に対する大規模な補助金や優遇税制を展開しており、政府が導入拡大に大きく関与する状況は共通している。

このように、世界の政策は EV普及へと大きく転換し、動き始めた。現在、EVは、航続距離、バッテリーのコスト高、充電時間、充電場所数などが課題であるが、スケールの拡大とともに、これらの課題も解消されるという。例えば、最大の課題の一つであるコストは、ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンスによれば、2025年には、EVは ICE車と同水準になると予測されている。

国の検討資料は、「EV化の CO2インパクトはゼロエミ比率により大きく異なる」とし、ハイブリッド車の最高燃費であれば、中国の 2015年~2030年の EVより CO2排出量を小さくできる可能性があることを示している。しかし、中国は現在でも世界最大の自然エネルギー大国であり、電力に占める自然エネルギー電力の割合も急速に増加していくと見込まれる。国際的にも自然エネルギー電力の比重が高まる中で、EV が CO2 排出量でハイブリッド車に対し優位になっていくことは明らかである。

加えて EVは、排気ガスによる大気汚染がなく、輸入に頼るガソリン使用の削減でエネルギー保障にも寄与する。燃料コスト(電気料金)がガソリン車の半分程度で維持費も安く、家庭のエネルギーコストを下げるなど、エネルギー問題を大幅に改善する可能性を持つ。

さらには、変動型自然エネルギーの導入を拡大するための電力システムの柔軟性を高める、セクターカップリングも期待できる。EV が可能にする自動運転の普及がシェアカーやタクシーサービスを容易とし、自動車の使用方法の効率化に寄与し、それが更なる省エネと二酸化炭素排出の大幅削減につながっていく。

世界の政策動向をみると、少なくとも乗用車については、ガソリン・ディーゼル車から EVへ移行することがほぼ確実になったといえるだろう。世界のニーズに応え、市場をリードするためにも、政策の早い転換、対応が必要だ。

Page 29: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

27

3. 電力の脱炭素化に関するその他の論点:原子力発電と CCSの活用にリアリティがあるか

3-1 既にピークアウトした原子力発電 2007 年から 10 年に渡り原子力発電業界をレポートしてきた “World Nuclear Industry Status

Report"の 2017年版は、世界の原子力発電が発電量でも発電割合でも、既にピークアウトし、新規建設が大幅に減少している状況を克明に示している。

世界の原子力発電の発電量は、2006 年にピークを記録し 2016 年の発電量はそこから 7%減少している。発電量のシェアは 1966年の 17.5%をピークに減り続け、2016年には 10.5%まで低下している(図 21)。

(図 21)世界の原発の発電量(1990年~2016年)

出典:World Nuclear Industry Status Report 2017(日本語訳:自然エネルギー財団)

Page 30: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

28

世界の原子炉の建設開始の状況を図 22で見ると、多くの原子炉の建設が行われたのは 1980年代までであり、既に 90 年代に入ってから、建設開始が大幅に減少していることがわかる。2000 年代後半から建設開始が増加しているように見えるが、その多くは中国で行われたものである。その中国でも原発の新増設には地域住民の反対が強くなっている。直近の 2017年では、データの確認されている年前半までは一基の建設が始まっておらず、今後の行方が注目される。

(図 22)世界の原子炉の建設開始

出典:World Nuclear Industry Status Report 2017(日本語訳:自然エネルギー財団)

原子力発電の新規開発が減少している最大の要因は、建設費の高騰である。英国では 1995年以来初めての建設となるヒンクリーポイントC原発は、163 万 kW の原子炉を 2 基建設するものであるが、その建設費は、約 196億ポンド(2.8兆円)に及び、発電コストは 92.5ポンド/メガワット時(13.3円/kWh)と報告されている。英国会計検査院は、この発電コストは、英国の電力価格を大きく上回るものであり、電気消費者と納税者に高いコストとリスクを強いるとして、エネルギー気候変動省(DECC)を非難した。

3-2 原子力発電の新設コストの高騰 米国で新設されているのは、ボーグル原発 3,4号機のみであるが、ここでも建設費が膨らみ、112

万 kWの原子炉 2基の建設費は 2.3兆円(210億ドル)に達している。

資源エネルギー庁はそのホームページで、2017年秋から「原発の発電コストは 10.1円/kWh」であり、火力発電や自然エネルギー電力より安いというキャンペーンを始めている。しかし、この発電コスト試算で用いられた原発の建設コストは、実際に欧米で現在進んでいる上記の新設プロジェクトの建設コストの半分以下である。欧米なみの価格を前提にすれば、その発電コストは火力発電より高い 14~15 円程度になってしまう。「ヒンクリーポイントCやボーグルの建設コストが高いのは個別の特殊事情」などという説明が行われることもあるが、巨大地震や火山噴火など特別のリスクを抱える日本での原発新設が、なぜ欧米の半分以下のコストで可能なのか、説得力のある説明がされているとは言い難い。

Page 31: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

29

国際エネルギー機関(IEA)の「ワールドーエネルギーアウトルック」2017年版は、2017年から2040 年までの世界の電源別設備容量の純増加量(年平均)を示しているが、自然エネルギーが160GWであるのに対し原子力発電は4GWにすぎない。IEAの見通しにおいてすら、脱炭素化の主役は自然エネルギーになっているのである(図 23)。

(図 23) IEA予測による世界の電源別設備容量(年平均)

出典:IEA, World Energy Outlook 2017

Page 32: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

30

3-3 停滞する二酸化炭素回収・貯留(CCS)の導入 火力発電所での実施は 2件

二酸化炭素回収・貯留(CCS)は、火力発電所や工場など化石燃料の燃焼から生じた二酸化炭素を分離・回収し、地中や海洋などに貯留する手法で、大気中への二酸化炭素排出を今世紀中に実質ゼロにするためには、欠かせない技術とされてきた(WEO, 2017など)。

CCS 実施に当たっては、分離回収、輸送、貯留(圧入)、貯留後のモニタリングの各段階での技術開発が必要である。1970年代から技術開発がすすめられ公的資金の投入も行われてきたが、2017年7月時点で、世界で操業中の大規模 CCSプロジェクトは 17件にすぎず、しかもそのうち 13件は油層への CO2圧入によって原油回収率の向上を図りつつ貯留する(EOR)プロジェクトである 14。日本で実施の可能性のある海域・陸域での帯水層貯留方式の事例は4例にとどまる。また火力発電所の排出を貯留している事例は、17件のうち2件に過ぎず、どちらも EORプロジェクトである。

国際エネルギー機関(IEA)は2℃目標に向けた 2025年の CCS導入目標を、400MtCO2/年超としている。現在稼働中の 17プロジェクトによる年あたりの貯留量は 30MtCO2程度にとどまり、2025年目標を達成するためには 10倍程度にまで増やす必要があるとしている 15。しかし、2016~2017年に多くのプロジェクトがオペレーションを開始したものの、それに続くプロジェクトが少なくなっており、頓挫するプロジェクトも少なくない。

技術、安全、法制などの面からの課題検討が行われているが、最大の課題はコストであるといわれる。「グローバル CCSインスティテュート」によれば、発電に CCSを付属すると発電コストが 45~70%高くなる。16

CCSは、電力化の困難な産業での利用や、将来的に大気中の二酸化炭素を回収するバイオマス CCSとしての活用はありうるかもしれないが、自然エネルギー発電コストが低下した現在、低炭素の電力供給の手法としての意義は殆ど失われていると言わざるを得ない。

14 Global CCS Instituteのデータベースによる (2018年 1月参照) 15 OECD/IEA, 2017, Tracking Clean Energy Progress 2017

16 CCS Institute 2017.6, Global Cost of Carbon Capture and Storage P.4,6

Page 33: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

31

4. おわりに

現行のエネルギー基本計画は、「エネルギー政策の基本的視点」として、「3E+S」を掲げ、「エネルギー政策の要諦は、安全性(Safety)を前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一とし、経済効率性の向上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環境への適合(Environment)を図るため、最大限の取組を行うことである。」と述べている。

この「3E+S」はこれまでも国のエネルギー政策の中などで、再三、言及されてきたものであり、安全性も含め、これら4つの要素が重視されるべきこと自体は当然である。問題なのは、「3E+S」の重視が、これを同時に達成できる「理想のエネルギー源はない」という主張を経て、原子力と石炭を含む化石燃料資源への依存を続けることを合理化する議論として使われてきたことだ。

自然エネルギーが安全性と環境適合性において、他のエネルギー源より優れたものであることは以前から認められてきた。地球温暖化を招く温室効果ガスを排出せず、バイオマス火力以外は大気汚染問題にも無縁である。また原子力発電のような巨大災害を引き起こすリスクは皆無である。

こうした明らかなメリットに加え、世界では過去数年の間に劇的な価格低下と大量導入が進み、自然エネルギーは他のエネルギー源に比べ、経済性と安定供給という点でも優位に立つようになってきた。本提言の冒頭に見たように、今や太陽光発電や風力発電は、コスト的に火力発電や原子力発電に十分匹敵し、多くの国や地域でより安価な電源になっている。先進的に導入を進めてきた欧州各国などでは、既に電力供給の主役になり系統運用技術の進歩とあわせ、安定的な電力供給を実現している。

化石燃料、中でも石炭は以前から世界の多くの国々で深刻な大気汚染の原因となってきたが、パリ協定によって脱炭素経済への転換が世界の目標となる中で、より厳しい評価にさらされている。原子力は高コスト化が進み経済性でも劣るものになったばかりか、特に日本では「核燃料サイクル」の破綻、災害や事故、訴訟による突然の停止リスクの顕在化で安定供給にも大きな難点を抱えている。

これまでのように「エネルギー供給の多様化」「バランスの取れた電源構成」などの理由で、原子力と特に石炭火力の利用を合理化することはもはや不可能である。

国内に核燃料資源がなく、化石燃料資源も殆どない日本は、欧米各国などとくらべても、脱化石燃料、脱原子力発電を進めることに合理性が高い。四季折々の多彩な自然を享受する日本は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスという自然エネルギーを視野に入れれば、決して資源小国ではなく、持続可能なエネルギー資源に恵まれた豊かな国である。自然エネルギーのポテンシャルを活用することが、エネルギー資源の輸入依存を脱し、エネルギー安全保障を確立する最善の道である。

世界的には「3E+S」のどの点から見ても優位性を持ちつつある自然エネルギーの恩恵を日本でも受けられるようにするためには、本提言で述べたように、日本に存在する導入拡大の障害を速やかに除去していく必要がある。併せて、脱炭素の標準的なツールとなっているカーボンプライシングを早期に導入するなど、停滞するエネルギー効率化を促進することも必要である。

Page 34: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

32

国際エネルギー機関も「ワールドエネルギーアウトルック」2017年版の中で、「エネルギー効率化と自然エネルギー供給は、エネルギーシステムの安全性と費用効率を最適化する相互補完的なアプローチである。両者は大気汚染物質と温室効果ガスを削減させつつ、エネルギーへの幅広いアクセスを促進し、エネルギー貧困(energy poverty)を改善する」と述べている 17。

日本のエネルギー政策も、自然エネルギーとエネルギー効率化を二本の柱とするものに転換していくことが求められおり、エネルギー基本計画も「長期低排出発展戦略」もこの転換を促進するものにしていく必要がある。

17 IEA WEO 2017: Improved energy efficiency and renewable energy supply are complementary

approaches to optimising the security and cost efficiency of the energy system, while reducing emissions of local pollutants and greenhouse gases (GHG) and facilitating wider access to energy, so reducing energy poverty. (page 282)

Page 35: 提言 脱炭素社会を実現する エネルギー政策への転 …...1.77 セント/kWh、太陽光発電で1.79 セント/kWhという世界最安値 が記録された。自然エネルギーは多くの国と地域で、他のどの電源よりも安価な電源になり、大量の

脱炭素社会を実現するエネルギー政策への転換を

2018年1月

「エネルギー基本計画」と「長期低排出発展戦略」の議論を誤らないために

〒105-0003 東京都港区西新橋1-13-1 DLXビルディング 8F TEL:03-6866-1020(代表)

[email protected]

公益財団法人 自然エネルギー財団

提言