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January 2018, IDC #US43384517 IDC PERSPECTIVE DX プラットフォーム: インテリジェントコアのフレームワーク Serge Findling Dan Vesset Scott Lundstrom EXECUTIVE SNAPSHOT FIGURE 1 Executive SnapshotDX プラットフォームの要-インテリジェントコア Source: IDC, 2017

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January 2018, IDC #US43384517

IDC PERSPECTIVE

DX プラットフォーム: インテリジェントコアのフレームワーク

Serge Findling Dan Vesset Scott Lundstrom

EXECUTIVE SNAPSHOT

FIGURE 1

Executive Snapshot:DX プラットフォームの要-インテリジェントコア

Source: IDC, 2017

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概況

プロセス、モノ、人の相互間におけるデジタル化の進展、より高性能なテクノロジープラットフ

ォームの実現、そしてクラウド、データ、アナリティクスのサービスが、企業に対して、デジタ

ルという観点での組織変革の機会を提供してきた。事業部門と IT 部門の幹部は、テクノロジーに

対して、効率性と生産性向上によるコスト削減だけではなく、収益向上、イノベーションの加

速、自社のミッションを完遂する能力の強化に向け、これまで以上に強い関心を向けるようにな

っている。

情報は新たなデジタルエコシステムの要であるため、企業はデータについても他の資産と同様に

扱う必要がある。企業はテクノロジーと人材に投資してインサイトから価値を生み出し、データ

の活用を重視した組織的なコンピテンシーとケイパビリティ(能力)を確立しなければならな

い。この傾向は「ビッグデータ」に限った話ではない。データの規模が大きいというトピックは

繰り返すまでもない。すべてのデータを活用するため、企業はデジタルトランスフォーメーショ

ン(DX)プラットフォームを開発する必要がある。

しかし、データを活用し、アナリティクスで競い、データ駆動型になるというフレーズはこの数

年常に言われてきたことではないのか。いや、そうとも言えない。世界中に DX への動きが広が

るにつれ、企業はデータの特性、挙動、領域、社会的状況、および環境が拡大する中で、より複

雑なエコシステムや事業環境に直面している。データの複雑さに関しても、その量、次元、適時

性、多重チャネル、モーション、不均一性、構造、分布、または可用性と共に高まっている。

総合的なインテリジェンス活用のビジョンを持つために、データの複雑さに対処するジャーニー

を開始する必要がある。また、このニーズに対する取り組みとデジタルジャーニーの開始(また

は継続)については緊急に取り組む必要がある。マッキンゼーは以下のように述べている

(Source: www.mckinsey.com/mgi/overview/in-the-news/the-right-response-to-digital-disruption)。

デジタルに向けて取り組む時間は、十分にある、あるいは慎重に進めればよい、

と考えているリーダーもいるかもしれません。しかし、その想定は誤りです。10年足らずの間に、新規デジタル参入者があらゆる地域や産業ですでに収益のかな

りのシェアを獲得しており、当社の調査では、そのシェアの平均は 17%に上り、

既存の参入者に残されているのは 83%あまりです。デジタル参入者による世界の

総収益占有率は「たった」17%ですが、デジタル収益については 47%に達するの

です。

DX プラットフォームアプローチを使用して「スケーラブルなアーキテクチャの再構築」ができる

企業は、今後 3~5年の間に DX を実現し、デジタルネイティブな企業として市場で存在感を発揮

すると IDCは確信している。インテリジェントコアをどのように構築するかによって、効率的に

トランスフォームおよび競争を行う(またはミッションを完遂する)能力が決まる。

DX プラットフォームの基盤として、インテリジェントコアは「単なる」テクノロジーのモダナイ

ゼーションの実践ではない。以下のような重要な価値が生まれるという証拠がすでに存在する。

開発者がビジネスユーザーの要求に応じて新しいインテリジェントアプリケーション(コ

ード、アルゴリズム、データを組み合わせたもの)を迅速に導入するための生産性と能力

が劇的に向上する。

リアルタイム運用ワークロードの観点では、トランザクション処理とビジネス分析アプリ

ケーション(BI:Business Intelligence)の区別をなくす。

データの信頼性と完全性が高まることで、企業全体に渡る分析に必要な原資をより広い分

野で活用できる。

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意思決定の自動化が可能なプロセス数と種類が急増する。

ビジネスモデルのトランスフォーメーションを推進する新しい co-innovation(コ・イノベ

ーション)の取り組みをサポートする。

データ、つまりサービスとしてのデータ(Data as a Service)から直接的または間接的な新

しい収益が生みだされる。

DX プラットフォームとは何か IDCは DXプラットフォームを、企業の DXの取り組みを加速する新たなテクノロジーアーキテク

チャであり、内部の IT環境をインテリジェントコア実現に向けて積極的に最新化する一方で、外

部向けにデジタル製品、サービス、エクスペリエンスを迅速に提供できる環境、と定義している。

DX プラットフォームは一義的には外部向けのプラットフォームであり、その主要目的は、利用可

能な情報やサービスを使用する(それに対する支払いを行う)コネクテッドカスタマー、パート

ナー、およびサプライヤーのネットワークまたはエコシステムを作成することである。こうした

外部的な焦点に加え、DX プラットフォームは、コア IT 環境を積極的に最新化して内部と外部の

両方の目的に向けたプロセスと能力を再定義するアプローチを必要とする。

新しいプラットフォームでは、Figure 2 に示すようにあらゆるものが互いにつながっている。デー

タは、接続されている資産、従業員、コネクテッドプロセス、または API(Application Programming Interface)によるその他のデータストリームを通じて企業にもたらされる。これらの

データはインテリジェントコアを通り、そこでインサイトを引き出すことができる。それらのイ

ンサイトは内部プロセスの改善という形で企業に還元される。しかし、データはボット、モバイ

ルデバイス、AR/VRコネクテッドビークルなどを通じたエコシステムエンゲージメントによって

も集められる。このデータもインテリジェントコアを通り、そこで将来のエコシステムエンゲー

ジメントの際に取るべきアクションに変換される。

FIGURE 2

DX プラットフォーム

Source: IDC, 2017

DX プラットフォームは、ERPシステムやデータウェアハウスのような従来のテクノロジー環境

または「スタック」と比較することはできない。IDCの DX プラットフォームに関する詳細につ

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いては『The DX Platform: Rearchitecting for Scale(IDC #EMEA43147617、2017 年 10月発行)』を参照の

こと。

DX プラットフォームは以下の 4つの異なる「タイプ」のサービスを提供および利用する。

インテリジェントコアサービス

インテグレーション&オーケストレーションサービス

開発者サービス

エンゲージメントおよびエクスペリエンスサービス

本 IDC Perspective では、インテリジェントコアサービスについて考察する。

DX プラットフォームのインテリジェントコアとは何か DX プラットフォームの要は「インテリジェントコア」である。そこには、データからインサイト

とアクションを探り出すことを可能にするアルゴリズム、コード、およびモデルが存在する。企

業はデータのみによって特徴付けられるわけではなく、その企業がデータを使って何をするかに

よって特徴付けられる。したがって、インテリジェントコアをどのように構築するかによって、

企業としてのポテンシャルが決まる。

インテリジェントコアによって導き出されるインサイトやアクションには事業レベルの意思決定

に対応するものもあるが、データの監視、処理、保存(または非保存)、分析、可視化、他のア

プリケーションへの組み込みをどのように行うべきかなど、データのアナリティクス、ガバナン

ス、および管理プロセスそのものに関する意思決定に対応するものもある。これらはすべて、現

時点では開発者や管理者が行っている決定であり、その主な理由は、企業が運用および分析シス

テムにおける意思決定の自動化に投資しようとしても、決定論的手法から確率論的手法に移行す

るために必要なデータがすべては揃わないためである。

インテリジェントコアは、個別のシステムやプロセスを超えて、企業に価値をもたらすとみなさ

れるデータを保管する。時間と共に、最も有益かつ実用性のあるデータはある種の「データグラ

ビティ(Data Gravity:引力)」を経て、コアに定着し、複数のプロセスで使用されるようにな

る。新しいインテリジェントコアは、反復的に動的で、価値を追求し、高度な統合およびマシン

インテリジェンス技術を活用する。そして、利用可能なデータの認知度の改善、人間による意思

決定能力の拡張、および人間が行うタスクやビジネスプロセス上の意思決定の自動化によって、

日々の業務におけるより良いアクションと成果をリアルタイムに生み出すことを重視している。

なぜ変化が必要なのか 何年もの間 CIO の取り組みは、「ビッグデータ」の 3つの「V」、Volume(量)、Velocity(速

度)、Variety(多様性)の管理の効率を上げることを重視してきた。企業がより複雑なエコシス

テムや事業環境に直面するようになり、新しいアプローチが必要になっている。このため、CIOの意識は 3つの Vから 3つの「A」、つまり、Awareness(認識)、Augmentation(能力の拡張)、

Automation(自動化)に移す必要がある。これは総合的なエンタープライズインテリジェンスビジ

ョンの 3つの要素である。このビジョンを実現するためのジャーニーにおける重要なステップ

は、幅広いデータ管理、ガバナンス、統合、インテグリティ、およびアナリティクスとデータサ

ービスを活用する専門的な(および最適化された)能力に向けて、既存の情報管理およびアナリ

ティクスアーキテクチャに新しい方向性を与えることである。

これらの機能は、データパイプラインを介して接続されているコアおよびエッジエンティティ(機

械、モノ、人間、アプリ、ボット、データストア)のネットワーク全体でデータをインテリジェン

トにオーケストレート(調和的に統合)する新しいアーキテクチャによって実現する。インテリジ

ェンスは機械学習ベースの継続的な監視、診断、予測、および処方的分析によってもたらされる

(Figure 2を参照)。これらの機能は、内部および外部からその企業に影響を与える環境や事象に

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関する総合的な認識の基礎を形成し、機械が生成する助言によって意思決定者の能力を拡張し、自

己学習を行い、現実に適用可能な意思決定自動化のソリューションの導入を可能にする。

DX プラットフォームとそのインテリジェントコアによって可能になるデータ管理とアナリティク

スは、よりシンプルな従来環境の要件とは大きく異なる。

DX インテリジェントコアに関するこれらのステートメントを詳しく見ていこう。

総合的な認識 長年に渡り、ビジネスインテリジェンス(BI)はあらゆる企業にとって必要不可欠な能力に成長し

てきた。BIを推進するプロセスは、主にトランザクションデータから生じる関連情報を個人に配信

することに焦点を合わせてきた。マネージャーは、下すべき意思決定と、それらの意思決定に役立

つインサイトから始める。IT部門は、データの抽出(extraction)、変換(transformation)、ロード

(loading)と呼ばれる ETLテクノロジーを利用して、トランザクションデータを、個々のエンドユ

ーザーがレポーティングまたはアナリティクスツールを介してアクセスするリレーショナルデータ

ウェアハウスにバッチ処理で移動させていた。このプロセスは通常は専門家によって実行されてき

た。情報配信と意思決定支援のためのこのアプローチは、もはや合理的ではない。

現在は、データが自ら語り始めるようにする必要がある。この観点から考えると、トランザクシ

ョンから受け取るデータの品質と関連性の監視と検出、人々の間でのやり取り、人間と機械のや

り取り、意思決定のプロセス、アルゴリズムの質、意思決定の質、意思決定に基づくアクショ

ン、および外部の Data as a Service プロバイダーが提供するものを含む、あらゆる種類の最大限の

関連データが必要である。このデータを分析し、パターンと関係性を見付け出すことでインサイ

トを導出し、意思決定とアクションにつなげる。

DX プラットフォームのインテリジェントコアは、IDC の定義する意思決定中心型コンピューティ

ング(『Introducing Decision-Centric Computing(IDC #US43282917、2017 年 12月発行)』を参照)に基づ

いている。現在、意思決定中心型コンピューティングは戦略的および運用上の意思決定をサポー

トしているが、将来は増加しつつあるさらに長いサイクルの計画決定をサポートするように拡大

されるであろう。意思決定中心型コンピューティングは、意思決定の自動化をソリューションの

中心に置いてアプリケーションを構築する新しいスタイルである。意思決定中心型コンピューテ

ィングのコンポーネントを使用することで、インテリジェントコアは、企業がデータを継続的に

受信および分析していつ決定を下さなければならないかを予測することを可能にし、それらの意

思決定を自動化する方法を体系的に学習し、各決定に従ってパフォーマンスを向上させる。

これを実行するには、総合的なインテリジェンスビジョンが必要であるが、そこに BIが存在しな

いわけではなく、以下に示す別の種類のインテリジェンスで補完される。

データインテリジェンスは、事業にとって最も有益かつ最もセンシティブな情報の識別に

役立つ。

行動インテリジェンスは、フェイクニュースの作成や格付けの操作に使用される顧客のジ

ャーニーやロボットなど、関係者の行動を明らかにする。

領域インテリジェンスは、特定の事業領域の知識によって補完する。

ネットワークインテリジェンスは、ネットワーク、接続性、および影響力の分析を可能に

する。

組織インテリジェンスは、組織の目標、役割、構造、およびガバナンスの理解とモデリン

グに必要不可欠である。

ソーシャルインテリジェンスは、社会構造とコミュニティの役割を際立たせる。

環境インテリジェンスは、各事業の状況を明らかにする。

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組織におけるインテリジェンスを実現するジャーニーの最初のステップは、あらゆる次元でデー

タへの総合的かつ全体的なアクセスを可能にするインテリジェントコアに向けて、既存の情報管

理およびアナリティクスアーキテクチャを見直すことである。データアーキテクチャの最終状態

は、インテリジェンスのあらゆる側面でのメタ分析とメタ統合を可能にする必要がある。インテ

リジェントコアは DX プラットフォームの中心で最適に作成されなければならない。

意思決定の能力拡張と自動化 過去の BIソリューションは、計画プロセスの長期サイクルでの意思決定については、いくつかの

要件を満たしている。しかし、現在はテクノロジーベースのイノベーションによって優位に立つこ

とが基本となるような、高速かつ高度に複雑なビジネスの時代であり、すでに過去のものとなった

意思決定支援では競争に勝つことは不可能である。その欠点として以下のようなものがある。

いつ決定を下すべきかを特定できない受け身のアーキテクチャ

業務フローにおける戦略的な意思決定のサポートの欠如

代替案のインライン分析および最善のアクションに向けた最適化のサポートの欠如

つまり、過去の BIソリューションは、意思決定プロセスのいかなるステップも自動化されていな

かったため、意思決定の責任を人間のみに負わせるよう設計されていた。この意思決定支援のア

プローチはもはや合理的ではない。管理、制御、および反応性を向上させるためには、戦略的お

よび運用上の意思決定の数と質を数桁増やせるように設計し直すことが必要である。

近い将来、インテリジェントコアの能力に基づいて自動化される意思決定の範囲は飛躍的に広が

るであろう。データの処理方法に関する戦術的な意思決定から始まり、狭い範囲のタスクレベル

の意思決定、そしてエンドツーエンドの事業プロセスに関する一連の意思決定に拡大する。誤解

のないように言うと、意思決定の自動化はアナリティクス領域だけのトピックスではない。イン

テリジェントコアは分析的トランザクション処理(ATP)も可能にするため、インテリジェンス

はリアルタイムの業務フローにおけるトランザクション処理のあらゆる側面に導入される。複雑

なクエリーで分析データを生のトランザクションデータと迅速に統合することで、発生するトラ

ンザクションを実行する際にそれらのクエリーの結果を活用してアプリケーションの動作を修正

できる。その結果は、これまで不可能であったことを実行できるインテリジェントアプリケーシ

ョンであり、複雑なクエリーを使用してトランザクション処理を統制する。

ワークロードやユースケースに関わらず、システムが DX プラットフォーム上に構築されること

で、インテリジェントコアでの学習が行われ、時と共にさらに自動化が進むであろう。

より多くの意思決定を自動化するジャーニーを展開する一方で、人々の意思決定を支援する機会

とニーズが生まれる。この人間による意思決定の能力拡張は、基本的な記述的アナリティクスの

使用から予測的および処方的アナリティクスに拡大する機能を用いて行われる。意思決定の能力

拡張は総合的なデータ認識に基づく条件付き最適化によって企業のあらゆるレベルの意思決定者

に対する助言や次善の策の提案を行う。

総合的な認識、および意思決定の能力拡張と自動化を目指すジャーニーは、インテリジェントコ

アの幅広い機能によって可能になる。

インテリジェントコアの機能 オープン性、拡張性、スケーラビリティ、および標準化に関する DX プラットフォームの要件は

かなり難しく、従来のカスタムシステム開発アプローチでは将来的にはもちろん、現時点でも不

十分である。これらの要件によって、機能アプローチのニーズが高まっている。機能アプローチ

は、分業とスケーラビリティを目的として設計される、モジュール式で、再利用可能な、プラグ

アンドプレイ式の、よく設計されたコンポーネントを作成する(『Digital Transformation Technology Capabilities: A New Model for Enterprise Technical Mastery(IDC #US42692117、2017年 6月発行)』を参

照)。

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Figure 3に示すように、インテリジェントコアには、「アナリティクス(Figure 1 の円の上半

分)」と「データのガバナンスおよび管理(Figure 3 の円の上半分)」という 2つの機能カテゴリ

ーがある。

FIGURE 3

DX プラットフォーム:インテリジェントコアの能力

Source: IDC, 2017

Figure 3は、インテリジェントコアの主な構成要素である、デジタルプラットフォームの無限ルー

プの状況におけるアナリティクスとデータのガバナンスおよび管理サービスを示している。これ

らのサービスは、自動化された技術と手動の技術を使用して構築、統制、管理、および発見され

ている。デジタルプラットフォームでのアナリティクスとデータ管理サービスは、コンテナで実

行するマイクロサービスとして実装されており、クラウド、オンプレミス、およびハイブリッド

環境をまたぐポータビリティを実現する。2つの能力カテゴリー全体でのインテリジェントコアの

構成要素については、以下のセクションで詳しく説明する。

記述的、予測的、処方的アナリティクス この一連のインテリジェントコアの能力は、以下のサービスに分類される。

記述:さらなる分析が必要となる可能性がある状況を特定する。検出サービスは、さらな

る分析が必要かどうかを判断するためにイベントを評価する。これは、新しいイベントを時系列またはそのイベントに関するその他のデータと比較し、相互に関連付けることによ

って行う。統計分析、機械学習、およびルールはすべて、状況を検出する一般的な技術で

ある。

予測:アクションが必要となる可能性を判断する。さまざまなアドバンスドアナリティク

ス技術を使用して、対処を求められる問題または機会が存在する可能性を予測する。アウ

トプットにはいくつかの可能性が含まれ、それぞれに確率が割り当てられる。いくつかの

ユースケースにおいて、特にプロセスが広く知られており、めったに変わらず、データが

非常に正確である場合、ルールは予測よりもアクションが必要であることを示すために使

用される。

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処方:次に何をすべきかについて自動化された意思決定を下す。処方サービスは、予測か

らのインプットを受けてルールまたは条件付き最適化と組み合わせることで次のアクショ

ンに関する意思決定を可能にする。その決定は、自動化されたタスクを次のアクションに

関する一連の助言と共に意思決定者に送信すること、または正確な次のアクションに関す

るコマンド/指示を別のシステムに送信する場合もある。

学習:インテリジェントコアの主要構成要素は、検出、予測、処方、およびアクションの

ステップ全体を通じて活動の継続的な監視を可能にする学習サービスであり、これによっ

てシステムは人間による監督の制約内で順応できる。この継続的な監視と順応は、機械学

習を使用する場合にのみ実行可能である。

増加しつつあるデジタルトランスフォーメーションの取り組みを定義するもう一つの能力は、

Data as a Service によるデータマネタイゼーションであり、これは他の分析、データ管理、および

データガバナンス能力に依拠している。IDCは Data as a Service を、企業がその継続的な業務の一

環として生成する生データ、その生データから派生する付加価値情報、またはファーストパーテ

ィ、セカンドパーティ、サードパーティのデータを集めることで生まれる情報を外部的にマネタ

イズできるようにするデータ配信サービスと定義している。

ガバナンスとデータ管理 この一連のインテリジェントコアの能力は、以下のサービスに分類できる。

管理:これまでは、データ管理はトランザクション処理とアナリティクスという 2つの主

要なワークロードにうまく切り分けられていた。この 2つの関係性は主に、管理報告をサ

ポートするために所定の間隔でバッチ処理されるデータの動きに基づいていた。データは

これまで大部分を静的に管理できたが、この単純なアプローチを使用することはますます

難しくなっている。データは静止しているか、動いているか、リアルタイムで流れている

(data at rest, data in motion, stream data)ため、インテリジェントコアのデータ管理サービスに

は、リレーショナルデータウェアハウスだけでなく、データレイクや専門的な処理エンジ

ン(空間データやグラフ/ネットワークデータなど)、ストリーミングデータ移動、およ

び分析的トランザクション処理が可能なデータベースのための幅広い非リレーショナルデ

ータ管理テクノロジーも含める必要がある。データは DX プラットフォーム全体で簡単か

つ自由に利用される必要があるため、すべての人があらゆるデータを容易に理解できるよ

うにする一貫したルールを定めることが必要不可欠である。データ品質管理とマスタデー

タ管理はエコシステム全体に行き渡らせる必要がある。

統制:企業はすべてのデータがどこにあるか、およびそれが何を表しているかを認識する

必要がある。データ管理は、その定義、意味、来歴、系譜、および関係性を含む、すべて

のデータの深い理解に依拠している。データについてそのような認識を持つには、技術的

なメタデータを事業、関係性、およびコンテキストのメタデータで拡張する必要がある。データディスカバリーと定義の自動化のための人間の知識による機械学習の活用は、この

ビッグデータの時代にデータサプライチェーンのインテリジェンスを獲得する唯一の現実

的な方法である。データカタログ、メタデータディスカバリー、データスチュワードシッ

プ、データプロファイリング、およびセルフサービスのデータアクセスソリューション

は、データサプライチェーンのインテリジェンスを明らかにしつつあり、データの信頼度

を高め、消費に間に合うように管理された安全なデータを配信する企業間のデータ交換を可能にする。同時に、インテリジェントコアのすべての活動をサポートするために、セキ

ュリティとプライバシーを徹底して構築する必要がある。

学習:分析能力と同様に、データのガバナンスおよび管理サービスは(ワークロードに関

わらず)学習サービスによってサポートされる必要がある。学習サービスは、データのガ

バナンスおよび管理活動をそれらのライフサイクル全体を通じて継続的に監視することを

可能にし、企業がデータのガバナンスおよび管理プロセスを環境の変化に確実に順応させ

るのに役立つ。DX プラットフォームでは、このサービスは機械学習によって可能とな

り、人間が監督する「セルフドライビング」のデータ管理をもたらす。

オンプレミスおよびオフプレミスで導入されているシステムから、および内部と外部のソースか

らの、構造化、非構造化、および半構造化された形の、トランザクション、行動、態度、記述、

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インタラクション、診断、およびパフォーマンスのデータの入手のしやすさにおける現在の傾向

は、資産であるか負債であるかに関わらず、企業にとって極めて高いリスクを示している。CIOと CEOの両方が大規模なデータ漏洩などのデータ関連の問題について責任を問われる姿を目にす

る機会はますます増えている。ガバナンスのポリシーとプロセスは、データの管理と分析に必要

な複数の機能を統率するための決定権と説明責任のシステムを明確に示す必要がある。

個別のコンポーネントとして単純に見ると、これらのテクノロジーはあらゆる CIO を尻込みさせ

る手に負えない複雑性を描き出している。しかし、最新の統合、オーケストレーション、および

開発の技術とプロセスによって、現在はこれらのすべての能力をサービスとしてまとめてシーム

レスに顕在化させるインテリジェントコアの開発が可能である。

テクノロジーリーダーへのアドバイス

機械学習を利用した能力拡張における人間と機械の関わり方にはさまざまな形態があるが、教師

なし機械学習および強化学習の進歩によって、コグニティブ/AIシステムはあらゆる関連情報に

ついてその環境を検出および感知し、自ら学習し、自力で決定を下し、人間に条件付き最適化の

もとでの助言(つまり処方)ができるようになっている。

インテリジェントコアを信頼して利用するために、企業は自らの経営およびプロジェクト管理手

法を、インテリジェントコアのニーズに適合させる必要がある。

アルゴリズムの選択と検証のプロセスの確立

人間とシステムの監査人によるガバナンスプロセスを制定し、社内ポリシー、および倫理

規定に対する予測、処方、および意思決定への評価

社内および社外のデータサイエンティストをデータエスノグラファー(組織内におけるさ

まざまなデータの定性面も含めた特性に精通し、情報やデータの解釈を提供する人)で補

完し、人々の感情、ストーリー、および自身の世界の知覚を明らかにする定性調査法を使

用してデータの文脈的解釈を行うこと

このようなプログラムでは、経営幹部から個々のスタッフまで、すべての関係者の完全なサポー

トが必要である。必要な賛同を得るには総合的な取り組みが必要である。これが達成されると、

実装の取り組みが始まる。Figure 4は、DX プラットフォームのインテリジェントコアの実装を成

功させるために推奨されるアクションと成果を示している。

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FIGURE 4

必要不可欠なアクションと成果

Notes:

*詳細については、『Introducing Decision-Centric Computing(IDC #US43282917、2017 年 12 月発行)』を参照

CDO = 最高データ責任者、CAO = 最高アナリティクス責任者

Source: IDC, 2017

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©2018 IDC #US43384517 11

参考資料

関連調査 DX Platform: A Framework for Integration and Orchestration Services(IDC #US43383918、2018 年 1月発

行)

DX Platform: A Framework for Engagement and Experience Services(IDC #US43315017、2018 年 1月発

行)

DX Platform: A Framework for PaaS and Developer Services(IDC #US43383417、2018年 1月発行)

Introducing Decision-Centric Computing(IDC #US43282917、2017 年 12月発行)

The DX Platform: Rearchitecting for Scale(IDC #EMEA43147617、2017年 10 月発行)

IDC FutureScape: Worldwide CIO Agenda 2018 Predictions(IDC #US41789117、2017年 10月発行)

IDC FutureScape: Worldwide Analytics and Information Management 2018 Predictions(IDC #US42619417、2017 年 10月発行)

IDC FutureScape: Worldwide Digital Transformation 2018 Predictions(IDC #US43154617、2017 年 10月発行)

IDC FutureScape: Worldwide Intelligent ERP 2018 Predictions(IDC #US43155917、2017年 10月発行)

Digital Transformation Capabilities: Introducing the IDC DX Technology Capability Framework(IDC #US42825417、2017年 6月発行)

Digital Transformation Technology Capabilities: A New Model for Enterprise Technical Mastery(IDC #US42692117、2017年 6月発行)

Synopsis 本 IDC Perspective は、インテリジェントコアが今後 3~5年に渡り企業のデジタルトランスフォー

メーション(DX)で果たす役割を考察している。

「あらゆる手段によって、データとインテリジェンスは想像を絶する価値を生み出すまたとない

機会を提示している。しかしその主流に乗るには加速が必要であり、企業は、競争力を持ってデ

ジタル経済に参入するためのデジタルプラットフォームの要として、インテリジェントコアを構

築することが不可欠である」と、IDC IT Executive Program(IEP)のリサーチ統括責任者である

Serge Findlingは述べている。

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IDC 社 概要 International Data Corporation(IDC)は、IT および通信分野に関する調査・分析、アドバイザリー

サービス、イベントを提供するグローバル企業です。50 年にわたり、IDCは、世界中の企業経営

者、IT 専門家、機関投資家に、テクノロジー導入や経営戦略策定などの意思決定を行う上で不可

欠な、客観的な情報やコンサルティングを提供してきました。

現在、110か国以上を対象として、1,100 人を超えるアナリストが、世界規模、地域別、国別での

市場動向の調査・分析および市場予測を行っています。

IDCは世界をリードするテクノロジーメディア(出版)、調査会社、イベントを擁する IDG(イ

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