Download - 電子化により外来カルテ文章 の 情報量 は増加する傾向がある
電子化により外来カルテ文章の情報量は増加する傾向がある荒牧 英治 * ***増川 佐知子 *山田 恵美子 ** 脇 嘉代 **大江 和彦 **
* 東京大学 知の構造化センター** 東京大学 医学部附属病院*** JST さきがけ
背景と目的• 利点
– (手書きカルテに比べ)診療情報の保存・管理が容易– (臨床研究を行う際にも)診療情報を効率よく利用可能
• 欠点– 記述量が減るのではないかという危惧
• 患者と対面しつつ入力する負担– コピー・ペーストによる転用
• 記載量は増えたが真の情報の質・量に変化はないのでは?• これまで電子カルテと手書きカルテを比較しそれらの記載内容について量的,質的に検討した研究は少ない• 電子カルテテキスト固有の特性があるのかも不明電子カルテと手書きカルテのテキストに含まれる情報の質的,量的な差異を検討
概要• 背景• 材料• 方法• 結果• 結論
材料 ( 1/2 )• 東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科の外来受診中の患者 85 名( 44 名の医師が記載)のカルテ (倫理委員会の承認済)– 2003 年 6 月 -2009 年 5 月 (5年)手書きカルテ– 2009 年 6 月 -2010 年 2 月 ( 6 カ月)電子カルテ
手書きカルテ 電子カルテ文書数(受診回数)文数文字数18414103
46756
4841658
31899
材料 ( 2/2 )• Subjective (患者の主観的情報)を抽出– 自然文の性質の変化を調べるため,自然文が多いと考えられる患者の訴えの部分に注目
• 抽出方法– 明示的に「 S 」と記述されている場合:該当箇所抽出
– 「 S 」と記述されていない場合: 記述内容から糖尿病専門医が判断して抽出
S) 夏で子供と cake ・ジュース多かった。
昨晩はフライドチキンを食べたと。
概要• 背景• 材料• 方法• 結果• 結論
本発表で紹介する指標STR
POSRCaseR
FLUrFLUcFLUα
MRSynCompDisComp
#Chars#MWsSimSR
SameSR
Script type RatioPart Of Speech RatioCase RatioFluency (R Value)Fluency (C Value)Fluency (α2Value)Machine ReadabilitySyntactic ComplexityDisCompDiscourse ComplexityNumber of Medical WordsSimilar Sentence RatioSame Sentence Ratio
文字種の割合品詞の割合格助詞の割合流暢さ [guiraud1954]流暢さ [Herdan1960]流暢さ [Maas1972]機械処理可能な医療表現数統語的複雑さ談話的複雑さ受診毎の文字数受診毎の医学用語数前回受診時と類似した文の割合前回受診時と同じ文の割合
質質質質質質量量量量質質質
汎汎汎汎汎汎医汎汎汎医医医質を測るか(質)/ 量を測るか(量)一般的指標か(汎)/医学的指標か(医)
概要• 背景• 材料• 方法• 結果– ( 1 ) 質的検討– ( 2 ) 記載量は増えたか ?
– ( 3 ) コピー・ペーストは ?
• 結論
一般的統計量文字種の割合 品詞割合 格助詞の割合
英字↓ 漢字↑
句読点↑
手書き(左)と電子カルテ(右)夕食前に hypoglycemic昼食が少し遅れると hypo になりやすいexercise の多少により変動多い盆の間,両親が 2weeks いたのでhealthy弁当とっていたアルコール飲む量がふえた食事はかわっていないgeneral condition まあまあ昼夜逆転アサ食 12°頃ヒル食 16°~ 17°頃夕食間食 (+) スルメ p.ocoffee jelly 40/ 回 p.o したり疲れると食べてしまう.(買いおき)ex. 買物 駅~家 10 分 /day
低血糖 午後何回か --> 昼前低く朝下げることも御話したが、昼前の 90台はちょうどよく現状維持希望まだまだアルコールの量が多い。せいぜい一本にするよう指導するも、一本では飲んだ気がしないとのこと。減酒の意義を説明した。こんご少しづつでも飲酒量を減らすように指導続ける。(遅刻)。体重が減らない。スポーツクラブも月の 4~ 5 回。食事も良く食べている。夜の間食が多い。
統語構造の複雑さと談話構造の複雑さ多くの命題(動詞)があればより複雑
多くの接続詞があればより複雑(論旨を展開するには接続詞「ので」「から」等が必要)
統語構造 談話構造
概要• 背景• 材料• 方法• 結果– ( 1 ) 質的検討→ より複雑な構造に(文らしく)– ( 2 ) 記載量は増えたか ?– ( 3 ) コピー・ペーストは ?
• 結論
医療情報量は増えたか?受診毎の文字数と医療表現数医療表現 = 医学辞書(医学書院,南山堂医学大辞典)の見出し語
文字数 医療表現数
r =0.254(p=0.05)
r =0.322(p=0.01)
医師ごとの変化
2 2
手書きカルテと電子カルテの記載量は相関する傾向→ 手書きカルテで記載量が多かった医師は電子カルテになると更に記述量が増加する傾向が認められる
文字数 医療表現数
概要• 背景• 材料• 方法• 結果– ( 1 ) 質的検討– ( 2 ) 記載量は増えたか ? → 2~ 2.5倍の増加– ( 3 ) コピー・ペーストは ?
• 結論
コピー・ペーストは増えたか?• 前回受診時と同一または類似文の割合を計算– 類似度 SIM=編集距離 [Levenshtein1965] 類似度
>0.8
夏で子供と cake ・ジュース多かった。夏で子供と ジュース多かった。SIM 0.73
子供と cake ・ジュース多かった。
SIM0.94
SIM1.00
夏で子供と cake ジュース多かった
同一 類似前回受診時と同一 / 類似の文の割合
同一 or 類似の文は 5倍( 10~ 12ポイント)増加
概要• 背景• 材料• 方法• 結果
– ( 1 ) 質的検討– ( 2 ) 記載量は増えたか ? → 2~ 2.5倍の増加– ( 3 ) コピー・ペーストは ? → コピー・ペースト可能である 記述が 5倍の増加 (15%)
• 結論
15%ディスカントしてもまだ増えている
概要• 背景• 材料• 方法• 結果• 結論
結論• さまざな観点から電子カルテテキストの量的/質的な検討を行った
– 量:コピー・ペースト可能な量も増えているが,それだけでは説明できない
– 質:動詞・接続詞頻度が増え,より複雑な文構造 → 今後の詳細な検討が求められる(診療行為や診療内容にどの程度影響しているか等)• 今回は糖尿病・代謝内科の半年間のカルテを集計 → 今後: より大規模な調査が必要
電子カルテ化により記述が減るとは言えないむしろ増える傾向がある
連絡先 東京大学 知の構造化センター/ JST さきがけ 荒牧英治 Ph.D. [email protected]
手書きカルテ書き起こし調査協力者 川村美雪 山田(篠原)恵美子 増川佐知子 新田見有紀
脇嘉代(糖尿病専門医)