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www.pwc.com.br Doing Deals in Brazil Helping you to pursue business success in Brazil 日本語版

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Doing Deals in Brazil

Helping you to pursue business success in Brazil

日本語版

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はじめに

ブラジルは、国際的金融危機から驚くほど上手く回復し、より強靭で魅力的なグローバル・プレーヤーとして戻ってきました。高度に多様化したブラジル経済は、幅広い貿易相手国、強い国内市場を擁し、金融システムに厳格な規制を実施したことが、最近の危機による深刻な影響を緩和できる主因となりました。長期にわたる国内経済の不安定期間の後、政治と通貨が安定し、厳格な財政規律が実施され、外貨準備高の増加と堅調なマクロ経済指標があり、さらに国内消費者市場の急拡大が二十年近く続いてきて、これら全てがブラジルを世界で最も将来性のある新興市場の一つに押し上げました。

しかしながら、ブラジルに対する関心の高まりと信頼にも関わらず、将来の投資家は、未だ、国の強さと弱さに対して、時代遅れの認識度であり、複雑な規制と法的事項を克服するのが難しいと認識し続けています。複雑な税務環境、官僚主義及び乏しいインフラにより、ビジネスは挑戦を受けることになります。これらの認識される障壁や投資の成功のためのパスをクリアするための方法を理解するのを助けるために、我々はブラジルでディールを行う便利なポケットブックガイドとして2013年版を発行することを嬉しく思います。

本書では、ブラジルの政治、文化、及びその他の課題だけでなく、ブラジルの経済環境、財務及び税務の規制、及び、M&A活動についての情報を含んでいます。ブラジルにおける投資を目的として、PwC Brazilの専門家のチームは、投資家が直面するであろう重要な問題点とリスクについても特定しました。

(つづく...)

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ブラジルにおける事業の立上と成功に、このガイドが必ず役立つものと当社は信じております。この種のガイドは、ブラジルの法律と規制の要約のみを提供するもので、必要に応じてブラジルの会計、法務の専門的アドバイスを求められることをお勧めいたします。PwCの専門家は、喜んで、皆様がブラジルでビジネスを始められる際に、本書掲載の事項について踏み込んだ情報を提供したいと思います。

Fernando AlvesTerritory Senior PartnerPwC Brazil

はじめに

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目次

1. ブラジル投資と課題 ........................... 7

2. 経済環境

2.1 ブラジル概観 ..................................17

2.2 最近の経済動向 ................................20

2.3 2013年の見通し ................................24

3. M&Aおよびプライベートエクイティの活動

3.1 2012年のM&A活動 ..............................43

3.2 プライベート・エクイティ ......................49

4. 文化 ........................................ 55

5. 会計原則および監査要求 ..................... 61

6. 税務事項 .................................... 69

7. 労働力と人件費 .............................. 95

8. 環境問題 ................................... 101

9. ブラジルにおけるM&A専門家、 ポストディール・サービス .................. 111

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Doing Deals in Brazilは、PwCにより準備され、厳正に発行されたものです。この発行に含められた情報の使用は、会社の税務コンサルタントの使用とともに行われなければならず、また、記述した法令の最終的な変更を確認の上、ご使用ください。

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ブラジル投資と課題

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1 ブラジル投資と課題

ブラジル投資の誘因

BRICsの魅力

• 経済の急成長

• 一人当たりGDPの高い成長率

• あらゆるセクターの市場規模が増大

• 拡大する中間所得層

• 大規模都市人口の増加

• エネルギー消費の急増

BRICsの課題

• 貧弱なインフラ

• 非効率なガバナンス

• 実効性の薄い法と秩序

• 汚職の蔓延

• 激しい格差と貧困

BRICs4カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国)はいずれも、大きなチャンスと成長の可能性のある国として世界的に認知されていますが、ブラジル投資は他の新興経済国に比べても障害となる点が少ないと言えるでしょう。

ブラジルは自然資源に富み、若い労働力とほぼ未開拓の国内市場があり、巨大な潜在力を有する国です。経済と政治の安定を柱に、過去数十年に渡って成長基盤を構築しており、これまで以上にその潜在的可能性を発揮する段階にあります。

ブラジルの魅力と課題のいくつかは、他のBRICsと共通しています。

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ブラジルの主な優位性

その一方、ブラジルには他の投資先とは異なるいくつかの特徴があります。

ガバナンスとファイナンス

• ブラジルは、しっかりとした政府・行政機関を備えた安定した民主国家

• マクロ経済のファンダメンタルズ調整や、安定した政治により経済環境の不安定性を解消

• 国際貿易とグローバル化の進展により、輸出指向政策を推進

• 少数株主に有利でコーポレート・ガバナンスと良好な会計実務推進の新法規の整備

• 厳格かつ現代的な環境保護法の制定

• 高度に発展し、回復力のある金融・銀行システム

• 約15年半に渡りインフレを抑制

ビジネス環境

• ブラジルは世界第7位の経済大国で(国際通貨基金の購買力平価基準を当てはめるなら第8位)で南米最大、世界市場におけるプレゼンスを拡大

• 大規模で発達した農業、鉱業、製造業、サービス産業といった広範な産業基盤を有した多様化した経済

• 主要な格付け機関の全てから投資適格格付を付与

• 外国人投資家は、一定の条件でのれんに税控除が受けられるなどを含め、税務上の優遇のほとんどを受けられる

• 近年、IPOの増加にともない現地資本および債券市場が拡大

• ここ数年、カントリーリスクが大きく低減

• ブラジルのビジネスは、コーポレート・ガバナンスと会計手続の導入と、今後の現地会計監査基準の国際財務報告基準(IFRS)へのコンバージェンスで転換期に直面

• この数年汚職は相変わらずだが、物理的安全性は大きく向上

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地理環境

• 欧米の投資家にとってブラジルはビジネスをしやすい環境(ビジネスに影響する大きな文化的隔たりがない)

• 他の新興市場と比較すると、高度に都市化

• 単一言語国家

• 創造性がありフレキシブルな労働力を有する

• 地震やハリケーンのような自然災害を受けない

• 近隣諸国と平和的関係を維持

• 投資家はブラジルから他のメルコスール自由貿易圏諸国(ブラジル、アルゼンチン、チリ、ベネズエラ、パラグアイ、ウルグアイ)へ無関税でアクセスできる

資源

• 膨大なエネルギー資源、鉱物資源、原料資源

• 石油自給国であり、低炭素燃料およびバイオ燃料(特にエタノール)の開発と生産で世界をリード

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将来

• エコノミスト誌はブラジルが十年以内に世界第五の経済大国となると予測

• 現地会社の多くが過小評価されており、再編・資本・技術を必要としている

• 特に中間層において、急成長の可能性がある消費者市場が存在

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主な投資誘因

長期的な戦略と投資(全般的なインフラの改善と超深海油田採掘の機会を含む)が政府の現在の最重要課題となっていて、その努力は中長期的に成果をもたらすことが期待されます。他地域がすでに発展軌道に入っているのに対して、北東部など一部地域はこれから発展の機会をつかもうというところで、社会的不平等も指摘されています。政府は貧困撲滅のための対策を進めています(「家族基金(ボルサ・ファミリア)」プログラムなど)。

戦略的な投資家はこのような機会を捉え、ブラジルを大変魅力的な投資先と見ています。クロスボーダーのM&Aと強い資本市場が、これに重要な役割を果たすでしょう。

将来に向けて布石を打ってきたブラジルは、まさに注目に値します。巨大なインフラ需要があり、また教育と保健医療に官民からのさらなる投資を必要としています。政府の最優先課題として構造的税制改革と、政府支出を厳格に管理し経済成長を促進することが挙げられます。

ブラジルは、来たる主なスポーツイベント、2014年のサッカーワールドカップや2016年のオリンピックゲームを主催し、その成功を披露する特別な機会を持つことになります。戦略的及び財務的投資家(プライベートエクイティファーム)は、ブラジルに設立されてからまだ長くありません。しかしながら、既に、より多くの数のプレイヤーが到着し、このダイナミックな市場を無視することができないことを認識しています。

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「通常のビジネス」は、ビジネス成功の鍵ではありません。それは、投資家が台頭する経済の中で、ビジネスの関心を拡大するための機会を探している理由でもあります。もし、投資家が、先進国経済において低い長期の成長に依存するならば、ビジネスはただ停滞することになります。先進国の経済の中で予測される年間の成長率は、現実的にはわずか2%です。伝統的な母国の市場と違う、ビジネスがワークする方法を理解することが大事なポイントとなります。ブラジルには、成熟した機関に構成され、民主的に安定した経済と政治環境があり、当国は単一語を話す2億人の消費者を抱え、その多くが消費者市場における新しい購買層です。。新興国市場の投資格付けは、長期にわたり重要でない投機的な投資として考えることをやめています。ブラジルのような経済において、入念に練られた投資を行うことは、成功の鍵となりえるでしょう。

投資上の主な課題

ブラジルは躍進していますが、投資家にはなお数々の課題が残ります。高い税金に、給与・売上・収入にかかる社会的費用といった複雑な税務と労働の規制環境があります。複合的な税制と急激な法改正がビジネス・プランに影響を及ぼし、偶発債務のリスクを高め、資産と株式取得の双方を阻害する可能性があります。また移転価格と外国資本登記に関して、複雑な規定があります。

ブラジル企業は、米国海外不正行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act)や2010年英国贈収賄防止法(UK Bribery Act 2010)などのような国際的認知された、汚職または賄賂防止に 関する法規遵守が甘く、また会計規則の適用違反となりかねないオフバランス取引や承諾事項を開 示していないことがあります。

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概してビジネスにおける過去の財務情報の質は低く、一般に公正妥当と認められた会計基準に十分依拠しているとはいえません。非常に多くの中小規模の家族経営企業に投資する際は、コーポレートガバナンス、内部統制、ITプラットフォームの統合、HR関連事項やその他の領域において、ポストディールの投資が必要となります。

ブラジルの企業は、必ずしも最適に組織されているとは限りません。雇用の終了に際しては、高いコストが必要になるため、企業再編を即座に行うには、支障があるかもしれません。ある産業や一定のビジネスにおいては、かなりの官僚主義と規制があります。ある地域、ある特定の産業においても、身内びいきが起こりえます:往々にして、「誰を知っている」かが、「どのようにやるかを知っている」かより重要となります。

ブラジル内の、ある地域では、工業化が進んでおらず、流通チャネルとインフラがまた必要とされます。教育システムの弱さがまた、十分な熟練労働力の供給を損なっているかもしれません。このために、ブラジルの社会格差や富の不均衡配分が起こっているといえます。

さらに一般的に、ブラジルは未だに、革新、研究及び開発において、遅れています。また、改善はしているものの、ブラジルの企業は、外国におけるブランド認知度に乏しいといえます。

ブラジルで投資を行う際に、投資家が直面する一般的な問題の例について、以下に示します。投資前、投資後双方を含み、特に順番は考慮していません。

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ブラジルで投資を行う際に、投資家が直面する一般的な問題の例について、以下に示します。投資前、投資後双方を含み、特に順番は考慮していません。

• 重要な税、環境・労働に関するリスクおよび偶発事象

• 事業に一定程度の不備(例:取引未計上、二重帳簿)

• 重要な関連当事者取引の文書化の不備(例:家族支出)

• 内部統制環境の欠如または不備(財務情報の質低下を招く)

• 重要な会計上の調整(EBITDA、純利益および純資産について)および税務リスクを招く不適切な会計処理

• 定期的な勘定科目照合の欠如

• 不十分なキャッシュマネジメント

ブラジルにおけるビジネス失敗例の主な理由

• 予想外の税務・労務問題

• 過度の法的形式主義/官僚主義

• 入手可能な情報の質が低い

• 市場の変動率

• 投資に先立つデュー・デリジェンスの不足

• ディール実行期間の過小評価

• シナジー/再編効果の過大評価

• 買収した経営陣の質の低さ

• ディール後の効果的でないモニタリング

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経済環境

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2 経済環境

2.1 ブラジル概観

主要情報

• 人口:推計1億9400万人

• 26の州と1つの連邦直轄区(ブラジリア)

• 2012年GDP:2.3兆USドル

• 通貨:レアル(2013年4月11日現在のレートは1USドルあたり約1.98レアル)

• 言語:ポルトガル語

国家と政治

• ブラジル連邦共和国

• 2010年10月に大統領選挙と国会議員選挙が行われました(4年に1回)。

• ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ前大統領の後継者としてジルマ・ヴァーナ・ルセフ大統領(労働者党)が民主的に選出されました

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経済の概況

事実情報

• ブラジルはラテン・アメリカ最大の経済大国で、世界第7位

• 2012年の国民1人当たりGDPは約1万2000USドル

• 主な経済部門は、農業、自動車産業、公益事業、運輸業、工業、鉱業、エネルギー産業

• 主な天然資源としてはボーキサイト、金、鉄鉱石、マンガン、ニッケル、リン酸塩、プラチナ、錫、ウラン、石油、水力、木材

• 主な農産物としてはコーヒー、大豆、小麦、米、トウモロコシ、サトウキビ、ココア、柑橘類

• 輸出品としては鉄、大豆、自動車、大豆油およびその派生品、航空機

• 輸入品としては石油、車両部品、微小電子部品、医薬品

• 主な港湾はTubarão(エスピリト・サント州)、Itaqui (マラニョン州), Santos

• (サンパウロ州)、Itaguaí(リオ・デ・ジャネイロ州)、São Sebastião(サンパウロ州)、Paranaguá(パラナ州)、Aratu(バイーア州)、Rio Grande(リオ・グランデ・ド・

• スール州)、Belém(パラー州)、Angra dos Reis(リオ・デ・ジャネイロ州)

人口

• 人口は南米最大で世界第5位

• 人口の約70%は南東と北東部に集中

• 平均寿命は約74歳

• 人口の約27%は14歳未満で、66歳以上はわずか6%

• 都市化率が高く、農村部居住者は人口の14%

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地理環境

• サンパウロは世界でも有数の急成長都市

• その他に人口100万人以上の大都市が20都市

• サンパウロ州とリオ・デ・ジャネイロ州の人口はそれぞれ4200万人および1600万人

• 主な経済発展地域はサンパウロ、リオ・デ・ジャネイロ、ミナス・ジェライス、パラナ、リオ・グランデ・ド・スル

• 南東部、南部、中西部の一人当たりGDPは北部、北東部を凌駕

地域 人口(百万人) 人口構成(%) 面積構成(%)

南東部 81.6 42.1 11.0

南部 27.7 14.3 7.0

中西部 14.4 7.4 22.0

北部 16.3 8.4 42.0

北東部 53.9 27.8 18.0

合計 193.9 100.0 100.0

(出所: ブラジル地理統計院(IBGE-Instituto Brasileiro de Geografia e Estatística))

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2.2 最近の経済動向

2012年のブラジルの経済ゲームを変える出来事は、「新経済マトリックス(New Economic Matrix」とよばれる連邦政府の経済プログラムの開始でした。新しい経済政策の基本は、2011年、ジルマ政権の発足時に紹介されましたが、その詳細は昨年明らかにされました。新しい経済マトリックスは、低金利、為替レートの切り下げ、更なる拡張的財務政策、及び、産業に対する特別なインセンティブに特徴付けることができます。

金融政策の観点からは、経済成長を押し上げ、現政権がより適切な金利として考える目標を達成するため、2011年8月に、中央銀行は、2012年10月に終了する金融調整プロセスを始めました。ベンチマークの利率は、このサイクルで、12.50%から7.25%まで下がりました。実質ベース(インフレーションネット後)で、2011年末の4.2%から2012年末の1.5%まで減少しています。

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金融当局は、インフレ率が目標に向かって収束するであろうと信じていましたが、現実的な結果に大きな差異が生じ、IPCA(消費者物価指数)によって測定されたインフレ率は、2011年で6.5%、2012年には5.8%に達しました。当国の市場におけるプレーヤーは、ブラジルの中央銀行がインフレよりも成長によりフォーカスしていることを理解しているようです。これはゴールが、もはやターゲット(4.5%)に向かうステアリングインフレではなく、上限(6.5%)を上回ることを防止することを意味します。言い換えれば、インフレが行き過ぎ上限を脅かす度に、我々はそれを含むように金融政策が機能するように観測する必要があります。

金利は低下しましたが、政府が産業活動やGDP向上のために、為替レートの切下げを目指したことにより、為替レートに大きな変化がありました。そのため、(a)外国からのローンや(b)信用輸出に対する税金(IOF)をあげるといった、レアル高を反転させるためのより多くの方法が採用されました。

さらに、中央銀行はドル買いを通じて、積極的に為替市場に介入しました。その結果、ブラジル経済へのUSドルの流入は、2011年の653億USドルから2012年の167億USドルに減少し、為替レートは2012年の第一四半期の1.70BRL/USDから年度末は2.04BRL/USDで終了しました。

2012年には、世界の最も重要な15の通貨の中で、ブラジルレアルはちょうど円(マイナス11.5%)の次に、2番目に大きく切り下げられた通貨(マイナス10.8%)でした。

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ブラジルに流入したドルの価値がより低くなったにも関わらず、国際収支面では順調な状況にあります。昨年、経常赤字は540億USドルで、それは、650億USドルに上る外国直接投資(FDI)フローによってのみ賄われていました。経常収支赤字のGDPに対する割合は、2.4%となっています。

最後に、2012年は財政政策の集中的な適用が行われました。政府は、経済活動-特に消費-を押し上げ、インフレをコントロールするために、いくつかの税金を軽減する議題を追及しました。 具体的には、自動車や家電製品の購入に対する税金を減らし、また、生産コストを減らすためにいくつかの給与に関する税金を売上に対する税金に変更しました。後者の対策は、元々経済のいくつかのセグメントに適用するように設計されていましたが、最終的には、昨年末にはいくつかのサービスセクターを含む、多くのセクターに適用されました。

加えて、BNDES(ブラジル開発銀行)、Caixa Econômica Federal、及びBanco do Brasilのような公的銀行は、消費や投資を押し上げる融資機能を強化するために資本化を行ってきました。低経済成長にあっては、財政面での結果は、歳入の主要な低下、それに伴う支出の増加の中で、初期的な黒字目標(GDPの3.1%)を満たすことから政府を保つことにありました。しかし、それにも関わらず、ブラジルのソルベンシーリスクがまだ低いことに注意することが必要となります。

概略と言えば、当面の間、新経済マトリックスは高いGDP成長 (約4パーセント)及び比較的抑制されたインフレ等、政府が期待していた結果を出していません。2012年のブラジルのGDP成長は、わずかに1%を下回り、インフレ率は6%近く上り低成長と高インフレの危険な組み合わせとなってしまったと言えます。

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留意すべき点は、ブラジルは能力の高い労働の 記録的に低い失業率である点に能力の高い労働をもとめていますが 政治的な観点から見ると、2012年は経済政策への政府の介入を強化した年でした。マクロ経済の三脚(インフレ目標、変動相場と財政責任)から「新経済政策」へのシフトに加え、金利スプレッドを減らすための民間銀行との論争と電気料金のカットが主な変更点でした。

政治的には、政府は議会で連邦問題に関する論争を引き起こした税の変更を承認することが困難でした。オイルのロイヤルティーに関する論争は、政府の租税政策の承認を妨げるという停滞を引き起こしました。その戦略の最初の変化は、一部のセクターのための給与に関する税金を減少させるものでした。経済、政治的な不安定性の組み合わせは、ジルマの初の任期の最後ということもあり、2013年は重要な年となります。

ブラジルは、国際的な経済危機に耐えて、より強く、より魅力的なプレイヤーとして、成長しました。高度に多角化された経済は、強固な国内消費市場と取引先の幅広い選択と相まって、また、よく規制された金融システムと組み合わさって、危機の最悪な影響を緩和するための成功の鍵となっています。長期にわたるブラジル国内経済の不安定性さは、克服されつつあります。政治的にも経済的にも、ブラジルはいまや成熟した国で、海外の投資にとって、世界で最も魅力的な市場の一つです。課題は、2012年の低成長率と予想外に高いインフレ率、また引き続き複雑な税務環境となることが挙げられます。

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2.3 2013年の見通し

2013年は、世界経済が残りの世紀において、おいてどのようにあるべきかを考え始めた年になるでしょう。世界の成長とコモディティの価格が、アメリカやヨーロッパではなく、(2013年の世界のGDPの成長の半分近くを占めるであろう)中国、インドやブラジルといった新興国の経済の発展により主に牽引されていると、まぎれもなく世界が認識する年になるでしょう。

ブラジルは、2012年のGDPランキングが世界7位の最も成長している経済の一つで、今後数年間で当ランキング上位に上昇することが期待されています。

2013年は、ブラジルの経済、特に、GDPの成長という点では、わずかに改善するシナリオとなることが期待されます。より低い利率、切り下げられた国内通貨、税制変更-特に、給与に関連したもの-及び、極端に好ましい期間の公共金融機関のクレジットラインの増加の結果、経済の拡大は3%ぐらいになるはずです。

このシナリオの下では、投資が主な変動要素となります。2012年に約3.6%の減少の後、投資はゲインの流れにあります。というのも、上述の要素や、近づくワールド・カップ、関連プロジェクトを完成させる必要性の結果です。加えて、政府は投資を増加させる努力を行っています。加えて、政府は消費をベースとした成長モデルの限界を考慮し、特に投資を増加させるための努力を行っています。政府は、道路、高速道路、鉄道、港湾や空港等の公共サービスにおいてプライベートセクターに対してコンセッションを提供したいと考えています。

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これらのコンセッションのいくつかは、年度の下半期にのみ行われるはずで、経済に対する正確なインパクトは、GDPの成長が超えるように、2014年に明確になることが予想されます。

一方、昨年以来、否定的な傾向にあるインフレは、主なリスク要因となっています。もし、経済が回復基調にあるとすれば、インフレプレッシャーは、より大きくなり、これによって中央銀行が金利を上昇させる等のアクションを取らざるを得なくなります。しかしながら、金融当局が利率をしばらくの間現状のレベルを維持すると指針されているので、このシナリオは起こりにくいと考えられます。インフレシナリオの悪化を回避するために、政府は税務ディスカウントを推進し続けます。

2013年のIPCA(インフレインデックスパラメーター)シナリオにおいて、政府は消費者と製造業者の双方に対してエネルギー価格を約30%引き下げました。加えて、政府は食品に関する新しい減税を公表することが期待されています。これらのイニシアチブにも関わらず、IPCAフォーキャストに対する平均的期待値は、5.7%です。

最後に、インフレシナリオが悪化するリスクがあるとすれば、政府はブラジルレアルの切り下げに関して、為替レート市場で、集中的に行動することは期待されていません。。実際、昨年後半から、政府は、いくつかの方法を中止し、通貨高を回避しました。更には、ブラジルの中央銀行は、通貨の切り下げ圧力軽減するためドルを売却しました。

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政治的な観点からは、その年の経済パフォーマンスは、為替と金利の間の新しいバランスの影響について、政府の楽観主義を有効にするための本質的なものとなるでしょう。低成長は、時間の問題であるという議論は、信じがたいものです。よって、今年は現状の経営診断の効率性を試す年になるでしょう。

マクロ経済の観点からは、2013年は、大きな驚きはないでしょう。傾向として、より緩和された金融政策や生産セクターに対するより大きなインセンティブを通じて、インフラ圧力を中和するために、政府は減税を継続することが予想されます。

2013年の基本シナリオは、給与に関する減税の拡大、商品とサービスに関する税金(ICMS)及び社会負担金(PIS/COFINS)の変更が挙げられます。インフレ圧力を最小化するために、主要食品の減税について承認される可能性が高いです。

肯定的な観点としては、増加した投資に対する政府の関心拡大でしょう。課題としては、インフラセクターのために企画された魅力的な投資アジェンダの紹介です。その合計金額は、1,100億USドル(道路450億USドル、港湾270億USドル、高速210億USドル、空港170億USドル)になります。

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政府はまた、民間企業に向けてそのレトリックを軟化させる必要があります。投資家に対するアプローチは、投資の落ち込みを反転させることに集中しています。しかしながら、このより穏やかなトーンでは、政府によって期待される投資の回復をもたらすのには十分ではないでしょう。サウンドコンセッションモデル、より強いGDP成長予測及びより友好的なビジネス環境は、民間投資家を誘致するための重要な要素です。

2013年は、大統領ジルマにとって、彼女の努力により、より大きな経済成長と、それ故の、再選することが、最重要課題となります。現在の政治的、経済的な課題は、非常に複雑です。しかしながら低失業率ということもあり、ジルマへの評価は非常に高いです。それにもかかわらず、ブラジルは依然としてより高い経済成長レベルへの道筋をみつけるために苦労しています。

我々の見解では、キーメッセージは、次のとおりです。適応、、「通常のビジネス」が、変化しているためです。新興経済は、世界の成長を牽引しています。実質ベース(長期的に、予測される先進国の年率実質傾向)で、市場が年間2%以上成長することを期待する先進国の経済をベースとしたビジネスは、伝統的な国内市場を越えて見ることが必要です。。2013年には、新興国市場の拡大はもはや投機的投資ではなく、ビジネス成長の中区として捉えられます。しかし、適切に管理されなければならない新しいリスクをもたらすでしょう。ブラジルは、この新しい環境の主要プレイヤーとなっています。2014年のFIFAワールドカップ

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2828

や、2016年のオリンピックの実現によって、国内のポテンシャルを活用し、インフラ不足の削減を促進するような魅力的な投資を促進する機会を提供します。戦略的投資家と、金融投資家が、この地域への投資を強く検討しています。-また、BNDESによって支援されています。

このような投資を誘引するためには、重要な組織的な努力が必要とされます。特に、、スポーツ産業に直接間接的に関連するものといった幅広いものの間における強いシナジーと融合が必要となります。現状、合計500億USドルが双方のイベントに関与するすべての都市のインフラに投資され、約350万人の雇用が国内で創出されると予想されています。

ワールド・カップやオリンピックは、世界イベントのため、ブラジルの利益は、明らかに巨大です。そのため、国際的なイメージを改善するためのブラジルにとって大きな機会と考えられています。各イベントの年には、ブラジルのGDPが、約1%増加すると期待されています。

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292929

10億

USド

ル2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012(1)

GDP(10億USドル) (2)

506.0

554.0

664.0

882.0

1,089

1,367

1,651

1,626

2,144

2,475

2,253

実質GDP成長率 (%年率)

2.7

1.1

5.7

3.2

4.0

5.7

5.1

(0.3)

7.5

2.7

0.9

失業率 (%対労働人口比)

10.5

12.4

11.5

9.9

10.0

7.5

6.8

6.8

5.3

4.7

4.6

一般物価指IGP-DI(%年率)

26.4

7.7

12.1

1.2

3.8

7.9

9.1

(1.4)

11.3

5.0

8.1

消費者物価指数IPCA(%年率)

12.5

9.3

7.6

5.7

3.1

4.5

5.9

4.31

5.91

6.5

5.8

年末為替レート(レアル/USドル)

3.63

3.08

2.93

2.44

2.18

1.78

2.39

1.74

1.67

1.88

2.04

為替レートの変動(%年率)

53.8

(19.3)

(7.1)

(15.8)

(5.9)

(16.9)

34.1

(25.3)

(3.4)

13.6

9.4

財政赤字(%対GDP比)

4.2

4.6

2.3

6.6

3.6

2.7

2.0

3.3

2.5

2.6

2.5

財政債務(%対GDP比)

50.5

53.5

48.2

48.0

45.9

43.9

38.8

42.1

39.1

36.4

35.1

輸出(10億USドル)

60.4

73.1

96.5

118.3

137.8

160.6

197.9

153.0

201.9

256.0

242.6

輸入(10億USドル)

47.2

48.3

62.8

73.6

91.4

120.6

173.0

127.7

181.9

226.2

223.1

貿易収支(10億USドル)

13.2

24.8

33.7

44.7

46.5

40.0

25.0

25.3

20.3

29.8

19.4

経常収支(10億USドル)

(7.6)

4.1

11.7

14.0

13.6

1.5

(28.3)

(24.3)

(47.3)

(52.5)

(54.3)

外貨準備高(10億USドル)

37.8

49.3

52.9

53.8

85.8

180.3

206.8

239.1

288.6

352.0

373.1

外資直接投資(10億USドル) (3)

14.1

10.1

18.1

15.1

18.8

34.6

45.0

25.9

48.5

66.6

65.3

総対外債務(10億USドル)

227.7

235.4

220.2

188.0

199.4

240.5

262.9

277.6

351.9

404.1

428.4*

(1)最新の公表データに基づく。

(2)年間平均の為替レート。IBGE。

(3)グループ会社間のローンを含む。*1月-6月

歴史的な経済指標の概要

近年の経済指標の動向

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3030

ブラジルの金利は歴史的に見て世界で最高位にランクしています。

12.0

%

10.0

%

8.0%

6.0%

4.0%

2.0%

0.0%

1.8%

1.6%

1.4%

1.2%

1.0%

0.8%

0.6%

0.4%

0.2%

0.0%

Mar-05Jun-05Sep-05Dec-05Mar-06Jun-06Sep-06Dec-06Mar-07Jun-07Sep-07Dec-07Mar-08Jun-08Sep-08Dec-08Mar-09Jun-09Sep-09Dec-09Mar-10Jun-10Sep-10Dec-10Mar-11Jun-11Sep-11Dec-11Mar-12Jun-12Sep-12Dec-12

特別清算カストディー

長期金利

金利の変遷

出所:官報

月率

年率

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313131

ブラジルのGDPは

大規模かつ発展した農業の発展、鉱業、製造業、サービス業が牽引して

おり、ラテン・アメリカ第1位です。

3,00

0

2,50

0

2,00

0

1,50

0

1,00

0

500 -

506

554

664

882

1,08

9

1,36

71,

651

1,62

6

2,14

4

2,47

5

2,25

3

2002

出所:ブラジル地理統計院

GDPの

変遷

GDP 単位:10億USドル

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

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3232

過去2年

間の金利上昇圧力にかかわらず、この10年間、ブラジルはインフレーシ

ョンの抑制に成功しています。

14.0

0

12.0

0

10.0

0

8.00

6.00

4.00

2.00

-

12.5

3

9.30

7.60

5.69

3.14

4.46

5.90

4.31

5.91

6.50

5.84

2002

出所:大統領-戦略担当事務局

ブラジルのインフレ指数(IPCA)の変遷

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

2003

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333333

経済の好調なことと国際的な好条件とがブラジルに資本流入をもたらし、現地

通貨(レアル)に大きな影響を与えました。

2.50

2.00

1.50

Dec-08

Feb-09

Apr-09

Jun-09

Aug-09

Oct-09

Dec-09

Feb-10

Apr-10

Jun-10

Aug-10

Oct-10

Dec-10

Feb-11

Apr-11

Jun-11

Aug-11

Oct-11

Dec-11

Feb-12

Apr-12

Jun-12

Aug-12

Oct-12

Dec-12

為替レート

出所

:商

業官

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3434

ここ数年、カントリーリスクの懸念が大きく減少しています。

Dec-05

Jun-06

Dec-06

Jun-07

Dec-07

Jun-08

Dec-08

Jun-09

Dec-09

Jun-10

Dec-10

Jun-11

Dec-11

Jun-12

Dec-12

600

500

400

300

200

100 -

EMBI+BR

カン

トリ

ーリ

スク

(ブ

ラジ

ル)

出所

:Bloomberg

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353535

2012年において、総輸出はわずかに減少(前年から5%減少)したにもかかわらず、国際的なコモディティ価格の減少のもあり、2,430億ドルとなり、2010年に比較すると20%増加しました。2009年以来、中国はブラジルにとって最も重要な輸出先となっており、アメリカを凌駕しています。

主要輸出国-国別

輸出国 (百万USドル)

2007 2008 2009 2010 2011 2012

中国 10,749 16,403 20,191 30,786 44,315 41,228

アメリカ 25,314 27,648 15,740 19,462 25,805 26,701

アルゼンチン 14,417 17,606 12,785 18,523 22,709 17,998

オランダ 8,841 10,483 8,150 10,228 13,640 15,041

ドイツ 7,211 8,851 6,175 8,138 9,039 7,227

日本 4,321 6,115 4,270 7,141 9,473 7,956

イギリス - - 3,727 4,635 5,230 4,519

ロシア 3,741 4,653 2,869 4,152 4,216 3,141

イタリア 4,464 4,765 3,016 4,235 5,441 4,581

チリ 4,264 4,792 - 4,258 5,418 4,602

その他 77,327 96,626 76,072 90,357 110,754 109,582

合計 160,649 197,942 152,995 201,915 256,040 242,580

出所:外国貿易の事務局(Secretaria do Comércio Exterior) (ブラジルの貿易収支合算レポート)

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3636

アメリカと中国は、歴史的にブラジルの輸入の主な供給者です。2012年の総輸入額は、2,230億USドルに達し、2011年を約1%下回っています。

主要輸入国-国別

輸入国 (百万USドル)

2007 2008 2009 2010 2011 2012

アメリカ 18,887 25,810 20,183 27,249 33,962 32,357

中国 12,618 20,040 15,911 25,593 32,788 34,248

アルゼンチン 10,410 13,258 11,281 14,426 16,906 16,444

ドイツ 8,675 12,025 9,866 12,552 15,213 14,209

韓国 3,391 5,412 4,818 8,422 10,097 9,098

日本 4,610 6,807 5,368 6,982 7,872 7,735

ナイジェリア 5,273 6,706 4,760 5,920 8,386 8,012

フランス 3,525 4,678 3,615 4,800 5,462 5,910

イタリア 3,347 4,612 3,664 4,838 6,222 6,199

インド - - 2,191 4,242 6,081 5,043

その他 49,885 73,849 45,990 66,625 99,512 83,894

合計 120,621 173,197 127,647 181,649 226,243 223,149

出所:外国貿易の事務局(Secretaria do Comércio Exterior) (ブラジルの貿易収支合算レポート)

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373737

ブラジルは様々な産品を輸出していますが、海外売上高においては一次産品をベースとする品目が重要な役割を担ってきました。

ブラジル輸出-上位産品-降順(2012年1月-12月)

輸出産品(百万USドル) FOB価格(USD) 割合%

総合計 242,579,775,763 100.00

記載項目の合計 157,288,162,600 64.86

鉄鉱石及び鉄鋼選鉱品 30,989,292,517 12.77

未精製オイル 20,305,876,591 8.37

大豆、大豆粉砕品含む 17,455,200,216 7.20

全サトウキビ 10,030,103,067 4.13

冷凍、生、冷蔵食用鶏肉(食用臓含む) 6,732,381,151 2.78

大豆油かすの粉及び残留物 6,595,457,488 2.72

コーヒー豆 5,721,720,964 2.36

とうもろこし 5,287,267,448 2.18

燃料オイル(ディーゼルオイルなど) 5,039,034,073 2.08

航空機 4,746,598,532 1.96

木製化学のり 4,700,438,179 1.94

冷凍、生、冷蔵牛肉 4,494,880,017 1.85

半仕上げ鉄鋼製品 3,841,699,402 1.58

自動車及びトラクター用部品及びスペアパーツ 3,777,556,020 1.56

旅客用車両 3,724,764,941 1.54

タバコの葉及び余剰 3,197,303,248 1.32

精製砂糖 2,814,469,786 1.16

合金鉄 2,787,913,165 1.15

金融目的ではない半加工金製品 2,341,157,579 0.97

エタノール 2,186,191,155 0.90

掘削機械及びドリル機械及び部品等 2,181,322,688 0.90

綿 2,104,430,857 0.87

貨物車 2,082,220,453 0.86

エチレン、ポリピレン、スチレンポリマー 2,079,428,957 0.86

皮革製品 2,071,454,104 0.85

その他 85,291,613,163 35.14

出所:ブラジル開発・産業・貿易省 貿易局(Ministério do Desenvolvimento,indústria e

Comércio Exterior do Brasil,Secretaria de Comércio Exterior)http:www.desenvolvimento.gov.

br/arquivos/dwnl_1358532852.doc

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3838

輸出産品(百万USドル) FOB価格(USD) 割合%

総合計 223,149,130,318 100.00

記載項目の合計 99,918,518,190 44.81

未精製オイル 13,405,739,345 6.01

旅客用車両 9,566,747,498 4.29

自動車及びトラクター用部品及びスペアパーツ 6,771,471,931 3.03

燃料油(ディーゼルオイル等) 6,711,698,984 3.01

人用の薬及び家畜用薬 6,113,616,532 2.74

統合回線、電気マイクロアセンブリ 4,248,640,651 1.90

ナフサ 4,192,993,317 1.88

トランスミッション、リシービングデバイスコンポーネント 3,630,109,255 1.63

塩化カリウム 3,512,818,128 1.57

天然ガス 3,336,130,497 1.50

複素環式混合物、関連塩類及びスルホンアミド 3,079,989,375 1.38

ガソリン 3,008,376,949 1.35

石炭、石炭粉末含む(ただし、塊ではないもの) 3,006,339,110 1.35

貨物車 2,993,192,079 1.34

計測用機器 2,870,872,226 1.29

電気エンジン、発電機、変圧器、及び、関連パーツ 2,868,901,807 1.29

自動データ処理機用のパーツ、部品 2,608,524,943 1.17

ベアリング、ギア、関連パーツ、及び部品 2,407,894,487 1.08

自動データ処理機や関連部品 2,406,114,206 1.08

殺虫剤、フォーミサイド、除草剤、及び関連製品 2,245,806,264 1.01

ポンプ、コンプレッサー、送風機等及び関連部品 2,240,313,150 1.00

航空エンジン、タービン、及び関連部品 2,200,521,823 0.99

掘削機械、ドリル等用の機械及び部品 2,200,001,618 0.99

平面ロール鉄鋼製品 2,154,009,791 0.97

窒素、リン、カリウム含合肥料 2,137,694,224 0.96

その他 123,230,612,128 55.19

出所:ブラジル開発・産業・貿易省 貿易局(Ministério do Desenvolvimento,

Indústria e Comércio Exterior do Brasil, Secretaria de Comércio Exterior)

http:www.desenvolvimento.gov.br/arquivos/dwnl_1358533197.doc

ブラジル輸入-上位産品-降順(2012年1月-12月)

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393939

ブラジルは年々、国際貿易における関与度を高めてきました。

1997

1998

1999

2000

2001

2002

2003

2004

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

300

260

220

180

140

100 60 20

(20)

輸出

出所:ブラジル中央銀行

R$ in 000´s

ブラ

ジルの貿易収支の変遷:1997年から2012年まで

輸入

貿易収支

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4040

欧州とアメリカは、過去5年

間にわたり対ブラジルにおける主要なFDIの

投資国でした。製造業

とサービスセクターが主なドライバーで、農業セクターがそれに続きます。ブラジル投資の牽

引国

は、オランダ、アメリカ、スペイン、ドイツ、フランス及び日本でした。外資による直接

投資は近年顕著に増加

しており、2011年は過去最高となり、670億

USドルに達しています。

70,0

00

60,0

00

50,0

00

40,0

00

30,0

00

20,0

00

10,0

00

-

21,5

2222

,231

31,9

48

42,8

50

30,4

44

48,5

00

66,6

6065

,272

出所:ブラジル中央銀行

海外

からの直接投資

2005

2006

2007

2008

2009

2010

2011

2012

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3

M&Aおよびプライベートエクイティの活動

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3 M&Aおよび企業投資活動

3.1 2012年のM&A活動

ブラジルは、過去3年間にわたり、M&Aの水準を維持してきました。2010年には過去最高の800件近いディールが公表され、2011年、2012年も、 それぞれ750件、770件の M & Aディールが公表されています。ブラジルのM&A 市場における活動水準の実績は、2008年に始まった世界的な景気後退からの反動というだけでなく当国の根本的な経済の強固さを証明するものです。2012年のグローバル市場におけるM&Aの心証は、楽観主義と悲観主義の間を行ったりきたりする一方、ブラジルでは、持続的な活動になりそう

な肯定的な勢いがあります。戦略的投資家及び金融投資家 (プライベートエクイティ)は、堅調なマクロ経済環境や多くの統合機会の追い風を受け、記録的なデイール件数に達しています。低い失業率、与信力の付与や40百万人のあらたな中間層の消費者の台頭に後押しされ、、M&Aのキードライバーとなる自信を きています。ミドルマーケットのM&A動向は依然として強く-1億USドルまでのトランザクションは、公表ディールの69パーセントを占めます-2013年のM&Aを牽引していくものと期待されています。

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マイナー投資が公表された全てのディールの32パーセントである一方、マジョリティ取得のディールは約55%になっています。戦略的投資家及び金融投資家は、急成長するブラジル経済に積極的に参入しています。年次、あるいは、月次のディールを分析すると、ブラジルのM&A活動が高い水準にあることを示しています。月次のディールの平均件数は、2008年、2009年の54件から、2012年の64件まで上昇しています。月次ベースでは、CADE(独占禁止当局)による新しい制度が承認(2012年5月29日に施行)されたことに伴い2012年5月29日に施行 -月間公表ディールは88件に達し、M&A活動の活動として最多のディール件数を記録しました。

2012年は、多くのセクターや多くの地域で、ディールが行われました。ディール件数で、牽引したセクターは、IT、小売、コンシューマープロダクト(食品、農業関連及び飲料、ヘルスケア、クリーニング製品)、鉱業、サービス業(ヘルスケア、教育及び一般的なサービス)及び化学/石油及びガスが挙げられます。その次に顕著なセクターは、金融サービス、流通及びインフラ/建設です。最大のセクターは、総ディール量の約10%を占め、他のセクターもそれに近接してつづいています。

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2012年には、複数のセクターと地域にわたり、強く持続的な成長が見られましたが、特に、IT、小売、コンシューマープロダクト(食品、農業関連及び飲料、クリーニング製品含む)、鉱業、サービス業(ヘルスケア、教育及び一般サービス)及び化学/オイル及びガスで顕著です。

これに続き、金融サービス、物流、インフラ/建設が続きます。最もM&Aの活動が活発なセクター(IT)は、当国における総ディール額の約10%となっています。

1998

出所:PwCコーポレートファイナンス

M&A取引数

1,000800600400200

-1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

486 500624 572

395 337 416 389

573

721644 643

797 752 770

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ブラジルのM&A市場に関するその他の情報

バイヤー

• 現地企業および多国籍企業

• プライベート・エクイティおよび企業買収ファンド

• 公的、民間年金基金

• 不良化した債務の交換

ターゲット

• 未公開会社

• 家族経営

• 民営化

• 買収した非中核事業のカーブアウト

• 多国籍企業における非中核事業または不良部門

1998

出所:PwCコーポレートファイナンス

価額が1億USドル超のディール件数

140120100

80604020

-1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

70

4053 45

25 22 38 3463

84 69 6995

127 11196

1997

46

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M&A活動における国内外資本の参加

ブラジルの投資家は、2012年において397件のディールに関与し、これは全ての買収(支配権取得及びマイノリティ取得)の59%に達しています。2011年(403件のディール)と比較すると、その割合は、わずかに減少しています。

海外投資家は279件(海外の投資家としては記録的水準)で、総ディール件数の41%に達しました。海外投資家によるトランザクション量の顕著な増加から分かるように、海外投資家がブラジルのM&A市場に注目し続けています。金融危機の兆候は、時間とともに少なくなっています。2008年と比べても、海外投資家によるディールボリュームは、90%増加しています。

800700600500400300200100

-239 279269185147182169117

155232

395 390 332405 403 397

出所:PwCコーポレートファイナンス

国外

国内外資本別の買収件数

2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

国内

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新規株式公開(IPO)活動

2012年には38社のブラジル企業が上場しました(追加公募を含みます)。対する2011年は37社でした。年間のIPO活動が最多を記録したのは2007年で、79社が556億レアル(333億USドル)を調達しました。

79

2007

18

2008

25

2009

37

2010

37

2011

38

2012

100

80

60

40

20

-

出所:BMF/Bovespa

年別IPO件数

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3.2 プライベート・エクイティ

ブラジルのプライベート・エクイティは引き続き活発

2008年10月以来、プライベート・エクイティによる世界中のM&A活動が深刻な影響を被る中で、ブラジルのM&A環境は異なっていました。ブラジルにおいて、プライベート・エクイティ活動は高い水準を維持し、2012年の公表ディールの38%となっています。この割合は、2007年が15%、2008年が20%であったことを考慮すると、積極的なプライベートエクイティの投資戦略と様々なセクターにおける統合を反映しているといえます。

ブラジルにおけるプライベート・エクイティ活動の大部分は、約150億USドルに上る投資資金に支えられて、「成長のための資本」ディールの統合ビジネスに関っています。2012年の最大の投資は、食品飲料セグメントで、小売業、コンシューマー商品、IT、教育、金融、エネルギーの各産業が続きます。また、ディール額も、これまで市場の主流であった小中規模取引から、より大規模なものに変りつつあります。

ブラジルのプライベート・エクイティ市場は、中国やインドに替わる新興市場というだけではなく、先進国経済の緩慢な回復の中でこれに替わる魅力的な新しい選択肢として、その地位を確固たるものとする一連の要因により、活力を増してきました。洗練され流動性のある資本市場、新しい金融商品や既存のエクジット手法の存在(たとえば、戦略的プレイヤー資本市場への売却、IPO、あるいは、他のプライベート・エクイティやファンドへの売却)、さらには政治・経済的安定が継続していること等が一連の要因で、海外プライベート・エクイティ投資家の目をブラジルに惹き付け、今やブラジルは世界市場における重要なプレーヤーとみなされています。2013年には広範囲にわたるM&A活動や新しいプライベート・エクイティの参入だけでなく、新しい記録を更新し、更により積極的な資本市場、債券市場となることが期待されます。

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ブラジルのM&Aは複合産業型

国内の多様な資源や将来性の拡大に裏打ちされて、M&A活動は複数の産業に広がっています。

投資先の主なセクターは、IT、小売、食品及び消費財、ヘルスケア、教育、一般ビジネスサービス、エネルギー及び金融で、これらのすべてのセクターにおいて、再編がキードライバーになっています。インフラ及び石油&ガス産業もまた、活動が活発化する可能性が見込まれます。

ブラジル企業は、今後も継続的に変革の時期に直通するでしょう。より精錬されたコーポレートガバナンスと会計慣行(2010年12月から、大きな会社には、IFRSが義務づけられています)を適切に実施し、多くの企業が、現地企業を地域化し、次いで全国化、最終的には国際化した運営に対応させていく際に様々な困難に直面しています。

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参入済みの投資会社

ブラジルに投資しているプライベート・エクイティおよびベンチャー・キャピタルの数は約140社を数え、その投資ビークルは230余りにのぼります。ブラジルのM&A市場に占めるプライベート・エクイティ投資家の割合は過去4年間で3倍余りに増えています。2012年のプライベート・エクイティのハイライトを以下に挙げます。

• Tarpon Investimentosが、Cremer SAの普通株式を7.23%購入。ディールバリューは、非公表。

• プライベート・エクイティAxxon Groupが、BRMarians及びMarina Verolmeの50%取得を公表。

• Carlyleが、重機部品の製造業者Orguelの株式の24%を、200百万$で取得。

• Actis Capitalが、言語教育ネットワークCANに、1,35億BRレアルの投資を実施。

• Patria Investimentosが、mdtのマジョリティを取得、金額は非公表。

• Kineaが、Grupo Delfinにマイノリティ出資。

• GP Investmentsが、2000の通信タワーを購入。

• Black Rockが、エンジニア会社のMRVの株式取得。

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近い将来のブラジルM&A市場の見通し

この先もブラジルのM&Aと投資環境は成熟してゆき、新たな段階へ至るものと思われます。戦略的投資家及び金融投資家ともに、継続的な関心を持ち続けていることを考えると、投資活動が行われる主要業種は、今後も食品、消費財、ヘルスケア、教育およびアウトソーシング、不動産、エネルギー、金融で、これら全ての業種での統合が重要な牽引役になり続けるでしょう。ブラジルの構造的欠陥から今後もインフラ投資が必要ですし、石油・ガスも投資活動が伸びると思われます。

ブラジルの企業は変革期に差し掛かっています。コーポレート・ ガバナンスと会計プロセスの改善を行っているところで(大企業には既に2010年12月から国際財務報告基準の適用が求められ、中規模企業にはより簡素化した基準が選択的に適用されます)、多くの企業が現地企業を地域化し、次いで全国化、最終的には国際化を目指しています。2013年のエクイティ及びデットのデットマーケットの活動は、低迷するように思われますが、中期的な予測では、より活発になるでしょう。ブラジルは、成長のために投資主導アプローチに方向転換しつつあり、確実にM&Aかつどうから恩恵を受けることになるでしょう。

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文化

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4 文化

このセクションでは、ブラジル文化の概要について投資の観点からご説明します。

言語

ブラジルの公用語はポルトガル語です。極端な方言とか、公用語と異なる言語は特にありませんが、語彙や表現にポルトガルで使われているものとは異なるものがあります。ビジネス界で最も通用する外国語は英語です。

宗教

主な宗教は、ローマ・カトリック教会です。ブラジルには様々な信条の人々が移民しているため、その他の多くの宗教も信仰されています。憲法が信教の自由を保障しています。

教育

政府は、小学校から大学まで無償の国立教育機関を設置しており、私立教育機関には助成金を交付しています。全日制ないし定時制があります。 政府はまた、工業および商業分野の各業種向けの国家職業訓練プログラムや、成人の識字率向上のための教育プログラムを助成しています。成人人口の識字率は約90%(2008年現在)とみ られています。一般的な教育水準は大幅な改善を必要としています。高等教育への進学率は約9.5%です。

教育レベルは、過去10年間にわたり改善が見られます。

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生活水準

人口の大部分の生活水準は非常に低いのですが、最上流層では極めて高い水準にあります。貧困層と富裕層との所得格差が、歴代政権の最大の関心事となってきました。基本的社会指標を

見れば、発展に地域格差があることが分かります。

2012年の1人あたりGDPは約1万2,000USドルです。

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ブラジルの文化的・社会的生活

ポルトガル、イタリア、ドイツ、日本、東欧、中東、アフリカと世界各地からの移民が混じり、ブラジルでは地域ごとに文化社会活動に多様性が見られます。ほとんどの大都市では文化団体を支援しています。

温暖な気候のために、余暇活動は主に屋外で行われます。多くの社交クラブが立派なスポーツ施設・社交施設を用意しています。

海外投資に対する現地経済界の態度

海外投資に対する現地ビジネスマンの考え方は概して好意的です。業種によっては、自分たちの活動を保護するためにロビー活動を展開し、貿易障壁の設置や外国投資の規制などを求めて圧力をかけてくることもあります。そういった政治的圧力は一昔前ならば極めて効果的でしたが、90年代初頭以降、ビジネス環境の一層の効率化と競争力強化のために、政府はこういった状況の段階的な改善を進めてきました。

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外国投資に対する労働者の態度

外国投資とその経営者が労働者に雇用をもたらし、ブラジル企業と対等に競争しているとみなされれば、労働者の態度は一般に好意的です。

デュー・デリジェンスの文化的な見方

潜在的な投資家が詳細な分析とデュー・デリジェンスを必要とすることについては、ブラジル企業のセラー(売り手)側にも認識されてきています。しかし、現地のビジネスマンやターゲット企業スタッフがデュー・デリジェンスの目的を理解するとは限らず、時として企業の財務・税務・法務的状況の分析、あるいはある種の監査業務と捉えられることがあります。

ブラジルの中小企業では会計報告制度が統一されておらず、高度な財務や会計部門も有していないため、デュー・デリジェンス情報の準備と業務実施は、一般的に先進諸国よりも難しく時間を費やします。

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会計原則および監査要求

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5 会計原則および監査要求

監査要求及び監査実務

投資家の留意事項

• 公開/上場の株式会社には年度財務諸表の発行が義務付けられています。

• 全ての上場会社および大企業(総資産が2億4千万レアル超または年度収入3億レアル超)の年度財務諸表は、ブラジル証券取引委員会(CVM)公認の独立監査人による監査を受ける必要があります。

• 金融機関および中央銀行管轄下にある他の企業並びに保険会社には、監査済の年度財務諸表および中間財務諸表の発行が義務付けられています。

• 上場企業および金融機関は四半期財務情報を適切な監督機関(ブラジル証券取引委員会または中央銀行)に提出し、独立監査人のレビューを受ける必要があります。

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法律上の要求

電子帳簿および記録

2007年1月に連邦政府法6022により、公的デジタル記帳システム(Public Digital Bookkeeping System)であるSPEDが構築されました。SPEDは記録文書および帳簿の受領、検証、保存、承認などの活動を一元管理するツールで、納税者の商業・財務簿記をコンピュータ化された情報フローとデジタル認証により統合するものです。

SPEDは、デジタル税務帳簿(EFD)、デジタル会計帳簿(ECD)および電子インボイス(NF-e)という3つの異なる分野に対する連邦政府の財務管理の統合の取組みです。

会計SPEDつまりECDは、紙ベースの会計帳簿をソフトコピー形式に移行することを目的としています。普通仕訳帳、総勘定元帳、補助元帳および試算表、貸借対照表が電子文書の一部として出力されます。当該プロジェクトには、連邦・州・地方税務当局および国家商業登録局、中央銀行、SUSEPおよびブラジル証券取引委員会(CVM)に対する情報の提出が包含されています。会計帳簿は現行の期日までに提出する必要があります。

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税務SPEDつまりEFDは、税務計算と会社により発行、または、受け取った請求書に関する詳細情報を提供することを目的として、連邦と州の両税務当局への包括的な税務情報の準備と配信を包含するものです。

全体的なSPEDのイニシアチブは、PISとCOFINS情報、電子サービスの請求書、電子輸送サービスの請求書及び電子課税所得制御登録(E-LALUR)を含む追加的な情報を、他の関連税務情報に含めることで、ますます洗練されています。

監査済み財務諸表

以下の事業体の年度財務諸表は規定に従い、CVM、中央銀行および他の政府機関公認の独立監査人による監査を受ける必要があります。

• 上場会社

• 大会社(上記の定義による)

• 金融機関および中央銀行管轄の他の事業体

• 投資ファンド

• 証券取引所

• 保険会社

• 民間年金基金

金融機関および保険会社は、中間財務諸表に対する監査を求められます。またCVM監督下にある上場企業の四半期財務報告も、独立監査人のレビューを受ける必要があります。

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独立監査人を擁していない非上場会社の監査委員会は、その責任遂行に必要と考えられる場合には会社費用により独立監査人を選任することが出来ます。

法令や規則によって要求されていなくても、銀行や他の金融業者は借り手に対し、監査済財務諸表の提示を頻繁に要求します。

税務当局は監査済財務諸表を要求しません。

内部監査人は法定監査人を兼任することは出来ません。

監査基準

ブラジルの監査基準は2010年に、国際会計士連盟(IFAC)が、国際監査会計基準審議会(IAASB)を通じて公布した、国際監査基準にコンバージェンスを行っています。監査要求および監査業務の評価及び理解にあたり、ここで述べる情報は包括的な情報源とはなりませんので、監査についての決定を行う際には御社の会計コンサルタントからのサポートをお求めになりますようお勧めいたします。

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会計原則および会計処理

投資家の留意事項

• 法令11638(2007年)により、1976年ブラジル会社法、ならびにブラジル証券市場およびCVMに関連する法律が修正されました。会計専門家、基準制定機関および規制制定機関により国際会計基準(IFRS)へのコンバージェンスの取り組みを開始してはいましたが、これをさらに推し進めるための機動性、柔軟性のためにはブラジル会社法の修正が必要でした。

• いくつかの新しいブラジル会計関連公告も2010年に公布され、連結財務諸表には、IFRSへの完全なコンバージェンスが達成されています。個々の財務諸表は、ブラジルで採用されている会計方針に準拠しています。ブラジルの会計方針では、個別財務諸表についてIFRSと異なり、子会社や関連会社や共同支配の企業体の投資の測定に関連して持分法が適用されますが、IFRSでは取得原価あるいは公正価値に基づいて測定されます。新しいあるいは改正の基準・解釈指針は、早期適用は一般的にはブラジルでは認められません。

• 金融機関は、ブラジル中央銀行の規則に基づいて財務諸表を作成しなければなりません。金融機関が上場している場合や監査委員会を設置する義務がある場合は、国際会計基準審議会により発行されたIFRSに完全に準拠した連結財務諸表を作成する必要があります。

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• ブラジルの全ての中小規模の企業は、ブラジルの中小規模の企業向けに採用される会計基準が適用されます。この基準は、IFRSの中小規模企業向けの基準に準拠しています。代替的に、ブラジルで採用されているIFRSにコンバージェンス済みの会計基準を適用するにも可能です。

• 特定の産業について、ここで述べた移行に関して、取扱いの相違や特別な留意事項があるかもしれませんので、今後、投資を検討されている方は、デューデリジェンス調査の際に会計処理上の潜在的差異について会計コンサルタントのサポートをお求めになることをお勧めいたします。

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税務事項

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6 税務事項

ブラジルの税制環境

ブラジルの税制は高度に統制されており、非常に複雑です。事業や資産の取得に際しても承継者債務(succession liability)があり、それを回避、解消できるようなトランザクションの組成は不可能ではないにしても非常に困難です。

この分野には、他にも数多くの税務リスク要因が存在しています。例えば、法律の性質や、連邦政府・州・市(基礎自治体)当局による頻繁な税務調査(会社は、法定期間の間に1回以上の関連当局により調査される可能性があります)、税法違反時の高額な罰金や利子の徴収、予測困難な(時には気まぐれともいえる)執行プロセスなどです。

さらには、ブラジルの税金および社会負担金のほとんどの時効が5年間(法定の訴求期間が、開始日の影響で、一定の条件の下では、6年間に達することもあります。)であるということにも注意が必要です。

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法定の時効期間においては、調査済みの税金や事業年度に対してであっても、連邦・州・市税務当局の調査が会社に入る可能性があります。言い換えれば、ある税金や事業年度について申告し、調査を受けたとしても、時効が消滅するまでは今後も税務当局の調査がありえるということです。

ブラジルの承継者債務についていえば、これは「事業資産の保有者または事業単位の取得者は、収益を生む能力を有するがゆえに納税義務又は労働債務を負う」という概念に基づいており、法人には当期および過年度の納税義務又は労働債務を(既知、未知を問わず)負う責任が生じます。結果として、持分取得によるディールであろうが、なかろうが、取得者は旧所有者の納税義務や労働債務や偶発債務を全て継承することになります。

株式取得ではなく、資産取得によるディールに関しては、資産を売却、移転した会社が、事業を継続している場合(あるいは、事業を停止し、ディール後6ヶ月以内に再開する場合)、過年度の税務債務は、売り手側に残ります。もし、買い手側がその税務債務を支払うだけの財務能力がない場合(また、この状況がディールの結果生じている場合)にのみ、買い手側はディールの前に生じた税務偶発債務について支払う責任があると考えられます。もし、売り手がディールの後、事業を停止したならば、買い手は売り手側の会社の全ての過年度の税務偶発債務について初期的に支払い義務を負います。

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また、資産取得によるディールの場合、売ることが想定されている資産が、売り手の事業部門のひとつ、もしくは、それ以上を構成する場合、資産の取得前に生成された税務の偶発債務、特にICMS(州の付加価値税)や潜在的にIPI (連邦工業品税)関して、税務当局により挑戦または査定されるリスクがあります。加えて、売り手側の事業上の資産のほとんどが譲渡されたり、あるいは、買い手に売却されたりする場合(たとえば、本来株式譲渡であるが、債務承継リスクを避けるために、資産譲渡取引を装っている場合等)は、税務当局が他の主要なブラジルの税金に関する過年度の偶発債務について挑戦してくるリスクがあります。

罰金

また罰金についてですが、未納税金には20%から225%の罰金が科される可能性があります。連邦税に関しては、税務調査の開始前に納税者が自発的に未納税金を支払った場合、罰金は未納税金額の20%となり、ある状況において、特定の要求条項を満たした場合、自発的査定に対するペナルティが0%になる可能性もあります。納税者が税務当局による査定を受けた場合だと罰金は未納税金額の75%となり、さらに不正が関係していた場合には225%となります。しかし納税者が税務当局による査定に異議を申し立てず、査定税務未納額を支払うことにした場合、いずれの罰金(75%と150%)もそれぞれ37.5%、75%に減額される可能性があります。不正が関係している場合で、納税者が税務当局に要求された情報を提出しない場合、罰金は225%となります。

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海外投資家に対する税務上の取り扱い

原則として、投資および税制上の優遇措置に関しては、国内投資家も海外投資家も同様の扱いを受けます。海外投資家を誘致するための連邦税制上の優遇措置はなく、キャピタルゲイン課税やブラジルの株式市場やプライベートエクイティー投資のファンド(「FIP」)などにいくらかの例外があるのみです。

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持分取得

ブラジル投資の手段として外国企業に最も一般的なのが、持分取得によるブラジルのターゲット企業の買収です。

買収の買い手には、税務上および労務上の影響があります。法的な観点から言うと、事業単位は買収後も引き続き納税者番号を含めた全ての登記番号、籍を維持することになります。その結果として、買収側は既知または未知の税務上や労務上の偶発債務を、旧所有者から全て引き継ぐことになります。これに加えて、買収取引の前あるいは後のターゲット企業の活動に対して、税務当局が課した罰金および処罰にも買収側は最初に責任を負います。ブラジルのターゲット企業の株式を取得する場合には、主要な税務・労務上の偶発債務をよく見極めて評価分析を行い、買収側の全体的投資判断においてそれらの債務のコストを考慮し、十分に注意を払う必要があります。しかしながら、この状況は、売買契約書(SPA)において、税務補償や表明保証条項を入れることで、売り手による適切なカウンター保証を盛り込むことにより、当事者間によるコントロールが可能です。

税務・労務の承継リスクと税務・労務の検出事項に対する法定の訴求期限のため、ブラジルでのトランザクションは、特に株式取引については、たいてい買い手側が、より強固なプロテクション(十分な保証やエスクローアカウントを通じた購入価格の部分的保留)を要求します。

一定の条件を満たせば、海外投資家がブラジル企業の株式買収で支払われた税務上ののれんを5年繰り延べて課税控除できるため、買収ストラクチャーの恩恵を享受することが出来るかもしれません。ブラジル税制の税務上ののれんは、買収価格から買収持分の正味株式価値を差引いた部分です。

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ブラジルにおける投資手段の種類

プライベートディールに加え、海外投資家がブラジル企業に投資する際によく行うものとして (i) ブラジル証券取引市場での株式の直接取得、(ii) FIP(株式投資ファンド)への投資、という主な二つの選択肢があります。これらの場合、一定の条件が満たされれば、ブラジル企業に対する投資により生じるキャピタルゲインは現地の税法および会社法に基づき、現地の課税対象とはなりません。

簡単に言えば、海外投資家がブラジル税務当局により租税回避地(タックスヘイブン)とみなされる地域に所在しておらず、投資がブラジル通貨審議会の規定に従って行なわれる(つまり投資家はブラジル中央銀行発行の議決第2,689号に定める条件を具備している)場合、ブラジル証券取引所(Bovespa)における上場会社株式の売却から生じるキャピタルゲインに課される税率は0%になります。

株式投資ファンド(FIP)による外国からの投資についてですが、以下のような条件が満たされていれば非居住者投資家には0%課税が認められる可能性があります。 (i) FIPのポートフォリオの90%以上がブラジル企業の発行した株式、転換社債またはワラントで占めらていれる。 (ii) 債務証券がFIPポートフォリオ全体の5%を超えない。 (iii) FIP割当額保有者(個人あるいは関連当事者との合算)は、ブラジルFIP発行の割当額総額の40%以上を保有してはならない。 (iv) FIP割当額保有者(個人あるいは関連当事者との合算)はFIPから発生する所得の40%以上の利益を得てはならない。 (v) 外国人のFIP割当額直接保有者はタックスヘイブンに居住してはならない。

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CFCルール

ブラジルの居住者企業は、その全世界所得に対して課税されます。海外支店の利益は発生時に課税され、海外子会社の利益はブラジルの親会社に利益が配分されるか、親会社にとって利用可能になった時点で課税されます。利益は被支配外国法人(CFC)の事業年度末の財務諸表の決算時点で、ブラジル親会社にとって利用可能になったとみなされます。

CFCの利益は34%の合算税率でブラジル法人所得税の課税対象となります。外国税額控除により、二重課税は回避されます。

多国籍企業の本部や執行部をブラジルへ誘致したり、ブラジルをオフショア金融業務の基地とするよう誘致したりするための税額控除はありません。

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海外からの直接投資とブラジルの投資ビークル経由の投資

国外企業が直接ブラジル企業を買収した場合には税務上ののれんが認められないのに対して、ブラジルの投資ビークル経由での投資にはこの税額控除が認められるという利点があります。

中間持株会社の配当は課税対象ではないため、その存在は純粋な税務上の観点からは理論的には中立的です。しかし、中間持株会社には当然いくらかの追加的な管理費用がグループに発生し、事業会社から持株会社に支払う持分に対する利益には、すべてPISおよびCOFINS(収入に対する二種の社会負担金で、計9.25%の負担率)の税負担があります。

補足法Ⅰ104/01(未だ、法制化はペンディング)は、管理当局が、課税や税務上の義務を構成する要因の性質を隠す目的で行われる法律行為やトランザクションの有効性を無視すること認めています。

税務上ののれんの償却

税務上ののれんに対する税額控除を受けるために、ブラジル企業の持分取得は、ブラジルの投資ビークルの設立によるか、または既存のブラジル事業体を介して行なわなければなりません。ブラジル税制の税務上ののれんは、買収価格とターゲット企業の正味持分価値の差額です。

ブラジル企業の持分取得に支払われた税務上ののれんの総額は、それが取得企業の将来的収益性に対して支払われたものであれば、ブラジルの投資ビークルの事業会社への合併(またはその逆の場合も同様)により5年(最短)から10年(最長)の税額控除の可能性があります。

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上記のタックス・プラニングを利用するに当って遵守すべき要件として、買収ストラクチャーに正当な経済的目的(事業目的)があることを、証拠により示す必要があります。買収ストラクチャーが単なる税負担軽減を目的としたものであれば、税務上ののれんの控除は認められなくなるリスクがあります。

2008年1月より、ブラジルの新しい会計基準(2007年発行、2008年1月より有効) が発行され、のれんの概念に変更がありました。会計上は、投資コストは買収先企業の資産および負債の公正価値に配賦され、配賦できなかった取得コストの一部をのれんとして無形資産に計上し、償却は認められなくなりました。

1 ブラジルの会社法及び会計規則は、連邦法11,638/07を通じて、2007年に変更されました。これらの新会計規則の導入は、ブラジルの会計基準GAAPをIFRS(国際会計基準)に合致させることを目的としています。

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そこで、当局は税務上ののれんについても変更を検討しているのではないかという憶測が流れています。税務上ののれんの償却期間も5年から10年の期間ではなく、上述の会計ルールと足並みを揃えるのではないかという観測も一部ではあります。例えば、税務上の償却可能なのれんの金額も、株式取得に伴う取得コストの会計上の配賦の結果や会計上の償却期間と一致させるというような観測です。その場合、税務上ののれんから発生するメリットは、異なる償却期間のため、より低くなるか、あるいは優遇税制そのものが撤廃されるとする見解もあります。法制の変更は、2014年から有効になるという噂もあります。しかしながら、この点に関して、未だ、どのように、いつから、有効になるかは不確実です。

過少資本税制

国外関連当事者(個人または法人)に対してブラジル企業が支払う利息は、当該国外関連当事者がタックスヘイブンや税制優遇地域に設立されておらず、利息費用が国内企業の活動にとって必要であるとみなされ、かつ以下の要件がすべて満たされる場合には損金算入できます。

I. (国外関連当事者がブラジル企業の持分を保有する場合)国外関連当事者からの借入金総額は、当該関連当事者の当該ブラジル企業の持分相当額の2倍を超えない。

II. (国外関連当事者がブラジル企業の持分を保有していない場合)国外関連当事者からの借入金総額は、当該ブラジル企業の純資産総額の2倍を超えない。

III. 上記IおよびIIの借入金の総額が全関連当事者による当該ブラジル企業の持分合計の2倍を超えない。または借入金は全て、当該ブラジル企業の持分を持たない関連当事者からのものである。

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IV. 国外関連当事者が、ブラジルの借入企業の持分を持っていない場合、全関連当事者からの借入金額総計が当該ブラジル企業の純資産総額の2倍を超えない。

上記の1つでも、2:1の比率を超過している場合、超過部分の借入金利息はブラジルの所得税控除の対象とはなりません。

同様の規定が、ブラジル企業からタックスヘイブンや税制優遇地域の居住者である個人又は法人(関連当事者であるかどうかに関わらず)に支払われたり、控除されたりする利息に対しても適用されます。この場合、利息費用が上述のように企業活動に不可欠であるとみなされ、タックスヘイブンや税制優遇地域の居住者である外国当事者からのブラジル企業の借入総額が当該ブラジル企業の純資産の30%を超えない場合、当該利息費用は損金算入されます。

上記の二つの制限(2対1および0.3対1の負債資本比率)は、保証人、代表者または他の仲介者が関連当事者である場合、およびタックスヘイブンや税制優遇地域の居住者である場合にそれぞれ適用されます。

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法律ではさらに、いかなる名目であれ、タックスヘイブンや税制優遇地域に居住する個人または法人(関連当事者であるかどうかに関わらず)に支払われるか送金された金額は、以下の条件が全て満たされた場合にのみ損金算入できることが規定されています。 (i) 支払いの事実上の受益者が特定されている、 (ii) 受益者は事業能力(つまり実体)を有することを示す証拠がある、 (iii) 当該支払いと、それに対応する物品の供給、権利またはサービスの利用についての十分な証拠資料がある。

ブラジルの租税条約ネットワーク

ブラジルと租税協定を締結しているのは、オーストリア、ベルギー、カナダ、中国、大韓民国、デンマーク、スペイン、フランス、オランダ、イタリア、日本、ルクセンブルク、ノルウェイ、ポルトガル、スウェーデン等わずか30カ国です。ブラジルは米国および英国とは租税条約を締結していませんが、互恵協約を締結しています。互恵協約により、理論的には相手国で納付した所得税の税額控除ができます。

源泉徴収税の減税については、租税協定の定める恩恵はわずかなものです。相互国で認められる税額控除に、より恩恵があります。

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ブラジル投資の持株会社とする国家の選択については、個々のケースの状況によりますが、一般的には、オランダ、スペイン、ルクセンブルグおよびオーストリアが有利な税務管轄地域であると考えられています。ブラジルと締結した租税条約、および相互間で税額控除に関する特定の条項があるためです。

会社法

ブラジルの会社法は連邦法11,638/07により改正され、2008年1月1日よりブラジルでの会計実務に著しい影響を与えました。当該新規定が目指すところはブラジルの一般会計基準をIFRSに近づけることにあります。これらの変更により、結果として税務にも影響を与えました。

ブラジル政府は連邦法11,638/07で導入された新しい会計方法により生じる税務上の潜在的なマイナス影響を相殺することを目的として、2008年12月に暫定法449により暫定的課税方式(RTT)を導入しました。簡単に言えばRTTによって、2007年12月31日まで有効であった会社法および会計基準を、税務上に限ってその後も有効であると見なして企業への課税が行われることにより、法人納税者は新会社法によりもたらされる不利な影響を回避することが出来ます(税務に関する事項に限られます)。

主要な税金および負担金の基礎情報

主要な連邦税、州税および地方税は以下のとおりです。

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税金 法定税率 備考

法人所得税-法人所得税(IRPJ)および法人利益に対する社会負担金(CSL)

25%1 および9%

IRPJおよびCSLは暦年ベースで確定し、毎月納付します。通常は年度または四半期の課税所得に基づいて計算されます。

売上高に対する課税-社会統合計画納付金(PIS)および社会保障融資納付金(COFINS)

1.65%および7.6%2

PISおよびCOFINSは総売上高に対して課税されます。企業は特定の仕入およびサービス購入に対しPISおよびCOFINSの税額控除が認められます。(付加価値税と類似した非累積課税方式の場合3。)

PISおよびCOFINSは非居住者企業による物品およびサービスの輸入に適用されます。

輸出収入は免税です。

連邦税 -工業製品税(IPI)

種々の税率4

IPIは製造業者が販売時に、次の加工過程の製造業者、またはエンドユーザー向け販売小売業者である顧客に代って納付します。製品が製造業者間で取引される場合にIPIが課されます。次に購入する製造者は、供給業者に支払ったIPIと同額の税額控除が認められます (非累積方式)。

IPIは物品輸入に課されますが、輸出収入は免税です。

輸入税(II) 種々の税率5

輸入税はCIF価格に課され、回収不能なコストとなります。

1 IRPJは税率15%で、年間課税所得が240,000レアル(約120.00米ドル)を超えた部分に10%を加算して課税されます。

2 特定業種により高い税率が適用されます(自動車産業等)。3 一部の企業は累積課税方式によりPISおよびCOFINSを納付します。この方式だと軽減税率である

3.65%で課税されますが、納税者は購入に際しての税額控除を利用できません。4 HS (Harmonized System) による製品のタックスコードによって税率が決定されます。5 税率は必要度に応じて、製品のHSコードにより決定されます。

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税金 法定税率 備考

商品流通サービス税(ICMS)

内国税 17%又は19%

ICMSは商品の流通、州間および市(基礎自治体)間の運輸サービス・通信の提供、並びに電気に対して課税される州税です。取引や役務提供が外国発でも課税されます。各流通過程における価格増加分に課税されます。

またICMSは輸入も課税対象となります。輸出収入はICMSの対象外です。

州内取引 17~19%州間取引 7~12%輸入(一部例外あり) 17~19%

輸入商品、あるいは、ローカルコンテンツが60%未満の商品の州間の移動については、上述の7%から12%の税率の代わりに4%の税率が適用されます。

サービス税(ISS) 2%~5% ISSは、連邦政府により特定のサービス収入に課される地方自治体税です。

通常、このサービス税は、企業の本拠地が所在する市で課税されますが、組立て・建設・解体作業等のサービスについてはその限りではありません。

サービスの輸入もISSの課税対象となります。

サービスの輸出には課税されません。ただし、サービスがブラジル国内で提供されたり、これらのサービスの成果がブラジル国内に適用されたりする場合を除きます。

源泉税(IRRF)配当金

非課税 受取人の所在地にかかわらず、配当金は課税されません。

6 ICMSは通常17%ですが、例外としてサンパウロ州、ミナスジェライス州、パラナ州では18%、リオデジャネイロ州では19%になります。製品によって例外的に課税率が高くなる場合(化粧品産業)や、低くなる場合(自動車産業)があります。

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税金 法定税率 備考

源泉徴収税(IRRF) (つづき)-支払利息

15%7 又は25%8

国外所在の受取人への支払利息は、移転価格および過少資本の規定に従います。

最近発行されたブラジル移転価格ルールは、控除可能な金利スプレッド(未だ、財務省により定められていない)の最大値が、以下の平均レートを上回るように制限をかけています。

1. ドル建て貸付については、ブラジル国外で発行されるドル建てのブラジルソブリン債

2. レアル建て貸付については、ブラジル国外で発行されるレアル建てのブラジルソブリン債

3. 上述以外のものは、6ヶ月のLibor

もし、貸付が低税率の管轄区にある貸し手や、優遇税制がある貸し手から行われている場合、貸し手が関連当事者でなくても、過少資本や移転価格の規則が適用されます。

国内貸付に関する利息は、ブラジルの源泉所得税に従い、利息が支払われる時点に応じて、15%から22.5%までの累減税率が課されます(例えば180日以内に支払われる利息は税率22.5%、181日~360日は20%、361日~720日は17.5%、720日を超える場合15%)。

国内貸付は、金融取引税IOF(金融・為替・保険に関する取引に課税される)に従い、次のレートが、弁済されていない債権の元本に対して課されます。

1.固定期間の貸付-0.38%に1日あたり0.0041%(最高365日、それを超える場合1.5%)を加算した税率が、未済の貸付元本に課されます。つまり、負債が長期 (1年超)貸付契約による場合、IOFの課税率は1.88%となります。

2.固定期間のない貸付-0.38%に1日あたり0.0041% (最高365日、それを超える場合1.5%)を加算した税率が、未済の貸付元本に課されます。つまり、IOFのか税率は、初年度が、1.88%の場合、翌年以降は1.5%となります。

長期国際貸付(平均360日超)のIOF課税は0%です。短期国際貸付(平均360日以下)は6%です(貸付元本にのみ課税されます)。IOF課税の詳細は、本セクションの関連記述をご参照ください。

7 租税条約に別途規定ある場合を除きます。8 所得税が税率0%、または20%未満で課税される租税回避地として定められ、ブラジルの自治体の

税務当局が「タックスヘイブン」としてブラックリストに掲載したタックスヘイブンへの支払いは、種別にかかわらず25%の源泉所得税が課されます。

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税金 法定税率 備考

源泉所得税(IRRF) (つづき)-ロイヤルティおよびサービス

15%9 又は25%10

ロイヤルティの場合、ロイヤルティ契約が国立工業所有権院(INPI) に認可され、かつブラジル中央銀行に登録される必要があります。

通常、ロイヤルティ料率は、商品またはサービスの純売上高の5%を限度としますが、製品・活動の種類によって率が異なってきます。

商標および商号の使用にかかるロイヤルティは、製品・活動の種類を問わず、商標および商号の使用が製品にかかる特許、加工または製法の利用による結果ではない場合、純売上高の1% が料率の限度となります。

源泉所得税のほか、外国当事者に支払われたロイヤルティとサービス手数料には、10%の率で経済支配介入負担金(CIDE)が課され、かつPISおよびCOFINSも合わせて9.25%の率で課されます。以上は、ブラジルのサービス提供会社に課税されます。

外国当事者から提供されたサービスにかかる手数料は市サービス税(ISS)が2%~5%の率で課されます。

源泉所得税のほかに、ロイヤルティまたはサービス手数料の国外への送金もしくは支払いに税率0.38%でIOFが課されます。ロイヤルティ、サービス手数料をレアルから外貨に交換するために課される税です。IOF課税の詳細は、本セクションの関連記述をご参照ください。

9 租税条約に別途規定ある場合を除きます。10 所得税が税率0%、または20%未満で課税される租税回避地として定められ、ブラジルの自治体の

税務当局が「タックスヘイブン」としてブラックリストに掲載したタックスヘイブンへの支払いは、種別にかかわらず25%の源泉所得税が課されます。

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連結納税

ブラジル税法では連結納税やグループ税額控除について考慮されていません。そこでグループ純利益を申告するために、同一グループに属す企業同士で所得や控除を連結することが認められていません。グループ内の企業各社は単独で各地方税務当局に年度所得税申告を行う必要があります。

税務上の繰越欠損金(法人所得税/IRPJおよび社会負担金/CSL)

税務上の欠損金の繰越には期限はありませんが、繰越欠損金の利用による控除は各年度の課税利益の30%が上限となっています。さらに、税務上の損失の戻し入れや他のブラジル企業への振替は認められていません。以下の二つの事由が共に発生した場合、被買収企業の税務上の損失を繰り越して、新規事業活動から生じる課税所得の相殺に利用することは出来ません。

a) 所有者の変更b) 企業活動の変更

資本金利

企業は株主への報酬として配当を行なうことが認められていますが、上限についての規定があります(長期金利/TJLPを上限とし、また当期利益もしくは利益剰余金の50%を上限とします)。この支払金額は法人所得税の計算時および純利益にかかる社会負担金の計算時に損金算入可能ですが、15%(タックスヘイブンの場合は25%)の源泉徴収対象となります。

2013年度の第1四半期は、適用長期金利は5%(年利)でした。

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タックスヘイブンの受益者に対する支払い

タックスヘイブンに居住するか設立された受益者に対するいかなる直接的・間接的支払いであれ、以下の要求が全て満たされない限り損金算入が出来ません。(i) 支払いの事実上の受益者が特定されている、(ii) 非居住者は取引能力を備えている、(iii)支払い、物品受領、権利、およびサービスの利用についての十分な証拠資料がある。

キャピタルゲイン

非居住者である株主によるブラジル資産(株式も含む)の売却により発生するキャピタルゲインは(別途国際的な租税条約で規定されていない限り)、例え売り手と買手の双方ともが国外に居住している場合であっても15%の税率で所得税源泉徴収の対象となります。

株式売却の場合、キャピタルゲインとは取得価格とブラジル中央銀行に登録された外貨建外国資本金との差額を示します。

原則としては国内の買手は国外の売り手の得たキャピタルゲインに課される源泉税を控除し納付する責任を負います。両者共にブラジル国外にいる場合、国外の買手の在ブラジル代理人が源泉税を徴収する納付義務を負います。

租税回避地(タックスヘイブン)にいる売り手の得たキャピタルゲインに対する所得税の源泉徴収率は25%です。

非居住者のブラジル投資原価超過分の資本金本国送還には15%(タックスヘイブンの場合は25%)のキャピタルゲイン税が課されます。

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ブラジル居住者企業が売却又は譲渡した持分から生じたキャピタルゲインは、ブラジル所得税(IRPJ/法人所得税およびCSLL/社会負担金)を34%の合算税率で課税されます。

一定の条件が全て満たされれば、i)現地の証券取引市場での取引、ii) 現地の株式投資ファンド(FIP)を通して構築されたプライベートディールでは、海外投資家の取引から発生したキャピタルゲインが、非課税となることがあります。

ブラジル居住の個人はキャピタルゲインに対して15%の税率で課税されます。

金融取引税(IOF)

ロイヤリティ、技術サービス料、費用弁済を含む非居住者に対するその他支払いを行なうための外国為替取引は、原則的に金融取引税(IOF)が課されます。

現行のIOF税率は外国為替の売買ともに0.38%です。

ブラジルの会社に対する出資(ブラジルの証券市場を通じて行われるものを除く)は、0.38%のIOFが課税されます。また0.38%のIOFはまた、ブラジルから出資を引き上げる際にも課されます。

ブラジル証券市場または株式投資ファンド(FIP)を通して行なわれた投資については、現行ではブラジルへの海外投資の流入に対しては、現状はIOFが0%となっています。

投資の回収に対してはIOFは課されていません。支払いに際してレアルから外貨への、あるいは外貨からレアルへの為替交換取引が必要とされる場合にはIOFを回避することは出来ません。

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IOFは他にも、ローンやクレジット業務、証券取引、外国為替取引や保険契約に様々な税率で課されます。

平均残存期間が360日以下の外国貸付には6%のIOFが課されています。他の全ての長期外国貸付にかかるIOFは0%です。平均残存期間は、該当貸付金額の未払残高に関する日数とローンの残高に基づいて決定されます。

非居住者に対する他の税金

外国企業とのロイヤリティ、ライセンスまたは役務契約を結んでいるブラジル企業には、国外への支払金額の10%の企業経済支配介入負担金(CIDE)が課されます。

非居住者へのサービス料金の支払にはPIS、COFINS、ISSおよび源泉徴収所得税も課されます。

タックスヘイブンおよび税制優遇地域

タックスヘイブン(所得税非課税または所得税率が20%未満の税務管轄地域)への支払いのほとんど(配当は除く)には25%の源泉徴収所得税が課されます。実際、ブラジルの地方税務当局は、しばしばタックスヘイブンに該当するとされる国や地域を示すブラックリストを発行しています。

ブラジルの国税庁は2010年6月4日に通達IN 1,037/2010を公布してブラジルタックスヘイブンブラックリストを更新しています。

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タックスヘイブンブラック リスト(IN 1,037/2010に 基づく)

アンドラ、アングィラ、アンチグアとバーブーダ、アルーバ、アセンション島、バハマ、バーレーン、バルバドス、ベリーズ、バミューダ、英領バージン諸島、ブルネイ、カンピョーネ・ディターリア、カナリア諸島、ケイマン諸島、クック諸島、コスタリカ、キプロス、ジブチ、ドミニカ、フランス領ポリネシア、ジブラルタル、グレナダ、香港、マン島、キリバス、ラブアン島、レバノン、リベリア、リヒテンシュタイン、マカオ、マディラ諸島、モルジブ、マーシャル諸島、モーリシャス、モナコ、モントセラト島、ナウル、オランダ領アンティル、ノーフォーク島、ニウエ、ピトケアン島、パナマ、ケシム島、セントヘレナ、セントクリストファー・ネイビス連邦、サンピエール島とミクロン島、サモア、米サモア諸島、サンマリノ、セイシェル諸島、シンガポール、ソロモン諸島、セントルシア、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、オマーン、スワジランド、スイス

(リストから削除されました)、トリスタン・ダ・クーニャ、トンガ、タークス・カイコス諸島、アラブ首長国連邦、米バージン諸島、バヌアツ。

上記に加え、「税制優遇地域」のリストも作成されています。このリストには以下の体制/事業体が網羅されています。

• ウルグアイのSAFIs (Sociedad Anonima Financiera de Inversion)

• 意味ある経済活動を行なわないオランダのホールディングカンパニー(オランダの持ち株会社は、2010年から税制優遇地域のリストから削除されています。そのため、現状、このリストから誘引される税務上のルールは、適用になりません。)

• アイスランドの国際貿易会社(International Trading Company)

• ハンガリーのオフショアKFT(Limited Liability Company)

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• 非米国居住者の所有する米国の州LLC

• スペインのETVEs(外国有価証券保有会社)(削除)

• マルタの国際貿易会社(International Trading Company)および国際持株会社(International Holding Company)

通達IN 1,037/2010以前には税制優遇地域のブラックリストはありませんでした。IN 1,037/2010公表以降は、上記の外国優遇税制の該当当事者は、潜在的な税務上の不利益について考慮する必要があります。

IN 1,037/2010の影響を要約すると、損金不算入となる支払 (利息、役務費用、ロイヤルティ等)に関するルール、移転価格税制および過少資本税制は、上記のタックスヘイブンブラックリスト内の会社または個人に対する支払いまたはこれら会社、個人との取引、および優遇税制に挙げられた外国受益者に適用されるということになります。

ブラジルの所得税源泉徴収については、タックスヘイブンのブラックリスト(優遇税制のブラックリストではありません)に挙げられている外国管轄地域に所在する企業または個人に対してのみ影響します。つまり、優遇税制適用の外国企業または外国人向けのキャピタルゲインあるいは適格投資家(キャピタルゲインへの課税が免除される)がブラジル資本市場を通じて行った外国投資について、IN1,037/2010はこれに対する源泉所得税の現行規定に影響しないということです。

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労働力と人件費

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7 労働力と人件費

労働関係

労使関係

労使関係は、主として1943年に施行された統一労働法(CLT)とそれに続く法規で取り扱われています。労働法は、正規雇用された全ての被雇用者に適用されます。ただし、公職や家内労働者については別途法規が存在するため、除外されます。統一労働法は、労働者に熟練・単純の別や、肉体労働と事務あるいは専門職に区別を設けていません。したがって、どの種類の労働者も一様に被雇用者とされます。法制の変更や雇用主である会社株主の変動は、労働法に定める被雇用者の権利に影響しません。

広範囲にわたる社会保障法と労働関連法規により労使関係が規定されますが、外国人投資家は、現地の基準や実務を守っているため、労働問題という形では大きな問題に直面しておりません。

労使慣行と主な社会負担金に関する基礎情報

ブラジルにおける雇用主負担の人件費

給与報酬と労働者の権利

被雇用者には、月給と、場合によって時間外手当、夜勤手当、危険手当などが支給されます。

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被雇用者は勤続12ヶ月後に暦日で30日間の年次有給休暇が与えられます。これは次の12ヶ月以内に取得するもので、また1ヶ月の給与に賞与の3分の1を加算した額に等しい金額が支払われます。

毎年末に、雇用主は被雇用者に対して給与1ヶ月と同額のクリスマス賞与(「第13ヶ月給与」ともいう)を支払わなければなりません。

被雇用者に給与として支払われる金額と定期的に支払われる金額は、全て法的取扱いにおいて被雇用者の給与の一部とみなされ、有給休暇、第13ヶ月給与、勤続年数保障基金(FGTS、退職金積立制度)の積立金、解雇手当の計算に考慮されます。

諸手当とは、通常の給与以外に被雇用者に支給される項目です。労働法規の関係条項により、業績賞与や何らかのベネフィットは被雇用者への追加的支給であるため、結果としてこれらの賞与やベネフィット(車など)を支払うと、被雇用者への報酬とみなされます。この場合、被雇用者の報酬総額(課税対象の手当を含む)は、雇用主が負担すべき社会負担金(社会保険料)の課税標準を構成します。

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給与総額への税金および社会負担金(INSS)

雇用主が負担する社会負担金は、支払給与総額(被雇用者全員に支払われる月給)の20%に相当します。

2011年12月以降、ある一定の産業(例えば、ITやコールセンターの会社、旅客輸送の会社、ホテル、自動車セクターの会社等)のINSSは、会社の支払給与総額の20%ではなく、会社の純売上高の1%あるいは2%(正確な適用レートは、生産されている製品のタイプや、会社により提供されているサービスのタイプによります。)が課されます。

この方法によるINSSの支払い (会社の純売上高の1%及び2%) は、法12,715(この方法を定めた法律)に掲載されている製品の販売やサービスに関連する会社の純売上高の割合で、計算されることになっています。もし、会社の売上の全てが、このリストに掲載されている製品やサービスに関連しない場合、上述のリストに含まれない売上の同じ割合を考慮して、給与支払総額の20%が支払われることになります。

雇用主が負担する労災保険料支払額は通常、その会社の活動の種類で決まる「リスクのレベル」によって異なり、被雇用者に支払われる給与総額の1~3%の割合になります。

また雇用主は、被雇用者に支払う給与総額の2.5%に等しい月払負担金を「教育関連負担金」として支払う必要があります。

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さらに雇用主は、国立農地改革院(Incra)、ブラジル商業連盟社会サービス(SESC)、ブラジル産業社会奉仕団(SESI)など、その他の政府事業体に対する負担金も支払わなければならず、その負担率は3.3%に達することがあります。

加えて、雇用主は、被雇用者のためにINSSを源泉徴収する責任を負います(被雇用者も率は低いものの累進率でINSSを負担しています)。

勤続年数保障基金(FGTS)

FGTS制度により、雇用主は被雇用者のために給与の8%を毎月積立金として引出不可の銀行口座に預け入れます。この積立金は雇用主が負担し、被雇用者の給与から差し引くことはできません。被雇用者を解雇する場合、企業はその被雇用者のFGTS口座残高の50%に等しい額を追加で支払います。

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環境問題

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8 環境問題

このセクションでは、ブラジルの環境問題について述べます。一般的にいって、規制は厳しいものの、大きなビジネス・チャンスが存在します。

ビジネスに対する環境の影響

ブラジルでのビジネスは、いくつかの環境問題を念頭におかなければなりません。適切に対処しないと、リスクが生じる可能性があります。とはいえ、豊富で質の高い天然資源、気候風土、環境保護に対する全般的に高い関心と、これに対応する世界最先端レベルの環境立法など、真にビジネス・チャンスとなりうる環境関連の要素がブラジルには数多くあります。

環境保護

ブラジルにおける重要な「グリーン」の問題としては、生物学的に豊かなアマゾン熱帯雨林やその他の地域における原生林の破壊、侵食による土壌の流出が挙げられます。関心を集める主要な「グレイ」の分野としては、下水道システムやごみ処理機能の不足、河川、湖水、河口と海岸線に対する都市や産業と非特定汚染源の汚染、大都市とその周辺部における大気汚染、さらには鉱山地帯の環境回復に関する問題が挙げられます。

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主要法規

ブラジルの法制は様々な環境問題を取り扱っており、許認可、土地利用規制、公害の防止、検査手続について規定しています。

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環境犯罪は最高額5,000万レアル(約3,000万USドル)の罰金

ブラジルでディールを行い、ビジネスを実行する際、いくつかの環境問題を考慮に入れなければなりません。十分に理解し、  しない場合は、大きなリスクを負うことになります。

環境立法は国家環境システム(SISNAMA)とともに1981年に導入されました。この法において、環境違反があった場合の、民間、刑事及び行政上における自然人や法的主体の責任を定めています。1988年に、連邦憲法は、現在及び将来の世代が、健康的な環境に対する権利があることを定めました。

最近では、1998年に新しい法案(「環境犯罪法」)が通過し、公害および森林破壊は犯罪として重い罰金を科され、場合によっては実刑判決を受けます。さらに、ブラジル企業や事業を買収した場合、買収資産に付随する現在と過去の法的責任の全てまたは一部を負う可能性があります。その不利益は、罰金のみならず営業許可証の取消し、影響を被った地域の原状回復義務まで含まれる可能性があります。また、多くの場合には問題が公表され、企業の信用に影響します。こういった可能性を念頭におき、買収に先立って環境デュー・デリジェンスを行うことが強く推奨されます。

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新規の工場や生産拠点建設プロジェクトは、ブラジル環境当局に許可を申請しますが、その所在地と活動内容に応じて、連邦、地域、または自治体レベルの環境ライセンスが決まってきます。環境への影響が大きいと見なされる活動内容では、建設認可の前に環境に対する影響と対策についてより詳細な環境影響調査(EIA-RIMA)が必要となります。

稼動中の工場は、いずれもブラジル環境・再生可能天然資源院(IBAMA)が発行する環境許可証を取得しなければならず、これは定期的に更新する必要があり、また、会社はライセンスに定められて技術条件に準拠する必要があります。

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CONAMA決議No.237/97では、連邦、州、地方自治体におけるライセンスに関するプロジェクトや活動の詳細が記載されています。この解決のための規則に関して、環境ライセンス付与のプロセスにおいて、以下のような活動や期限が含まれています。

また、ライセンス付与の過程での、環境アセスメントやEIA-RIMAのようなツールの実行は、 環境の劣化を引き起こすようなプロジェクトの抑制や管理において重要な進歩を示しています。

コンセプトのデザイン

フィージビリティスタ

ディ

実現可能性 開発 導入 運営

プロジェクト初期段階

プロジェクトの実行

建設運営とメンテ

ナンス

ライセンス前

2年まで

・ モニタリングとコントロール

・ リスクマネジメント

・ 緊急時のアクション

ライセンスの導入

3年まで

ライセンスの運営

・ 環境インパクトのスタディ

・ リスクアセスメントのスタディ

・ 公的監査

・ プロジェクトの初期段階

・ 包括的なスタディ

・ 環境の考慮

・ リスクマネジメントプラン

・ ライセンスの導入(LI)技術要求

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汚染防止

多くの地域で汚染が大きな問題となっており、今や政治的にも経済的にも主要な課題の一つです。連邦政府と州政府は、工業化の進んでいる地域を主として、汚染防止と低減に向けた計画や規制を策定しています。

ブラジルで新しい生産拠点を立ち上げる場合には、汚染防止や低減のための廃棄物処理について、考慮し、また事業を買収する際には、その影響を評価する必要があります。

国家環境審議会(CONAMA)は、公害防止の国家基準を策定する国の機関です。これ以外の州機関は、奨励措置申請の審査や投資プロジェクトへの融資に際して、環境法規に配慮することを求められています。汚染防止関連法規への違反は、租税優遇措置の停止や、信用の引締め、さらには営業停止といった結果に至る可能性があります。

固形廃棄物に対する新規則

リソースの欠如や、都市部の清掃サービスにおける望まれるべき質や技術革新の維持にかかわらず、ブラジルは、特に、国家基本衛生方針(法No.11.445/07)や固形廃棄物に関する国家方針(法No.12.305/10)等の最近の規制を通じて、環境サステナビリティについてより強い関心があることを示しています。

固形廃棄物に関する国家政策を策定しています。固形廃棄物に関する地方自治体の統合管理は、地域の現実に即しており、また、選定された回収プログラムや原材料の再利用やリサイクルによって、埋立廃棄物量の削減の促進を図っています。社会格差の解消に対するブラジルの関心の高さもあり、この文書では、低所得者層を巻き込み活用することを推奨しています。

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持続可能性:ブラジルの課題

1992年のリオデジャネイロ環境サミットにおいて、持続可能性(環境管理、社会的責任、および関連する経済的側面/付加価値の統合)が官民両セクターにとって、さらには世界に住む人々の大半にとっての重要な課題となり、これ以降、環境の良好な管理がビジネス上の問題の一つとなりました。

すでに多くの産業において、環境の良好な管理は競争の優位性ではなく、世界市場でもブラジル市場でも競争条件の一つとなっています。

環境調査は、会社が良好な環境管理を行うことをサポートする持続可能なツールです。

もし、会社が法律に準拠していなければ、直面するであろうリスクを示すために、事業のライセンスや水源に関する書類、あるいは、固形残留物の管理などの、環境書類を分析する手続きです。

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ブラジルにおけるM&A専門家、 ポストディール・サービス

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9 ブラジルにおけるM&A専門家、 ポストディール・サービス

PwCブラジル

1915年の設立以来、PwCブラジルはプロフェッショナルサービス組織として業界をリードしてきました。180名を超えるパートナー、約5,300名の専門職員、17ヶ所の事務所によりブラジル全土を網羅しています。

• 弊社の「ディール」(トランズザクションサービスおよびコーポレートファイナンス)グループは、約30名のパートナーとディレクターを含む約250名のプロフェッショナルで構成されています。

• パートナー,ディレクター、スタッフは全て、次の産業 部門ごとに区分されています。金融サービス、消費財 ・工業製品、農業関連産業、電気通信、マスメディア、 科学技術、行政サービス

• ポストディール関連では、150名を超えるプレディールおよびポストディール の専門家が、統合過程に おけるあらゆる重要な点に ついてソリューションを 提供します。弊社の「シナ ジートラック」および「100日プラン」の手法は、最低 限のコストと最短のタイム フレームでディール・バリュー獲得を支援することが可能です。

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PwCブラジルM&Aサービスのお問い合わせ先

Rogério Gollo パートナー、ディール・リーダー

[55](11) 3674-2333 [email protected]

Leonardo Dell’Oso パートナー、トランザクション

[55](11) 3674-2209 サービス・リーダー

[email protected]

Antônio Toro パートナー-バリューション&ビジネス

[55](11) 3674-3666 企業リストラクチャリングサービス・

リーダー

[email protected]

Alexandre Pierantoni パートナー、プライベートエクイティ・

[55](11) 3674-3990 リーダー

[email protected]

Manuel Marinho パートナー、M&A税務リーダー

[55](11) 3674-2651 [email protected]

Eduardo Luque パートナー、アシュアランス・

[55](11) 3674-2631 ジャパンデスクリーダー

[email protected]

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矢萩 信行 シニアマネージャー、アシュアランス・

[55](11) 3674-3724 ジャパンデスク

[email protected]

日本語対応可能です。

カロリーナ 坂間 マネージャー、クライアント・

[55](11) 3674-2434 サポート・ジャパンデスク

[email protected]

日本語対応可能です。

五百蔵 文乃 スーパーバイザー、アドバイザリー

[55](11) 3674-2504 サービス・ジャパンデスク

[email protected]

日本語対応可能です。

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PwCJapanのブラジルM&Aサービスのお問い合わせ先

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東京都中央区銀座八丁目21番1号 住友不動産汐留浜離宮ビル

川村 健 

81(0)3-3546-8480

吉永 秀宣

81(0)80-1245-3150

片岡 万枝

81(0)80-3156-5905

加藤 雅規

81 (0)3-5251-2536

宮嶋 大輔

81 (0)3-5251-2552

小林 昭夫

81 (0)80-3158-6271

パートナー、トランザクションサービス

リーダー ブラジルデスク

[email protected]

シニアマネージャー、トランザクション

サービス ブラジルデスク

[email protected]

シニアマネージャー、トランザクション

サービス ブラジルデスク

[email protected]

パートナー、税務 

ブラジルデスク [email protected]

パートナー、税務(移転価格) 

ブラジルデスク

[email protected]

パートナー、アシュアランス 

ブラジルデスク

[email protected]

PwCJapanのその他のブラジルデスクのお問い合わせ先

プライスウォーターハウスクーパース㈱

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PwC Brazil Offices

São Paulo - SP

Av. Francisco Matarazzo, 1400

05001-903 - São Paulo/SP

Torre Torino - Água Branca

Telephone: [55](11) 3674-2000

Barueri - SP

Alameda Caiapós 243, Térreo

Centro Empresarial Tamboré

06460-110 – Barueri/SP

Telephone: [55](11) 3509-8200

Facsimile: [55](11) 3509-8500

Belo Horizonte - MG

Rua dos Inconfidentes, 1190 - 9º

30140-120 - Belo Horizonte/MG

Telephone: [55](31) 3269-1500

Facsimile: [55](31) 3261-6950

Brasília - DF

SHS - Quadra 6 - Conjunto A -

Bloco C

Edifício Business Center Tower

Salas 801 a 811 – Brasília/DF

70322-915 - Caixa Postal 08850

Telephone: [55](61) 2196-1800

Facsimile: [55](61) 2196-1820

Campinas - SP

Rua José Pires Neto, 314 - 10º

13025-170 - Campinas/SP

Telephone: [55](19) 3794-5400

Facsimile: [55](19) 3794-5454

Caxias do Sul - RS

Rua Os 18 do Forte, 1256 - Sala 11

95020-471 - Caxias do Sul/RS

Telephone: [55](54) 3202-1466

Facsimile: [55](54) 3225-6789

Curitiba - PR

Al. Dr. Carlos de Carvalho, 417

- 10º - Curitiba Trade Center

80410-180 - Curitiba/PR

Telephone: [55](41) 3883-1600

Facsimile: [55](41) 3222-6514

Florianópolis - SC

Avenida Rio Branco, 847

Salas 401/ 402/ 403 e 409

88015-205 Florianópolis/SC

Telephone: [55](48) 3212-0200

Goiânia - GO

Av. 136, nº 797 - Setor Sul

Cond. New York Square –

Business Evolution

Salas 1005, 1006, 1007 e 1008 A

74093-250 - Goiânia - GO

Telefone: [55](62) 3241-0969

Maringá - PR

Av. Pedro Taques, 294, 10º, Zona 3

Ed. Átrium - Centro Empresarial

87030-000, Maringá/PR

Telefone: [55](44) 3025-2183

Fax: [55](44) 3026-4066

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Porto Alegre - RS

Rua Mostardeiro, 800 8º e 9º

Edifício Madison Center

90430-000 - Porto Alegre/RS

Telephone: [55](51) 3378-1700

Facsimile: [55](51) 3328-1609

Recife - PE

Rua Padre Carapuceiro, 733 - 8º

Edifício Empresarial Center

51020-280 - Recife/PE

Telephone: [55](81) 3465-8688

Facsimile: [55](81) 3465-1063

Ribeirão Preto - SP

Av. Antônio Diederichsen, 400

21º e 22º - Edifício

Metropolitan Business Center

14020-250 - Ribeirão Preto/SP

Telephone: [55](16) 2133-6600

Facsimile: [55](16) 2133-6685

Ribeirão Preto - SP |

Outsourcing

Rua Rui Barbosa, 1145 - 12º

14015-120 - Ribeirão Preto/SP

Telephone: [55](16) 3635-4303

Facsimile: [55](16) 3632-4424

Rio de Janeiro - RJ

Av. José Silva de Azevedo Neto

200, 1º e 2º - Torre Evolution

IV - Barra da Tijuca

22775-056 - Rio de Janeiro/RJ

Telephone: [55](21) 3232-6112

Facsimile: [55](21) 3232-6113

Rio de Janeiro - RJ

Rua da Candelária 65, 20º - Centro

20091-020 - Rio de Janeiro/RJ

Telephone: [55](21) 3232-6112

Facsimile: [55](21) 2516-6319

Salvador - BA

Av. Tancredo Neves, 620 - 30º e

34º - Ed. Empresarial Mundo Plaza

41820-020 – Salvador/BA

Telephone: [55](71) 3319-1900

Facsimile: [55](71) 3319-1937

São José dos Campos - SP

Rua Euclides Miragaia, 433

Cjs. 301 e 304

12245-550 - São José dos Campos/SP

Telephone: [55](12) 3913-4505

Facsimile: [55](12) 3942-3329

Sorocaba - SP

Rua Riachuelo, 460 - 5º

Edifício Trade Tower

Salas 501, 502, 503 e 504

18035-330 - Sorocaba/SP

Telephone: [55](15) 3332-8080

Facsimile: [55](15) 3332-8076

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