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空間座標系理論に基づいた視空間認知障害の評価法開発 Development of Evaluation-System for the Visuo-Spatial Cognitive Deficits based on the Spatial Coordinates System Theory 札幌医科大学大学院保健医療学研究科博士課程前期 理学療法学・作業療法学専攻 感覚統合障害学分野 佐々木 努 Sasaki Tsutomu

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空間座標系理論に基づいた視空間認知障害の評価法開発

Development of Evaluation-System for

the Visuo-Spatial Cognitive Deficits

based on the Spatial Coordinates System Theory

札幌医科大学大学院保健医療学研究科博士課程前期

理学療法学・作業療法学専攻

感覚統合障害学分野

佐々木 努 Sasaki Tsutomu

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-要旨-

【Ⅰ部 序論】

ヒトの“行為”は、“自己と空間あるいは物体との時空間的関係性を把

握しながら行っている”といえ,このような行為は“空間行為”と呼ば

れている.この時空間的関係性の把握に障害を来たした場合,空間行為

障害が顕在化する.この障害は,頭頂葉損傷による視空間認知能力の低

下に起因することが多く,その代表的症状として半側視空間無視(以下,

USN)がある.USNは臨床場面ではよく遭遇する症状であり,日常

生活活動(以下,ADL)自立の妨げとなることが広く指摘されている.

現在の臨床では,机上検査やADL場面でのUSN症状の有無を評価す

るアプローチが多く行われているが,その評価結果に基づく治療介入の

効果が見られず,その障害が残存し日常生活に支障を来たしている症例

が数多く存在している.

本研究では, USNの評価に関して,これまでの症状の有無のみに着

目した評価だけではなく,その背景にある能力障害を詳細に評価する必

要性を考え,その評価指標の模索を行った.更に,その評価指標を用い

た評価環境を試作し,その評価環境に用いる機器としての信頼性と妥当

性について検討を行った.

【Ⅱ・Ⅲ部 机上検査結果とADL場面でのUSN症状との関連】

能力障害を評価するための評価指標を検討するために,既存の方法で

施行した机上検査(Ⅱ部)と座標系という視点に基づいた机上検査(Ⅲ

部)を実施した.それらの机上検査結果とADL場面でのUSN症状の

関連性を詳細に調べた.対象者はUSN患者 20 名(Ⅲ部では 18 名)と

した.なお,対象者には口頭で研究内容を事前に説明し,同意を得た.

既存の方法で施行した机上検査結果からは,机上検査結果とADL場面

でのUSN症状との間に明確な関連性は認められなかった一方,座標系

という視点に基づいた机上検査の結果からは,“あるタイプ”の結果を示

した患者に特有のADL障害が認められる傾向が示され,座標系という

視点から分析された机上検査が評価指標と成る可能性が示唆できた. し

かしながら、“あるタイプ”の結果を示さない患者においては,更に別の

評価指標が必要であることも明らかとなった.机上検査が静的な要素の

強い検査方法であることと,ADL障害が動的な要素の多い複合的な障

害であるという事実から,運動反応などの動的な要素を含む評価指標の

有効性が考察された.

【Ⅳ部 空間座標系理論に基づいた視覚刺激に対する反応特性の分析】

ヒトの視空間認知の戦略として“座標変換”と呼ばれるものがある. 座

標変換とは, 眼球, 頭部, 体幹, 肢それぞれに対する空間や物の位置を

一つの表象へ変換することであり,ヒトの行為はこの表象に基づいてい

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ると考えられている. また,この座標変換過程では,視覚, 固有受容覚,

前庭覚など, 諸感覚の統 合状態が重 要であると いわれて いる.このモデ

ルは,空間座標系理論として知られている. 本節では,この理論に従っ

て座標変換過程を評価するための動的な指標を用いた評価環境を試作し,

用いる機器についてその信頼性と妥当性の検討を行った.この評価環境

は,刺激座標が突然変化する視覚刺激に対する頭部反応を分析するもの

である.本評価環境に用いる機器の信頼性及び妥当性として,1)呈示

視覚刺激,2)視覚刺激呈示機器FMD,3)頭部反応測定機器の三点

について検討し,それらを確認した.今後は,この評価環境での健常者

及び患者を対象としたデータを収集し,評価環境としての信頼性と妥当

性,及び有効性を検討していく必要がある.

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Ⅰ部 序論

我々はコンピューターに目を向けていながらも机の片隅にあるコーヒ

ーに手を伸ばし,後ろの方で電話が鳴ればそれに向かって近寄り電話に

答えることができる.外に出れば,横から垂れ下がる木の枝にぶつから

ないように,それを避けて歩くこともできる.走りながら相手にボール

を投げ渡したり,受け取ったりすることさえできる.これらの行為は,

自己と空間あるいは物体との時間的・空間的関係性を環境に合わせて適

切に保つことにより可能となるものと考えられ,「空間行為」と称されて

いる.この空間行為に関する障害は視空間認知能力の低下に起因するこ

とが多く,主として頭頂葉損傷で見られる障害である.臨床場面で観察

される代表的な症状として,半側空間無視(以下,USN:Unilateral

Spatial Neglect)や視覚性運動失調が挙げられる.生活障害を治療対象

とする作業療法では,日常生活を送るために必要不可欠な空間行為に関

する障害に対しては積極的に取り組む必要がある.特に,USNは中枢

神経系疾患の後遺症として現れる空間行為障害の中でも頻回に遭遇する

症状であり1 ),現在でも僅かではあるが作業療法としての治療介入とそ

の効果が報告されている2 ~ 4 ).しかし,これらの治療効果に関する研究

は症例研究による対処療法的な効果を検討したものであり,全ての対象

者に有用な治療方法の確立には至っていない.また,机上での評価結果

と実際の行為障害との関連性や,他の能力障害の影響などに関してもほ

とんど検討がなされていない状況にある.これらのことを明らかにして

いくことは,空間行為障害を示す対象者の問題をより焦点化すると共に,

効果的な治療介入が可能になる糸口となると考えられる.そこで本研究

では空間行為障害の一つであるUSNに焦点を絞り,その背景にある能

力障害の評価指標を模索し、その評価指標を用いた評価環境を試作した.

Ⅱ部では, 現在臨床場面でUSNのスクリーニングとして用いられて

いる机上検査課題と,日常生活で対象者が示すUSNとして現れている

症状との関連性について分析を行い,各机上検査が臨床症状の背景とな

っている能力障害の評価指標に成り得るかを検討した.Ⅲ部では,座標

系という視点からⅡ部と同様の目的で分析を行った.座標系という視点

は,USNの障害構造を分析するための一つの方法論である.Ⅳ部では,

感 覚 統 合 と の 関 係 性 か ら 座 標 系 と い う 視 点 を 系 統 的 に 理 論 化 し た

Karnath の空間座標系理論5 ) に基づいて,運動反応を評価指標とした新

しい評価環境の試作を行い,評価環境における機器としての信頼性と妥

当性について検討した.適用した運動反応という指標は,Ⅱ・Ⅲ部で用

いた“紙とペン”という静的な指標ではなく,動的要素の強い日常生活

により近いという点,更に,臨床作業療法が患者の病態を運動反応とし

て捉え生活障害と関連付ける治療戦略を取るという二点に着目した,新

しい評価指標である.

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Ⅱ部 USN患者に対する机上検査とADL場面におけるUSN症状と

の関連

1.はじめに

半側空間無視(以下,USN:Unilateral Spatial Neglect)という

症状は,Heilman ら 6) によると「大脳半球病巣反対側に提示された刺激

を報告する,刺激に反応する,与えられた刺激を定位する(orient)こ

との障害であり,感覚障害,運動障害では説明ができないもの」と定義

される.右半球損傷に起因することが多く,殆どが左側にこの症状を呈

する 7 )ため,左側のUSNを本論ではUSNという語彙で示した.U S

Nを持つ患者は,無視するだけでなく,右向き徴候などの身体的要因 8)

や空間的姿勢表象(a spatial postural representation)の歪みなどの

認知的要因 9)に起因しバランス障害を伴うこともある.更に,構成障害,

着衣障害,意欲の低下,半盲,眼球運動障害などを合併することもある1 0, 1 1).このように,USNを示す患者は,空間行為障害の他に様々な 関

連症状が現れることにより日常生活活動(以下, ADL:Activities of

Daily Living)の自立は著しく阻害され 1 2),作業療法においてADL改

善を図る上でも大きな阻害要因の一つとなっている.

臨床場面では,線分二等分課題,線分抹消課題,塗り絵課題といった

机上検査やADL動作の直接的観察からUSN症状の有無を判定し,治

療プログラムを立案する場合が多い.Bisiach ら 1 3) は情報処理過程に注

目し,知覚過程,遂行課程を分離して評価できることを指摘しているが,

両者を明確に分離できる適切な方法を示していないため,実際の治療場

面に還元するにはセラピストの経験に頼らざるを得ない現状にある.

近年,検査課題によりUSNの現れ方が異なるという報告 1 4) や,US

Nのタイプ分類の可能性が論じられるようになってきている 1 5).しかし,

検査結果と臨床症状,特にADL場面で彼らが示す特徴的な問題との関

連については,症例報告を含め十分な検討が行われていない現状にある.

この関連性について明らかにしていくことは,臨床症状を反映したUS

Nのタイプ分類が可能となるだけでなく,能力障害を適切に反映した治

療方略検討の一助となると考えられる.

USNスクリーニングのための机上検査とUSN症状として出現する

具体的臨床症状との関連を分析した報告は, 国内外では文献検索データ

ベース医学中央雑誌,PubMed,MedLine を用いた検索の範囲では 1994 年

の永倉ら 1 6) の報告 1 件のみであった.彼らは,机上検査結果と具体的臨

床症状の関連性が見られるものは僅かであったことから,複数の要因が

その背景として関与していると結論付けている.しかし,彼らが分析に

用いた具体的臨床症状が少ないために評価結果との関連性が少なかった

とも考えられ再検討の必要性が考えられた.

そこで本研究では,永倉ら 1 6)の報告の追試を兼ね,具体的臨床症状の

項目数を増やし検討を行った.更に,USN検出に用いられる机上検査

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とADL場面で観察されるUSN症状との関連性から,各机上検査が臨

床症状の背景となっている能力障害の何らかの評価指標に成り得るかに

ついて検討を行った.尚,本研究で述べるADLとは,基本的ADL動

作に限定するものとする.これは,日常生活関連動作につなげるために,

作業療法士がまず関わる必要のある重要な側面だからである.

2.方法

2-1.対象者

対象者はUSNを呈した右半球損傷患者 20 名(男性 14 名,女性 6 名)

とした.平均年齢は 69.6±11.1 歳であった.急性期の意識障害などの影

響を考慮し,発症から 3 ヵ月以上経過している者とした.また,USN

症状以外の症状として意識障害や失語,失行がなく,更に痴呆がないか

あっても日常のコミュニケーション,本研究における検査指示を理解で

きる知的能力を持つ者とした.尚,対象者はインフォームド・コンセン

トを行った上で本研究の参加に同意した者に限った.対象者のプロフィ

ールは表Ⅱ-1の通りである.本研究の対象者には,長谷川式簡易知能

検査スコアが 10 点を下回る“重度”の痴呆に該当する者が含まれ,痴呆

による分析結果へのバイアスが一見予測される.しかし,仮に重度の痴

呆に該当した場合でも,USNとしての症状は観察されるものであり,

その背景の能力障害を検討することを目的としている本研究において,

対象者の選択は妥当なものと考える.

表Ⅱ-1 対象者プロフィール

※1 経 過 の単 位 : 「年 」 ※2 損 傷 部 位 : F=前 頭 葉 T=側 頭 葉 P=頭 頂 葉 O=後 頭 葉 T

h=視 床 Bg=基 底 核 小 文 字 =小 病 巣 ※3 HDS-R=長 谷 川 式 簡 易 知 能 検 査 ※4 視

野 検 査 、眼 球 運 動 検 査 は対 座 法 にて行 った

症例 性別 年齢 経過 診断名 損傷部位 HDS-R 半盲 眼球運動障害

1 ♂ 65 0 .5 多発性脳梗塞 右FTPO 20 有 有2 ♂ 70 0 .5 脳梗塞 右FTPO 9 有 有3 ♂ 41 2 脳出血 右F 7 無 有4 ♂ 75 0 .5 脳出血 右Th 11 無 無5 ♂ 66 0 .3 脳梗塞 右tpo 24 無 無6 ♀ 65 4 くも膜下出血 右FTPO 29 無 無7 ♂ 74 9 脳梗塞 右P 23 有 無8 ♂ 52 3 脳梗塞 右FTP 28 有 無9 ♂ 84 1 脳梗塞 右TO 10 無 無10 ♀ 67 1 脳出血 右ThBg 23 有 無11 ♂ 65 8 脳出血 右FTP 16 無 無12 ♀ 88 1 脳梗塞 右FTP 9 無 有13 ♀ 81 1 脳梗塞 右FTP 29 無 無14 ♂ 65 1 脳梗塞 右FTPBg 23 無 無15 ♂ 82 13 脳出血 右Bg 23 無 有16 ♂ 72 3 脳梗塞 右FP 15 無 無17 ♀ 80 6 脳梗塞 右TP 17 無 無18 ♂ 72 3 脳梗塞 右FTPTh 12 無 無19 ♀ 54 2 くも膜下出血 右FTP 19 無 無20 ♂ 73 0 .5 脳梗塞 右FP 21 無 無

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2-2.手続き

2-2-1.手続き1:「机上検査」

本研究では机上検査として,a)線分二等分課題,b)線分抹消課題,

c)塗り絵課題,d)模写課題の4課題を用いた.すべての課題遂行に

際しては,対象者の正面に検査用紙を提示した.また,対象者は車椅子

座位にて課題を行い,時間的制約は課さなかった.各課題の詳細,US

N判定基準は以 下の通り である.(実際 に用いた検 査課題は 付録の項参

照)

a)線分二等分課題

A4 用紙(横)水平に長さ 20cm,太さ 1mm の線分が 1 本描かれている.

対象者には,線分の正中に印しを付けるよう教示した.Fukatsu ら 1 7)

の基準を参考に,患者の記した主観的正中が客観的正中に対して 2cm

以上右側へ偏位した場合をこの課題におけるUSNありと判断した.

b)線分抹消課題

A4 用紙(横)に長さ 3cm の線分 35 本が,傾き,間隔をランダムに配置

されたものを用いた.対象者には,紙面全体にある線分を鉛筆で印し

をつけながら抹消するよう求めた.判定は福井の無視前線 1 8)の変移に

基づいて,紙面左 1/5 未抹消がある者をこの課題におけるUSNあり

と判断した.

c)塗り絵課題

デイジー画の塗り絵を用いた.判定は,線分抹消課題の基準に該当し

た場合,入れ子現象が認められた場合をこの課題におけるUSNあり

と判断した.

d)模写課題

立方体模写を用いた.判定は,左側の書き残しが認められた場合をU

SNありと判断した.

以下,各課題でUSNありと判断された対象者を,各課題における“U

SN(+)群”と表記する(例;線分二等分課題“USN(+)群”).

2-2-2.手続き2:「ADL場面でのUSN症状」

各対象者のADL場面におけるUSN症状の有無,介助状況について

担当作業療法士への質問紙にて調査を行い症状の把握を行った.質問調

査を依頼した 3 名の作業療法士は皆経験 5 年以上であり、対象者を継続

して観察している.尚,対象者の内数名は著者自身も観察を行い質問紙

調査との整合性を確認した.検討したADL場面でのUSN症状は以下

の7項目である.

a)移動動作中に左側にぶつかる

b)左側へ曲がるべきところを曲がらない

c)車椅子の左側ブレーキをかけ忘れる

d)食事場面で左側の食べ残しがある

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e)更衣動作時に左側に不完全がある

f)整容動作時に左側に不完全がある

g)訓練室や病室で左側にある物品に気が付かない

3.分析方法

ある机上検査でUSN(+)と判断された患者が,各ADL場面での

USN症状が観察されるか否かについて 1×2 のクロス表を作成した.

作成したクロス表を基に,直接確率計算を用いて統計処理を行った.な

お,有意水準は 5%とした.本研究の目的は,各課題における“USN

(+)群”が示すADL場面でのUSN症状の特性を探ることである.

よって,1 条件(例;線分二等分課題“USN(+)群”)×2 値(例;

左側にぶつかることが「有る」/「無い」)の検定に用いられるこの統計

手法を適用した.また,ADL項目で“介助”と判定された場合は,U

SNが顕在化しているか否かが不明であるため統計処理の対象値からは

除いた.

4.結果

4-1.机上検査結果

すべての対象者がいずれかの課題においてUSNを呈していた.14 名

が線分二等分課題“USN(+)群”,13 名が線分抹消課題“USN(+)

群”と判断された.更に,18 名が塗り絵課題“USN(+)群”,18 名

が模写課題“USN(+)群”と判断された.線分二等分課題,線分抹

消課題で7割,塗り絵課題,模写課題で 9 割以上のUSN検出率が認め

られ,使用する机上検査の違いによりUSN検出率の違いが明らかとな

った(表Ⅱ-2).

表Ⅱ-2 机上検査結果

症 例 線 分 二 等 分 課 題 線 分 抹 消 課 題 塗 り 絵 課 題 模 写 課 題

1 + + + +2 + + + +3 - + + +4 + - - +5 + + + +6 + + - +7 + - + +8 - + + +9 + - + +

1 0 + - + -1 1 + + + +1 2 - - + -1 3 + + + +1 4 + - + +1 5 + + + +1 6 - + + +1 7 - - + +1 8 + + + +1 9 + + + +2 0 - + + +

U S N あ り 総 数 1 4 名 1 3 名 1 8 名 1 8 名

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4-2.ADL場面でのUSN症状 分析の結果,線分二等分課題“USN(+)群”14 名のADL場面で

のU SN 症状 の特 徴と して は ,「 車椅 子の 左側 ブレ ーキ を かけ 忘れ る」

(p=0.07),「訓練室や 病室で左側 にある物品 に気が付 かない」(p=

0.09)に関連傾向が見られた.また,「食事場面で左側の食べ残しがある」

(p=0.01)は有意な関連が認められた(図Ⅱ-3).線分抹消課題“U

SN(+)群”に関しては,「訓練室や病室で左側にある物品に気がつか

ない」(p=0.09)と「食事場面で左側の食べ残しがある」(p=0.09),

更に「整容動作時に左側に不完全がある」(p=0.07)に関連傾向を認め

た(図Ⅱ-4).塗り絵課題“USN(+)群”では「食事場面で左側の

食べ残しがある」(p=0.01),「整容動作時に左側に不完全がある」(p

=0.03)に有意な関連を認めた(図Ⅱ-5).模写課題“USN(+)群”

に関しては,「食事場面で左側の食べ残しがある」(p=0.01)に有意な

関連が認められ,「整容動作時に左側に不完全がある」(p=0.07)に関

連傾向を認めた(図Ⅱ-6).

* * **

図Ⅱ-3 線分二等分課題と ADL

図Ⅱ-4 線分抹消課題と ADL

* * *

67

9

2

5

2

10

43

2

12

4

8

4

0%

20%

40%

60%

80%

100%

ぶつかる 曲がる ブレーキ 食事 更衣 整容 物品

34

7

3

3

1

10

65

4

10

4

7

3

0%

20%

40%

60%

80%

100%

ぶつかる 曲がる ブレーキ 食事 更衣 整容 物品

* p < 0.1

* * p < 0.05

* p < 0.1

* * p < 0.05

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以上の結果をまとめると,線分二等分課題USN(+)群は,「左側の

ブレーキかけ忘れ」「訓練室や病室での左側の物品に気が付かない」の2

つの症状が,線分抹消課題USN(+)群は,「訓練室や病室での左側の

物品に気が付かない」という症状が観察される傾向が伺われる結果であ

った.また,すべての机上検査課題USN(+)群において,「食事場面

で左側の食べ残しがある」症状が観察されない傾向にあるという結果も

読み取れた.更に,一つの机上検査課題USN(+)群にのみに観察さ

れる特有のUSN症状は認められないという点も明らかとなった.

**

**

図Ⅱ-5 塗り絵課題と ADL

56

10

3

4

2

11

76

5

15

7

10

7

0%

20%

40%

60%

80%

100%

ぶつかる 曲がる ブ レーキ 食事 更衣 整容 物品

* p < 0.1

* * p < 0.05

* p < 0.1

* * p < 0.05 6 7

10

3

5

2

11

6 55

15

6

9

7

0%

20%

40%

60%

80%

100%

ぶつかる 曲がる ブレーキ 食事 更衣 整容 物品

** *

図Ⅱ-6 模写課題と ADL

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5.考察

本研究では,USNのスクリーニングに用いられる机上検査結果とA

DL場面でのUSN症状との関連から,机上検査で測定している能力を

帰納的に導き出し,各机上検査が臨床症状の背景となっている能力障害

の評価指標に成り得るかについて検討を行った.結果,1)線分二等分

課題USN(+)群は「左ブレーキのかけ忘れ」及び「左側物品の気付

かなさ」,線分抹消課題USN(+)群は「左側物品の気付かなさ」が観

察される傾向がある,2)すべての机上検査課題USN(+)群におい

て,「食事場面で左側の食べ残しがある」症状が観察されない傾向にある,

3)各机上検査課題USN(+)群のみに特異的に見られるUSN症状

は認められないことの三点が得られた.

一点目の結果に関して,線分二等分課題と線分抹消課題はUSN検出

の机上検査として頻繁に使用されるものであるが,本質的に異なる認知

処理過程を必要とすることが指摘されている.Ferber ら 1 9) は,抹消課

題は単一刺激内の視覚的探索能力を測定するものであると指摘している.

二等分課題方略に関して石合 2 0 )は,線分の左端探索の欠如による線分イ

メージの欠落が無視を顕在化させるのではないかと述べ,この左端探索

の欠如はUSN患者の注意が右側に向きやすく,左方へ向きにくいこと

の現れであると説明している.これらの先行研究から,線分二等分課題

の課題特性として,例えば右端を見て,左端を確認するという注意の変

換(alteration)を必要とするという特徴を持っていることが考えられ

る.一方,線分抹消課題は空間全体を見渡すといった空間全体への注意

配分(distribution)を測定しているものと考えることができる.この

ような課題間の測定している能力の特性から考えると,線分二等分課題

と関連傾向の伺われた「左ブレーキのかけ忘れ」は,右側のブレーキを

掛けた後,左のブレーキを掛けるという方向特異的な注意の変換ができ

なくなった結果として,「左側物品の気付かなさ」は注意の変換が困難な

ため左側の探索が不十分になった結果生じた症状と考えられる.一方,

線分抹消課題に関連傾向が伺われた「左側物品の気付かなさ」という臨

床症状の背景には空間全体への注意配分の障害が考えられる.

一方,二点目の結果であるが,すべての机上検査USN(+)群は,

「食事場面での左側の食べ残し」が観察されない傾向が伺われた.これ

は,食事場面ではUSN症状が観察されることが少ないことを意味する

結果である.この結果の大きな要因は環境的側面にあると考えられる.

つまり,作業療法士を含め医療従事者が関わる機会の多い食事場面でU

SN症状が見られた場合,対症療法的に注意を促され症状の自覚が促さ

れ,内省による症状の改善が現れた可能性がある.また,能力的側面か

ら予測される要因も考えられる.つまり,食事動作には今回用いた机上

検査では測定できない能力が内包されている可能性である.実際,食事

動作のように視覚-運動的要素の強い机上検査は今回用いられていない.

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三点目の結果は,各机上検査USN(+)群に特異的に見られるAD

L場面でのUSN症状は観察されない点であった.永倉ら 1 6) は,8つの

机上検査と歩行,車椅子,食事という3つのADL項目との関連性を分

析し,自発画課題や手指構成模倣課題,線分抹消課題と歩行,車椅子を

含めた移動動作中のUSN症状に弱い関連を認められるものの,その他,

明確な関連は認められないという結果を報告している.本節では,永倉

らの机上検査結果とADL場面での症状の間に見られる関連性の不明確

さは,報告で分析しているADL項目数の少なさに起因しているのでは

ないかと考えていた.しかし,明確な関連性が認められないという点で

ADL項目数を増やした本節の結果と合致したものであった.

以上を総括すると,既存の施行方法で検査を行った場合,一つの机上

検査で測定している能力が,直接的にADL場面でのUSN症状に結び

つかないと結論付けることができ,既存の検査施行方法で分析された机

上検査結果は能力障害の評価指標としては不十分であるといえる.この

要因として,机上検査方略に必要となる能力やADL動作に内包される

能力が複数存在しているため, 単純に机上検査を課しADL障害と比較

するだけでは,どの能力が対応し,影響を与えているのか明確にならな

いことが推察される.また,多くのUSN患者が複数の机上検査でUS

N症状が認められる点が両者の関係性の分析を更に複雑なものとしてい

る.つまり,関連する能力をより明確にするためには,単一の机上検査

に絞り,更に施行方法をある程度規定する必要があると考えられる.

近年,USNの障害構造を分析する新しい視点として座標系という考

え方が提唱されている.この座標系という視点に基づいて様々な単一の

机上検査を試作した報告が行われている.現在まで,ADL場面でのU

SN症状との関連性については検討されていないが,Chatterjee2 1) はU

SN患者に写真を取らせることで,類似する机上検査結果を示した数名

の患者に異なるタイプのUSN症状を顕在化させることができることを

報告している.彼らの報告は,課題の施行方法を規定している好例とい

える.課題設定を規定するその他の例としては,単一机上検査施行中の

対象者の姿位を変える 2 2)ことで異なるタイプのUSN症状が顕在化でき

ることが報告されている.

そこで,Ⅲ部ではこの座標系という視点から課題設定を規定した条件

下で単一の机上検査を施行し,本研究と同様の分析を試みる.

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Ⅲ部 USN患者に対する机上検査とADL場面におけるUSN症状と

の関連 ~座標系の視点から~

1.はじめに

USNに適用されている座標系というモデルでは,網膜中心座標系 2 3),

頭部中心座標系 2 4),身体中心座標系 2 4, 2 5),肢中心座標系 2 6),物体中心

座標系 2 7 )などいくつかの座標系が挙げられている.網膜中心座標とは網

膜中心窩を基準として広がる二次元座標を想定している.頭部中心座標

は頭部の中心線,身体中心座標は体幹の中心線,肢中心座標は各肢(手

や足)の中心線を基準として左右を作り出す座標を想定している.物体

中心座標は自己の体とは異なる特別な座標系で,現在自己が注意を向け

ている物体の主軸(principal axis)を基準として左右を決定する座標

が想定されている.これらの内,いずれかの座標系に優位にUSNが顕

在化しているという視点からタイプ分類が試みられている。しかし,先

行研究 2 3~ 2 7) ではこれらの座標タイプに対する机上検査上での神経心理

学的考察に留まっており,ADL場面でどのようなUSN症状を呈して

いるのかについては検討がなされていない.また,先行研究で用いられ

ている検査施行方法は,カメラを用いる 2 1),患者を臥位から座位に姿位

変換する 2 2)等,時間的,物理的制約が大きいものと考える.

そこで,本節では簡便な検査である線分二等分課題を用い,座標系と

いう視点からADL場面でのUSN症状との関連性について分析を行う.

そして,座標系という視点に基づいて分析された机上検査が能力障害の

評価指標と成り得るかについて考察する.

2.方法

2-1.対象者

Ⅱ部と同様の対象者の内,再度検査可能であった 18 名を対象とした

(表Ⅱ-1の症例番号 19, 20 は再検査不可能であった).再検査は全対

象者とも 1 ヶ月以内に行った.なお,再検査までの期間で身体状況,A

DL場面での状態などに大きな変化は見られなかった.対象者のプロフ

ィールは図Ⅱ-1に示した通りである.

2-2.手続き

2-2-1.手続き1:「机上検査によるタイプ分類」

対象者の身体正中軸を基軸として左空間,正中,右空間にて線分二等

分課題を提示し,それぞれの位置で5回ずつ施行した.使用した線分二

等分課題は,Ⅱ部で用いたものと同様である.提示する検査用紙の正中

が対象者の身体正中軸と一致する位置を正中(図Ⅲ-1,真ん中),用紙

の右端が身体正中軸に重なる位置を左空間(図Ⅲ-1,左),逆に用紙の

左端が重なる位置を右空間(図Ⅲ-1,右)とした.また,課題施行に

おける提示空間の順序は正中,左空間,右空間の順で統一した.対象者

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にはそれぞれの位置での主観的正中を右上肢にて鉛筆で印してもらい,

客観的中点からの偏位率を算出した.なお,偏位率は右側を正とした.

本節では便宜的に,課題提示位置が左空間,正中,右空間と移動すると

共に偏位率が低下する群(以下,右下がり群),そうでない群(以下,非

右下がり群)とにタイプ分類を行った.

左空間 正中 右空間

2-2-2.手続き2:「タイプによるADL場面におけるUSN症状の

特性」

手続き1で分離したタイプの対象者が示す現在のADL場面における

USN症状の特性をⅡ部と同様の担当作業療法士への質問紙調査を行い

確認した.また,対象者の内数名は著者自身も観察を行い質問紙調査と

の整合性を確認した.具体的な質問項目は以下の四項目である.

a)移動動作:左のものにぶつかる、左へ曲がらないことがある

b)食事動作:膳や皿内の左側を食べ残しがある

c)更衣動作:左側に不完全がある

d)整容動作:左側に不完全がある

それぞれの項目に対して,USN症状の有無,介助状況を確認した.

3.結果

3-1.机上検査によるタイプ分類

線分二等分課題の結果,6 名は右下がり群,12 名は非右下がり群に分

類された.右下がり群は,課題提示空間が左空間,正中,右空間と変化

すると共に偏位率が低下している(図Ⅲ-2).一方,非右下がり群の中

には,課題提示空間が左から右へ移動すると共に,偏位率が増加する者,

不規則な偏位率の推移を示す者が含まれていた(図Ⅲ-3).

図Ⅲ-1 課題提示空間

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0

20

40

60

80

100

左 正中 右

課題提示位置

偏倚率(%

図Ⅲ-2 右下がり群の偏倚率

-100

-50

0

50

100

150

左 正中 右

課題提示位置

偏倚率(%

図Ⅲ-3 非右下がり群の偏倚率

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3-2.タイプによるADL場面におけるUSN症状の特徴

右下がり群の特徴として,移動動作場面でUSN症状が観察される者

が 6 名中 4 名に対して,観察されない者は 0 名,その他の項目としては,

更衣動作時にUSN症状が観察される者が 1 名のみ存在するという結果

であった.一方,非右下がり群では各場面でUSN症状を呈する者が存

在するという結果であった(図Ⅲ-4).

4.考察

4-1.座標系という視点から見た本節の課題

本節では,対象者の体幹正中軸に対して提示空間を変えて線分二等分

課題を施行した.ここでは,この課題の結果に関して,上述したいくつ

かの座標系と関連付けて考察を行う.まず,身体中心座標系にUSNが

優位に顕在化している場合,右側ほど認知処理能力が向上するというU

SNの特性 2 8)が課題遂行に反映され,課題提示空間が右側へ移動するに

伴い,正確な線分の中点が認知され偏位率は低下する(偏位率のグラフ

は右下がりになる)と考えられる.一方,網膜中心座標系や頭部中心座

標系に優位にUSNを示しているのであれば,課題施行中の眼球運動や

頭部運動に左右され,課題提示空間の変化に伴う偏位率の増減は直線的

4

2

0

4

1

5

0

3

0

5

6

8

3

2

3

5

25

0 0

25

3

4

0 %

2 0 %

4 0 %

6 0 %

8 0 %

1 0 0 %

右下がり群

非右下がり群

右下がり群

非右下がり群

右下がり群

非右下がり群

右下がり群

非右下がり群

移動動作 食事動作 更衣動作 整容動作

図Ⅲ-4 両群の ADL 場面での USN 症状

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ではなく不規則な結果を示すと予測される.また,物体中心座標系に優

位にUSNを示しているのであれば,課題提示空間に関係なくほぼ一定

の偏位率を示すと考えられる.この考えと本節のタイプ分類を照らし合

わせると,右下がり群は身体中心座標系にUSNが優位に顕在化してい

るタイプ,非右下がり群はその他の座標系にUSNが優位に顕在化して

いるタイプと考えることが可能である.

4-2.右下がり群のADL場面でのUSN症状の特徴

右下がり群の特徴として、主として移動動作場面に限局してUSN症

状が観察される傾向が明らかとなった.上述したように,右下がり群の

線分二等分課題のパフォーマンス特性は,身体中心座標系で決定される

空間,つまり,体幹正中軸を基準とした空間で空間性の注意バイアスが

働いた結果,課題提示空間が右側にあるほど正確な線分の中点が認知で

きたという点である.一方,身体中心座標系は,空間内での正確な行為

を成すために,空間内にある物体の身体に対する位置情報など,外界か

らの情報を有効な手がかりとして表象化する重要な座標系であるとされ

ている 2 8).また,主観的な知覚空間を決定する座標として身体中心座標

系が主座となると考えられている 2 9 - 3 1).これらの机上検査上のパフォー

マンス特性と身体中心座標系という座標表象の役割から,本節で抽出さ

れた右下がり群は,刻々と変化する空間と自己身体との相対的位置関係

を知覚する必要のある移動動作時に,身体中心座標表象の障害が強く反

映されたものと考えられる.先行研究 2 1~ 2 7) で考察されている机上のパ

フォーマンス特性とADL場面でのパフォーマンス特性との間に論理的

整合性が得られた点で,新しい知見である.

以上から,USNの背景にある特定の能力障害が移動動作に及ぼす影

響を,測定条件を規定した線分二等分課題で明らかにできる可能性が推

察され,座標系という視点で分析された机上検査が評価指標と成る可能

性が確認できたと考えている.

4-3.非右下がり群のADL場面でのUSN症状の特徴

非右下がり群では,移動動作時以外にもUSN症状が観察される者が

存在しており,移動動作で生じるUSN症状には右下がり群の特性とし

て評価された能力以外にも異なる要因が関与している事が考えられる結

果であった.また,移動動作以外のADL場面でのUSN症状には,非

右下がり群が特性として持つ能力障害が深く関与していることが考えら

れるが,詳細な能力に関しては不明な点が多く残された結果となった.

しかし,これまで用いてきた机上検査は“紙とペン”を用いた評価方

法であり,ADL場面で観察される症状は,例えば,服を着たり,歩い

たり,箸を持って食事をするなど,身体を実際に動かした結果に見られ

るものである.机上検査を静的なものと捉えるならば,ADL動作は動

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的なものである.この“静”から“動”を評価するという方法論が,机

上検査からADL場面での症状を顕在化させている能力障害を推定する

ことの限界となっている主要因ではないかと考えられる.ADL動作は

“動”という側面を持っている点,臨床作業療法の評価から治療へのプ

ロセスの特徴として,患者の病態を運動反応として捉え生活障害と関連

付けるという治療戦略を取る点,これらを踏まえると実際の運動反応と

いう評価指標を用いることで,机上検査を用いた評価だけでは推定でき

ない能力障害を評価できるのではないかと考えられる.

Ⅳ部では,座標系という視点から運動反応という評価指標を用いた評

価環境を試作し、その環境で用いる機器としての信頼性と妥当性につい

て検討を行う.

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Ⅳ部 視覚刺激に対する反応特性の分析~空間座標系理論に基づいて~

1.はじめに

Ⅲ部で挙げられた個々の座標系について,Karnath5 )はその関連性に注

目した.種々の感覚モダリティ間の統合によって,網膜中心座標,頭部

中心座標,身体中心座標と正確な座標系が形成されていくと主張し,こ

の座標変換過 程におけ る感覚間

統合の重要性 を説いて いる(図

Ⅳ-1).この座標変換のための

感覚間統合が 行われて いる脳部

位として頭頂 葉が推定 されてい

る 3 2 - 3 4). Karnath は頭頂葉の損

傷により感覚 間統合不 全が起こ

り,この座標 変換過程 が機能障

害に陥ったこ とがUS N症状を

呈する一つの原因となっていると

考えている.また,神経生理学的

研究 3 2 - 3 4),健常人を対象とした心

理学的実験 3 1, 3 5, 3 6),USN患者を対象とした神経心理学的研究 3 7 - 3 9 )な

ど彼のモデルを支持する報告は多く,特にUSNに対する感覚刺激を用

いた治療的根拠として用いられるようになってきている.

本節では,Karnath5 ) の示した座標系理論の視点に 立って運動反応を

評価指標とできる評価環境を試作した.本節の目的は,試作した評価環

境に用いられる機器としての信頼性と妥当性を検討することとする.

2.方法

2-1.機器構成

視覚刺激は NEC MATE PC-MA10TEZE9(以下,PC1)からカノープス製

PowerPresenter 1024 を介して,検査者が任意のタイミングで OLYMPUS

製 Eye-Trek FMD-250W(以下,FMD)に呈示される.頭部反応を計

測する機器として共和電業製一軸加速度センサーAS- 1GB2 台を用い,水

平軸,矢状軸方向の頭部の動きを検出するものとした.水平軸用のセン

サーは右方向に正の値, 矢状軸用のセンサーでは前方向に正の値を出力

する.各加速度センサー内のひずみ板にかかる電圧変化から得られたア

ナログデータは,それぞれ Sensor Interface PCD-300A を介して, デ

ジタルデータへ変換され,NEC VALUESTAR NX VC500J1FD1(以下,PC2)

に取り込まれる.また,Sensor Interface PCD- 300A は PCD-300A 制御

ソフトにより制御されており,取り込みデータのフィルタリングが行わ

れる.二つのセンサーから得られるそれぞれのデータは,同期され PC2

にリアルタイムでグラフ表示されるよう設計した(図Ⅳ-2).尚,分析

は表計算ソフト Exel を用い,呈示刺激作成は Microsoft 製 DirectX ,

図Ⅳ-1 Karnath の座標変換過程

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Visual Basic .NET を用いて行った.

2-2.本実験における機器選択の妥当性

視覚刺激呈示機器FMDの視野範囲と装着による頭部運動への影響,

呈示される視覚刺激の時間的・空間的同期性,頭部反応を計測に関わる

加速度センサー, センサー・インターフェイスとその制御ソフト(PCD

-300A)の精度について,仕様書から本実験機器としての妥当性につい

て検討する.

2-3.測定機器の信頼性

測定機器の測定精度の信頼性を検討するために角度目盛り付きの三脚

にセンサーを乗せ,水準器で水平方向,垂直方向 0°を確認した後,セ

ンサー感度方向±0~50°まで 10°毎に傾け, 各位置で 5 秒間保持した

状態におけるセンサー実測値の平均値を 3 回計測した.また,傾斜角度

とセンサー実測値との関連性を求めた.尚,この予備実験では,サンプ

リング周波数 100Hz,センサー圧検知感度±1000μεとして行った.本

評価機器に用いるセンサーは二台である.双方のセンサーにこの方法で

検討を行った.

図Ⅳ-2 機器構成

PC1 PC2

Power Presenter FMD

加速度センサー

PCD-300A

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3.結果

3-1.本実験における機器選択の妥当性

3-1-1.FMD

FMDの仕様を以下にまとめる.視野範囲としては,画角水平 37.5°,

垂直 21.7°(感覚的には 2m遠方に 62 型のワイド画面を見ている状況,

体感視野は水平方向約 120°,上下方向約 70°に相当する)である.鮮

明度に関しては,水平リフレッシュレート 60Hz で,0.7 インチ Wide TFT

液晶パネルに 24 万画素で表示できる.PC1との時間的同期性に関して

は,誤差範囲 1ms 以下に収まっている.FMDの重量は 約 95g で あ る.

3-1-2.呈示視覚刺激

本評価機器で呈示される視覚刺激はすべて Windows 上で稼動するプロ

グラミングソフト(Microsoft 製 DirectX + Visual Basic . NET)によ

り制御されている.

3-1-3.頭部反応測定機器

頭部反応測定機器に求められる精度について,仕様書から時間分解能

と量的分解能の二点についてまとめる.PCD-300Aの時間分解能は 0.2

~1000ms(サンプリング周波数1Hz~ 5000Hz)の範囲で設定可能であ

る.加速度センサーの仕様として±9.8m/s 2 の定格容量を有している.

また,PCD-300Aが 0.002~0.098m/s 2 の分解能で測定可能である.

3-2.測定機器の信頼性

図Ⅳ-3,図Ⅳ-4は,それぞれセンサー1,センサー2の結果を示

している.横軸の正は時計回りへ回転させたことを意味し,負は反時計

回りへ回転させたことを意味する.縦軸は各角度で静止した際のセンサ

ー出力値を示している.各角度における 3 回の平均値をプロットし,回

帰式を求めた.各角度で 5 秒間静止した際に得られるデータ 500 個の標

準誤差はセンサー1,2共に最大でも 0.7 であった.また,-50°~+

50°までの測定データ 3 回の標準誤差はセンサー1では最大でも 5.8,

センサー2では最大 6.3 であった.また,センサー出力値と傾斜角度の

関係を示す回帰式を求めると,センサー1,センサー2それぞれy=17.5

x+3.5、y=19.4x+9.5 という結果であった.

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4.考察

4-1.本実験における機器選択の妥当性と測定機器の信頼性

本実験における機器選択の妥当性に関して,FMD,呈示視覚刺激,

頭部反応測定機器の三点について述べる.

FMDに関しては,実際視野にできるだけ近い広さと鮮明度が提供で

きるかという点,それから頭部反応の阻害因子とならないかという二点

について考察する必要がある.前者の視野範囲に関しては,画角水平 37.

5°,垂直 21.7°(感覚的には 2m遠方に 62 型のワイド画面を見ている

状況,体感視野は水平方向約 120°,上下方向約 70°に相当する)で,

y = 17.546x + 3.4818

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50

図Ⅳ-3 センサー1の 10°ごとの平均値(3 試行)

センサー実測値(με)

傾斜角度(+;右傾斜)

y = 19.354x + 9.4636

-1000

-800

-600

-400

-200

0

200

400

600

800

1000

-50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50

センサー実測値(με)

傾斜角度(+;右傾斜)

図Ⅳ-4 センサー2の 10°ごとの平均値(3 試行)

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人間の有効視野が約 10°であることからも,視覚刺激提示には十分な視

野の広さが確保できていると考えられる.鮮明度に関しては,水平リフ

レッシュレート 60Hz で,0.7 インチ Wide TFT 液晶パネルに 24 万画素

で表示できることから,実際視野の鮮明度からは劣るものの,本評価機

器で目的としている傾きを視覚的に捉えるには十分な鮮明度である.尚,

PC1 との時間的同期性に関しては,誤差範囲 1ms 以下に収まっており十

分な時間同期性は確保されている.二点目に関しては,FMDの重量約

95gであることから頭部運動の大きな阻害要因となるとは考えがたい.

また,本節で用いているFMDと類似する機器を用いた研究もいくつか

報告されており,重量による問題は指摘されていない 4 0, 4 1 ).以上より、

FMDの実験機器としての妥当性は確保されていると考えられる.

呈示視覚刺激に関しては,使用する機器環境からすべての被験者に時

空間的に同一の刺激が呈示できるといえる.

頭部反応測定機器に求められる精度について,二点についてまとめる.

一つ目は刺激変化に対する頭部反応を時間的な意味において正確に記録

できるかという点である.ヒトの反応は,時間的に早いとされる反射レ

ベルの反応で何らかの刺激が入力されてから少なくとも 100ms 以上の時

間を要することが知られている.PCD-300Aの時間分解能から精度とし

ては測定に十分耐えうるものである.二つ目は,表出される頭部反応を

量的な意味において正確に記録できるかという点である. 加速度センサ

ー,PCD- 300Aの仕様からわずかな頭部反応も検知可能であるといえる.

以上より,本実験で用いる頭部反応測定機器が有する精度で,著者らが

求める頭部反応を十分測定可能であるといえる.

尚,測定データに関しては,図Ⅳ-3,4より高い信頼性が得られて

いるといえる.

4-2.本評価環境の理論的モデル

ここでは,本節で試作した評価環境と Karnath5)の空間座標系理論との

理論的整合性について述べる.上述した通り,Karnath は空間内にある

物体,人など視覚情報として入力される物を,網膜,頭部,体幹それぞ

れに対する位置として変換していく必要があることを指摘し,その過程

における感覚間統合の重要性を説いた(図Ⅳ-1).本節で試作した評価

環境は,この理論に従ったものである.試作した評価環境のモデルは,

視覚刺激(図Ⅳ-1では外界からの視覚情報))の入力に対して,座標変

換過程を経て,正確な頭部反応(図では適切な行為)が出力されること

を想定している.具体的には以下の情報処理過程を経る.まず,視覚刺

激が入力される.座標系では網膜中心座標系の段階である.次に,頭部

を傾ける準備段階として,現在の眼球位置,頸部の位置を脳内で算出し

なければならない.これには,頸部,眼筋の固有感覚,前庭感覚が統合

された情報が必要である.そして,最初の過程の視覚情報とこれらの感

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覚情報(固有感覚,前庭感覚)を統合し,どれぐらい頭部を傾ける必要

があるかを脳内で算出しなければならない.最後に,最終産物として頭

部反応が出力される.このように,本評価環境は Karnath の言う座標変

換過程における感覚間統合が必要であることを示しており,理論的妥当

性は確保されていると考えている.

4-3. 今後の課題

本節の分析より,試作した評価環境に用いる機器としての信頼性と妥

当性は確認された.今後は,この環境での健常者,及び患者を対象とし

たデータを収集し,評価環境としての信頼性と妥当性,更に有効性を検

討する必要がある.

Ⅴ部 結語

本研究では, 対症療法的アプローチにしか結びつかないUSNへの評

価戦略を問題提議し,症状の背景にある能力障害を評価しうる評価指標

の模索とその評価指標を用いた評価環境の試作検討を行った.

Ⅱ部では, 臨床でUSN検出に用いられる机上検査とADL場面での

USN症状との関連性から, 各机上検査が臨床症状の背景となっている

能力障害の何らかの評価指標に成り得るかについて検討した. 結果とし

て,両者に明確な関連性が認められず,既存の方法で施行した机上検査

結果は能力障害の評価指標として不十分であることが推察された. そし

て, 一つの机上検査に限定し, 検査条件の規定を行うことで机上検査の

測定している能力の明確化が図れるのではないかと考えた.

Ⅲ部では, 一つの机上検査課題として線分二等分課題を用いて, 条件

規定を明確に行うために,座標系という視点に基づいて同様の分析を試

みた. 結果として, 理論的に説明ができる関連性が見られ, 座標系とい

う視点の有効性が導かれた. それと同時に,机上検査のみではADL場

面での症状を説明することの限界性も伺われた. これらの有効性と限界

性を示唆する結果から,座標系という視点に基づいた上で,新しい評価

指標として運動反応を用いて分析するという発想に至った.

Ⅳ部では, Karnath の空間座標系理論を適用し, 運動反応を指標とした

評価環境を試作し,その環境における使用機器としての信頼性と妥当性

を確認した.今後は,この評価環境での健常者及び患者を対象としたデ

ータを収集し,評価環境としての信頼性と妥当性,有効性をADL場面

での症状との比較を行いながら検討する必要がある.

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Ⅵ部 参考文献

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