知覚(perception)知覚(perception) 1 本章の目標...

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知覚 (Y. I.) 2013/3/16 1 (Perception) 1 本章の目標 ① 知覚の一般的特性を理解する。 ② 「図と地」および奥行き知覚を規定して いる要因について理解する。 ☆ Key Words 2 重要な用語の定義 感覚 (sensation)は、 例) 音刺激に対する 「聞こえる、聞こえない」の反応 3 感覚の種類 五感: 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、 皮膚感覚(温、冷、触、痛) 運動感覚(筋、腱、関節) 平衡感覚(空間に対する身体の位置、運動) 内臓感覚(空腹感、渇き、尿意、吐き気など) 各感覚には、刺激を受容する独自の 受容器が存在している。 4 知覚(perception)とは、 知覚=複数の感覚+過去経験+・・ 例) 音刺激に対する 「どんな音か、何の音か、誰の声か、 何を意味する音か」などの反応 5 認知(cognition)とは、 知覚、学習、記憶、思考などを含んだ人 間の知的作用一般のこと 知覚よりも高次な反応 課題の複雑性による比較 6

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Page 1: 知覚(Perception)知覚(Perception) 1 本章の目標 ①知覚の一般的特性を理解する。②「図と地」および奥行き知覚を規定して いる要因について理解する。

知覚 (Y. I.) 2013/3/16

1

知 覚 (Perception)

1

☆ 本章の目標

① 知覚の一般的特性を理解する。

② 「図と地」および奥行き知覚を規定している要因について理解する。

☆ Key Words

2

☆ 重要な用語の定義

① 感覚 (sensation)は、

例) 音刺激に対する

「聞こえる、聞こえない」の反応

3

☆ 感覚の種類

• 五感: 視覚、聴覚、嗅覚、味覚、

皮膚感覚(温、冷、触、痛)

• 運動感覚(筋、腱、関節)

• 平衡感覚(空間に対する身体の位置、運動)

• 内臓感覚(空腹感、渇き、尿意、吐き気など)

各感覚には、刺激を受容する独自の

受容器が存在している。

4

② 知覚(perception)とは、

• 知覚=複数の感覚+過去経験+・・

• 例) 音刺激に対する

「どんな音か、何の音か、誰の声か、

何を意味する音か」などの反応

5

③ 認知(cognition)とは、

知覚、学習、記憶、思考などを含んだ人間の知的作用一般のこと

知覚よりも高次な反応

• 課題の複雑性による比較

6

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知覚 (Y. I.) 2013/3/16

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(1) 知覚の一般的特性

① 対象の外在化

• 知覚は、生活体の内的な働きであるにもかかわらず、

例)机上の鉛筆、犬の声

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② 知覚のズレ

• 錯覚:

• 錯覚の種類

触覚的錯覚(アリストテレスの錯覚)

運動感覚の錯覚

(シャルパンティエの錯覚)

対比錯覚 (冷水、水、湯)

錯視

8

• 錯視の種類a. 幾何学的錯視

b. 反転錯視

(奥行反転図形、図地反転図形、

多義図形)

c. 月の錯視

d. 運動錯視(滝錯視、ホイール錯視)

e. 自動運動

f. 仮現運動(踏切の警告灯、

動くネオンサイン、映画)

9

• 幾何学的錯視の種類

方向の錯視 (Poggendorff図形)

分割距離錯視 (Helmholtzの正方形)

対比錯視 (同心円図形)

長さの錯視 (Müller‐Lyer図形)

Müller‐Lyer図形の錯視はどのような要因の影響を受けているのでしょうか?

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【実験】 Müller‐Lyer錯視図形

• 目 的

Müller‐Lyer錯視図形における斜線の 角度が錯視量に及ぼす影響を明らかに する。

• 方 法

刺激図形 主線10.0㎝、斜線3.0㎝

実験条件 斜線の角度 30°60°120°

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• 手続き

① 錯視図形を読書距離に持ち、上昇系列、下降系列(好きな順序で)の両方における錯視量を測定する。

② できるだけナイーブな気持ちで外向図形をスライドさせる。

③ 外向図形をスライドさせすぎた場合は、出発点に戻って初めからやり直す。

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④ 内向図形と外向図形の主線の長さが等しい箇所まで調節できたら、図形を裏返して錯視量(小数第1位を四捨五入)を読み取る。

⑤ 錯視量(mm単位)を記録表に記入する。

錯視量が「-」(マイナス)の場合は、マイナス記号を付ける。

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• なぜ、Müller‐Lyer錯視が生じるのか?

2次元の網膜像から3次元空間を作り出すために、脳が補正しているからである。この補正はわれわれが意識的にコントロールできるものではない。

内向図形 外向図形

(手前) (奥)14

• Müller‐Lyer錯視図形の2つの主線の長

さは同じであり、網膜には同じ長さとして投影されている。

• しかし、内向図形は手前にあるような「気がし」、外向図形は奥にあるような「気がする」。

• (網膜上で)同じ長さであり、かつ遠くにある感じがするならば、

それは、手前にある図形

よりも長いに違いない。

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• 「 」

遠くのものをあまり小さくなく知覚する。

外向図形を過大視

(相対的に、内向図形を過小視)

<実験>

・斜線の代わりに円にしたら?

・主線を取ったら?

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• 主線に沿って視線が動く。

• 内向図形の場合は、斜線で視線が反対方向に戻る → 過小視

• 外向図形の場合は、斜線でさらに主線から離れるように視線が動く → 過大視

<実験>

瞬間視で図形を提示して、視線の動きを抑えてみたら?

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• 視覚的鋭敏さ(visual acuity)

視野内の詳細部分を識別する能力

• 周辺視では鋭敏さが低下し、近接する点同士が近づくように知覚される。

• 主線中央を凝視した場合、斜線部分は周辺視となり、外向図形では主線が伸びるように、内向図形では短くなるように知覚される。

<実験> 斜線の長さを変えてみれば?

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• 主線の長さに対する斜線の長さの比が錯視量を規定している。

• 外向図形では斜線部分が付加されて主線の過大視が起こり、内向図形の場合は、斜線部分が引かれて過小視が起こる。

<実験>

内向図形の片側だけに斜線をつけた図形と、両極の相互に反対側のみに斜線をつけた図形の錯視量を比較する。

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g.  誘導運動(雲間の月)

h.  自己運動知覚(vection)

すぐ隣の電車を見ていたら、停車中の自

分の乗っている電車が突然音もなく動き出したと感じる。

実際には隣の電車が発車した。

意識以下レベルにおける情報処理に基づいた脳の判断

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① ビデオカメラを固定してゆっくり走っている車を撮影した動画

② 静止している車をビデオカメラをもってゆっくり歩きながら撮影した動画

網膜にはほとんど同じ刺激として映る

脳は、限られた情報から、車が動いているのか、カメラが動いているのかを判断している。しかし、答えは一義的に決まらない。

21

• 知覚-様々な感覚情報から現実世界がどのようになっているかを推定すること

• われわれの住んでいる世界がすべて正確に知覚されているわけではない。

• 錯覚-正常な知覚処理が行われている中で、その限界が反映されたもの

「だまされる脳」 ブルーバックス ¥940

22

23

• 知覚の状況-数学において未知数が3つあるのに連立方程式を2つしか立てられず答えが一義的に決まらない状況に相当

• 足りない方程式(情報)を追加して答えを1つに決めている。

でもその答えが間違っていることがある。

それが錯覚

表現を変えれば、「 」

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自己運動知覚に戻って…

• 脳の判断プロセス

「現実世界において、あるものは静止している確率が高い。」

「通常、静止しているあるものが、今、網膜上で動いている。」

「自分自身が動いているからだ。」

その「あるもの」って何?

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• 自己運動知覚の規定因

a. 視野において を占める部分

(視角にして20度以上)

b. 視野の 部分

c. 視野の にある部分(遠景)

例えば、遠くの山や高層ビル群

全視野を覆う巨大スクリーンに投影された映像内でこれらの要因を操作すれば、観客は自分が動いていると知覚しやすい (VR)

26

• 北岡明佳の錯視のページhttp://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/

• 錯視の広場http://psywww.human.metro‐

u.ac.jp/sakusi/index.htm

• NTTコミュニケーション科学基礎研究所人間情報研究部

http://www.brl.ntt.co.jp/cs/human/index‐j.html

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☆ ものを見る仕組み

• 光 → 水晶体 →

網膜 桿体細胞- →

錐体細胞-

視神経(約100万本=100万画素)

RGBという枠組みで色の世界を見ている。

(約700万色を知覚可能)

解像度はあまり高くない(ギザギザ)。

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29

¥1,470

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33 34

• 時間解像度もあまり高くない。

細切れに外界を捉えている。→

脳が補正して滑らかに見えている。

(われわれの視覚自体がパラパラ漫画)

• 物体の認識順序

(色を認識して約70ミリ秒後)

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• 網膜像を補正して外界を見ている。

盲点(網膜における視神経の出口)

盲点に映った像は見えていない。

網膜上の毛細血管のあるところも見えていない。

• 錐体細胞(色の知覚)は網膜の周辺部では0になってしまう。

→ 視野の中心部では色が見えているが、周辺部は白黒画像

→ 脳が無意識のうちに色を補正している。

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③ 知覚の恒常性

われわれはできるだけ周囲の世界が変化しないように知覚している。

・予測可能性高まる。

・自分の取るべき行動を決定しやすい。

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④ 知覚の統合性(全体性)

刺激は、点、線、角、明暗、色相によって構成され、それらが感覚的に別々に処理されたとしても、われわれは

例) 図Ⅰ-3

A:六角形(平面図形)

B:Y字図形

D:A+B→直方体(立体図形)

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⑤ 知覚の選択性

A. 感覚レベル

われわれはすべての刺激を知覚できるわけではない。

• : 各感覚受容器に合った刺激

• 適刺激の中でも限定された刺激だけに反応できる。

例) 可視光線 (380‐760nm)

可聴周波数(20‐20,000Hz)

• 適度な強度と持続時間をもった刺激でなければならない。

41

• 刺激閾:

サブリミナル刺激-刺激閾以下の刺激

刺激頂:感覚を生じさせる刺激の上限

感覚受容器は多様で広範な刺激のごく限られた部分にだけ選択的に反応している。

cf. サブリミナル効果

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B. 知覚・認知レベル

知覚・認知レベルにおいても、自分にとって重要な意味のある刺激だけを選択して反応している。

例) 群衆の中の友人

カクテル・パーティ効果

(知覚における能動的な反応)

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⑥ 知覚の基準の変化

刺激閾、刺激頂の値は状況によって変化する。

(adaptation)

持続的な刺激の提示によって刺激閾が上昇して感覚機能の応答性が低下し、

視覚的順応(明順応、暗順応*)

聴覚的順応(テレビ視聴)

温刺激に対する順応(入浴)

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cf.  habituation)

同じ刺激を繰り返し与えられることによって、初にその刺激に対して生じていた反応が減少すること。

(例)

突然の大きな音 → 驚く(無条件反応)

その後、何回かその音が繰り返される。

だんだん驚かなくなる(馴化)

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• 刺激が刺激閾と刺激頂の範囲にあっても必ずしも知覚が生じるとは限らない。

気温、腕時計などの刺激は、刺激閾以下なのか?

知覚が生じるためには不均等な刺激布置が必要である。

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☆ われわれが知覚できる刺激

• であること

• 刺激閾と刺激頂の範囲内にあるであること

• 一定時間以上 していること

• していること

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⑦ 知覚に及ぼす欲求、構えの効果

• 個人にとって価値あるもの、欲求の対象となるものは、 (刺激の認知に必要な

小の提示時間)が低く、不快なものは

【実験】 Bruner & Goodman(1947)

10歳の子どもに硬貨の大きさ判断をさせたところ、過大視することが見出された。

富裕な家庭の子どもよりも貧しい家庭の子どもの方が過大視量が大きかった。

49 50

• 文脈効果(構えの影響)

☆感覚遮断実験 Heron(1957)

与えられる刺激が極端に少なくなると、思考力の低下、不安定な精神状態、幻覚などを引き起こす。

われわれには適度な刺激が必要である。51

(2) 「かたち」の成立

52

多くの刺激のうち、われわれはどのような部分を形として知覚しているのだろうか?

① 図と地の分化図(figure):形として浮き出して見える

部分地(ground):背景となる均一の部分

例) ルビンの盃(図地反転図形)

• 図と地の違い

a. 図は をもつが、地はもたない。

b. 図と地の領域を区切る は、

図に属して図の輪郭線となる。

( )

c. 図は地より浮き出て見え、地は図

の背後まで広がっているように見え

る。

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<ゲシュタルト心理学>

• 要素主義を廃して を重視

• ゲシュタルト性質

a. 個々の要素の総和以上に新たに加わった性質( )

b. その構成要素をすべて取り替えても同じ性質を保つ( )

例) 赤色の三角形→緑色の三角形

メロディーの移調54

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☆ ゲシュタルトの法則Ⅰ(図と地の分化)

Wertheimer(1923)

どのような部分が図になりやすいか?

a. 閉合の要因

閉じている領域>開いている領域

b. 狭小の要因 狭い領域>広い領域

55

c. 空間方向の要因

水平垂直に広がる領域>斜め方向

下から上に伸びる領域>上→下

d. 内側の要因

内側にあって囲まれている領域 >

外側にあって囲んでいる領域

e. 対称形の要因

対称形の領域>非対称の領域

56

◎ 図の成立は、 によって支えられている。

地が均一でなくなると、図を知覚しづらくなる。

57

☆ ゲシュタルトの法則Ⅱ(図の群化)

複数の図はどのような場合にまとまっているように見えるのだろうか?

a. の要因

時間的、空間的間隔の近いもの同士は1つのまとまりを作る。

b. の要因

類似した性質をもつもの同士は、1つのまとまりを作る。

>58

c. の要因

同じように変化するもの同士は1つのまとまりを作る。

d. の要因

閉合の傾向をもつもの同士は、1つのまとまりを作る。

59 60

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知覚 (Y. I.) 2013/3/16

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e.  の要因

多くの連続の可能性がある場合、できる限りよい連続をするようにまとまる。

、均等性、緊密性、規則性、

、閉合性など

f. の要因

できるだけ単純性、均等性、緊密性、対称性、閉合性などの性質をもつ形が成立するようにまとまる。

61

群化の要因が複数存在して競合している場合

視野が全体として も秩序あるまとまり(単純性、統一性)を形成しようとする傾向があること。

62

(3) 奥行き知覚

• 3次元空間→網膜(2次元)→3次元知覚

• 2次元に変換された情報から、どのようにしてわれわれは3次元空間(立体感)を知覚できるのであろうか?

• 脳は以下の複数の手掛かりを統合して遠近感を判断している。

信頼できる手掛かりをより重視している。

63 64「だまされる脳」より

① 眼筋

• (約2mまで)

水晶体の厚みを変える毛様筋の緊張、弛緩に関する情報が手がかりとされる。

• (約20mまで)

刺激が眼の近くになるにしたがい両眼は 内側に回転するが、この回転情報が手がかりとされる。

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② 網膜

1.

両眼が約6cm離れている。

両眼の網膜の対応部にある像がわずかながらズレていること。

そのズレのある2つの画像を視覚中枢で融合して立体感が生じる。

67 68

2.  単眼

2-1 絵画的手掛かり

• 対象の大きさ

よく知っている対象の場合、網膜像が

小さくなると、その対象が遠くにあると知覚される。

• 線遠近法

遠方に伸びている線は、一点に収斂して見える。

69 70

Stafford & Webb (2005)

71 72

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• 対象の重なり

重なり合っている刺激の場合、欠けて

見える方が、他方の後方にあるように見える。

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• 大気遠近法(対象の明瞭さ)

対象の見え方が明瞭でない。

→ 遠くにあると知覚する。

進出色(赤、黄):実際よりも近くに見える。

後退色(青、紫):遠くに見える。

74

• 対象に付随する影

下側に影ができる対象→

上側に影ができる対象→

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人の顔の場合は、顔がへこんで見えないように処理している

• 錯視

こんな例が…

77 78

「影」の処理ではこんな錯視も…

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Adelson (1993)79

•床に落ちた物体の影

物体とその影との位置関係から物体の高さを知覚する。

80

81

• 高さ(上下関係)

ある枠内での垂直次元における位置

82

•肌理の粗い対象 →近い

肌理の細かい対象→遠い

83

2-2

観察者が動いている場合の手がかり

• 観察者が一点を凝視しながら移動

・凝視点よりも遠くにある対象:

観察者の移動方向と同じ方向に移動しているように見える。

・凝視点よりも前方にある対象:

に移動しているように見える。

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• どの対象も凝視せずに移動

全体として観察者の移動方向と逆方向に対象が移動しているように見える。

前方の対象は遠方の対象よりも多く動いているように見える。☆ JPG

例) アニメーションにおいて奥行き感

を出す手法

85

• しかし、遠近感を判断する際に

対象のある部分を「よい」と判断してしまうと、全体が「よい」と判断してしまう。

Escherの版画 (DVD参照)

86

87 88

• しかし、全体をつぶさに見ると、物理的にあり得ない図形になっている。

• おもしろみを感じる。

• 不思議感を刺激される。

Escherはそうしたわれわれの反応を利用して精密な版画を作製した。

89

☆ 立体写真の原理

• 立体視: 写真や絵などが奥行き感を伴って見える、立体的に見えるということ。

• 写真や絵は平面体なので、奥行きを感じることはない。

あらかじめ を計算した2枚の写真、絵を用意し、それぞれ左目と右目で見るようにする。

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• ランダムドットステレオグラム

左目に入るべき画像と右目に入るべき画像をドット(点の集まり)で表現して、1枚の絵の中に描いたもの。

交差視線法、平行視線法

• CGステレオグラム

ドットではなく、われわれになじみのある図形を配列して、立体的な図形が見えるように作成してあるもの。

91

<参考HP>

• ステレオ写真館 kobatetu

http://www8.plala.or.jp/kobatetu/index.html

• 中原デザインオフィス 3Dの原理

http://www2.aimnet.ne.jp/nakahara/3dart/3genri.html

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☆ 乳児の奥行き知覚

• の実験

Gibson & Walk (1960)ら

• 2ヶ月を過ぎる頃から奥行き知覚が可能になる。

• 6~7ヶ月頃から深い断崖を怖いと感じているようである。

93 94

知覚のまとめ

• 物理的な光にもともと「色」はなく、音波に「音」はない。

• われわれが知覚している景色や音楽、触感は、物理的世界の忠実な反映ではなく、

である。

• そのため、時に錯覚が生じる。

• しかし、こうした脳の特性を逆用して、ヴァーチャル・リアリティ(VR)を構成することも可能になる(CGステレオグラムの立体感)

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この観点を進めていくと…

• 技術

96

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• コンピュータを介して脳を直接コントロールすることも可能

映画 “The Matrix”

・画像情報を脳に送って画像を知覚させる

・脳からの情報を取り出し、機械を動かす

・記憶情報を書き換える

・感情(例えば、うつ的状態)を変容させる

• 絵空事ではなく、近未来のできごと

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この次は「学習」の話です...

☆ 時間が15分以上残っていれば、もう少し授業を続けることにします。

☆ 授業の後、「質問・意見カード」を提出したい人は教壇へどうぞ…。

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