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世界の作業療法の動向
吉川ひろみ広島県立保健福祉大学
作業療法の歴史BC4c-3c(ギリシャ) ヒポクラテス:患者の回復のために作
業を行わせた。AD1c(ギリシャ) ガレノス「仕事は天然の医師なり」18c後半(フランス) ピネル:道徳療法の一貫として,
精神病治療のために作業を使った。18c後半(アメリカ) ラッシュ:作業療法をアメリカに紹介19c初 (イギリス) テューク:精神科において仕事療法
(work therapy)と道徳療法を強調1916(日本) 呉秀三:日本に独の作業療法を紹介1917(アメリカ) バートン:occupational therapyと
名付け,組織を設立1946(日本) 水野祥太郎:身体障害者公共職業
補導所で,作業による評価,指導1952 WFOT設立(10カ国)
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作業療法の歴史(日本)1963 作業療法士養成校設立1965 「理学療法士及び作業療法士法」制定1966 第1回国家試験。日本OT士協会設立1972 日本OT士協会がWFOTに加盟1974 身体障害作業療法と精神障害作業療法に診
療報酬点数1979 文部省管轄による養成課程開始1981 広島県OT士会設立1992 四年制大学における養成課程開始1996 作業療法学のための修士課程設置1998 作業療法学のための博士課程設置
世界作業療法士連盟加盟国(加盟順)カナダ,デンマーク,インド,イスラエル,ニュージーランド,南アフリカ,オーストラリア,スウェーデン,イギリス,アメリカ,ドイツ,ノルウェー,オランダ,スイス,フランス,ポルトガル,ベルギー,フィリピン,ベネズエラ,アルゼンチン,アイルランド,ジンバブエ,フィンランド,日本,スペイン,コロンビア,アイスランド,ケニア,オーストリア,イタリア,チリ,香港,台湾,ルクセンブルク,マレーシア,バミューダ,ギリシャ,ヨルダン,ナイジェリア,パキスタン,シンガポール,スリランカ,ブラジル,マルタ,キプロス,ウガンダ,韓国,ラトビア,マウリティウス,インドネシア,メキシコ,バングラディシュ,チェコ,ナンビア,スロベニア,タイ,タンザニア(57カ国)
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作業療法の定義世界作業療法士連盟,2004
• OTは、作業を通して健康と安寧を促進することに関心をもつ専門職である。OTの基本目標は、人々が日常の活動に参加することができるようにすることである。作業療法士は、参加するための能力を強化したり、参加をよりうまくサポートするような環境を整備したりするようなことを、人々が行えるようにすることによって成果を出す。
• 作業療法士は、個人や集団、あるいは健康状態によって心身機能や構造の障害をもっていて参加の際に障壁を経験している人々の集団と協働して取り組むための技能や知識を備えるよう広い教育を受けている。(つづく)
• 作業療法士は、参加は物理的問題や社会の態度や制度といった環境によって、促進されることもあるし制約されることもあると思っている。それゆえOT実践は、参加を広げていくための環境の側面を変えることに向けられるかもしれない。
• OTは広く様々な状況で実践される。そこには、病院、保健センター、家庭、職場、学校、更生施設、高齢者居住施設が含まれる。クライエントは治療過程に積極的にかかわる。そして、OTの成果は、多様であり、クライエントが決め、参加という点や参加がもたらす満足という点において測定される。
作業療法の定義世界作業療法士連盟,2004つづき
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作業療法の定義世界作業療法士連盟,1993「身体又は精神に機能障害をもち,能力障害,社会的不利を経験している人々に関わる健康の一領域である。専門職として資格をもつ作業療法士は,患者の回復や生活機能を最大限に使っていくために活動をデザインすることについて患者にかかわる。このような人々を援助する目的は彼らの仕事・社会的・個人的・家庭的環境が求めるものを充足し,なおかつ充実感をもって生活に参加するためである。」
作業療法の定義
カナダ作業療法士協会,1997「作業をできるようにすることについて,クライアントと協働する健康の専門職である。クライアントとは個人,集団,機関,組織である。この専門職は19世紀の精神病院や作業所での職業的仕事,作業療法士が個人や組織や地域と共に作業をできるようにする手段として作業を使ったところから始まった。」
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作業療法の定義スウェーデン作業療法士協会,2002「作業療法の対象は,人が何かをすることに関係することである。それは社会的・文化的に定義された活動の文脈で表れてくるものである。作業療法の対象は,個人や環境や活動における資源が,生活環境での参加にどのように関連し,これをどのように促進するかについての知識と科学である。この知識と科学には,日々の生活の満足を高める目的をもって予防的及び治療的方法を用いていくことを含む。」
ヘルスプロモーションカナダOT協会の声明書(抜粋)
• ヘルスプロモーションは,人々が自分の健康をコントロールしたり,改善することができるようになるプロセス
• 作業療法のクライアント中心の実践が,ヘルスプロモーションを進めるために十分なサポートと貢献をするという立場をとる。ヘルスプロモーションにおいてクライアントという言葉は,個人,家族,地域,広い意味での住民を含む。
• 自分でできるようにしたり,仲介したり,本人の代わりに主張することは,健康上プラスの成果を導くヘルスプロモーションのプロセスにおける手段である
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世界の動向(OT教育最低基準,WFOT,2002)
• 健康Health– 早期発見,治療 → ヘルスプロモーション,自己管理
– おまかせ診療 → インフォームド・コンセント– 障害,ICIDH → 生活機能,ICF(活動・参加)
• 福祉Welfare– 保護,供給,措置 → エンパワメント,自己決定– 個人・家族の問題 → 社会の問題
• 教育Education– 学校,知識伝達 → 自学,生涯学習– 講義 → 問題解決型学習
哲学(OT教育最低基準,WFOT,2002)
? 作業の性質と意味 Occupation: Nature & Meaning
? 意味と目的があり,時間と場所と地位を占める
? 人間の作業的性質 Human: Occupational Nature
? 為すことdoingにより存在するbeing
? 人々の作業経験 People Experience: through Occupation
? 主観的経験,人生における経験
? 文化の理解 Cultural Understandings
– 文化的価値観の影響,規範
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卒業生の要件(OT教育最低基準,WFOT,2002)
• 人-作業-環境,作業と健康の関係の理解P-O-E relationship & relationship of O & H
• 人間関係:治療的,専門職としてTherapeutic & Professional Relationships
• 作業療法プロセス An OT Process
• リーズニングと行動:専門職としてProfessional Reasoning & Behavior
• 実践の背景 Context of practice
作業の定義
カナダOT協会,1997,アメリカOT協会,2002作業とは,「日々生活で行われ,名付けられている一群の活動や課題で,個人と文化によりその価値と意味が付与されたものをいう。作業とは,自分の身の回りのことを自分で行うセルフケア,生活を楽しむレジャー,社会的,経済的活動に貢献する生産活動など,人が行うすべての営みのことである。」
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作業の定義
作業科学(Clark他,1991)
作業とは,「文化的個人的に意味をもつ活動の一群で,文化の語彙の中で名付けられ,人間が行うことである。(Chunks of culturally and personally meaningful activity in which humans engage that can be named in the lexicon of the culture)」
「花見」という作業
• 春に,屋外で,桜を見る• グループで行くことが多い• おでん,焼き鳥,ビールがあることが多い• 歌ったり,ゲームをすることがある• 酔っ払いに会うことが多い• 二次会に行く人もいる• 場所取りのための早退を奨励する職場もある• 興奮している人も,リラックスしている人もいる• だいたい楽しい気分になる
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運動会に参加する
つなひき
ダンスかけっこリレー短距離走徒競走
応援
借り物競争
二人三脚
お猿のかごや
パン食い競争
景品係お弁当
整列体勢作り綱を引く終了
綱をしっかり持つ力いっぱい引っ張る足を踏ん張る腰を落とす
作業のレベル
役割Role
課題Task活動
Activity能力
Ability
整列する体勢を作る綱を引く…
運動会の選手
つなひき
綱をしっかり持つ引っ張る…
ROM,筋力持久力,心肺機能注意の持続力…
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人と環境と作業 (P-E-Oモデル)
人
作業環境作業遂行
人を変える と 環境を変える(治療モデル) (代償モデル)
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卒業生の要件(OT教育最低基準,WFOT,2002)
• 人-作業-環境,作業と健康の関係の理解– 医学モデル → 作業モデル
• 人間関係:治療的,専門職として– 提供者と受け手 → パートナー
• 作業療法プロセス– 直線的 → 相互作用的,流動的
• リーズニングと行動:専門職として– 科学的 → 叙述的,相互作用的,等
• 実践の背景– サービス提供施設 → 地域