新生児から乳児期の先天股脱の治療体系(rb法)新生児から乳児期の先天股脱の治療体系(rb法)...
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新生児から乳児期の先天股脱の治療体系(RB 法)
1.脱臼の程度と RB の適応
山室 a値と、骨頭壊死発生頻度および整復率(鈴木茂夫 京大)
4 ヶ月単純 X線像上、山室 aが 4mm 未満の高位脱臼では、整復率が低いだけではなく、骨頭壊死も高頻度に発生す
る。また、骨端核が未出現では骨頭壊死が起こりやすい。一方、Graf 法では、Type IIc(一部)D、III、が適応。
TypeIV は over head traction を考える。ただし、4 ヶ月未満であっても開排位で整復されるものは、直ちに RB の
治療対象になる。このとき von Rosen 装具は、採型や体へのあて方など、結構難しい。小さい RB を作って装着した
方が、使い易い。
2.新生児から乳児期の股脱の治療体系(Oxford, MKD Benson)
3.RB 治療の流れ
(1)赤ちゃんの体格に合わせた RB の採型。
胸周り、肩から腋窩までの長さ、下腿の周径、下腿の長さなど。義肢・装具業者に依頼。
次回出来上がり時の必要物品
前開きの下着(半袖)、靴下(無ければ、ギプスの下巻きのストッキ・ネット)
(2)RB の出来上がりと装着
下着の上から装着します。
(3)RB 装着時の股関節肢位 整復には、股関節が屈曲して、骨頭が下に下がることが必要なので、骨軸が 90°屈曲位置をとらせる。外見上は、
大腿部が 100~110 程度屈曲が必要となる。 前のベルトをしめると、股関節の屈曲が強まる。一方、後ろのベルトをしめると、股関節の外転が強まる。関節
造影などの時の整復を見ると、後方のリンブスを外転を強めて乗り越えるのに比べ、リンブスの下方から回り込む
(まず屈曲で骨頭が下がり、ついで外転で骨頭を前方に持ってくる)のは比較的容易である。 RB では、股関節の屈曲が重要であり、また 終的にはす
こしの外転が必要である。外転だけを強めるのは、リンブ
スに骨頭を強く押し付け、骨頭壊死を起こす。 屈曲位は 大伸展でも屈曲 100 度以下までのびないよ
うにつける。目安としては、量大伸展で鼠径部の溝の上端
と膝の下縁がだいたい同じ高さに来る。
RB による股脱の整復率は、80%程度ですので、1~2 週間以内に整復されない場合は、3 週間くらいフリーとし
て、再度装着する。股関節の屈曲が 130 度以上あるいは外転 70 度以上はいけない。後方のベルトをきつく締めて常
に闘排をとらせていると、骨頭壊死が高率に発生する。装着中は、過度の開排位を避けるため、両膝~足の下にタ
オルを置く。整復される時は、(疼痛があり)赤ちゃんは機嫌が悪かったり、泣いたりすることもある。泣き続ける
場合は、抱っこする。
(4)RBのチェックポイント 肩ベルトが左右平行になっている。 胸ベルトが下がっておらず、腋窩から1~1.5 横指離れた位を通る。胸ベルトのきつさは、間に指が4本入る程度。 下腿の上のベルト(これが重要)が下がっておらず、膝の直下にあること。 ベルトのきつさは、間に指が1本入る程度。 下腿の長軸方向のベルトが内側と外側で平行にはしっている。 足底のヘルトが踵から離れて前足部を通過している。脱げにくいこと。
(5)装着直後の触診と超音波診断 脱臼では、装着直後では開排制限が存在し、骨軸が後方に向いている。超音波診断(前方法)では、骨頭が描出
されず、はるか後方に metaphysis が見えるだけである。 (6)翌日の診察のポイント 整復されていると、少し軟部組織が腫れていて光沢
があります。開排制限もとれていることが多いです。
まず触れて大転子と坐骨結節の距離が左右対称かど
うかもかならす見る。 もっとも確実な方法は、前方法で、骨頭が前方に整
復されていることがわかる。よく見ると、臼蓋内側に
軟部組織が介在して、骨頭が健側に比べ、少し外側化
している。 (7)整復されない場合 整復されない場合、前と後ろのベルトを1目盛りずつ短くする。2日後に診察してまだ整復されなければ、今度
は前だけ1目盛り短くする。RB で整復しなくても over head traction があるので無理はしないこと! 2週間たって整復されなければ、3~4 週間完全にはずし、再度装着する。それでも 2 週間たって整復されなけれ
ば、over head traction の適応になる。
(8)整復された場合
1 週間後に、診察する。このとき、触診だけでなく、超音波撮影にて骨頭が整復位にあることを画像で確認する。
亜脱臼なら整復後 1 週間、脱臼では整復後 2 週間から入浴を許可する。そのときは、股関節を完全にフリーにする
のではなく、屈曲 90 度、外転 60 度くらいを保つように指導する。健側はフリーとする。(ただし、両側性の股脱で
は、難しい)。次の診察は、2 週間後(装着後合計 3 週間後)とし、やはり触診・超音波診断を行う。 この後は、4 週間後(装着後合計 7 週後)に診察する。骨頭の求心性を確認し、体格の増加にあわせて、前後の
目盛りを1つずつ長くする。 次は、4 週後(装着後合計 11 週後)に診察する。内容は、前回と同じ。亜脱臼なら、入浴前後 3 時間をフリーと
する。その 2 週間後は夜間のみ装着とし、4 週後(装着後合計 15 週後)に診察。股関節求心性が良ければ完全にフ
リーとする。脱臼なら、2 週間遅らせる。完全除去前に、X 線で骨頭求心性、臼蓋の形態の改善を確認する。 (9)典型的な RB 法による治療経過
4 ヶ月女、Shenton 線乱れ、山室 b 11mm、臼蓋形態不良 Echo で Graf 分類 D
RB 装着 1W 後の Echo(前方法)
左股関節は、前方にあり、
骨頭と臼蓋との間には
Echo で白く写る介在物あり。
RB 装着 3W 後の Echo(前方法)
骨頭と臼蓋との間の白い
介在物は縮小している。
RB 装着 7W 後の Echo(前方法)
骨頭と臼蓋の間の介在物は
写ってない。
8 ヶ月時点の単純 X線像 骨頭の外側化と臼蓋縁形態は改善。左右の骨端核の大きさに差を認める。
(10)家族への指導の細かい点 ・入浴について
整復後、2 週間したら、患肢を屈曲・外転位にして、入浴を許可します。それまでは、頭、首、おしり、陰部などお湯にガーゼを浸
して丹念に拭く。おしりは、一人の大人が赤ちゃんを水平に持ち上げて、洗面器のお湯におしりをぎりぎりに近づけて洗うなどする。
・下着について
常に下着は RB のベルトの下に、直接体に着させます。下着は必ず前開きのもの(かぶりものではなく)を準備。まずは一方の手を
通して、下着を丸めてから、体を持ち上げて背中のすべてのベルトの下をくぐらせる。それからもう片方の手を通して、胸のボタンを
する。
・服について
暑い季節なら、フレアー状の(扇型の)1あるいは2サイズ上の大きめのワンピース。両脚を開いているので、脚の動きを邪魔しな
いようなおおきめで、ラッパ型の洋服が必要。素材はどれでも構わないが、ナイロンは RB のバンドでこすれて傷むことがある。必ず、
前側にボタンあるいはファスナーのついた前開きのもの(かぶりものはだめ)。
寒い季節なら、ゆったりした大きめのベビードレス型のパジャマ。前側と両脚の内側にボタンがついていて、できれば足首のゴムの
きつくないものを準備。少々丈が長くても、くれぐれも脚の開きと動きの妨げにならない大きさのものを準備する。
・靴下について
RB の膝のすぐ下のバンドにより膝の後ろの皮膚がまけやすい。また足の周辺も皮膚がまけやすいので、膝と足は常に何かで肌を包む
必要がある。暑い季節なら、レースの靴下を切って、膝と足のベルトが当たる部分のみの皮膚を、切った靴下で包むと良い。寒い季節
なら、リブ編みではなく綿のハイソックスの足の指先の部分だけを切り落としたものを準備し、膝から足まで肌を覆ってあげると良い。
足の指は常に出す。
靴下を履き替える場合は、踵のベルトが外れると股関節が伸展してしまうので注意する。足の表面の布のベルトだけをはずす。足に
靴下をかぶせてから、すねとベルトの間のすき間から、ずるずると引っ張り上げて膝までもっていく。厚手のものや網目のものは、た
だ伸びるだけで良くない。
・おむつ
脚を開いたままなので、1あるいは2サイズ上の紙おむつを準備して。おむつカバーは脚の動きを妨げるので、使わない。従って、
布製のおむつは使用しない。
・抱っこの仕方
RB をつけ始めて落ち着くまでの1週間くらいは、股の間に片方の手を入れておしりを支え、もう片方の手で頭と首を支えて、水平に
抱っこするのが良い。その後は、着替えの時も含めて、赤ちゃんを縦にして、お母さんの骨盤のでている部分に赤ちゃんをのせる感じ
で抱っこする。そうすると、赤ちゃんは常に股関節を開いた状態で、かつ自由に動かせる。慣れれば片手で抱っこができ、もう片方の
手で着替えもできるようになる。
・ベビーカーについて
必ずAタイプのものを使って下さい。Bタイプでは幅が狭くて、脚が閉じてしまいます。
(前田慎吾、藤井玄二)