突固めによる土の締固め試験 - toyo...

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57 5 突固めによる土の締固め試験 5.1 はじめに 2 2.1 たように, った すうちに く,安 した きる.こ して いた が, 態に まる ある.こ ように まり る, びに が,ここ する めによる ある.こ ,フィルダム, ( ) して われる.ここ によって めるこ し, めるこ をいう.しかし める えるエネルギー により影 け,そ される ってくる.これ した った める によって,そ (ドロドロ,サラサラ 態, した ) が変 する ある.これら るために, において い,そ 映させるこ われる.

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第 5章

突固めによる土の締固め試験

5.1 はじめに

第 2章 2.1で述べたように,砂や土で作った団子は失敗を繰り返すうちに

固く,安定したものができる.この時の水分量は,団子の材料として用いた

砂や土が,最適な状態に締固まる時の量なのである.このように土の締まり

具合を知る,何気ない遊びに似たものが,ここで説明する突固めによる締固

め試験である.この試験は,河川や海岸の堤防,高速道路,フィルダム,空

港などの土構造物の造成を行う上で,土の工学的性質 (強度,支持力,遮水

性など)の改善を目的として行われる.ここで土の締固めとは,試料を機械

的な方法によって締固めることで,間隙中の空気を追い出し,土の密度を高

めることをいう.しかし土の状態は土の種類や粒度,含水比,締固める際に

与えるエネルギーなどにより影響を受け,その結果,改良される工学的性質

も異なってくる.これは前述した砂や土で作った団子が水分量や固める強さ

によって,その状態 (ドロドロ,サラサラな状態,丈夫で安定した状態)が変

化する事と同じである.これら土の締固め特性を知るために,室内において

試験を行い,その結果を現場での施工に反映させることが行われる.

58 第 5章 突固めによる土の締固め試験

5.2 プロクターの締固めの考え方

突固めによる土の締固め試験は,1933年にプロクター (Proctor)が提案し

た衝撃的な荷重による締固めの考え方に基づき,日本工業規格 (JIS A 1210)

に定められている.プロクターが提案した突固めによる土の締固め試験は,

試料表面からランマー (質量が 2.5 kgと 4.5 kgの二種類ある)を規定の高さ

(2.5 kgのランマーの場合 30 cm,4.5 kgの場合 45 cm)まで持ち上げ,そ

こから自由落下させて締固める試験である.5.3においても説明するが,試

験方法は 5つあり,ランマー質量,試料を入れるモールドの容積によって,

突固めの層数や各層の突固め回数は異なる.

実際にこの試験の結果例を,図 5.1に示した締固め曲線で説明しよう.こ

の曲線は締固め曲線と呼ばれ,縦軸に乾燥密度 ρd,横軸に含水比 w をグラ

フにプロットしたものである.図中の点線と矢印で示してあるように,曲線

の頂点である乾燥密度を最大乾燥密度 ρd max といい,この時の含水比を最

適含水比 wopt という.この時土は,最も丈夫で安定した状態に締固まって

いることになる.したがって,砂や土で作った丈夫な団子は,締固め曲線の

頂点に位置する土の状態と理解できよう.

図 5.1 締固め曲線

5.3 試験方法の種類 59

図 5.1にはもう一つ曲線が併記してある.この曲線はゼロ空気間隙曲線と

いい,締固めた土中の間隙に空気がまったくない理想的な状態である.つま

り空気間隙率 va = 0 %,飽和度 Sr = 100 %の状態である.

5.3 試験方法の種類

試験方法は表 5.1のようにモールドの大きさ,ランマー質量の試験方法よ

り 5種類ある.ここでいう最大粒径とは,ふるい分けにおいて試料がすべて

通過する標準網ふるいの最小呼び寸法のことをいう.

表 5.1 試験方法の種類

5.4 試料の準備方法と使用方法

試料の準備方法は乾燥法と湿潤法の 2種類,また使用方法は繰返し法と非

繰返し法の 2種類ある.表 5.2に試料の準備方法と使用方法の 3種類の組合

せを示した.乾燥法は,試験に用いる試料を一度自然乾燥させてから,徐々

に含水比を増やして (水を加えていく) 行う方法である.湿潤法は自然含水

比を中心として,乾燥あるいは水を加えることにより,試料を所要の含水比

に調整する方法である.

また使用方法の繰返し法とは,同じ試料の含水比を変えて繰返し使用する

方法である.非繰返し法は,常に新しい試料の含水比を変えて使用する方法

である.

次に表 5.1と表 5.2をまとめ,さらに準備する試料の最少必要量を付け加

60 第 5章 突固めによる土の締固め試験

表 5.2 試料の準備方法と使用方法

えたものを表 5.3 に示した.この表 5.3 をもとに試料を準備する.ここで,

計算書のデータシートを見れば試験方法を記入する欄がある.この試験方法

は記号で記入する.例えば突固め方法が呼び名 B で,試料の準備方法なら

びに使用方法が,乾燥法,繰返し法なら「B-a」と記入すればよい.また含

水比 w0,含水比 w1 を記入する欄があるが,この含水比 w0 とは,ふるい分

けを行う前の含水比のことで,含水比 w1 は,試料の準備方法として乾燥法

を用いた場合での,乾燥処理後のふるいを通過した試料の含水比であり,こ

れをそれぞれ記入すればよい.土質名称の欄には,試料が「礫まじり砂」な

ら工学的分類の記号を用いて「S-G」と記載する.ここで「S」は砂,「−(ハ

イフン)」はまじりを意味し,「G」は礫である.また,締固め特性のデータ

シートから,突固めによる土の締固め試験を行う上で必要な他の試験が分か

る.それは土粒子の密度試験 (第 1章)である.したがって土粒子の密度試

験は予め行っておく必要がある.

表 5.3 突固め方法と種類

試料を準備する際に注意すべき事柄を以下の 1⃝~ 5⃝に示した.1⃝ 乾燥法

試料を急いで乾燥させる場合は恒温乾燥炉を使用してもよい.その際の乾

燥温度は 50◦C以下とする.

5.5 試験器具 61

2⃝ 湿潤法

土が非常に湿っており,許容最大粒径に対応するふるいを通過させること

ができない場合,粗く大きな粒子を手で取り除く程度でよい.

3⃝ 繰返し法による場合

一回目の突固めを行う任意の含水比に調整する.

4⃝ 非繰返し法による場合

予想される最適含水比をはさみ,6~8種類の含水比の種類を準備する.

5⃝ 水となじむのに時間を要する土は含水比が変化しないように,気密な容

器に入れて 12時間以上静置した後に突固めを行う.

5.5 試験器具

試験に必要とする器具を以下の (1)~(8) に示した.図 5.2 にはその代表

とする器具を示した.

図 5.2 試験に必要な器具

(1)モールド        (5)はかり:容器,試料の質量を計測する

(2)ランマー        (6)含水比測定用器具:第 2章 1.3参照

(3)試料押出し機      (7)混合用具:バット,練りごて,霧吹き

(4)試験用網ふるい     (8)直ナイフ

62 第 5章 突固めによる土の締固め試験

5.6 試験方法

試験の流れを次の 1⃝~11⃝に示した.また図 5.3 には,その主な流れを示

した.

1⃝ モールドと底板の質量m1(g)をはかる.→ (モールド+底板) = m1

2⃝ 試料をモールドに入れる.突固め後の各層の厚さがほとんど等しくなる

ようにする.

3⃝ 突固め開始.このときランマーはガイドストッパーで決められた高さま

で持ち上げ,ランマー下端 (ガイド下端) は試料表面に接触させた状態で自

由落下させる.

4⃝ 試料を均等に突固めるため,ランマーの落下位置を移動させながら突固

める.

5⃝ 一層目の突固め終了後,一層目と二層目を密着させるために直ナイフ

などで試料表面に刻み線を入れる.この作業は各層の突固めが終了したら

行う.

6⃝ 最後の層の突固めは,突固め後の試料の上面がモールド上面より少し高

めになるように行う.

7⃝ 突固め終了後,カラーを取り外し,モールド上面の余分な試料を直ナイ

フで平らにする.

8⃝ モールドや底板などに付着している試料をすべて取り除き質量 m2(g)

をはかる.

9⃝ 試料をモールドから取り出す.取り出した試料の上部,下部から試料を

採取し含水比を測定する.

10⃝ 手順 1⃝~ 9⃝までが,ある含水比状態においての一通りの作業である.この後,5.3で説明した試料の準備方法によってそれぞれ含水比を変えて,試

料を作成する.

11⃝ 2⃝~10⃝までの操作を繰返し行う.含水比は少なくても 6~8段階に変えて突固めを行い,質量 m2 がピーク

を迎えたことを確認すること.

5.6 試験方法 63

64 第 5章 突固めによる土の締固め試験

図 5.3 試験の流れ

5.7 結果の整理

1⃝ はじめに,各試料状態 (各含水比) ごとに式 (5.1) から湿潤密度 ρt

(g/cm3),測定のデータシートの特記事項欄に示された式 (5.2)から乾燥密

度 ρd (g/cm3)を求める.図 5.4にはその考え方を示した.

5.7 結果の整理 65

図 5.4 湿潤密度の求め方・考え方

ρt =m2 − m1

V(5.1)

ρd =ρt

1 +w

100

(5.2)

ここに,m1:モールドの質量 (底板を含む) (g),m2:モールド試料の質量

(g),V:モールドの容積 (cm3),w:試料の含水比 (%)である.

2⃝ 5.1 で説明したように含水比 w を横軸に,乾燥密度 ρd を縦軸に取り,

測定値をプロットして滑らかな曲線で結び,締固め曲線を描く.

3⃝ 2⃝で描いた締固め曲線のピーク値から最適含水比 wopt と最大乾燥密度

ρd max を求める.

4⃝ 締固めのデータシートの特記事項欄に示された式 (5.3)からゼロ空気間

隙曲線を求める.この曲線を図 5.2に示したように締固め曲線に併記する.

ρdsat =ρw

ρw

ρs+

w

100

(5.3)

ここで,ρw:水の密度 (g/cm3),ρs:土粒子の密度 (g/cm3)である.

また,各含水比段階における締固まった土の状態を理解するために,締固

めた土の飽和度が一定となる ρd と w の関係(飽和度一定曲線),空気間隙

率 va が一定となる ρd と wの関係(空気間隙率一定曲線)を締固め曲線に併

記する.飽和度一定曲線,空気間隙率一定曲線はそれぞれ式 (5.4),式 (5.5)

66 第 5章 突固めによる土の締固め試験

で求めることができる.

ρd =ρw

ρw

ρs+

w

Sr

(5.4)

ρd =ρw

(1 − va

100

)ρw

ρs+

w

100

(5.5)

締固め曲線 ~ポイント~

図 5.5に示したように,これまで,締固め曲線,ゼロ空気間隙曲線,飽和

度一定曲線,空気間隙率一定曲線をそれぞれ求めグラフに併記してきた.こ

こでは復習を兼ねて,締固め曲線を描く際のポイント・目安を次の 1⃝と 2⃝で簡単に説明する.

1⃝ 締固め曲線はゼロ空気間隙曲線が 45~60◦ になるように座標の目盛り

をとるようにする.

2⃝ 一つの目安として,締固め曲線のピークの値は,飽和度 Sr が 85~90

%,空気間隙率 va が 5~10 %で生じることが多いと言われている.

図 5.5 締固め曲線

5.8 関連知識と注意事項 67

5.8 関連知識と注意事項

ここでは得られた実験結果が,どのように現場で考えられ評価されるかを

以下の 1⃝~ 5⃝において,応用を兼ねて説明する.

1⃝ 締固めエネルギー (仕事量)Ec (kJ/m3)

図 5.6に模式的に示したように,同じ土質材料でも締固めエネルギーが大

きくなるほど,締固め曲線は左上に位置して最適含水比は低く,最大乾燥

密度は高くなる傾向にある.この締固めエネルギーは次の式 (5.6)で定義さ

れる.

図 5.6 締固めエネルギー (仕事量)による締固め曲線の変化

Ec =WR · H · NB · NL

V(5.6)

ここに,WR:ランマーの重量 (kN),H:ランマーの落下高さ (m),NB:1

層あたりの突固め回数,NL:突固め層数,V:モールドの容積 (m3)である.

締固めエネルギーは次の二つに大別される.一つは「Standard Proctor」

と呼ばれるもので表 5.3 において,呼び名 A と B の締固めエネルギー

68 第 5章 突固めによる土の締固め試験

Ec ; 550 kJ/m3 のもの,もう一方は「Modified Proctor」と呼ばれるも

ので,表 5.3の呼び名 C,D,Eの締固めエネルギー Ec ; 2500 kJ/m3 で

ある.

いずれの締固め方法を用いるかは構造物の種類や重要度によって決定

する.道路施工における管理基準として利用する場合,路体・路床では

Ec ; 550 kJ/ m3,また路盤では Ec ; 2500 kJ/m3 が一般的に用いられる.

締固めエネルギーは,土より高い安定性を期待して,十分な締固めが要求さ

れるほど大きい締固めエネルギーで行うことが基本的な考え方である.

2⃝ 異なる土の種類とその締固め特性

土の種類によって締固め特性は異なってくる.図 5.7,図 5.8にそれぞれ

土の粒径加積曲線とその締固め曲線を示した.図からわかるように,締固め

曲線は土の種類によって次のような特性を持つ.

1. 粒径幅の広い砂や礫の粗粒度では最大乾燥密度は高く,最適含水比は

低くなり,締固め曲線は鋭く図の左上に位置する.

2. 粘土やシルトの細粒分を多く含む土ほど最大乾燥密度は低く,最適含

水比は高くなり,締固め曲線は平坦に図の右下に位置する.

3. 最大乾燥密度が低くなれば,最適含水比は高くなる傾向にある.

図 5.7 異なる土質材料の粒径加積曲線

5.8 関連知識と注意事項 69

図 5.8 異なる土質材料の種類の締固め曲線

3⃝ 土の締固め特性と強度および透水性の関係

締固め曲線と,それに対応させた締固め土の含水比による強度 (一軸圧縮

強度など)の変化を模式的に図 5.9に示した.締固め土の強度は,最適含水

比よりも少し低いところで生じることがわかる.また図 5.10には締固め曲

線,締固めた土の透水係数と締固め時の含水比との関係を模式的に示した.

締固め土の透水係数は,最適含水比より少し大きなところで最小になること

がわかる.当然ながら,土の透水性は,間隙部分の体積が減少すれば低下す

る.したがって透水係数は,乾燥密度が大きいほど小さい.

実際の現場 (盛土など) では,降雨により施工時には存在していた土粒子

間力がなくなり,土粒子は移動し易くなる.そのため間隙比の大きな土では

沈下 (コラープス現象),強度の低下を引き起こすことがある.盛土の強度を

確保するため施工時には,最適含水比より少し大きい含水比で施工される.

4⃝ 密度比による施工管理

現場(盛土など)での締固め度は,その土に対応する室内突固め試験の最

大乾燥密度 ρd max と,盛土の乾燥密度 ρdf との比によって表す.この比を

締固め度(Dc 値:密度管理)と定義し,この値によって締固めの程度が確

70 第 5章 突固めによる土の締固め試験

図 5.9 締固め曲線と強度の関係 図 5.10 締固め曲線と透水係数の関係

認される.締固め度 Dc は式 (5.7)で求めることができる.

Dc =ρdf

ρd max× 100 (5.7)

このDc によって締固めの施工管理が行われ,例えば道路工事ではA-b法

(表 5.3参照)で求められる最大乾燥密度 ρd max に対して盛土では Dc = 85

~95 %,路床ではDc = 90~95 %などの値が満足できるように締固め度の

管理が行われる.

近年,宅地造成の土工工事などでは,施工全体の品質を迅速に把握するた

めにラジオアイソトープ (RI)法による測定方法が用いられている.この方

法は 1分程度の計測で密度と含水比を知ることができるため,様々な土工現

場で広く用いられている.

5⃝ 空気間隙率または飽和度による施工管理

密度の管理が困難な土として 1⃝ 自然含水比が最適含水比より著しく高く,

施工含水比の調整が困難な土, 2⃝ 試料の乾燥処理の程度によって,最大乾

5.8 関連知識と注意事項 71

燥密度,最適含水比が変化する土, 3⃝ 各種の土が混入してその混合割合が

変化し,基準となる最大乾燥密度を決定しにくい土, 4⃝ 泥岩・凝灰岩などの

スレーキング(塊状の物質が乾燥,吸水を繰り返すことによって,細かくバ

ラバラに崩壊する現象)による沈下が問題となる脆弱岩などにおいては,空

気間隙率あるいは飽和度による規定が適用される.

高含水比粘性土については,締固め規定としては空気間隙率 2 %以上,10

%以下あるいは飽和度 85 %以上,95 %以下を用いる.施工含水比は自然

含水比としている.スレーキング性の脆弱岩では,空気間隙率は 15 %以下

が望ましいとされている.

注意事項

突固めによる土の締固め試験を行う際,注意すべき事を次の 1⃝~ 6⃝に示した.

1⃝ 試料を準備する際,試料によっては水がなじむのに要する時間が異なっ

てくる.長時間要する土では,水を加え,混ぜた後,密閉状態で 12時間以

上静置する.繰返し法では試料の状態を変えないよう,その日のうちに試験

を行ったほうがよい.

2⃝ 突固めを行う時は,ランマーのエネルギーが吸収されないように,必ず

堅固で平らな床の上で行う.

3⃝ ランマーを落下させる際,ランマーがモールドの縁に当たらないように

注意する.

4⃝ 5.5 試験方法の操作 7⃝においてできた試料表面のへこみは,削り取った試料を使い埋める.

5⃝ 5.5 試験方法の操作 9⃝において,上部試料と下部試料の二つの含水比が得られる.ここでは,その二つの含水比を平均したものを,この試料の含水

比とする.

6⃝ 突き固めが終了し,カラーを外すとき,試料表面がカラーと共にえぐれ

て取れてしまうことがある.この対策方法としては,カラー内側に付着して

いる試料を直ナイフ等で緩くし,その後,試料表面を押え,カラーを回転さ

せながら外すとよい.

72 第 5章 突固めによる土の締固め試験

図 5.11 記入例 5-1 突固めによる土の締固め試験(測定)

5.8 関連知識と注意事項 73

図 5.12 記入例 5-2 突固めによる土の締固め試験(締固め特性)