co2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英)...

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平成 29 年度環境省環境再生・資源循環局委託 平成 29 年度 CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 (多原料バイオコークスによる一般廃棄物処理施設 での CO2 排出量 25%削減の長期実証) 平成 30 3 一般財団法人石炭エネルギーセンター

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平成 29 年度環境省環境再生・資源循環局委託

平成 29 年度

CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

(多原料バイオコークスによる一般廃棄物処理施設

での CO2 排出量 25%削減の長期実証)

平成 30 年 3 月

一般財団法人石炭エネルギーセンター

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目次

0. サマリー(和・英) ......................................................................................................... 1

1. 業務概要 ......................................................................................................................... 14

(1) 業務目的 ............................................................................................................. 14

(2) 対象技術 ............................................................................................................. 14

(3) 事業実施主体、実施体制と役割分担 .................................................................. 23

(4) 技術開発[実証研究]の目標設定 ...................................................................... 25

(5) 業務の実施場所................................................................................................... 27

(6) 事業実施スケジュール(平成 29 年度分) ......................................................... 28

(7) 業務履行期間 ...................................................................................................... 28

2. 委託業務実施状況 ........................................................................................................... 29

(1) 原料バイオマスの収集と実施 ............................................................................. 29

(2) 多原料 BIC 製造条件確立 .................................................................................... 32

(3) 多原料 BIC 連続製造技術確立 ............................................................................ 62

(4) 一般廃棄物処理施設での CO2 排出量 25%削減の長期実証技術 ......................... 72

(5) 多原料 BIC の適用先拡大検討 ............................................................................ 82

(6) 二酸化炭素削減量の検証方法 ........................................................................... 102

(7) 事業性・採算性の検証及び普及見通しの検討 .................................................. 107

(8) 技術開発検討会の開催 ...................................................................................... 117

3. まとめ .......................................................................................................................... 139

4. データ .......................................................................................................................... 140

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0. サマリー(和・英)

平成 29 年度 CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

(多原料バイオコークスによる一般廃棄物処理施設での CO2 排出量

25%削減の長期実証)

1. はじめに

本業務は、高い環境性と灰の減容化を達成できる技術として普及しているガ

ス化溶融炉方式一般廃棄物処理施設で定常的に消費する石炭コークスをカー

ボンニュートラルな新燃料として期待されているバイオコークス(以下 BIC)

で一部代替して、CO2 排出量 25%削減を実現する技術を長期実証することを目

的とする。

また、廃棄物系バイオマスや未利用バイオマスから成る多様な混合原料から

安価な多原料 BIC 製造技術の開発を行い、事業化時に 2 万円/トンで約 100km

離れた利用先に供給可能にする。

平成 29 年度は、横型製造設備を用いて 5 種類の原料混合パターンの多原料

BIC を約 340 トン製造した。また、縦型製造設備で得た BIC 製造時間短縮化に

関する基礎データを横型製造設備の運転条件に適用し、短期間の連続製造によ

り、製造時間 25%短縮条件の操業に目処がついた。更に、原料の前処理機器類

の改造、新規導入等により、作業負荷の低減や省エネ化を推進した。

製造した多原料 BIC243 トンを一般廃棄物処理施設のガス化溶融炉に、70 ト

ンを産業用キュポラにそれぞれ供給し、多原料 BIC の石炭コークスの代替効果

及び多原料 BIC を投入したことによる施設の運転への影響を確認し、メリット、

デメリットをそれぞれ整理した。

2. 原料バイオマスの収集の実施

横手市周辺地域にて、廃棄物系バイオマスや未利用バイオマスとして、籾殻、

稲藁、糠、バーク、廃菌床、製材屑及び剪定枝など 7 種類を対象とし、原料バ

イオマスの収集計画及び多原料 BIC 製造計画から必要量をそれぞれ収集・運

搬した。これまでの収集実績から横手市周辺地域内で安価で大量収集が見込め

る籾殻、バーク及び廃菌床を主要原料とし、その他原料は主要原料の収集量が

不足した際に補填するために収集した。

各バイオマス原料は、ウェットベースで籾殻約 270 トン、廃菌床約 70 トン、

バーク約 170 トンを収集した。また、その他原料として、稲藁、製材屑、剪定

枝、糠等を計約 10 トン収集した。平成 29 年度の収集実績より、収集・積載、

輸送及び人件費等を考慮した収集コストを確認したところ、ドライベースで、

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籾殻 3,000 円/トン、廃菌床 6,000 円/トン、バーク 3,400 円/トン、稲藁 55,000

円/トン、製材くず 13,000 円/トン及び糠 47,000 円/トンとなった。

3. 多原料 BIC 製造条件確立

BIC 縦型製造装置を用いて多原料 BIC の試作を実施し、試作した BIC の性

状(見掛密度および冷・熱間圧縮強度)を測定・評価した。また、燃焼シミュ

レーション及びシャフト型大型燃焼炉による燃焼試験を行い、BIC の燃焼特性

を検証した。

(1)縦型製造設備による多原料 BIC 製造試験

多原料 BIC の製造時間短縮化の基礎データ収集を目的として、多原料 BIC

No.1(籾殻 70%、バーク 25%、廃菌床 5%)について、加熱時間を従来の加

熱時間である約 1,600 秒よりも短い約 1,100 秒に設定し、加熱温度を加熱工

程の前半を高温、後半に低音と勾配をつけて試作した。また、サンプルの見

掛密度及び表面状態を確認し、ガス化溶融炉の受入条件である見掛け密度

1.2g/cm3 を満たすことを確認した。

(2)多原料 BIC の評価

試作した多原料 BIC について、見掛密度、冷間圧縮強度及び熱間圧縮強

度の測定を実施した。試作品の冷間圧縮強度は、石炭コークスの冷間圧縮強

度である 20MPa よりも高い強度を持つことがわかった。熱間圧縮強度は、

キュポラ炉内の荷重と推定される 0.1MPa を十分に上回る強度を持つことが

わかった。

(3)多原料 BIC の炉内燃焼シミュレーション

炉内のバイオコークスの燃焼特性を検証するためには、揮発分の燃焼とチ

ャーの燃焼を考慮し、また炉内のバイオコークスの比表面積の変化を考慮し

た新しい固体表面モデルを開発することが必要である。

シャフト型大型燃焼炉において、BIC による模擬灰溶融燃焼試験を実施し、

シミュレーション結果と試験値から BIC の反応速度式を検討した。

4. 多原料 BIC 連続製造技術確立

(1)横型製造設備による多原料 BIC の連続製造

多原料 BIC 横型製造設備(定格能力 2.4 トン/日)一式及び原料の粉砕及

び乾燥を行うための前処理設備一式をリースにて導入した。横型製造設備に

て、昨年度の実績を踏まえて設定した 5 種類の混合パターンについて所定量

を連続製造し、多原料 BIC を合計で約 340 トン製造した。

製造設備は、平常時には 7:00-20:00 の 13 時間を有人で原料の粉砕、

乾燥等の前処理及び原料投入を実施し、20:00-7:00 は無人で製造装置の

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みの運転とした。安全に留意しながら作業に従事し、年間を通して無事故無

災害で製造することができた。

また、実証試験先での BIC のダンプトラック投入試験に対応するため、

バルク輸送を実施した。

(2)横型製造設備の多原料 BIC の製造条件の 適化

縦型製造設備で得た BIC 製造に関する基礎データを踏まえ、横型製造設

備にて製造条件(加熱条件・押込条件)を調整し、短期間の連続製造を実施

した。製造時間短縮の条件下においても、多原料 BIC の性状が維持される

ことが確認でき、多原料BICの製造時間 25%短縮の実用化の目処が立った。

(3)試験先への多原料 BIC の運搬

製造した多原料 BIC のうち、計 243 トンを一般廃棄物処理施設へ輸送し、

ガス化溶融炉にて石炭コークスの代替試験に供した。また、計 70 トンを鋳

造メーカー2 社へ輸送し、産業用キュポラにて鋳物用コークスの代替試験に

供した。

(4)製造設備の改造

製造設備内の乾燥機の配置変更、原料搬送コンベヤの増設・配置変更、及

び貯留切出装置の撹拌翼改造による混合能力強化等により、これまで作業員

による手動で実施していた作業を自動化し、作業負荷の軽減を検証した。

また、籾殻燃焼器を既設の乾燥機に接続し、籾殻燃焼熱を乾燥熱源として

供給し、運転することで、1 日あたりの灯油使用量を従来の操業条件よりも

約 60 リットル低減できることを確認した。

(5)製造設備の保守

日常点検を行い、製造設備を健全な状態で保つようにした。また、70 ト

ン程度製造後、もしくは原料混合比が切り替わる際に各設備の保守、点検を

行った。

5. 一般廃棄物処理施設での CO2 排出量 25%削減の長期実証技術

多原料 BIC を投入し、石炭コークス削減率約 25%で、1 ヶ月間程度の連

続期間を含む約 4 ヶ月間の運転を行い、長期安定運転の実証を行った。さ

らに、試験期間内で計 1 ヶ月間程度、石炭コークス削減率約 35%の運転を

行い、高代替率運転時の課題を把握し、対処法を確立した。

(1)投入装置の設計及び設置

盛岡・紫波地区環境施設組合清掃センターごみ焼却施設にて、BIC 受入の

省力化に向け、ダンプトラック投入に対応した BIC 受入部の改造工事を実施

した。

(2)多原料バイオコークスの事前評価

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多原料 BIC 4 種類の測定値から性能評価を実施し、等価熱量の石炭コー

クスを代替可能であることを推定した。

(3)実証試験計画の策定

施設のごみ処理計画を滞らせることなく、4 ヶ月程度の運転を目標通りに

達成できるよう、実証試験の詳細計画を策定した。

(4)実証試験の実施

平成 29 年 7 月 31 日から 12 月 19 日までの期間のうち約 4 ヶ月、多原料

BIC 243 トンを石炭コークス代替燃料として使用し、実証試験を実施した。

この期間に、石炭コークス削減率約 25%での 43 日間の連続運転と、石炭コ

ークス削減率 35%以上での計 30 日間の運転を達成した。さらに、削減率上

限を確認する試験を行い、 大で石炭コークス削減率 51%を達成した。

(5)データ解析

試験データを解析し、BIC 使用率 80%程度以下では、4 種類の BIC はい

ずれもほぼ等価熱量の石炭コークスを代替可能であると評価できた。等価熱

量の石炭コークスを置換する 大の削減率は 45%程度であった。

(6)実証試験後の確認

実証試験終了後の通常運転で、多原料 BIC を投入したことによる影響は

生じないことを確認した。

6. 多原料バイオコークスの適用先拡大検討

(1)産業用キュポラへの適用性検証

JFE エンジニアリング㈱のガス化溶融炉以外のコークス利用施設として、産

業用大型キュポラを保有する鋳造メーカーA 社及び B 社に多原料 BIC を計 70

トン供給して鋳物用コークス代替試験を実施し、産業用キュポラ操業における

多原料 BIC への要求仕様を確認した。

試験では、鋳物用コークスの代替率 大約 20%まで検証し、産業用キュポラ

操業への物理的影響は見られないものの、排ガスの H2 濃度の増加、溶湯中の C

濃度が減少及び灰分の増加等の悪影響が見られた。試験結果より、多原料 BIC

を産業用キュポラに適用した場合の課題として以下が挙げられる。

(i) 鋳鉄管を製造するための鋳物用コークス代替としては、固定炭素量が低

く、加炭材としての性質が不十分である。

(ii) BIC の灰分が高く、加炭の阻害やスラグの粘度上昇など操業に影響を及

ぼす可能性がある。

(iii) BIC の価格は、発熱量が石炭コークスの 6 割未満であること、また加炭

材としての性質が不十分である点を考慮した価格設定が必要である。

(iv) BIC と石炭コークスの併用を前提とした産業用キュポラの操業条件の

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適化である。

(2)継続利用先への供給

平成 29 年度は、横手市周辺地域の温泉施設等に多原料 BIC の製造過程で

生じる端材を供給した。

7. CO2 削減量の検証方法

本事業の CO2 の削減効果を平成 27 年度に確立した検証方法にて算出した。

2.4 トン/日規模の実証設備における原料の収集に要した実燃費、原料の乾

燥・粉砕等に要する全エネルギー、製造装置の電力消費量、製品の利用先まで

の輸送に要した実燃費の計測を実施し、これらの数値を用いて算出したところ、

BIC の製造に関する LCA(収集~製造~輸送~利用)ベースのエネルギー損失

は合計 16.4%となった。

BIC は、これまでのガス化溶融炉の実証試験結果より、石炭コークスを等価

熱量で代替できることがわかっている。

上記条件において、BIC で石炭コークスを 25%置換した場合、正味の CO2

削減効果は、

25%×(1-16.4%)=20.9%

となり、本事業の目標であるガス化溶融炉での正味 CO2 排出量 20%削減を

実証することができた。

また、平成 29 年度の約 1 ヶ月間の連続運転で実証した BIC で石炭コークス

を 35%置換とした場合、正味の CO2 削減効果は以下になる。

35%×(1-16.4%)=29.3%

8. 事業性・採算性の検証及び普及見通しの検討

(1)事業性・採算性の検証

平成 27 年度に検討した評価方法に則り、多原料 BIC 製造規模 5~14 トン/

日の事業を想定して、原料バイオマスの収集費用、多原料 BIC の製造費用、

設備費、人件費及び設備運用に掛かる維持管理経費等を収集し事業性・採算

性を内部収益率(IRR)によって評価した。作業員は、BIC 製造事業の専任

とし、BIC 販売価格を 21,000 円/トンとした場合、製造規模 14 トン/日にて

20 年時点における IRR が 2.0%となることを確認した。

(2)普及見通しの検討

BIC 生産拠点を西日本に設置したケースを想定し、JFE エンジニアリング

㈱製ガス化溶融炉が立地する地域、もしくは周辺地域のバイオマス発生量を

調査した。また、調査結果より、BIC 生産拠点として島根県及び福岡県を選

定し、BIC 製造プラントの設置環境の検討を行った。

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選定した地域で BIC を製造し、 寄りの JFE エンジニアリング㈱製ガス

化溶融炉に供給するケースで原料収集、製造、製品輸送等を含むトータル費

用を算出し、横手市から供給するケースとトータル費用を比較した。

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Summary

FY 2017 Low Carbon Technology Research and Development Energy Program

(Long-term demonstration of 25% reduction of CO2 emissions from general

incineration facilities using bio-coke from mixed feedstock)

1. Introduction

This project aims at a long-term demonstration of technology to achieve a 25%

reduction in CO2 emissions by the partial substitution of bio-coke (BIC; anticipated to

be a new carbon neutral fuel) for coal coke steadily consumed at general waste

incineration facilities using gasification melting furnaces, an increasingly popular type

of technology with high environmental performance and reduced ash emissions.

The project also develops technology to manufacture low-priced mixed feedstock

BIC from diverse raw materials such as waste or unused biomass, enabling supply at

¥20,000 per ton to users 100 kilometers distant when the technology becomes

commercially viable.

In FY 2017, horizontal manufacturing equipment was used to manufacture 340 tons

of mixed feedstock BIC in five patterns of raw material intermixture. In addition, basal

data on the shortening of BIC manufacturing times gained from vertical manufacturing

equipment was applied to the operating conditions of horizontal manufacturing

equipment to achieve short-term continuous production, bringing into sight operations

under conditions reducing manufacturing times by 25%. Progress was also made on

lowering energy and workloads by modification or introduction of new types of raw

material pre-processing equipment.

The manufactured mixed feedstock BIC was supplied to the gasification melting

furnace of a general waste incineration facility (243 tons) and to an industrial cupola

(70 tons). We verified the effect of substituting mixed feedstock BIC for coal coke and

the impact of introducing the mixed feedstock BIC on operations at the facilities, to

summarize the respective advantages and disadvantages.

2. Collection of raw material biomass

In the Yokote City region, we collected and transported seven types of waste and

unused biomass (rice husks, rice straw, rice bran, bark, waste mushroom beds, hog fuel,

and pruned branches) in the respective required volumes for the raw material biomass

collection plan and mixed feedstock BIC manufacturing plan. Up to this point, the

primary raw materials used were rice husks, bark, and waste mushroom beds,

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collectible in large volumes at low prices in the area of Yokote. Other raw materials

were collected as replacements when supplies of these primary types ran low.

The collected biomass raw materials were, on a wet basis, about 270 tons of rice

husks, about 70 tons of waste mushroom beds, and about 170 tons of bark. We also

collected a total of about 10 tons of other raw materials (rice straw, hog fuel, pruned

branches, rice bran, etc.). Verification of collection costs in FY 2017, involving

collection, loading, transportation, and personnel costs, was as follows: ¥3,000 per ton

for rice husks, ¥6,000 for waste mushroom beds, ¥3,400 for bark, ¥55,000 for rice

straw, ¥13,000 for hog fuel, and ¥47,000 for rice bran, on a dry basis.

3. Establishing mixed feedstock BIC manufacturing conditions

We trial manufactured mixed feedstock BIC using BIC vertical manufacturing

equipment, to measure and evaluate the properties and conditions (apparent density

and cold/hot compressive strength) of the resulting BIC. We also conducted

combustion simulations and combustion tests with shaft-type large combustion

furnaces, to verify the combustion properties of BIC.

(1)Mixed feedstock BIC manufacturing tests using vertical manufacturing

equipment

In order to collect basal data for shorter mixed feedstock BIC manufacturing

times, for mixed feedstock BIC No.1 (70% rice husk, 25% bark, and 5% waste

mushroom beds), we set the heating time at about 1,100 seconds, shorter than the

previous heating time of about 1,600 seconds, and set the heating temperature to

taper from a high temperature in the first half to a low temperature in the second

half. We checked the sample apparent density and surface condition, to verify that

an apparent density of 1.2 g/cm3 (the acceptance condition for the gasification

melting furnace) could be met.

(2)Evaluation of mixed feedstock BIC

We measured the apparent density, cold compressive strength and hot

compressive strength of the trial manufactured mixed feedstock BIC. The cold

compressive strength of the trial manufactured mixed feedstock BIC was stronger

than the 20 MPa of coal coke. The hot compressive strength was sufficiently higher

than the 0.1 MPa estimated as the load inside the cupola furnace.

(3)Furnace combustion simulation for mixed feedstock BIC

In order to verify the combustion properties of BIC inside the furnace, we had to

develop a new solid surface model taking into account the combustion of volatile

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matter and char, and the changes in the specific surface area of the BIC inside the

furnace.

We conducted a mock ash melting combustion test with BIC in a shaft-type large

combustion furnace. From the simulation results and test values, we examined the BIC

rate equation.

4. Establishing mixed feedstock BIC continuous production technology

(1)Continuous production of mixed feedstock BIC by horizontal manufacturing

equipment

We leased a complete set of horizontal manufacturing equipment for mixed

feedstock BIC (rated capacity of 2.4 tons per day) and a complete set of

pre-processing equipment for pulverizing and drying the raw materials. The

horizontal manufacturing equipment was used for continuous production of a fixed

amount of the five intermixture patterns set based on figures from the previous

fiscal year, to manufacture a total of about 340 tons of mixed feedstock BIC.

The manufacturing equipment under normal conditions performed

pre-processing (pulverizing and drying the raw materials) and raw material feeding

under manned operation from 7:00 a.m. to 8:00 p.m., then operated unmanned from

8:00 p.m. to 7:00 a.m. Caution for safety was exercised throughout, so that

production could be continued accident-free for the entire year.

In addition, we used bulk transportation in order to test BIC feeding by dump

truck at the demonstration testing sites.

(2)Optimizing manufacturing conditions for mixed feedstock BIC on horizontal

manufacturing equipment

Taking into account the basal data on BIC manufacturing gained with the vertical

manufacturing equipment, we adjusted the manufacturing conditions (heating and

pressing conditions) on horizontal manufacturing equipment to conduct short-term

continuous production. Even under conditions to shorten the manufacturing time,

we confirmed that the properties and conditions of the mixed feedstock BIC could

be maintained, to bring into sight the commercial realization of 25% shorter mixed

feedstock BIC manufacturing times.

(3)Transporting mixed feedstock BIC to testing sites

A total of 243 tons of the manufactured mixed feedstock BIC was transported to

a general waste incineration facility, to test its substitution for coal coke in a

gasification melting furnace. Another 70 tons was transported to two casting

manufacturers, to test substitution for casting coke in an industrial cupola.

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(4)Modification of the manufacturing equipment

We automated work previously manually conducted by workers by changing the

positioning of the dryer in the manufacturing equipment, extending and changing

the positioning of the raw material conveyor, and modifying the agitating blades of

the stored material discharging device to increase the mixing capacity and thereby

verified reduction of workloads.

In addition, we moved the rice husk burner to adjoin the existing dryer so that the

burning of the rice husks acts as heat source for the drying, for a confirmed

reduction in kerosene of about 60 liters per day compared to the previous system.

(5)Maintenance of manufacturing equipment

The manufacturing equipment was kept in good condition through daily

inspections. Further maintenance and inspections were carried out after

manufacturing around 70 tons or when altering the raw material mixture ratio.

5. Technology for the long-term demonstration of 25% reduction in CO2 emissions

from general waste incineration facilities

We conducted a demonstration of long-term stable operation over about four months,

including around one continuous month, for the introduction of mixed feedstock BIC

to reduce coal coke usage by about 25%. Furthermore, for around one month of the test

period, we tried operation with coal coke reduced about 35% to determine issues on

operation with high-substitution rate and established countermeasures.

(1)Design and installation of adopted devices

At the garbage incineration facility of the Cleaning Center, Morioka/Shiwa

District Environmental Facilities Association, we conducted modifications to the

BIC receiving part to accept feeding by dump truck in order to save labor for BIC

acceptance.

(2)Pre-evaluation of mixed feedstock BIC

Performance evaluations conducted on the measurement values of four types of

mixed feedstock BIC estimated that it would be possible to substitute an equivalent

thermal value of coal coke.

(3)Formulating a demonstration plan

We formulated a detailed plan for the demonstration to prevent delays in the

garbage processing at the facility and to achieve around four months of operation as

targeted.

(4)Conducting the demonstration

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For a period of about four months from July 31 to December 19, 2017, 243 tons

of mixed feedstock BIC was used as substitute fuel for coal coke for demonstration.

In this period of time, we conducted 43 days of continuous operation with about

25% coal coke substitution, and a total of 30 days with more than 35% coal coke

substitution. Furthermore, we conducted tests to confirm the upper limits of the

reduction rate, achieving a maximum coal coke reduction rate of 51%.

(5)Data analysis

Analyzing the test data, we verified that all four types of BIC could be

substituted for coal coke with an almost equivalent thermal value when the BIC

usage was around 80% or less. The maximum reduction rate for substituting coal

coke with equivalent thermal value was around 45%.

(6)Confirmation after the demonstration

For normal operation after the demonstration was completed, we confirmed that

the introduction of mixed feedstock BIC had no negative effects.

6. Examining further applications of mixed feedstock BIC

(1)Verifying application for industrial cupola

We supplied a total of 70 tons of mixed feedstock BIC to casting manufacturers

Company A and Company B, both of which have industrial cupolas as coke-using

facilities other than JFE Engineering Corporation's gasification melting furnace, to

test for substitution with casting coke and confirmed required specifications for

mixed feedstock BIC in industrial cupola operations.

The tests verified a maximum substitution rate for casting coke of about 20%.

While no physical effect on industrial cupola operation was seen, negative effects

were noted in terms of an increase in exhaust gas H2 concentration, a reduction in C

concentration while molten, and increased ash content. From the test results, the

following can be cited as issues for application of mixed feedstock BIC to industrial

cupolas.

(i) As a substitute for casting coke for manufacturing cast iron pipes, the fixed

carbon content is low, it has insufficient properties as a carburizer.

(ii) The BIC ash content is high, which is likely to impact on operations e.g.

impeding carburizing and increasing the viscosity of slag.

(iii) BIC must be priced in recognition of the fact that its calorific value is under

60% that of coal coke, and its insufficient properties as a carburizer.

(iv) Industrial cupola operating conditions should be optimized presupposing joint

use of BIC and coal coke.

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(2)Supply to ongoing users

In FY 2017, wood waste generated in the manufacture of mixed feedstock BIC

was supplied to hot spring facilities and other establishments in the Yokote region.

7. Method for verifying CO2 reductions

We calculated CO2 reductions achieved in this project through the verification

method established in FY 2015.

Factors measured were: actual fuel consumption in collection of raw materials for

demonstration equipment at a 2.4 ton per day scale, all energy used to pulverize and

dry the raw materials, electricity consumed by the manufacturing equipment, and

actual fuel consumption in transporting the product to the users. Calculation made

using these figures found a total energy loss of 16.4% based on a life cycle assessment

(collection-manufacture-transportation-use) relating to BIC production.

The results of demonstrations so far with gasification melting furnaces have shown

that BIC can be substituted for coal coke with equivalent thermal value.

When 25% of coal coke is replaced with BIC with the above conditions, the net CO2

reduction is:

25% × (1-16.4%) = 20.9%

This demonstrates a 20% reduction in net CO2 emissions with a gasification melting

furnace, which is the objective of this project.

In addition, when 35% of coal coke is replaced with BIC in continuous operation

demonstrated for about one month in FY 2017, the net CO2 reduction is:

35% × (1-16.4%) = 29.3%.

8. Verifying commercial feasibility and profitability, and examining prospects for

widespread adoption

(1)Verifying commercial feasibility and profitability

Following the evaluation method examined in FY 2015, we used the internal rate

of return (IRR) to assess the commercial feasibility and profitability of mixed

feedstock BIC assuming a production rate of 5 to 14 tons per day. Factors were the

cost of collecting raw material (biomass), cost of producing the mixed feedstock

BIC, equipment costs, personnel costs, and maintenance costs for equipment. If the

workers work on BIC production full time and the BIC sales price is ¥21,000 per

ton, with a production scale of 14 tons per day over twenty years, the IRR is

verified as 2.0%.

(2)Examining prospects for widespread adoption

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We surveyed the amount of biomass to be generated in regions where JF

Engineering Corporation’s gasification melting furnaces are located or the

surrounding regions, assuming the establishment of a BIC production site in west

Japan. Following the results of the survey, we selected Shimane Prefecture and

Fukuoka Prefecture as sites for BIC production, and also examined the installation

environment for BIC production plants.

We calculated the raw material collection, production, transportation and other

costs in total assuming production of BIC in the selected regions and supply to the

nearest gasification melting furnace of JFE Engineering Corporation, and compared

the calculated total cost with that for the case of supply from Yokote.

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1. 業務概要

(1)業務目的

本業務は、高い環境性と灰の減容化を達成できる技術として普及している

ガス化溶融炉方式一般廃棄物処理施設で定常的に消費する石炭コークスを

カーボンニュートラルな新燃料として期待されている BIC で一部代替して、

CO2 排出量 25%削減を実現する技術を長期実証することを目的とする。

また、廃棄物系バイオマスや未利用バイオマスから成る多様な混合原料か

ら安価な多原料 BIC 製造技術の開発を行い、事業化時に 2 万円/トンで約

100km 離れた利用先に供給可能にする。

(2)対象技術

①対象技術とその特徴

本業務は、図表 1-1 の事業全体フローに示すように、廃棄物系バイオマス

及び未利用バイオマスの収集、収集したバイオマスの多原料 BIC への変換及

び製品の一般廃棄物処理施設等における化石燃料代替エネルギーとしての

活用という 3 つの業務で構成される。

バイオマスの収集は、主に籾殻、稲藁、糠、バーク、廃菌床、製材くず及

び剪定枝の収集からなる。

図表 1-1 事業全体のフロー

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図表 1-2 各 BIC 製造設備の全景

(左:縦型製造設備、右:横型製造設備)

収集したバイオマスの BIC への変換は、BIC 製造設備により成される。図

表 1-2に試作用のBIC縦型製造設備及び連続製造用のBIC横型製造設備をそ

れぞれ示す。

BIC は、近畿大学井田民男教授によって開発された新しい固体燃料である。

BIC は、木材チップ、バーク及び製材くず等の木質バイオマス、籾殻、稲藁

及び廃菌床等の農業系バイオマス並びに茶化す、生ごみ及びりんごやレモン

の絞りかすといった様々な原料から製造可能であることを実証されている

固形燃料である。BIC は、以下の特徴を有しており、キュポラ炉、農業用の

ボイラー及びごみ焼却施設での利用が期待されている。

ア. 冷間圧縮強度が高い

溶解炉等に投入される燃料は、圧壊されない強度を有することが要求

されるが、BIC は、従来のバイオマス燃料にはない高冷間圧縮強度を有

している。石炭コークスの冷間圧縮強度が 20MPa 程度であるのに対し、

BIC は 20–100MPa である。

イ. 化石燃料の質の良い代替燃料として利用可能

自動車部品メーカー所有のキュポラ炉やバイオマスボイラーの燃焼

試験の結果より、従来のバイオマス燃料と比較して、高温環境下におい

ても長時間緩慢燃焼が可能であり、石炭コークスや化石燃料代替燃料と

して利用可能であることを実証している。

ウ. 製造時の重量収率が 100%

BIC の製造時における重量収率は 100%であり、燃料転換の際に廃棄

物を排出しない。

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図表 1-3 に BIC の製造工程を示す。粉砕し、含水率 10%前後まで乾燥し

た原料を反応容器に充填し、圧縮、加熱、冷却工程を経て BIC を製造する。

図表 1-4 に多原料 BIC 製造フローを示す。製造設備は、収集時の含水率が

低く、乾燥工程が不要である籾殻を粉砕する「籾殻処理系列」、含水率が高

く、粉砕及び乾燥を要する原料を処理する「廃菌床、バーク、剪定枝 etc 処

理系列」、これら原料を混合し、製造設備へ供給する「混合原料」及びバイ

オコークス横型製造装置から構成されている。「籾殻処理系列」では、籾殻

を擂潰機で 3mm 以下まで粉砕し、粉砕後の籾殻をフレコンバッグで受ける。

「廃菌床、バーク、剪定枝 etc 処理系列」では、バイオマス原料を粉砕機で

8mm 以下まで粉砕し、乾燥機で含水率 10%前後まで乾燥してフレコンバッ

グで受ける。フレコンバッグで受けたこれらバイオマス原料を「混合原料」

のホッパへ投入し、混合して原料貯留ホッパに貯留する。貯留ホッパ内に貯

留した原料は切り出し装置にて BIC 横型製造設備まで供給され、BIC が製造

される。

図表 1-3 BIC 製造工程

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図表 1-4 多原料 BIC 製造フロー

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図表 1-5 及び 1-6 に試作用の BIC 縦型製造設備及び連続製造用の BIC 横型

製造設備の概略図を示す。

縦型製造設備は、反応管上部から、粉砕した細バイオマスを投入し、①反

応部にて所定の温度、時間で加熱圧縮をした後、②の冷却部で自然冷却され、

③の取出し部にて排出される。縦型製造装置は、上述の一連の製造工程を経

た後、反応管内に再度原料を投入するバッチ式であるため、大量製造には不

向きである。

しかしながら、加熱温度、加熱時間及び冷却時間をそれぞれ設定可能であ

るため、新たな原料等で BIC を試作するのに適しており、本事業では主に多

原料 BIC の試作に用いた。

図表 1-5 BIC 縦型製造設備概略図

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横型製造設備は、半連続式の製造であるため、本事業では、ガス化溶融炉

等、大規模利用先への供給用 BIC の製造に用いる。また、新たな取り組みと

して、ピストン先端部にヒーターを設置した。この端面ヒーターにより、切

断面が綺麗になり、製品の形を整える効果が期待できる。

バイオマスは、下記の流れで BIC へと成型される。

(ア) 原料供給コンベヤより供給されたバイオマスは,サブホッパ内に貯留さ

れ,所定量が原料供給機によって反応容器内の①充填部へと供給される。 (イ) ①充填部に供給された原料は充填ピストン及び押込ピストンにより成

型され,②加熱部へ押し出される。 (ウ) ②加熱部で所定の温度で一定時間,加熱圧縮され,冷却部へ押込まれる。 (エ) ③冷却部で所定時間冷却圧縮され,取出部へ押し出される。 (オ) ④取出部で切断ピストンにより所定の長さで切断され,排出される。 横型製造装置では,反応容器内に所定の長さの多原料 BIC を複数個内包

しながら,(ア)~(オ)を繰り返して連続的に製造される。

図表 1-6 BIC 横型製造設備概略図

押込シリンダ 反応容器 保持シリンダ

①充填部 ②加熱部 ③冷却部

Air

充填シリンダ

原料投入機

切断シリンダ

電熱ヒーター

冷却ファン

④取出部

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図表 1-7 BIC 及び代表的な化石燃料等の性状例

図表 1-8 ガス化溶融炉本体部の概略

図表 1-7 に BIC の諸元を代表的な化石燃料等と並べて示す。

製造した多原料バイオコークスの外部での化石燃料代替エネルギーとし

ての活用については、主に盛岡・紫波地区環境施設組合が保有する一般廃棄

物処理施設のガス化溶融炉に石炭コークスの代替燃料として供給し、CO2

排出量削減効果を確認する。図表 1-8 にガス化溶融炉本体部の概略を示す。

バイオコークス

(杉) 石炭コークス

(鋳物用) 石炭

(一般炭) 木炭

ペレット (杉)

総発熱量(kcal/kg)

4200 7000 8000 6640~7525 4200

冷間強度(MPa) 100~200 20 - - 5~10

見かけ比重 1.3~1.4 0.7 0.8 0.07~1.2 0.6~0.7

水分(%) 3~10 ほぼ 0 7~10 5~11 3~10

窒素分(%) 0.2~1.0 2.2 0.2~2.0 - 0.2~1.0

硫黄分(%) 0.06~0.08 0.5~1.0 0.2~1.2 - 0.06~0.08

炭素分(%) 約 50 80~90 55~74 70~80 約 50

灰分(%) 0.05~1.0 6~10 5.9~12 0.9~4.7 0.05~1.0

揮発分(%) 30~40 5 以下 18~37 8.7~24.5 30~40

気孔率(%) ほぼ 0 30~40 ― 約 40 ―

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②当該技術の普及拡大に向けた課題

BIC は、地球環境に優しい再生可能エネルギーとしてキュポラ炉、農業用

ボイラー及びごみ焼却施設など幅広い用途への熱源としての利用が期待さ

れているが、これまでの取り組み例を見る限り、事業性の改善が大きな課題

となっている。

特に BIC の製造コストは、事業化するにあたり大きな課題となっている。

BIC の適用先燃料である石炭コークスの 10 年間の輸入価格推移を図表 1-9

に示す。石炭コークスの輸入価格は、2006 年の約 20,000 円/トンを下限価格、

2008 年の約 80,000 円/トンを上限とし、2008 年以降下落しており、2014 年

の時点で 30,000 円/トンを下回っている。過去 10 年間では、2006 年の下限

価格から 2008 年の上限価格まで 大で 3 倍の変動が生じている。石炭コー

クス及び BIC の総発熱量をそれぞれ 7,000 kcal/kg、4200 kcal/kg とし、石炭

コークス価格を 10年間の平均価格 40,000円と設定して、カロリー単価でBIC

の目標価格を試算すると 24,000 円/トンとなる。

しかしながら、現状での BIC 製造コストは、3-7 万円/トンであり、本事業

の目的である 2 万円/トンを実現した事例は無い。製造コストを削減するた

めには、より安価で必要量を確実に収集可能な原料収集システムの構築と加

熱時間の短縮など製造条件の 適化を行う必要がある。(事業性の課題)

図表 1-9 石炭コークス輸入単価(円/トン) CIF ベース

出典:石炭・コークス・バイオ年鑑 2015-2016 より

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

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バイオマス原料は、地域及び季節によって収集可能量が大きく異なるが、

BIC を多原料で製造することにより、特定の原料に依存することなく、年間

を通して安定して製造することが可能になる。本技術が実用化に至った場合、

地域や季節を問わないことから、様々な地域に波及する可能性がある。これ

まで種々の原料からの BIC 製造に関する報告がされているが、いずれも単原

料からなるものであり、複数の原料からなる多原料 BIC の報告はなされてい

ない。したがって、各混合パターンについての原料の含水率、加熱時間及び

加熱時間等の製造条件をそれぞれ把握する必要がある。(技術的な課題 1)

多原料 BIC の供給先である一般廃棄物処理施設において、これまでの実証

試験結果から BIC が石炭コークスを 大で 50%置換可能であることを確認

しているものの、単一原料からなる BIC を用いた 1 週間程度の短期間試験に

留まり、事業化を想定した長期間の実証試験は実施されていない。そのため、

本プロジェクトでは、1 ヶ月以上の連続運転期間を含む 4 ヶ月以上の運転を

実施し、多原料 BIC で安定して石炭コークス使用量を 25%削減した連続運

転が可能であること、また、BIC の供給により、通常運転に支障が生じない

ことについてそれぞれ確認する必要がある。(技術的な課題 2)

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(3)事業実施主体、実施体制と役割分担

実施体制と役割分担を図表 1-10 に示す。事業実施主体は一般財団法人石

炭エネルギーセンター(以下、JCOAL と記す)であり、プロジェクト全体

の総括、多原料 BIC 製造条件確立及び多原料 BIC 連続製造技術確立につい

て担当する。共同実施者は、学校法人近畿大学(以下、近畿大学と記す)と

JFE エンジニアリング株式会社(以下 JFE エンジニアリングと記す)であり、

それぞれ多原料 BIC 製造条件確立及び一般廃棄物処理施設での CO2 排出量

25%削減の長期実証技術確立を担当する。本プロジェクトを実施するために

必要となる主な協力者を図表 1-10 に示す。本業務を円滑に推進するため、

専門家からなる技術開発検討会を設置し、数回開催する。技術開発検討会の

委員名簿を図表 1-11 に示す。

図表 1-10 業務実施体制図

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図表 1-11 技術開発検討会名簿

NO 氏 名 所属・役職

1 横山 伸也 鳥取環境大学 環境学部 特任教授

2 芋生 憲司 東京大学大学院 農学生命科学研究科

生物・環境工学専攻 教授

3 安田 肇

国立研究開発法人 産業技術総合研究所

エネルギー・環境領域創エネルギー研究部門

主任研究員

4 柿﨑 浩之 横手市 農林部

次長

5 藤井 吉人 秋田県平鹿地域振興局 農林部

森づくり推進課 課長

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(4)技術開発[実証研究]の目標設定

図表 1-12 本技術開発[実証研究]の目標

項目 採択時の技術の状況 終目標 平成 29 年度 目標

0 全体目標 ガス化溶融炉での BIC 利用は

短期間の検証運転による技術

確認までで、BIC の定常な商業

利用は実現していない。

多原料BICによるガス化溶融

炉CO2排出量25%削減する石

炭コークス代替技術の確立と

経済性を実証 一貫システムにおける正味C

O2削減量20%超の実証

多原料BICによるガス化溶融

炉CO2排出量25%削減する石

炭コークス代替技術の確立と

経済性を実証

一貫システムにおける正味

CO2 削減量 20%超の実証

(1) 原料バイオマ

スの収集の実

秋田県横手市周辺地域の未利

用バイオマスの発生状況が把

握できていない。また、各バイ

オマスの収集方法及び輸送方

法は確立されていない。

多原料 BIC 製造に要するバイ

オマス原料の発生状況の把

握及び収集及び輸送方法の

確立

多原料 BIC 製造に要するバ

イオマス原料を収集する。

(2) 多原料 BIC 製

造条件確立

BIC の評価として、見掛け密度

を基に冷間圧縮強度、さらに近

畿大学で提唱する熱間圧縮強

度特性がある。特に、ガス化溶

融炉の実験データは蓄積され

ているが、評価法は確立されて

いない。

多原料 BIC の製造条件確立

ガス化溶融炉またはキュポ

ラ炉内での BIC の燃焼状況

のシミュレーションの検証

多原料 BIC の製造条件確立

ガス化溶融炉またはキュポ

ラ炉内での BIC の燃焼状況

のシミュレーションの検証

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(3) 多原料 BIC 連

続製造技術確

廃棄物系バイオマスや未利

用バイオマス原料のみを対

象として、かつ、2種類以上

を常時混合した多原料BICの安定製造技術が十分確立

されておらず、製造販売も

行われていない。 3万円/トンを下回るBIC製

造販売例がない。

2 万円/トンで 100km 先

の処理施設に提供できる

BIC 製造・供給システム

の実現

2 万円/トンで 100km 先の

処理施設に提供できる BIC

製造・供給システムの実現

(4) 一般廃棄物処

理 施 設 で の

CO2 排 出 量

25%削減の長

期実証技術

1週間程度の短期試験により、

大で約50%までの石炭コー

クスをBICで代替可能なこと

を確認

単一原料の BIC での実証

石炭コークス代替率 25%

を維持し、1 ヶ月間以上

の連続期間を含む 4 ヶ月

間以上の運転を実証

期間内で石炭コークス代

替率 35%での運転を計 1

ヶ月間程度実施

石炭コークス代替率 25%を

維持し、1 ヶ月間以上の連

続期間を含む 4 ヶ月間以上

の運転を実証

期間内で石炭コークス代替

率 35%での運転を計 1 ヶ月

間程度実施

(6) 多原料 BIC の

適用先拡大検

単一原料のBICを用い、石炭コ

ークスを20%代替可能なこと

を確認。

多原料 BIC で石炭コーク

ス代替率 20%での運転の

実証

多原料 BIC で石炭コークス

代替率 20%での運転の目処

を立てる

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(5)業務の実施場所

多原料 BIC の製造業務は、秋田県横手市柳田 12-4 横手第二工業団地内(図

表 1-13)にて実施した。図表 1-13 に示す通り、製造サイト付近に位置する

バイオマス原料供給先は、いずれも製造サイトの半径 30km 以内に位置して

いる。

多原料 BIC を用いた一般廃棄物処理施設での CO2 排出量 25%削減の長期

実証業務は、岩手県紫波郡矢巾町大字西徳田第 12 地割 168-2 に位置する盛

岡・紫波地区環境施設組合が保有する清掃センターごみ焼却施設(図表 1-14)

にて実施した。

検討項目については、JCOAL、近畿大学、JFE エンジニアリング㈱それぞ

れの本部建物で実施した。

図表 1-13 多原料 BIC の製造業務実施場所

図表 1-14 盛岡・紫波地区環境施設組合 清掃センターごみ焼却施設

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(6)事業実施スケジュール(平成 29 年度分)

図表 1-15 平成 29 年度工程表

(7)業務履行期間

平成 29 年 4 月 1 日から平成 30 年 3 月 30 日

実施期間委託業務実施上の区分

(1)原料バイオマスの収集の実施

(2)多原料BIC製造条件確立

(3)多原料BIC連続製造技術確立

(4)一般廃棄物処理施設でのCO2排出量25%削減の長期実証技術

(5)設備の解体と撤去

(6)多原料BICの適用先拡大検討

(7)二酸化炭素削減量の検証

(8)事業性・採算性の検証及び普及見通しの検討

(9)技術開発検討会の開催

(10)共同実施者との打合せ

(11)成果の広報・発信

(12)事業報告書の作成

    事業報告書の提出 ▽ 3/30

    業務完了報告書の提出 ▽ 3/30

    業務清算報告書の提出 ▽ 3/30

摘要10月 11月 12月 1月 2月 3月9月4月 5月 6月 7月 8月

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2. 委託業務実施状況

(1)原料バイオマスの収集と実施

平成 27~28 年度にかけて、横手市周辺地域の原料提供者から廃棄物系バ

イオマスや未利用バイオマスとして、籾殻、稲藁、糠、バーク、廃菌床、製

材くず及び剪定枝等 7 種類程度を対象に、安く、かつ、必要量を確実に収集

するシステムを検討、構築してきた。

平成 29 年度は、ガス化溶融炉に 240 トン程度、産業用キュポラに 100 ト

ン程度それぞれ供給するべく、平成 27~28 年度において安価かつ大量に収

集が可能であったの籾殻、廃菌床及びバークを主とする多原料 BIC の原料組

成及び製造計画量を策定した。平成 29 年度の多原料 BIC 製造計画を図表

2-1.1 に示す。

図表 2-1.1 多原料 BIC 原料混合パターン及び製造計画量

No. 籾殻

(%)

バーク

(%)

廃菌床

(%)

その他原料

(%)

合計

(%)

計画量

(トン)

1 約 70 約 25 約 5 - 100 約 100 2 約 70 約 20 約 10 - 100 約 100 3 約 60 約 25 約 15 - 100 約 100 4 約 50 約 35 約 15 - 100

約 40 5 - 約 50 約 30 約 20 100

計 約 340

籾殻は、昨年度に引き続き、主に JA 秋田ふるさとのカントリーエレベー

ターから収集した。7-10 月の期間を除いて、年間を通して月間平均 20 トン

以上を安定して収集することができた。昨年度実施したヒアリング調査によ

り、7-10 月の期間は籾殻の収集が困難になることがわかっていたため、該当

の期間は、籾殻以外の原料で多原料バイオコークスを製造する計画とした。

バーク、廃菌床及び製材くずについては、横手市森林組合、きのこ農家並

びに製材所から年間を通して安定して必要量を収集することができた。これ

ら原料は、7-10 月の籾殻の収集が困難になる期間の主原料として収集した。

平成 29 年度の原料収集実績及び収集コストを図表 2-1.2 に示す。各原料の

収集量はウェットベースで籾殻 270 トン、廃菌床 70 トン、バーク 170 トン、

その他原料として製材くず 10 トン、糠 200kg となった。

平成 29 年度の収集実績を基に、輸送コスト、積載コスト、原料コスト等

を考慮した収集コストを算出した。また、平成 29 年度は収集しなかった稲

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藁等の収集コストを平成 28 年度の収集実績から試算した参考値として掲載

している。

収集コストはそれぞれ、籾殻 3,025 円/トン、廃菌床 6,160 円/トン、バーク

3,493 円/トン、稲藁 48,480 円/トン、製材くず 13,642 円/トン及び糠 44,528

円/トンとなり、稲藁及び糠の収集コストが他の原料に比べて高額であるこ

とがわかる。製材くずにおいては、原料価格がついており、調達コストの低

減が困難であることがわかった。稲藁は、水田に散布された稲藁が含水率

50%であるのに対し、購入した稲藁は含水率が 20%と非常に乾燥していた

ため、ドライベースの調達コストを半額程度まで削減できた。

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図表 2-1.2 各原料の収集実績及び収集コスト

輸送距離(片道)[km]

燃料使用量[L]

燃料費[円]

籾殻 JA秋田ふるさと マルチリフト車 16,729 0 11.4 5.7 535 1.50 6 2,572 2,572 15 3,025 270 作業は1人、1日を想定

米農家マルチリフト車及び

人力83,645 0 17 8.5 797 2.00 1 42,620 42,620 50 85,240 - 作業は4人、1.25日を想定

松渕畳製造 軽トラック 50,187 7,500 16.5 8.3 774 0.25 8 31,284 38,784 20 48,480 - 作業は4人、1日を想定バーク 横手市森林組合 マルチリフト車 4,182 0 0.1 0.1 5 2.00 1 2,096 2,096 50 3,493 170 作業は1人、2時間を想定廃菌床 ヘルシー食産 マルチリフト車 2,091 3,000 11.1 5.6 521 4.50 1 696 3,696 50 6,160 70 作業は1人、1時間を想定

製材くず 打川製材所(大仙市) マルチリフト車 4,182 4,630 25.5 12.8 1,196 3.00 1 2,191 6,821 50 13,642 10作業は1人、2時間を想定おが屑のかさ比重0.2、コンテナ15m3

糠 コイン精米機 トヨタプロボックス 4,182 0 15 3 357.9 0.22 1 22,264 22,264 50 44,528 0.2作業は1人、2時間を想定30km走行し横手市内で200kg収集した場合を想定

剪定枝 横手市民 持ち込み - 0 - - - - - - 0持ち込み原料によって異なる

0 - 市民からの持ち込み

備考平成29年度全回収量

[トン]原料 収集先 方法

輸送費(収集1回あたり)収集量

[トン/回](WB)

収集回数[回/日]

稲藁

原料価格+収集コスト[円/トン]

(DB)

水分(%)人件費

[円]

収集コスト[円/トン]

(WB)

原料価格[円/トン]

原料価格+収集コスト[円/トン]

(WB)

マルチリフト車燃費 4 km/L

トヨタプロボックス燃費

10 km/L

軽油価格(税抜き)

93.8 円/L

ガソリン価格(税抜き)

119.3 円/L

人件費(税抜き) 16,729 人日(8時間)

試算条件

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32

(2)多原料 BIC 製造条件確立

①縦型製造設備による多原料 BIC の製造時間短縮化の基礎データの収集

製造時間の短縮化を図るための基礎データの収集を目的として、図表

2-1.1 中の 100 トン以上の製造を計画している多原料 BICNo.2(籾殻 70%、

バーク 20%、廃菌床 10%)について、加熱時間を 1,600 秒程度よりも短く

設定し、加熱温度を加熱工程の前半を高温、後半に低温と温度勾配をつけて

試作を実施した。原料の含水率、加熱温度については、昨年度の試作結果を

踏まえて設定し、調整した。また、見掛け密度、表面状態等について加熱温

度が一定である通常の加熱条件で製造したサンプルと比較した。

ア. 加熱温度、加熱時間を変化させた際のサンプルの見掛け密度への影響

イ. 加熱方式(図表 2-2.1)を変更し、加熱時間を短縮した際のサンプルの見

掛け密度への影響

図表 2-2.1 従来法と改善法の加熱方式

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アについて、加熱温度 160~220℃、加熱時間 900~1800 秒の条件で試作し、

サンプルの見掛け密度を調べた。結果を図表 2-2.2 に示す。

160℃は、1550 秒で見掛け密度の極大値が見られたものの、1.2g/cm3 以下で

あった。180℃は、900~1300 秒までは見掛け密度にほとんど影響が見られな

いものの、1550 秒から見掛け密度の急激な増加が見られ、1800 秒以上の加熱

で見掛け密度 1.2g/cm3 以上となった。200℃は、加熱時間の延長によって見掛

け密度の増加が観察され、1300 秒以上で約 1.2g/cm3 となった。220℃もまた、

加熱時間の延長によって見掛け密度の増加が観察され、1100 秒では 1.18g/cm3、

1300 秒以上で約 1.2g/cm3 となった。

以上の結果より、220℃では、加熱時間による見掛け密度の変動幅が小さく、

1100 秒の加熱でも約 1.2g/cm3 を維持できることがわかった。

図表 2-2.2 加熱温度、加熱時間の影響

1

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

800 1000 1200 1400 1600 1800

160℃

180℃

200℃

220℃

加熱時間[秒]

バイ

オコ

ーク

ス比

加熱温度、加熱時間の影響(水分8%固定)

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アで得られた結果より、前半を 220℃に設定、後半はヒーター電源を OFF

にして余熱で加熱する改善法の加熱方式で試作を実施した。220℃で 1100 秒

加熱した場合をベース条件とし、更に加熱時間を短縮した 700 秒加熱、550

秒加熱の際の見掛け密度を確認し、220℃での加熱時間の影響を調べた。結果

を図表 2-2.3 に示す。

220℃で 700 秒加熱、余熱で 400 秒加熱の場合、製品の見掛け密度は

1.20g/cm3 とベース条件の品質を維持できていた。一方、更に加熱時間を短縮

化した 220℃で 550 秒加熱、余熱で 550 秒加熱の条件では、見掛け密度が

1.15g/cm3 とベース条件から若干の低下が見られた。

以上の結果より、No.2(籾殻 70%、バーク 20%、廃菌床 10%)において、

加熱時間を従来の 1600 秒から約 30%短縮した 1100 秒でも製品の性状を維持

できることがわかった。また、1100 秒の加熱時間の内の 400 秒は余熱での加

熱でも十分であることがわかった。

図表 2-2.3 試作結果

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②多原料 BIC の評価

平成 30 年度に縦型製造設備で試作した多原料 BIC について、従来の評価

手法により、見掛け密度、冷間圧縮強度を測定し、その特性を定量化した。

これらの分析結果を図表 2-2.4~6 に示す。今年度縦型製造装置にて試作し

た多原料バイオコークスはいずれも冷間圧縮強度が鋳物用コークスの一般

的な冷間圧縮強度である 20MPa を上回る強度を有していることがわかる。

この中で も低い強度を示した表 1 の 603-1-1 で 35.4MPa と鋳物用コークス

の約 1.8 倍の強度を有しており、 も高い強度である表 3 の 708-2-2 では、

58.3MPa と約 3 倍の強度を示した。

図表 2-2.4 BIC の評価(630-1-1、630-2-1、701-1-20、701-2-2)

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図表 2-2.5 BIC の評価(701-2-7、701-2-13、701-2-16、708-2-1)

図表 2-2.6 BIC の評価(708-2-2、708-2-3)

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図表 2-2.7 に各バイオマスの分析結果、図表 2-2.8、9 に平成 27、28 年度の

試作結果のまとめを示す。平成 27、28 年度に縦型製造設備にて試作した各

原料混合パターンにおいて、原料の多様化によるメリットとデメリット等に

ついて整理・評価し、ガス化溶融炉の受け入れ条件である見掛け密度

1.2g/cm3 を満たす製造条件について整理した。

各原料混合パターンの多原料 BIC の製造条件については、図表 2-2.5、6

に記載の通りであり、複数のバイオマス原料を混合し多原料 BIC 化すること

で概ね見掛け密度 1.2g/cm3 を満足することがわかった。

原料の多様化のメリット、デメリットは、それぞれ以下が挙げられる。

ア. 原料多様化のメリット

籾殻や剪定枝など、単体では見掛け密度 1.2g/cm3 を満たすための

条件(温度、含水率、加熱時間等)が比較的限定されるバイオマ

ス原料は、廃菌床及びバークなど比較的高い性状の BIC が製造で

きる原料と混合することにより、見かけ密度 1.2g/cm3 の BIC を製

造可能な条件範囲が拡大する傾向にあり、より省エネルギーで製

造できる可能性がある。

製材くずや糠など単体では BIC への成型が困難、もしくは高密度

の BIC の製造が困難なバイオマス原料は複数種のバイオマスと混

合することにより、高密度の BIC を製造可能になる。

特定の原料に固執することなく、各地域で収集可能なバイオマス

原料を複数組み合わせることで年間を通して安定した製造が可能

になる。

イ. 原料多様化のデメリット

複数の原料に対応した保管スペースが必要。

原料処理ラインを複数備えることによる製造ラインの複雑化、も

しくは搬送前にプレミックスするといった処理工程が増える。

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図表 2-2.7 各バイオマスの分析結果

図表 2-2.8 平成 27 年度試作結果

バイオマス原料総発熱量[kcal/kg]

C[%]

H[%]

N[%]

S[%]

Cl[%]

灰分[%]

水分[%]

籾殻 3,950 40.2 5.24 0.27 <0.05 0.04 18.2 9.9

稲藁 4,030 41.2 5.57 1.30 0.15 0.54 13.1 10.0

糠 5,420 49.6 7.34 2.45 0.18 0.04 11.0 10.2

バーク 5,000 52.1 5.70 0.30 <0.05 0.04 1.87 10.0

製材くず 5,050 51.8 6.35 0.08 <0.05 <0.02 0.68 9.7

廃菌床(しいたけ)

4,310 45 5.62 1.58 0.10 <0.02 7.16 10.3

廃菌床(なめこ)

4,760 48.6 5.97 1.26 0.10 0.02 3.88 11.2

剪定枝 4,750 49.1 6.45 0.18 <0.05 <0.02 0.57 9.5

そば殻 4,760 49.9 5.85 0.70 <0.05 <0.02 1.68 10.3

大豆殻 4,610 47.2 6.33 1.11 0.10 0.04 3.50 10.3

含水率[%] 加熱温度[℃] 加熱時間[秒]

1 籾殻90%、廃菌床10% 8~10 180~200 1550~1800

2 籾殻80%、糠20% 6~12 160~200 1300~1800

3 籾殻80%、廃菌床20% 10~12 160~200 1550~1800

4 糠20%、バーク50%、製材屑10%、廃菌床20% 8~12 160~200 1300~1800

5 稲藁15%、バーク55%、製材屑10%、廃菌床20% 8~12 160~200 1300~1800

6 稲藁20%、バーク80% 8~12 160~200 1300~1800

7 稲藁20%、廃菌床80% 6~12 160~200 1300~1800

8 バーク20%、廃菌床80% 6~12 160~200 1300~1800

9 籾殻70%、廃菌床10%、剪定枝20% 8 200 1300~1800

10 籾殻50%、バーク20%、製材屑5%、廃菌床5%、剪定枝20% 8~12 180~200 1300~1800

11 糠15%、バーク30%、製材屑10%、廃菌床15%、剪定枝30% 6~12 160~200 1300~1800

12 稲藁10%、バーク35%、製材屑5%、廃菌床15%、剪定枝35% 8~12 160~200 1300~1800

13 籾殻 8 200 1800

14 稲藁 12 160~200 1300~1800

15 糠

16 バーク 8~12 180~200 1550~1800

17 製材屑

18 廃菌床 6~12 160~200 1300~1800

19 剪定枝 10~12 200 1550~1800

比重1.2以上を満たす製造条件原料組成No

単体では成形が困難

いずれの条件でも比重1.2を下回った

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図表 2-2.9 平成 28 年度試作結果

含水率 [%] 加熱温度 [℃] 加熱時間 [秒]

3 籾殻70%、バーク25%、廃菌床5% 12 170~190 1400~1600

5 バーク50%、廃菌床50% 12 150~190 1200~1600

6 籾殻60%、バーク10%、廃菌床10%、剪定枝20% 8~12 170~190 1200~1400

9籾殻60%、稲藁3%、糠2%、バーク20%、製材屑5%、廃菌床5%、剪定枝5%

12 170~190 1600

10 籾殻70%、バーク10%、廃菌床20% 8~12 170~190 1600

単独1 そば殻100% 6~10 160~170 1200~1600

単独2 大豆殻100% 8~12 190 1400~1600

特1 籾殻60%、バーク20%、そば殻20% 12 190 1400~1600

特2 籾殻60%、バーク20%、大豆殻20% 10~12 170~190 1400~1600

特3 バーク30%、廃菌床30%、そば殻20%、大豆殻20% 10~12 170~190 1400~1600

No 原料組成比重1.2以上を満たす製造条件

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図表 2-7 各多原料バイオコークスの基礎特性

No 試料重量[g]

高さ[mm]

比重[-]

冷間圧縮強度[MPa]

3 籾殻70%、バーク25%、廃菌床5% 845.5 97.52 1.104 69.0

5 バーク50%、廃菌床50% 754.2 79.48 1.210 74.7

6 籾殻60%、バーク10%、廃菌床10%、剪定枝20% 810.6 89.05 1.159 73.6

9籾殻60%、稲藁3%、糠2%、バーク20%、製材くず5%、廃菌床5%、剪定枝5%

577.4 61.77 1.190 41.0

10 籾殻70%、バーク10%、廃菌床20% 773.5 84.57 1.165 71.4

単独1 そば殻100% 868.9 91.30 1.210 54.7

単独2 大豆殻100% 902.6 91.93 1.250 85.2

特1 籾殻60%、バーク20%、そば殻20% 760.0 82.89 1.167 67.0

特2 籾殻60%、バーク20%、大豆殻20% 819.8 86.85 1.202 65.1

特3 バーク30%、廃菌床30%、そば殻20%、大豆殻20% 852.7 88.88 1.222 68.8

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③BIC の炉内燃焼シミュレーション

本事業が対象とする高温ガス化溶融炉(JFE エンジニアリング㈱製)にお

けるバイオコークスの炉内燃焼挙動を明らかにするためには、半炭化挙動

(トレファイド化)と高密度チャー燃焼挙動を把握し、現象が支配する新し

い影響因子を見出し、モデル化する必要がある。

従来までのチャー燃焼シミュレーションでは、密度/比重が大きくなると

チャー燃焼速度は増加し、重量減少が加速される燃焼モデルしか存在しなか

った。この理由として、一般的なバイオマスの燃焼挙動は、ペレットやブリ

ケット燃料のように圧密度が向上しても内部ミクロ空間まで圧壊すること

はなかった。今回、密度/比重とチャー燃焼速度を比例関係としてモデル化

して燃焼挙動をシミュレーションできたので BIC の石炭コークス代替とし

て等価熱量燃焼により報告する。

ア. BIC と石炭コークスの重量収率:m/m0

図表 2-2.8 石炭コークス、BIC の重量変化

BIC(Char)および炭化物の重量減少は、2 次関数近似式で近似できた

(R2=0.9995)。

BIC(VM)の重量減少は、4 次関数近似式で近似できた(R2=0.9998) 。

図表 2-2.1 より、BIC の揮発分 74%、チャー26%を得た。以下の検討に用い

る。

イ. BIC と石炭コークスの発熱量変化(1kg 当たり):Q

BIC(Total): 14.14MJ/kg (BIC(Char): 25MJ/kg、BIC(VM): 10.3MJ/kg)、コークス:

29.4MJ/kg として計算した。

コークス (イメージ)

BIC (Total)

BIC (VM)

BIC (Char)

BIC:スギ 3%170℃(横型燃焼炉での実験結果)

コークス:BIC 炭化物の燃焼結果を仮置き

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図表 2-2.9 石炭コークス、BIC の発熱量変化

ウ. BIC と石炭コークスのエネルギー放出量(1kg 当たり):dQ/dt

図表 2-2.9 で得られた発熱量変化曲線を微分し、単位時間当たりのエネル

ギー放出量とする。

図表 2-2.10 石炭コークス、BIC の単位時間当たりエネルギー放出量

エ. コークスの 30%熱量を BIC で代替

コークス 30%の熱量代替時、コークス重量 70%に対し、BIC 重量は 62.2%

必要。

コークス

BIC (Total)

BIC (VM)

BIC (Char)

コークス

BIC (Total)

BIC (VM)

BIC (Char)

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図表 2-2.11 コークスの 30%熱量を BIC で代替した時の重量収率

図表 2-2.12 コークスの 30%熱量を BIC で代替した時の発熱量

図表 2-2.13 コークスの 30%BIC 代替時の単位時間当たりエネルギー放出量

コークス 70%

BIC30% (Total)

BIC30% (VM)BIC30% (Char)

コークス 70% + BIC30%

コークス 100%

コークス 70%

BIC30% (Total)

BIC30% (VM)BIC30% (Char)

コークス 70% + BIC30%

コークス 100%

コークス 70%

BIC30% (Total)

BIC30% (VM)

BIC30% (Char)

コークス 70% + BIC30%

コークス 100%

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と を 簡易的に近似して、面積を求めると、3.7MJ/kg、2.1MJ/kg

となった。

次に、灰溶融燃焼試験予備試験を報告する。本実験は、灰の有効利用につい

て検討するべく、シャフト型キュポラ炉を用いて、スラグの燃焼試験を行い、

検討を行った。比較のため、バイオコークス(以下、BIC)2 種を用い、同様の試

験を行った。

オ. BIC 及びスラグの燃焼速度試験

本実験は、ナニワ炉機研究所製シャフト型キュポラ炉を使用し、BIC 及びスラ

グの燃焼試験を行い、その燃焼速度を測定し検討した。

(ア)試験装置

図表 2-2.14 にキュポラ炉の概略図、図表 2-2.15 に外観、図表 2-2.16 に断

面構造、図表 2-2.17 に基本仕様を示す。

図表 2-2.14 キュポラ炉概略

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図表 2-2.15 キュポラ炉外観

図表 2-2.16 キュポラ炉断面構造

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図表 2-2.17 キュポラ炉基本仕様

羽口面炉内径

(mm) 400 適正燃焼空気量 (㎥ N/min/㎡) 100

羽口面断面積 (㎡) 0.126 燃焼空気量(試験時) (m3N/min) 5.0

羽口本数 8 本 送風温度 半熱風

羽口角度 5° コークスベッド高さ (mm) 500

羽口内径 (mm) 30 羽口~炉底までの距離 (mm) 250

羽口比 22.3 コークスサイズ (mm) 50

(イ)供試材料

使用したBICは、JCOALにて製造された2種類のBICを用いた。図表2-2.18、

19 にその外観を示す。それぞれの BIC の原料の割合を図表 2-2.20 に示す。

BIC は、直径 100mm、高さ約 50mm である。

図表 2-2.18 Jcoal 製造 BIC1(5kg) 図表 2-2.19 Jcoal 製造 BIC2(5kg)

図表 2-2.20 BIC 原料割合(%)

もみ殻 バーク 廃菌床 枝

BIC1 60 10 10 20

BIC2 0 50 30 20

また、使用したスラグは、JCOAL にて生成されたものである。スラグは、粒

状で、そのままでは、燃焼試験ができないため、添加物として、セメント及び

水を追加し固めた。外観を図表 2-2.21 に示す。配合割合を図表 2-2.22 に示す。

なお、配合は、極力添加物を少なくするよう配合した。

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図表 2-2.21 スラグ外観(5kg)

図表 2-2.22 スラグ配合割合

スラグ セメント 水

72% 21% 7%

(ウ)試験方法

試験は、キュポラ炉での燃焼を止めることなく、連続して行った。試験条

件を図表 2-2.23 に示す。スラグは、石炭コークスと同時投入し、さらに酸素

付加も行った。なお、試験開始前及び試験間は石炭コークスを投入し、観測

用覗き窓までのベッドを作った。なお、石炭コークスは、粒度 50~80mm の

鋳物用コークスを使用した。

図表 2-2.23 試験条件

原料 投入量/回

(kg)

投入回数

(回)

送風量

(N / )

酸素付加

(%)

BIC1 5 10 5 0

BIC2 5 10 5 0

石炭コークス

+スラグ 5+5 5 3 2

燃焼速度の測定方法は、目視にて観測した。観測用覗き窓を基準とし、それ

を下回ると投入、燃焼させ、再びその基準に達した時間から測定した。

(エ)試験結果

図表 2-2.24 に BIC1、図表 2-2.25 に BIC2、図表 2-2.26 に石炭コークス+スラグ

の燃焼速度を示す。なお赤のラインはその平均を示す。

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48

図表 2-2.24 BIC1 燃焼速度

図表 2-2.25 BIC2 燃焼速度

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49

図表 2-2.26 石炭コークス+スラグ燃焼速度

これらの試験結果より、石炭コークス+スラグを燃焼させた時が、一番燃焼速

度が遅いことが分かった。また、BIC2 では、ばらつきがあるものの、BIC1 及び

石炭コークス+スラグにおいては、安定した燃焼であったことがわかる。試験間

の石炭コークスのみの投入時における平均消費量は、70~90kg/h であり、BIC1

の燃焼時と同様の値であることがわかった。

次に、それぞれの燃焼時における排ガス温度を図表 2-2.27 から図表 2-2.29 に

示す。排ガス温度は、キュポラ炉から再燃焼装置に流れるガスの温度を計測し

た。

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図表 2-2.27 BIC1 燃焼時排ガス温度

図表 2-2.28 BIC2 燃焼時排ガス温度

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図表 2-2.29 石炭コークス+スラグ燃焼時排ガス温度

燃焼速度において、ばらつきの見られた BIC2 の排ガス温度においては、急激

に温度上昇し、BIC1 では、ゆるやかな上昇、石炭コークス+スラグにおいては、

BIC 燃焼時と比較し、低温で安定することがわかった。試験間における石炭コー

クスのみの投入時における排ガス温度は、425.0~545.95℃であり、石炭コーク

ス+スラグ燃焼時の温度とほぼ同様の値であり、BIC の燃焼時の排ガス温度が高

いことがわかった。

(オ)まとめ

1) キュポラ炉において、BIC、石炭コークス+スラグいずれにおいても、ベ

ッドを維持し、燃焼可能であることがわかった。

2) BIC の燃焼は、その原料により違いがあり、燃焼速度、排ガス温度に影響

を与えることがわかった。

3) 石炭コークス+スラグの燃焼は、燃焼速度、排ガス温度ともに、石炭コー

クスのみの燃焼とほぼ同様の値をとることがわかった。

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後に、バイオコークスの評価及びガス化溶融炉での特性検討を目的とし、

大型の高温ガス化溶融炉内で発生している現象を模擬するため、シャフト型キ

ュポラ炉において、石炭コークスおよび BIC を燃料としたスラグの溶融試験を

行い、試験結果における石炭コークスとBICの比較検討を行ったので報告する。

カ. スラグ溶融試験

(ア)試験装置

図表 2-2.30 にキュポラ炉の概略図、図表 2-2.31 に外観、図表 2-2.32 に断面構

造、図表 2-2.33 に基本仕様を示す。

図表 2-2.30 キュポラ炉概略

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図表 2-2.31 キュポラ炉外観

図表 2-2.32 キュポラ炉断面構造

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図表 2-2.33 キュポラ炉基本仕様

羽 口 面 炉 内 径

(mm) 400 適正燃焼空気量 (㎥ N/min/㎡) 100

羽口面断面積 (㎡) 0.126 燃焼空気量(試験時) (m3N/min) 5.0

羽口本数 8 本 送風温度 半熱風

羽口角度 5° コークスベッド高さ (mm) 500

羽口内径 (mm) 30 羽口~炉底までの距離 (mm) 250

羽口比 22.3 コークスサイズ (mm) 50

(イ)供試燃料

使用した石炭コークスは粒度 50~80mm の鋳物用コークスを使用した。BIC は

一般財団法人石炭エネルギーセンター(以下「J-Coal」という。)にて製造され

た BIC-3 を用いた。図表 2-2.34~37 にそれぞれの外観を示す。石炭コークスお

よび BIC の発熱量、BIC の原料割合を図表 2-2.38 に示す。BIC の大きさは直径

100mm、高さ約 50mm である。

図表 2-2.34 石炭コークス(5kg) 図表 2-2.35 石炭コークス

図表 2-2.36 J-Coal 製造 BIC-3(5kg) 図表 2-2.37 J-Coal 製造 BIC-3

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図表 2-2.38 発熱量および BIC 原料割合

発熱量

[kcal/kg]

もみ殻

[%]

バーク

[%]

廃菌床

[%]

合計

[%]

石炭コークス 7,194 - - - -

BIC-3 4,232 60 20 20 100

本試験では石炭コークスのみでスラグ溶融を実施し、さらに石炭コークスの

一部を BIC に置き換えたスラグ溶融を行い、比較評価した。燃料は 5kg を 1 バ

ッチとして小分けして供給した。

図表 2-2.39 には石炭コークスと BIC の混入割合を示す。BIC の混入割合は熱

量等価とし、石炭コークス 30%発熱量相当を代替するように BIC 重量を調整し

て混合した。図表 2-2.40 には石炭コークス+BIC-3 の外観写真を示す。

図表 2-2.39 石炭コークスと BIC の混合割合

混合割合[%] 重量[kg/5kg] 部分発熱量[kcal/kg]

石炭コーク

BIC-3 石炭コーク

BIC-3 石炭コーク

BIC-3

石炭コークス 100 0 5.0 0 7,194 0

石 炭 コ ー ク ス

+BIC-3 70 30 3.5 2.55 5,036 2,158

図表 2-2.40 石炭コークス+J-Coal 製造 BIC-3(5kg)

(ウ)スラグ

使用したスラグは盛岡・紫波地区環境施設組合の高温ガス化溶融炉にて生成

された水砕スラグを主原料とした。図表 2-2.41 に水砕スラグを示す。

水砕スラグは粒状で、そのままでは燃焼試験ができないため、添加物として、

セメント及び水を追加し固めた。スラグ外観を図表 2-2.42、43 に示す。

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図表 2-2.41 水砕スラグ外観

図表 2-2.42 スラグ外観(5kg) 図表 2-2.43 スラグ外観

図表 2-2.44 スラグ配合割合

水砕スラグ セメント 水

69.0wt% 20.7wt% 10.3%

(エ)試験方法

試験は燃焼を止めることなく、連続して行った。試験の概略を以下に示す。

1) 燃料を投入し、観察用除き窓(羽口からの高さ 400mm)の高さにベッド

を作製

2) ベッドが安定したところで、スラグを投入

3) スラグ投入と同時に酸素富化(3%)開始

4) 溶融したスラグが出湯口から全て出るまで、ベッドを維持するよう燃料

を追加投入

燃焼速度の測定方法は、目視にて観測したベッド高さで判定。観測用覗き窓

を基準とし、それを下回ると投入、燃焼させ、再びその基準に達した時間から

測定した。

石炭コークス+BIC-3 の試験条件を図表 2-2.45 に、石炭コークスのみの試験条

件を図表 2-2.46 に示す。試験の順番は「石炭コークス+BIC-3」、「石炭コークス

のみ」の順番で実施した。

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図表 2-2.45 石炭コークス+BIC-3 の試験条件

イベント 経過 投入量 熱風(燃焼空気) 酸素

時間

[min]

石炭コーク

[kg]

BIC-3

[kg]

スラグ

[kg]

流 量

[Nm3/min]

温度

[℃]

富化

[+ %]

燃料投入 0 3.5 2.55 5.0 104 3.0

燃料投入 4 3.5 2.55 5.2 122

燃料投入 9 3.5 2.55 5.1 146

燃料投入 15 3.5 2.55 5.1 175

燃料投入 18 3.5 2.55 5.1 186

スラグ投入 27 5.0 5.0 219 3.0

燃料投入 30 3.5 2.55 5.2 228 3.0

燃料投入 32 3.5 2.55 5.1 234 3.0

スラグ出湯 33

燃料投入 35 3.5 2.55 5.0 240 3.0

燃料投入 38

図表 2-2.46 石炭コークスのみの試験条件

イベント 経過 投入量 熱風(燃焼空気) 酸素

時間

[min]

石炭コーク

[kg]

BIC-3

[kg]

スラグ

[kg]

流 量

[Nm3/min]

温度

[℃]

富化

[+ %]

燃料投入 0 5.0 - 5.1 319 3.0

燃料投入 4 5.0 - 5.0 325

燃料投入 8 5.0 - 5.0 331

燃料投入 11 5.0 - 5.0 333

燃料投入 15 5.0 - 4.9 333

スラグ投入 21 5.0 4.9 333 3.0

燃料投入 26 5.0 - 5.1 335 3.0

燃料投入 28 5.0 - 5.1 339 3.0

スラグ出湯 28

燃料投入 5.0 - 4.8 340 3.0

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(オ)試験結果

図表 2-2.47 に石炭コークス+BIC-3、図表 2-2.48 に石炭コークスのみの燃料消

費速度を示す。なお赤いラインはその平均値を示す。燃料消費速度の平均値比

較では、石炭コークスのみで 563Mcal/h であるのに対し、熱量等価で 30%を BIC

に置き換えた石炭コークス+BIC-3 が 493Mcal/h と燃料消費速度が遅い。

図表 2-2.49 に石炭コークス+BIC-3、図表 2-2.50 に石炭コークスのみの生成ガ

ス温度を示す。生成ガス温度の平均値比較では、石炭コークスのみが 780℃であ

るのに対し、石炭コークス+BIC-3 が 524℃と低い。

図表 2-2.47 石炭コークス+BIC-3 の燃料消費速度

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図表 2-2.48 石炭コークスのみの燃料消費速度

図表 2-2.49 石炭コークス+BIC-3 の生成ガス温度

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図表 2-2.50 石炭コークスのみの生成ガス温度

これらの結果を総合的にみると、試験中はキュポラの蓄熱が十分ではなく、

温度平衡に達していなかったため、試験順番の影響が出た可能性が考えられる。

これらの結果に対し、図表 2-2.51 にスラグ出湯までの時間を示す。

図表 2-2.51 スラグ出湯までの所要時間

スラグ投入時間

[min]

スラグ出湯開始

時間

[min]

スラグ出湯まで

所要時間[min]

石炭コークス+BIC-3 27 33 6

石炭コークスのみ 21 28 7

「石炭コークスのみ」より「石炭コークス+BIC-3」の方が燃料の消費速度が

遅く、排ガス温度が低いにもかかわらず、スラグ出湯までの時間がわずかに短

い。

これらの結果から、シャフト型炉における燃料として、石炭コークスに対し

熱量等価で BIC に置き換える場合、燃焼性能、溶解性能で 30%までは問題なく

実施できると言える。

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また、溶解性能については BIC 転換によるアドバンテージがある可能性を示

唆している。

(カ)まとめ

キュポラ炉の燃料として石炭コークスの一部を熱量等価で BIC へ置き換え

た結果、30%置き換えでは燃焼可能であることがわかった。

スラグの溶解性能においても 30%までの BIC では問題がなく、さらに BIC

転換による利点がある可能性を示した。

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(3)多原料 BIC 連続製造技術確立

①横型製造設備による多原料 BIC の連続製造

横型製造設備にて、昨年度の原料収集実績、連続製造結果及び縦型製造設

備の試作結果を踏まえて設定した(1)の図表 2-1.1 中に示す混合パターン

No.1~No.5 について、平成 29 年 4 月 1 日から 12 月 22 日にかけて連続製造

を実施した。平成 29 年度の多原料 BIC 製造実績を図表 2-3.1 に示す。

No.1~3 は製造計画量 100 トンに対し、それぞれ 123 トン、77 トン、100

トン製造した。No.4、5 は計 40 トンの製造計画量に対し、計画通り 40 トン

製造した。平成 29 年度の多原料 BIC の製造量は総計 340 トンとなり、計画

製造量を満たした。

製造設備の操業は、7~20 時の 13 時間を有人運転とし、作業員が原料の

粉砕、乾燥及び投入を行い、日中の有人操業及び夜間の無人操業分の原料を

調製し、20~7 時の 11 時間は無人運転で横型製造装置のみ稼動とした。

図表 2-3.1 横型製造装置の製造実績

※製材くず、稲藁、剪定枝、糠など

また、1 日毎の製造量を図表 2-3.2 に示す。横軸に運転日、縦軸に 1 日の

バイオコークス製造量をプロットした。製造量がゼロの日は運転を停止した

日であり、計画休業と保守メンテナンス実施のいずれかである。

後述の乾燥機の配置換え及び前処理機器の増設により、1 日あたりの原料

調製量が増加したため、No.1 の製造期間後半より BIC の製造量が右肩上が

りになっている。No.5 の製造期間にて BIC の製造量が減少しているのは、

No.5 を構成する原料組成に籾殻が含まれておらず、全てが乾燥を原料であ

るため、原料調製に時間を要したためである。10 月以降は後述の多原料 BIC

の製造時間短縮の条件の適用により、BIC の製造量が更に増加している。

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図表 2-3.2 横型製造装置の 1 日ごとの製造量(4/1~12/22)

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②多原料バイオコークスの製造時間短縮及び省エネ化の検証

縦型製造設備で収集した製造時間短縮の基礎試験データを踏まえて、横型

製造設備にて製造時間短縮のための製造条件による少量の連続試作を実施

した。横型製造設備の運転状況の都合上、No.1(籾殻 70%、バーク 25%、

廃菌床 5%)の製造期間中に実施した。

ア. 試作方法

製造プロセスの省エネルギー化を図り、バンドヒーターの上流側のバン

ドヒーターは通常温度の約+20℃に設定にし、下流側をOFFとした。なお、

電熱ヒーターを OFF にした加熱区域は、周囲を断熱材で覆い保温するこ

とで、隣のバンドヒーターからの伝熱及び反応容器内の BIC の熱により

140℃程度の温度を示した。

横型製造設備の原料投入~押込~排出までのピストン動作及び所要時

間を図表 2-3.3 に示す。BIC の製造時間を短縮化するにあたり、各ピスト

ン動作の内の「押込」動作について、通常設定の 61.5 秒から 12~35 秒短

縮し、原料の投入~加熱~冷却~排出までの合計の製造時間を 8.5~25%

短縮化した。

排出されたサンプルは、通常条件で製造したものと見掛け密度及び冷間

圧縮強度を比較し、製造時間短縮の BIC 性状への影響及び BIC 製造にか

かるエネルギーへの影響についてそれぞれ評価した。

図表 2-3.3 BIC 成型機の 1 サイクルの動作時間

イ. 試作結果

図表 2-3.4 に各製造時間の BIC の性状を示す。いずれの条件のおいても、

表面状態には差異は見られなかった。見掛け密度は、いずれの製造時間の

いても 1.20g/cm3 付近の値を示した。また、冷間圧縮強度に関しては、い

ずれの条件においても目標値となる石炭コークスの冷間圧縮強度 20MPa

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を上回ることがわかった。

以上の結果より、多原料 BIC No.1 において、押込時間を通常条件の 61.5

秒から 26.5 秒に短縮し、製造時間を 25%短縮化した条件において、見掛

け密度及び冷間圧縮強度を維持できることがわかった。

図表 2-3.4 BIC 性状に対する製造時間の影響

図表 2-3.5 加熱温度及び押込時間と見掛け密度及び圧縮強度の関係

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ウ. 省エネルギー効果

成型機 8 機において、上述の製造時間短縮の条件を適用して連続製造を実

施し、1 時間あたりの BIC 製造個数及び成型機の電力量を確認した。それぞ

れの結果を図表 2-3.6 に示す。

時短条件を適用した場合、ベース条件と比較して BIC 製造数は 140 個か

ら 178 個と 27%増となった。また、BIC1 個あたりの電力量はベース条件で

0.100kW/個であるのに対し、時短条件では 0.087kW/個と 13%の省エネルギ

ー効果が見られた。

2 つのバンドヒーターの一方の設定温度を上昇させたものの、バンドヒー

ターのもう一方を OFF にし、ピストンの押込時間を短縮化したことで BIC1

個を製造するのにかかる電力量が削減されたと推察される。

図表 2-3.6 BIC の製造量及び電力量

エ. 安定した製造に向けて

成型機 8 機に 25%時短条件を適用し連続製造したところ、一部の成型機

において排出圧力が増加するなど、反応容器内の BIC 閉塞の前兆が見られた。

排出圧力が上昇した成型機は、他の成型機に比べて反応容器の内壁が磨耗

していたことが原因と推定され、時短条件の適用は、反応容器の僅かな違い

においても大きく影響を受けると思われる。時短条件を適用した安定製造を

行うには、反応容器の磨耗具合の管理の徹底や含水率等の原料前処理具合の

緻密なコントロールが求められる。

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③試験先への多原料 BIC の運搬

製造した多原料 BIC のうち、243 トンを岩手県紫波郡矢巾町のガス化溶融

炉方式一般廃棄物処理施設へ、また 67.4 トンを鋳造メーカー2 社にそれぞれ

輸送した。平成 29 年度は、事業化を見据えて従来のフレコンバッグによる

輸送に加えてバルク輸送も実施した。出荷実績を図表 2-3.7~10 に示す。

図表 2-3.7 多原料 BIC のガス化溶融炉への出荷実績(フレコンバッグ)

搬出日 搬出量[トン] 搬出日 搬出量[トン]

7/29 12.5 8/26 12.2

8/3 12.4 8/30 12.1

8/8 12.6 9/2 12.8

8/12 12.4 9/6 11.9

8/16 12.4 10/23 7.7

8/21 12.1

合計 131.1 トン

図表 2-3.8 多原料 BIC のガス化溶融炉への出荷実績(バルク)

搬出日 搬出量[トン] 搬出日 搬出量[トン]

10/17 10.5 11/22 6.1

10/27 8.7 11/24 8.1

11/1 9.4 11/28 6.2

11/6 9.0 12/1 6.1

11/10 7.1 12/5 6.6

11/14 7.0 12/8 5.1

11/17 6.1 12/12 6.8

11/20 5.5 12/15 4.1

合計 112.4 トン

図表 2-3.9 多原料 BIC の産業用キュポラへの出荷実績(フレコンバッグ)

搬出日 搬出量[トン]

9/1 11.8

9/8 10.0

10/11 5.6

合計 27.4 トン

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図表 2-3.10 多原料 BIC の産業用キュポラへの出荷実績(バルク)

搬出日 搬出量[トン]

1/15 10.0

1/29 10.0

2/22 10.0

3/8 10.0

合計 40.0 トン

図表 2-3.11 多原料 BIC のバルク積みの様子

④製造設備の改造

乾燥機の配置換え、乾燥原料の原料搬送コンベヤへの搬送方法の改善及び

貯留切り出し装置のブリッジ防止の撹拌翼を改造することで、これまで手動

で行ってきた原料搬送及び混合工程の自動化を検証した。

また、粉砕機、擂潰機の前処理機器類とその上・下流に設置された原料移

送用コンベヤの動作を連動させることで各機器の稼働率の 適化を行った。

ア. 製造設備の自動化

(ア) 乾燥機 No.1、No.2 の配置換え

2 機の乾燥機の配置を平成 28 年度までのシリーズ配置からパラレル配

置に変更した。これまでのシリーズの配置では、乾燥機 No.1、No.2 の処

理容量の差から No.2 が律速となっており、バランスを取るために乾燥機

No.1 の設定をマイルドにする必要があり、原料調製量が頭打ちになって

いた。

図表 2-3.12 に示すように乾燥機への原料移送コンベヤに分配機能を付

加し、乾燥機 No.1、No.2 をパラレルに配置したことで、1 日あたりの原

料調製量が増加した。

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図表 2-3.12 乾燥機の配置換え

(イ) ベルトコンベヤ、エアノッカー増設による原料・製品輸送の自動化

図表 2-3.13 に示すように乾燥機出口-原料貯留槽、成型機出口にベルト

コンベヤを配置し、これまで手動で行ってきた原料の搬送及びフレコンへ

の袋詰め作業の自動化した。また、エアノッカーを増設し、原料ブリッジ

の自動解消を図った。

図表 2-3.13 ベルトコンベヤの増設

(ウ) 原料混合能力の強化

原料貯留槽には、元々、貯留槽内でのブリッジ防止のための撹拌翼が備

わっているものの、槽内の原料を撹拌するまでの能力は無く、貯留槽に投

入する前に手動で撹拌していた。

図表 2-3.14 に示すように、貯留槽底部の撹拌翼に鋼棒を取り付けること

で撹拌能力の強化を図った。また貯留槽の外壁を切り出し、アクリル板を

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張ることで、外部からの貯留槽内の原料量の視認性の向上を図った。

図表 2-3.14 原料貯留槽の改造

イ. 製造設備の省エネルギー化

BIC 製造における乾燥工程の灯油消費量の削減のために、横手市周辺地域で

豊富に存在する籾殻を乾燥熱源で使用するため、籾殻燃焼器を導入し、乾燥

機 No.2 に接続した。籾殻燃焼器を図表 2-3.15 に示す。

籾殻燃焼器の燃焼熱を乾燥機 No.2 に供給することで、乾燥機 No.2 の 1 日

の灯油使用量約 60L が削減された。

図表 2-3.15 籾殻燃焼器(左:燃焼部、右:熱風供給部)

⑤製造設備の保守

ア. 日常点検

多原料 BIC 製造設備の日常点検を行い、健全な状態を保つようにした。

イ. 設備の保守

多原料 BIC 製造設備は、70 トン程度製造後もしくは原料混合比が切り替

わる際に反応容器、油圧ユニット、バイオマス投入部及び製品排出部等に

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71

ついて保守を行った。

ウ. その他

破砕機、乾燥機、擂潰機、コンベヤ等の原料ハンドリング機器類につい

て、それぞれの稼働状況に基づき保守を実施した。

多原料 BIC 製造サイトに定格能力 2.4 トン/日の多原料 BIC 横型製造設備一

式及び高水分原料の粉砕と乾燥を行うための前処理設備一式を昨年度に引き

続きリースにて導入した。

また、重要な管理指標である原料バイオマス及び多原料 BIC の水分をそれ

ぞれ測定して原料性状及び製造の確認を行うため、昨年度に引き続き水分計 2

台をリースにて導入した。

収集した原料バイオマス及び製造した多原料 BIC をハンドリングするため

にホイールローダー及びフォークリフトを昨年度に引き続き各 1 台レンタル

で調達した。

また、製造設備の日常点検のため業務用集塵機 1 台を昨年度に引き続きリ

ースにて導入した。

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72

(4)一般廃棄物処理施設での CO2 排出量 25%削減の長期実証技術

図表 2-18 に高温ガス化直接溶融炉(以下、ガス化溶融炉)の炉内断面図

を示す。炉頂から廃棄物、石炭コークスが投入される。廃棄物層の上段では、

水分の蒸発、可燃分の熱分解が進行する。廃棄物中の固定炭素と灰分は、投

入された石炭コークスとともに溶融炉内を予熱されながら下降し、炉下部に

到達する。炉下部では、コークス充填層が形成され、主羽口から供給された

酸素富化空気により石炭コークスが燃焼し、その燃焼熱で灰分が溶融され、

溶融スラグとして出滓口から連続的に排出される。炉下部から廃棄物層にか

けて発生した可燃性ガスは、溶融炉後段の二次燃焼室で完全燃焼する。完全

燃焼したガスは、ボイラーで熱回収され、排ガス処理系へ送られる。

この化石燃料由来の石炭コークスは温室効果ガスである CO2 を生成する

が、バイオマス由来の BIC で一部を置換し削減することが可能である。

本年度は、多原料 BIC を投入し、石炭コークス削減率約 25%で、1 ヶ

月間程度の連続期間を含む約 4 ヶ月間の運転を行い、長期安定運転の実証

を行った。さらに、試験期間内で計 1 ヶ月間程度、石炭コークス削減率約

35%の運転にチャレンジし、高代替率運転時の課題を把握し、対処法を確

立した。

図表 2-4.1 ガス化溶融炉

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73

①投入装置の保守及び調整

秋田県横手市で製造した多原料 BIC を岩手県紫波郡のガス化溶融炉処理

施設に供給するための投入装置を安定かつ安全に稼動させるため、補修、

調整を実施した。BIC 受入の省力化に向け、ダンプトラック投入に対応した

BIC 受入部の改造工事を実施した。

副資材供給設備 BIC 受入ホッパ仕切壁、副資材供給設備 BIC 投入用計量

排出機空動ゲート弁及び副資材供給設備 BIC 投入用電磁弁盤の 3 品を昨年

度に引き続きリースにて導入した。

実施した工事の内容を図表 2-4.2 に示す。

隔壁の位置を変更することで、BIC の受入れ容量を 9tから 12tに増加し

た。また、可動式壁の形状を変更することで、開口部が拡大した。工事後

の開口部の写真を図表 2-4.3 に示す。これらの工事の結果、これまでの重機

を使用したフレコンバッグからの投入だけでなく、10tダンプトラックか

らの直接投入という安価な方法が採用可能となった。

BIC ホッパ下部の供給機の形状を変更し、狭窄部を拡大した。また、BIC

ホッパ下部にノッカを設置した。供給機の形状変更とノッカ設置後の写真

を図表 2-4.4 に示す。これらの工事の結果、BIC の閉塞を回避することが可

能となった。

図表 2-4.2 投入装置の工事内容

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図表 2-4.3 工事後の開口部

図表 2-4.4 工事後の供給機と BIC ホッパ下部

②多原料 BIC の事前評価

実証試験計画策定のため、秋田県横手市で製造した代表的な多原料 BIC

4 種類につき石炭コークス評価用の強度試験等の分析を実施し、置換効果

を推定した。なお、多原料 BIC の分析は専門業者に外注した。

測定結果から置換効果を推定した結果を図表 2-4.5 に示す。推定方法お

よび結果の詳細を以下に記す。

ア .寸法

BIC が揮発分を保持したまま炉下部に到達して石炭コークスを

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代替するためには、廃棄物層中での加熱による揮発分の脱離を抑

制するため一定以上の厚さ( 短径)が必要である。これまでの

知見から、ガス化溶融炉において揮発分を保持したまま石炭コー

クスを代替可能なバイオマス燃料は、 短径が 30mm より大きい

ものであることがわかっている。本試験で用いる BIC は直径

100mm、長さ 50mm から 70mm であり、この条件を満たしていた。

イ .重量

BIC が揮発分を保持したまま炉下部に到達して石炭コークスを

代替するためには、速やかに廃棄物層を降下するよう、1 粒子が

一定以上の重量を持つことが必要である。これまでの知見から、

ガス化溶融炉において揮発分を保持したまま石炭コークスを代替

可能なバイオマス燃料は、1 個あたりの重量が 200g より大きいも

のであることがわかっている。本試験で用いる BIC は 1 個あたり

430g から 610g であり、この条件を満たしていた。

ウ .見掛密度

BIC が廃棄物層を通過する間に崩壊して小さくなると、炉下部

に到達する前に消費されることになる。BIC 1 個あたりの体積と

重量から算出する見掛密度は、この崩壊しやすさと相関を持つ。

平成 27 年度、BIC では見掛密度が 1.2g/cm3 より大きいことが必要

であるという基準を設定した。本試験で用いる BIC の見掛密度は

1.2 g/cm3 であり、条件を満たしていた。

エ .発熱量

炉下部に到達した BIC は主羽口から供給された酸素富化空気によ

り燃焼し発熱するが、一定以上の発熱量を持つことが必要である。こ

れまでの知見から、ガス化溶融炉において石炭コークスを代替可

能なバイオマス燃料は、低位発熱量が 13MJ/kg より大きいもので

あることがわかっている。本試験で用いる BIC では 14MJ/kg から

16 MJ/kg であり、この条件を満たしていた。

オ .ドラム強度

石炭コークスの強度を評価する指標としてのドラム強度 DI3015

を、BIC にも適用した。簡便な強度はウ.の見掛密度で推定でき

るが、本測定ではより直接的な数値が得られる。これまでの知見

から、ガス化溶融炉において石炭コークスを代替可能なバイオマ

ス燃料は、乾留前の DI3015 が 90%より大きいものであることがわ

かっている。本試験で用いる BIC では 91%から 98%であり、この

条件を満たしていた。

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カ .CO2 反応後強度

石炭コークスの炉内での挙動を評価する指標である CO2 反応後

強度 CSR(+2.8mm)を、BIC にも適用した。これまでの知見から、

石炭コークスの一部を代替する燃料については、CSR(+2.8mm)が

50%未満であると炉下部に形成されるコークス充填層に通気障害

を与えないことがわかっている。本試験で用いる BIC では 0%か

ら 6%であり、この条件を満たしていた。

以上より、実証試験で用いる多原料 BIC は、等価熱量程度の石炭コーク

スを代替できるものと推定した。

図表 2-4.5 BIC の石炭コークス置換効果推定

③実証試験計画の策定

実証試験の詳細計画を、処理施設の管理者と連携し、施設のごみ処理計

画を滞らせることの無い様に策定した。

策定した実証試験計画を図表 2-4.6 に示す。

多原料 BIC は 4 種類、計 240 トン程度を使用し、1 ヶ月間程度の連続期

間を含む約 4 ヶ月間、石炭コークス代替燃料として使用して、石炭コーク

ス削減率約 25%にて操業し、長期連続運転の更なる安定化に向けた問題を

把握し、対処方法を確立する計画とした。また、試験期間内で計 1 ヶ月間

程度、石炭コークス削減率約 35%の運転を行い、高代替率運転時の課題を

把握し、対処法を確立することとした。さらに、試験期間内で 1 週間程度

BIC 投入量を増加させ、削減率の上限を確認する試験を実施することとし

た。試験時は、多原料 BIC を投入し、炉下部から排出されるスラグ温度を

維持するように石炭コークスを削減するものとした。

また、9 月中旬から 10 月中旬までの間に、前記①の改造工事を実施し、

測定項目 測定結果 基準 判定

寸法 φ100×50~70 mm 最短径 > 30mm ○

重量 430~610 g > 200 g ○

見掛密度(硬さと相関) 1.2 g/cm3 > 1.2g/cm3 ※ ○

発熱量 LHV = 14~16 MJ/kg LHV > 13MJ/kg ○

ドラム強度(乾留前の硬さ)

DI3015 = 91~98 % DI30

15 > 90 % ○

CO2反応後強度(コークスベッド障害有無)

CSR(+2.8mm) = 0~6% CSR(+2.8mm) < 50% ○

※ バイオコークスに限定した数値としてH.27年度設定

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その後の試験期間内にダンプトラックから補助ホッパへ BIC を直接投入す

るテストを行うこととした。

図表 2-4.6 実証試験計画

④実証試験の実施

平成 29 年 7 月から平成 29 年 12 月までの期間内で、1 ヶ月間程度の連続

期間を含む約 4 ヶ月間、多原料 BIC 243 トンを石炭コークス代替燃料とし

て使用して、石炭コークス削減率約 25%にて操業し、長期連続運転の更な

る安定化に向けた問題の把握と対処方法の確立をした。また、試験期間内

で計 1 ヶ月間程度、石炭コークス削減率約 35%の運転を行い、高代替率運

転時の課題を把握し、対処法を確立した。さらに削減率上限確認試験を行

い、 大 51%削減を達成した。

上記の改造工事実施後、ダンプトラックにより搬入されたバルク荷姿の

多原料 BIC を、補助ホッパへ直接投入できることを確認した。

以下に結果の詳細を記す。実証試験で使用した多原料 BIC 4 種類の原料

配合を図表 2-4.7 に、実証試験の結果を図表 2-4.8 および図表 2-4.9 に示す。

試験は平成 29 年 7 月 31 日から 9 月 19 日までの期間および 10 月 18 日

から 12 月 19 日まで期間の、114 日間実施した。この内、8 月 7 日、8 月 8

日および 11 月 21 日は排ガス測定があり、石炭コークスのみの通常操業時

の排ガス成分を測定するために、BIC 投入を停止した。BIC 投入した全期

間の平均の石炭コークス削減率は 31%となった。

試験期間内で 1 ヶ月間以上の連続期間となったのは、8 月 8 日から 9 月

19 日までの期間(43 日間、削減率平均 33%)および 10 月 18 日から 11

月 21 日までの期間(35 日間、削減率平均 29%)であった。また、図表 2-4.8

0

20

40

60

80

100

石炭コークス投入量(%)

バイオコークス投入量(kg/h)

△35%△25%

バイオコークス 計 240 t

△25%

△45%

050

100150200

7/26 8/5 8/15 8/25 9/4 9/14 9/24 10/4 10/14 10/24 11/3 11/13 11/23 12/3 12/13 12/23

削減率上限確認試験

改造工事

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中に示した計 30 日間、石炭コークス削減率 35%以上の運転を達成した。

さらに、図表 2-4.9 中に示した期間に削減率上限確認試験を行い、 大削

減率 51%を達成した。

前記の改造工事後、図表 2-4.9 中に示したように、ダンプトラックによ

る BIC 直接投入を計 16 回実施し、特に問題がないことを確認した。

ガス化溶融炉の操業については、石炭コークスおよび BIC 投入量変更、

主羽口送風条件の微調整以外の運転条件の変更は必要なく、通常通りの操

業を継続すればよいことを確認した。

図表 2-4.7 実証試験で使用した BIC 原料配合

図表 2-4.8 実証試験結果(前半)

BIC原料配合(%)100

20

80

60

40

0

樹⽪

廃菌床籾殻

BICNo.1

⽊材チップ

BICNo.2

BICNo.4

BICNo.5

25

5

70

20

10

70

35

15

50

20

50

30

0

50

100

150

200

7/25 8/1 8/8 8/15 8/22 8/29 9/5 9/12 9/19

⽯炭コークス投⼊量(%)

バイオコークス投⼊量(kg/h)排ガス測定

BIC No.1

削減率 35%

0

20

40

60

80

100

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図表 2-4.9 実証試験結果(後半)

0

50

100

150

200

10/14 10/21 10/28 11/4 11/11 11/18 11/25 12/2 12/9 12/16

0

20

40

60

80

100

BIC No.5⽯炭コークス投⼊量(%)

バイオコークス投⼊量(kg/h) 排ガス測定

BIC No.4

削減率51%

削減率上限確認試験

BIC No.2

ダンプ受入

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⑤データ解析

多原料 BIC の性状と、実証試験で採取したデータを解析し、多原料 BICを長期投入する運転での石炭コークス代替効果の評価を行った。

本試験結果を評価するにあたり、BIC 使用率、石炭コークス削減率および

石炭コークス置換率を以下と定義し、これらの指標を用いてデータ解析を行

った。

BIC 使用率 = B/Co × 100 (wt%)

石炭コークス削減率 = (Co−C)/Co × 100 (wt%)

石炭コークス置換率 = (Co−C)/B × 100 (wt%)

ここで,Co はベース条件(石炭コークスのみによる操業)における石炭

コークス原単位 (kg/t-ごみ),C は本試験中の石炭コークス原単位 (kg/t-ごみ),

B は本試験中の BIC 原単位 (kg/t-ごみ)を示す。

図表 2-4.10 に BIC 使用率と石炭コークス削減率の関係を示す。BIC が等価

熱量の石炭コークスを削減した場合を図中に青線で示す。石炭コークス削減

率は、BIC 使用率 80%以下の領域においては、BIC 使用率にほぼ比例して増

加した。BIC 使用率が 80%を超える領域では、BIC 使用率を増加させても石

炭コークス削減率は殆ど増加しなかったが、BIC 使用率 110%付近で 大値

51%に到達した。試験データは概ね等価熱量の線上にプロットされることか

ら、4 種類の BIC はいずれも等価熱量の石炭コークスを代替可能であると評

価できる。等価熱量の石炭コークスを置換する 大の削減率は約 45%であっ

た。

図表 2-4.11 に BIC 使用率と石炭コークス置換率の関係を示す。上記と同

様に等価熱量を表す線を図中に青線で示す。この図からも、BIC 使用率 80%

以下の領域では、等価熱量程度の石炭コークスを置換し、BIC 使用率 80%を

超えるにつれ置換率が低下すると評価できる。

⑥実証試験後の確認

実証試験終了後の通常運転で、多原料 BIC を投入したことによる影響の

生じないことを確認した。

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図表 2-4.10 BIC による石炭コークスの削減率

図表 2-4.11 BIC による石炭コークスの置換率

BIC使用率B/Co×100 [wt%]

石炭

コー

クス

削減

率(C

o-C

)/C

100

[wt%

]

*小マークは16h–5day、大マークは5–10dayの期間の条件を表す。

0

10

20

30

40

50

60

0 20 40 60 80 100 120 140

BIC No.1

BIC No.2

BIC No.4

BIC No.5

BIC使用率B/Co×100 [wt%]

石炭

コー

クス

置換

率(C

o-C

)/B

×100

[wt%

]

等価熱量

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60 80 100 120 140

BIC No.1

BIC No.2

BIC No.4

BIC No.5

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(5)多原料 BIC の適用先拡大検討

① 産業用キュポラへの適用性検証

大型キュポラ設備を保有する鋳造メーカーA社及びB社を対象として、

多原料 BIC を 67.4 トン供給し、鋳物用コークスの代替試験を実施した。

排ガスの組成及びキュポラから出銑された溶湯の性状、温度等をモニ

タリングし、多原料 BIC を投入したことによるキュポラ操業への影響に

ついて確認した。また、実証試験を通じて、鋳造メーカーへのヒアリン

グにより、キュポラ操業における多原料 BIC への要求仕様、課題につい

て整理した。

B 社は、BIC(杉チップ 100%)10 トンによる石炭コークス代替試験を

短期間ながら実施して、 大 20%程度までの代替利用が可能なことを確

認している。実証試験を実施するにあたり、B 社より多原料 BIC に対し

て下記のような要求仕様が示された。

施設からの NOx 排出量低減のために N 含有量が少ない原料で製造し

たものを希望する。

代替率を高くするためには排ガス中の H2 を低くする必要があり、H

分の含有量が少ない原料が好ましい。

NOx 排出量低減に関する要求に対して、石炭コークスの N 含有量は通

常 2%以上になるが、杉(チップ、バーク)100%の BIC の N 含有量は 0.05

~1%、廃菌床 100%では 1.2~1.4%、籾殻 100%では 0.2~0.3%程度にな

る。よって、BIC で石炭コークス代替量を増やすほど燃料起因の NOx(原

料中のNは一旦NH3を経由して酸化時にNOxに転換)は減ることになり、

環境負荷低減に寄与すると言える。多原料 BIC の N を確実に下げるには

特に籾殻の割合を増やすことで期待に応えることが出来ると考えられる。

一方、低 H 分含有量が好ましいという希望に対しては、バイオマスは

高揮発分燃料のため杉では H が 5.5-7%含まれており、籾殻でも 4.5~5.2%

含有されている。よって、石炭コークスが H を含む揮発分量が 1.5%以下

であるのに対して BIC 中の H は数倍高いことになる。B 社での杉チップ

原料によるBIC試験では20%代替がH2 を管理値以下に抑える上限になる

ことがわかっている。本事業では多原料のため、籾殻混合割合を高くす

ることで杉 100%の BIC よりも H 含有割合を低くすることができるので

代替率向上が期待できる。但し、H2 の発生は H の含有量だけで決まるの

ではなく、炉内での反応条件にも大きく影響されるので、実証試験を通

して多原料化の効果を確認していく必要がある。

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ア. A 社での試験

(ア) BIC 種類の選定

BIC の「もみ殻」含有率の違いによる灰分量・発熱量・固定炭素量を

比較した。もみ殻含有率の異なる 3 種類の BIC のうち、灰分量が低く、

発熱量および固定炭素量が高い、「もみ殻」含有率が 60%の BIC をテス

トで使用することにした。 図表 2-5.1 BIC の成分比較

項目 バイオコークス

(もみ殻含有率 60%)

バイオコークス (もみ殻含有率 80%)

バイオコークス (もみ殻含有率 90%)

〔参考〕石炭コークス

(鋳物用)

灰分(%) 12.7 16.0 17.1 8.0 以下

発熱(kcal/kg) 4,232 4,022 3,986 7,400

成分

(%)

炭素 43.5 41.2 40.7 90 程度

硫黄 0.06 0.06 0.06 0.7 以下

含水率 10 10 10 5.0 以下

(イ) 事前試験

1) ガス化反応速度確認試験

BIC のガス化反応速度を確認するため、社内のテスト装置を用

いて独自のコークス消耗量のテストを実施した。以下にガス化反

応速度試験の手順を記載する。図表 2-5.2 に試験装置概要を示す。 (i) 試験装置を用いて、火種として石炭コークス 2kg を燃焼 (ii) その上からテスト用コークス 4kg を投入 (iii) 10 分毎にコークス残量を記録し、全コークス残量が 2kg 以

下になるまで測定

図表 2-5.3 に試験結果を示す。BIC は石炭コークスに比べてガ

ス化反応速度が速く、試験開始時から 40 分程度で一気に消耗し、

試験終了時は形状を保ったまま全て灰になっていた。

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84

図表 2-5.2 試験装置概要 図表 2-5.3 コークス消耗量の結果

2) 強度試験

キュポラ溶解炉内を想定した試験方法として BIC の強度テス

ト(SI、CSR)および反応性テスト(CRI)を実施した。 図表 2-5.4 に示す通り、石炭コークス(高炉用)は CRI が

20~33%、CSR が 50~70%の範囲に分布するのに対して、BICは図表 2-5.5 の試験結果に示す通り、CRI が 85.1%、CSR は

0.1%以下と石炭コークスに比べてガス化反応速度が速く、反

応後強度が著しく低下することが分かった。

図表 2-5.4 石炭コークスの CSR と CRI の関係※

※出典「高炉内におけるコークスガス化反応挙動におよぼす コークス反応性,反応温度の影響」 渡壁史朗 武田幹治 鉄と鋼 Vol.87 (2001) No.7 pp467-473

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85

図表 2-5.5:BIC の強度試験結果 評価項目 結果 試験内容

SI(%) Shutter Index

99.6 一定の高さより落下後に篩上に残った試料重量分率

CRI(%) Coke Reaction Index

85.1 小粒のコークスを 1,100℃で CO2 ガスと 2 時間反応させた後

の重量減少量(ガス化量) CSR(%) Coke Strength after Reaction

<0.1 CRI 試験後に円筒内で回転後、篩上に残った試料重量分率

3) まとめ

BIC は石炭コークスに比べてガス化反応速度が速く、反応後の

強度低下も著しい。 キュポラ溶解炉内では、投入後の早い段階で灰となり、後か

ら投入された鉄スクラップや石炭コークスの圧力により潰さ

れ、微粉灰になることが想定される。

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(ウ) キュポラでの溶解試験

1) 溶解テスト内容

(i) 実施期間:2017 年 9 月~2018 年 3 月末

(ii) 概要:

キュポラ溶解炉では鉄スクラップと石炭コークスを交互に

投入し、石炭コークスを燃やすことで鉄を溶かしており、鉄

を溶かす際に燃やす石炭コークスに BIC を混合し、製品品質

や排ガス成分への影響を評価した。

図表 2-5.6 鋳鉄管製造フロー

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(iii) 主な検査項目 溶解テストの主な検査項目は図表 2-5.7 の通りである。

図表 2-5.7:主な検査項目 区分 主な検査項目

排ガス成分 酸素濃度 二酸化炭素濃度 一酸化炭素濃度 水素濃度

製造規格値 出湯成分 炭素濃度 珪素濃度

出湯温度

(iv) 受入れ量および受入れ方法

BIC の受入れ量と受入れ方法は図表 2-5.8 の通りである。

図表 2-5.8:受入れ量と受入れ方法 年月日 受入量 受入れ方法

2017 年 9 月 4 日 10t ・ホッパへ 直接投入

11 日 10t

2018 年 1 月 17 日 10t ・フレコンバック で納入

31 日 10t

2 月 22 日 10t

3 月 8 日 10t

合計 60t

(iv) 投入方法 バイオコークスの投入方法は図表 2-5.9 の通りである。 当初はバイオコークス全量をホッパに直接受入れ、投入

する予定であったが、バイオコークスと石炭コークスの

形状が異なるため、既存の計量システムでは高精度な計

量が困難となり、投入量にバラつきが生じる結果となっ

た。また生産計画上、ポッパーの使用が制約されたため、

1 月 17 日納入分より手作業による投入に切り替えた。

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図表 2-5.9:受入れ方法別の投入方法 受入れ方法 投入方法 総投入量

1 ホッパ直接納入分 ・ホッパからベルトコンベアで計量器に自動投入し、

計量後にキュポラへ投入 20t

2 フレコンバック納入分 ・計量後に手作業による投入 40t

(v) BIC の投入量 生産設備のキュポラ溶解炉を使用したテストのため、BIC

の投入量は全コークス(石炭コークス+BIC)の重量比率

4.3%から開始し、上記検査項目の数値変化を確認しながら、

徐々に投入量を増やした。

2) 溶解テスト結果

(i) 水素濃度への影響 BIC の投入により排ガス中の水素濃度が上昇傾向を示

した。 水素濃度の上昇程度は、操業への影響がない範囲であっ

た。

(ii) 出湯成分(炭素濃度)への影響

鋳鉄管では材料特性を満足させるため、炭素濃度が製造

規格で規定されている。

BIC の全コークスの重量比率を増加させると、出湯成分

の炭素濃度は低下傾向を示した。 (iii) 操業への影響 BIC を投入することで機械トラブルなどの物理的な影

響は認められなかった。 灰分の増加によるスラグの顕著な増加は認められなか

った。 (iv) 操業可能な BIC の投入量(全コークスの重量比率) 定常操業(立上げ、立下げを除く)では、BIC を全コー

クス重量比率 4.3%から 大 22.2%まで投入した。 BIC は全コークス重量比率 6.0%が利用可能な投入量

であることが分かった。

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(エ) 考察

1) 水素濃度への影響

BIC の投入により排ガス中の水素濃度が上昇したのは、通常の石炭

コークスの水分率が 5%以下に対して、BIC は 10%程度と水分率が高

いためと予想される。

2) 出湯成分(炭素濃度)への影響

石炭コークスは熱源としてだけではなく、鉄に炭素成分を吸収

させる加炭材としての重要な役割を担っている。 出湯成分の炭素濃度が減少する傾向となった原因については、

以下に記載する通り、バイオコークスの固定炭素量や灰分の影

響が想定されるが、検証するには至らなかった。 石炭コークスの固定炭素量が 90%程度に対して、バイオコーク

スの固定炭素量は 43.5%と約半分しかないため、加炭材としての

性能が低く、溶湯の吸炭量が低下し、出湯成分の炭素濃度を下

げた可能性がある。 バイオコークスの全コークス重量比率を上げると、灰分が増加

する。また事前テスト結果から、バイオコークスはガス化反応

速度が速いため、キュポラ溶解炉内で早い段階で微粉灰となる。

この微粉灰がコークスの周りを覆うことで、加炭を阻害した可

能性がある。

(オ) 課題

1) 固定炭素量

鋳鉄管を製造するための石炭コークス代替としては、固定炭素量が

低く BIC の加炭材としての性能が十分でないため、固定炭素量を上げ

る必要がある。

2) 灰分

BIC は灰分が高いため、加炭の阻害やスラグの粘度上昇など、操業

に影響を及ぼす可能性がある。BIC の灰分を下げるか、BIC 使用時に

造滓材の増量を検討するなど、灰分への対応が必要である。

3) 供給量の安定化

BIC を石炭コークス代替として使用するためには、安定した供給体

制が必要である。

4) 供給価格

BIC は熱量が石炭コークスの 6 割にも満たない。石炭コークス代替

として BIC を供給する価格は、熱量の不足分を加味した設定が必要で

ある。

5) BIC と石炭コークスの併用を前提とした製造条件などの 適化

BIC と石炭コークスを併用するためには、投入システムの変更や、

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造滓材の増量など製造条件を 適化する必要がある。

(カ) まとめ

もみ殻の含有率が60%のBICのキュポラ溶解炉での溶解テストで

は、全コークス重量比率 4.3%から 大 22.2%まで投入し、全コー

クス重量比率 6.0%が利用可能な投入量であることが分かった。 BIC はキュポラ溶解炉で熱源としては使用可能であるが、石炭コ

ークスのもう一つの機能である加炭能力については、BIC の全コ

ークス重量比率を増加させると、出湯炭素濃度が低下傾向となっ

た。 出湯炭素濃度が低下した原因については、固定炭素量や灰分の影

響が想定されるが、検証するには至らなかった。 実際にキュポラ溶解炉で BIC を溶解テストすることで、BIC の投

入システム上の課題やBICの固定炭素量や灰分に起因すると思わ

れる品質への影響などの課題が明確になった。 水道用鋳鉄管を主力製品とする当社にとって、キュポラ溶解炉で

の石炭コークス燃焼により発生する CO2 の削減は重要な課題で

あり、キュポラ溶解炉で利用可能な BIC の普及が望まれる。

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イ. B 社での試験

(ア) 試験サンプル

試験に用いた多原料 BIC の組成及び成分を図表 2-5.10、11 に示す。

図表 2-5.10 BIC 原料配合

図表 2-5.11 分析結果

(イ) 試験内容 1

鋳物用コークスと BIC を発熱量換算で置換し、キュポラ操業に与える影

響を調査した。鋳物用コークスの発熱量は 7165cal/g、BIC 発熱量は

3984.5cal/g で算出した。BIC 投入の影響を比較するために、各日に BIC を

投入しない B.M.を設定した。

図表 2-5.12 試験方法

(ウ) 試験結果 1

1) 出銑成分・温度に関して

図表 2-5.13、14 に出銑成分・温度の経時変化を示す。出銑成分を比

較すると BIC の使用によって出銑 C 値・出銑 Si 値共に減少する傾向

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であった。出銑 C 値の減少は、固定炭素歩留りに大きな差が無いこと

から投入する固定炭素が減少したことに起因すると考えられる。

出銑温度に関しては、BIC使用による傾向は見られず、A.M.よりP.M.

の方が高くなる傾向だけであった。

図表 2-5.13 5%置換出銑経時変化

図表 2-5.14 10%置換出銑経時変化

2) 排ガス成分に関して

図表 2-5.15~17 に排ガス成分の経時変化を示す。

BIC 投入によって CO 及び CO2 単独の濃度に関しては明瞭な差は確

認できなかった。一方で、BIC 投入に伴う鋳物用コークス投入量の減

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少によって若干の酸化雰囲気に向かう傾向が見られたが、操業に影響

を与える程では無かった。

排ガス H2 濃度は、BIC 投入によって顕著に増加した。BIC 投入量と

排ガス H2 濃度増加量の関係を明確にすることはできなかったが、今

回のBICでは10%置換の投入条件において排ガスH2濃度が 大で2%

を超える結果であった。

5%置換の排ガス H2 濃度経時変化を見ると、投入開始(11:50)から

H2 濃度が増加するまでの時間が 30~40 分程度であり、同時間程度で

着火が始まったと予想できる。また、10%置換の経時変化を見ると装

入終了した後も H2 濃度が高い状態を維持していることから、①熱間

強度が高い。②脆く燃え残りが多く残存していた。の 2 点が予想でき

る。現時点では、②の方が有力であると考えられ、その理由を次項に

記す。

図表 2-5.15 5%置換排ガス経時変化

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図表 2-5.16 10%置換排ガス経時変化

図表 2-5.17 排ガス H2 経時変化

3) 操業に与える影響

(i) サイクロンダストに関して

図表 2-5.18 にテスト終了後のサイクロンダスト外観を示す。通

常操業時は、図左側の様な黒いダストしか見られないのに対して、

テスト終了後は図右側の様な白みがかったダストが多く見られた。

恐らく BIC 起因の粉塵であると考えられ、実際の投入重量分の熱

量は炉内で発現していないと考えられる。

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図表 2-5.18 サイクロンダスト外観

(ii) 出銑速度に関して

図表 2-5.19 に出銑量及び送風量のまとめを示す。出銑量に関し

て、装入開始時、切り替え時等はばらつきが大きく参考にならない

と判断し、それぞれの配合の中央 2 時間の平均を算出した。

これまでの BIC 評価テストと同様に、BIC 投入によって送風量

あたりの出銑量は増加する傾向であった。それに伴い、BIC 投入時

の装入材料高さは不使用時に比べて、低い状態を維持していた。こ

のことから BIC 投入によって材料の予熱による溶解速度の上昇、

材料の予熱による棚吊り防止の効果が期待できる可能性がある。

図表 2-5.19 出銑量及び送風量まとめ

(iii) スラグ塩基度に関して

図表 2-5.20 にスラグ分析結果を示す。BIC 使用によって、両日と

も若干ながら酸化気味になっていた。その原因は、BIC 投入によっ

てベットコークス高さが減少したことに起因すると考えられる。

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図表 2-5.20 スラグ塩基度

(エ) 試験内容 2

鋳物用コークスと BIC を発熱量換算で置換し、キュポラ操業に与える影

響を調査した。投入条件を図表 2-5.21 に示す。

図表 2-5.21 試験方法 2

(オ) 試験結果 2

図表 2-5.22 に、出銑 C 値の経時変化を示す。図表 2-5.23 に送風量と出

銑量の結果を示す。

出銑 C 値は、日程①の場合、経時に伴いなだらかに減少していくが、日

程②、③の場合、通常操業時並に維持する傾向であった。また、BIC 使用

時には送風量あたりの出銑量が増加する傾向であったが、今回の日程②、

③(図表 2-5.23 中の青三角)は、発熱量換算のみには劣るが、通常操業時

よりは送風量あたりの出銑量が増加する傾向であった。

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図表 2-5.22 出銑 C 値の経時変化

図表 2-5.23 送風量あたりの出銑量

(カ) まとめ

出銑 C 値は、BIC 投入によって減少傾向が見られ、BIC が吸炭に寄与

していないと考えられる。出銑 Si 値は、BIC 投入によって炉内が酸化

雰囲気になり若干の減少が見られた。籾殻に含まれる Si が溶湯に歩留

るといった現象は確認されなかった。

出銑温度に関しては BIC 投入によって大きな差は生じなかった。

排ガス H2 濃度は、これまでの BIC と同様に増加し、置換率 10%にお

いて 大 2%を超える結果であった。

今回の BIC は、表面の強度が低く BIC 同士の接触においても籾殻くず

が生じるものであったため、サイクロンダストで集塵されている部分

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も多く確認できた。

BIC は燃焼開始温度が低いため、キュポラ炉内において鋳物用コーク

スよりも上部で、燃焼を開始する。そのことによる材料の予熱によっ

て、出銑速度の増加や棚吊り防止の効果があることが期待できる可能

性がある。

発熱量換算による置換だけでは、出銑 C 値は減少する傾向にあるが、

一部鋳物用コークスを追加投入することで出銑 C 値は維持される。

送風量あたりの出銑量は、通常操業時より増加する。

一部鋳物用コークスを追加投入する手法では、通常時に比べて鋳物用

コークスの使用量を鉄源 1 トンあたり約 5kg 低減できる可能性がある。

一部鋳物用コークスを追加投入する手法では、発熱量割合よりも BIC

の価値が下がるため、発熱量ベースで鋳物用コークスの 46.7%程度の

価値と判断する。

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② 継続利用先への供給

平成 29 年度は、継続利用の希望が無く、横手周辺地域の温泉施設に対し

て多原料 BIC の端材を定期的に供給するに留まった。参考として平成 28 年

度に供給した実績を図表 2-5.24 に示す。

小規模ながら杉チップ 100%バイオコークスで適用実績のある鉄道会社 2

社と、薪ストーブメーカー1 社、温泉施設に対して多原料バイオコークスを

供給した。小サイズのバイオコークスを希望した利用先については、バイオ

コークスを図表 2-5.25 のような小カットに裁断したものを供給した。

図表 2-5.24 その他のバイオコークス適用先への供給実績

適用先会社 利用装置 現燃料 サイズ 供給量

秩父鉄道㈱ メタル溶融炉 石炭コ

ークス

薄い円筒形

断面 1/4 サイズ 20 kg

津軽鉄道㈱ 石炭ストーブ

列車 石炭 断面 1/4 サイズ 40 kg

湯沢温泉 ボイラー 灯油 薄い円筒形 580kg

㈱兼久 薪ストーブ 薪 円筒形 40kg

図表 2-5.25 小サイズバイオコークス(破線内)

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また、供給先に図表 2-5.26 に示すアンケート調査用紙を配布し、BIC 市場

創生に必要な価格、品質等について調査した。BIC の利用に関して以下のよ

うな回答があった。

ア. BIC のサイズ

現状のサイズ(直径 10cm)かそれよりも小さい方が投入しやすい。

イ. BIC の原料について

籾殻なしの BIC の方が高火力で、灰分も少ないため使いやすい。

ウ. 火持ちと火力について

他の燃料との併用が必要だった。もう少し火力が欲しい。

エ. 値段について

3,000 円/kg 以下の価格帯が望ましい。

オ. その他

火持ちが良く、コークスの消費量を減らすことができ助かる。着火性

が良いため作業を円滑に進めることができる。

水に濡れて脆くなるといったことが起きており、保管場所に注意が必

要。

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図表 2-2.26 BIC 使用アンケート調査用紙

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(6)二酸化炭素削減量の検証方法

本年度は、昨年度に確立した検証方法により、原料バイオマスの収集及び

製品輸送の際に用いる車両のエネルギー使用量、籾殻擂潰機、粉砕機、乾燥

機等の原料前処理設備及び多原料バイオコークス製造設備のエネルギー使

用量並びにガス化溶融炉での石炭コークス代替に掛かるエネルギーの測定

を実施した。

ア. 基本方針

図表 2-6.1 に一連の利用システムの構成要素と消費されるエネルギーを示

す。原料バイオマスはその種類によって、収集が必要なもの、輸送以降が必

要なもの、製造施設に持ち込まれるものの 3 種に区別して取り扱う。前処理

としては、粉砕と乾燥があり、その粒度と水分量によって、両方必要な場合、

粉砕のみ必要な場合、乾燥のみ必要な場合、両方とも不要な場合に分けられ

る。前処理では乾燥燃料と各装置の動力用電気が消費される。製造時は製造

装置本体の動力用電気が消費される。輸送時は、横手市から紫波町まで

100km 程度でありトラック輸送となるので、軽油が消費される。ガス化溶融

炉側では、バイオコークスのハンドリングやバイオコークス利用時の電力や

燃料の差分を精算対象にする予定であったが、平成 28 年度の確認試験を通

してこの差分は石炭コークス節約分に相当するエネルギー量に対して相対

的に無視小であることがわかった。

図表 2-6.1 LCA のバイオコークス利用システムの構成要素と消費エネルギー

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イ. バイオコークス利用システムで使用するエネルギーの二酸化炭素排出

係数の取得法と排出量算出方法の確立

(ア)電気については、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(以下、温対法

と記す。)に基づき東北電力㈱が公表する二酸化炭素排出係数は毎年度更

新されるので 新のものを使用する。なお、現行 新となる 2015 年度の

二酸化炭素排出係数(平成 27 年 7 月 26 日公表)は 0.559g/kWh であった。

(イ)化石燃料の二酸化炭素排出係数は温対法に基づく温室効果ガス排出量

算定・報告マニュアルの 新版のデータを使用する。なお、現行 新版

となる Ver4.2 版 (平成 28 年 7 月)の主な排出係数は以下の通りである。

区分 ton-CO2/ton

コークス 3.17

一般炭 2.33

ガソリン 2.32

灯油 2.49

軽油 2.58

(ウ)トラック輸送業者にバイオコークス輸送を依頼するときは、物流分野の

CO2 排出量に関する算定方法ガイドライン(経済産業省・国土交通省)

に沿って計算する。

(エ)収集機械、輸送用に自ら使用するマルチリフト車、原料ハンドリング用

ホイールローダー、粉砕機、乾燥機、コンベヤ、製品ハンドリング用フ

ォークリフトについては燃費と電力消費量の実測値を用いる。測定回数

は運転条件が変わる度に実施する。

(オ)多原料バイオコークス製造装置については、電力消費量を監視しており、

収集データを解析して電力消費量を算出する。

(カ)室内集塵機、換気扇、電動ホイスト、照明等の周辺機器の電力消費量は

定格値と運転時間から算出する。

バイオコークス利用システムにおいてバイオコークス 1 トンを調達する

ために発生する二酸化炭素量に整理して検証を行う。

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ウ. 各エネルギー使用量の測定結果

今年度のベストランであった 10 月 18 日における各エネルギーの使用

量を図表 2-6.2 に示す。10 月 18 日は、No.3(籾殻 70%、バーク 25%、

廃菌床 5%)の原料で製造しており、製造量は 2.41 トンであった。乾燥

機での灯油使用量は 130L、原料投入の際に用いるホイールローダーの軽

油使用量は 10L、多原料バイオコークス製造設備の電力消費量は

743.7kWh であった。

また、これら数値から算出したエネルギー測定結果を図表 2-6.3 に示

す。バイオコークスの製造に関する全 LCA(収集~製造~輸送~利用)

ベースのエネルギー損失は合計 16.41%となった。

図表 2-6.2 10 月 18 日の操業状況及び各エネルギー使用量

日時 平成 29 年 10 月 18 日

原料 籾殻 70%、バーク 25%、廃菌床 5%

製造量 [トン] 2.41

灯油使用量 [L] 130

軽油使用量 [L] 10

電力消費量 [kWh] 743.7

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図表 2-6.3 各エネルギーの測定結果

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エ. 正味の二酸化炭素削減効果

ガス化溶融炉にて、25%の石炭コークスをバイオコークスで置換した場合、

正味の二酸化炭素削減効果は、

25 % ×(1-16.41 %) ×= 20.89 %

となる。

上記の試算結果より、ライフサイクル全体での二酸化炭素排出量 20%削

減の目途を立てることができた。

なお、この試算結果は、実証設備の実測データに基づく試算結果であり、

製造条件や各機器の操業の 適化が想定される商業機の場合には、原料前処

理エネルギー、原料乾燥エネルギー及び製造時エネルギーの削減が見込まれ、

更なる二酸化炭素削減効果が期待できる。

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(7)事業性・採算性の検証及び普及見通しの検討

①事業性・採算性の検討

事業性・採算性を検証するため、廃棄物系バイオマスと未利用バイオマス

の収集実績、多原料 BIC の生産量並びに設備運用に掛かる維持管理経費等

のデータを収集した。本年度は、これらデータ及び平成 27 年度に確立した

評価方法等に基づき、事業期間を 20 年間として、減価償却や課税等を考慮

し、事業性・採算性を内部収益率(IRR)によって概略評価検討を実施した。

なお、IRR の目標値は税引き後の数値で、少なくとも現在の 20 年もの長

期国債の金利(0.076%、平成 29 年平均値)に 2%程度上乗せした 2%とした。

ア. 前提条件

・ 多原料 BIC 製造規模は、日産 2.4 トン、6 トンおよび 14 トンの 3 ケース

とする。

・ 製造する BIC の原料組成は籾殻 70%、バーク 25%、廃菌床 5%とする。

・ 初期投資は自己資金と借金で賄うケースを基本とするが、事業性が低い

場合、補助金等の公的支援で賄うケースも検討する。

・ 事業化着手時から事業開始までの期間は、平成 27 年度の連続製造設備

の導入実績を基に、設計+建設期間 6 ヶ月を含む 1 年間とする。

・ 委託事業での実証運転実績を踏まえた設備稼働率を設定する。また、平

成 29 年度に確認した BIC の製造時間短縮効果についても適用する。

・ エスカレーションは日本のインフレ率および経済情勢から設定する。

・ 設備の耐用年数は 20 年とする。

・ 毎年定期点検(法定、自主)と必要な改修を行う。5 年目毎に大規模改

修を実施する。

・ 設備の効率は 20 年間維持されるとする。

・ 減価償却は減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和四十年三月三

十一日大蔵省令第十五号)( 終改正:平成二四年一月二五日財務省令

第一〇号)に従って実施する。

イ. 経費

・ 設備費は、JCOAL の作成する仕様に基づき BIC 製造設備の建設経験の

あるメーカーに検討してもらう。

・ 土地代は秋田県横手第二工業団地賃借料を計上する。

・ 燃料費は、委託事業を通して当該設備への経済的、かつ、安定供給可能

な 適調達条件を把握し、検証に供する。

・ 人件費は、委託事業を通して事業に供すべき当該設備の 適運用体制を

把握し、検証に供する。

・ 化石燃料、受電電力量等の光熱費や消耗品等のユーティリティ費用は委

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託事業で実績を把握し、検証に供する。

・ 通年の保守、メンテナンス費は委託事業を通して当該設備の維持管理に

必要な金額を把握し、検証に用いる。

・ バイオマス収集費、BIC 輸送費及びその他経費については、委託事業で

実績を把握し、検証に供する。

ウ. 収入

・ BIC 販売については、ヒアリング調査を基に、想定される購入先の希望

購入価格(輸送費込み)及び直近の石炭コークス取引価格を基に事業性

評価を実施する。

エ. プロジェクト IRR(税引き後)の計算方法

1) 収入

=バイオコークス売上

2) 支出(変動費+固定費)

(変動費)

=燃料費+光熱費+バイオマス収集費+バイオコークス輸送費

+廃棄物処理費+その他変動費(ユーティリティ費+薬品・化

学品費+その他必用経費)

(固定費)

=保守・メンテナンス費+人件費+金利(借入金がある場合)+

リース料・レンタル料+土地代

3) プラント建設費用(建設期間半年間、事業開始年度までに発生済み)

4) 減価償却費(定額法で法令に従って償却)

5) 課税対象利益=収入-支出-減価償却費

6) 税金=課税対象利益×税率

7) 収益=収入-支出-税金-プラント建設費用または返済借入金

=(収入-支出)×(1-税率)+減価償却×支払税率-プラント建設

費用または借入金

8) プロジェクト IRR 税引後を計算

IRR【(事業開始前 1 年の収益、事業開始 1 年目収益、以降 2 年目、3

年目・・・20 年目)】

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109

オ. IRR 検討結果

IRR 検討結果を図表 2-7.1、2 に示す。今回の検討では、初期投資の 50%を

補助金で賄った場合を想定した。

図表 2-7.1 は、平成 29 年度の実証試験内で確認できた BIC の製造時間 25%

短縮の効果を反映し、算出した。製造規模 14 トン/日で BIC を 21,000 円で販

売した場合、20 年時点において IRR が 2.0%となることがわかった。また、

BICを24,000円で販売した場合、事業開始20年経過時点において IRRが6.7%

となった。製造規模 6 トン/日以下においては、事業性が低いという結果とな

った。

図表 2-7.2 では、図表 2-7.1 の結果を踏まえ、他業務との兼任を想定した人

件費の改善や実証試験内で実現の可能性が見込まれた BIC の製造時間 50%

短縮の効果を反映した値を設備費等に用いて算出した。この場合、製造規模

6 トン/日において、事業開始 20 年経過時点にて、BIC を 21,000 円で販売し

た場合は IRR 1.0%、BIC を 24,000 円で販売した場合は IRR7.4%となった。

図表 2-7.1 事業性の評価検討

図表 2-7.2 事業性の評価検討(人件費、設備費を改善)

BIC製造量 トン/日BIC販売量 トン/年

BIC販売単価 円/トン 21,000 24,000 21,000 24,000 21,000 24,000<収入> 円/年 14,716,800 16,819,200 36,792,000 42,048,000 85,848,000 98,112,000

原料収集費用 円/年 1,401,600 1,401,600 3,504,000 3,504,000 8,176,000 8,176,000ユーティリティ費用 円/年 3,504,000 3,504,000 8,760,000 8,760,000 20,440,000 20,440,000

設備費用 円/年 3,504,000 3,504,000 8,760,000 8,760,000 20,440,000 20,440,000人件費 円/年 11,913,600 11,913,600 14,016,000 14,016,000 12,264,000 12,264,000

保守点検費用 円/年 2,803,200 2,803,200 5,256,000 5,256,000 8,176,000 8,176,000BIC配送費用 円/年 2,102,400 2,102,400 5,256,000 5,256,000 12,264,000 12,264,000

<支出> 円/年 25,228,800 25,228,800 45,552,000 45,552,000 81,760,000 81,760,000

<収支> 円/年 -10,512,000 -8,409,600 -8,760,000 -3,504,000 4,088,000 16,352,000

IRR(12年) % -4.4 1.6IRR(15年) % -1.0 4.3IRR(20年) % 2.0 6.7

14700.8 1752 4088

- -- -

2.4 6

BIC製造量 トン/日BIC販売量 トン/年

BIC販売単価 円/トン 21,000 24,000 21,000 24,000 21,000 24,000<収入> 円/年 14,716,800 16,819,200 36,792,000 42,048,000 85,848,000 98,112,000

原料収集費用 円/年 1,401,600 1,401,600 3,504,000 3,504,000 8,176,000 8,176,000ユーティリティ費用 円/年 3,504,000 3,504,000 8,760,000 8,760,000 20,440,000 20,440,000

設備費用 円/年 2,102,400 2,102,400 5,256,000 5,256,000 12,264,000 12,264,000人件費 円/年 5,956,800 5,956,800 7,008,000 7,008,000 6,132,000 6,132,000

保守点検費用 円/年 2,803,200 2,803,200 5,256,000 5,256,000 8,176,000 8,176,000BIC配送費用 円/年 2,102,400 2,102,400 5,256,000 5,256,000 12,264,000 12,264,000

<支出> 円/年 17,870,400 17,870,400 35,040,000 35,040,000 67,452,000 67,452,000

<収支> 円/年 -3,153,600 -1,051,200 1,752,000 7,008,000 18,396,000 30,660,000

IRR(12年) % -5.7 2.5 7.3 14.3IRR(15年) % -2.2 5.2 9.5 15.9IRR(20年) % 1.0 7.4 11.3 17.1

40882.4 6

700.8 175214

- -

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110

②普及見通しの検討

ア. 原料発生量の推定

生産拠点を西日本にも設置した場合を想定し、BIC 製造プラントの設置

環境及び原料となるバイオマスの収集可能量等の基本条件の調査を実施

した。

図表 2-7.3 に各地域のバイオマス原料発生量を示す。籾殻発生量は、米

収穫量から試算した。廃菌床発生量は、菌床しいたけ、菌床なめこの収穫

量から発生量をそれぞれ試算した。これら原料の発生量から、JFE エンジ

ニアリング㈱製ガス化溶融炉がある広島県、福岡県、島根県を選定した。

また、JFE エンジニアリング㈱製ガス化溶融炉は無いものの、福岡県及び

大分県の 3 箇所への供給が見込める熊本県及び佐賀県を選定し、ヒアリン

グ調査を実施した。

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図表 2-7.3 各地域のバイオマス原料発生量

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イ. 選定した地域での原料調達可能性調査

前項で選定した広島県、福岡県、島根県また JFE ガス化溶融炉は立地し

ていないものの比較的近隣である熊本県にて原料調達可能性検討として、

JA 及び森林組合にヒアリング調査を実施した。各地域でのヒアリング結

果を以下に記す。

(ア) 広島県

<JA 福山市>

くん炭や和牛の飼育への活用など、各農家で有効活用されており、バ

イオコークス事業の実施に必要な量の供給は困難。ほぼ全量が活用され

ているため、籾殻の正確な発生量を把握できていない。

<広島県東部森林組合>

土質が花こう岩のため、杉やヒノキの成育が悪く、木材の品質が良く

ない。近年では、山林の管理はしておらず、街路樹や一般家庭の庭木の

剪定が主な業務となっている。少量であれば剪定枝を供給可能であるが、

安定性に乏しい。また、福山市内では製材所も少なく、バークの調達も

困難である。

(イ) 熊本県

<県内の複数の JA>

大部分の施設は、年間の籾殻発生量を把握できていない。各施設で発

生した籾殻は、近隣の農家や業者によって全量が引き取られている。熊

本県は酪農が盛んな地域のため、籾殻は敷料や堆肥として有効活用され

ており、カントリーエレベーターやライスセンターは現時点では籾殻の

処理に困っていない。籾殻は販売されており、価格は施設ごとに異なる。

米を出荷した農家には無償、もしくは 500 円/m3 と優遇され、その他の

業者には、300~1,000 円/m3 で販売している。

(ウ) 島根県

<県内の複数の JA>

籾殻の発生量はおおまかに統計データ通りと思われるが、実際の処理

量を考慮した余剰量は把握できていない。現時点では、各施設で発生し

エチル籾殻は、近隣の農家に引き取られており、籾殻処理に困っている

ような話は耳にしていないようであった。籾殻の取引は、基本的に販売

形式であるが、地域合併等により各施設で価格は異なる。

廃菌床については、菌床椎茸の栽培が盛んであるものの、農家が各地

域で分散しており、まとまった量を収集するには集積場を設置して、一

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箇所に集約するなど、効率的な収集にはシステム構築が必要のようであ

る。上述した農家が分散しているという理由から、島根県内での廃菌床

の有効利用率は 10%程度に留まっているとのことであり、収集システム

の構築が成されれば BIC の原料として採用の余地があると思われる。

(エ) 福岡県

<JA 筑前あさくら>

カントリーエレベーターで発生する籾殻をトラック 1 台あたり 1,000

円で販売している。籾殻は、敷料やくん炭の原料として活用されている。

籾殻の収集は、県内業者のみならず、長崎県からも収集に来ている。

JA 筑前あさくらは、二酸化炭素削減に寄与するバイオコークス事業へ

の協力に前向きであったが、籾殻を供給するにあたり、現行の収集業者

らとの住み分けが必要とのことであった。籾殻の年間を通して安定した

収集の実現には、県内の複数の JA との覚書の締結が必要である。

<福岡県森林組合連合会>

主伐推進の助成金

福岡県では、森林の伐採⇒植樹のサイクルを回復させる目的で「主

伐で元気にプロジェクト助成金」を交付中。交付期間は、平成 26 年か

ら 28 年の 3 年間。出荷した材木 1m3 あたり 800 円が出荷元に交付され

る。この助成金には 4,000 万円の予算が割り振られており、50,000m3

の主伐を推進する。

中山リサイクル産業㈱

中山リサイクル産業㈱により、県内の森林組合 3 箇所(福岡県広域

森林組合、朝倉森林組合、浮羽森林組合)の管理区域にて林地残材の

収集が行われている。伐採時に生じた林地残材は、組合によって収集

し易いよう整理され、中山リサイクル産業㈱が 6,000 円/m3 で収集、買

い取りしている。収集した残材はチップ化され、大分県の㈱グリーン

発電大分に供給、もしくは自社でボードの原料として活用している。

浮羽事業所の原木市場

助成金により、例年よりも原木の出荷が多く、ヒノキのバークの処

分に困っている。平成 27 年度の処分費用は 140 万円であり、約 1800

トンのバークが発生、処分していた。助成金を考慮しなければ、バー

ク発生量は、約 1,500 トン/年程度。大分県の日田の原木市場と競合し

ている。

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<福岡県広域森林組合>

福岡県広域森林組合で管理する製材所

製材所は規模が小さく、バーク発生量もそこまで多くない。また、

原木の乾燥熱源として活用しているため、正確な発生量は把握できて

いない。

バイオマス発電所への供給計画

買取価格は 7,000円/トンであり、1万トン/年の供給を計画している。

林地残材やバークも引き取り対象になっている。バイオマス発電所と

バイオコークス事業への供給の両立は厳しく、買取価格次第である。

孟宗竹について

福岡県では孟宗竹の処分に困っている。山主により伐採を依頼され

ることもあり、森林組合でも伐採している。伐採後の竹は産廃処理業

者に有償で処分してもらっている。竹はシリカ含有量が多く、クリン

カの問題により、バイオマス発電所では活用されていない。BIC 化し、

一般廃棄物処理施設に用途を限定すれば問題なく使用できる。

<朝倉森林組合>

林地残材について

昨年度は約 4,000 トン程度を中山リサイクル産業㈱及び㈱グリーン

発電大分に引き取ってもらった。中山リサイクル産業㈱は丸太及び枝

葉も収集対象であるが、㈱グリーン発電大分は丸太のみが収集対象。

収集可能な林地残材はほとんど無い。

原木の出荷

朝倉森林組合では、原木を主に日田の原木市場へ出荷している。理

由としては、浮田の市場に比べて買取価格が高いため。福岡県から 800

円/m3 助成金が交付されているが、それ以上に大分の製材所の買取価格

は高い。

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ウ. BIC 製造プラントの設置環境

前項の調査結果より、福岡県及び島根県を選定し、JFE エンジニアリン

グ㈱製のガス化溶融炉、工業団地、籾殻発生地域の立地を調べ、BIC 製造

プラントの設置環境について検討した。図表 2-7.4、5 に福岡県及び島根県

の各施設の立地状況を示す。

図表 2-7.4 福岡県の各施設の立地

図表 2-7.5 島根県の各施設の立地

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BIC 製造プラントの立地に適した条件は、①原料発生源が近隣である、

②BIC 供給先が近隣にある の 2 点が望ましい。IRR 試算結果より、6 トン

/日規模であれば事業性が見出せるという結果より、6 トン/日規模の BIC

製造プラントの建設を想定して検討した。

福岡県は、供給先候補であるガス化溶融炉 2 箇所の半径 30km 内に工業

団地及び籾殻発生施設が複数立地している。横手市のケースでは、原料バ

イオマスは 10km 圏内より収集、BIC は 100km 離れた利用先に供給するこ

とを想定しているため、ガス化溶融炉から 30km 圏内の工業団地では、距

離的な観点では、横手市のケースよりも事業性の改善が見込まれる。

島根県では、ガス化溶融炉の半径 10km 内に工業団地及び籾殻発生施設

が 1 箇所ずつ立地しているが、横手市周辺地域での実証実績から鑑みると

施設 1 箇所から年間 6 トン/日に必要な籾殻を収集するのは困難であると

考える。従って、半径 30km 内の大田市の工業団地では、近隣に籾殻発生

施設が複数隣接しており、菌床椎茸の栽培が盛んな出雲市が隣接しており、

こちらの方が BIC 製造プラントの建設に適しており、横手市で検討した事

業性評価よりも改善が見込まれる。

各地の周辺地域の原料収集ポテンシャルのより詳細な掘り下げが必要

であるが、横手市から福岡県まで BIC を輸送する場合、1 トンあたり 2 万

~2.8 万円、横手市から島根県まで輸送する場合、2 万~2.5 万円の費用が

かかるため、各地域内で BIC を製造し、地域内の利用先に供給する方が横

手市から輸送するよりもはるかに安価で供給できることが推定される。

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(8)技術開発検討会の開催

本業務の円滑な実施のため、専門家からなる技術開発検討会を設置した。本

年度は、第 1 回(平成 29 年 6 月 15 日、東京都内)、第 2 回(平成 29 年 10 月 30

~31 日、秋田県横手市、岩手県紫波郡矢巾町)及び第 3 回(平成 30 年 3 月 16

日、東京都内)で計 3 度開催した。各回ともに貴重なアドバイスを多く頂いた。

① 第 1 回技術開発検討会

ア 日時 平成 29 年 6 月 15 日(木)

イ 場所 (一財)石炭エネルギーセンター 大会議室

ウ 出席者

(ア)委員

氏名 勤務先 役職

横山 伸也

(委員長) 公立大学法人鳥取環境大学

環境学部

環境学科 特任教授

安田 肇 国立研究開発法人

産業技術総合研究所

エネルギー・環境領域創

エネルギー研究部門

主任研究員

藤井 吉人 秋田県平鹿地域振興局 農林部

森づくり推進課 課長

(イ)事業委託元

氏名 勤務先 役職

田中 吉隆 環境省 廃棄物対策課 主査

竹本 啓介 環境省 廃棄物対策課 環境専門員

石田 愈 一般社団法人国際環境研究協会 プログラムオフィサー

藤沼 康実 一般社団法人国際環境研究協会 プログラムオフィサー

村木 正昭 一般社団法人国際環境研究協会 プログラムオフィサー

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(ウ)実施者

氏名 勤務先 役職

橋本 敬一郎 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 部長

河口 真紀 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 課長代理

鈴木 厚子 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 係長

松尾 春幸 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 主任技師

角間崎 純一 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 主任

(エ)共同実施者

氏名 勤務先 役職

内山 武 JFE エンジニアリング株式会社 事業企画本部 総合研

究所 主任研究員

奥山 契一 JFE エンジニアリング株式会社

環境本部 エンジニア

リングセンター 装置

設計部・経営スタッフ

川畑 秀駿 JFE エンジニアリング株式会社 事業企画本部 総合研

究所 研究員

井田 民男 学校法人近畿大学 理工学部 機械工学科

教授

エ 議事

(ア) 開会、挨拶、メンバー紹介

環境省、プログラムオフィサー、横山委員長、実施者挨拶の後、委員及び

実施者で自己紹介を行った。

(イ) 平成 29 年度実施計画(JCOAL 実施内容)

(説明者:JCOAL 角間崎主任)

<質疑・応答>

PO :昨年度増額申請した内容について詳しく教えて欲しい。

→JCOAL:資料6Pの技術開発内容に朱記した箇所が昨年度追加した項目である。

JCOAL 担当項目の中では、産業用キュポラでの試験実施に向けて、必

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要量(100 トン程度)を増産するために設備改造や操業条件の 適化を

行う計画である。JFE エンジニアリングの担当項目ではガス化溶融炉の

投入設備を改造し、バイオコークスをバルク輸送し、投入コストの削

減を図る計画である。近畿大学の担当項目の中では、試験用シャフト

炉による試験の実施を計画している。

→PO :産業用キュポラの試験期間はどの程度か?

→JCOAL:コークスの代替率にも依るが 1 週間ほどになる。

→PO :昨年度、増額申請が何件かあったものの、希望額が通ったのは、本

プロジェクトを含めて 2 件のみと大変厳しい状況であった。増額分を

有効に活用して欲しい。

PO :製造サイトである横手地域では、バイオマス原料をどの程度収集で

きるのか?

→JCOAL:主要原料として挙げている籾殻は、横手市及び周辺地域から年間 3000

トン程度は収集可能と見ている。

→PO :横手市は、他の地域と比べてバイオマス収集の面で恵まれた地域で

あるという印象を受ける。水平展開に関する調査も継続して欲しい。

→JCOAL:昨年度、九州地方を調査したところ、籾殻は余っておらず、有価で

取引されていると聞いている。各地域でバイオマス発生量が異なるた

め、地域ごとに原料の収集コスト等を考慮して、採用するバイオマス

を選定する必要がある。

環境省 :事業化が実現した場合、原料供給は東北地方で賄う計画なのか?

→JCOAL:現在は、横手市周辺地域の収集で賄うことができる年間 2000~3000

トン規模の事業化を検討している。供給先が遠方になればなるほど輸

送費が嵩むため、その際には西日本で製造拠点を作ることも考える必

要がある。

環境省 :バイオマス原料の一部は人力で収集しているのか?

→JCOAL:籾殻は、近隣のカントリーエレベーターからマルチリフト車で収集

している。稲藁は収穫の際に細かく裁断され水田に鋤き込まれている

ため、人力で収集する必要がある。農家と協力体制を築ければ、収穫

の際にロールベーラーを取り付けてもらうなどして、ロールの形状で

まとまった形で収集できる可能性もある。

→環境省:収集方法が機械化されていればスケールメリットが出ることもある

が、人海戦術の場合、かえって悪化する場合もある。今年度、原料収

集でそのような検討ができれば事業化により一層近づけると思う。

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→近大 :バイオマス発電所では、クリンカの問題等でバークの取り扱いに困

っており、利用方法についての相談を受けている。余ったバークをバ

イオコークス化することは非常に有効であると思う。

環境省 :現地では、収集した原料をどの程度保管できるのか?長期間保管す

ると発酵したりするのか?

→JCOAL:籾殻は 1 か月分程度、バーク、廃菌床等は 10 日程度保管可能である。

長期間保管した場合、籾殻は、水分量が若干変動する。バーク、廃菌

床は発酵する場合がある。

委員長 :製造時間短縮化の検討において、上流側のヒーターを高温にすると

あるが、高温にすることで投入エネルギーの量が増えるものの、1 個当

たりの製造時間が短くなるため、トータルで評価すると低コスト化に

つながる可能性があるという認識で良いか?

→JCOAL:その認識で構わない。

(ウ) 平成 29 年度実施計画(JFE エンジニアリング㈱実施内容)

(説明者:JFE エンジニアリング㈱ 川畑研究員)

<質疑・応答>

PO :JFE エンジニアリングは来年度以降どのようなことを考えているのか?

→JFE :今年度は、バイオコークスのバルク輸送及びダンプ投入をトライし、

投入コストの削減を図る。また、石炭コークス代替率 35%で試験を実

施する計画である。来年度は、バイオコークスが事業化した際のごみ

焼却施設の操業体制を想定して盛岡・紫波地区環境施設組合(以下、

組合)自らの手でバイオコークスを投入してもらい、JFE エンジニアリ

ングは操業方法のレクチャー、トラブル時の対応及び各種分析を担当

することを考えている。

PO :石炭等の化石燃料の使用量を削減しようという風潮の中で、鉄鋼業

界はどのようなことを考えているのか?

→JFE :以前からバイオマス燃料の活用により化石燃料の使用量を削減しよ

うという動きがあるが、 終的にはコストがネックとなり実現できて

いない。しかしながら、本事業では、バイオコークスによる石炭コー

クス代替試験に加えて、バイオコークスの製造コスト、輸送コスト及

び客先での投入コストの削減検討も実施内容に含まれている。こうい

った各工程での低コスト化を進めていくことで普及につながっていく

と考えている。

Page 123: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

121

PO :バイオコークスを 2 万円/トンで供給することは、組合にとってメリッ

トがあるのか?石炭コークスと同等、もしくはそれ以下の価格であれば

使ってもらえると思う。

→JFE :2 万円/トンという目標は、組合でも十分経済的なメリットがあるライ

ンである。

→JCOAL:組合とは、バイオコークスの取引価格や受入条件等の協議を進めて

いるところである。価格に関して、現状の石炭コークスと同等もしく

はそれ以下の価格であるとありがたいという要望が来ている。

(エ) 平成 29 年度実施計画(近畿大学実施内容)

(説明者:近畿大学 井田教授)

<質疑・応答>

委員 :キュポラとガス化溶融炉では、各パラメーターが異なるのか?

→近大 :バイオコークスの落下速度が異なる。ガス化溶融炉は早く、キュポ

ラは遅い。恵庭に移設した試験用シャフト炉は高温ガス化溶融炉を模

擬し、得られた実験値をシミュレーションに活用していく。

委員 :バイオコークスの炉内燃焼シミュレーションは、今度どのように活

用していくのか?

→近大 :現在は、石炭コークスの一部を代替するに留まっているが、炉内燃

焼シミュレーションを解明することで、代替率向上のために必要な性

状の把握につながる。将来的には、バイオコークスのみで溶融できる

ようになることを期待している。

→PO :本プロジェクト内で炉内燃焼を把握可能か?

→近大 :本プロジェクト内では完全に把握することは難しい。

(オ) 多原料バイオコークスの試作結果及び考察

(説明者:JCOAL 角間崎主任)

<質疑・応答>

環境省 :バイオコークスの評価指標として見掛け密度を重視していたが、見

掛け密度とバイオコークスの燃料としての価値は相関があるのか?

→JCOAL:見掛け密度と燃料としての価値は相関していると考えている。用途

をガス化溶融炉向けとした場合には、JFE エンジニアリングで実施して

いる評価手法で見た場合、見掛け密度 1.2g/cm3 であれば、石炭コーク

スと等価熱量で代替可能になる。

→環境省:高密度のバイオコークスの製造を目指していくのか?

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→JCOAL:ガス化溶融炉では、1.2g/cm3 を目標としているが、用途ごとに要求さ

れる仕様は異なると考えている。今年度は、キュポラの実証試験で要

求される仕様を整理したい。要求条件が緩くなれば加熱温度や加熱時

間等、省エネ化を更に推進することができ、低コスト化につなげるこ

とも可能。

PO :製造時間短縮に関しても縦型製造設備で試作し確認しているのか?

→JCOAL:縦型製造設備にて試作した結果、30%短縮しても見掛け密度を維持

していることを確認した。先ほど示したとおり、原料ごとに見掛け密

度に及ぼす製造条件の影響は異なるため、他の原料においても補足デ

ータを収集し、データベースを充実化させたい。

委員長 :地域ごとに原料の発生量が異なることから、各地域で製造に適した

原料の組成も変わると思う。データベースが充実していけば、水分、

加熱温度、加熱時間を調整することで様々な原料、混合比率でもガス

化溶融炉の受入条件である 1.2g/cm3 を満たすことができるだろう。

→JCOAL:含水率の影響に関しては、資料に示した通り、概ね加重平均で確認

できることをつかんでいる。製造実績のない混合比率でも適合できる

と期待している。

(カ) 横山委員長のコメント

これまで良い成果が出ているが、実証から事業化にステップアップするに

はまだ課題があるように感じる。本検討会でも他の省庁の補助金を活用する

など、いくつかのアイデアが提案されていた。多少の調整期間があっても、

社会実装に向けて持続的に取り組んでもらいたい。

(キ) 藤沼 PO のコメント

今回が初めての出席であったが、他事業と比較して進捗状況が良いと感じ

た。事業化の実現にあたっては、今日明日で決まる話ではなく数年かかる場

合もあるが、他の省庁の委託事業や自治体の補助金を組み合わせる手段もあ

る。事業化に向けた戦略を練ることは技術的な課題以上に重要であると思う。

(ク) 村木 PO のコメント

1 年間延長の提案について意見を述べたが、ここまで成果が出ているプロジ

ェクトが終わってしまうのは心苦しい。社会実装に向けて、今後も持続的に

取り組んでもらいたい。

Page 125: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

123

(ケ) 竹本環境専門員のコメント

ここまで順調に成果が出ている事業は珍しく、非常に期待している。環境省として

も、実装に向けてどういった方策があるか検討していきたい。

以上

Page 126: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

124

② 第 2 回技術開発検討会

ア 日時 平成 29 年 10 月 30 日(月)

イ 場所 JCOAL 大会議室

ウ 出席者

(ア)委員

氏名 勤務先 役職

横山 伸也

(委員長) 公立大学法人鳥取環境大学

環境学部

環境学科 特任教授

芋生 憲司 国立大学法人 東京大学大学院

農学生命科学研究科

生物・環境工学専攻

教授

安田 肇 国立研究開発法人

産業技術総合研究所

エネルギー・環境領域創

エネルギー研究部門

主任研究員

柿崎 浩之 横手市 農林部

次長

(イ)事業委託元

氏名 勤務先 役職

田中 吉隆 環境省 廃棄物対策課 主査

竹本 啓介 環境省 廃棄物対策課 環境専門員

石田 愈 一般社団法人国際環境研究協会 プログラムオフィサー

藤沼 康実 一般社団法人国際環境研究協会 プログラムオフィサー

村木 正昭 一般社団法人国際環境研究協会 プログラムオフィサー

Page 127: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

125

(ウ)実施者

氏名 勤務先 役職

橋本 敬一郎 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 部長

鈴木 孝尚 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 部長代理

鈴木 厚子 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 係長

松尾 春幸 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 主任技師

角間崎 純一 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 主任

(エ)共同実施者

氏名 勤務先 役職

内山 武 JFE エンジニアリング株式会社 事業企画本部 総合研

究所 主任研究員

奥山 契一 JFE エンジニアリング株式会社

環境本部 エンジニア

リングセンター 装置

設計部・経営スタッフ

川畑 秀駿 JFE エンジニアリング株式会社 事業企画本部 総合研

究所 研究員

戸田 朝子 JFE エンジニアリング株式会社 事業企画本部 総合研

究所 研究員

井田 民男 学校法人近畿大学 理工学部 機械工学科

教授

矢嶋 尊 学校法人近畿大学 バイオコークス研究所

所員

SUPICHAYA

CHERDKEATTIKUL学校法人近畿大学

総合理工学研究科

博士工期課程 1 年

(オ)協力者

氏名 勤務先 役職

安田 久生 横手市森林組合 参事

Page 128: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

126

オ 議事

(ア) 開会、挨拶、メンバー紹介

環境省、プログラムオフィサー、横山委員長、実施者挨拶の後、自己紹介

を行った。

(イ) 全体計画と進捗状況

(説明者:JCOAL 角間崎主任)

(ウ) JCOAL 実施内容

(説明者:JCOAL 角間崎主任)

<質疑・応答>

委員 :CO2 削減量効果の試算において、BIC の省エネ効果とは何を示してい

るのか?

→JCOAL:平成 28年度のガス化溶融炉における石炭コークス代替試験において、

等価熱量以上に代替できることが確認され、等価熱量を上回った分を

省エネ効果として計上している。

委員 :バイオマス発電が盛んになっているということで、バイオマス原

料の調達が厳しくなっていることを耳にする。今後の籾殻の調達見

込みと多原料のバイオマスを対象にしたことによる原料収集費用へ

の影響についても追求があると良いと思う。

→JCOAL:籾殻は、乾燥不要なバイオマス原料ということで、低コストで BIC

を製造する上で重要な原料と捉えている。横手市周辺地域では籾殻

を無償で収集できているが、九州地方では、籾殻は有償取引となっ

ており、地域毎に籾殻の流通事情が異なることがわかった。BIC 製造

販売事業を水平展開するには、原料の乾燥費用を低減することが重

要であると考えている。例えば、各地域で豊富に存在するバイオマ

ス原料の燃焼熱を乾燥エネルギーとして利用できれば、乾燥に係る

灯油消費量が削減でき、籾殻に拘ることなく、様々なバイオマス原

料で BIC を製造可能になると思われる。

委員 :BIC の内部温度を測定しているが、これは製造排出された瞬間の温

度を測定しているのか?

→JCOAL:従来であれば、加熱の後は冷却しているが、内部温度測定の際には、

冷却せずに加熱後に直ちに排出するようにしている。

→委員 :自身の研究室でも BIC 製造技術を他の技術に応用した研究を行っ

Page 129: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

127

ており、BIC の内部温度について測定した経験がある。混合原料の分

散にもよるが、比熱がわかればシミュレーションができ、予想でき

ると思う。

PO :加熱時間の長短が BIC の性状に及ぼす影響について、定性的に判

断しているのか?

→JCOAL:BIC 性状は、見掛け密度と圧縮強度で評価している。見掛け密度が

1.2g/cm3 付近であれば製造条件として問題ないと判断している。

PO :製造時間を短くすることで動力はどう変化しているのか?

→JCOAL:製造時間短縮によってヒーターの設定やピストンの押し込み時間等

が変化するため、動力の変化については精査したい。

PO :BIC の規格作り等により、原料や品質で区別することでユーザー側

も使いやすくなると思う。

→委員 :BIC の用途毎に区別する考え方もあると思う。

PO :事業性検討の中で、製造規模 2.4t/日と 14t/日で比較しているが、

BIC を 20,000 円/トンで製造するに当たり、原料収集費用はどの程度

まで許容できるのか?

→JCOAL:原料収集費用をどの程度に抑える必要があるかについては、設備費

用等が出揃い次第精査する。

環境省 :BIC の性状分析を行っているが、再現性はどうなのか?

→JCOAL:2 点ずつ測定しており、その平均値をプロットしている。2 つの値で

そこまで差異は見られなかった。

(エ) JFE エンジニアリング実施内容

(説明者:JFE エンジニアリング㈱ 川畑研究員)

<質疑・応答>

PO :燃料投入設備を改造しているが、他のガス化溶融炉にて BIC を導入

する場合も同様の改造が必要なのか?

→JFE :BIC 投入を前提とした設計になっていないため、BIC 貯蔵用のホッパ

や閉塞防止のための開口工事等が別途必要となる。

→PO :新設の設備では、BIC 投入を前提とした仕様で設計することができる

のか?

→JFE :BIC の使用を前提とした設計にすれば、問題なく使える。将来、BIC

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128

が市場に出回っていれば、メーカーからユーザー側に BIC の使用を提

案し、その仕様に設計することもできる。

PO :将来、ガス化溶融炉で CO2 排出量の削減対策の実施が強制された場

合には有力な燃料になり得ると思う。

→JFE :そのような状況下であれば、BIC の普及も進んでおり、スムーズにユ

ーザーにも提案できると思う。

→PO :BIC 使用によるメリットは CO2 排出量削減以外にあるか?

→JCOAL:ガス化溶融炉単体で考えると CO2 排出量削減以外には無いと思う。

自治体単位で考えると、地球温暖化対策に係る先進的な取り組みを行

っている自治体ということで注目されると思う。

委員 :コークスベッドの高さの維持が重要とのことであるが、BIC 使用を前

提とした炉の設計も考えられると思うがどうか。

→JFE :BIC 使用を前提とした炉の形状や高さはあると思う。BIC の流通が進

めばそういった製品の需要も増してくると思う。

(オ) 近畿大学実施内容

(説明者:近畿大学 井田教授)

<質疑・応答>

委員 :窒素雰囲気、酸素雰囲気下の反応がそれぞれ何を意味しているのか、

各検討項目の関連がわかる説明だと良い。

→近大 :承知した。

(カ) 田中主査のコメント

各担当項目の進捗報告があったが、各分野のつながりが見えると良いと思

った。各社の連携の面で少し課題があると思う。 終報告に向けて、連携し

ながら取組んで欲しい。

(キ) 竹本環境専門員のコメント

事象を裏付ける化学的な説明があると良い。環境省として引き続きバック

アップしていきたい。

(ク) 横山委員長のコメント

試験値のバラつきなど気になる点がいくつかあり、複数回実施し、数値の偏

差を示すと信頼性があるデータになると思う。今回の各担当項目の報告を聞い

Page 131: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

129

て、徐々にかみ合い始めてきたと思う。

(ケ) 石田 PO のコメント

BIC がエネルギー代替だけでなく、特徴があることを示して欲しい。JFE エ

ンジニアリングの実証試験結果と近畿大学のシミュレーションで補完しあえ

るよう、連携して取組んでいただきたい。

(コ) 藤沼 PO のコメント

ゴールに徐々に近づいているようであるが、社会実装に向けては、まだ課題

があるように思う。また、エコプロへ出展予定があるということでそちらにつ

いても情報交換していきたい。

(サ) 村木 PO のコメント

化学的な理由付けが欲しい。また、BIC の製造時間短縮が事業性にどの程度

寄与するのかを示してもらいたい。

以上

Page 132: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

130

③ 第 3 回技術開発検討会

ア 日時 平成 30 年 3 月 16 日(金)

イ 場所 JCOAL 大会議室

ウ 出席者

(ア)委員

氏名 勤務先 役職

横山 伸也

(委員長) 公立大学法人鳥取環境大学

環境学部

環境学科 特任教授

芋生 憲司 国立大学法人 東京大学大学院

農学生命科学研究科

生物・環境工学専攻

教授

安田 肇 国立研究開発法人

産業技術総合研究所

エネルギー・環境領域創

エネルギー研究部門

主任研究員

藤井 吉人 秋田県平鹿地域振興局 農林部

森づくり推進課 課長

(イ)事業委託元

氏名 勤務先 役職

田中 吉隆 環境省 廃棄物対策課 主査

竹本 啓介 環境省 廃棄物対策課 環境専門員

村木 正昭 一般社団法人国際環境研究協会 プログラムオフィサー

Page 133: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

131

(ウ)実施者

氏名 勤務先 役職

橋本 敬一郎 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 部長

鈴木 孝尚 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 部長代理

鈴木 厚子 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 係長

松尾 春幸 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 主任技師

角間崎 純一 一般財団法人石炭エネルギーセンター 技術開発部 主任

(エ)共同実施者

氏名 勤務先 役職

内山 武 JFE エンジニアリング株式会社 事業企画本部 総合研

究所 主任研究員

奥山 契一 JFE エンジニアリング株式会社

環境本部 エンジニア

リングセンター 装置

設計部・経営スタッフ

川畑 秀駿 JFE エンジニアリング株式会社 事業企画本部 総合研

究所 研究員

井田 民男 学校法人近畿大学 理工学部 機械工学科

教授

Page 134: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

132

カ 議事

(ア) 開会、挨拶、メンバー紹介

環境省、プログラムオフィサー、横山委員長、実施者挨拶の後、自己紹介

を行った。

(イ) 全体計画と進捗状況

(説明者:JCOAL 橋本部長)

<質疑・応答>

PO :キュポラにて 20%代替を行ったということだが、代替率 20%を目

標値として定めた理由と 20%代替の実施時間を教えて欲しい。

→JCOAL:過去に木質バイオマス 100%の BIC で 20%代替の実績があるが、排

ガス中の H2 濃度等で課題があった。籾殻入り BIC でどこまで代替で

きるか未知数であり、木質バイオマス 100%と比較して発熱量や灰分

量等の面でハードルが高いと推測していたが、チャレンジングな目

標として設定した。実炉での実証試験のため、20%代替の実施時間

は数時間程度に留まった。

(ウ) JCOAL 実施内容

(説明者:JCOAL 角間崎主任)

<質疑・応答>

委員 :LCA での CO2 排出量削減効果の試算において、計算に引用した CO2

排出係数を記載した方が良い。実際には各エネルギーの CO2 排出係数

は異なる。

→JCOAL:資料の中では記載していないが、環境省で出している「温室効果ガ

ス総排出量算定方法ガイドライン」に記載された CO2 排出係数を引

用している。電気の CO2 排出係数については、東北電力㈱の数値を

用いている。

→委員 :承知した。石炭コークスの製造過程で CO2 が排出されているが、

その点は考慮しないのか?

→JCOAL:指摘の通り、石炭コークスの製造過程では、石炭の採掘、乾留及び

輸送と非常に大きなエネルギーがかかっていることは把握している。

しかしながら、CO2 排出削減効果を計算する際には石炭コークスの製

造過程は考慮せず、石炭コークスありきを前提として算出すること

になっている。石炭コークスの製造過程を考慮した CO2 排出量削減

効果については成果報告書の中に盛り込むようにする。

→委員 :公表されている石炭コークスの CO2 排出係数には、製造過程の発生

Page 135: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

133

量は含まれていないのか?その他の化石燃料についても同様なのか?

→JCOAL:CO2 排出係数には製造過程の発生量は含まれていない。その他の化

石燃料についても同様と思われる。

→委員 :LCA の計算ソフト等もある。代替先燃料の製造工程を考慮すること

でBICのLCAのCO2排出量削減効果が向上する可能性もあるのではな

いか。

→JCOAL:石炭コークスの製造工程を考慮した場合、BIC の LCA の CO2 排出量

削減効果は間違いなく向上する。

→委員長:CO2 排出量削減効果の向上が見込まれるのであれば試算した方が良い

と思う。

委員 :本事業の成果を学会で報告する予定はあるのか?

→JCOAL:日本エネルギー学会への論文投稿を計画している。

→委員 :論文化する際には、各エネルギーの CO2 発生係数や石炭コークスの

製造過程の CO2 排出量を考慮しているか否かを明記する必要がある。

そうすれば、読み手も計算値を信頼でき、更なる削減効果の向上が見

込まれることが理解できる。

委員 :横手地域では、椎茸栽培が盛んであり、現在 230 万菌床使用してい

るが、将来 300 万菌床まで増産すると推定している。近々、廃菌床の

有効利用方法を検討するが、燃料化や堆肥化が候補となっている。燃

料化する場合には、技術指導等をお願いしたい。

→JCOAL:承知した。

PO :IRR の試算において、製造時間 50%短縮効果を設備費用のみ適用して

いるが、ユーティリティ費用には適用させていないのか?

→JCOAL:設備費用については、メーカーからの見積もり金額を引用している。

ユーティリティ費用(主に電力量)については、製造時間 25%短縮試

験において BIC1 個あたりの製造に要する電力量が約 10%削減された

が、50%短縮した際にどの程度電力量が削減されるまでは把握できて

いない。そのため、今回は効果が明確化している設備費用のみ製造時

間 50%短縮の効果を適用して試算している。

→PO :様々なケースで試算しても良いと思う。籾殻燃焼熱を原料乾燥に用い

たケースや近隣施設の廃熱を利用するケース等も考えられ、事業性の

改善につながるのではないか。

Page 136: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

134

環境省 :LCA の CO2 排出量の計算については、国として特段定めていない

と記憶している。論文等で発表する際には、石炭コークスの製造過

程も考慮しないと専門家から指摘を受ける可能性もあると思う。是

非、計算していただきたい。

環境省 :製造時間短縮の試験について元々の製造時間からどのように短縮

されたのかを教えて欲しい。

→JCOAL:従来方法では、原料投入から BIC 排出までの 1 サイクルで合計 138.9

秒である。製造時間 50%短縮の場合には、1 サイクルで合計 68.9 秒

となる。押込時間を短時間に設定する、油圧ユニットの改良による

各ピストン動作を高速化することで短縮している。

→環境省:製造時間 50%短縮の目処は立ったと捉えても良いか?

→JCOAL:一部原料において、製造時間を約 38%短縮化しても性状を維持でき

ることを確認している。50%短縮化については、実際に連続製造を

行い、BIC の性状や連続して製造できるかを確認する必要がある。

環境省 :鋳造メーカーでの実証試験結果にて、A 社、B 社でデータ数に差が

あるが、それはどういった理由か?

→JCOAL:BIC の取扱いに関するノウハウの蓄積の差と考えている。B 社は数

年前より BIC の実証試験の経験があるのに対し、A 社では今回の実

証試験が初の試みであるためである。

→環境省:A 社の試験結果の記載の中で出銑の C 濃度が減少を示したとの記載

があるが、どの程度減少したといった数値はわかっているのか?

→JCOAL:詳細な試験結果報告書は後日提出してもらうことになっている。成

果報告書の中で記載する。

→環境省:石炭コークス置換率を 0.5~22.2%の条件で実施し、ベストの操業条

件が 9.2%置換とのことだが、どういう理由から 9.2%置換率となっ

たのか?

→JCOAL:石炭コークスを 22.2%置換した場合、出銑の C 濃度が減少し、製品

規格を満足できない結果となった。また、A 社としては、CO2 排出量

を一定量削減したいという思惑があり、CO2 削減量と安定操業の兼ね

合いの中で置換率 9.2%という数値になったと理解している。

委員 :B 社試験結果の中で課題として記載があった「価格的価値」という

のはどういう意味か?

→JCOAL:「価格的価値」という表現は、B 社より拝領した報告書の記載を引用

Page 137: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

135

しているが、発熱量ベースの置換率という意味合いで考えて頂いて差

し支えない。

委員 :BIC の製造時間短縮試験の中で見掛け密度及び圧縮強度を測定して

プロットしているが、試験データは何点程度採取しているのか?

→JCOAL:試験データについては 2 点ずつとり平均値をプロットするようにし

ている。偏差等については成果報告書にてわかるように記載する。

委員 :籾殻の利用状況は地域で差があるようだが、今後伸びてくると思

われる。籾殻が有償になったケースについても事業性評価をした方

が良いと思う。

→JCOAL:承知した。今回提示した資料内では BIC 販売価格を 2 パターン想定

しているが、原料収集費用についても検討する。

近大 :LCA における CO2 排出量削減効果の計算の件に関して、以前、二

国間クレジット(以下 JCM)事業を検討した際、石炭コークスの製

造過程にて生じる CO2 排出量について計算し、それを考慮すると大

きな CO2 削減効果があることを確認している。

→環境省:JCM 事業では、実際にクレジットがつくことから評価が厳しくなり、

経済産業省が不確定要素の部分をカウントできないことも理解でき

る。学会等に発表する場合には、石炭コークスの製造工程の CO2 排

出量の計算など学術的な要素があるといいと思う。

→近大 :計算結果は引用することはできる。

→PO :各業界で CO2 排出量を出していると思われる。ポリエチレン業界

では、シェア 75%の企業の CO2 排出量を平均していた。

(エ) JFE エンジニアリング実施内容

(説明者:JFE エンジニアリング㈱ 川畑研究員)

<質疑・応答>

委員 :石炭コークスの 51%置換の実施時間はどの程度か?

→JFE :51%置換の期間も含め、増量試験中は 1 プロットにつき 1 日程度で

ある。

PO :配布資料の P12、13 の図で関係がわかると良い。また、石炭コー

クス削減率の限界値を判断するパラメーターは何なのか?

→JFE :出滓温度である。BIC 投入量を増加させると出滓温度が上昇するが、

Page 138: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

136

これが増加前と同等になるまで石炭コークスを削減する。BIC 投入量を

増加させても、石炭コークス投入量を下げられないときが 大の削減

率となる。

→近大 :下に出滓温度の推移を示すと良いと思う。

→JFE :本資料に出滓温度の推移を加えた改訂版を提出する。

→環境省:図内に炉の操業状況の変化の記載があるとわかりやすい。

委員 :BIC 使用率 90%あたりのプロットではコークス削減率が高く、か

つ等価熱量以上の置換となっており、この条件が BIC 投入における

ベストな操業と捉えても良いか?

→JFE :その認識で構わない。

委員長 :炉の操業状況を見ながら投入量をコントロールしているとのこと

だが、議論の中でも挙げられていたが、図中に炉の操業状況が示さ

れているとよりわかりやすくなると思う。

→JFE :出滓温度が一番の指標であるが、出滓の状態も加味して石炭コー

クスと BIC の投入量をコントロールしている。(温度以外の数値化は

難しい)

近大 :今回試験に用いた BIC ではこのような結果であったが、用いる BIC

によっては試験結果も変わる。

→JFE :指摘の通り、用いる BIC の燃焼速度が変わればベッドの高さの変

動も変わり、石炭コークス置換率にも影響が出てくる。

委員 :BIC の大きさによっても変動するのか?

→JFE :変動すると思われる。元々、BIC を投入するための設備でないため、

サイズに制限があり、50~70mm の高さの範囲で製造してもらってい

る。BIC 投入を考慮した設計であれば大きな BIC も投入可能になる。

委員 :BIC②が も性能が高いという判断でよろしいか?

→JFE :事前分析では各 BIC で性状に差異が見られないことから、削減効

果の差もないと考えている。図中で見られる石炭コークス削減効果

の差は、処理するゴミの性状や石炭コークスの粒径が大きく影響し

ていると考えている。

→委員 :BIC②の時期は石炭コークスの質が良い期間ということだが、石炭

コークスの質が良くなると BIC の削減効果も良くなるのか?

Page 139: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

137

→JFE :代替先である石炭コークスの粒径が小さくなるなど質が低下する

と BIC による石炭コークス置換率は向上し、石炭コークスの質が向

上すると置換率が低下する傾向にある。しかしながら、石炭コーク

ス削減率の 大値は、石炭コークス自体のベッド形成能力が影響し

ており、石炭コークスの質が低下すると石炭コークス削減率の 大

値が減少、石炭コークスの質が向上すると削減率の 大値は増加す

る傾向にある。

(オ) 近畿大学実施内容

(説明者:近畿大学 井田教授)

<質疑・応答>

委員長 :今回の報告で統括 PO の石田先生がおっしゃっていたシミュレーシ

ョンと実炉試験の結果のリンクができていたと思う。

→近大 :実炉の操業状況に近づけたと感じている。

委員 :シミュレーションの酸素濃度分布はどう想定しているのか?

→近大 :均一を想定している。

→委員 :実炉では、下より酸素付加空気を送風しているので、酸素濃度は均

一ではないと思う。シミュレーションと試験結果の差異はその点が影

響しており、酸素濃度分布を補正することでより精度が高まると思う。

(カ) 田中主査のコメント

今回の検討会では、これまで知らなかった知見等を聞くことができた。本

事業の今後に期待したい。

(キ) 村木 PO のコメント

籾殻が入手困難になった際の対策、代替バイオマスの検討が必要のように

感じた。現状の BIC の製造方式(バッチ式)では、稼働率に限界があるよう

に見受けられ、事業性の改善や普及を推進していく上では、画期的な製造方

法の検討も必要のように感じた。

(ク) 横山委員長のコメント

本事業の成果普及活動として、学会報告や学会賞の受賞を狙ってはどうか。

平成 29 年度はエコプロへの出展があるが、エコプロ以外の新エネルギー、バ

イオマス関連の展示会があり、そういった展示会で本技術を普及していけば

良いと思う。

Page 140: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

138

(ケ) 芋生委員のコメント

製造時間短縮やバルク輸送など様々な取り組みがなされており、3 年間でい

い成果が出ている。大手鋳造メーカーが CO2 排出量削減の方法として BIC に

着目しているのは本事業にとっても非常に好ましいことと思う。報告書のデ

ータの信頼性を上げるよう、記載に注意していただきたい。

(コ) 安田委員のコメント

この 3 年間、本事業の成果を楽しく聞かせてもらった。3 年間で大きく進歩

が見られたが、まだまだ伸び代のあると思う。今後の展開に期待したい。

(サ) 藤井委員のコメント

横手市では、廃菌床の有効活用方法について検討している。そちらについ

てもサポート等を引き続きお願いしたい。

以上

Page 141: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

139

3. まとめ

平成 27~28 年度に構築した横手市周辺地域における原料収集システムを活用

し、横手市周辺地域にて安定かつ大量に収集可能な籾殻、バーク及び廃菌床を

主要原料とし、その他バイオマスを籾殻の収集が困難な 7-10 月の補填原料とし

て、年間の多原料 BIC 製造に必要な量をそれぞれ収集した。

横型製造設備にて、計画した原料混合パターン 5 種類をそれぞれ所定量製造

し、合計 340 トンの多原料 BIC を製造した。また、その内 243 トンを一般廃棄

物処理施設に、67 トンを産業用キュポラにそれぞれ供給し、石炭コークス代替

試験に供した。また、縦型製造設備による試作で得られた BIC の製造時間短縮

に関する基礎データを横型製造設備に適用し、短期間の連続製造を通して、製

造時間を 25%短縮できることを確認した。

密度/比重とチャー燃焼速度を比例関係としてモデル化することで BIC の炉内

における燃焼挙動をシミュレーションでき、またシャフト型キュポラ炉を用い

た燃焼試験から、石炭コークスに対し、熱量等価で BIC に置換する場合、燃焼

性能、溶解性能から 30%までは問題なく実施できることを確認できた。

一般廃棄物処理施設での石炭コークス代替試験では、4 種類の多原料 BIC を用

い、1 ヶ月の連続運転を含めた 4 ヶ月以上の長期実証を実施した。1 ヶ月間の連

続運転期間においては、石炭コークス削減率 35%を維持し、試験後半では、BIC

投入量を増加し、石炭コークスを 大 51%削減可能であることを確認した。ま

た、多原料 BIC による石炭コークス代替試験期間終了後も、ガス化溶融炉の運

転に影響がなかったことを確認した。

産業用キュポラでの鋳物用コークス代替試験において、等価熱量で置換した

場合、BIC の投入量の増加に伴い、排ガス中の H2 濃度の上昇や溶湯中の C 濃度

が低下する傾向にあった。溶湯の C 濃度を維持するには鋳物用コークスを追加

投入する必要があり、産業用キュポラにおいては、多原料 BIC は鋳物用コーク

スと熱量等価で置換することは難しいことがわかった。しかしながら、BIC が鋳

物用コークスと比較して燃焼開始温度が低いことから、材料が予熱され、出銑

速度の増加や棚吊り防止といった効果が期待できることがわかった。

実証設備の運転データより試算した BIC の製造に関する LCA(収集~製造~

輸送~利用)ベースのエネルギー損失合計 16.4%となり、ガス化溶融炉にて CO2

排出量を 25%削減した場合、正味の CO2 削減効果は、20.9%となり、本事業の

目標であるガス化溶融炉での正味 CO2 排出量 20%削減を実証することができた。

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140

4. データ

4-1. 多原料 BIC 試験製造結果

平成 27、28 年において、縦型製造設備にて種々のバイオマス組成にて多原

料 BIC を試作し、見掛け密度に対する含水率、加熱温度及び加熱時間の影響

を調べた。試験製造手順について、図表 4-1.1 に示す。

図表 4-1.1 縦型製造装置の試作手順

各サンプルの比重測定

含水率の最適値の確認

各サンプルの比重測定

加熱温度及び時間の影響の確認

含水率 加熱温度 加熱時間6%8%10%12%

STEP1 × ×170℃ 1600秒

含水率 加熱温度 加熱時間150℃ 1200秒170℃ 1400秒190℃ 1600秒

STEP2 × ×STEP1の値

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141

(1)籾殻 90%、廃菌床 10%

(2)籾殻 80%、糠 20%

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分10%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分10%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

• 高温での加熱、もしくは長時間の加熱により、比重 1.2 以

上を満たした。

• 加熱温度の影響が小さく、加熱時間の影響が大きい。

• いずれの製造条件のおいても比重 1.2 以上であった。

• 製品の表面はツヤがあり、ヒビ、傷等が少ない。

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142

(3)籾殻 80%、廃菌床 20%

(4)糠 20%、バーク 50%、製材屑 10%、廃菌床 20%

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分12%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分12%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

• いずれの製造条件のおいても比重 1.3 前後を推移した。

• 加熱温度及び加熱時間の影響は小さく、含水率の影響が大

きい。

• バイオコークスの表面はツヤがあり、ヒビ、傷等が少ない。

• 含水率 10%が 適であった。

• 1800 秒と長時間の加熱により比重 1.2 以上を満たした。

• 加熱温度の影響は比較的小さかった。

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143

(5)稲藁 15%、バーク 55%、製材屑 10%、廃菌床 20%

(6)稲藁 20%、バーク 80%

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分12%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

含水率[%]

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分12%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 130.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

含水率[%] 加熱時間[秒]

• いずれの条件においても比重 1.2 以上を満たした。

• 含水率、加熱温度、加熱時間の影響が大きく、高水分、高

温、長時間の加熱で高比重になる傾向を示した。

• いずれの製造条件のおいても比重 1.2 以上を満たした。

• 含水率、加熱温度、加熱時間の影響が大きく、高水分、高

温、長時間の加熱で高比重になる傾向を示した。

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144

(7)稲藁 20%、廃菌床 80%

(8)バーク 20%、廃菌床 80%

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分12%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

含水率[%} 加熱時間[秒}

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分12%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

• いずれの条件においても比重 1.3 以上を満たした。

• 含水率、加熱時間の影響が大きく、加熱温度の影響は小さ

い。

• 高水分、長時間の加熱で高比重になる傾向を示した。

• いずれの製造条件のおいても比重 1.4 以上を満たした。

• 含水率の影響が大きい。

• バイオコークスの表面にツヤがあり、ヒビ、傷等が少ない。

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145

(9)籾殻 70%、廃菌床 10%、剪定枝 20%

(10)籾殻 50%、バーク 20%、製材屑 5%、廃菌床 5%、剪定枝 20%

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分8%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分12%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13含水率[%]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

• 含水率の影響が大きい。

• 200℃以上の加熱、もしくは 180℃以上、1550 秒以上の加

熱で比重 1.2 を満たした。

• 200℃以上の加熱で比重 1.2 以上を満たした。

• 含水率の影響は小さく、加熱温度の影響が大きい。

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146

(11)糠 15%、バーク 30%、製材屑 10%、廃菌床 15%、剪定枝 30%

(12)稲藁 10%、バーク 35%、製材屑 5%、廃菌床 15%、剪定枝 35%

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分10%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分12%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

含水率[%] 加熱時間[秒]

• いずれの条件でも比重 1.2 以上を満たした。

• バイオコークス表面にツヤがあり、ヒビ、傷等が少ない。

• いずれの条件でも比重 1.2 以上を満たした。

• 含水率及び加熱時間の影響が大きい。

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147

(13)籾殻単体

(14)稲藁単体

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分8%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分12%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

含水率[%] 加熱時間[秒]

• 含水率は 12%以上が 適である。

• 加熱時間の影響は小さく、加熱温度の影響が大きい。

• 1550 秒以上の加熱で比重 1.2 以上を満たした。

• 含水率は 8%が 適である。

• 加熱時間の影響が大きく、180℃以上、1800 秒以上の加熱

にて比重 1.2 以上を満たした。

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148

(15)糠単体

糠単体で試作した結果、180℃で加熱圧縮した場合に、糠の軟化溶融が起

こり、反応容器とピストンのクリアランスから流出してしまい、成型ができ

なかった。よって、縦型製造設備では、糠単体のバイオコークスの製造が困

難であることがわかった。糠を原料として用いる場合には、製造条件の再検

討、もしくは他の原料と混合する必要がある。

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149

(16)バーク単体

(17)製材くず単体

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分9.1%固定)

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分12%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

• いずれの条件のおいても比重 1.1 未満であり、比重 1.2 以

上のバイオコークスの製造は困難である。

• バイオコークスのヒビが多く、排出時の衝撃で容易に割れ

てしまう。

• 含水率は 12%以上が 適である。

• 180℃以上、1550秒以上の加熱で比重1.2以上を満たした。

• 高水分、高温、長時間の加熱で高比重のバイオコークスが

できる傾向にある。

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150

(18)廃菌床単体

(19)剪定枝単体

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分9.5%固定)

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

0.9

1

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900

160℃

180℃

200℃

加熱時間[秒]

水分の影響加熱温度、加熱時間の影響

(水分12%固定)

• 高水分、高温、長時間の加熱で比重が高いバイオコークス

ができる傾向にある。

• いずれの条件でも比重 1.4 以上を満たした。

• バイオコークスの表面はツヤがあり、ヒビ、傷等が少ない。

Page 153: CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業 …1 0. サマリー(和・英) 平成29 年度CO2 排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業

151

(20)No.3 籾殻 70%、バーク 25%、廃菌床 5%

(21)No.5 バーク 50%、廃菌床 50%

加熱温度、加熱時間の影響(水分12%固定)

水分の影響(170℃、1600秒固定)

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

5 6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700

150℃

170℃

190℃

加熱時間[秒]

水分の影響(170℃、1600秒固定)

加熱温度、加熱時間の影響(水分12%固定)

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

5 6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700

150℃

170℃

190℃

加熱時間[秒]

<含水率>

含水率 12%以上で比重 1.2 以上を満たした。

<加熱温度、時間>

190℃は、1200 秒でも比重 1.2 を満たした。

170℃は、1400 秒以上の加熱が必要であった。

150℃は、比重 1.2 以上のものを製造するのが困難。

<含水率>

水分の増加に伴い比重も増加する傾向にあった。

<加熱温度、時間>

170℃、190℃で比重 1.2 以上となった。

150℃は、加熱時間の延長により比重が増加する傾向に

あり、1600 秒で 1.2 以上となった。

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152

(22)No.6 籾殻 60%、バーク 10%、廃菌床 10%、剪定枝 20%

(23)No.9 籾殻 60%、稲藁 3%、糠 2%、バーク 20%、製材くず 5%、廃菌

床 5%、剪定枝 5%

加熱温度、加熱時間の影響(水分12%固定)

水分の影響(170℃、1600秒固定)

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

5 6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700

150℃

170℃

190℃

加熱時間[秒]

加熱温度、加熱時間の影響(水分12%固定)

水分の影響(170℃、1600秒固定)

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

5 6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700

150℃

170℃

190℃

加熱時間[秒]

<含水率>

水分が 12%前後で比重が大きく減少した。

<加熱温度、時間>

150~190℃のいずれの温度でも、1600 秒以上加熱する

ことにより比重 1.2 以上となった。

<含水率>

水分の増加に伴い比重が増加する傾向にあった。

<加熱温度、時間>

170~190℃の温度で 1600 秒以上加熱することにより

比重 1.2 以上となった。

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153

(24)No.10 籾殻 70%、バーク 10%、廃菌床 20%

(25)単独 1 そば殻 100%

加熱温度、加熱時間の影響(水分12%固定)

水分の影響(170℃、1600秒固定)

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

5 6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700

150℃

170℃

190℃

加熱時間[秒]

加熱温度、加熱時間の影響(水分10%固定)

水分の影響(170℃、1600秒固定)

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

5 6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700

150℃

160℃

170℃

加熱時間[秒]

<含水率>

水分の影響は小さい。

<加熱温度、時間>

170~190℃の温度で 1600 秒以上加熱することにより

比重 1.2 以上となった。

<含水率>

水分 12%前後で比重が大きく減少した。

<加熱温度、時間>

1600 秒以上の加熱で比重 1.2 以上となった。

150℃では加熱時間の影響が大きかった。

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154

(26)単独 2 大豆殻 100%

(27)特 1 籾殻 60%、バーク 20%、そば殻 20%

加熱温度、加熱時間の影響(水分12%固定)

水分の影響(170℃、1600秒固定)

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

5 6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700

150℃

170℃

190℃

加熱時間[秒]

加熱温度、加熱時間の影響(水分12%固定)

水分の影響(170℃、1600秒固定)

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

5 6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700

150℃

170℃

190℃

加熱時間[秒]

<含水率>

水分の増加に伴い、比重が増加する傾向であった。

<加熱温度、時間>

170℃、190℃にて 1400 秒以上の加熱で比重 1.2 以上と

なった。

<含水率>

含水率の増加に伴い、緩やかに比重が増加する傾向にあ

った。

<加熱温度、時間>

190℃、1400 秒の加熱にて比重 1.2 以上となった。

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(28)特 2 籾殻 60%、バーク 20%、大豆殻 20%

(29)特 3 バーク 30%、廃菌床 30%、そば殻 20%、大豆殻 20%

加熱温度、加熱時間の影響(水分12%固定)

水分の影響(170℃、1600秒固定)

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

含水率[%]

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700

150℃

170℃

190℃

加熱時間[秒]

加熱温度、加熱時間の影響(水分12%固定)

水分の影響(170℃、1600秒固定)

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

5 6 7 8 9 10 11 12 13

含水率[%]

1.05

1.1

1.15

1.2

1.25

1.3

1.35

1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700

150℃

170℃

190℃

加熱時間[秒]

<含水率>

水分 10%前後で、比重が急激に増加する傾向にあった。

<加熱温度、時間>

170℃、190℃において 1400 秒以上の加熱で比重 1.2 以

上となった。

<含水率>

水分の増加に伴い、比重が増加する傾向であった。

<加熱温度、時間>

加熱時間の延長に伴い比重が増加する傾向を示した。

190℃では、1200 秒以上の加熱で比重 1.2 を満たした。

170℃では、1400 秒以上の加熱で比重 1.2 を満たした。

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4-2. 一般廃棄物処理施設での CO2 排出量 25%削減の長期実証技術

(1) 多原料 BIC の事前評価 4 種類の BIC につき分析を行った結果を図表 4-2.1 に示す。 コークス評価用試験に準ずる測定の概要を図表 4-2.2 に示す。ドラ

ム強度は JIS K 2151 に定められたものであり、DI3015 は規定のドラ

ムに試料を投入し所定回転数で 30 回転させ、15mm の篩上に残る試

料の重量比率として求めるものである。DI15015 は同様に 150 回転さ

せた時の 15mm 篩上比率である。

図表 4-2.1 BIC 分析結果

単位 BIC No.1 BIC No.2 BIC No.4 BIC No.5

水分 wt% 9.5 8.26 10.37 10.73

灰分 乾wt% 15.2 15.07 11.98 6.80

揮発分 乾wt% 66.3 67.17 69.38 72.19

固定炭素 乾wt% 18.5 17.76 18.64 21.01

C 乾wt% 41.7 41.22 42.44 48.21

H 乾wt% 5.3 5.40 5.83 5.65

N 乾wt% 0.2 0.27 0.48 0.18

O 乾wt% 37.6 38.00 39.21 39.13

S 乾wt% 0.05 0.01 0.03 0.03

Cl 乾wt% 0.03 0.05 0.04 0.02

高位発熱量 kJ/kg 16,960 16,940 17,660 19,220

乾kcal/kg 4,050 4,050 4,220 4,590

低位発熱量 kJ/kg 14,040 14,210 14,390 15,750

kcal/kg 3,350 3,400 3,440 3,760

コークスドラム試験

DI3015 % 90.6 98.1 95.8 92.7

DI15015 % 62.8 85.5 73.7 68.9

コークス反応性試験

CSR ( >2.8mm) % 0.0 0.0 0.0 5.8

CRI (反応率) % 85.0 85.7 85.9 94.1

強度指数

発熱量測定

元素分析

工業分析

分析項目

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図表 4-2.2 コークス評価用試験に準ずる測定

CO2 反応後強度 CSR(+9.5mm)は,20mm に整粒した試料 200g を

1,100℃で 2 時間 CO2 と反応させた後,常温下で I 型ドラムに投入し

て 20min-1 で 600 回転させ,所定の目開きの篩上に残る試料の重量比

率として求めるものである。ここでは 2.8 mm の篩上に残る試料の重

量比率を CSR(+2.8mm)としている。

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4-3. 普及見通しの検討 (1)多原料 BIC の輸送費用の検討

事業性評価において輸送コストを削減するための方策として、秋田県横手

市から全国の JFE エンジニアリング㈱製のガス化溶融炉施設まで陸運及び

水運した場合について、それぞれ輸送コストを検討した。 検討した各輸送手段を図表 4-3.1 に示す。また、図表 4-3.2 に対象のガス化

溶融炉の住所、横手市からの輸送距離及び各輸送手段におけるバイオコーク

ス 1 トンあたりの輸送費用を示す。

今回の検討における前提条件として、バイオコークスの荷姿はフレコンバ

ッグとし、総輸送量が 50 トン、300 トンの場合について検討した。鉄道輸

送及びフェリーによる海上輸送は、図表 2-34、35 のような経路で輸送する

ことを想定している。

製造サイトからの輸送距離が長くなるほど輸送費が高額になる傾向にあ

るが、輸送距離が 700km 未満の地域の場合、トラック輸送が も安価な輸

送手段であり、1,000kmを超える地域、もしくは北海道に輸送する場合には、

鉄道もしくは海上輸送を含んだ経路が安価になることがわかった。

輸送距離が 400km 以上になった場合、バイオコークス 1 トンあたりの輸

送費用が 10,000 円に達してしまい、安価で供給することが困難になること

がわかった。

図表 4-3.1 多原料 BIC の輸送手段

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図表 4-3.2 JFE エンジニアリング㈱製ガス化溶融炉への BIC1 トンあたりの輸送費用

50トン 300トン 50トン 300トン 50トン 300トン

日高中部衛生施設組合 日高郡新ひだか町静内真歌169番地 736 30,000 25,000 18,552 17,264 12,400 9,817

盛岡紫波地区環境施設組合岩手県紫波郡矢巾町大字西徳田第12地割

168番地2 101 4,500 3,750 7,560 7,035 4,800 3,800

茨城県環境保全事業団 茨城県笠間市福田165-1 411 10,000 8,333 11,808 10,988 14,960 11,843

東埼玉資源環境組合 埼玉県草加市柿木町107番地1外 477 10,000 8,333 11,592 10,787 14,560 11,527

各務原市北清掃センター 岐阜県各務原市須衛2500-1 712 14,000 11,667 15,000 13,958 16,000 12,667

福山リサイクル発電株式会社 広島県福山市蓑沖町107番8 1063 20,000 16,667 17,520 16,303 20,960 16,593

浜田地区広域行政組合 島根県江津市波小町口-321-1 1169 22,000 18,333 24,840 23,115 29,280 23,180

安芸広域市町村圏事務組合 高知県安芸市伊尾木黒瀬谷山奥4034-1 1206 27,000 22,500 20,304 18,894 20,480 16,213

甘木・朝倉・三井環境施設組合 福岡県朝倉郡筑前町栗田8-3 1435 28,000 23,333 22,392 20,837 24,720 19,570

筑紫野・小郡・基山清掃施設組合 福岡県筑紫野市大字原田1389番地 1436 28,000 23,333 22,512 20,949 24,400 19,317

佐伯地域広域市町村圏事務組合 大分県佐伯市東浜1-38 1545 29,000 24,167 25,464 23,696 26,160 20,710

所在地 トラック 鉄道 フェリー

輸送費用 [円/トン]

施設名横手からの距離

[km]

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160

図表 4-3.3 鉄道コンテナ輸送経路

陸路輸送 鉄道輸送 陸路輸送

日高中部衛生施設組合 横手市~横手貨物駅 横手貨物駅~苫小牧貨物駅 苫小牧貨物駅~日高町

盛岡紫波地区環境施設組合 横手市~横手貨物駅 横手貨物駅~盛岡貨物駅 盛岡貨物駅~矢巾町

茨城県環境保全事業団 横手市~横手貨物駅 横手貨物駅~水戸貨物駅 水戸貨物駅~笠間町

東埼玉資源環境組合 横手市~横手貨物駅 横手貨物駅~越谷貨物駅 越谷貨物駅~草加市

各務原市北清掃センター 横手市~横手貨物駅 横手貨物駅~岐阜貨物駅 岐阜貨物駅~各務原市

福山リサイクル発電株式会社 横手市~横手貨物駅 横手貨物駅~東福山貨物駅 東福山貨物駅~福山市

浜田地区広域行政組合 横手市~横手貨物駅 横手貨物駅~東松江貨物駅 東松江貨物駅~江津市

安芸広域市町村圏事務組合 横手市~横手貨物駅 横手貨物駅~高知貨物駅 高知貨物駅~安芸市

甘木・朝倉・三井環境施設組合 横手市~横手貨物駅 横手貨物駅~鳥栖貨物駅 鳥栖貨物駅~筑前町

筑紫野・小郡・基山清掃施設組合 横手市~横手貨物駅 横手貨物駅~福岡貨物駅 福岡貨物駅~筑紫野市

佐伯地域広域市町村圏事務組合 横手市~横手貨物駅 横手貨物駅~西大分貨物駅 西大分貨物駅~佐伯市

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図表 4-3.4 海上フェリー輸送経路

陸路輸送 海上輸送 陸路輸送 海上輸送 陸路輸送

日高中部衛生施設組合 横手市~秋田港 秋田港~苫小牧港 苫小牧港~日高町

盛岡紫波地区環境施設組合 横手市~矢巾町

茨城県環境保全事業団 横手市~秋田港 秋田港~新潟港 新潟港~笠間町

東埼玉資源環境組合 横手市~秋田港 秋田港~新潟港 新潟港~草加市

各務原市北清掃センター 横手市~秋田港 秋田港~敦賀港 敦賀港~各務原市

福山リサイクル発電株式会社 横手市~秋田港 秋田港~敦賀港 敦賀港~福山市

浜田地区広域行政組合 横手市~秋田港 秋田港~敦賀港 敦賀港~神戸港 神戸港~新門司港 新門司港~江津市

安芸広域市町村圏事務組合 横手市~秋田港 秋田港~敦賀港 敦賀港~安芸市

甘木・朝倉・三井環境施設組合 横手市~秋田港 秋田港~敦賀港 敦賀港~神戸港 神戸港~新門司港 新門司港~筑前町

筑紫野・小郡・基山清掃施設組合 横手市~秋田港 秋田港~敦賀港 敦賀港~神戸港 神戸港~新門司港 新門司港~筑紫野市

佐伯地域広域市町村圏事務組合 横手市~秋田港 秋田港~敦賀港 敦賀港~神戸港 神戸港~新門司港 新門司港~佐伯市

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リサイクル適正の表示:印刷用の紙にリサイクルできます この印刷物は、グリーン購入法に基づく基本方針における「印刷」に係

る判断の基準にしたがい、印刷用の紙へのリサイクルに適した材料「A ラ

ンク」のみを用いて作成しています。