位相コントラストx線イメージング法による 材料観...
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目次
1.位相コントラストX線イメージング法の原理と特徴
2.X線干渉計を用いたイメージング法(X線干渉法)の原理と装置
3.X線干渉法による観察例a. 燃料電池膜b. 南極古氷c. アルツハイマー病βアミロイド
4.屈折コントラストを用いたイメージング法(DEI)の原理と装置
5.DEIによる観察例a. 発泡ポリマーb. 信号ケーブル
6.まとめ
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位相コントラストとは?
従来のX線イメージング(CTなど)
位相X線イメージング
各原子番号に対する感度の比
エネルギー18 keV35 keV50 keV
1
10
100
1000
10000
100000
0 10 20 30 40 50 60
原子番号
感度
の比
(位
相/
従来
)
従来のX線CTより1000倍高感度→有機材料や生体試料を無造影で観察可能!
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位相シフトの検出方法
位相の変化(検出丌可)
強度の変化(検出可能)
位相シフトを強度に変換する方法
検出方法 概要 検出量 感度 密度レンジ
X線干渉法 cos(p) ◎ 狭
屈折コントラスト法
○ 広
タルボ干渉法
伝搬法
x
p
p2
干渉(重ね合せ)により強度に変換して検出
屈折角を結晶の回折現象を利用して検出
フレネル回折を利用して検出
)cos(x
p
回折格子によるタルボ効果を用いて検出
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X線干渉法イメージングシステム
分離型X線干渉計
非対称結晶
除振機構
X線
X線画像検出器
画像検出器
画像フィードバックシステム
干渉計用ステージ
イメージングシステムの模式図
主な性能
エネルギー 17–35 keV
観察視野60×40 mm at
17 keV
空間分解能 約 50 mm
密度分解能三次元観察において
約 0.7 mg/cm3
(測定時間3時間)
参考文献:Nucl. Instrum. Meth. A 523, 217-222(2004)など
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南極古氷の観察
気泡
岩盤
気泡を含む氷結晶
雪
氷
500~1000 m(~100気圧~数万年)
エアハイドレート
ドームふじ
3030 m
氷床
岩盤
酸素や窒素分子
水分子
ハイドレートの模式図 ハイドレートの写真
200 mm
ハイドレート
氷
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南極古氷の観察結果
深さ1775.8 m(間氷期)の氷コアの三次元像(氷に相当する密度を透明化)
エアハイドレート
サンプルX線
液体窒素
液体容器(酢酸メチル)
サンプル
冷却容器
液体容器第1結晶
第2結晶X線
参考文献 Rev. Sci. Instrum. 77, 053705(2006)
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(a)氷期(1975.8 m) (b)間氷期(1775.8 m)
エアハイドレート
各氷床コアの三次元像(氷に相当する密度を透明化して表示)
氷期と間氷期の南極古氷の観察結果
エアハイドレートのサイズの度数分布
0
5
10
15
20
25
30
0 100 200
サイズ[boxel]
度数
氷期
間氷期平均1.3倍
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アルツハイマー病βアミロイドの観察結果
皮質 線条体
脳梁
位相コントラストX線CTによる断面像
bアミロイド染色切片の光学顕微鏡像
プラーク 脳の模式図
Neuroscience. 138, 1205(2006)
プラーク
14
βアミロイドの定量解析
0
200
400
600
800
1000
1200
1400
1600
1800
2000
15
17
19
21
23
25
27
29
31
33
3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
プラ
ーク
の平
均半
径[m
m]
プラ
ーク
の個
数[個
]
月齢
月齢とプラーク大きさ及び個数の関係
参考文献:PF News 24, 28(2006)
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屈折コントラスト法(DEI)の原理
dxzxzxp x ),(2
),(
y
x
z
サンプルによる屈折角θと、位相シフトpの関係式
x
p
2
上式から、p(密度に比例)を
下記の積分により算出
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DEIのシステム
放射光(単色X線)
非対称結晶
角度アナライザーSi(220)
サンプル
画像検出器
PC
CT用のサンプル回転
主な性能
エネルギー 17–70 keV
観察視野 40×40 mm at 17 keV
空間分解能 約 50 mm
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発泡ポリマーの定量解析結果
1 mm
サンプルAの断面像
サンプルA
10000
20000
30000
40000
0 100 200 300 400 500
中心からの距離 [pixel]
密度
[相対
値]
サンプルB
サンプルBの断面像
動径方向の密度分布解析結果
試料提供:日立電線
0
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DEIによる複合材料(金属+有機材料)の観察
mが急激に変化するため金属と有機材料では最適なエネルギーが異なる
従来の吸収法では高精細な観察は難しい
0.0001
0.001
0.01
0.1
1
10
100
1000
0 20 40 60 80 100Lin
ear
abso
rpti
on
coef
fici
ent m
[mm
-1]
X-ray energy [keV]
CH2OFeCu
有機材料に適したエネルギー
金属に適したエネルギー
各エネルギーにおける線吸収係数
観察に適した吸収係数
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DEIによる複合材料(金属+有機材料)の観察
高エネルギーにおいても位相シフトは十分に大きい
複合材料の観察には、高エネルギーX線を用いた位相コントラスト法が適している!
1
10
100
1000
10000
0 20 40 60 80 100
Phas
e-sh
ift
coef
fici
ent dp
[rad
/mm
]
X-ray energy [keV]
CH2OFeCu
減少は1/10以下
各エネルギーにおける位相シフト係数
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DEIによる複合材料(金属+有機材料)の観察
1
10
100
1000
10000
100000
1000000
0 20 40 60 80 100
Rat
ion
of
dp
/m
X-ray energy [keV]
CH2OFeCu
係数の比は高いエネルギーのX線ほど大きい。
高いエネルギーのX線ほど 位相コントラストは高感度
各エネルギーにおける位相シフトと吸収係数の比
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信号ケーブル投影像のラインプロファイル
0
0.5
1
1.5
2
2.5
0 100 200 300 400
位置 [pixel]
位相
シフ
ト[相
対値
]
0.75
0.8
0.85
0.9
0.95
1
吸収
[相対
値]
位相シフト吸収
ジャケット
投影像のラインプロファイル
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まとめ
・位相コントラストX線イメージング法は、従来のX線CTに比べて1000倍以上高感度であり、有機材料や生体試料を高精細に観察することができる。
・X線干渉法は最も高感度でサブmg/cm3の密度分解能を有し、南極古氷に含まれるエアハイドレートや、アルツハイマー病βアミロイドの可視化・定量解析に成功している。
・屈折コントラスト法(DEI)は、密度のダイナミックレンジが広く、電線の絶縁材料である発泡ポリマーの観察・定量解析に成功している。また、高いエネルギーのX線を用いることによって、金属と軽元素で構成された複合材料の観察にも成功している。
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謝辞
武田 徹 (北里大学医療衛生学部)竹谷 敏 (産業技術総合研究所 計測フロンティア研究部門)本田 一匡 (産業技術総合研究所 計測フロンティア研究部門)奥山 純一 (北海道大学 低温科学研究所)本堂 武夫 (北海道大学 低温科学研究所)齊田 恭子 (アステラス製薬(株)薬理研究所)志鷹 義嗣 (アステラス製薬(株)薬理研究所)山崎 孝則 (日立電線(株)技術本部技術研究所)兵藤 一行 (高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所)平野 馨一 (高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所)平井 康晴 (九州シンクロトロン光研究センター)上田 和浩 ((株)日立製作所基礎研究所)
放射光を用いた実験は、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所放射光施設において、S型課題「分離型X線干渉計を用いた位相コントラスト法による生体in vivo 観察」(Ⅰ~Ⅲ)、G型課題「低温環境下における水分子で構成される結晶構造の3次元分布可視化技術の開発 」、及び先端研究施設共用イノベーション創出事業(産業戦略利用)のもと、下記の方々にご協力頂き実施した。