米国ワシントン州の教育スタンダードに基づく学力...
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第55集・第 号(2006年)1
― ―83
本稿は、連邦主導による1990年代の教育スタンダードに基づく学力政策の求めに応じて、ワシン
トン州政府がどのような教育改革施策を導入し、その制度的枠組みを形成したのか、またその後の
連邦����法が同州の改革方針や政策にいかなる影響を与えたのかをマイノリティ教育政策の視点
から考察する。ワシントン州議会は教育の基準化、評価システムの構築、アカウンタビリティの設
定を規定した州「教育改革法」を制定し、教育への州の中央集権的権限の拡大を図った。また、連
邦����法の発効後、学区や学校は連邦と州独自の規定に合致するための二重のアカウンタビリ
ティ達成が求められた。これらのことは学力政策が政治的文脈の中で論じられてきたことを示す。
この政策をマイノリティ教育政策として捉える時、テスト結果の公表による学校の序列化や子ども
間の新たな階層化を生む恐れがあるものの、マイノリティ生徒への積極的な取組みが必須となり学
力向上への期待を持たせるものとなったことが指摘される。
������������� ����������������������
�������
アメリカ合衆国(以下、アメリカ)では、連邦政府主導による教育政策の重点が、1960年代以降
の学校の「人種統合」のための「スクール・ディセグリゲーション(以下、��)」政策から1990年
代以降の学力の底上げにより白人生徒とマイノリティ生徒間の成績格差を是正することを目的とす
る教育スタンダードに基づく学力政策へ移行した。これら二つの政策は別々の教育理念に基づく政
策と考えられているが、実際には共に人種・民族的マイノリティの生徒をその主要な対象としてい
ることから、マイノリティ教育政策の大きな流れの中で捉えられるべきものである。後者の現在進
行中の学力改善政策では、連邦が学区や学校の主体的な取り組みを促して規制緩和を行う一方で、
州に教育スタンダードの設定と学力テストによる評価を要求して、基準化や共通化の確保、アカウ
ンタビリティの達成といった規制をかけている�。こうした支援と圧力による連邦の教育政策に拍
車をかけたものが、2014年までに、数学とリーディングの教科ですべての公立学校の生徒が州の定
める基準の学力を身に付けることを目指した今次の「どの子も置き去りにしない、�����������
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米国ワシントン州の教育スタンダードに基づく学力政策
―制度的枠組みの生成と������������ ����(����)法の影響―
杉 浦 慶 子
東北大学大学院教育学研究科・博士課程後期
米国ワシントン州の教育スタンダードに基づく学力政策
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������(以下、����)」法(2001年)�である。そのタイトルⅠは恵まれない生徒の学力を改善す
ることに焦点を当てており、連邦資金が州教育機関から低学力校をもつ地方の教育機関に優先的に
配分されるとする(同法の����1003�)。同法の下、教育省の予算が2000年度の356億ドルから2003
年度には531億ドルと大幅に増額されたものの、その一方で毎年生徒の基準達成を求める���
(�������������� �����������1111��)の規定にそぐわず「失敗校」とされた学校に、制裁
措置を課して教育現場に負担や圧力をかけているとの批判が高まっている�。これに対し教育省長
官ペイジ(��������)は、「バウチャーや学校選択は『社会的正義』と『公民権』の問題である。な
ぜなら、それらは学力の低い公立学校に通う貧困にあえぐ子どもたちに、より良い教育と明るい未
来のための機会を提供するからである」と語り、同法による学校選択がマイノリティ教育に有効で
あるとしてその正当性を強調している。しかし、ハーバード大学公民権プロジェクトはこの長官の
主張に反発し、「����法が州の改革や評価方策を頓挫させた」�と痛烈に批判した。これらの論争
は、連邦の教育成果に対する認識と州や学区独自の政策方針によるアカウンタビリティ達成につい
ての認識の間に相違があることを示すものである。
日本におけるアメリカの教育スタンダードに基づく学力政策の関連研究としては、岸本睦久がそ
の概念や設定状況を検討し、多様な人種や価値観のあるこの社会で一定の立場から教育スタンダー
ドを設定し、そこに市場原理を持ち込めば利益を得る者と不利益を被る者の格差拡大のおそれがあ
ると指摘した�。また、矢野裕俊は1990年代以降のアメリカの学力政策を概観して、����法によ
る学力政策が目に見える成果を短期的に生み出そうとする傾向を強めて、ある程度の学力向上に貢
献できたが、教員の指導力量の向上には至らなかったと指摘している�。また、世取山洋介は����
法には、今後、連邦政府の設定したスタンダードのみを競争の基準とする、制裁措置としての学校
選択の範囲を学区外にある公立学校およびカソリック学校にも拡大する、といった懸念があるとし
て�、限りない連邦政府の権限の拡大を危惧する。以上の指摘はアメリカの教育動向の概括的な整
理から出た認識である。次に、事例を通した実証的研究として、成松美枝はミルウォーキー市を事
例に分析した結果、市場主義的学校選択が必ずしも学区全体の学力向上に寄与しないことを明らか
にした�。北野秋男は1990年代のマサチューセッツ州における教育改革の進展を例証し、その背景
にある新保守主義思想を分析した�。また、小玉重夫はミネソタ州の事例において����法の通過
後の政策に焦点をあて、アカウンタビリティ制度において民族的・社会階層的な差異を承認した各
市の学校評価と����法における画一的な基準をクリアーするための学校評価が全く異なる結果を
生じ得ることを問題視している。さらに、����法の「どの子も置き去りにしない」というスロー
ガンには「複数性」と「排除と包含」の二つのポリティクスの相克があることを指摘した�。しか
し、この後者二つの論文で扱われた時期を統合的に捉え、一つの州や地域における学力政策全体を
マイノリティ教育政策の視点から分析することが重要であると思われる。
一方、アメリカにおける研究として、例えばテキサス州の教育スタンダードによる教育改革を事
例に、マックニール(��������)�が「教育のスタンダード化は教授や学習に有害であり、長期に
わたって人種や階層により教育を再階層化する」と述べ、「結果的に、集権的政策は教育政策のイデ
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オロギー的、政治的用語や言い回しを確立し、新たな差別を制度化した」と指摘しているが、マイ
ノリティ教育政策の視点から積極的に論じたものではない。また、ワシントン州の教育スタンダー
ド政策に関連する研究として、2003年のボルコ(��������)らの論文�が挙げられる。この研究は、
教育実践面からワシントン州内の校長や教師がいかに州の教育スタンダードや評価システムに対応
し、「学校の教育力」を高めているのかを分析した。これらは当該州の学力政策の進展を知る上で重
要な情報を与えるが、マイノリティ教育政策の視点から積極的に分析し、特に学力政策の影に追い
やられた��政策との関連を視野に入れて考察したものは管見の限り見当たらない。
なお、この学力政策に関して、これまで先進的な教育改革を実践する州が主な研究対象となって
きたが、アメリカの教育を総体的に捉えるためにはそれのみでは不十分である。現在、教育スタン
ダードとテスティング等に関する州法を有する州は、全米50州中、アイオワ州を除く49州である。
本稿で取り上げるワシントン州は、州議会が1993年に州「教育改革法、���������� ����
������������� �������������(������)」を可決成立させ、学力政策の進展に関しては
標準的な州である。アメリカの学力政策の制度的枠組み作りやその実施過程と課題を探るためには、
このワシントン州の展開を見ることが一つの好個の事例を加えると考える。
以上から、本稿では一連の教育スタンダードによる学力政策の1990年代を第一期として、実際の
ワシントン州や州内の学区でどのような政策の意思決定過程を経て制度的枠組みが生成されたのか
を再考し、次に、����法(2001年)以降をその第二期として、その影響や問題を検討する。さら
に、これらの施策をマイノリティ教育政策として捉える時、そこにどのような特質があり、いかな
る問題が内包されているのかを考察する。
����������� �����
まず、1990年代以降����法が制定されるまでのアメリカにおける学力政策の展開に簡単に触れ
ておきたい。学力政策の中でも教育スタンダードに基づく政策の第一期は、ブッシュ大統領が1989
年に全米の州知事を集めて教育サミットを開き、1991年には「全国共通教育目標」の達成戦略「2000
年のアメリカ」の中で教育スタンダードの設定と学力テストの実施を求めたことに始まる。次期ク
リントン大統領も、1994年に教育改革に関する初の連邦法「2000年の目標:アメリカ教育法」を成
立させ、また同年に「初等中等教育法、�������������� �������� ��������(以下、����)」
を修正して「アメリカ学校改善法」を制定した�。その後、ブッシュ大統領はクリントン政権の学
力政策を踏襲しながらも����を改正した����法に2002年 月サインするに至ったのである。本1
章では、こうした連邦の初期の学力政策に対し、296学区を有するワシントン州が州内の教育へのア
カウンタビリティを達成するために、特にマイノリティ生徒の教育に配慮しながらいかに学力政策
の制度的枠組みを作り上げていったのかを検討していく。
������������� ����������� 連邦の教育方針を受けたワシントン州の教育スタンダードに基づく学力政策の第一ステップは、
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州政府による次の二つの動きにある。
第一の動きは、1991年 月、ガードナー(���������)知事が教育改革に向けた「行政命令」を4
発したことである。それは「公教育制度において、我々がすべての生徒の成績を著しく改善すべき
目覚しい根拠がある」と記した上で、①ワシントン州の新たな教育システムを開発する「教育改革
と予算に関する評議会」と、②「生徒の学習に関する委員会、������������������� �������
(以下、���)」を設置し、③1991年12月 日までに行動計画を策定して、1992年12月 日までそ1 1
の最終報告書を提出する旨の内容であった�。①は各委員会の設置と改革の法制化に向けての、②
は条件整備のための委員会である。この知事の「行政命令」により緊急的な州の教育改革の方向が
示されたのである。
この評議会は最終報告書において生徒の学習目標として次の つを提示した。それらは、①多様4
な様式や状況において効果的で合理的に意思疎通する。②数学、社会・物理的・生活科学、美術、
人間性、健康的生活の中心的概念や原則を知り応用する。③きちんとした判断をし、問題解決のた
めの経験や知識を生かして批判的で創造的に考える。④思いやりがあり信頼できる個人として、ま
た家族の一員としての役割を果たし、グループやコミュニティで働く。このような要素を含んだシ
ステムが関連法案として提案され、1993年の教育法の土台となったのである�。
第二の動きは、1993年、州議会がその後の包括的な政策指針となる州「教育改革法(��1209)」
を可決したことである。この法が示した改革推進の中核要素は、①教育スタンダードである������
(������������� ����������������� ����)、②州の評価システムとして����(���������
�������������������� �������)テスト、③学校と学区に学校の向上モニタリングと結果責任を
持たせるアカウンタビリティ制度の確立、の つであった。この法は新たに設置される���に上記3
の つを開発するよう命じている�。3
この教育改革法の要点と意義はどのように捉えられるのであろうか。第一に、高い教育スタンダー
ドを設定し基準化を図る一方で、教育実践における学区や学校の自由裁量を認めていることである。
つまり、教育スタンダードとは生徒が特定の知識や技能をしっかり身につけたと判断するために使
われる基準であり、それは国際的競争力のあるレベルに設定されるべきである。なお、この教育ス
タンダードは学区ないし学区によって使われる教育戦術を制限しないし、特定のカリキュラムの活
用を求めるものではない。一方、評価システムは教育スタンダードをしっかり習得したと判断する
ために使われる一連の評価基準を意味する。また、「成績に基づく教育システム」において、学校が
それを「結果に基づく教育モデル」に使うことを求めておらず、教育がいかに提供されるかの決定
も州によってではなく学校や学区によってなされるべきであると規定している点は重要である。
第二に、知事の権限の下、州の教育改革の条件整備と全体を統轄する委員会を設置していること
である。それが���であり、そのメンバーは 名の州教育委員と知事が指名する 名で構成され、3 8
議長は知事がこのメンバーの中から指名するものである。
第三に、���の任務とその期限を設定していることである。まず���は、①州教育局や州教育委
員会、他州や地方の教育実践家、生徒評価スペシャリストなどの専門家からなる諮問委員会を設置
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し、その助言を受けて1996年 月 日までに教育スタンダードを開発し、②小中高校で使用するた3 1
めの「全州的学業評価システム」=����テストを州教育長と州教育委員会に提出し、その際、③
特殊教育の課程を受けている生徒のニーズを考慮し、異なる学習スタイルを持つ生徒や人種・民族
的背景を持つ生徒に対する、あるいはジェンダー的な偏見のない評価を開発する。また、テストの
結果は教育実践の評価とスタンダードを身につけなかった生徒を適切に支援するための道具として
教育者によって活用されるようにする。ただし、2000-01年度以前は評価システム=����テスト
への参加は自由であるが、2000-01年度初めから全学区参加となる。また、④学業習熟の証明書と
高校卒業要件の関係について州教育委員会に勧告する。⑤1998年12月 日まで、州議会、州知事、1
州教育委員会、州教育長に、各学校や学区ごとの学習レベルの現状を適切かつ公正に把握し、それ
を評価するための全州的アカウンタビリティ制度を勧告する。この<アカウンタビリティ制度>は、
性、人種、エスニシティ、社会経済的状況などの生徒の特質を配慮してデザインされると共に、生
徒をスタンダードに合わせるのが困難な学校や学区を支援する「学校支援プログラム」、継続的に失
敗している生徒が在籍する学校や学区への「介入システム」、及び生徒支援のスタッフにインセン
ティブを与える「報奨プログラム」を含んでいる。当初、州議会はこの制度を2000年 月に実施す9
る計画であったが、���は州教育委員会ならびに州教育局とその活動を慎重に協議することを規定
したのである�。
以上のように、ワシントン州「教育改革法」は学区や学校の教育実践における自由裁量を認める
一方で、���という委員会を通して、高い教育スタンダードの設定と評価システム、及びアカウン
タビリティ制度の確立を求め、全州の基準化、共通化による規制強化を図り、その結果次第で州が
介入できる方策を組み込んで州教育の体系的改革を求めるものであった。これは州がこの政策の主
導権や意思決定権を握り、その中央集権的権限を強化することを意味する。また、評価システム=
����テストにおいてマイノリティや弱者への一定の配慮がある反面、高い教育スタンダードの設
定や高校卒業要件によって結果的に基準に合わない生徒が増え、学校における新たな階層化の進行
が予測されるのである。
���������������� � 州の教育スタンダードに基づく学力政策の第二ステップは、州教育改革法に準拠した���による
任務の遂行である。2004年、公選により二期目のワシントン州教育長であるバージェソン(���
��������、1996年就任)は、その当時、上記の州教育改革法により1993年に設置された委員会であ
る州���の代表の一人であった�。彼女を含む���の目的は、1996-97年度までに自発的に実践す
る学区のために、教育スタンダードと最初の一連の評価を準備することであり、2000年までそれを
完全実施することであった。そこで���の報告書からその任務の遂行過程を検討する。
���は、<第一の任務>である教育スタンダードの設定にあたって、まず全体の計画を立てた上
で、このプロジェクトのために教育者、親、コミュニティメンバーからの助言や支援を求めた。次
に、新たに1993年の 月から 月にかけて「教科諮問委員会(���������� ������������� )」を7 8
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設置し、リーディング、書き、コミュニケーション、数学の各部門委員会の代表として 人の教育4
経験者を選出し、その専門職性を生かした教育スタンダードの検討にあたらせた。さらに、���は
ワークショップを開催して、1994年 月に完成した最初の 科目に関する教育スタンダードの素案1 4
に対する意見を広く収集している。その最終承認は1995年 月13日であった�。その後、1996年 2 4
月、理科、社会科、健康、美術が加えられ 科目の教育スタンダードが設定された�。8
<第二の任務>では、州の����テストを策定し、州教育長と州教育委員会に提出することが求
められた。1994年 月、「教科諮問委員会」は、教育スタンダードに合わせた評価見本の策定を開発6
し、ワシントン大学教育心理学のテイラー(��������)教授らにこの委員会や学区、州教育局、大
学関係者の全体を統轄させた。そして、1994年秋には8000人以上の生徒と251人の教師、32学区が参
加してこのテストの実地試験がなされ、1995年 月にはその作業や採点のガイドがエレンバーグ会1
議で公表されたのである。また、1994年 月、「州評価諮問委員会(�������������������� ���9
���������)」を設置し、1994年10月には州の政策オプションを開発するために「専門家検討委員
会(������������� ������)」を設置して意見収集をしている。そうした過程を踏んで、���
は包括的評価システムに、①州レベルのテスト、②教室を基礎とする評価、③コンテクスト指標
(����������������)、④教師と他の重要な学校スタッフの訓練の つの要素を提示し、その充実4
を図った。その後、1996年 月と 月、①数学、②リーディング、書き、コミュニケーションの新4 5
たな つの第 学年用の試作テストが実施され、その結果はテスト業者によって採点され分析され2 4
た�。1997年春には実際のテストが自由参加で実施された。また、第 、10学年のために、 つの7 4
追加的委員会が設置されたが、これらは実際に各学年レベルの教育内容を指導する教師からなるた
め「教育内容委員会」として知られるものであった�。しかし、最終的に評価システムの基礎とな
る����テストに関しては、民間会社にその開発を任せたのである�。こうした状況は、山本由実
も指摘するように、外部によって作成された評価テストが「学校、教師を評価する基準となる時、
一方的に教師の自律的な教育活動が規定される」�危険性をもつ。また、この生徒の学力を測定し
評価するための����テストは、1997年春、第 学年で試験的に実施されたが、1998年春からは強4
制的に実施されている。また、第 学年と第10学年に関しては、2001年には強制となった�。7
<第三の任務>において、教育のアカウンタビリティ制度を州議会、州知事、州教育長、州教育
委員会に勧告した。ここにおけるアカウンタビリティ制度の目的は、学校に州の教育スタンダード
に合った成績の達成に結果責任をもたせることである。とはいえ、���はこの制度よりも教育スタ
ンダードと評価の開発を優先することが求められたのである。そのため、先に述べたように、州
「教育改革法」による期限設定によってアカウンタビリティ制度が2000年 月 日に発効するとさ9 1
れていたが�、実際のアカウンタビリティの法制化はやや遅れることになった。以下、2001年 月4
25日のシアトル・タイムズ紙の記事から、この時期に州議会が教育「アカウンタビリティ法」を可
決した経緯を探る。全体として、2000年の����テストで第10学年が低い成績結果であったことか
ら、このような問題を解決するため、前述したように、州議会は次の つの公約をしていた。①教3
育スタンダードの設定であり、②生徒がその教育スタンダードに合っているか否かを測定するため
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のテストを導入し、③生徒が継続的に失敗している学校に介入するため州に権限を与えたことであ
る。この「アカウンタビリティ法」は、こうした介入が、いつ、いかに、誰によってなされるかに
ついての規定であるが、この法案成立までには次のような対立があった。すなわち、反対してきた
主な勢力は上院の民主党員らで、州が介入するための高い基準を設定する法案を否決し、二年間そ
のプロセスを遅らせようとした上、教員組合に州の政策への拒否権を与えた。しかし、下院の民主
党員は逆に共和党員と共に、基準を適切なレベルに下げ、二年間の待機を止めさせ、組合を保護す
る言葉も無視することにした。その結果、下院が生徒の成績低下に厳しく対処する「アカウンタビ
リティ法」を可決、成立させたのである�。こうした同法の成立過程においても、州議会が1990年
代以降の学力政策の中で教育を政治的論争に巻き込みコントロールしてきたと言える。
一方、州発行の小冊子によれば、上記のような���による教育改革の条件整備がほぼ終了した
2000年に、州教育委員会は2008年の卒業生から適用する新たな つの高校卒業要件を追加規定した4
「2008年の卒業生(�������� 2008)」を承認した。その内容は、①高校卒業要件とその後の段階に
適切に結びつくこと、②最低卒業単位は19とすること、③生徒は学業成績証明書のために第10学年
のリーディング、書き、数学、ないし州が認める代替教科の����テストで教育スタンダードに合
致すること、ただし、第10学年����テストあるいは別の学年の����テストを受験できない特殊
教育課程の生徒には個別の成績証明書を発行すること、④学校と実際の生活との結びつきの理解を
助けること�、の つであった。これにより生徒たちが新たに����テストに合格することをその4
高校卒業要件として求められたことは、後の連邦法との関連からも重要である。
�������������� ���� ワシントン州が教育供給主体である学区や学校を従わせ、州教育改革を成功させるためには支援
と圧力が必要であった。以下、ボルコらによる調査からその概要を見ていく。各学区には、教師へ
の学習機会と教材一式の提供、教室で教師を補佐する助手(������)の派遣、州内の16 ヶ所に「地
域学習・評価センター」の設置などの支援が示された。一方、圧力として、そのアカウンタビリティ
制度が、低学力校に対する成績改善目標、成功した学校を見極める基準、支援を必要とする事態の
基準、成績を引き上げるシステムなどを含み、州による低学力校への介入を可能ならしめている�。
すなわち、州は学区に対して学校や教師への物的、精神的支援をする一方で、結果責任の明確化や
成果主義に基づく基準の設定という形で制約を加え、その結果次第で州が改善を要求して介入する
体制を取っていた。その具体的な州内の二つの小学校の成功例で注目される点の一つは、学校が
����のタイトルⅠ資金を使って教師に学習の機会を提供するために教師経験のある「教育ファシ
リテーター」を採用して、教室での教師の補助にあたらせたことである。もう一つは、教師を採用
する際に州の教育スタンダードの知識がしっかりしている人物を優先採用していた点である。それ
により、新任教師が州や学区の目指す教育改革方針に沿った指導がし易いというメリットがある。
その一方で、「他校のように����テストのために力のある教師をその学年の担当にはしなかった」
という校長の話は�、いかに各学校が短期間で目に見える成果を上げるために苦肉の策を講じてい
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たかの、またこのテスト自体が各学校にとって大きな負担であったかの証でもある。
������������ �������������������������� 上記のワシントン州の教育スタンダードに準拠するため、各学区は学区独自の教科毎の詳細なス
タンダードと指標(��������)の設定が求められた。その具体的な設定過程を、州最大で市内の
全学齢生徒数61,037人の公立学校に占める割合が70.6%、約43,000人(1993年)であるシアトル学区�
を事例に、その発行された文書から概観する。
シアトル学区は1998年12月から1999年 月まで学力政策の基本体制作りとして、学区の「スタン5
ダードに基づく学習システム(����������������� �������)」を策定するため、一連の作業
部会に各小中学校から 名ずつの教師の参加を要請した。彼らは州「教育改革法」に準じて設定さ3
れた州の教育スタンダードと、学区のカリキュラムの枠組みや彼らの教育実践を比較することから
その作業を始め、その後の部会で、学年レベルの指標が検討、開発された。高校段階でも各教科主
任が同様のプロセスに参加した。最終的に300人以上が参加して指導実践の基本となる文書策定にあ
たったことになる。この文書では各セクションが教育スタンダードから始まり、<スタンダードと
指標>として学年レベルの指標、つまり各スタンダードのために幼稚園から第10学年までの目標が
明記されている。これらの教育スタンダードは1999年 月16日、シアトル教育委員会によって承認6
された。各スタンダードの下、第 、 、10学年のための指標は州によって設定され、����テス4 7
トで測られることになる�。州の����テストが外部の業者に委託作成された経緯を考えれば、こ
うしたシアトル学区の取り組みには各学校からの教師の参加による学区のカリキュラムと州の教育
スタンダードとの詳細な擦りあわせというプロセスがあったことは、学力政策に教育現場にいる教
師の意志と自律性を反映し、そこに結果責任の感覚が芽生えることを期待させる。
以上、本章で扱った学力政策の第一期において、ワシントン州では上記のような過程を経て教育
スタンダード、評価システム、アカウンタビリティ制度が確立され、学力政策の制度的枠組みが形
成された。そこに見られるように、同州の学力政策は、知事を含む州行政府と州議会が主導権を握
り、教育行政の州教育局である州教育長や州教育委員会�がそれに取り込まれる形で進められたの
である。
�������������������
連邦政府の唱導で始まった教育スタンダードに基づく学力政策が州政府主導で展開され軌道に
乗ったかに見えたが、ブッシュ政権による「すべての生徒」(但しタイトルⅠ資金を受給する学校)
を対象とする����法(����年)の発効後、支援と圧力による新たな政策推進手法が教育現場に迫っ
ている。つまり、この法の可決が意味するところは、連邦が州や地方学区レベルでの成績に基づく
アカウンタビリティを要求する介入者の立場に立ったことである。しかし、同法は州や地方機関に
対する要求の特異性で先例がない上、����年の教育サミットで描かれた連邦の役割をはるかに超え
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るものであった�。そのため、州や学区は、アカウンタビリティ制度の変更及び新たな学校選択の
提供を求められており、そのため����テストの位置づけも変わらざるを得なかったことから、現
在、学力政策の第二期を迎えていると言える。
����������� ������������������������ ���
����法の求めによって生じた州の教育行政の一つの変更点は、学力政策におけるアカウンタビ
リティ制度にある。2002年、ブッシュ政権がこの法に準ずるため各州にアカウンタビリティ計画の
提出を求め、2003年、それによる学校評価が全米で始まった�。そのため、ワシントン州も����
法による以下の つの要請を確実にするため、その変更を余儀なくされた。4
①すべての�-12の公立学校の生徒は州評価システムの対象となる。
②テストの対象学年の登録生徒数の95%以上の受験が求められる。
③全生徒のグループが2013-14年度までに数学とリーディングで州習熟レベルに達する。
④州のテスト結果が���要件に合わない学校や学区は改善が必要と判断される�。
まず、同州は2003年 月31日までに求められたアカウンタビリティ計画を教育省に提出したが、1
完全に承認されたのは2004年 月16日に提出した 回目の修正版であった。この修正版における大6 4
きな変更点は以下の つである。それらは、①毎年改善ゴールを上げることから、 年単位のゴー6 3
ルに変更する。つまり、2014年までに、����テストによりすべての生徒の習熟度目標(����������
������)を維持しつつ、州は���の測定にあたって 年間の「階梯ステップ」による改善目標を採3
用する。②「サブグループ」の生徒などのクラスサイズが30人から40人に膨らむ。③小規模学校で
は「すべての生徒」が各カテゴリーで���に準ずることを求められる。ただし、州に改善計画を提
出した「サブグループ」の30人以下の学校は、���により評価されない。④英語学習者(���)を
初年度、リーディングと書きの����テストから除く。⑤特殊教育課程の生徒のテストに関する選
択が拡大される。「学年外のレベル」のテストが受験可能になる。⑥高校卒業基準が2013-14年度に
85%まで少しずつ上がるよう、その卒業始点が73%から66%に下げられ、新たな始点が設定される�。
以上、人種、貧困、身体的状況に基づく「サブグループ」、つまりマイノリティ生徒にやや厳しい要
求を課しているものの、従来の州アカウンタビリティ制度より①、④、⑤、⑥では柔軟性があり規
制緩和されたことになる。
���������
����法の下、州の教育行政におけるもう一つの重要な変更点は教育成果のアカウンタビリティ
に対する規制強化、すなわち同法により求められた制裁措置の一つである学校選択の提供である。
特に求められた重要な点は、学区や学校が、生徒が受験した州テストの数学とリーディングで州の
基準を満たし、毎年の学力向上をするという���に準拠するための明確な努力によって成果を上げ
ることであった。その結果、「失敗校」とされた場合には、����法の「公立学校選択」項目で、地
米国ワシントン州の教育スタンダードに基づく学力政策
― ―92
方教育機関は学校選択が州法により禁じられていなければ、「失敗校」の生徒に学校改善に向けて
チャータースクールを含む公立学校の選択を提供しなければならないとする(����1116�����
�)�。他に、連邦の教育資金を使った個人指導、放課後サービス、夏期学校プログラムを含む「補
習サービス」の提供が求められる。それに伴って、2002年には、チャータースクールの設置支援に
州と地方コミュニティは約 億ドルの連邦資金の活用が可能となる見込みであった�。このように、2
����法によりチャータースクールが「失敗校」への制裁道具の一つとして浮かび上がってきたこ
とから、これをきっかけにチャータースクール法を持たない州では、その法制化が急がれたのであ
る。
ワシントン州はその例に該当する。これまで同州ではチャータースクールやバウチャー制の市場
主義的学校選択制度が住民投票で否決されてきたが、2004年に同州議会が����法を考慮し恵まれ
ない生徒をその主対象とする州チャータースクール法を可決したからである。この州法を支持する
知事やマイノリティグループがいた一方、教師の労働条件や身分保障を懸念する州教員組合や公立
学校の私事化を嫌い「決議文」を通してその異議を唱えたシアトル学区などの行政機関の反対運動
が激しく、結果的に、同州法は2004年秋の住民投票で否決された。そのため、現在、チャータース
クール制度は棚上げとなっており、ワシントン州はそれを持たない特色を持つ。このように、学力
政策における����法の影響は、特にチャータースクールの法制化問題につながり、さらに����
法に準拠するための予算が不十分であることや同法が余りにも懲罰的で修正が必要であるとの批判
が高まり大きな論争を呼んでいる。これらについては稿を改めて詳述したい。
加えて、学力政策に移行後も「人種統合」のためのスクール・ディセグリゲーション(��)政策
を継続している学区があることから、����法による学校選択の��政策への影響について触れてお
きたい。����法の「��計画の適用免除(������������������ ��������)」項目は、経済的に恵
まれない子どもの数が学校全体の生徒の少なくとも25%ならば、子どもたちが州命令や裁判所命令
による��計画で通う学校の規定除外を求める教育機関の要求文書を教育省長官が承認した時なさ
れる(����1113��)�と要約できる。しかし、この件について、2004年の教育省による����法
とSD政策に絡んだ学校選択制の問題を扱う資料では異なる表現が見られる。①学区は��政策を前
提としていても生徒に転校のための学校選択を提供することを免除されない。②学区は��政策が転
校する生徒の機会を制限する場合でも、タイトルⅠの下、公立学校選択を実施しなければならない。
さらに、③裁判所命令による��政策を実施中である場合、学校選択を認める政策に修正するため裁
判所の承認を得る必要がある�と記している。つまり、����法の制裁措置のための学校選択と��
政策がかち合った場合は、前者が優先されることを意味する。
しかしながら、ワシントン州の��政策に関して見てみると、少し異なる事情が介入してくる。
��政策を実施した中心的学区であるシアトル学区は1972年と1978年に「強制バス通学」による��
政策を民衆統制によって実施したが、その「強制バス通学」を1997年に廃止する決定をし、それを
終息させた。しかし、人種を加味した生徒割り当て政策はその後も一定規模で継続したが、訴訟問
題に発展したため、現在その政策も一時停止中である。よって、「人種統合」政策と����法の制裁
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第55集・第 号(2006年)1
― ―93
による学校選択のための転校とかち合うことはない。
�������������������������������������
先に述べたように、ワシントン州の����テストは基本的に生徒の学力評価システムである。こ
れに関するワシントン州リポート・カード(�������������� ��������)によれば、同州の第
学年に関する2002年と2004年間の教科別習熟度(����������)データでは、リーディングが %、4 9
数学では %上がり、また、黒人生徒と白人生徒のリーディングの成績格差は %ほど縮まり、ヒ8 4
スパニックと白人のリーディングの成績格差は %縮小した�。ここに挙げられた第 学年のデー3 4
タに限れば、学力改善がなされたと言えるが、同学年の他の要素や他の学年についてのデータの詳
細な検討も必要である。まず、����テストで各学年の各教科における教育スタンダードに達した
生徒の割合(�������������������� ��������)を見ると、以下の表のようになる。
����������������� ���������������理科書き数学リーディング
53.6%55.2%66.7%第 学年4
54.7%36.8%47.9%第 学年7
35.8%第 学年8
31.8%60.5%39.4%60.0%第10学年
����������������� ���������������書き数学リーディング
49.5%51.8%65.6%第 学年4
53.0%30.4%44.5%第 学年7
54.3%37.3%59.2%第10学年
����������������� ���������������理科書き数学リーディング
55.8%59.9%74.4%第 学年4
28.2%第 学年5
57.9%46.3%60.4%第 学年7
39.4%第 学年8
32.2%65.2%43.9%64.5%第10学年
����������������� ���������������理科書き数学リーディング
57.7%60.8%79.5%第 学年4
35.6%第 学年5
61.2%50.8%69.0%第 学年7
36.4%第 学年8
35.8%65.2%47.5%72.9%第10学年
米国ワシントン州の教育スタンダードに基づく学力政策
― ―94
上記の表 は����法以前の����テスト結果のデータで、特に第 学年のリーディングと数学1 7
ではスタンダード達成率が他の学年に比べ低かった。表 以降は同法発効後のデータである。この2
年から第 学年と第10学年に理科が加わったが、そのスタンダード達成率はかなり低い。表 は8 3
����法による評価が2003-04年度から始まった時のデータである。この年に第 学年の理科が追5
加された。表 では全体のスタンダード達成率が上昇したが、第 学年の理科がやや下がった。ま4 8
た、表 は2005-06年度のデータで、さらに����法により第 学年、第 学年、第 学年、第 5 3 5 6 8
学年にリーディングと数学が加わり(SEC1111����� )�、当初、受験対象が三学年のみであった
評価システムが、2005年には七学年に亘り規模拡大した。また、2002年以降に理科が一部に導入さ
れたものの、スタンダード達成率が40%以下ないし42%と低迷している。注目すべきは、表 と表1
間で、高校卒業に関連する第10学年では����法以前のリーディング59.2%及び数学37.3%から同5
法下ではリーディング81.9%、数学51.0%と全体としては改善の傾向を示したことである�。しかし、
こうした学年全体の評価ではマイノリティ生徒の成績の状況が見えてこない。
そこで、����テスト結果をカテゴリー別に見て、その成績格差をより明確に捉えてみよう。州
教育機関は����法の「州の報告書」規定により、生徒を人種、民族、性、移民、英語力不足、身
体的、経済的状況のカテゴリー別にし、その成績分析と報告が求められた(����1111.���)�。
基本的に、 カテゴリー別の詳細な成績分析とその報告がなされたが、それをワシントン州リポー9
ト・カードの「���の習熟度細目(������������� ����)」から検討したい。2004年度の州総生
徒数は1,020,959人であり、その人種構成はインディアン2.8%、アジア系7.9%、黒人5.9%、ヒスパ
ニック12.8%、白人70.3%であった。以下の表は����テストにおける州の教育スタンダードに達し
た生徒の割合(達成率)と教科毎の達成率の学年別目標値で���を満たしたか否かの州レベルの分
析結果である
����������������� ���������������理科書き数学リーディング
64.2%68.2%第 学年3
60.3%58.9%81.1%第 学年4
35.7%55.8%76.2%第 学年5
49.4%66.6%第 学年6
64.5%48.5%61.5%第 学年7
42.9%48.8%70.1%第 学年8
34.9%79.7%51.0%81.9%第10学年
出典:表 ~表 、�������������� ������������������������������ �� �����1 5�������������� ����������������������������� �������(2006年 月20日9取得)
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第55集・第 号(2006年)1
― ―95
上記の表 の2004-05年度の����テストの第 学年では、白人とアジア系の生徒が高いスタン6 4
ダード達成率を示している。白人生徒と黒人生徒のリーディングにおける差は13.9%、数学では
28.4%と大きい。また、表 の第10学年では、白人よりアジア系の方が高い達成率をあげた。白人7
生徒と黒人生徒のリーディングの差は20.5%、数学では30.5%であり、その人種による差は大きい。表
と表 の両学年共、教育スタンダードを達成し、継続的に学力向上していたのは白人とアジア系6 7
の生徒であり、インディアン、黒人、ヒスパニックはそれを満たさなかったことになる�。
この2004年度の����テスト結果を掲載したシアトル・ポスト・インテリジェンサー紙は、「失敗
校」とされた学校の一覧表で、数学とリーディングの二教科を受験した生徒の白人、非白人、低所
得、特殊教育、英語習熟度別の合否を公表した。その注において、2003年に始まった����法によ
る評価では、「たとえ、一つのカテゴリーでも生徒がスタンダードに合わなければ、その学校は失敗
である」と補足している�。また、2005年度の����テスト結果についても人種カテゴリーによる
���������������������� �������������������� �数学リーディング第 学年4
左数値の目標値(47.3%)達成の合否
スタンダードに達した生徒割合
左数値の目標値(64.2%)達 成の合否
スタンダードに達した生徒割合生徒のグループ
合62.1%合80.3%全体
否45.5%合67.1%インディアン
合69.5%合84.1%アジア系
否40.7%合71.2%黒人
否37.7%否63.0%ヒスパニック
合69.1%合85.1%白人
否26.9%否48.4%英語力不足
否32.6%否46.8%特殊教育
否45.4%合68.8%低所得家庭
����������������������� ���������������������数学リーディング第10学年
左数値の目標値(43.6%)達成の合否
スタンダードに達した生徒割合
左数値の目標値(61.5%)達成の合否
スタンダードに達した生徒割合生徒のグループ
合49.5%合74.6%全体
否31.6%否61.3%インディアン
合59.7%合81.0%アジア系
否23.6%否57.8%黒人
否26.4%否55.8%ヒスパニック
合54.1%合78.3%白人
否14.0%否31.5%英語力不足
否10.5%否26.6%特殊教育
否30.1%否58.4%低所得家庭
出 典:表 と 表 、�������������� ������������������������������ �� ������������ ���6 7���������������� ��������������������������� �������������������(2006年 月20日取得)9から抜粋。
米国ワシントン州の教育スタンダードに基づく学力政策
― ―96
分析結果が10月13日の同紙に掲載された。それによると、����テストで教育スタンダードに達し
たシアトル学区の生徒は、全体として白人:52%、アジア系:37%、インディアン:29%、ヒスパ
ニック:19%、黒人:10%であった�。このデータからも白人生徒と特に黒人生徒の格差が大きい
ことが裏付けられた。
����テストの実施や評価における注目点は、階梯ステップで上げられる達成率の数値設定に
よってその達成の合否が分かれることである。また、テストのカテゴリー別分析の効果は、それぞ
れのニーズを吸上げより具体的で効果的な政策実践を可能にする利点がある反面、その詳細な結果
を公表することでカテゴリー別の子どもへの評価を固定化する恐れもある。
��������������
では、実際の����テストの結果に対し、教育関係者がそれをどのように捉え、また����法に
よる制裁予測をどのように受けとめたかを2003年度から2005年度までの地元紙による論評を中心に
見ていく。
2003年 月、バージェソン(���������)州教育長は、各学区の学校ごとの����テスト結果を8
公表した。シアトル・タイムズ紙によれば、第 、 、10学年の約230,000人の生徒が受験した。ち4 7
なみに、先に示したように����法によって、この州評価テストには各学校の対象学年の生徒の95%
以上の受験が求められている(����1111����� )�。以下、2003年度の結果に対する評価と批判
を要約すると、①州の「2008年の卒業生」規定により2008年までに高校生はこの第10学年の����
テストに合格し高校卒業要件を満たさなければならないが、このままであれば、2008年、クラスの
たった28%の生徒しか卒業できないことになると警告した。また、②いくつかのグループが新たな
����法の規定に合わず、テストの点は125学区、436校で連邦の関与が予測される低さであった。
この結果は連邦補助金を受給するこれらの学校や学区が翌年まで成績改善を求められるか、より良
い成果を上げている学校への学校選択を親に提供するといった制裁措置に直面することを意味す
る。特に、③シアトル学区とハイライン学区を含む50学区は、2003年度、生徒指導ないし補習サー
ビスに加え、学校選択を提供しなければならない。州は全体として連邦法によって定められた成績
の「十分な向上」を達成していないと判断される。④求められたカテゴリーの111のうち78で目標達
成できたものの、いくつかの「サブグループ」、特にバイリンガルや特殊教育の課程を受ける生徒た
ちが求められた向上を示さなかったことは問題であった。その上、4200人以上の生徒が通う州内学
区のすべてが不十分な結果であった。一方、⑤私立学校は����テストを実施するか否かを選択で
きるが、テストを実施した場合、望まなければその結果は公表されない�。このように2003年度の
����テストの結果はかなり深刻な状況であったと言える。その一方で、試験結果に対する����
法による制裁措置について、州教育長は「誰にでも同じ物差しでもって、例えば特殊教育の課程の
生徒や英語を学ぶのがやっとという生徒を含めて測ることは不公平な上」、「子どもや学校にとって
も非倫理的である」と批判し、同法の修正に向けて戦う立場を表明した�。こうした批判や2003年
度の����テスト結果を懸念して、州議会は2004年から����テストの結果が芳しくない第10学年
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第55集・第 号(2006年)1
― ―97
の生徒には州の高校卒業要件との関連から複数回( 回の再試)の受験を可能にし、そのための予4
算を投入するといった変更を承認したことは�一つの前進であるが、そこに応急策が求められる逼
迫した状況があったと言える。
次に、2004年度の����テスト結果が発表された翌日の 月 日、シアトル・ポスト・インテリ9 2
ジェンサー紙はそれを次のように伝えた。 教科の「今年の����スコアは上昇したものの、その3
結果はこれまで以上の公立学校の親たちに学区の経費でより成績の良い学校への生徒転校が提供さ
れることを意味する」。それは「恵まれない生徒への連邦支援を受ける学校、また����法の下で設
定された目標に連続的に達しない学校が、同法の下で数学とリーディングの 教科のどちらか一方2
で二年間不十分な成績であった場合、親に提供される救済措置の開始で、さらに深刻な制裁に直面
する」。「失敗校」とされたシアトルを含む近隣学区の 校の親は2004-05年度にはじめて学校選択9
のための転校を提供される予定であることが報じられ、加えて、成績の良い生徒と低学力の生徒間
の成績格差が人種的グループ間の差として表出したことは����法本来の目的からも問題であっ
た。このように、2004年度の����テスト結果においても学力の底上げ政策の緊急な強化が要請さ
れることが明らかとなった。こうした結果を招いた州教育長の政策方針に対して、「州教員組合、
����������� ��������������(���)」のハッセ(��������)会長は、学力政策の基準が
「政治的目的のために調整されてきたことに疑念を抱く」と語り、その政策に批判的姿勢を示し
た�。
さらに、2005年度の����テストに関して、 月 日のシアトル・ポスト・インテリジェンサー9 1
紙は、前日の州教育長によるその公表結果を受けて次のようなインタビューの内容を報じた。まず、
高校卒業要件である「2008年の卒業生」に関連して、シアトル教育委員のフリン(��������)は
「一部の高校生が個別指導を受ける、あるいは����テストを再受験するということよりむしろ退
学する意思を固めている」ことを問題視した。また、���のハッセ会長も、「教師たちが����テ
ストの点数と高校卒業を結びつけることを懸念している」と語った。これらの批判に対して、州教
育長は成績の振るわなかった生徒には 度の再テストの機会があり、高校卒業を決してあきらめな4
いよう促していると反論した。また、シアトル学区のマンハス(���������)教育長も、「高校の
スコアはそう悪くはない。ただ、数学が問題なのである」、つまり、「全体のレベルを押し下げてい
るのは数学である」と述べて、数学の指導強化の必要性を強調した�。一方、2005年 月21日のシ9
アトルタイムズ紙に、親の代表とも言えるワシントン州���会長である白人のハンソン(���
������)がこの����テストに関する次のような意見を投稿している。①生徒が����テストを複
数回受験できるが、そのテスト結果の悪い教科の生徒を支援する州レベルのプログラムがないこと、
②����テストは高校卒業要件として活用されるべきであること、③親は子どもの成績向上に積極
的に関わるべきであること、④ワシントン州���とそのメンバーは高い教育スタンダードを支持し
ており、生徒たちが����テストに合格するよう更なる支援が必要であるなどがその意見の主要な
点である�。総じて、教育行政側からは����テストの活用法への疑問が強く、反対に親側の���
会長の主張には����テストを多いに活用して生徒の学力向上に貢献すべきであり、教育スタン
米国ワシントン州の教育スタンダードに基づく学力政策
― ―98
ダードはミニマムではなく確実な学力保障に向けた高いものであるべきという認識と教育要求が込
められていたと言える。
上記のような指摘や懸念から、州����テスト受験の複数化による規制緩和があったものの、そ
のテストの合格が求められる高校卒業要件の縛りがむしろ一部の生徒のやる気を削いでいたこと、
また人種間の学力格差も縮小していない実態が読み取れる。特に、そのテスト結果によって����
法に準拠しない「失敗校」というレッテルを貼られた学校が矯正策を講じても改善しない場合、最
終的に他校への生徒転校を実施することは成果主義の市場からの敗退を意味する。このように、
����法の���規定による圧力が教育現場に浸透しており、����テストは学校が同法の規定に準
拠しているか否か、つまり学校の質を測る道具と化したと言える。
しかし、����法は成績の振るわない「失敗校」の改善を求める制裁措置の一方で、「学校支援と
表彰」項目で成績格差を縮小し大きな改善を示した「優れた学校(����������������� �)」を表彰
し、教師への報償などの資金援助をしている(����1117�)�。まさに、支援と圧力による教育改
革が現在の����法による学力政策である。
以上、学力政策の第二期において、ワシントン州の学力政策推進におけるこの����法への批判
の高まりは、連邦の州や地方自治への過剰な介入に対する反発と捉えることができる。この点から
も、連邦政府の教育政策に対する姿勢を批判したラビッチ(��������)の「抑制(���������)は
必要だが、学校はワシントン����の議会や圧力団体によってではなく、また州議員や官僚的監督者
によってでもなく、学校に最も近い人々によって管理されるのが最善である」�という指摘は重要で
ある。すなわち、不十分な予算の下、政策提言主体がその実施主体に「すべての生徒」の成績の継
続的な質的向上を求めて結果責任を強いる形態には限界があると言えよう。
�����
最後に、ワシントン州の学力政策展開の特質とその意義を指摘し、さらにマイノリティ教育政策
の視点からその利点と問題点を考察したい。
ワシントン州における1990年代以降の教育スタンダードに基づく学力政策の第一期の制度的枠組
みの生成に関しては、州政府主導によってトップダウンで強力にまた計画的に推し進められた。ま
た、州の教育スタンダードに基づく学力政策は、その内面に政治的側面を含んでいることも注目さ
れる。連邦の教育政策の意向を反映した州の教育スタンダードに基づく学力政策の制度的枠組みを
規定した州「教育改革法」にせよ、州の教育「アカウンタビリティ法」にせよ、結果的にそのいず
れもが州議会の採決により成立したからである。こうした連邦政府や州議会の強い教育への介入姿
勢は、州教育長や州教育委員会にとってその条件整備を徹底しなければならないという圧力となり、
学区にとっては最終的にその結果責任を負わされることになった。その具体的な州の教育スタン
ダード、評価、アカウンタビリティの制度的枠組み作りでは、州���が全体を統轄したが、諮問委
員会など他部門に委託するなど他力的な面が強かったと言える。しかし、学区レベルではその基準
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第55集・第 号(2006年)1
― ―99
や指標の設定に多くの教師が関わった事実は、その自律性が反映された結果と評価される。
����法以降の学力政策の第二期では、同法の���規定に準拠するために州アカウンタビリティ
の修正が求められ、����テストは生徒の学力測定と合格が求められる高校卒業要件に加えて、「失
敗校」の判定道具としての役割を持つことになった。その上、受験対象学年が七学年にわたり、学
区の教育行政の負担が拡大した。これらのことは連邦����法と州独自の規制による二重のアカウ
ンタビリティが各学区や学校にのしかかっている状況を如実に表している。また、����法で「失
敗校」の生徒への公立学校の選択提供においてチャータースクールが浮上したことから、ワシント
ン州では州議会がチャータースクール法を可決、成立させた。しかし、結果的に州民投票で同法が
否決されたことは、公立学校の私事化や市場化による学校選択の拡大に関して、州政策提言主体と
州民との間に大きな認識のズレがあったことを意味する。
こうした教育スタンダードによる学力政策全体をマイノリティ教育政策として捉える時、次のこ
とが指摘される。第一に、州の����テストの分析結果によると、各学年全体の成績がやや向上し
たものの、そのカテゴリー別の分析では成績の人種間格差は必ずしも縮小したとは言えない。また、
カテゴリー別のテスト結果の公表による学校の序列化とその結果の振るわない「失敗校」の生徒を
学力の成果主義で一律に評価し振り分けることで、先にマックニールが指摘したように、子どもの
新たな階層化の萌芽を生む心配がある。とはいえ、学力改善施策の中に、これまで無視されてきた
マイノリティ生徒への積極的な取り組みがあり、彼らにより焦点をあてることで学力の底上げが可
能となる期待がある。第二に、タイトルⅠ資金を受給する学校に限定されてはいるが、その「すべ
ての生徒」を対象とする����法では子どもの学力向上の権利が守られる一方で、教育における連
邦政府の更なる権限の拡大も懸念される。第三に、����法の制裁措置のための学校選択制と「人
種統合」に向けた��政策の間にある生徒の転校問題が一つの懸念材料として取り上げられたこと
は、��政策が連邦の教育政策方針の重点が移行した後も国家的な課題として連続していることを示
している。
なお、教育スタンダードに基づく学力政策において学区レベルでどのような対応がなされたかに
ついては、今後、さらに詳細に検討したい。
���
� 岸本睦久「『教育スタンダード』をめぐる動向」現代アメリカ教育研究会『カリキュラム開発をめざすアメリカの
挑戦』教育開発研究所、平成10年、23-24頁。
� ����������� ������“������������ �����������������”�������������������������� ��������������� ��
���������������� �������������� 2002. ����法の つの骨子は、① 結果に対するアカウンタビリティの強化、4
② 州・地方による連邦教育資金利用の規制の弾力化、③ 効果が立証された教育方法への資源集中、④ 親の選択権
の増大である(矢野裕俊「アメリカにおける学力問題―基準の設定とアカウンタビリティがもたらすもの―」
日本比較教育学会『比較教育学研究』第29号、2003年、42-52頁)。
� ���������107-110�����������1442����1445� 及び渡辺勉「学力向上 強いる政府」『朝日新聞』2004年 月 日、 5 1 6
米国ワシントン州の教育スタンダードに基づく学力政策
― ―100
頁。
� �������������“����������������� ����������”������������� ����������� ��������2004����37�
� 前掲、岸本睦久、17-37頁。
� 前掲、矢野裕俊、42-52頁。
� 世取山洋介「アメリカ新自由主義教育改革における教育内容基準運動と『サンクション』としての学校選択」堀
尾輝久・小島喜孝編『地域における新自由主義教育改革 ―学校選択、学力テスト、教育特区―』エイデル研
究所、2004年、217頁。
� 成松美枝「米国におけるスタンダードを基礎にした改革と学校選択の展開、―ミルウォーキー市学区の学校選
択の成果―」日本教育行政学会第38回大会発表要旨、2003年10月18日。
� 北野秋男「マサチューセッツ州教育改革とジョン・シルバーの新保守主義思想の分析 ―マサチューセッツ州に
おける『共通学習内容』改訂の経緯と背景―」、『多元文化国家米国における学校の公共性論議に関する史的研究』
平成13年度~15年度科学研究費補助金(基盤研究��)研究成果報告書(研究代表者、大桃敏行)、平成16年 月、3
187-200頁。
� 小玉重夫「ミネソタ州における������������ ����(����)法の実施とアカウンタビリティの変容―学校
選択の政治的文脈―」同上、177-186頁。
� ����������������������������� �������������������������������������� ��������������������2000�����������
�������������251-258�
� �������������� ������������������������������ ������� ���������“���������������� ��������
������������ ������������������ ������������”����������������������� ������������������25�����2��
�������2003�����171-20��
� 前掲、岸本睦久、17-37頁。
� 実際の評議会は知事を議長として、シアトル市長、 名の州下院議員、 名の州上院議員、 名の財界人、教育4 4 5
界から州教育長はじめ州教育委員長、州公立学校代表、小学校校長代表、シアトル教員組合長、ワシントン教員組
合長から成る(�������������“�������������� ����� ���������������������������� �����������������
��������”����������������� ���������������������������������������� �������� ����������������� ���
������������)。
� ������������������� ����������������������������� ���������������������������������� ���������������
������������1992����12����21�
� ������������� ������������������������
� ������������������� ������������������������ ��� ���� ������������������������� �������
������������� �����������������������������������������������
� �������������� ����� �“�������������������� ����������������”������������������3��2000�����3�
� ����������������������������� ����������������������������� ������ ��������� ��������������������������
�������������� �������������� �������������������������������� ����1994�����1-10�
� 例えば、「書き、�������」に関する州「教育スタンダード」=�����は、以下の つを基本とする。1)生徒は4
明確で効果的に書く。2)生徒は異なる聴衆や目的のために多様な形式で書く。3)生徒は書きのプロセスの段階を
理解し活用する。4)生徒は書かれたものの有効性を分析し評価する(���������������� �����������������
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第55集・第 号(2006年)1
― ―101
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� 山本由実「地域における『新自由主義』教育改革の問題点」、前掲、堀尾輝久・小島喜孝編、140頁。
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� ワシントン州教育長は公選であるが、州教育委員はその選挙区の地方教育委員によって選出される。その委員か
ら成る州教育委員会は、1992年、州教育委員会規定の大幅改正を行なった。その内容は、①委員の削減、つまり1995
年までに一選挙区当たり二人から一人の定員にする、②任期を 年から 年に変更する、③新たに第 選挙区を追6 4 9
加する、という三つの重要な変更であったが、これらは委員会内部のスリム化と再編を中心とするものであった。
なお、教育委員会の職務上の委員は、私立学校教育委員会の委員に選ばれた私立学校の代表一名、州教育長、知事
ないし知事に指名された代表一名、州学生協議会により選出された高校生二名(1972年 月以降高校生が参加)が3
含まれる(�������������� ���������������������������� ����������������������������� )。
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� 前掲、小玉重夫、180頁。
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米国ワシントン州の教育スタンダードに基づく学力政策
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東北大学大学院教育学研究科研究年報 第55集・第 号(2006年)1
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米国ワシントン州の教育スタンダードに基づく学力政策
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