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学習課題の把握と企画立案能力(実践編)
東京家政大学 教授 山本 和人
岩手県立生涯学習推進センター
生涯学習部長 西 崇
学習課題の把握と企画立案能力(実践編)
はじめに
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社会教育主事に求められる資質・能力
1)学習課題の把握と企画立案能力
2)コミュニケーション能力
3)組織化援助の能力
4)調整者としての能力
5)幅広い視野と探究心
能力と資質
1)能力
一般的に、能力とは、「何かをすることができる力、物事を成しとげることのできる力」。
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能力と資質
2)資質一般的に、「資質」というのは、「もって生
まれたもの」とされ、なかなか変わらないものである。しかし、その内容は、「姿勢、態度」に近い
ものであり、変化しないものではない。
「心構え」を継続 ⇒ 資質は変化、変容する
「幅広い視野と探究心」即ち「姿勢、態度」◎「心がけ」が大切
講義の進め方
1)事業の企画立案とその能力について
2)学習課題の把握とその能力について
3)事例の検討と企画立案のノウハウ
4)まとめ
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事業の企画立案とその能力
企画立案に求められること
企画立案に求められること
1)企画立案とは何か
2)企画立案に必要な作業
3)企画立案のためのワークシート
4)企画立案の能力
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1)企画立案とは何か
一般的に言われる事業の企画立案とは、
「一定の目的を持って継続的に組織等を経営する仕事・取り組みを、何らかの戦略のもとに、新たに計画し、そのための実行案をつくること」
「社会教育に関わる施策のもとで、地域課題解決のために、学習資源等を投入し、学習課題と学習機会を設定する、事業計画案をつくること」
2)企画立案に必要な作業
① 地域の実情を把握する
② 地域課題を把握する
③ 地域の学習資源・教育資源を把握する
④ これまでの施策や事業を把握する
⑤ 学習ニーズや学習課題を把握する
⑥ 社会的要請を理解する
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3)企画立案のためのワークシート
○地域の実情を把握する
-社会教育の現状と課題(項目のみ)-
① 区分の設定
② 施策の整理
③ 現行の事業
④ 現状の問題点と課題
⑤ 問題解決・課題達成のための方向性
平成22年度 社会教育計画立案の技術(社会教育実践研究センター)より
4)企画立案の能力
これを分解すると、
① 地域の問題を把握することができる(解決すべき課題を設定することができる)
② 地域の教育資源・学習資源を把握することができる、発見することができる
③ これまでの関連する取り組みや施策・事業を把握することができる
④ 必要な学習機会を設定できる
⑤ 新規事業を「しくみ」としてイメージできる
⑥ 企画提案書類を作成することができる
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学習課題の把握とその能力
学習課題を発見・事業化する
学習課題の把握に必要なこと
1)前提としての、
地域の実情と課題把握(前出)
2)前例事業や、既存資料の分析
3)調査結果の分析や必要な調査の実施
4)学習資源、諸組織の把握
5)社会状況の理解と教育行政の動向分析
◎地域課題を発見し、学習課題として
設定し、事業化すること
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1)前提としての、地域の実情と課題把握(前出)
○地域の実情を把握する
社会教育の現状と課題(項目のみ)
① 区分の設定
② 施策の整理
③ 現行の事業
④ 現状の問題点と課題
⑤ 問題解決・課題達成のための方向性
平成22年度 社会教育計画立案の技術(社会教育実践研究センター)より
2)前例事業や既存事業等の分析
◎ これまでの優れた事業から、ヒントをもらう
① どのような工夫があって事業が生まれたか等を検討する
② 成功しなかった事例・「放置」された事業などを検討する
③ 他の市区町村にはどのような事業があるか
④ 事業間連携や、組織間連携を分析する
⑤ 学習の位置づけを検討する
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事例分析のポイント① この事業の取り組むべき「地域課題」は何か
② 投入した教育資源・学習資源は何か
③ 事業の対象者は誰か
④ この事業における、人々の「学習課題」は何か
⑤ 参考とした既存の取り組みは何か
(何と何を結び付けたか、変形したか、
新たな組み合わせか、何を工夫したか)
⑥ システムとしてとらえた点・構想した仕組み、
事業間連携はどうしているか
* 市区町村内に限定されない、資源の投入はあるか
3)調査結果の分析や必要な調査
の実施① 既存調査結果の分析
② 近隣自治体や関連データの検討
③ 需要調査や学習要求調査の実施
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4)社会状況の理解と教育行政の動向分析
① 社会状況の把握と人々の問題関心の分析
② 国や都道府県の教育行政の動向把握
◎「中央教育審議会答申」等をはじめとする諸資料の理解
③ 市区町村の教育行政政策の理解
④ 教育行政以外の分野の事業理解
学習課題把握の能力とは
◎ 地域課題を発見し、その課題解決のた
めに、諸資源を導入し、学習課題を
設定できる力
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実践の現場から
事例の分析と実践技術
事例分析
「社研の窓」から(国立教育政策研究所社会教育実践研究センター)
1(公民館)新居浜市立泉川公民館
○泉川公民館まちづくり協議会(平成22年度制作)
2(県教委)大分県教育委員会
○大分県「協育」ネットワークシステム(平成21年度制作)
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(公民館)新居浜市立泉川公民館泉川公民館まちづくり協議会
•自分たちのまちを自分たちの手で作り上げるという地域課題解決への取り組み
•公民館を拠点に、地域課題の発見、学習、課題解決に取り組む
•5つの部会+生涯学習部会(泉川ふるさと塾)を設ける
•地域、団体、公民館、学校を資源として巻き込んでいる
•子どもから高齢者までの地域住民を対象にしている
この事例に学ぶこと(1)
1)既存組織を作り変えて学習資源に
2)施設、人・団体、環境等を教育資源・学習資源に
3)地域課題の学習機会提供=「ふるさと塾」を位置づける
4)5部会の学習を、地域課題解決に結びつける
5)一つの仕組み・システムとして
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(県教委)大分県教育委員会大分県「協育」ネットワークシステム
1)学校を核に、社会全体での子育て支援をめざす
2)「子どもとおとなの触れ合い事業」を通して、サポーターを増やし、教育力を向上、生涯学習社会の構築に
3)学校・家庭・地域の連携協力体制を三層構造で恒常的なシステムに
4)三層の会議・ネットワークの運営市町村教育委員会「地域協育プロジェクト会議」公民館や地域関係者「校区ネットワーク会議」保護者や地域住民「学校支援ネット」
5)コーディネーターの配置
この事例に学ぶこと(2)1)学校・家庭・地域社会が持てる資源を出し合い、さまざまな
資源の投入、それぞれにメリットがある
2)生涯学習の場で学んだ成果を、学校での子育て支援に生かす
3)家庭ではできない貴重な学習機会や触れ合いの場を確保
4)地域の人材、施設、文化、自然等が、学習資源として生かされている
5)平成17年度から始まるモデル事業を最初に、試行錯誤しながらも、計画的に進めてきている
◎ 今回の事例のほかにも、「社研の窓」では、北海道教育委員会による、民間企業との連携による子育て支援事業(平成20
年度制作)なども紹介されている
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事業化に向けて(要素と手順)
1) 目標・目的の設定
2) 要素の把握と人材の発見
3) 関係の理解
4) やるべき内容の確認
5) 構造と構築手順の構想
6) メリット・デメリット
7) 他の事業との関係
8) 拠点と話し合いの確保
9) 経費の確認
10) 評価視点の確認
目標と評価の整合性
社会教育の現場と実践技術
課題把握と企画立案のノウハウ
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実践技術
岩手県立生涯学習推進センターから
1 学習者のニーズ把握、学習すべき内容確認
2 実施起案前~実施起案
3 講座の実施
4 次年度の事業の見直し
(1)充足率、参加者の満足度、感想・意見
(2)担当所見、見直しの観点
(3)方向性(現状維持、要見直し、廃止)、査定
Q
学習課題に関する情報収集
・地域の教育事務所・市町村教育委員会の生涯学習・社会教育関係職員
・問題意識を持っている既存の組織や団体等の担当者
・他部局や他機関から
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①「学習課題」解決の必要性確認
②「学習課題」解決見通しの展望
Q
Q
①『何のために』やるのか?
(目標の設定)
②『何を』やるのか?(内容の吟味)
③『どのように学ぶ』のか?
(方法の吟味)
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Q
① 事業の目的が反映されているか?
② プログラムの流れは適切か?
③ 学習者の意識変容・行動変容が期待できるか?
④ ネットワークの広がりが配慮されているか?
⑤ 学習者をひきつけるネーミングの工夫をしているか?
Q
① 学習者の事業受講前の意識
② 学習者の事業終了時の満足度
③ 今後の課題は、事業終了後の意識把握
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Q
(緊急課題に対応する時、どのような支援に目を向けるか)
<被災地を走るブックモービル>
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終わりに
①『企画・立案』能力→ 情報収集、プランニング
②『コミュニケーション』能力→ 意識的なコミュニケーションづくり
③『実施・進行』能力→ 学習プログラムに対しての調整
④『コーディネート能力』→ 打合せ、調整、全体管理
(現場の社会教育主事、経験者として)
まとめ
学習課題の把握と企画立案能力を
身につけるために
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学習課題の把握と企画立案能力を身につけるために
(1)問題意識を持って常に考える
(2)資源を把握・発見し、「新規事業」を考える
(3)既存の事業や組織、取り組みを生かす・結び付ける
EX.「液晶テレビ」は新たな組み合わせで誕生
(4)「しくみ」をつくること=事業、企画である
(5)必要な学習を位置づける
(6)事業を評価できる視点を持つ