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デジタルトランスフォーメーション に向けた課題の検討 ITシステムに関する課題を中心に ~

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デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討

~ ITシステムに関する課題を中心に ~

デジタルトランスフォーメーション(DX) 企業は、既存のビジネスから脱却して、新しいデジタル技術を活用することによって、新たな価値を生み出していくことが求められている。

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The digital transformation can be understood as the changes that the digital technology causes or influences in all aspects of human life. (Erik Stolterman Umea University,Sweden)

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること(IDC)

※ DXにおける「デジタル」の定義として、「複数の技術革新が、つながり(コネクティビティ)の向上という意味で統合されていくこと」がよく引用されている。(J. Loucks, et al., Digital Vortex, DBT Center Press, 2016 [根来 龍之(監訳), 対デジタル・ディスラプター戦略, 日本経済新聞出版社, 2017年])

デジタルトランスフォーメーションに関する考え方

企業がデジタルトランスフォーメーションに取り組む意義 デジタルトランスフォーメーションを推進している企業は、利益や生産性の向上、新製品・サービスの恩恵を受けている。

2出典:IDC InfoBrief

DXの恩恵に関するアンケート調査

※アジア15カ国の企業幹部1560人(うち日本人150人)を対象に、改善度をアンケート調査。回答者の業種は、政府機関、教育機関、金融、ヘルスケア、製造、小売り。リーダー企業n=103、フォロワーn=1457。※リーダ企業とは、全社的、あるいは展開中のデジタル・トランスフォーメーション戦略があり、収益の3分の1以上をデジタル製品とデジタルサービスから得ている企業を指す。

デジタルトランスフォーメーション推進に当たっての課題は、各企業の経営戦略や新規サービス創出、組織/人材、ITシステムなど多岐にわたる。

その中でも、デジタル技術を新規ビジネスでどのように活用するのかが重要なポイントであり、デジタルトランスフォーメーションとITシステムの活用は切っても切れない関係。

本研究会では、ITシステムに関する現状の課題やそれへの対応策を中心に議論いただきたい(他の議論との関連もあり、それらを排除する趣旨ではない)

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本研究会における主な議論のスコープ

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IT関連費用の80%は現行システムの維持管理(ラン・ザ・ビジネス)に使われている。 短期的観点でのシステム改修を繰り返した結果、長期的に保守・運用費が高騰する「技術的負債」となっており、これを返済することができず、戦略的なIT投資に資金・人材を振り向けられていない(DX推進の足かせ)。

(出典)企業IT動向調査報告書 2017 (ユーザー企業のIT投資・活用の最新動向(2016年度調査))

DXを進める上での課題

ラン・ザ・ビジネスとバリューアップのIT予算比は80:20 ラン・ザ・ビジネス予算90%以上の企業が約40%で大多数

技術的負債の返済に成功した企業は一部に留まる。

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参考|IT投資に関する日米比較 日本では、アメリカに比べて、「攻めのIT投資」が進んでおらず、バリューアップに向けた投資を進められていない。

出典:一般社団法人 電子情報技術産業協会 「2017年国内企業の「IT経営」に関する調査」(2018年1月)から作成

0

10

20

30

40

50

市場や顧客の変化

への迅速な対応新たな技術/製品

/サービス利用

ITを活用したビジ

ネスモデルの変革

ITによる製品/

サービスの開発

ITによる顧客行動

/市場の分析強化

事業内容/製品ラ

イン拡大売上が増えている

から

法規制対応のため

会社規模が拡大し

たため

業務効率化/コス

ト削減

未IT化業務プロセ

スのIT化のため

定期的なシステム

更新サイクル

日本(2013) 日本(2017) 米国(2013)

攻めのIT

投資

守りのIT

投資

IT投資における日米比較

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参考|ITシステムの老朽化

維持管理に多くの予算がかかっている原因の一つとしては、老朽化・複雑化・ブラックボックス化したシステムの残存が考えられる。(8割以上の大企業で老朽システムが残存)

17.2 50.0 30.0 2.8

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1.強く感じる 2.ある程度、感じる 3.あまり感じない 4.全く感じない 5.その他

(出典)日本情報システム・ユーザー協会「デジタル化の進展に対する意識調査」(平成29年)から作成

13.5

45.5

14.3

10.9

11.1

0

6.8

35.7

40.9

45.5

36.5

43.5

11.1

38.1

52.3

35.7

25.5

9.1

27

26.1

44.4

28.6

25

14.3

19.2

0

20.6

19.6

33.3

28.6

15.9

14.3

1.6

4.8

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

合計

建築・土木

素材製造

機械器具製造

商社・流通

金融

社会インフラ

サービス

約8割の企業が老朽システムを抱えている 約7割の企業が、老朽システムが、DXの足かせになっていると感じている

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参考|技術的負債(Technical debt) 技術的負債(Technical debt)とは、短期的な観点でシステムを開発し、結果として、長期的に保守費や運用費が高騰している状態のことを指す。本来不必要だった運用保守費を支払い続けることを、一種の負債ととらえている。

情報システムの変遷

ホスト オープン(オンプレ)

メインフレームハードウェア(IA)

オペレーティングシステム(Linux)ミドルウェア(OSS)

アプリケーション(Java)

IaaS/コンテナ/仮想マシン

ミドルウェア

アプリケーション(マイクロサービス・API)

1990年代オープン化

2010年代クラウド化

クラウド

技術的負債の類型

タイプ1|メインフレーム温存メインフレームがそのまま残っている場合で、アプリの拡張やデータの抽出が高コストになっている状態。銀行などにみられる。

タイプ2|中途半端なオープン化メインフレームをオープン化したものの、アプリがCOBOLのまま残存し、表形式データがテキストファイル形式で管理されていたり、Java等で再構築しても機能不足していたりする状態。

メインフレーム メインフレーム資産

ハードウェア(IA) IaaS/仮想マシン

オペレーティングシステム(Linux)

ミドルウェア(OSS)

アプリケーション(Java)

技術的負債が解消されないシステムを保有しているため、IT関連費用の80%は現行システムの維持管理に使われている。このため、ユーザー企業によるビジネス競争領域への投資は十分でない。

タイプ3|オンプレの単純なクラウド化オンプレのシステムをそのままクラウド環境に移行したため、クラウドの利点を最大限活用できていない。クラウド化を行っている日本企業の約9割がこの状態。

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参考|負債を解消し、デジタルトランスフォーメーションにつなげるためには 情報資産の現状を分析・評価し、仕分けを実施しながら、戦略的なシステム刷新を推進する

機能ごとに右の4象限(案)で評価し、今後のシステム再構築をプランニングする

A:頻繁に変更が発生する機能はクラウド上で再構築

B:変更されたり、新たに必要な機能は適宜クラウドへ追加

C:肥大化したシステムの中に不要な機能があれば廃棄

D:あまり更新が発生しない機能は塩漬け レガシーシステム

C. 機能縮小・廃棄

A. 機能分割・刷新

(クラウド上で再構築)

D. 現状維持(塩漬け)

B. 機能追加(クラウド上で機能追加)

DB

物理サーバ/仮想マシン

FW/MF

■ ▲ ● ◆