歯内療法系「根管拡大・形成-感染根管と抜髄根管とで url...

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/ Title Author(s) �, �; �, Journal �, 109(1): 90-91 URL http://hdl.handle.net/10130/1916 Right

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Page 1: 歯内療法系「根管拡大・形成-感染根管と抜髄根管とで URL ......IAFの概念図。根管は必ずしも正円ではないので,最初に 切削感を感じる号数(IAF)のままでは,根管断面の短軸付近

Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,

Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

歯内療法系「根管拡大・形成-感染根管と抜髄根管とで

,それぞれ目安として何号位まで拡大すればよいのでし

ょうか?」

Author(s) 中川, 寛一; 齊藤, 健介

Journal 歯科学報, 109(1): 90-91

URL http://hdl.handle.net/10130/1916

Right

Page 2: 歯内療法系「根管拡大・形成-感染根管と抜髄根管とで URL ......IAFの概念図。根管は必ずしも正円ではないので,最初に 切削感を感じる号数(IAF)のままでは,根管断面の短軸付近

天然歯は実習用模型と異なり同一歯種でも根管や根尖孔の形態が異なるために,一律に何号まで拡大すれば良いかいうことは言えない。根尖までの経路が確保されれば,洗浄液により同部の洗浄が行えるという考えから大きく形成する必要がないという見解や,根尖部の感染象牙質を除去するためには30号以上のファイルを用いることが必要であるという考えも存在する。そもそも根管治療とは根管形成・拡大,根管消毒,根管充填の3つの処置から成り立っており,それぞれの目的を達成する事が根管治療の長期的な予後につながる。

今回は表題に従い根管拡大に焦点を絞り,その目的を整理すると共に根管へのアプローチについて述べる。

根管拡大の目的根尖部の形成法には様々な方法が存在するが代表

的なものとして歯冠側からアプローチするステップダウン(クラウンダウン)法と根尖部から形成するステップバック法が挙げられる。ところで抜髄根管と感染根管との大きな違いは『感染の有無』である。歯髄の存在しない根管では歯髄による免疫応答が行われず,細菌にとって恰好の住処となる。そのため根管拡大の目的として抜髄根管では残遺歯髄の徹底的な除去,感染根管では根管内容物の徹底的除去,

根管壁感染象牙質の徹底的除去等の感染,汚染への対応,また根尖孔を通じて滲出物の排出を図ることが必要となる。またどちらの根管にも共通するものとして根尖部組織へ薬剤を直達させること,根管充填が緊密に封鎖・充塞できる形態を付与することが挙げられる。このように根管拡大と言っても抜髄根管と感染根管とでは内部の環境に大きな差があるために,それぞれを考慮して拡大操作を行わなければならない。

また根管は非常に複雑な解剖学的構造を呈しており,器械的拡大のみで根管側枝等,微細な根管系を完全に清掃することは不可能である。そのため拡大の際には化学的清掃剤を併用することも忘れてはならない。

根尖部へのアプローチさて「根尖部の拡大号数は?」と聞かれても,ま

ずは根尖部まで器具を到達させる事ができなければ話は始まらない。著しく狭窄した根管や彎曲根管ではパスファインディング(根管口から根尖孔までの経路の確保)が困難で,この段階でつまずくことが往々にして起こりうる。根尖までの抵抗因子には様々なものが考えられるが,まずは根管上部において器具の進行を規制している構造物を除去することにより根尖側へのアプローチが可能となる。生理的

臨床のヒント

Q&A7

歯内療法系

Q&Aコーナーを新設しました。まず東京歯科大学の3病院の臨床研修歯科医から寄せられた質問に対しての回答です。回答は本学3施設の専門家にお願い致します。内容によっては基礎や臨床,あるいは歯科や医科と複数の回答者に依頼する場合もあります。毎号掲載いたしますので,会員の皆様もご質問がございましたら,ぜひ東京歯科大学学会までeメールかファックスで依頼していただきたいと存じます。必ずご期待に添えることと思います。今号は歯内療法系の根管形成の考え方に関する質問です。

Question

根管拡大・形成-感染根管と抜髄根管とで,それぞれ目安として何号位まで拡大すればよいのでしょうか?

Answer

歯科学報 Vol.109,No.1(2009)90

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な変化による抵抗因子の他にも医原性によるものも存在する。これらの抵抗因子の原因を突き止めそれらを排除し根尖部への経路を確保する方法については成書を参考にして頂きたい。

根尖部まで器具を到達させる事ができたならば,いよいよ根尖部の形成となる。アピカルシートを付与する際にも根管の解剖学的構造が重要となる。根尖孔付近では根管横断面が楕円形となっており,楕円長径を含め拡大する事が必要であり,これは初期適合号数から3サイズあげて形成する事により可能となる。しかしもとより不規則な形態を呈する根管にファイルで拡大したといっても正円形になりにくく,楕円形や涙形に避けて亀裂を生じる事がある。また強い彎曲根管などの根管上部の経路を確保せずに無理な揉み込み操作を行うとファイルのたわみにより不正形態を付与する事にもなる。これらにより破壊された根尖孔部は残存した感染歯質を除去する事が困難になるだけではなく,それ自体が感染源となるため治癒を妨げるどころか最悪の場合は抜歯につながってしまう。一方日本人の平均的な根尖孔の大きさが25~30号相当であることも忘れてはならな

いことである。これらの解剖学的構造を熟知した上で根尖部の形成は行うべきである。また感染根管治療時,根尖孔を穿通し排膿させる場合があるが,痛みを伴うような症例で排膿の必要がある場合20~25号のファイルで穿通すれば排膿させることはできるので根尖孔をむやみに拡大し本来の根尖孔を破壊することは避けなければならない。

また症状の回復が認められないからといって根尖孔部の形成だけを繰り返すことは避けるべきである。レントゲン写真や根管探索時の感覚から根管内をイメージし,根管全体を清掃,消毒する事が重要である。根管拡大および根管形成の目的は,根管の歯髄組織や汚染物の清掃(除去)を行うことと,根管を根管充填に適した形態へ整備することであり,これらの目的を達成していない場合は高い確率で術後のエラーが発生することは避けられない。

Answer:中川寛一,齋藤健介東京歯科大学歯内療法学講座

IAF の概念図。根管は必ずしも正円ではないので,最初に切削感を感じる号数(IAF)のままでは,根管断面の短軸付近の根管壁しか切削されず未切削領域が残存してしまう。根管形成のステップ。根管上部において器具の進行を規制し

ている構造物を除去することにより根尖側へのアプローチが可能となる。

歯科学報 Vol.109,No.1(2009) 91

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