mb2の探索と形成抜髄であれば,遠心根および口蓋根の根管口を発見することは石灰化が著しい症例でない...

6

Upload: others

Post on 29-Mar-2021

1 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: MB2の探索と形成抜髄であれば,遠心根および口蓋根の根管口を発見することは石灰化が著しい症例でない 限り難しくはない.しかし,石灰化が著しい症例や再根管治療歯では,術前のCBCTがか
Page 2: MB2の探索と形成抜髄であれば,遠心根および口蓋根の根管口を発見することは石灰化が著しい症例でない 限り難しくはない.しかし,石灰化が著しい症例や再根管治療歯では,術前のCBCTがか

1 MB2 の探索

■髄室開口〜他の根管口の探索

 上顎大臼歯でも特に第一大臼歯のアクセス外形は台形または菱形となり,以前までの三角形とは異なる.髄室開口後に超音波器具や根管口の拡大用のニッケルチタンファイルを用いて,象牙質がオーバーハングしているところの歯質除去を行う(具体的な根管形成手順は後述する).この段階で使用する超音波チップは先端が球形のタイプやテーパー状のタイプで,ダイヤモンドコーティングされているものやダイヤモンドコーティングはされていないが軸方向に小さな溝が付与されているものが多い. 抜髄であれば,遠心根および口蓋根の根管口を発見することは石灰化が著しい症例でない限り難しくはない.しかし,石灰化が著しい症例や再根管治療歯では,術前の CBCTがかなり参考になる.そのような場合,CBCT上の基準点を設け参考にし,その位置からMB1と遠心根・口蓋根の根管の入り口がどのくらい離れているのかを測定し,前記の超音波チップにて同部の象牙質を切削し探索を開始する.各根管口を探索するときに髄床底の発育癒合線または発育溝(図 7)をたどっていくと発見が容易になる36).

1 1 MB2 の探索

MB2 の探索と形成2

図 7 近心頰側 2根管の根管口を結ぶ発育癒合線(発育溝:白矢印)発育溝をたどると根管口にたどり着く.

P

MB2

2 mm

第1ステップ症例

D

MB1

図 8 第 1ステップ:MB1 と口蓋根・遠心根の関係からMB2の距離関係MB1 と MB2 は約 2mm離れており,MB1 と Pを結ぶ仮想線にDから垂線を結んだとし,その等間隔の反対側付近にMB2が存在する可能性が高い.

13

Page 3: MB2の探索と形成抜髄であれば,遠心根および口蓋根の根管口を発見することは石灰化が著しい症例でない 限り難しくはない.しかし,石灰化が著しい症例や再根管治療歯では,術前のCBCTがか

■第 3ステップ

 次に,それでもみつからなければ第 3ステップ(図 13)に進み,口蓋根の少し近心頰側寄りの部分に発育溝の見落としがないかをCAP3 や AMファイル(図 14)で確認する.また,MB1とMB2 の 2根管の探索ができた場合,この 2根管の間にイスムスが存在することが多く,できる限りファイル形状の超音波チップなどを用いて仕上げ形成する.どの段階までイスムスの形成を行うかは,# 06C+ファイルが食い込むポイントが残存しているか否かで決定している.ただし,やはりそれでも根管治療には限界があり,外科的歯内療法はその部分を補う理由で必要である.

 症例  2   ステップ 2ステップ 2

症例 2-1:術前のデンタル X線写真では 3根が綺麗に充塡されている

症例 2-3:MB1 の近心口蓋側にフィンがみられる

症例 2-4:フィンを形成し 2根管がみられた

症例 2-5:根管充塡後デンタル X線写真

症例 2-2:CBCTでは根尖部に 2根管がみられる

222222222222222 MB2の探索と形成

17

Page 4: MB2の探索と形成抜髄であれば,遠心根および口蓋根の根管口を発見することは石灰化が著しい症例でない 限り難しくはない.しかし,石灰化が著しい症例や再根管治療歯では,術前のCBCTがか

■上顎第二大臼歯におけるMB2の探索

 上顎第二大臼歯でのMB2 の探索は第一大臼歯と同じであるが,不規則な形態が多く注意する必要がある.Peikoff ら38)のレビュー論文では 3根で 3根管が最も多いと報告しており,Libfeld ら39)は 1,200 本の上顎第 2大臼歯のデンタルX線写真を調べたところ 90.6% が 3 根管であったとしている.しかし,Stropko7)の研究のように,近心頰側根の 2根管性は 60%であったと非常に高い頻度を報告しているものもあるので,安易に 3根と決めつけてはいけない.アジア人に関する報告では,Kimら40)の CBCTによる検査でも,75%は 3根 3根管であり,次いで 2根管が 9.3%と多かったと述べている.また,3根や 2根に癒合している歯も7%存在していた.つまり,多くは 3根管であるが,この癒合歯が要注意である.このような症例では,特に発育癒合線(発育溝)を参考に超音波チップで象牙質を切削し探索する.

2  MB2 での根管形成

■ CBCTの活用

 CBCTを用いてMB2 関連の検査・診断に活用し,どのような形態かを把握し根管形成を行う.筆者が使用している CBCTは Trophypan Supreme 3D(ヨシダ社:図 15)で,デジタルX線システムはTrophy の CCDシステム(ヨシダ社)とビスタスキャンミニ(ヨシダ社:図 16)である.ビスタスキャンミニは調整が重要で,これをしっかりとしておかないと画像がぼやけ,検査・診断に耐えられるものとはならない.ビスタスキャンミニでは1,250 dpi の 25 ラインアンペア,または 1,250 dpi の 20 ラインアンペアに設定するときれいな画像が得られる.もしも納得のいく画像でなければ,さらに調整すべきである(図 17).

2 2

図 15 筆者が使用しているCBCTTrophypan Supreme 3D(ヨシダ社)

図 16 デジタルX線システムビスタスキャンミニ(ヨシダ社)

222222222222222 MB2の探索と形成

19

Page 5: MB2の探索と形成抜髄であれば,遠心根および口蓋根の根管口を発見することは石灰化が著しい症例でない 限り難しくはない.しかし,石灰化が著しい症例や再根管治療歯では,術前のCBCTがか

 根管充塡の重要度はそれほど高くはないので,無菌的に治療を行っていれば基本的にどのような充塡方法でも構わない.しかし,MB2 の充塡は部位や位置の関係上,側方加圧根管充塡では困難である.では,垂直加圧根管充塡ではどうであろうか.こちらのほうが充塡の達成度は高いと思われるが,CWCT(continuous wave condensation technique)のような方法はかなり熟練が必要であり,そう簡単に習得できない.そもそも根管充塡法で結果に差が出るのかというとそうでもない.Peng ら88)は,垂直加圧根管充塡法と側方加圧根管充塡法の治療成績の比較をメタ分析で検討した結果,術後疼痛や長期予後そして根管充塡の質は両者の間に有意差がなかったと報告している.つまり,垂直加圧根管充塡と側方加圧根管充塡における成績の間に有意差はない.現在のところ,一つの根管充塡方法が他の方法と比較して有意に優れているという研究はない. では,この MB2 ではどのようにすべきであろうか.もちろん,習得している方法で充塡が可能ならばその方法を選択すべきであるが,なかなかそうもいかない.このような,彎曲し器具操作がしにくい部位での充塡は,シングルポイント法が適していると考えている.シングルポイント法といえども,昔のようにポイントにシーラーをたくさん塗布した状態で充塡する方法ではない.バイオセラミックシーラーを用いた hydraulic condensation technique である.この方法はガッタパーチャポイントによりバイオセラミックシーラーを根管内の細部まで水力学的に充塡する方法である.つまり,ガッタパーチャポイントはシーラーを根管内に送り込むためのキャリアとなっている.バイオセラミックシーラーはケイ酸カルシウムを主成分とした流動性に富んだシーラーで,MTA セメントと組成が類似している.それゆえに少し膨張し,封鎖性に優れている.近年,このバイオセラミックシーラーを用いた後ろ向き研究も出ており,良好な成績を報告89)しているが,今後の長期経過報告が待たれる.筆者は現在 Well-Pulp ST を使用している(図 48).このシーラーを使用する場合には,根管

MB2 を考慮した根管充塡4

図 48 Well-Pulp STMTAセメント同様にケイ酸カルシウム系材料でアルミケイ酸塩カルシウムを主成分とし造影剤として酸化ジルコニウムが配合されている.

37

Page 6: MB2の探索と形成抜髄であれば,遠心根および口蓋根の根管口を発見することは石灰化が著しい症例でない 限り難しくはない.しかし,石灰化が著しい症例や再根管治療歯では,術前のCBCTがか

 症例  7   ガッタパーチャ除去症例ガッタパーチャ除去症例

症例 7-1:上顎左側第一大臼歯の再治療,一見簡単そうにみえる

症例 7-4:根管充塡後

症例 7-2:口蓋根の根尖からGPの破片が出てしまった

症例 7-3:GP リムーバーで除去できた

図 51 ガッタパーチャリムーバー両頭タイプでロングとショートがある.

図 50 Retreatment D1〜D3(デンツプライシロナ社)D1:アクティブ# 30/09,16 mm.D2:ノンカッティングチップ# 25/08,18 mm.D3:ノンカッティングチップ# 20/07,22 mm.

D1 D2 D3

55555555 非外科的再根管治療でのMB2への対応非外科的再根管治療でのMB2への対応非外科的再根管治療でのMB2への対応

41