物理学の最前線レポート ヒッグス粒子 ... -...
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物理学の最前線レポート
ヒッグス粒子の発見(実習つき)
2013年11月1日
近藤敬比古高エネルギー加速器研究機構(KEK), つくば市 1
復 習
• 物質の階層構造:分子>原子>陽子/中性子と電子>クォークとレプトン
(それぞれ 6 種類ある)・ 力は4種類ある:
強い力 > 電磁力 > 弱い力 > 重力
・ 加速器:超伝導技術で高いエネルギーまで到達できた。
・ 質量の起源:宇宙はヒッグス場が素粒子に質量を与える。その証拠のヒッグス粒子がようやくLHCで発見された。
・ 検出器の例:宇宙線が通るとシンチレーターに微小な光が発生し、光電子増倍管で電気パルスに変換される。
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2012年7月4日ヒッグス粒子発見の発表
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2013年ノーベル物理学賞受賞者の発表
ピーター・ヒッグス(イギリス) フランソワ・アングレール(ベルギー)
受賞理由:
2013年10月8日
万物に質量を与えるヒッグス粒子の存在を理論的に予言した(1964年)。
2013.10.9 NHKおはよう日本
ビデオ
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2013年ノーベル物理学賞
発表が1時間も遅れたのは
「CERN
にも授与すべきだと
の多くの議論があったため」
・・・・・
自然科学分野の3賞はこれ
まで個人に与えられてきた。
毎日新聞10/19
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日本人が受賞したノーベル物理学賞
湯川秀樹
1965
量子電磁力学の分野における基礎研究
天体物理学、特に宇宙ニュートリノの検出に対するパイオニア的貢献
半導体におけるトンネル効果の実験的発見
朝永振一郎 + 2人
1973
1949
江崎玲於奈 + 2
2002
中間子の存在の予想
小柴昌俊 + 1
2008
素粒子物理学における自発的対称性の破れの発見
南部陽一郎
2008
益川敏英
小林誠
小林・益川理論とCP対称性の破れの起源の発見による素粒子物理学への貢献
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セ ル ン
CERN (欧州合同原子核研究機構)
ジュネーブCERN
CERN
設立: 1954 加盟国: 欧州20カ国スタッフ: 約2,500人ユーザー数:10,000人年間予算: 1,000億円
WWW は1990年にCERNで発明された。
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周長 26.6 km
主な実験装置ATLASCMS
ALICELHCb
計画承認 :1994年建設完成 :2008年
建設コスト~1兆円(人件費も含む)
L H C (大型ハドロン衝突型加速器)山手線ほどの大きさ
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LHC加速器トンネルの大きさ
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LHC加速器トンネル (地下約100m)
ビデオ
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加速器の原理
電場で加速する
フレミングの左手の法則
磁場
力
)BυE(eF
×+= 運動=力
磁場
電流
磁場で曲げる
ローレンツ力の式
_____ ____加速する 曲げる
加速を何度も繰り返して高いエネルギーに上げる。12
1232台の超伝導マグネット(二極)を使って陽子ビームを曲げる。磁場は8.33テスラ。
断面図・2つのビームパイプ。・1.9 K (-271)まで冷やす。
LHC加速器の超伝導マグネット
超伝導とは
温度
0
金属を冷やしていくと電気抵抗が突然ゼロになる現象
(1911年に発見された)
-265oC
大電流を流すことができる
強い磁場を作る
超伝導の応用:
・ リニアモーターカー
・ 磁気共鳴画像(MRI)
高いエネルギーの粒子を曲げる
10
LHC加速器に使われた超伝導ケーブル組成:Nb+Ti+Cu, 13,000アンペアの電流を通す。 10
LHCマグネット組立・設置とビーム
(http://atlas.kek.jp/sub/video/LHCMagnetBeam.mov)
ビデオ
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リニアーコライダーはなぜリングでないの?
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小川福岡県知事、古川佐賀県知事、松本福岡県議会議長らのCERN見学 (2013.5.13) 18
リニアーコライダーが直線の理由:放射光
磁場 B
光 放射光
光
光
ILC ⇒ 電子は放射光を出してエネルギーを失う。LHC⇒ 陽子が失うエネルギーは電子の10兆分の1。
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アインシュタインの相対性理論から
E = MC2
エネルギー 質量 光速
エネルギー 質量 :原子力・原子爆弾*核融合・太陽/星**
* 広島の原爆:1kgのU235の 0.68g の質量がエネルギーに変わった。
** 太陽の主なエネルギーは の核融合で毎秒1000トン近くの質量がエネルギーに変わる。
ν224 ++→ +eHeH
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エネルギー 質量 :加速器・ビッグバン
加速器では新しい素粒子を作り出す
陽子 陽子
陽子よりも質量の大きい粒子を作ることができる!
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LHCが動き出した2010年3月30日13:28
に観測されたイベントの一つ
陽子ビーム
陽子ビーム
点が観測した測定点で曲線は計算機で飛跡を推定したもの。
約100個の粒子が作られている。
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水(H2O)
酸素(O)
陽子(p)
電子(e)
中性子(n) クォーク
物質は何から出来ているか?
クォーク
分子 原子 素粒子23
これまで見つかった素粒子 1995年に発見
質量は陽子の183倍。
強い力を感じる
強い力を感じない
理論からの要請ー>これらの粒子は質量をもってはいけない。
質量の問題
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自然界には4つの力が存在する
強い力 > 電磁磁気力 > 弱い力 >>> 重力
クォーク間に働き陽子を作る
光・原子・分子・宝石・携帯電話・電波・雷・テレビ..
太陽/星のエネ
ルギー・放射能・原子力・水爆….
落下りんご
月・太陽・星・・・体重
グルーオン 光 W粒子, Z粒子 (グラビトン)
力を伝える粒子
質量 = 0 質量 = 0 陽子の100倍 (質量 = 0)
これが質量の問題
日本語ナレーションのビデオ(http://www.atlas.ch/multimedia/atlas-movie-japanese.htmlより抜粋)
ビデオ
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S.ワインバーグ A.サラム
1979
電弱理論 の提案(1967)
R.ブロウト F.アングレール, P.ヒッグス
ヒッグスメカニズムの提案(1964)
南部陽一郎
2008
自発的対称性の破れ(1959)
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運動方程式ヒッグス場(赤い部分)がないと素粒子が質量を持てない。
CERNのT-shirt(お土産グッズ)
2013
New!
u
Z
H H
H H
H
H
H
H
H
H
HH
H
H
H H
H
高温の宇宙
0=γm
MeV 2≈um
MeV 91188≈Zm
光
u
Z
0=γm
ヒッグス場の海(弱い力の海)
冷えた現宇宙
0=um
0=Zm
光
1960年代:「標準模型」の提案
1970年代:正しいことが実験で証明された。
ヒッグス粒子が最低一個存在するはず。
加速器が次々と作られたが見つからず。テバトロン(米), LEP(欧州), SSC(米:途中で中止)
2012年7月4日:LHC(欧州)で発見を発表.29
ヒッグス粒子の発見するための実験装置
建設期間:14年 建設費: 約500億円+α 30
建設中のアトラス実験装置 2005年11月 31
東芝京浜工場で製造中の超伝導ソレノイド 1998年 32
日本・英・米などで製造されたシリコン検出器
シリコンセンサー浜松ホトニクス
回路組立
栃木セイコー
フレキ回路基板日本メクトロン(茨城県)
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ATLAS : 日本が担当者た検出器の例端部ミューオントリガー装置 (日本+イスラエル+中国)
神戸大学
つくば市
セルン地上 セルンの地下実験ホール
つくば市
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東芝CMOSで製造。40万ゲート。
アトラス実験に40万チャンネル使用中
大杉(広島大)新井(KEK)が発明。
微小時間差を直接デジタルに変換する。
CMOSメモリーのclockにdelayを入れる→ 特許
delay
clock
data
delay delay
日本の分担④ 時間デジタル変換チップ
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2010年3月30日 7 TeVでの陽子・陽子衝突に初成功!
LHCコントロールルームでスクリーンを見つめるオパレーターと職員
7TeV衝突の成功を喜ぶアトラス実験チーム
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ヒッグス粒子の探索法
・ ヒッグス粒子の質量は不明。114 GeV以上。
・ 頻度と崩壊が予言できる。2つの有力チャンネルは
・ 2011年と2012年で計400日ほど加速器と実験装置を運転し、約3000兆回の陽子・陽子衝突を観測した。
ZZH
γ
γH
ZZ
µ−
µ+
e−
e+
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2つのガンマー線の親粒子の質量 [GeV]
https://twiki.cern.ch/twiki/pub/AtlasPublic/HiggsPublicResults//Hgg-FixedScale-Short2.gif
ビデオ
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4個のレプトンの親粒子の質量
ビデオhttps://twiki.cern.ch/twiki/pub/AtlasPublic/HiggsPublicResults//4l-FixedScale-NoMuProf2.gif
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見つかったヒッグス粒子の候補イベント
https://twiki.cern.ch/twiki/bin/view/AtlasPublic/EventDisplaysFromHiggsSearches を参照
H-> Z Z -> µ µ µ µ4本のミュー粒子(赤線)が発生してる。
H -> γ γ2つのガンマ線が発生してる。
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2012年7月4日 CERNはヒッグス粒子(らしきもの)を観測したと発表
(http://cdsweb.cern.ch/record/1462525 より抜粋)
ビデオ
41
著者名
本文
ヒッグス粒子発見のときのアトラスの論文
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最後の粒子が見つかった!!
素粒子の標準理論の完成!
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mg=0
mγ=0
mW=80 GeVmZ=91 GeV
磁気力
電気力
弱い力
強い力
地上重力
天体重力
電磁気力
弱い力
重力
電弱理論
量子色力学
一般相対論
大統一?
力の統一 = 物理学者の夢
?
高いエネルギー宇宙のはじめ
ニュートン
マックスウエル
現在
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ヒッグス……
19世紀 17世紀20 世紀
外側の星ほどゆっくり動くべき(A)なのに同じ速度(B)で動いている !
→ 10倍の暗黒物質が必要45
銀河クラスターの衝突重力レンズ効果
3°K宇宙背景輻射
銀河の回転速度
銀河クラスターの運動
我々の宇宙の4%しか理解してない!
暗黒エネルギー
暗黒物質
光を出す通常物質
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LHCで発見されるかも
LHCで10-12秒後までさかのぼる!
47137億年前 秒 38万年 現在
宇宙の歴史
1
1兆宇宙が透明になった
3分元素合成
実習:宇宙線をシンチレーターで検出する
地上には二次宇宙線がたえず降りそそいでいる。
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シンチレーター アクリルのライトガイド
光電子増倍管(フォトマル)(電子数を100万倍にする)
光
ここで光が電子をたたき出す(光電効果)
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高電圧電源
50Ω50Ω
光電子増倍管
光電子増倍管
実習のセットアップ
デジタルオシロスコープ
50Ω 同軸ケーブル
CH1 CH2
デジタルオシロスコープのセットアップ
CH1: 50mV/div
CH2: 50mV/div
水平掃引: 20 ns/divトリガー: CH1・エッジ・立下り・直流 トリガーレベル=-30mV
復 習
• 物質の階層構造:分子>原子>陽子/中性子と電子>クォークとレプトン
(それぞれ 6 種類ある)・ 力は4種類ある:
強い力 > 電磁力 > 弱い力 > 重力
・ 加速器:超伝導技術で高いエネルギーまで到達できた。
・ 質量の起源:宇宙はヒッグス場が素粒子に質量を与える。その証拠のヒッグス粒子がようやくLHCで発見された。
・ 検出器の例:宇宙線が通るとシンチレーターに微小な光が発生し、光電子増倍管で電気パルスに変換される。
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復 習
• 物質の階層構造:分子>原子>陽子/中性子と電子>クォークとレプトン
(それぞれ 6 種類ある)・ 力は4種類ある:
強い力 > 電磁力 > 弱い力 > 重力
・ 加速器:超伝導技術で高いエネルギーまで到達できた。
・ 質量の起源:宇宙はヒッグス場が素粒子に質量を与える。その証拠のヒッグス粒子がようやくLHCで発見された。
・ 検出器の例:宇宙線が通るとシンチレーターに微小な光が発生し、光電子増倍管で電気パルスに変換される。
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