帯状疱疹...imafuku s, et al.:jeadv, 21 feb 2014 doi:10.1111/jdv.12379 注4:承認外 tyring...

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帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)による感染症です。 VZVの初感染時は水痘として発症し、水痘の治癒後も神経節に潜 伏感染します。潜伏感染したVZVはストレスや疲れ、加齢などで免 疫力が低下すると再活性化し、帯状疱疹として回帰発症します。 帯状疱疹はVZVが再活性化した特定の神経領域に沿って痛み や表皮の水疱が出現しますが、通常2週間程度で皮疹は治癒しま す。しかし、一部の患者さんでは長期に痛みが残ることがあります。 発症から3ヵ月以降も残存する痛みは帯状疱疹後神経痛(PHN) といわれ、帯状疱疹発症時から無治療の場合、患者さんの約17~ 60%に生じると報告 1) されています。PHNは患者さんのQOLを 著しく低下させ、今なお、難治症例も多くみられます。 したがって、帯状疱疹では早期から十分量の抗ヘルペスウイル ス薬を投与してウイルスの増殖を抑制し、皮疹の拡大を抑え、痛み を残さないことが重要な治療目標になります。 PHNのリスク因子として、高齢、急性期痛が重度(夜眠れない程)、 皮疹が重症、痛覚過敏やアロディニア 注1) などの神経障害性痛が あるといったことがあげられます。特にこれらのリスク因子を有する 患者さんでは急性期から積極的に痛みに対する治療をすることが 重要です。 注1:通常、痛みを引き起こさない軽い触刺激や温覚などの刺激が、痛みとして認識される感覚異常 のこと 1:Alper BS, et al.:J Fam Pract, 49(3) , 255-264(2000) 現在、国内で使用されている経口抗ヘルペスウイルス薬には、 ファムシクロビル(製品名:ファムビル ® 錠250mg)、バラシクロ ビル塩酸塩、アシクロビルがあります。それぞれの活性体は下表の とおりです。 これらの抗ヘルペスウイルス薬の作用機序はいずれも「ウイルス の増殖抑制」であるため、帯状疱疹の治療では以下の点に注意す る必要があります。 経口抗ヘルペスウイルス薬の種類と活性体 帯状疱疹の治療目標 抗ヘルペスウイルス薬の特徴 ウイルスの増殖が盛んな発症早期に投与を開始 すること 抗ウイルス作用を持続させること 一般名 活性体 ファムシクロビル (ファムビル ® 錠250mg) ペンシクロビル バラシクロビル塩酸塩 アシクロビル アシクロビル 帯状疱疹 ~痛みを残さない治療のポイント~ 監修:獨協医科大学麻酔科 教授 山口 重樹 先生 マルホ株式会社 提供 次にファムビルの特徴・エビデンスを示します。

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  • 帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)による感染症です。VZVの初感染時は水痘として発症し、水痘の治癒後も神経節に潜伏感染します。潜伏感染したVZVはストレスや疲れ、加齢などで免疫力が低下すると再活性化し、帯状疱疹として回帰発症します。帯状疱疹はVZVが再活性化した特定の神経領域に沿って痛み

    や表皮の水疱が出現しますが、通常2週間程度で皮疹は治癒します。しかし、一部の患者さんでは長期に痛みが残ることがあります。発症から3ヵ月以降も残存する痛みは帯状疱疹後神経痛(PHN)といわれ、帯状疱疹発症時から無治療の場合、患者さんの約17~60%に生じると報告1)されています。PHNは患者さんのQOLを著しく低下させ、今なお、難治症例も多くみられます。したがって、帯状疱疹では早期から十分量の抗ヘルペスウイルス薬を投与してウイルスの増殖を抑制し、皮疹の拡大を抑え、痛みを残さないことが重要な治療目標になります。PHNのリスク因子として、高齢、急性期痛が重度(夜眠れない程)、皮疹が重症、痛覚過敏やアロディニア注1)などの神経障害性痛があるといったことがあげられます。特にこれらのリスク因子を有する患者さんでは急性期から積極的に痛みに対する治療をすることが重要です。

    注1: 通常、痛みを引き起こさない軽い触刺激や温覚などの刺激が、痛みとして認識される感覚異常のこと

    1:Alper BS, et al.:J Fam Pract, 49(3), 255-264(2000)

    現在、国内で使用されている経口抗ヘルペスウイルス薬には、ファムシクロビル(製品名:ファムビル®錠250mg)、バラシクロビル塩酸塩、アシクロビルがあります。それぞれの活性体は下表のとおりです。

    これらの抗ヘルペスウイルス薬の作用機序はいずれも「ウイルスの増殖抑制」であるため、帯状疱疹の治療では以下の点に注意する必要があります。

    ●経口抗ヘルペスウイルス薬の種類と活性体

    帯状疱疹の治療目標 抗ヘルペスウイルス薬の特徴

    ● ウイルスの増殖が盛んな発症早期に投与を開始すること

    ● 抗ウイルス作用を持続させること

    一般名 活性体ファムシクロビル

    (ファムビル®錠250mg) ペンシクロビル

    バラシクロビル塩酸塩アシクロビル

    アシクロビル

    帯状疱疹~痛みを残さない治療のポイント~

    監修:獨協医科大学麻酔科 教授 山口 重樹 先生

    マルホ株式会社 提供

    次にファムビルの特徴・エビデンスを示します。

  • 【対  象】 ファムビル500mg、750mg注4またはプラセボが1日3回7日間経口投与された免疫機能が正常な18歳以上、皮疹出現後72時間以内の帯状疱疹患者419例中、治癒以降に疼痛があった症例 ファムビル500mg群:61例 ファムビル750mg群:68例 プラセボ群:57例

    【方  法】治癒後5ヵ月間、月1回疼痛の観察を行った【評価項目】治癒後の疼痛消失までの日数【評価基準】 疼痛が消失し、その後、疼痛が再発しなかった最初の観察日を疼痛消失日とした。

    最終観察時に疼痛がある場合は、その時点で打ち切りとした

    濃度

    時間(hr)

    (pmol/105cells)

    0 2 4 6 8 10 120.01

    10

    1

    0.1

    1000

    100

    アシクロビル3リン酸ペンシクロビル3リン酸

    0.89.1

    半減期(hr)

    HPLC法

    疼痛残存率

    ファムビル投与開始からの日数(日)

    (%)

    0 60 120 180 240 300 36030 90 150 210 270 3300

    50

    30

    10

    100

    70

    60

    40

    20

    80

    90

    30

    日数

    60

    90

    180

    360

    31.6

    疼痛残存率(%)

    19.0

    12.4

    7.1

    4.0

    21日疼痛残存率

    治癒後の日数(日)

    (%)

    0 20 40 60 80 100 15010 30 50 70 90 1100

    100

    60

    40

    20

    80

    120 130 140

    プラセボ群ファムビル500mg群

    血漿中濃度

    時間平均値±S.D.

    (hr)

    (μg/mL)

    0 2 4 6 80

    2

    4

    HPLC法500mg投与

    血中への移行が速い

    PHNの残存率 帯状疱疹関連痛が消失するまでの日数(海外データ)

    ウイルス感染細胞内での半減期が長い

    ファムビルはTmaxが短いことが特徴です。また、ウイルスチミジンキナーゼとの親和性が高く、ウイルス感染細胞内で活性体であるペンシクロビル3リン酸が速やかに生成されるため、投与後、早期からの抗ウイルス作用が期待できます。

    疼痛消失までの日数の50%点は21日でした。ファムビル投与開始後の疼痛残存率は90日後では12.4%、360日後では4.0%でした。

    抗ヘルペスウイルス薬の作用部位は血中ではなく、ウイルス感染細胞内です。ファムビルの活性代謝物のペンシクロビル3リン酸は、ウイルス感染細胞内での半減期が9.1時間と長いので、持続的な抗ウイルス作用が期待できます。

    ファムビル500mg群はプラセボ群に比べ、治癒後の疼痛が早期に消失しました。なお、疼痛消失までの日数注3の50%点はファムビル500mg群が63日、プラセボ群が119日でした。

    投与量 Cmax(μg/mL)Tmax(hr)

    t1/2(hr)

    AUC0-∞(μg・hr/mL)

    尿中排泄率(0~24時間、投与量に対する%)

    500mg 3.21±0.62 0.78±0.31 1.97±0.32 8.61±1.32 59.59±10.76

    ファムビル500mg群 ファムビル750mg群

    投与期間中及び投与終了後30日まで

    投与終了後30日以降

    投与期間中及び投与終了後30日まで

    投与終了後30日以降

    症例数 138 115 135 121

    発現例数(%) 35(25.4) 7(6.1) 34(25.2) 9(7.4)

    【方法】 健康成人8例にファムシクロビル500mgを単回投与した

    【方法】 VZV感染MRC-5細胞に60%の細胞変性効果が認められた時点でペンシクロビルまたはアシクロビル10μMを添加し、18時間培養した。培養後、被験物質を培地から除去し、3リン酸化体濃度を経時的に測定した

    工藤忍ら:薬物動態, 11(6), 547-555(1996) 社内資料(承認時評価資料)

    注3:痂皮化からの日数 

    【対  象】帯状疱疹患者764例安全性解析対象:721例 疼痛に対する有効性解析対象:695例

    【調査期間】2010年9月~2012年11月【実施施設】84施設【投与方法】通常、成人にはファムビル1回500mgを1日3回、7日間経口投与【調査項目】1) 観察期間(4週間):患者背景、本剤の使用状況、疼痛治療の併用薬、皮膚病変の臨

    床経過、疼痛の臨床経過、皮膚病変の全般改善度、有害事象等2) 追跡期間(疼痛消失まで最長12ヵ月間):疼痛状況(毎月1回電話にてNRS注2を用いて確認)、疼痛治療の併用薬等

    注2: NRS(Numerical rating scale)は「痛みなし」を0、「想像できる最大の痛み」を10とし、現在の痛みを11段階の数値から答える方法

    Imafuku S, et al.:JEADV, 21 FEB 2014 DOI:10.1111/jdv.12379注4:承認外Tyring S., et al.:Annals of internal medicine, 123(2), 89-96(1995)(承認時評価資料)

    ファムビル投与患者におけるPHNの残存率

    ●血漿中ペンシクロビル濃度推移 ●ペンシクロビル3リン酸のVZV感染細胞内における安定性(in vitro)

    副作用

    721例中5例(0.7%)に6件(倦怠感、浮動性めまい、嘔吐、腹部不快感、蕁麻疹、痙攣が各1件)の副作用が認められた。

    副作用

    ファムビルの特徴

    エビデンス エビデンス

    ファムビルの特徴1

    1 2

    2

  • 急性期の帯状疱疹の痛みはVZVの増殖に起因する神経および皮膚病変の炎症による「侵害受容性痛」が主であるため(下図)、アセトアミノフェンやNSAIDsが有効です。ただし、NSAIDsは腎機能障害や胃腸障害の原因となることがあるので、わたくしはアセトアミノフェンを第一選択薬として推奨しています。一方、PHNは神経の変性、機能異常による神経障害性痛が主であるため、治療にはプレガバリンやワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤などを使用します。また、痛みのために抑うつが強い症例や不眠が顕著な症例では、少量のアミトリプチリン塩酸塩を併用することもあります。激しい痛みのために著しいADLの低下を認めた際には、トラマドール塩酸塩などのオピオイドの投与を検討します。神経障害性痛は帯状疱疹の発症早期から侵害受容性痛と混在して生じ

    ています。神経障害性痛を有する患者さんはPHNが生じる可能性が高いため、早期から神経障害性痛に対する治療を開始することが重要です。

    ファムビルサイトのご紹介

    痛みの強さ

    弱い

    強い

    皮疹出現後の日数比嘉和夫:治療 90(7), 2147-2149(2008)より改変

    1(年)0 6(月)28(日)

    神経障害性痛侵害受容性痛

    帯状疱疹関連痛

    急性期

    皮疹前駆痛

    亜急性期 PHN

    ●帯状疱疹関連痛とは

    鎮痛薬の選択

    マルホ株式会社 提供

    http://www.famvir.jp/本サイトでは、帯状疱疹の診療をサポートするための様々なコンテンツをご用意しています。

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