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国連開発計画(UNDP危機的状況における 生計向上並びに経済復興 要旨(仮訳)

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Page 1: 危機的状況における 生計向上並びに経済復興 要 …...02 危機及び危機後の状況における生計向上並びに経済復興プログラム・ ガイドラインは、開発実務者、特に、

国連開発計画(UNDP)

危機的状況における

生計向上並びに経済復興

要旨(仮訳)

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Copyright © UNDP 2013Published by the Bureau for Crisis Prevention and RecoveryLivelihoods and Economic Recovery GroupNew York

Design: Phoenix Design AidPrinted in Denmark on environmentally friendly paper (without chlorine)with vegetable-based inks. The printed material is recyclable

cover Photos:Men participating in cash for work after Haiti Earthquake (Photo by UNDP)Men and Women Cleaning Rubble as Part of Cash for Work Programme in Haiti (Photo by UNDP)Mosquito Net Production in Tanzania (Photo by UNDP/TICAD)Drilling Workshop: Women Owned Small Business (Photo by UNDP Dominican Republic)Youth Employment Training in Guinea (Photo by UNDP)Youth agriculture training (Photo by UNDP Kenya)Man sewing garments for sale (Photo by Aude Rossignol/UNDP)

日本語仮訳版の作成に当たって

 本書は、平成25年2月、国連開発計画(UNDP)が発行した『危機的状況における生計向上並びに経済復興』について、著作権者である国連開発計画の許可のもとに、独立行政法人 国際協力機構が要旨の原文(英語版)を仮訳したものである。

平成25年11月独立行政法人 国際協力機構東京都千代田区に番町5-25

二番町センタービル代表:(03)5226-6660

 本書の内容の詳細に関しては、下記URLより原文に当られたい。【参考:原文】Livelihoods & Economic Recovery in Crisis Situations (February 2013, UNDP)

http://www.undp.org/content/dam/undp/library/crisis%20prevention/20130215_UNDP%20LER_guide_summary.pdf

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国連開発計画(UNDP)危機予防・復興局

危機的状況における

生計向上並びに経済復興

要旨(仮訳)

2012年11月26日

国連開発計画(UNDP)

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危機及び危機後の状況における生計向上並びに経済復興プログラム・

ガイドラインは、開発実務者、特に、国連開発計画(UNDP)の国事務所

職員を対象とした実務の手引書である。UNDP とパートナー団体が長年に亘って

蓄積した知識や経験を共有することによって、危機及び危機後の生計向上並びに

経済復興のための効果的かつ持続的な事業の計画策定に資することを

目的としている。これは事業の開始段階(特に、パートナー国当局との

ハイレベル会談の準備)、資源動員時、プロジェクト及びプログラムの計画策定

段階、そして訓練や技術支援及び政策的助言を提供する際に、最も有効である。

背景とアプローチ 紛争あるいは災害によってもたらされる危機はその国の発展を妨げるのみならず、

時にそれを逆行させる。現在、約10億人の人々が破綻した国家や紛争から

立ち直ったばかりの国々に居住しており、紛争や災害による開発途上国の

人々への影響は増大の一途を辿っている。紛争や災害に対してとりわけ

脆弱なのは、紛争による生計手段や地域経済の崩壊によって直接的な打撃を

受ける貧困層や女性、また若年層である。係る状況の中、生計向上及び

経済復興のためのプログラムは、危機の影響を受けた人々と国々の、人的、自然、

物理的、経済的、政治的、社会的資産の再構築に資することを目的としている。

本ガイドラインは、危機的状況及び危機後の状況における UNDP の早期の

継続的なプレゼンスを提唱する。UNDP のリソースには生計向上及び経済復興

プログラムを支援するためのネットワーク(事務所、技術スタッフ、プログラム、

そして世界中の関係機関など)も含まれており、民主的ガバナンス、貧困削減、

エネルギーと環境、人権、ジェンダー、女性や若者のエンパワーメントといった

UNDP の専門領域は、これらの状況において重要な役割を果たす。

UNDP の「持続可能な生計向上アプローチ」(1996 年)(UNDP’s Sustainable Livelihoods Approach)を元にした、本ガイドラインの危機及び危機後の

状況における生計向上及び経済復興への全体的アプローチは、図 1.1 のように

示される。ここで達成されるべき成果は、危機の影響を受けた人々のための

レ ジ リ エ ン ト な 生 計 手 段 と 包 摂 的 な 経 済 成 長 で あ る 。 こ れ ら が

達成されることによって地域の発展の礎が築かれ、平和と安定や貧困削減、

そして MDG の進展に寄与することが期待される。

支援のエントリーポイントは、成果を達成するための様々な戦略と

その活動である。グッド・ガバナンス、ナショナル・オーナーシップ並びに

民間セクターの復興は、持続可能な生計と包摂的な経済成長の推進力となる。

紛争/災害リスク・フィルターとは、選択されたエントリーポイントが紛争の

影響を受けた人々にプラスの効果をもたらし、紛争や災害影響地域や人々に

耐性を与え、紛争の根本原因に対処することを可能にするプロセスである。

生計向上及び経済復興プログラムが成功した場合、成果が推進力を促進するか

あるいは推進力そのものとなる好循環が生まれる。例えば、包摂的経済成長が

実現すると、それが更なる投資を呼び、人々の統治や自立成長政策への

強い関心を喚起する。成長の回復は、人々の将来への希望や自信を築き、

紛争の影響でそれまで保守的な対処方法を取らざるを得なかった人々の

市場参画を促進すると同時に、これらの現象によって包摂的な経済活動を促す。

Livelihoods & Economic Recovery in Crisis Situations Executive Summary

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持続的生計向上と

包摂的な経済成長

紛争及び災害リスク・

フィルター

成果

図 1.1 持続的生計向上及び 経済復興の総合的アプローチ

危機及び危機後の状況への支援と戦略

生計の安定(Track A)

中長期雇用、所得創出、再統合の為の地方経済の回復 (Track B)

長期的雇用創出と包摂的経済成長 (Track C)

横断的優先事項: ジェンダー平等と女性のエンパワーメント、

災害リスクの軽減(防災)、紛争予防と平和構築、人権、

ナショナル・オーナーシップ、環境

エントリー・ ポイント

グッド・ガバナンス

(政策的枠組み、法の支配、治安、

マクロ経済管理、地方行政、

ナショナル・オーナーシップ過程、

市民社会とコミュニティの

エンパワーメントなど)

民間セクターの回復

(貿易・投資、 金融サービス、

技術など)

推進力

本ガイドラインのエントリーポイント(上記図 1.1 参照)は、「国連の紛争

終結後の雇用創出、所得創出及び社会統合政策」(2009 年)(UN Policy for Post-Conflict Employment Creation, Income Generation and Reintegration) か ら

引用されている(図 1.2 参照)。Track A プログラムは、生計の安定化の支援を

行うことによって、危機の影響を受けたグループの緊急ニーズに対応する。

Track B プログラムは、持続的雇用、所得創出や再統合を促進するための

支援を含めた、中長期的地域経済の復興に焦点を当てる。Track A 及び B で

達成された成果を持続させるために、Track C プログラムで国家体制と

政策の強化を支援することによって、長期的な雇用創出と包摂的経済成長に

重点的に取り組む。これら3つのトラックにおけるプログラムは、それぞれ

異なる段階で速度や強度を増すが、早期にそして、同時に開始されることが

望ましく、それによって緊急支援が長期的な成果を生み出す。

3つのトラックにおける支援は補完的であり、これらにおいて行われる

活動のうち、技能訓練などは分野横断的である。プログラムの内容は対象国や

コンテキストの違いによって多岐に亘る。

Livelihoods & Economic Recovery in Crisis Situations Executive Summary

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強度

図 1.2 3つのトラックの タイミングと強度

復興/平和構築プロセス/発展

トラックA 生計の安定化

トラックB 中長期雇用、所得創出及び社会再統合のための地方経済の復興

(必要に応じ)

トラックC 持続的雇用と包摂的経済成長

本ガイドラインのアプローチは対処的というよりもむしろ予防的であり、

実務者が将来の脅威を予測して、危機に影響を受けたコミュニティに

耐性を与えることを推奨する。プログラムの優先事項は、ナショナル・

オーナーシップ、キャパシティ・デベロップメント、ジェンダー平等、女性と

青少年のエンパワーメント、民間セクターとの連携、参加、コミュニティ・

エンパワーメント及びパートナーシップであり、これらは全てのトラックに

共通する。生計向上及び経済復興プログラムの原則は、次の通りである。

1)一貫性と包摂性;2)害を及ぼさない;3)紛争配慮(支援が状況を

悪化させるような予期せぬ影響をもたらす可能性があることを認識する);

4)災害及び気候変動のリスク配慮を行う(復興と開発の利益に対する

安全防護措置を講じ、また、支援が災害の一因にならないことを確認する);

5)持続性を目指す;6)ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを推進する。

生計向上及び経済復興のアセスメント

危機的状況及び危機後の状況におけるプログラムは、確実なアセスメント

(事前評価)に基づいて実施されて初めて、不本意な悪影響をもたらすことなく、

そ の 目 標 を 達 成 す る こ と が で き る 。 ま た ア セ ス メ ン ト に よ っ て

これらの状況における社会・経済的コンテキストに関する情報の入手が

可能となる。これらの状況における、「ミクロ」レベル(個人、世帯及び

コミュニティ)と「マクロ」レベル(景気、政策的枠組み、ガバナンス)

両レベルのイシューがアセスメントの対象となる。

ミクロ・レベルにおけるアセスメントでは、危機に影響を受けた人々の資源

(人的、自然的、物理的、経済的、政策的、社会的)、彼らの暮らしの戦略、

そして彼ら自身の脆弱性に対処する手段が特定され、マクロ・レベルにおいては、

危機に見舞われた人々が、いかに地域及び国家経済、ガバナンス・システム

並びに物理的環境から影響を受け、影響を与えたかを示す。また、ジェンダー、

民族及びその他の個人、家族あるいはコミュニティの特性に係る権力構造を

明らかにし、また紛争と災害のリスクを特定及び分析もする。

災害/

紛争フィルター

Executive Summary Livelihoods & Economic Recovery in Crisis Situations

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生計向上及び経済復興のアセスメントのための情報収集は、通常、ラピッド・

スコーピング法、主なインフォーマント(情報提供者)への聞き取り、

地方公共団体との協議、危機に影響を受けた人々とのフォーカス・グループ・

ディスカッション、意向調査及び質問票、コミュニティ・マッピング法、

リソース・パーソンとのワークショップなどのいくつかの手法を組み合わせて

行われる。

成功したアセスメント・プロセスは、包摂的かつ参加型分析に係る地元住民の

能力を強化し、脆弱な人々の政策決定過程への参加を補助し、ジェンダー、

紛争及び災害リスクに対する意識を高める。

TRACK A:生計安定化 Track A プログラムでは、生計の安定化支援を行うことによって危機に影響を

受けたグループの緊急ニーズに対応する。Track A プログラムへの 3 つの

主要なアプローチは、緊急雇用創出、目的の明確な自営業希望者への支援、

インフラストラクチャーの復旧である。本ガイドラインは、 Track A

プログラムの策定並びに実施のための主要ステップ及び手法をジェンダー配慮、

紛争及び災害配慮並びに市場配慮の原則に特別な注意を払った上で示している。

緊急雇用プロジェクトは、当面の収入源を提供することによってコミュニティの

社会・経済的再建を促進し安定化に繋げることができる。このプロジェクトに

よって生み出される短期雇用は、紛争に影響を受けた人々の購買力を高め、

彼らが差し迫ったニーズを満たして更なる打撃に対する耐性を強めることを

目的としている。世界食糧計画 (WFP)との連携による Cash-for-Work や

Food-for-Work 、 そ し て コ ミ ュ ニ テ ィ 契 約 は UNDP が し ば し ば 緊 急

雇用創出のために採る手法である。

目的が明確な自営業希望者あるいは企業の復興及び開発支援には、通常、

起業資金もしくは起業パッケージなどの支援も含まれる。起業資金は、

事業の元手や再建への資本金となり、あるいは所得創出もしくは起業家としての

試みへの活性剤となる。起業パッケージには、機材、小規模備品、種子などの

投入材、研修や技術支援などが含まれる。プログラムの参加者は通常ビジネス・

オリエンテーション、ビジネス・マネージメント、市場開拓に関する訓練を

受けるが、その過程を通じて、マイクロファイナンス・プログラム、

訓練プログラムやビジネス開発サービスなどに長期に亘ってアクセスする

機会を得ることができる。

通常、 UNDP のインフラ復旧支援はコミュニティ・インフラを含む。

コミュニティ主導の低コスト及び小規模建造物並びにシステムの再建は、短期の

雇用機会と所得創出機会を生み出すと共に、市場や基盤サービスへの

コミュニティのアクセスを回復させることができる。またそれは、コミュニティ

動員、社会関係の強化、市民と地方行政の連携体制構築、社会的緊張の緩和への

エントリーポイントとなる。Cash-for-work、コミュニティ契約、そして

官民連携はインフラ再建の際に最も良く採られる手法である。

このガイドラインの利用者は、Track A の支援と戦略は、次にあげる Track B

及び C と関連していることに注意が必要である。これらは、それぞれ独立した

支援としては設計されておらず、互いの連関によって短期支援の持続性が

確保される。

Livelihoods & Economic Recovery in Crisis Situations Executive Summary

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TRACK B:地域経済の復興 Track B プログラムは、持続的雇用の強化や所得創出、必要に応じて社会の

再統合を行うことによって、中長期的な地域経済の復興に焦点を当てる。

このトラックにおいては如何なる支援を行う場合でも、地域経済の成長の促進と、

そ の 成 長 の 包 摂 性 の 確 保 の バ ラ ン ス を 注 意 深 く 見 る 必 要 が あ る 。

Track B プログラムの主な3つの領域は、職業技能訓練と就職斡旋、包摂的な

民間セクター開発、そして条件付きの現金支給である。

危機に影響を受けた人々への職業及び技能訓練と就職斡旋サービスは、

人的資源の劣化と衰退を防ぎ、雇用と所得創出機会を拡大し、競争を促し、

企業の生産性を高める。このサービスは、市場本位かつジェンダーや

紛争・災害リスクに配慮して実施されて初めて、平和と安定、そして災害からの

耐性向上に貢献することができる。訓練は教室中心型か実践型講義となる。

イ ン タ ー ン シ ッ プ は 、 通 常 マ ン ツ ー マ ン 形 式 の OJT と ジ ョ ブ ・

シャドウイングなどの機会を提供し、キャリア・ガイダンスとメンター制度は、

修了生が身に付けたばかりの新しい技能と知識が彼らの生計手段の確保と安定に

繋がるよう支援する。また、就職斡旋サービスは訓練生や見習い生と

潜在的雇用主や自営の機会とを繋げる。

危機及び危機後の状況においては、ビジネスを優遇する政策環境、融資や

市場へのアクセス、バリュー・チェーンとの連携、そしてインフラといった

民間セクターの活動の基盤は、通常破壊されているか、開発の初期段階に

置かれている。包摂的な民間セクター開発への支援は、地方の市場システムを

強化し、市場システムにおける危機に影響を受けた人々やコミュニティの状況の

改善を目的とする。零細・中小企業セクターは 幅広い雇用及び所得創出の

潜在性があり、景気に対する耐性が最も強い部分である。 UNDP は

この領域において、包摂的な市場の開発や金融部門の開発、そして

ビジネス開発の支援サービスの構築に焦点を置く。

条件付き現金支給プログラムは、対象とされた貧困家庭に対し、彼らが

自立発展に向けて何らかの手段を講じていることを条件として実施される。

その条件の例としては、子どもを通学させたり、妊産婦・小児医療サービスを

利用していることなどがあげられる。このプログラムは多大な時間や資源を

要するが、非常に高い費用効率が見込まれる。これは、現金を地域経済に投入し、

人的資源を開発し、打撃を受けた世帯の円滑な消費を促し、働き甲斐のある

人間らしい仕事や所得創出の機会を創ることによって、生計向上及び経済復興を

支援するものである。

TRACK C:長期雇用創出及び包摂的経済成長

Track C プログラムは長期的雇用創出並びに包摂的な経済成長に焦点を当てる。

こ の ト ラ ッ ク に お け る 手 法 は 相 互 依 存 関 係 に あ る キ ャ パ シ テ ィ ・

デベロップメントとグッド・ガバナンスへの支援の二つである。

キャパシティ・デベロップメントは、危機の最中や危機後の状況において、

個人や組織が被った損失に対処する。危機によって技能のある有能な人々が

死傷したり、あるいは強制移住を余儀なくされ、あらゆる社会的関係が

破壊される。また危機によって多くの公共及び民間団体、そして市民社会制度が

崩壊する。

Executive Summary Livelihoods & Economic Recovery in Crisis Situations

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このような状況において重要とされるキャパシティ・デベロップメントの

領域には、公共部門における職員の確保、司法の専門化、警察や治安部隊の

有効性やアカウンタビリティの向上、コミュニティや地方行政の復興計画

策定能力強化、そして地域の大学やシンクタンクの調査やアドボカシーに係る

役割の強化などがある。また、能力開発施策を国家戦略に統合させることは

長期的成果を得るために大変重要である。

危機は、サービスやインフラを提供し復興に必要な政策や規制環境を定める

政府の能力を失わせ、重い負担をかける。その結果、治安や司法に、しばしば

深刻な障害が生じる。グッド・ガバナンス支援はこれらの課題に対して、

そのプロセス、制度、あるいは政策に焦点を当てて対応する。参加型評価や

参加型フォーラム、中央-地方政府の連携の仕組みは主要な統治プロセスの

一例である。強化を必要とする機関には、国家機関(政府組織、司法部門機関、

議会、警察及び治安部隊、地方行政機関など)、市民団体、メディア、また、

民間企業などがある。政策改革支援は、金融サービス、企業登記、土地政策、

地方分権化、送金の活用、労働者及び消費者の権利保護、物理的な

インフラの開発など多岐に亘る。

包摂的経済成長はしばしば大掛かりなマクロ経済の政策改革を要する。UNDP は

マクロ経済政策に係る関係者間の対話の招集にあたって重要な役割を果たし、

また国際金融機関と協働して、財政、金融、貿易政策の策定に係る有益な支援を

行うことが可能である。財政政策策定の支援においては、例えばプログラムや

プロジェクトが国家体制や国家予算の枠組み、あるいは、公共財産管理、

国内歳入の動員やデータ管理のシステムの強化を組込むことが望ましい。

金融政策策定においては、UNDP は危機に影響を受けた国々が援助を原因とする

インフレを避けられるよう、援助の調整や、民間セクターへの投資の促進や

生産性の向上を促すプログラムの優先付けを支援することができる。

ハイパー・インフレの状況下では、UNDP は代替通貨への切り替え、もしくは

中央銀行の独立性の強化などの対策の評価を支援することが可能である。

平和構築従事者、貧困者、また危機に影響を受けたコミュニティの能力を

高めることによるグローバル経済への統合は、危機及び危機後の国々にとって

重要な課題であるが、 UNDP とそのパートナー機関は、この難題に

対処するために様々な方法で支援を行うことができる。例えば、輸出部門の

多様化、小農地所有者の輸出用(農作物)生産への参加、あるいは輸出業者と

輸出サービス業者の能力開発などを促進するための政策とプログラムの

策定支援を行うことが可能であり、また、貿易関連の規定や手続きの簡素化への

国家的努力や、国際貿易協定での交渉、あるいは実質為替レートのモニターや

それらの貿易や生計への影響を評価するための能力強化を支援することも

可能である。 対象グループのための雇用及び所得創出

生計向上及び経済復興プログラムにおける包摂性においては、脆弱な人々の

グループや極めて困難な状況に直面している人々に対して、格別の配慮をする

必要がある。同時に、一部の集団への支援を行うことによって、社会的緊張を

悪化させることの無いよう、対象とした集団へのプログラム形成時においては

慎重にバランスを取ることが必要とされる。

Livelihoods & Economic Recovery in Crisis Situations Executive Summary

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危機及び危機後の状況で雇用や所得創出において、とりわけ厳しい現実に

直面することが多い集団の中には、女性や若者、元戦闘員、また国内避難民

( IDP)がいる。このガイドラインは、プログラムの全ての段階において、

ジェンダー主流化と、男女平等、女性の経済的なエンパワーメント推進のための

具体的な取り組みを優先させる。若者が対象となる場合には、技能を強化して

雇用機会を創出し、職業斡旋や起業を促進し、労働環境改善のための総合的な

支援を提唱する。環境関連の職の創出は、危機もしくは危機後の状況にある

若者のための持続的かつ市場志向的な雇用創出として、多くの場合 UNDP が

支援を行い得る領域である。また、UNDP の武装・動員解除そして社会再復帰

プログラム支援の知見は、紛争中に軍事関係の生計手段に依存していた人々が

紛争終結後の生計手段へ移行するための支援に有用である。

人々が避難を余儀なくされる危機及び危機後の状況においては、国内避難民のため

早期の生計手段確立もしくは再建の取り組みが重要である。再建プロセスの

中核にある地方政府やコミュニティと共に実施する、国内避難民の再統合と

生計向上のための地域に根ざしたアプローチは最も効果的な支援である。

プログラム策定支援

生計向上及び経済復興支援の有効性を高めるためのプログラム策定支援における

主要な領域には、コーディネーション、戦略的コミュニケーション、資源動員、

そしてモニタリングと評価( M&E)がある。また、危機及び危機後の

多 く の 状 況 に お い て 、 UNDP 国 事 務 所 は 、 UNDP の 新 し い

「ファスト・トラック 」イニシアチブを利用して資材やサービスを

調達することができる。

コーディネーション支援には、コーディネーションのためのプラットフォームの

設立、案件の全ての段階におけるステークホルダーの合意形成過程、

モ ニ タ リ ン グ 及 び レ ポ ー テ ィ ン グ ・ プ ロ セ ス の 調 整 な ど が あ る 。

戦略的コミュニケーションには、メディア・アウトリーチやドナー連携、

危機に影響を受けた人々の公の議論への参加を確実なものにする「発展のための

コミュニケーション」、そしてナレッジ・マネージメントなどがあげられる。

資源動員は総合的な復興事業の枠組みの中で行われ、かつ他のパートナーと

協働する際に最も効果をあげる。効果的な資源動員戦略には、ドナーとの真の

協調/ドナーの優先事項や、政策、やり方への認識、説得力ある M&E と報告、

ホスト国政府の関与そして効果的なコミュニケーションなどがあげられる。

ホスト国のカウンターパートや他のステークホルダーとの密接な連携による、

モニタリング及び評価システムの策定は、プログラム形成段階において

大変重要である。また、予算及び要員計画は、M&E のための適切な人的及び

財政資源を反映していなくてはならない。危機もしくは危機後の状況における

プログラムの全ての他の活動と同様、M&E はナショナル・オーナーシップ醸成と

キャパシティ・デベロップメントに寄与すべきであり、紛争や災害リスク、また

ジェンダーに配慮する必要がある。

仮訳:安永知子

JICA 経済基盤開発部

平和構築・都市・地域開発第二課

ジュニア専門員

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危機的状況における生計向上並びに経済復興

国連開発計画(UNDP)危機予防・復興局

Online Edition can be accessed athttp://www.undp.org/content/undp/en/home/librarypage/crisis-prevention-and-recovery/guide-on-livelihoods-and-economic-recovery-programming-in-crisis.html

In addition, the discussion papers can be accessed via Teamworks “Livelihoods and Economic Recovery in Crisis and Post-Crisis Situations”: https://undp.unteamworks.org/node/17324

For further information, please contact Owen Shumba ([email protected]), Team Leader, Livelihoods and Economic Recovery Group, Bureau for Crisis Prevention and Recovery (BCPR), United Nations Development Programme (UNDP).

For any Teamworks issues, please contact Aseem Andrews ([email protected]), Knowledge Management Specialist, BCPR, UNDP; Charu Bist ([email protected]), Livelihoods and Recovery Specialist, BCPR, UNDP and Minako Manome ([email protected]), Livelihoods and Recovery Programme Analyst, BCPR, UNDP.

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 国連開発計画(UNDP)は国連システムのグローバルな開発ネットワークとして、変革への啓発を行い、人々がよりよい生活を

築けるよう、各国が知識や経験や資金にアクセスできるよう支援しています。私たちは、166か国で活動を行い、各国の人々と 

ともに、グローバルな課題や国内の課題に対し、それぞれの国に合った解決策が見出せるよう取り組んでいます。それぞれの国の

能力強化にあたっては、UNDPのスタッフの知識や幅広い分野のパートナーシップが役立っています。

国連開発計画(UNDP)

国連開発計画(UNDP)危機予防・復興局one united nations Plaza new york, ny 10017, usa

tel: +1 (212) 906-5174Fax: +1 (212) [email protected]/cpr

復興/平和構築プロセス/発展

トラックA 生計の安定化

トラックB 中長期雇用、所得創出及び社会再統合のための地方経済の復興

(必要に応じ)

トラックC 持続的雇用と包摂的経済成長

強度

紛争フィルター

災害/