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第3章 子どもたちの漁業体験ガイドライン

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第3章 子どもたちの漁業体験ガイドライン

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はじめに

1 子どもたちの漁業体験ガイドラインについての考え方

昨年までの本事業における漁業体験先進地への調査結果および収集資料、採択における体験漁業

への取組結果等を踏まえて、それら情報を総合的に整理・編集し、ガイドラインを編集・作成した。

また、ガイドラインのとりまとめに向けて、以下、既往調査や関連書類の収集を行った。

2 ガイドライン作成・検証のための現地調査・ヒアリングの実施

(1)財団法人都市農山漁村交流活性化機構へのヒアリング

現地・教育機関ヒアリングによりわかったポイントを整理すると、以下のとおりとなる。

①「都市漁村交流のためのガイドライン」 平成 16 年、水産庁・財団法人漁港漁場漁村技術研究所 ②「農山漁村における宿泊体験活動の受け入れのための手引き ~子ども農山漁村交流 プロジェクトの推進に向けて~」 平成 20 年・農林水産省農村振興局 ③「農林漁家民宿における子ども長期宿泊体験活動受入対応の手引き」 平成 20 年・財団法人都市農山漁村交流活性化機構 ④「子ども農山漁村交流プロジェクト地域協議会 受入整備の要点把握のための事例集」

平成 21 年・財団法人都市農山漁村交流活性化機構 ⑤「子ども農山漁村交流プロジェクト受入地域協議会の受入態勢のガイドライン 100」 平成 22 年・財団法人都市農山漁村交流活性化機構

・子ども達(学校)にとって、漁村体験は非日常性が高く、学校からのニーズも高い。 ・魚など生き物の命を扱うこと、魚食教育、厳格な規範やルール遵守の大切さの実感など、

農業と比べて際立った教育効果が期待できる。 ・しかしながら、漁業体験は農業に比べて以下のような特徴があるため、受入れ地域/受

入数とも不足している。 ○海をフィールドとするため、大きな危険が伴う ○季節・天候・気象条件に活動大きくに左右される ○潮の干満や漁労条件などに活動時間を合わせる必要がある ○漁師や漁業関係者がコミュニケーションに不慣れ

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(2)大浜漁業協同組合・南島原市立有家小学校 漁業体験の現地取材

項目 内容

日程 平成 22 年 10 月 13 日(水)~15 日(金) 2 泊 3 日

参加者 長崎県南島原市立有家小学校 6 年生(46 名)修学旅行

訪問地域 長崎県五島市(福江島)

漁業体験受入団体 大浜海業振興会(うみぎょうしんこうかい)(大浜・増田漁業協同組合)

旅行会社 新日本観光㈱(長崎県南島原市)

(3)窪津漁業協同組合・慶応幼稚舎 漁業体験の現地取材

項目 内容

日程 平成 23 年 3 月 5 日(土)~7 日(月) ※5 泊 6 日のうちの漁業体験を含む 3

日間

参加者 慶応義塾幼稚舎 小学校 6 年生(112 名) 修学旅行

訪問地域 高知県土佐清水市 窪津漁港

漁業体験受入団体 窪津漁業協同組合

旅行会社 土佐電トラベル観光㈱(高知市)

3 調査結果を反映した地域受入ガイドライン

調査結果を整理し、地域における子どもたちの漁業体験の受け入れについて、以下の通りガイドラ

インを作成した。

子どもたちの漁業体験 地域受入れガイドライン

1.ガイドラインのねらいと構成 (1)ガイドラインのねらいと対象 (2)ガイドラインの内容と構成

2.子どもたちの漁村における宿泊体験活動の概況 (1)なぜ体験学習なのか (2)漁村における体験学習の効果(農山村と異なる特徴) (3)漁村の体験学習受入れ地域のメリットとリスク (4)子ども農山漁村交流プロジェクトの受入れ要件

3.宿泊体験活動受入れの準備と体制づくり (1)なぜ受け入れるのか ~地域の合意形成と将来ビジョン~ (2)地域受入協議会の設立 (3)モデルプラン (4)事業計画チェックリストの作成

4.地域資源の活用と地域の活性化 (1)地域資源の掘起こし (2)地域資源を活用したプログラムづくり (3)プログラム実施のポイント

5.受入れの手順 6.漁業体験の安全管理

(1)漁業体験の安全管理 (2)事故や緊急事態発生時の対応 (3)海の体験プログラムに関わる許認可

7.宿泊・生活 (1)民宿と民泊 (2)食に関する安全・衛生管理

8.漁村・漁業体験の責任と保険

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1 子どもたちの漁業体験ガイドラインについての考え方

表記のテーマについては、「平成 22 年度活力ある漁村づくり促進事業」において、子ども達の受入れ

外のラインの項目整理を行った。

本年度はその結果を受けて、三省連携による農山漁村交流プロジェクトに則り、実際にこれから漁

業・漁村体験に取組もうとする地域のためのガイドラインの編集を行った。

具体的手法としては、昨年までの本事業における漁業体験先進地への調査結果および収集資料、採択

における体験漁業への取組結果等を踏まえて、それら情報を総合的に整理・編集し、ガイドラインを編

集・作成した。

◆本年度「子ども達の漁業体験受入地域のガイドライン」これまでの活動報告

今年度業務の目的は、以下のフローのとおり、昨年度整理したガイドライン骨子の項目に従い、補足

調査と現場の取材を実施し、具体的なガイドライン編集に必要な情報を収集・整理のうえ肉付け、受入

地域にとって有効な情報をコンパクトに編集したガイドラインのとりまとめを行うことである。

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1)関連図書、情報の収集

・ガイドラインのとりまとめに向けて、既往調査や関連書類の収集を行った。

・現時点で入手済みの関連図書は以下のとおりである。

①「都市漁村交流のためのガイドライン」

平成 16 年、水産庁・財団法人漁港漁場漁村技術研究所

②「農山漁村における宿泊体験活動の受け入れのための手引き ~子ども農山漁村交流

プロジェクトの推進に向けて~」 平成 20 年・農林水産省農村振興局

③「農林漁家民宿における子ども長期宿泊体験活動受入対応の手引き」

平成 20 年・財団法人都市農山漁村交流活性化機構

④「子ども農山漁村交流プロジェクト地域協議会 受入整備の要点把握のための事例集」

平成 21 年・財団法人都市農山漁村交流活性化機構

⑤「子ども農山漁村交流プロジェクト受入地域協議会の受入態勢のガイドライン 100」

平成 22 年・財団法人都市農山漁村交流活性化機構

・①を除く財団法人都市農山漁村交流活性化機構(以下、まちむら交流きこう)の手引きや事例集は、

主に農山村の事例より抽出された記述内容となっており、漁業体験に関する事例等は少ない。

・そのため、本調査では、これらの既往文献を読みこなしながら、農山漁村共通の自然体験に関する「安

全・衛生管理」、「救急医療体制、緊急事態発生時の対応システムと体制づくり」、「子ども達の滞在期間

中の生活面に配慮した運営管理」、「学校とのコミュニケーション」等の基本事項を、 新の必要事項

を加えてコンパクトに整理するとともに、過年度

整理済みの漁業体験、海に関する特記事項などを盛り込み、これから子ども達の教育旅行等を受け入

れる漁村・漁家のためのガイドラインとしてとりまとめる。

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2 ガイドライン作成・検証のための現地調査・ヒアリングの実施

(1)財団法人都市農山漁村交流活性化機構へのヒアリング

1)基本認識

・これまでの現地・教育機関ヒアリングによりわかったポイントを整理すると、以下のとおりとなる。

・子ども達(学校)にとって、漁村体験は非日常性が高く、学校からのニーズも高い。

・魚など生き物の命を扱うこと、魚食教育、厳格な規範やルール遵守の大切さの実感など、農業と比

べて際立った教育効果が期待できる。

・しかしながら、漁業体験は農業に比べて以下のような特徴があるため、受入れ地域/受入数とも不

足している。

○海をフィールドとするため、大きな危険が伴う

○季節・天候・気象条件に活動大きくに左右される

○潮の干満や漁労条件などに活動時間を合わせる必要がある

○漁師や漁業関係者がコミュニケーションに不慣れ

・以上のことより、子ども都市農山漁村プロジェクトにおける「漁業体験」へのニーズは極めて高いが、

受け入れる地域が限られているのが現状である。

・こういった背景を受け、水産庁防災漁村課では、漁村の活性化を目的に、受け入れを始めようとする

漁村(漁協、関係団体等)に対する支援を行っている。

2)まちむら交流機構へのヒアリングの実施

子どもたちの農山漁村の宿泊体験についての先行調査の実績・蓄積があるまちむら交流機構を訪問し、

先進的な漁業体験を実施している地域、先進事例についてのヒアリングを実施した。その結果、以下の

事項についての情報・知見を得ることができた。

○教育旅行の枠組について

・民泊など体験型旅行では、少人数の家族ぐるみの付き合いが基本。マスを受け入れてこなす従来型観

光の発想とは一線を画すべき。地域リーダー格の人には体験型旅行は教育活動だと話している。

・経済効果に加えて、子どもの教育による社会的効果が大きい。教育効果の評価を充実させる必要があ

ると感じている。お客さま扱いでは何も変わらない。

・自然体験していない子ども達が急速に増えている(特に、ここ 5 年)。財団の小学校対象のアンケー

トによると、「日の出日の入りを見たことがない」41%、「海や川で遊んだことがない」26%という結

果が出ている。親や先生にも農山漁村体験がない。

・特に感じるのが、子ども達のコミュニケーション能力の欠如。これには家族的な受入を伴う宿泊体験

が効果的。1 泊で良いから農山漁村でホームステイを経験させたい。

・ 近子ども農山漁村交流プロジェクトの規定から「長期」の文字が消えた(当初は 1 週間の長期体験

が基本)。「1 泊で子どもは変わる!」と体験リーダーは異口同音に語っている。

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○地域が教育旅行を受入れる姿勢・意義

・本物を学ぶことが、子ども達の将来の生きる姿勢=モチベーションをあげる効果がある。

・学校でなくても子ども会などでも良い。地域の交流事業の雛形作りとして地域で取組んで欲しい。地

元の小学校の受入は地域にとっては始めやすい。

・地域のリーダーや旅行会社の担当所にも教育指導要領を読むように進めている。JTB は文部科学省の

「生きる力」を研修で読んでいる。

・リーダーがやるべきことは、学校でやりきれない教育効果の高い体験プログラムを現地で子ども達に

受ける機会を作ること。

・決して体験プログラムを押し付けるのではなく、教育目的を達成するための手段としてプログラムが

位置づけられるべき。

・指導者の育成が大事。結局はヒト。

・海が特にニーズが強いとは思わない。学校の先生は、常に安全を考えることも大きいと思う。先生自

体も農産漁業体験をしていないし、興味がないケースも多い。学校が「子ども達を地域に預けても大

丈夫なんだ」ということに気づいていない。先生や学校が子どもを囲い込むことは良くない。

・地域が子ども達を受け入れることにより受入地域のヒトにも気づきがある。新しい漁業の形を模索す

ることが後継者定着のきっかけになっている事例もある。

○地域の受け入れ態勢について

・地域の受け入れ態勢は、行政、関連組合、医療機関、警察など全て連携した「受入協議会」が理想的。

この体制の有無が旅行会社の地域選択条件になっている。その上で協議会のリーダーの人格が活きて

くる。

・窓口を一本化することで、指示命令系統や責任の所在が明確になり、安全管理や保険・許認可の問題

も無責任に放置されなくなる。受入地域にとっても漏れがなく、訪問側の学校の安心感につながる。

○安全管理と保険について

・体験型旅行の安全管理と保険についても、ニーズの高まりとともに徐々に整備されてきている。まち

むら交流きこうでも、東京海上日動と組んで「グリーンツーリズム保険」を作ってもらった。ただし

遊漁船内の体験などは対象にならないので注意。今は賠償保険=7000 万円は必要な時代。

・SAFETY OUTDOOR 実行委員会(CON)、NPO 法人海に学ぶ体験活動協議会(三浦市と組んで取組

み、代表=海野さん)などがこの問題に関して積極的に活動している。メンバーとして弁護士な専門

家も参加している。ヒアリングしてはどうか。

○課題、その他

・漁業体験を実施している地域はまだまだ少なく、しかも地域間の取組みに関する情報流通も少ない。

横の連携がない。

<漁業体験の事例地の紹介>

・若狭

・答志島

・香美(兵庫県は以前から全学校が 2 泊 3 日の農山漁村体験旅行を実施)

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・小値賀

・壱岐(今後の展開によっては、大きな展開が期待される=弥生時代の遺跡と組み合わせた歴史体験。

郷ノ浦に受入協議会)

・佐渡

・奥松島

3)民泊の現状と法規制について

・一般的に解釈されている旅館と民宿の境が法律や統計では明確に示されていない。

・農山漁村余暇法による農林漁業体験民宿の定義が 2003(H15)以降の「農林漁家民宿」に関

する規制緩和に必要不可欠であった。

・旅館業法等の許可を得ない違法(ブラック)な「農山漁村民泊」以外に、規制緩和利用小規模

農林漁家民宿等も「ホワイト民泊」と整理。

・ブラックとホワイトの中間(グレー)な状態とし、泊まる人のリスクを回避するため民泊ガ

イドライン等が 12 県(主に人口減少率の高い県)で策定されている。

・旅館業法・建築基準法・消防法・旅行業法・道路運送法といった一連の規制緩和を「小規模GT政策」

として総合的に整理。

・規制緩和型農林漁家民宿は、その小規模性ゆえ宿泊部門の売上だけでは家計を支え切れず、あくまで

も農林漁業収入等を下支えする副業でしかない。

<「民宿」の法的な位置付け>

○旅館業法:第2条 1948(S23)制定

ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業

○建築基準法:別表第1(2) 1950(S25)

ホテル、旅館、下宿、共同住宅、寄宿舎その他これらに類するもの

○消防法:施行令別表第1(5) 1948(S23)

イ旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの

ロ寄宿舎、下宿又は共同住宅

○農山漁村余暇法:第2条5項 1994(H6)

農林漁業体験民宿業を定義

○(社)日本民宿組合中央会「公認民宿」の民宿資格基準規定←厚生省 1975(S50)承認

① 旅館業法による旅館営業または簡易宿所営業の許可を受けていること

② 地場の産物・自家製の料理を主として提供し、家庭的雰囲気・普段着での接待を行うなど郷土色

が豊かなこと

③ 家族労働力を中心とし、 盛期間にお客 10 人について 1名程度の従業員をおくこと.

④ セルフサービスを主体とし、宿泊料は一泊二食付きとして、料理飲食等消費税の免税点を基準と

した低料金とすること

・従来一般的に捉えられていた民宿と民泊の概念は、以下のとおりである。

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・農林業センサス「農家民宿」定義は、以下のとおりである。

農業を営む者が、旅館業法に基づき都道府県知事の許可を得て観光客等の第三者を宿泊させ、

自ら生産した農産物や地域の食材をその使用割合の多寡に関わらず用いた料理を提供し、料金

を得ている事業を言う。

※2010 調査票では農業生産関連事業(含農家民宿)記入欄に「原材料の全てを他から購入して

いる場合は除く」旨の但し書きが追加された

・一方、漁業センサスによる「漁家民宿」の定義は、以下のとおりである。

2003 海面漁業経営体調査では「釣宿・季節的旅館も含めた旅行者等を泊めることを業とするもの」

を『旅館・民宿業』と定義し、農業との兼業を除いて 2179 軒。

※2008 調査票では、調査票の表記が『民宿』に変わったため 1632 軒に。

5 年間の開廃業は不明だが、単純比較すると 547 軒が民宿ではなく『旅館』だったことになる。

ただし、この差分が示す『旅館』も必ず旅館業法の旅館営業を意味するのではなく、場合によっ

ては簡易宿所営業である場合もあり得る。つまり、漁業センサス回答者が『旅館』と認識してい

るかどうかということ。民宿の位置付けが曖昧であるのと同様『旅館』にも明確な境界が存在す

る訳ではない

・民泊の位置付けを定めている県(取扱指針、実施方針、実施方法、取扱要綱、ガイドライン)は、以

下のように整理することができる。

○民泊範囲の明確化(5県)=岩手・山梨・鳥取・島根・高知

○教育旅行限定(7県)=宮城・秋田・山形・新潟・徳島・山口・鹿児島

【共通事項】

・市町村等が受入窓口となり、農家単独では×。

・衛生管理や安全対策に関する研修等が必要。

・以上のことより、結論として整理できるのは

① ホワイト民泊=民宿の原点回帰

② 農林漁業との兼業性および小規模性

③ 従来型の中規模民宿とは別ジャンル

④ 小規模GT政策として総合的に理解

・また、課題としては、以下の事項が指摘できる。

① 農林漁業および農山漁村の定義明確化

②宿泊拒否や非農林漁業者子弟への継承

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(2)大浜漁業協同組合・南島原市立有家小学校 漁業体験の現地取材

・ガイドラインの有効性の検証のため、実際の漁業体験を含む修学旅行に同行し、受け入れ側の漁業協

同組合、漁師、宿泊施設、学校、旅行会社などへのインタビューを通じて、教育旅行の実際の地域選

定、プログラム選択のプロセスを確認するとともに、ガイドラインの内容を検証することを目的に取

材を実施した。

◆実施の概要

○日時:平成 22 年 10 月 13 日(水)~15 日(金) 2 泊 3 日

○学校名:長崎県南島原市立有家小学校 6 年生(46 名)修学旅行

○訪問地域:長崎県五島市(福江島)

○漁業体験受入:大浜海業振興会(うみぎょうしんこうかい)(大浜・増田漁業協同組合)

○旅行会社:新日本観光㈱(長崎県南島原市)

○スケジュール

日程 行程 宿泊

10/13

(水)

有家小学校-(バス)→長崎港-(高速艇)→福江港(歓迎式)

~五島観光歴史観~町並み散策(クイズでウォークラリー)-(バス)→

コンカナ王国

コ ン

カ ナ

王国

10/14

(木)

コンカナ王国-(以下、全てバス)→堂崎天主堂-→遣唐使ふるさと館

-→魚藍観音展望台-→グラスボート(サンゴ、熱帯魚観察)-→香珠

子海水浴場【地引網、魚捌き体験】-→塩工房見学-→コンカナ王国

(夕食に地引網の魚料理=刺身、焼き魚、から揚げ)

コ ン

カ ナ

王国

10/15

(金)

コンカナ王国-→鬼岳-→鎧瀬ビジターセンター-→福江港-(高速

艇)→長崎港-(バス)→有家小学校

○目的(「平成 22 年度修学旅行実施計画書」より)

①五島の自然の中で活動し、歴史・文化を学び、郷土(長崎県)への理解と愛着を深める。

②諸活動を通じて学んだことを事後学習や生活に生かし、将来の夢や希望を持った生活につなげる。

③準備~実施~事後のまとめを通じて協調性や責任感を培い、思い出づくりをさせる。

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5 人いる漁協青年部のメンバーのひとり(普段は定置網漁)が、家族ぐるみで地引網体験を運営。

この日は 50cm 町のフエフキダイが入るなど 30 尾ほどの魚やイカがあがった。ヤラセは一切なし。

網から魚の姿が見えた瞬間から、子ども達の歓声が沸く。その場でお母さんたちから魚捌き体験の指導。

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◆ヒアリングにより明らかになったこと

○学校側の漁業体験選択の事情

・有家小学校は、5 年連続(平成 18 年度から)6 年生の修学旅行に福江島を訪れ、地引網体験を行ってい

る。

・長崎県は、県内の離島を訪問地とする修学旅行に関し、離島までの交通費と離島の宿泊費の 3/4 を補

助する制度がある。今回の旅行は、生徒ひとりあたり 29,000 円/人かかっているが、約 10,000 円/人の

補助が出るため、20,000 円を切る単価で実施できた。

・補助がなければ、漁業体験を含む 2 泊 3 日の旅行は経済的に難しく、実施できなかっただろう。今年

も券の補助金の交付が決定してから(7 月ごろ)修学旅行の行程を決定した。

・漁業体験は、子ども達の体験の印象が非常に強く、父兄にも好評。教育効果が高いので、できるだけ

取り入れたいと考えている。しかしながら、砂浜でのケガや天候に左右される(今回も雨天時の代替

行程を別途準備)など、不安要素があるのも事実。

・行程や漁業体験の運営に関しては、5 年の実績がある旅行会社(新日本旅行㈱)の提案どおりに任せ

ている。教員の下見も実施していない。

・校長の方針により、まず「子ども達に怪我をさせないように」十二分に気を使っている。

・ガイダンスの骨子については、整理されている項目でよいと思うが、現実的には日常の生徒指導が多

忙で、余裕を持って下見やプログラムの確認、地域とのコミュニケーションをとることが難しい。実

際には旅行会社にお任せになっている。

○旅行会社の教育旅行へのスタンス

・新日本観光㈱は島原半島の修学旅行を年間 20~30 件取り扱っている。

・自然体験、農漁業体験は学校の人気も高くできるだけ行程に組み込みたいと考えているが、1 泊 2 日

では行程が組めないし、予算上も厳しい。

・正直言って、福江島で漁業体験ができたのは県の補助金が出たから。そうでなければ、修学旅行の父

兄の負担金は落ち込んでおり、15000 円程度が一般的。この金額だと、島原半島からだと福岡か熊本(阿

蘇)への 1 泊 2 日くらいしか行程が組めない。体験プログラムを組み込む余裕がないと思う。

・今年は県の補助が続くか微妙だったので、夏まで動けなかった。また学校側も、3 社程度の複数見積

りをその時点から取得して業者を決定するので、価格も厳しい競争となる(安い工程を選択しがち)。

準備期間が足らない。

獲れた魚はホテルが引取り、夕食のテーブルに。刺身、焼物、から揚げ、味噌汁。

子ども達は取り合い。「いただきます」に合わせて、先生から命の教育のコメントがあった。

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○漁協のスタンス

・組合員は 50 名。海業振興会の取組みの背景に、①高齢化、②漁家の低迷、③燃料コストの高騰など

があり、平成 17 年に漁協内部で喧々諤々議論を開始。行政が進める五島市ブランド確立協議会で、大

浜がモデル地区に選ばれたことがきっかけ。漁業体験の先進地への視察を行った(松浦、壱岐、体験旅

行では安心院)。

・.また、平成 17 年から始まった「離島漁業再生交付金」で 13.6 万円/世帯、組合全体で約 570 万円/

団体×5 年が決定したことが大きい。組合内部では勿論反対する意見もあったが、この資金を活用し

て体験漁業への取組みを決定した。

・これまで、「踊るイセエビ大走査線」とネーミングをつけたイベント(名物のイセエビ刺し網体験)

が大当たりで多くの集客実績を作ったが、毎年 150 万円の赤字。そのほかにも、磯遊び体験、灰ダコ

獲りなどのプログラムを独自に立ち上げ、修学旅行(東京の高校生など)を受け入れてきた。しかし、

経済的には厳しい。

・まだ成果は見えないながら、この体験漁業をきっかけに平成 20 年に漁協青年部が復活した。メンバ

ーは 5 人だが、地引網体験などに積極的に取組んでいる。若者の定着が も大きな効果。

・こうした動きを受け、漁業体験の拠点施設が必要と考え、県の新世紀水産活性化事業を活用して平成

22 年 4 月に「ふれあい海工房」を開設。団体の受入時にも動きやすくなった。

・集客営業は特に行っていない。受入客も、ホームページを見て直接漁協(海業振興会)に直接電話が入

るケースがほとんど。件数もまだまだ低い。行政や観光協会との連携はこれからと考えている。

○ヒアリングの総括

<受入地域側の課題>

・経済効果を生む漁業体験を実現するための集客戦略、有る程度の件数をこなすための運営の仕組みと

体制づくりが課題。

・若者の定着、青年部の復興は地域の希望だが、若い後継者が体験漁業など新たな枠組みを確立してい

くためにも事業戦略と体制づくりが急務と感じた。

<学校側の課題>

・教育旅行には効果と魅力を感じながらも、予算や安全管理の問題などで思うように動くことができな

い学校側の実情を把握できた。

・その中で、特に小学校では地域密着型の旅行会社(バス会社なども含む)の役割が大きいと感じた。

時間的余裕のない教員や学校側への情報チャンネルとなっているケースが多い。受入地域としても、

このパターンを認知する必要がある。

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(3)西伊豆いきいき漁村活性化協議会“体験指導者養成講座”

○日時:平成 23 年 1 月 22 日(土)

○場所:静岡県西伊豆町宇久須公民館

○研修の内容:西伊豆いきいき漁村活性化協議会が開催する「体験指導者養成講座(中級編)」の安全

管理に関する講習へのオブザーバー参加

・西伊豆地区において、体験交流事業を推進する西伊豆いきいき漁村活性化協議会が開催する体験指導

者講座(中級編)における「安全管理と事故発生じの対応について」の口座に同席した。

・当日は、西伊豆消防署から研修担当者を招き、安全管理者の心得、AED機器の使用方法について、

救急救命の心得と手法などについて、わかりやすい講義の後、体験指導者候補者による実演指導など

が行われた。

・体験指導者として旧kゅ鵜究明にかかわる正しい知識や技術を身につけることの重要性を実感すると

ともに、ガイドラインの必須項目として記載する内容整理に大きく役立った。

講習会の様子

救急救命の心得と方法、AED 装置についての講義

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(4)窪津漁業協同組合・慶応幼稚舎 漁業体験の現地取材

・昨年度調査において、慶応義塾幼稚舎の修学旅行において、子供農山漁村交流プロジェクトの受入れ

モデル地区に選定されている高知県窪津地区での漁業体験・民博の実施が確認された。

・その成果を受け、今年度は同校の窪津地域における漁業体験に密着取材することにより、ガイドライ

ンとりまとめに必要な情報、ガイドライン掲載に必要な情報の取捨選択の視点から関係者へのヒアリ

ング等を実施、ガイドラインへの掲載事項についての知見を得た。

○日時:平成 23 年 3 月 5 日(土)~7 日(月) ※5 泊 6 日のうちの漁業体験を含む 3 日間

○学校名:慶応義塾幼稚舎 小学校 6 年生(112 名) 修学旅行

○訪問地域:高知県土佐清水市 窪津漁港

○旅行会社:土佐電トラベル光㈱(高知市)

○スケジュール

日程 項目 備考 1 日目

夕方

入村式 ・漁協組合長、市長挨拶。 ・受け入れ家族の紹介。

18:00 歓迎夕食会

・漁協組合婦人部を中心に総出で調理・配膳 ・料理の説明 <メニュー> カツオのたたき、ブリ刺身、魚飯(いおめし

=郷土料理)、揚げ盛り(マンボウの天ぷら、

かき揚げ、すり身、イモ天)、ブリのアラ煮 他

食後 ・翌日早朝の定置網漁体験に向けて、組合長よ

り定置網の仕組みの説明。

解散、各自民泊体験へ ・民泊先の家族のお迎え。

2 日目 6 : 30~

定置網体験 ※全体の半数の生徒

・各自、民泊の家族の車で漁港に集合。 ・ライフジャケット着用、安全管理の徹底。

7 : 30~

帰港、水揚げ ・魚を水揚げして仕分けする様子を市場で見学。

8 : 00~

朝食 ・漁協ホールにて朝食。

9 : 00~

つり体験 ・漁協敷地内の釣堀にて、釣り体験。

10:30~

地元小学校との交流会 ・地元小学校児童による「捕鯨」にまつわる 演奏を鑑賞。意見交換で交流が生まれる。

11:30~

昼食 かまど焚きごはん

&磯バーベキュー ・磯場に移動。漁師に教わりながら、班ごとに かまど作り、火起し、バーベキューで昼食。

あじの開き体験 ・昼食の時間を利用してのアジの開き体験。

午後 足摺岬周辺観光 ・足摺岬、竜串海中公園等見学

18:00 夕食 ・漁業組合ホールにて食事 。メニューは前日と同様

解散、民泊体験 2 日目へ 宿泊先の家族の迎えにより、各自民泊へ

3 日目 6:30 定置網体験 ・各自、民泊の家族の車で漁港に集合。

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3-15

~ ※入替りで半数の生徒 ・ライフジャケット着用、安全管理の徹底。

8:00 朝食 ・漁協ホールにて朝食。

9:00 離村式

・地域・学校が、お互いに挨拶 ・宿泊先とのお別れの挨拶

9:30 出発

◆窪津漁協ヒアリング

・慶応幼稚舎と窪津漁協とのつながりは、高知市の土佐電トラベルの紹介。

・窪津の民泊は 20 軒。1日の受入れ人数は 100 人、 大 120 人まで対応可能。

・受け入れまでの手順としては、1 年前に先生が下見に訪れ、現地で打ち合わせをする。この段階でコ

ースや体験メニューを決定。その後、土佐電トラベルを窓口として、必要手続きを取る。

・受入れの 2 週間前に生徒たちの顔写真とメッセージを書いたカードを送付してくる。これをもとに、

受入れ民泊を振り分ける。

・体験後は、土佐電トラベルを通じて、感想文の文集が毎年届く。受け入れた民泊はみんな楽しみにし

ている。

・土佐電トラベルからは、1泊 2食の代金として 6,500 円/人を受け取る。その他体験代として、磯遊び

体験代 2,000 円、海鮮バーベキュー代3,000 円、定置網体験 2,000 円を受け取る。

・民泊の受け入れ漁家には 3,000 円/人・泊を漁協から支払う(食事は夕食・朝食とも漁協 2 階の講堂

で是認一緒にとるため、民泊先は入浴・宿泊のみ)。

・学校の要望として、「漁家の普段の生活の中で受け入れてほしい」との要望がある。

・受入れ民泊には保険所の研修を受講してもらっている。

・施設整備に課題がある。現在食事会場としている漁協 2階の講堂には水回りがないため、受け入れ期

間中、臨時の台所を講堂脇の屋上に設営する。非常に非効率で課題となっている。

・雨天時の代替えプログラムには頭を悩ましている。ガイドラインなどで、他所の実施しているプログ

ラムなどヒントを紹介してもらえるとありがたい。

○受け入れ漁家のお母さんと記念撮影

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○定置網体験の様子

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3-17

(人)

【若狭三方五湖わんぱく隊 漁業体験受入数の推移】

(5)「若狭三方五湖わんぱく隊」漁業体験事業のヒアリング

・漁師民宿への宿泊と漁業体験に関し、1990 年より 20 年以上の取り組み実績がある先進地・福井県若

狭町の社団法人若狭三方五湖観光協会へのヒアリングを実施し、ガイドラインに掲載する内容につい

ての知見を得た。

◆地域の概要

・若狭町は福井県の西部に位置し、若狭湾に北面してリアス式海岸の一部を成している。南に滋賀県と

の県境にある山々は 800m 級と比較的低い山々があり、東に隣接する美浜町にまたがって、関西では

観光地として名高い三方五湖がある。

・産業は農水産業と観光。特産品は「福井梅(ブランド)」と「へしこなどの水産加工品」である。

・水産業は、常神半島の西岸の津々浦々に 8 つの小規模な漁村が点在しており、大敷(大型定置網)、

を中心に近海の魚を水揚げしている。

◆取組みの背景

・1970 年代頃の民宿・海水浴ブームの時代、若狭町をはじめとする若狭湾・三方五湖地域は、京阪神

からの手軽で人気の海水浴スポットであり、夏休みは民宿が常に満室になるほどのにぎわいであった。

若狭町でも約 200 軒の民宿が営業していた。

・ところが、1990 年ごろになり、観光のスタイルに変化が見え始めたことを受け、現在の観光協会会

長(自らも漁師民宿を経営)が「小型定置や大敷を体験漁業として子供たちに見てもらおう」と行動

を起こした。その当時、若狭の観光客はまだそれほど減少していなかったにもかかわらず、次の方向

性を打ち出すことができたのは、会長の先見の明であるといえる。

・会長の呼びかけに応じ、世久見、海山、小川、神子、常神の 5 つの漁村の漁師たちが組合を構成し、

社団法人若狭三方五湖観光協会が組織され、さっそく岐阜県の体験漁業の子供たちを受け入れた。

◆事業実現のポイント

・観光協会の立ち上げ~子供たちの受

け入れは、事業的視点を重視して開始

されたため、観光協会としては、初年

度から黒字を計上することができた。

・この要因として、常神半島において

は、海水浴民宿経営や遊漁を通じて、

ほとんどの漁師(漁家)が客商売を生

業としてきたことが大きいと考えら

れる。それゆえ、他地域と違い、観光

客のニーズの変化をいち早く察する

ことができ、サービス業のノウハウが

必要な体験漁業の事業化へと抵抗な

く円滑に移行できたと考えられる。

・1990 年に 270 人を受け入れて以来、

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受入れ数は順調に増加し、2009 年には 8,000 人(売り上げ約 6,000 万円)を受け入れる規模になった。

1986 年には観光協会は第三種の旅行業者の資格を取得している。

◆漁業体験受入れの特徴とガイドライン関連事項

・若狭三方五湖観光協会の常駐スタッフは 5 人。 大で漁業体験 8,000 人/年の受け入れを行っている。

・基本的には、体験プログラムのメニュー組み立てや滞在中のスケジュール作成など、企画は観光協会

自らで実施している。

・子供たちの受け入れに関し、学校側と観光協会との間に旅行会社が入るは全体の 4 割程度。残りの 6

割は、観光協会が窓口となり、直接受入れの事務手続き等(生徒たちの生活面の注意事項の確認、受

け入れ民宿の確認、)を実施する。

・行政(町、県)とは、必要に応じて関連部署(産業化、観光交流課等)の調整を行うが、基本的には

観光協会と漁協・民宿組合との調整で受け入れる体制が確立されている。

・衛生管理や安全対策に関しては、観光協会でもこれまでの経験でマニュアルを作成しており、受け入

れ地区ごとに定期的に講習会を実施している。

・受入れ側と子供たちのコミュニケーションで も重要なのは、「漁師の語らいと、子供たちとのコミ

ュニケーション」だと感じている。プログラムとしては大変地味だが、スケジュールの中に、漁師の

話を子供たちにじっくり聞いてもらう時間を必ず取り入れるようにしているが、これが決定的な印象

と教育校をもたらすと実感している。

・緊急事故等の発生に備えて、万全の連絡体制を作成し、地区と定期的に確認しているが、これまでの

20 年間で大きな事故は発生していない。

・内陸部の農業体験の活動とも組合わせて、「田植え・稲刈り体験」、「野菜収穫体験」、「農作物加工体

験」、「炭焼き体験」などのプログラムと海のプログラムを組み合わせる。

・また近郊の国立若狭湾青少年自然の家とも連携し、「カッター・漁船による漁村入村」など、劇的な

出会いを演出している。

・雨天時のプログラムとしては、「漁師との語らい」。

「ロープワークを学ぶ」、「岸壁釣り大会」、「海の

クラフト」などで対応する。

・体験の受け入れ料金は、標準的に子供ひとりあた

り@9,000 円前後(1 泊 2 食の民宿が@7,000 円、

プログラムが@2,000 円)。

・運営に関わる漁師には、1プログラム・3 時間~

半日で約 5,000 円程度の謝礼を払う。割の良いア

ルバイトと認識されている。

離村式で子供たちに贈る「若狭三方五湖わんぱく

隊認定証」

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大敷網体験 シュノーケリング体験

若狭三方五湖わんぱく隊 モデルスケジュール

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3-20

3 調査結果を反映した地域受入ガイドライン

これまでの調査の知見を総合的に判断し、これから宿泊を伴う漁業体験を実施しようとする地域の漁

業関係者や行政担当者に必要な知見・情報を項目ごとに整理し、ガイドラインとして取りまとめた。

1.ガイドラインのねらいと構成

(1)ガイドラインのねらいと対象

本ガイドラインでは、子ども農山漁村交流プロジェクトによる、小学校の宿泊を伴う中

長期体験交流事業に取り組み、これから子どもたちの漁業体験受入れを検討しようとする

漁村地域の担当者に必要な情報や事業実施上のポイントを整理・提供することを目的に取

りまとめるものです。

(2)ガイドラインの内容と構成

子ども農山漁村交流プロジェクトの概要と 近の動向の紹介

漁村における子どもたちの体験活動受入れの意義、地域の

メリットの整理

これから子ども達の受入れを検討している地域において、

まずはじめに地域内で実施すべき事項の整理

コンセプト・基本方針の決定、地域の将来ビジョンとの整合性

検証、関係者間の合意形成と体制づくりなど

受け入れに必要な以下の事項を整理・解説する。

○安全管理・衛生管理の問題

○許認可・資格の問題

旅館業法関係/食品衛生法関係/遊漁船業登録等関係

○事故・トラブル発生時の対応

○損害・賠償保険の問題

地域資源を活かした体験プログラム作りのポイント、

受入れの具体的手順と方法、留意点など

P1

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子どもたちの漁業体験 地域受入れガイドライン

平成 23 年 3 月 24 日

水産庁 漁港漁村整備部 防災漁村課

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3-21

2.子どもたちの漁村における宿泊体験活動の概況

(1)なぜ体験学習なのか

いま、子どもたちの“生きる力”が必要とされています。現代の子供たちは、都市生活

や地域社会の変化の中で、以下のような課題を抱えていることが指摘されています。

・自然や地域社会と深くかかわる機会の減少

・集団活動の不足(「集団」から「個=弧へ」)

・物事を探索し、吟味する機会の減少

・地域や家庭の教育力の低下

こういった動きを受け、平成 23 年度の新学習指導要領において、子どもたちの“生き

る力”を重視した内容が加わりました。

【文部科学省 新学習指導要領における農山漁村体験に関連する記載(抜粋)】

第 1 章 総則

第 1-2 教育課程編成の一般方針

道徳教育を進めるに当たっては、集団宿泊活動やボランティア活動、自然体験活動などの豊かな体

験を通じて児童の内面に根差した道徳性の育成が図られるように配慮しなければならない。

第 6 章 特別活動

第 2-2-(4) 学校行事の内容・遠足・集団宿泊的行事

自然の力の中での集団宿泊体験活動などの平素と異なる生活環境にあって、見聞を広め、自然や文

化などに親しむとともに、人間関係などの集団生活の在り方や公衆道徳などについての望ましい体験

を積むことができるような活動をすること。

〔出典〕中央教育審議会答申・現行学習指導要領の理念(平成 20 年 1 月)より

こういった問題に対応して、平成 20 年度に農林水産省、文部科学省、総務省の三省が

連携して、全国の小学性が農山漁村において一週間程度(原則 4 泊 5 日以上、 低 2 泊 3

日、農林漁家泊を 1 泊以上)の自然体験や集団宿泊等を行うことで、子どもたちが自然や

地域の文化などに親しむとともに、人間関係などの集団活動の在り方や公衆道徳などにつ

いての望ましい体験を積む“子ども農山漁村交流プロジェクト”を立ち上げました。

○子供たちは、都会生活や地域社会の変化の中で、様々な課題をかかえています。

○新学習指導要領において、子どもたちの“生きる力”を重視する内容が加わりま

した。

○全国の小学性が農山漁村において一週間程度の自然体験や集団宿泊等を行う

“子ども農山漁村交流プロジェクト”が、三省連携によりスタートしています。

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3-22

(2)漁村における体験学習の効果(農山村と異なる特徴)

三省連携による子ども農山漁村交流プロジェクトの目的は、大きく2つに分けて整理す

ることができます。ひとつは、前頁で述べてきた文部科学省が重視する、以下のような“子

どもたちへの教育効果”です。全国の農山漁村体験を実施した学校へのヒアリング結果に

おいても、体験実施後の子供たちの変容が確認されています。

【農山漁村における長期宿泊体験活動で期待される教育効果】

①集団生活の中で協調性・自律性を育む

②「知」を総合化し、課題発見能力や、問題解決能力を高める

③学びの意欲を促進する

④幅広い年齢層との多様な交流の機会を得る

〔出典〕体験活動事例集ー体験のススメー(平成 17、18 年度豊かな体験活動推進事業、文部科学省)より

特に本ガイドラインで取り上げる漁村地域においては、農山村地域と比べても、体験活

動のフィールドが海や漁港・漁村、あるいは船上で、都市部の生活に対して非日常性があ

り、高い教育校が期待できることもあり、訪問先を選定する学校側からの人気も高いので

す。

【漁村地域における子どもたちの体験活動の特徴】

①漁村には、農山村と比べ、日常と大きく異なる生活文化・様式、生活リズムがある。

②魚など生き物を扱うことによる「いのちの教育」、魚介類・海藻類の「食育」が効果

的に実施できる。

③海をフィールドとし、船舶や港湾施設などで体験を行うため、より厳格なルール遵守

の意識や、規範に従う重要性を学ぶことができる。

〔出典〕漁業体験への先進的取組地域、ふるさと生活体験推進校等へのヒアリングより

○子ども農山漁村交流プロジェクトの主な目的は2つです。

①子どもたちへの教育効果(集団生活の協調性・自立性、学ぶ意欲など)

②農山漁村の活性化効果

○漁村体験は、農山村体験と比べて、日常と大きく異なる生活文化・様式があり、

「いのちの教育」、「食育」が効果的に実施でき、学校や児童からも大人気です。

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(3)漁村の体験学習受入れ地域のメリットとリスク

子どもたちの体験活動を受け入れる農山漁村地域には、大きな活性化効果が期待できま

す。全国の受入れ漁村へのヒアリング調査においても、宿泊や体験活動を通じての経済(直

接的)効果と、児童との交流や教育効果が発揮の共有・実感による社会(間接的)効果の

両面において、顕著な地域活性化効果が現れているとの報告があがっています。

①経済効果<直接的効果>

交通費(バス、船等)/宿泊費(民宿、民泊等)/施設使用料(博物館、水族館等)

/体験プログラム実施費/弁当・飲食代/特産品・お土産物等の販売 などによる売

上、雇用創出効果 など

②社会効果<間接的効果>

漁村生活者と子どもたちとの世代を超えた交流(もう一つの親戚づきあいの始まり)

/高齢者等への生きがい提供/地域の誇りやふるさと意識の復活/地域環境保全・美

化への意識の高まり など

漁村地域における子どもたちの体験学習の受入れには、上記のようなメリットがある一

方で、農山漁村に比べると大きなリスクも伴います。

【体験学習を受け入れる漁村地域のリスク】

①大きな危険が伴う(海、天候、岩場・港湾など海洋地形、有害生物等)

②漁業権・漁業規制上の制約がある

③気候・気象条件に活動が左右されがち

④活動時間設定上の制約がある(早朝、夜間)

⑤都市住民が漁業体験に不慣れ

⑥地域の漁業関係者が、子どもたちを始めとする参加者とのコミュニケーションに不

慣れ

〔出典〕漁業体験への先進的取組地域等へのヒアリングより

それゆえに、これから子ども農山漁村交流プロジェクトの受入れ活動を検討している地

域においては、十分な準備と対策を講じておく必要があります。

○子ども農山漁村交流プロジェクトを漁村地域において受け入れることにより、大

きなメリットがありますが、その反面、海をフィールドとすることによるリス

クが伴うため、注意しなければなりません。

【メリット】売上・雇用などの経済効果(直接的)と、地域コミュニティの活性化

や住民の生きがいなどの社会効果(間接的)の両方が期待できる。

【デメリット】海や漁港というフィールドの危険、天候に左右される不安定さ、漁

業権等権利上の制約、子どもたちとの円滑なコミュニケーション など。

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(4)子ども農山漁村交流プロジェクトの受入れ要件

子ども農山漁村交流プロジェクトの受入れ要件は、一般に以下のように規定されていま

す。一定の受け入れ条件を備えた地域は、農林水産省により“受入れモデル地域(先導型

地域、体制整備型地域)”の指定を受けることができます。

受入れモデル地域は、平成 20 年度から既に 3 か年にわたり全国 115 地域(うち、漁

業活動を中心とする地域は約 3 割)が指定され、体験活動を推進しています。

【子ども農山漁村交流プロジェクトの受入れ地域としての主な条件】

①農山漁村において当該プロジェクトの地域協議会が設立されていること

②学校や受入れ関係者等との調整を果たす受入れ窓口があること

③子供が滞在期間中に、農林漁家での少人数の宿泊体験を提供できること

④受入れ地域として一定期間の滞在を 1 学年規模で受けられること

⑤子どもたちを受入れるための地域ぐるみの安全・衛生管理体制があること

⑥受け入れ関係者が賠償責任保険に加入していること

〔出典〕『農林漁家民宿における子ども長期宿泊体験活動受入対応の手引き』(平成 20 年 3 月、)より

○子ども農山漁村交流プロジェクトを受け入れるための主な条件が、財団法人都市

農山漁村交流活性化機構(通称:まちむら交流機構)から発表されています。

○これから子ども達の受入れに取組もうとしている地域は、準備・活動開始のため

のチェックリストとして活用してください。

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3.宿泊体験活動受入れの準備と体制づくり

(1)なぜ受け入れるのか ~地域の合意形成と将来ビジョン~

子ども農山漁村交流プロジェクトの場合、活動受入れの地域側要件として、「地域協議会

が設立されていること」と「関係者等との調整を果たす受入れ窓口があること」が要件と

してうたわれています。

宿泊体験活動に取り組むに当たっては、まず、行政、漁業協同組合、観光協会など関連

団体、実際に滞在を受入れる漁家民宿、民泊希望者など地域の関係者が集まり、事業取組

に関して合意形成を図ることが必要です。

合意形成を図る段階においては、なぜ地域ぐるみで宿泊体験活動を受け入れる必要がある

のかという“目標の明確化”について、関係団体同士で十分に意見を出し合い、納得のい

くまで話し合い、“皆で決めたことを共有”することが重要です。関係者間で、地域が抱え

る課題への対応や、地域の将来ビジョンの実現に向けて、宿泊体験活動の受入れがきっち

りと位置付けることができれば、その後の継続的活動や主体間の役割分担に関する強固な

基盤が形成されたと言えます。

この段階で、もし専門的なノウハウや専門的知識を持った人材が必要であることがわか

れば、地域外の組織や専門家と連携していくことも重要です。その場合においても、地域

内の合意形成がしっかりとなされていれば、活動の軸がぶれることも少ないでしょう。

(2)地域受入協議会の設立

地域の主体間で合意形成が完了したら、次は受入協議会を設立することが必要です。協

議会は、①法人格を持つ組織(公益法人、NPO 法人、株式会社等)とするか、②法人格を

持たない任意団体とするかの選択志があります。当初から法人格を持つ組織を設立できれ

ば、社会的信用をはじめとして様々なメリットはありますが、まずは、任意団体から活動

○子ども農山漁村交流プロジェクトの受け入れにあたっては、「なぜ、取り組みを

開始しなければならないのか」、「自分たちの漁村でできることとできないこと

は何か」など、地域の将来ビジョンともよく照らし合わせ、関係者間で十分な

話し合いを行うことが必要です。

○地域の関係者の間で、受入れの目的や規模など、枠組みが固まれば、次は、事業

実施の責任者として事業全体のマネージメントを実施するリーダーを決め、受

入れの窓口となる「地域受入協議会」組織を立ち上げましょう。

○協議会事務局の仕事は多岐にわたります。日常業務の片手間ではこなせない業務

が発生しますので、ワンストップ窓口となる事務局担当者を置く必要がありま

す。

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3-26

を開始し、事業が軌道に乗ってきた段階で法人格を取得するなど、段階的な組織発展を目

指しましょう。

受入協議会の構成員として想定されるのは、以下のような団体です。活動の主旨からも、

地域一丸となった体制が望ましいため、できるだけ幅広い関係者の参加を心掛けましょう。

漁業協同組合(青年部、婦人部等)/観光協会/宿泊施設(民宿組合等)/体験プログラムを

実施する NPO 法人や民間事業者/行政(市町村) など

受入協議会には、様々な役割がありますが、 も重要なのは事務局としての窓口機能で

す。事務局の担当する業務としては、次のようなものがあります。

【地域受入協議会事務局の主な業務】

業務 備考

・対外的な広報、問い合わせ対応 広報・営業活動、情報受発信(WEB 等)

・学校、旅行会社との連絡窓口、契約・清算 受入れ実務、経理処理

・協力漁家(体験、民泊)の確保・連絡調整 組織構成員間の連携、役割分担調整

・各地区、民泊先への児童の割り振り 運営計画、学校ニーズとのマッチング

・学校の事前学習・事後学習との連携 事前連絡(生徒の生活情報)、アンケート等

・受入れ当日の運営業務 プログラムの運営管理、生活面のサポート

・緊急連絡先との連携・調整 警察・消防、医療機関、行政との連携

以上のように、事務局の業務は多岐にわたるため、インターネットやメールなどを扱う

ことができるスタッフ、経理処理や営業の経験があるスタッフ、地域内の関係各所との調

整を図る能力を持った人材などが必要となります。また、組織全体をマネージメントし、

事業面と地域社会の活性化面の両面から事業を引っ張っていくことができる優れたリーダ

ーの存在が欠かせません。

したがって、受入協議会の体制構築においては、構成員の中から誰がリーダーに相応し

いかをよく話し合い、リーダーのもと役割をこなしていく経験・専門知識・能力を持った

人材をそろえることが重要です。もし、こういった人材が地域の中でそろわない場合には、

域外からの雇用も含めて柔軟に対応することが必要です。

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(4)モデルプラン

事業計画を作成する前提となる地域の受入れモデルプランを作成してみましょう。漁

村・漁業体験の場合、プログラムの実施スケジュールが、潮の干満や、天候によって大き

く左右されることを前提に、順序や時間を柔軟に変更できる構成や、荒天時の代替えプロ

グラムなどを豊富に準備しておくことが大切です。

また、学校側としては、漁村・漁業の体験と併せて農山村の体験も行いたいというニー

ズは強いため、漁村の後背地に農地がある地域では、農業体験プログラムと組み合わせて、

子どもたちがより立体的な体験を地域で実施することができる仕組みを提供することを検

討してみてください。もし、漁村地区内での農山漁村ができない場合には、周辺地域で農

山村体験を実施している地区と連携して、地域の総合力を発揮して、子どもたちの体験を

より豊かなものにする工夫を検討してみてはいかがでしょうか?

【モデルプランの一例(若狭三方五湖わんぱく隊)=農・漁業体験の組合せ】

(4)事業計画書の作成

○事業計画を策定する前提となるモデルプランを作成してみましょう。

○地域の総合力を活かした魅力的なプログラム構成とするとともに、子どもたちの

体力や体調、荒天時の対応など、様々な事態を想定して、無理のないプランを

組み立てることが重要です。

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(3)事業計画チェックリストの作成

受入協議会が設立され、事務局の体制が整ったら、事業計画チェックリストを作成しま

しょう。チェックリストは受入れに当たって地域で整理すべき情報を概観することができ

ます。

【事業計画チェックリストの例】

項目 チェック事項

地域の現況と

取組の前提

・地勢、風土、自然、地域資源

・漁業、水産業の現状、課題

・上位計画、関連法制度 等

基本理念、方針 ・ねらい・目的、地域の将来ビジョンとの整合

地域受入協議会

の概要

・構成団体、連携の仕組み、役割分担

・事務局体制

交通アクセス ・地域までの交通アクセス、公共交通サービス、移動手段

体験プログラム ・プログラムごとの運営シート、学習効果発揮のポイント

・関係先との調整方法、プログラムごとの実施コスト・清算方法

・季節ごと、雨天・荒天時の代替えプログラム

許認可 ・船舶、海上の体験プログラムに関する許認可

・漁業権の調整

・その他の法規のチェック(旅館業法、食品衛生法、消防法 等)

安全・衛生管理 ・講じている事故防止策

・緊急時の連絡体制(病院、警察、消防 等)

・加入している保険の概要(対象範囲、補償内容、契約期間 等)

モデルプラン ・モデル日程の作成

収支計画 ・売上、経費項目の整理

・中長期をにらんだ事業目論見

漁村における子ども達の体験事業への取組の効果としては、経済的効果(事業売上)と

社会的効果(地域コミュニティの活性化)が期待できます。このうち、地域活性化の視点

からは経済的効果を発揮することが重要です。

教育旅行は、学校や旅行会社が、体験実施前に予め子どもたちの旅行費用を徴収してい

るため、事前の連絡時に滞在や食事、体験プログラムの費用を明確に提示できるように準

備しておくとよいでしょう。1 年前から予約が入るので、受入れ地域にとっては、安定し

た事業売上げが期待できます。

○モデルプランと同じく、事業計画を策定する前提となる事業計画立案のためのチ

ェックリストを作成します。事業の前提となる様々な条件を改めてみんなで確

認し、役割分担やリスクの回避についてよく話し合いましょう。

○事業計画の策定に際しては、「どの程度の規模が適正なのか(適正な事業規模の

設定)」、「継続していくためにはどんな運営方法と人員配置が必要か(運営体制

の構築)」が特に重要です。地域の皆さんで充分に話し合いましょう。

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3-29

子ども一人あたりの地域への経済効果モデル=10,000 円/1 泊 2 日

〔内訳〕

◆宿泊費(1 泊 2 食)=5000 円/人・泊

◆体験プログラム代=@2000 円/人・回

◆昼食・飲物代=1000 円/人

→地域に 1 泊 2 日滞在し、体験プログラムを 2 つ、昼食を 1 回とった場合のひとりあた

り売上=10000 円

※バス 1 台(生徒 40 人)1 泊 2 日あたり 40 万円の売上げが地域に落ちることとなる。

また、民泊などの滞在先の漁家や、体験プログラムに携わる担当者の報酬も、地域の協

議会などで話し合っておくことで、地域内の高齢者などの働き甲斐と実益を兼ねた仕事づ

くりにもつながります。

地域の総合力に見合った無理のない事業規模と、長期継続を意識した運営体制を想定す

るように心がけましょう。

【標準的売上の事例】

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3-30

4.地域資源の活用と地域の活性化

(1)地域資源の掘起こし

「うちの地域には何もないから・・・」と、つい言ってしまうことはないですか?

漁業・漁村体験においては、子どもたちが普段の漁村、漁家の日常生活に入り込む生活体

験そのものが既に魅力的なことなのです。都市に、あるいは山間地に暮らす子供たちにと

っては、漁家の生活の全てが“知らない、見たこともない”魅力的な体験ばかりなのです。

地域資源とは、子どもたちの生活体験や、漁村・漁業のプログラムに活用できる様々な

「地域あるもの」のことです。たとえば、以下のようなものが地域資源として活用するこ

とができます。

○地域の自然・地形に関するもの

・海、山、川、林、里山の豊かな自然環境

・段々畑や果樹園など漁村の後背地に広がるのうち・田園風景

・漁師町特有の家並みの風情、歴史を感じる町並み、漁師小屋・網納屋等

○漁業・水産に関するもの

・定置網や刺網、地域独自の漁法、漁具や仕掛け等

○食に関するもの

・良く獲れる漁獲物、生鮮品、水産加工物

・漁師メシ、漁家の普段の食事、祝いの食事

○地域文化に関するもの

・行事、お祭り、伝統芸能、歳時記

・伝統工芸、道具類の手作りの習慣

・民話や伝承など地域に伝わる物語

○人に関するもの

・漁や食、水産加工の名人・達人

・言葉(方言も資源のひとつ!)

たとえば、子どもたちにとってみれば、漁船に乗るだけで大興奮の体験です。地元で暮

らしていると当たり前に見ている日常の風景、食べているものなど、何の変哲もないもの

(こと)が、子どもたちの感動の種に生まれ変わります。

そんな地域資源を探しだすポイントは、以下の通りです。皆さんの地域でもみんなで話

し合い、新鮮な目で漁村を歩き、地域資源を発見しましょう。

○漁業・漁村体験では、皆さん方の生活に当り前にあるモノやコト、普段何気なく

行っている習慣そのものが、地域資源として体験プログラムになる可能性を持

っています。

○まずは新鮮な目で、地域資源を発掘、再評価してみましょう。

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3-31

【地域資源を探し出すためのポイント】

①資源であると思うものとそうでないものとを分ける作業はしない

②よそ者(外部の人)の目になって探してみる

③なんだろう? なぜだろう? と、子どもが興味や疑問を持つものを見つける

(2)地域資源を活用したプログラムづくり

漁村・漁業の地域資源が見つかったら、それらを活用したプログラムを作ってみましょ

う。他地域でも行われている定番の体験プログラムであっても、そこに地域資源活用の視

点を加えることによって、ここにしかない、個性的なオリジナルプログラムを作り出すこ

とができます。

体験プログラムは教育効果を狙った活動で、単なる遊びではありません。とはいえ、子

どもたちに準備された内容を詰込みで教え込むのではなく、遊びのプロセスを通じて、子

どもたちが自発的に関心を持ち、学びとることができる仕掛けが重要です。

また、子どもたちと一言にいっても、小学校の低学年と高学年とでは、体力的にも、学

び取る力でも大きな差があります。決して無理をせず、子どもたちの能力や体力と相談し

ながら、余裕を持ったプログラムを組み立てることが重要です。

【体験プログラム作りのポイント】

・学習効果を発揮するため、目的やテーマを明確にしたプログラム作り

・子どもたちの興味や疑問を手掛かりに、「遊びながら学ぶ」プログラム作り

・地域資源を活用した、“ここでしかできない”個性的な体験プログラム作り

・「関心を持つ」→「なぜだろう?」→「わかった!なるほど」のプロセス導入

・子どもたちの関心の持続と体力を考慮した、無理なく楽しいプログラム作り

○発掘・再評価した地域資源を活かして、実際にプログラム作りに挑戦しましょう。

○プログラムは、子どもたちの体力や身長、教育効果のレベルなど、さまざまな年

齢層に対応できるように、難易度を意識した組み立てのバリエーションを設定

しておくことがポイントです。

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3-32

【全国の漁村で実施されているプログラムの例 (※)印は荒天時にも実施可能】

体験プログラム名 概 要

定置網体験 定置網漁を見学専用線から見学

漁船釣り体験、港釣り体験 漁船に乗って海釣りを体験(荒天時は港釣りに)

養殖餌やり体験 養殖筏から、漁師の話を聞きながら餌やり体験

地引網体験 砂浜で地引網体験。そのままバーベキュー

磯遊び体験 干潮時の岩場で、潮だまりの生き物観察

魚捌き体験(※) 獲れたての魚を三枚におろす体験。命の教育も

開きづくり体験(※) 魚を捌き、保存する生活の知恵を体験。食育も

ビーチコーミング体験(※) 漂着物を介して、海辺の生態系やごみ問題を考える

かまぼこづくり体験(※) 水産加工体験、食育

流木・貝殻アート(※) 海岸に漂着した貝や流木等を使ったクラフト体験

魚のセリ見学 定置網などでとれた魚のセリを見学

漁村の町並み探検(※) 高密度で独特の生活空間がある漁村のまち歩き

(3)プログラム実施のポイント

1)協議会事務局の役割

漁家への滞在や、漁業体験プログラムの実施など、子どもたちの漁村地域への受入れ事

業において、協議会の事務局が果たす役割は大きいと言えます。

子ども農山漁村交流プロジェクトは“第 2 のふるさとづくり”を目指す取組ですから、

子どもたちに地域のことをよく知ってもらい、好きになってもらうことが重要です。その

ために、子どもたちに地域の魅力をどのように伝えるか、滞在中の生活を安全・快適なも

のにするためにどのようなサービスが必要か、そして、子どもたちに「今度は家族を連れ

てまた来たい」と思ってもらえる交流と体験とホスピタリティを提供できるよう、地域ぐ

るみで話し合いましょう。

○プログラムを実施する際には、安全・衛生管理、教育効果の発揮などに総合的に

配慮する専門的技術を身に着けた体験指導者がいることが望ましいと言えま

す。そのため、協議会の中でも人材育成などに配慮し、各種資格の取得等に務

めることが必要です。

○体験プログラム実施時にも、急に天候等が変化する場合があります。また、子ど

もたちの中は、慣れない生活のストレスで体調を崩す生徒もいます。事務局や

現場の指導者は決して無理をせず、問題点を発見したら、躊躇せず活動の中止・

変更を決断する勇気を持つよう、心がけましょう。

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2)体験指導者(インストラクター)の必要性

体験プログラムにおいて、子どもたちを飽きさせず、楽しく遊びながら 大の教育効果

を引く出すためには、体験指導者が高い専門技術を身につけ、 大のパフォーマンスを発

揮する必要があります。体験プログラムのストーリー作りや演出効果を高め、地域資源の

活用により地域の魅力や生活の知恵を伝えると同時に、子どもたちの安全・衛生管理にも

気を配らないといけません。

体験指導者の技術を習得するための講習会は、都道府県や公益法人、自然体験分野の

NPO 法人などが開催しているケースがあります。これらの機会を活用して、協議会のスタ

ッフに多くの有資格者がいることが、学校や旅行会社などから、地域が信用を勝ち取る近

道にもなります。

3)荒天時の代替プログラムの準備

漁村・漁業体験においては、安全確保の観点から、常に雨天・強風・波浪等天候に気を

配りつつ、プログラム実施の判断を行う必要があります。

荒天時や波が高い日には、学校側や子どもたちの期待が高いプログラムでも決して無理

をせず、勇気を持って中止の決断をすることが必要です。そのためにも、体験スケジュー

ルを組み立てる際には、荒天時の代替えプログラムを準備しておくことが重要です。天気

の急変にもあわてず代替えプログラムにスイッチできるよう、準備を進めておきましょう。

【代替えプログラム実施のポイント】

○中止の可能性がある海のプログラムの代替えとして、食体験やクラフトを組み合わせ、

資材や道具を常に準備しておく

○中止になったことを残念に思わせないよう、代替えプログラムの演出効果を高める(例:

釣りやクラフトでは、コンテスト形式にして商品等を用意する)

○漁師の海の体験談を聴くだけでも、子どもたちは感動する(シンプルに!)

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5.受入れの手順

受入が決まると、早速、受入れの準備を始めましょう。

具体的なスケジュールは後程整理しますが、まず受入れまでに学校側(あるいは旅行会

社等)から情報のやり取りを行っておくべき事項を整理します。

【受入れまでに学校(旅行会社)と交換しておくべき事項】

情報の流れ 交換する情報の内容

受入協議会

から学校へ

・事前学習に必要な地域情報

・受入れ民宿・民泊のプロフィール、家族の情報

・体験プログラムのメニュー

・訪問する季節の気候、天候、旬の食べ物、地域の歳時記等

学校から

受入協議会へ

・生徒の個人情報(持病、アレルギー、治療中の病気、障害、

生活面の留意事項 等)

・事前学習の内容、期待する教育効果

・学校のある地域の情報

受入れが決まると、通常 1 年から 6 か月前の時期に、学校からの下見があります。受け

入れ前の貴重なコミュニケーションの機会ですから、有効な情報交換と親睦を深めておき

ましょう。

受入れのスケジュールと手順は、一般的に次の表のようになります。

○体験学習の受入れが決まれば、学校側では事前学習が始まります。地域の歴史や

特徴、地域資源と体験プログラムの実施内容などを学校側に提供できるように

資料をそろえておきましょう。

○また、生徒たちの生活面の留意事項(病気、障害、アレルギー、常備薬など)の

提供を受け、宿泊・食事等の準備を始めましょう。

○受入れ直前~当日には出血数の変更はないか、受入れの 終確認を行い、天候等

によるプログラムの実施の可否を判断しましょう。

○そして、受け入れ後には料金の精算と、事後学習の支援があります。子どもたち

の感想文などが届けられることも、受入地のならではの楽しみのひとつです。

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【受け入れ決定から生産までのスケジュールと手順の一例】

スケジュール 手順

地域選定段階 ・地域の受入協議会からの情報提供(旅行会社等との連携)

・受入れの決定、契約

1 年~6 ヶ月前 ・学校からの下見(学校側のニーズ確認、担当者同士の挨拶)

・事前学習に必要な情報提供

~3 ヶ月前 ・滞在先の民宿・民泊の決定

・歓迎式の内容決定、会場確保、学校の希望調査

~1 ヶ月

・学校側との連絡調整(滞在先の割振り、プログラムの選定)

・生徒のプロフィール確認、アレルギー、持病、生活面での

留意点等確認

~1 週間前 ・学校との 終調整、受入れ準備の開始

前日 ・欠席者、天候による予定変更、スケジュール変更の 終確認

当日(歓迎式~

離村式まで)

・受入れ人数の確認、プログラムの運営、協議会体制確認

・児童の健康チェック、生活面でのケア、緊急連絡本部 等

・天候等に対応したプログラム・スケジュールの調整

終了後

・費用の精算、請求書・領収書の発送

・協議会内部の精算(宿泊先、体験指導料等支払い)

・事後学習への協力・成果共有、学校へのアンケート実施

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6.漁業体験の安全管理

(1)漁業体験の安全管理

1)漁業体験のリスクと事故の予防

漁業体験は、農業体験と比べて大きな教育効果が期待され、非日常性も高いことから、

学校からのニーズは大変高いものがありますが、一方で、体験フィールドが港湾、海岸、

海上、船上などになるうえに、活動時間が早朝・夜間など普段の生活とは異なる時間にお

ける体験が多いため、大きな危険や事故のリスクが常に付きまとい、しかもそれが起こっ

てしまえば、極めて重大な事故に直結しがちであるという特性があります。

それ故に、農業体験や一般のグリーンツーリズム以上に、安全管理には十分すぎるほど

の配慮が必要となります。

【漁村・漁業体験プログラムのフィールドで発生する事故等の例】

・港湾や船上から海への転落

・船上の機会や漁具によるケガ

・夜間・早朝の照明設備等不備による転倒等の事故

・岩場での転倒により、岩の角やフジツボによる裂傷を負う

・岩場等での海藻によるスリップ転倒

・海水浴やスノーケリングで、離岸流に流されて戻れなくなる

・海水浴やスノーケリングで大量の海水を飲んでパニックになる

・海底の急な地形の変化による溺れ

・重症の日焼けによる火傷、日射病、熱中症

・毒クラゲやガンガゼ、ダルマオコゼなど毒を持つ生物に接触する

したがって、漁村・漁業体験の主催者は、常に「子どもたちを、以下安全に楽しく体験

させることができるか」を常に考え、行動することが義務であるということができます。

「たぶん、大丈夫だろう」といった甘い憶測は捨てる必要があります。

こういった事故を予防するには、体験フィールドや漁業設備・漁船などの潜在的リスク

に普段から気を配り、あらゆる想像力を働かせて“危険の元”の発見に努めることが肝心

です。そして、体験活動の危険要因を慎重に洗い出し、どうすればその危険を回避できる

かを考え続けることが必要です。また、そういった知見を関係者全員でことあるごとに確

認する時間を持つことも有効でしょう。

繰り返しますが、漁村・漁業体験の実施において、安全管理は絶対条件です。地域ぐる

みで、普段から留意する癖をつけておきましょう。

○漁業・漁村体験においては、安全管理がすべての事項に優先します。正しい知識

や事故が起こる要因について普段からよく話し合い、未然に防ぐ努力を決して

怠ってはいけません。

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3-37

2)事故の原因の発見と排除

事故の原因には、予測が可能な「人的要因」と、ある程度の予測が可能な「自然的要因」

があります。事故の原因を知り、体験活動のフィールドや漁船・設備などのチェックを怠

らないようにしましょう。

【事故の原因】

①下見不足によるもの

体験プログラムの実施に先立ち、事前の下見は大切です。特に漁業体験は季節や天候

による状況が常に変化するため、当日の時間や天気を予測して、入念に下見を実施し

ましょう。下見を怠ってのぶっつけ本番は重大な事故の要因となります。

②情報不足によるもの

天気や波浪などの予報確認は言うまでもなく、体験プログラムに関係する様々な情報

を事前にチェックして、体験本番に臨むようにしましょう。そうすることで、雨天時

のプログラムへの変更もなど、余裕と自信を持って決断することができます。

③道具の点検不足によるもの

「誰かが点検しただろう」ではなく、必ず確認できるシステムを作っておくことが有

効です。特に道具は、体験者数よりも少し多めに用意しておくことで、道具の不良や

故障などによる事故を防止することができます。

④経験不足・体力不足によるもの

子どもたちの体験においては、学年により、または男女差により体力や注力の持続時

間に大きな差があります。体力や注意力が低下すると、事故のリスクは反比例して増

大します。プログラムの時間に配慮するとともに、適度に休憩などをとり、余裕を持

った内容にしましょう。

⑤監視体制の不足によるもの

プログラムの実施に際しては、複数のスタッフが安全を常に監視しておく体制づくり

が必要です。また、現場では、子どもたちの活動エリアなどを、監視しやすい範囲に

限定するなどの工夫も必要です。

⑥学校等への連絡不足によるもの

危険が予測されるプログラムを実施する際には、学校や旅行会社等へその内容を伝え

るとともに、学校側からも子供たちに安全に対する意識付けを事前に行ってもらうこ

とも有効です。

⑦判断不適切によるもの

中止、延期、中断は、天候や子どもたちの体調などに注意を配り、的確に判断するこ

とが重要です。不適切な判断や迷いは、重大な事故につながる要因となり、危険です。

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(2)事故や緊急事態発生時の対応

どれほど予防や事前準備を講じていても、不測の事態などにより事故は発生することが

あります。受入協議会として、適切な対応体制の整備が必須です。

1)ケガへの対応

一般に、事故や不測の事態によってけが人等が生じた場合の対応方法について、以下に

手順を示しておきます。

【緊急時の対応方法】

○重大な事故、命にかかわるケガの場合(救急車対応)

○身近なケガ等の場合

ケ ガ

人 の

発生 <症状の観察>

・脈拍・呼吸の状況

・出血、発熱の有無

・呼吸、顔色、体温

・症状の原因把握

<本人の反応、意識>

・話しかけへの反応

・意識はあるか

・手足を動かせるか

・痛みの場合・程度

STEP1 落着いて観察、状況把握

活動

停止

周辺

安全

確保

STEP2 119 通報、救急対応

<119 通報、救急対応>

・協力者の呼びかけ

・緊急連絡網の活用

・学校との連携

・輸送手段の確保

<伝達事項の整理>

いつ(発生時刻)/どこで

(発生場所)/誰が(年齢・

性別・人数等)/どこを・

どのように(怪我の部位

と症状)

STEP3 応急処置、事後対応

<救命・応急処置>

・止血

・AED による処置

・人工呼吸

・心臓マッサージ

・体位確保・保温

医療機関、医師

の診療・治療

<事故報告、処理>

・緊急連絡本部

・学校、家族

・地元警察、行政等

※救命・応急処置は、このガイドラインの内

容では不十分です。地元消防署や行政棟が

実施する講習や訓練を受講しておいてく

ださい。

活動中止 or 継

続の判断

ケ ガ

人 の

発生 <症状の確認>

・症状の観察

・救急医療を行う必要が

ないこと等の確認

・応急手当、ケガの処置

STEP1 落着いて観察、状況把握

STEP2 医療処置の必要性判断

<病院へ連れて行く>

・誰が連れて行くか

・交通手段をどうするか

・学校側の判断の確認

STEP3 事後対応

<経過観察>

・本人の症状

・ケガの経過

<事故報告>

・緊急連絡本部

・学校、家族

・警察、行政等 医療処置、本人の

活動継続判断

<ケガ人に配慮しつつ

活動継続>

・内容・時間を短縮する等

の判断

○事故が起こってしまった時に、現場の責任者やスタッフが慌てず迅速に、適切な

連絡・処置がとれるかどうかが重要です。

○普段から事故発生時の対応を検証し、落ち着いた対応をとることができる自覚と

自信を身に着けておきましょう。

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3-39

地域受入協議会は、活動中の緊急連絡本部の設置するとともに、緊急連絡網を作成し、

普段から対応についての体制を整えておくことが必須事項です。

2)病気への対応

子どもたちは慣れない生活の中で、生活のリズムを崩して発病する場合があります。活

動中の児童の病気には、学校の先生とよく相談のうえで、症状が重い場合には前ページの

ケガ人への対応に準じて、すぐに医療機関での診察を受けられる体制を整えておくことが

必要です。

また、屋外の港湾・海上での活動では、日射病や熱中症が発症しやすいので、特に春季

~秋季の海沿いのアクティビティにおいては、日差しを避けることができる涼しい場所を

確保しておき、プログラムの中に適度な休憩をとる時間を確保しておくことが重要です。

また、学校側ともよく相談して、十分な水分補給が可能となるように準備しましょう。

3)災害への対応

漁村・漁業体験は、活動のフィールドが海岸線近くになります。それゆえ、海に関連す

る自然災害には十分に対応しておく必要があります。

台風やそれに伴う高潮などに加え、地震に伴う津波への防災は特に重要です。日頃から、

地元行政等が発行するハザードマップや、緊急避難先の確認、また地域ぐるみで行う防災

イベントや避難訓練などには受入協議会として積極的に参加し、関連情報の収集と更新に

努めることが義務と認識してください。

学校側に対しても、受入決定後の早い機会に、防災と緊急時の対応についての情報を共

有しておくようにしましょう。防災への備え自体を滞在中のプログラムに取り入れること

で、体験学習としての重要なテーマにもなります。

もし、子どもたちの受入れ活動中に、津波の危険がある地震などが発生した場合、協議

会の緊急連絡本部の判断に従い、学校側と協力して、速やかに高所や決められた避難場所

に子どもたちを誘導することができるように、常日頃から心の準備を怠らないようにして

おきましょう。

4)有毒・危険生物による被害処置

磯遊びや海洋生物と直接触れる機会がある漁獲体験などを地資する場合には、有毒・危

険生物による被害への対応をする必要があります。具体的には、クラゲ、ガンガゼ、オニ

ヒトデ、ウツボなどによる被害が発生しますが、これらに対しては、以下の手順で対策を

進めることが必要です。

①有毒・危険生物を知る(ポスター等の提示、プログラム実施前の周知)

体験フィールドに生息する有毒・危険生物を、指導者が認知し予防することが重要で

す。また、利用者にもポスター提示やガイダンスで周知を徹底しましょう。

②生物による外傷の応急手当

応急処置に必要な薬剤・道具を常に携行しましょう。処置後は医師の治療を受けまし

ょう

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3-40

(3)海の体験プログラムに関わる許認可

1)海面利用秩序の維持の必要性

漁業は、水産資源の保護培養、秩序ある漁場の利用を目的として、法令・規則・協定な

どによって、様々な団体や関係者体感の権利等の調整が行われています。また、遊漁につ

いても、遊漁船業の適正化に関する法律をはじめ、関連法令等により、漁業団体や遊漁団

体の協定などが定められています。

漁村・漁業体験として、魚貝類の採取が伴う体験活動を実施する際には、法令・規則など

に定められた漁具・漁法の制限、期間の制限、場所の制限、体長の制限などを守り、海面

利用秩序を乱さないように実施することが必要です。

2)漁業権の調整

漁獲体験、釣り体験などにおいて、魚介類を採取する場合や、漁業権が設定された海域

をフィールドとして活動する場合には、所管の漁業協同組合との間で漁業県の調整が必要

となります。

地域受入協議会の構成員には通常は漁業協同組合が参加しているケースがほとんどと思

われますが、事業の実施主体やプログラムの内容によっては、組合や組合員との利害関係

が発生する場合がありますので、プログラムの企画・設計段階及び実施段階において、関

係者間でよく話し合っておくことが重要です。

3)漁船を使用する体験の許可

定置網体験や体験クルージングなど、漁船を使った体験プログラムは子どもたちにも人

気で、多くの漁村で実施されていますが、漁業者以外の利用者を漁船に乗せて体験活動を

行う場合には、「船舶安全法」、「船舶職員法」を遵守する必要があり、さらに遊漁船業に関

する体験を行う場合には、「遊漁船業の適正化に関する法律」が適用されます。また、水産

物の採捕行為を伴わない船舶使用には「海上輸送法」が関係します。

近年、子ども農山漁村交流プロジェクトなど教育旅行、グリーン(ブルー)ツーリズム

への社会的関心の高まり等を受けて、都道府県によっては、ニーズの高い漁業体験に対応

し、一定の講習、安全装備の整備、船舶の個別検査と登録、船主の遊漁船乗船履歴などを

条件として、独自の基準を制定しているケースがあります。詳細は、都道府県の担当窓口

に、直接ご確認ください。

○漁業体験や海の体験プログラム等で、一定人数以上の子供たちを乗せる場合な

ど、漁業権の問題や、船舶使用の内容に応じて許可を取得する必要が発生する

ケースがあります。詳細をお近くの都道府県等の窓口に問い合わせて確認する

ようにしてください。

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3-41

【漁船を使用する体験活動に関する主な法令等】

○船舶安全法に基づく船舶検査(船舶安全法に基づく船舶検査、法定設備等)

○船舶職員法に基づく有資格者の乗船義務(有資格者の操縦の義務付け)

○遊漁船業の適正化に関する法律(都道府県知事への届出、保険への加入等)

○海上輸送法(「不定期航路事業」として、国土交通大臣への許可・届出等)

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7.宿泊・生活

(1)民宿と民泊

子ども農山漁村交流プロジェクトには、「児童の生きる力を育む“ふるさと生活体験”の

すすめ」というサブタイトルがつけられているとおり、「農林漁家泊における故郷生活体験」

に大きな教育効果が期待されています。実際に、漁村体験を行った児童たちの感想におい

ても、「滞在先のお父さん、お母さんと一緒に食事をして楽しく語り合った」思い出が常に

アンケートの上位に上がることからも、生活体験の重要さが伺い知れます。

子ども農山漁村交流プロジェクトでは滞在先を、①農林漁家での宿泊(ホームステイ)、

②農林漁家民宿でのきめ細やかな対応が可能な少人数宿泊、の 2 つのタイプと定めていま

す。受入れモデル地区の中でも、すでに営業している民宿と、①で規定されている農林漁

家への民泊を組合わせ、一定の受け入れ人数を確保している地域などもあります。

民宿は、業として宿泊場所と食事を提供する施設であり、旅館業法上の簡易宿所施設に

該当するケースが多く、既に旅館業法上の面積、構造、設備を備え、食品衛生法上の飲食

店営業の許可を取得し、消防法や水質汚濁法等関連法規の基準もクリアしています。

一方、民泊は、グリーンツーリズムの社会的ニーズの高まり等に対応して 2003 年ごろ

から農林漁業体験民宿に関して通常の民宿の基準が緩和されたことを受け、許可を得た民

宿(規制緩和型農林漁家民宿)と分類することができます。しかし実際には、民泊につい

ての独自のガイドラインを都道府県が独自に設定しはじめたこともあり、旅館業法上の基

準を満たさない民泊が多く稼働しているというのが実情です。

安全・衛生面の基準を確保した宿泊施設を整備していく観点からも、これから受入れを検

討している地域においては、都道府県の指導を受けつつ、規制緩和型農林漁家民宿として

滞在施設を整備されることを検討してください。

【宿泊施設に関する法令等】

○旅館業法(客室面積、構造、防災設備、厨房の設備等)

○食品衛生法(飲食店営業の許可 ※素泊まり、料理体験の場提供は不要)

○消防法(消防施設・備品、避難経路等)

○建築基準法(避難経路、し尿浄化槽等)

○水質汚濁防止法(都道府県知事への届出)

○漁業・漁村体験において、漁家や漁師民宿への宿泊による、漁師の生活体験は、

子どもたちに強い印象と幸せな思い出を残す、人気のプログラムです。

○近年のグリーンツーリズム等の普及により、旅館業法上の許認可の基準を全国的

に見直す(規制緩和)の動きがみられますが、子どもたちの安全な生活体験を

確保するためにも、正しい知識を身に着けて、自治体等とも相談して決められ

たルールを守り、体験宿泊を進めるようにしてください。

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(2)食に関する安全・衛生管理

1)食品衛生の事故対策

漁村・漁業体験の大きな魅力のひとつは“漁食体験”です。とれたての鮮度の良い魚を

捌き、みんなで調理して食べる体験は、その味とともに、漁村の生活に対する深い印象を

子供たちに刻みます。

ただ、生鮮品である魚貝類を扱うだけに、衛生管理には、慎重に気を配らなければなり

ません。食中毒には、細菌性食中毒(サルモネラ菌、ブドウ球菌、ノロウイルスなど細菌

が原因)、科学性食中毒(食品への洗剤などの物質が混入することが原因)、自然毒性食中

毒(ふぐなどの時価調理による飲食が原因)などがありますが、全食中毒の約 9 割が細菌

性食中毒であるといわれています。

食中毒の予防には「付けない、増やさない、消滅する」という食中毒対策の 3 原則を守

り、食材や調理施設・用具の衛生管理を徹底するとともに、子どもたちには排便後や、調理

前の石鹸での手洗い(手首から爪の間まで)の励行とともに、タオルの共用も避けるなど

隅々まで気を配った対策が必要です。

行政や保険所が実施する食品衛生講習などに積極的に参加し、運営側の協議会担当者の

知識や意識の向上にも努めるようにしましょう。

【細菌性中毒の性質】 【食中毒対策の 3 原則】

2)児童の生活面のサポート

①持病のケア

②アレルギー

③生活面の留意事項

①温く、水分と養分がある環境だと

猛スピードで増殖する

②冷凍しても死なない(低温では

増殖が遅くなるだけ)

③過熱に弱い(つくられた毒は消え

ない)

①原因菌を付けない(食材を流水でよく

洗いラップ等で密封)

②原因菌を増やさない(調理後は早めに

食べる。温度管理の徹底)

③原因菌を消滅する(充分な加熱。調理

用具の殺菌)

○事故に備える安全管理と同様、食中毒に備える衛生管理も、事業取組の 終戦事

項です。

○特に漁業・漁村体験では、生の魚介類を扱い、調理体験など子どもたちが直接食

材に触れる機会も多いため、特に気温が上昇する春~秋のシーズンを中心とす

る衛生管理を徹底する必要があります。

○また、子どもたちの中には、食品アレルギーにより重大な症状を発症する場合が

あるため、受入れに先立ち、学校側の情報提供を受けるとともに、地域におい

ても関係者への徹底を怠らないよう注意しましょう。

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2)食物アレルギーへの対応

「食物アレルギー」を発症する子どもたちには多く、また症状が重い場合は、病院に搬

送して医師の処置を受けるケースも見られます。

日常生活とは違う滞在環境と食事を伴う漁村・漁業体験においては、受け入れ側の地域

は十分に注意しなければなりません。事前の受け入れ準備の段階で、学校を通じて、家族

に子どものアレルギー症状についての調査票に書き出してもらい、十分に調査を行い、食

事の準備に反映させることが必須です。

【アレルギーを起こしやすい食品および海産物の例】

卵(アヒル、ウズラも)、乳製品(チーズ、ヨーグルト、粉乳も)、小麦(小麦粉も)、

そば(そば粉も)、落花生(ピーナッツ、南京豆も)、えび(ザリガニ、シャコも)、

カニ、アワビ、イカ、いくら、サケ、サバ など

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8.漁村・漁業体験の責任と保険

1)想定される責任

あってはならないことではありますが、漁村・漁業体験中に事故が発生したり、他人に

損害を与えてしまった場合、現場の指導者や宿泊先の責任が問われ、損害賠償が発生する

場合があります。学校側の教育旅行では、利用者側で保険に加入していることが通常です

が、協議会としては、下表のような責任が発生するケースを想定し、公的な共済制度(宿

泊者傷害共済・指導者等賠償責任保険、漁船船主責任保険、遊漁船業者責任保険等)や民間

の賠償保険などに加入しておくことが必要です。

【漁村・漁業体験における事故原因別分類と責任】

事故の原因 事故と責任の概要

施設・設備等 施設・設備が安全性を欠いていたため、利用者が損害を受けた

→設置・管理者が、故意、過失の有無を問わず責任を負う

指導者。

行事主催者

指導者や行事主催者の故意や過失が原因で起こった事故

→指導者や行事主催者に責任がある

被害者自身 被害者に責任がある事故(偶然の事故、被害者の不注意等)

→指導者や行事主催者は責任を追及されない

第三者 第三者による故意または過失による事故

→第三者が責任を負う

天災 大雨、地震、津波などの天災による被害

→人的な責任を問えない場合がある

2)民間の賠償保険商品

禁煙、事故が発生した場合の賠償金額は大きくなってきています。上記のような公的共

済に加入している場合でも、より柔軟で協議会や構成員のニーズに合わせて追加できる民

間保険会社の賠償保険についても検討しておきましょう。

財団法人都市農山漁村交流活性化機構(まちむら交流機構)では、これらニーズにこた

えるために「グリーン・ツーリズム総合保障制度」を設定しています。

【グリーンツーリズム総合保障制度の概要】

○対象:まちむら交流機構の登録会員である受入協議会および会員事業者等

○種類:(A)宿泊賠償責任保険…農林漁家民宿・民泊の運営にかかわるリスク

(B)グリーン・ツーリズム参加者傷害保険…参加者の滞在中のケガや他人への賠償

(C)体験指導者賠償責任保険…指導者のミス等による賠償責任

○注意:海や船上における体験など、リスクの大きいプログラムは賠償の対象外

となる場合がありますので、事前に保険会社と相談してください。

○事故が起こってしまった場合に備えて、学校とは別に協議会としても賠償保険な

どに独自に加入しておくと安心です。保険の詳細については、プログラムの内

容や実施状況などに応じた保険商品を保険会社に直接確認してください。

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【参考】体験学習受入れのチェックリスト

~平成 12 年度文部科学省委託事業「子供の自然活動での安全対策充実事業 自然体験活動安全対策

ハンドブック」より(修学旅行安全対策協議会)~

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