第1部 第2節 健全な食生活に向けた取組 (1) 一般経済と食料 ...125 第1部...

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125 第2節 健全な食生活に向けた取組 ア 平成 22(2010)年度における経済と食料消費の動向 (景気は持ち直していたものの、東日本大震災の影響から弱い動きに) 我が国経済については、平成 21(2009)年春頃からみられた景気の持ち直しの動きが、 平成 22(2010)年度に入っても続いていたものの、同年秋頃から景気は一時的に足踏み 状態となりました。その後、平成 23(2011)年 1、2 月には景気は持ち直し基調に戻り ましたが、3 月の東日本大震災の影響により、生産活動は低下し、景気は弱い動きとなっ ています(表 1- 13)。 今後は、当面、東日本大震災の影響から弱い動きが続くと見込まれます。その後、生産 活動が回復していくのに伴い、海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、景気が持 ち直していくことが期待されますが、電力供給の制約やサプライチェーン立て直しの遅 れ、原油価格上昇の影響等により、景気が下振れするリスクが存在します。 (円高の進行) 欧米諸国での財政・金融環境の悪化等により、円高が進行しています。米ドル対円の為 替レートをみると、平成 20(2008)年 3 月、13 年ぶりに 1 ドル 90 円台となり、その後 再び 100 円台に戻りましたが、平成 20(2008)年末からは再び 90 円台で推移しました。 平成 21(2009)年 9 月には 80 円台となり、その後やや弱含みで推移し、平成 22(2010) 年 9 月に約 6 年半ぶりに行われた為替介入もあり一服したものの、11 月には 81.8 円まで 円高が進行し、その後、やや円安方向に推移しましたが、依然として厳しい水準で推移し ています(図 1 - 47)。 我が国は平成7(1995)年に大幅な円高を経験しました。その際は、輸入物価の下落 が物価安定に寄与した一方、輸入品との競合が激化するなかで労働コスト、資材・原材料 コストの縮減を目的とした企業の海外移転の動きがみられました。また、国内生産拠点で の非正規労働者の活用を促し、購買力低下の一因になるなど、その後の経済に影響を与え ました。 (1) 一般経済と食料消費の動向 平成18 (2006) 年度 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 4~6月 23 (2011) 1~3 10~12 国内総生産 名目成長率(%)実質成長率(%)1.5 2.3 1.0 1.8 ▲ 4.6 ▲ 4.1 ▲ 3.7 ▲ 2.4 ▲ 1.0 0.1 0.6 0.9 ▲ 1.1 ▲ 0.8 民間最終消費支出 実質(%) 1.4 1.4 ▲ 2.2 0.0 ▲ 0.2 0.8 ▲ 1.0 ▲ 1.3 ▲ 0.9 ▲ 0.6 設備投資 (%) 15.3 ▲ 4.7 ▲ 16.9 ▲ 19.7 ▲ 12.9 ▲ 1.5 4.8 実質輸出 実質輸入 経常収支 (兆円) 113.5 103.3 21.2 124.9 104.5 24.5 111.0 100.3 12.3 100.4 92.5 15.8 120.8 102.0 3.6 120.3 103.2 4.9 118.4 102.2 3.6 鉱工業生産指数 105.3 108.1 94.4 86.1 95.3 94.3 94.2 92.3 資料:内閣府「国民経済計算」、財務省「法人企業統計調査」、「国際収支統計」、日本銀行「実質輸出入」、経済産業省 「鉱工業指数」を基に農林水産省で作成 注:1) *は対前期増減率。平成 22(2010)年度の四半期は季節調整済の数値 2) 設備投資はソフトウェア投資を除く数値(保険・金融業を含まない全業種) 3) 実質輸出、実質輸入、鉱工業生産指数は平成 17(2005)年を 100 とした指数で、年度の数値は原指数、四半 期の数字は季節調整済指数 表1-13 主要経済指標の推移 7~9

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Page 1: 第1部 第2節 健全な食生活に向けた取組 (1) 一般経済と食料 ...125 第1部 第1章 第2節 健全な食生活に向けた取組 ア 平成22(2010)年度における経済と食料消費の動向

125

第1部

第1章

第2節 健全な食生活に向けた取組

ア 平成 22(2010)年度における経済と食料消費の動向

(景気は持ち直していたものの、東日本大震災の影響から弱い動きに)我が国経済については、平成 21(2009)年春頃からみられた景気の持ち直しの動きが、

平成 22(2010)年度に入っても続いていたものの、同年秋頃から景気は一時的に足踏み状態となりました。その後、平成 23(2011)年 1、2 月には景気は持ち直し基調に戻りましたが、3 月の東日本大震災の影響により、生産活動は低下し、景気は弱い動きとなっています(表 1 - 13)。今後は、当面、東日本大震災の影響から弱い動きが続くと見込まれます。その後、生産

活動が回復していくのに伴い、海外経済の改善や各種の政策効果などを背景に、景気が持ち直していくことが期待されますが、電力供給の制約やサプライチェーン立て直しの遅れ、原油価格上昇の影響等により、景気が下振れするリスクが存在します。

(円高の進行)欧米諸国での財政・金融環境の悪化等により、円高が進行しています。米ドル対円の為

替レートをみると、平成 20(2008)年 3 月、13 年ぶりに 1 ドル 90 円台となり、その後再び 100 円台に戻りましたが、平成 20(2008)年末からは再び 90 円台で推移しました。平成 21(2009)年 9 月には 80 円台となり、その後やや弱含みで推移し、平成 22(2010)年 9 月に約 6 年半ぶりに行われた為替介入もあり一服したものの、11 月には 81.8 円まで円高が進行し、その後、やや円安方向に推移しましたが、依然として厳しい水準で推移しています(図 1 - 47)。我が国は平成 7(1995)年に大幅な円高を経験しました。その際は、輸入物価の下落

が物価安定に寄与した一方、輸入品との競合が激化するなかで労働コスト、資材・原材料コストの縮減を目的とした企業の海外移転の動きがみられました。また、国内生産拠点での非正規労働者の活用を促し、購買力低下の一因になるなど、その後の経済に影響を与えました。

(1) 一般経済と食料消費の動向

平成18(2006)年度

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)4~6月

23(2011)1~3

10~12

国内総生産 名目成長率(%) *実質成長率(%) *

1.52.3

1.01.8

▲ 4.6▲ 4.1

▲ 3.7▲ 2.4

▲ 1.00.1

0.60.9

▲ 1.1▲ 0.8

民間最終消費支出 実質(%) * 1.4 1.4 ▲ 2.2 0.0 ▲ 0.2 0.8 ▲ 1.0

▲ 1.3▲ 0.9▲ 0.6

設備投資 (%) * 15.3 ▲ 4.7 ▲ 16.9 ▲ 19.7 ▲ 12.9 ▲ 1.5 4.8

実質輸出 実質輸入 経常収支 (兆円)

113.5103.321.2

124.9104.524.5

111.0100.312.3

100.492.515.8

120.8102.03.6

120.3103.24.9

118.4102.23.6

鉱工業生産指数 105.3 108.1 94.4 86.1 95.3 94.3 94.2 92.3

資料:内閣府「国民経済計算」、財務省「法人企業統計調査」、「国際収支統計」、日本銀行「実質輸出入」、経済産業省 「鉱工業指数」を基に農林水産省で作成 注:1) *は対前期増減率。平成 22(2010)年度の四半期は季節調整済の数値 2) 設備投資はソフトウェア投資を除く数値(保険・金融業を含まない全業種) 3) 実質輸出、実質輸入、鉱工業生産指数は平成 17(2005)年を 100 とした指数で、年度の数値は原指数、四半

期の数字は季節調整済指数

表1-13 主要経済指標の推移

7~9

Page 2: 第1部 第2節 健全な食生活に向けた取組 (1) 一般経済と食料 ...125 第1部 第1章 第2節 健全な食生活に向けた取組 ア 平成22(2010)年度における経済と食料消費の動向

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今回は、物価が下落しているなかでの円高であり、需要不足をさらに拡大させるなどにより、デフレの解消をますます難しくしています。また、生産コスト縮減という目的に加え、成長している海外市場への参入を目指した企業の海外移転の動きを強めています。

(厳しさが続く雇用情勢)雇用情勢については、平成 22(2010)年 10 ~ 12 月時点の完全失業率は 5.0%、有効

求人倍率も 0.57 の水準と一部持ち直しの動きもみられましたが、依然として厳しい状況にあります(表 1 - 14)。今後は、東日本大震災の影響が懸念されます。実質賃金指数も平成 22(2010)年 10 ~ 12 月に 95.1(平成 17(2005)年= 100)と依然として低水準にとどまっています。

また、急激な円高や景気の低迷により企業の採用抑制が続き、若者の就職難が一段と深刻化しています。平成 22(2010)年春に卒業した大学生の就職率は 91.8%で、前年から3.9 ポイント減少し、その減少幅は、調査が開始された平成 8(1996)年以降最も大きくなっています(図 1 - 48)。平成 23(2011)年春の卒業予定者就職内定率についても、2 月 1 日現在で 77.4%と前年同期よりも 2.6 ポイント減少しており、東日本大震災の影響もあって 4 月 1 日時点での就職率は前年よりさらに減少することが予想されます。また、平成 23(2011)年 3 月卒業予定の高校生の求人倍率は平成 22(2010)年 7 月時点で 0.67 倍と低水準になっています(図 1 - 49)。都道府県別にみると、高校生の求人倍率が 1 倍を上回ったのは東京都 2.23 倍、大阪府 1.40 倍、愛知県 1.21 倍等の 5 都府県にとどまり、一方、沖縄県 0.12 倍、青森県 0.21 倍、熊本県 0.22 倍等厳しい状況にある県もあります。

図1-47 米ドル対円の為替レートの推移

0

50

100

150

200

250

300

昭和55年(1980)

22(2010)

17(2005)

12(2000)

7(1995)

平成2(1990)

60(1985)

271.3

158.5

83.5 81.8

資料:日本銀行調べ

表1- 14 完全失業率、有効求人倍率、実質賃金指数の推移

平成 18(2006)年度

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22年(2010)4~6月

7~ 9 10~ 12

完全失業率(%) 4.1 3.8 4.1 5.2 5.2 5.1 5.0

有効求人倍率(倍) 1.06 1.02 0.77 0.45 0.50 0.54 0.57

実質賃金指数 99.8 98.7 96.4 95.0 96.7 96.9 95.1

資料:総務省「労働力調査」、厚生労働省「職業安定業務統計」、「毎月勤労統計調査」を基に農林水産省で作成 注: 1) 有効求人倍率は新規学卒者を除きパートタイムを含む数値 2) 平成 22(2010)年度の四半期は季節調整済の数値 3) 実質賃金指数は事業所規模5人以上、調査産業計の現金給与総額の指数(平成 17(2005)年= 100)

第2節 健全な食生活に向けた取組

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第1部

第1章

雇用者数についてみると、正規の職員・従業員では、平成 21(2009)年 4 ~ 6 月から対前年同期で減少が続いています。一方、非正規の職員・従業員では、平成 21(2009)年には 1 年間にわたり対前年同期で減少していたものの、平成 22(2010)年に入ると増加に転じています。

(物価は下落傾向)厳しい経済環境のなかで、物価は下落を続けています。企業物価指数(総平均)は、平

成 20(2008)年度までは上昇が続きましたが、翌年度に大幅に下落し、平成 22(2010)年度に入ってからはほぼ横ばいで推移しています(表 1 - 15)。食料品については、加工食品は緩やかに下落していたものの平成 22(2010)年 10 ~ 12 月以降上昇し、農林水産物は季節により変動はあるものの下落傾向で推移しています。輸入物価指数については、総平均は平成 20(2008)年度までは上昇を続けていたもの

の、平成 21(2009)年度に円高等により前年度比マイナス 19.1%と大きく低下し、平成22(2010)年度には上昇に転じています。食料品・飼料についても、平成 21(2009)年度に大きく低下しましたが、平成 22(2010)年 10 月以降は穀物を中心に上昇基調となっています。消費者物価指数(持家の帰属家賃を除く総合)については、平成 21(2009)年度では交通・

通信費、光熱費、平成 22(2010)年度では教育関係費(高校授業料等)、家具・家事用品等が下落したことにより、それぞれ前年度比マイナスになっています。食料については、平成 20(2008)年度に国際的な穀物価格高騰等により大きく上昇し 104.1(平成 17(2005)年= 100)となりましたが、その後緩やかな下落傾向にあります。品目別にみると、平成22(2010)年度以降は、春先の天候不順や夏の猛暑の影響のあった生鮮野菜・果物等を除いて下落傾向にあります。なお、平成 22(2010)年 7 月以降、穀物等の国際価格が高騰していますが、平成 23

(2011)年 3 月現在で、食用油等の国内卸売価格や配合飼料価格への影響はみられるものの、食料品の国内小売価格への影響は、コーヒーの価格の上昇等限定的なものとなっています。しかし、引き締まった穀物需給は継続していくと考えられることから、東日本大震災による影響とあわせて今後とも国内外の需給・価格の動向を注視していく必要があります。

平成18年(2006)3月卒

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

0

60

80

100

50

70

90

%95.3 96.3 96.9 95.7

91.885.8 87.7 88.7 86.3

80.0

77.4 79.6 81.6 80.5 73.1 77.468.8

65.8 68.1 69.2 69.962.5

57.6

4月1日現在

2月1日現在

12月1日現在

10月1日現在

平成18年(2006)3月卒

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

23(2011)

0.90

1.141.29

1.31

0.71

0

0.5

1.0

1.5

0.67

資料:文部科学省調べ 注:図中の 10 月 1日、12 月 1日は卒業の前年の日付を指す

資料:厚生労働省資料(平成 22(2010)年 7月末現在)を基に農林水産省で作成

 注:数字は卒業前年の 7月時点

図1-48 大学新卒者の就職内定率・就職率の推移

図1-49 高校新卒者の求人倍率の推移

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(家計の全体的な消費は横ばい、食料消費はやや下向き)消費者世帯の可処分所得は、実質ベースで平成 19(2007)年度以降減少を続けてきま

したが、平成 22(2010)年度に入ってからは前年より増加傾向で推移しています(表 1- 16)。また、平均消費性向はおおむね 7 割強となっています。消費支出については、平成 21(2009)年度は前年度比プラスとなっていましたが、平

成 22(2010)年度に入ると、4 ~ 6 月では医療費や交通費等の減少により対前期マイナスとなりました。また、7 ~ 9 月には、自動車等関係費や電気代の増加により、再びプラスに転じましたが、10 ~ 12 月には、家電エコポイントの付与期限が切れる前の家電製品の駆け込み需要等プラスの要因があったにもかかわらず、被服及び履物、交通・通信費等の減少によりマイナスとなっています。平成 23(2011)年 1 ~ 3 月には、自動車等関係費が減少したほか、東日本大震災の影響もありパック旅行費等の教養娯楽サービスや外食等の減少により、マイナスとなっています。

15 企業物価指数、輸入物価指数、消費者物価指数の推移表1-平成 18(2006)年度

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)4~ 6月

23(2011)1~ 3

7~ 9 10~12

企業物価指数

総平均 102.52.0

104.92.3

108.23.2

102.6▲ 5.2

103.00.2

102.8▲ 0.1

103.10.9

加工食品 100.40.4

101.91.6

107.55.4

106.8▲ 0.7

106.1▲ 1.4

106.1▲ 0.7

109.72.9

農林水産物 98.4▲ 0.7

97.3▲ 1.1

98.20.9

96.2▲ 2.0

96.80.7

96.00.1

95.1▲ 2.0

輸入物価指数

総平均 115.710.7

124.98.0

125.40.4

101.5▲ 19.1

110.312.2

104.53.2

105.13.6

食料品・飼料 110.38.4

130.118.0

126.4▲ 2.8

107.5▲ 15.0

108.5▲ 0.9

105.2▲ 1.2

110.54.8

消費者物価指数

総合 100.30.3

100.70.4

102.01.3

100.1▲ 1.9

99.7▲ 1.1

99.6▲ 0.8

100.10.2

生鮮食品を除く総合 100.10.1

100.40.3

101.61.2

100.0▲ 1.6

99.3▲ 1.2

99.1▲ 1.0

99.4▲ 0.5

食料 100.50.7

101.10.6

104.13.0

103.2▲ 0.9

103.5▲ 0.6

103.6▲ 0.2

103.61.3

穀類 ▲ 1.4 0.5 7.0 ▲ 1.5 ▲ 3.0 ▲ 2.7 ▲ 3.3魚介類 3.0 0.4 2.6 ▲ 2.3 ▲ 2.1 ▲ 1.1 ▲ 0.5肉類 1.2 2.3 3.5 ▲ 2.1 ▲ 2.5 ▲ 1.4 ▲ 0.9乳卵類 ▲ 1.1 ▲ 0.4 5.7 0.2 ▲ 1.5 ▲ 0.8 ▲ 0.8生鮮野菜 2.8 1.5 ▲ 0.3 ▲ 0.4 11.2 8.4 23.3生鮮果物 9.5 ▲ 0.7 ▲ 3.6 ▲ 5.6 4.3 10.6 21.7油脂・調味料 ▲ 1.2 1.2 4.6 ▲ 1.6 ▲ 1.4 ▲ 1.0 ▲ 2.2菓子類 0.0 0.8 6.5 1.7 ▲ 1.3 ▲ 1.9 ▲ 1.1調理食品 0.6 0.8 4.0 ▲ 0.5 ▲ 2.1 ▲ 1.7 ▲ 0.8飲料 ▲ 1.9 ▲ 0.8 ▲ 0.4 ▲ 2.8 ▲ 1.9 ▲ 1.9 ▲ 1.7酒類 ▲ 1.0 ▲ 0.8 2.0 ▲ 1.4 ▲ 1.4 ▲ 1.5 ▲ 1.5外食 0.7 0.7 1.9 0.4 ▲ 0.1 0.0 0.0

加工食品 ▲ 0.2 0.5 4.6 ▲ 0.6 ▲ 2.1 ▲ 2.0 ▲ 1.5

104.21.7

109.83.595.8▲ 0.1

113.07.6

119.510.3

99.50.199.1▲ 0.2102.90.2

▲ 3.5▲ 0.3▲ 0.30.05.515.7▲ 2.0▲ 0.5▲ 0.1▲ 1.7▲ 1.10.1

▲ 1.1

資料:総務省「消費者物価指数」、日本銀行「企業物価指数」を基に農林水産省で作成 注: 1) 上段は平成 17(2005)年=100 とした指数、下段は対前年度増減率(四半期は対前年同期増減率)。消費者物

価指数のうち食料の品目については対前年度増減率(四半期は対前年同期増減率) 2) 消費者物価指数の総合は、「持家の帰属家賃を除く総合」である。   3) 消費者物価指数の加工食品とは、財・サービス分類の「食料工業製品」であり、調理食品、酒類等を含んでいる。

第2節 健全な食生活に向けた取組

Page 5: 第1部 第2節 健全な食生活に向けた取組 (1) 一般経済と食料 ...125 第1部 第1章 第2節 健全な食生活に向けた取組 ア 平成22(2010)年度における経済と食料消費の動向

129

第1部

第1章

食料消費の動向をみると、1 世帯当たり実質食料消費支出は、平成 20(2008)年度までの間減少を続け、平成 21(2009)年度は横ばいとなりました(表 1- 17)。平成 22(2010)年度は、菓子類、調理食品、飲料等は前年度に比べ増加したものの、天候不順や猛暑の影響で果物、野菜・海藻が大きく減少したことに加え、魚介類、米、肉類等も減少し、食料全体として横ばいで推移している状況です。なお、平成 22(2010)年夏には、全国で記録的な猛暑となりましたが、同年 8 月の食

料消費支出をみると、梅干し、うなぎのかば焼き、アイスクリーム・シャーベット、ゼリー、飲料等の支出が大きく増加した一方、牛肉、米、生鮮魚介、食パン等が減少しています(図 1 - 50)。

(単位:%)

平成 18(2006)

年度

19(2007)

20(2008)

21(2009)

22(2010)

食料 ▲ 0.8 ▲ 0.3 ▲ 2.7 0.1 0.2

穀類 0.0 1.2 ▲ 3.8 1.6 0.3

米 ▲ 1.7 2.0 ▲ 0.7 ▲ 1.7 ▲ 0.8

パン 1.9 ▲ 0.4 ▲ 8.5 5.4 0.7

めん類 ▲ 0.3 1.2 ▲ 1.3 2.4 1.3

魚介類 ▲ 3.6 ▲ 1.8 ▲ 5.8 ▲ 0.5 ▲ 3.0

肉類 ▲ 0.4 0.2 0.0 ▲ 1.0 ▲ 0.8

乳卵類 ▲ 1.6 ▲ 1.3 ▲ 5.4 1.2 0.0

野菜・海藻 ▲ 2.0 ▲ 0.2 ▲ 2.5 ▲ 0.4 ▲ 4.7

果物 ▲ 9.0 0.7 3.0 2.1 ▲ 9.2

油脂・調味料 1.4 1.1 ▲ 0.9 2.4 0.9

菓子類 2.2 0.0 ▲ 3.1 0.2 5.8

調理食品 0.0 ▲ 3.5 ▲ 4.9 0.6 3.7

主食的調理食品 0.4 0.1 ▲ 2.3 0.4 2.6

他の調理食品 ▲ 0.4 ▲ 5.6 ▲ 6.6 0.6 4.8

飲料 2.0 2.4 ▲ 2.8 3.8 6.6

酒類 ▲ 1.3 2.7 ▲ 0.3 ▲ 3.5 1.6

外食 0.1 ▲ 0.2 ▲ 2.0 ▲ 0.8 0.9

資料:総務省「家計調査」(全国・二人以上の世帯)、「消費者物価指数」を基に農林水産省で作成  注:数値は前年度比

表1- 17 食料消費支出の対前年度実質増減率の推移

表1- 16 可処分所得、消費支出の対前年度実質増減率、平均消費性向の推移平成 18(2006)年度

22(2010)4~6月

23(2011)1~3

19(2007)

20(2008)

21(2009) 7~9

可処分所得 (%) 1.0 ▲ 0.8 ▲ 1.6 ▲ 1.2 2.1 0.5 1.5消費支出  (%) ▲ 1.6 0.8 ▲ 2.4 1.1 ▲ 0.3 0.9 ▲ 1.5平均消費性向(%) 72.0 73.6 73.3 74.7 71.5 78.7 63.8

▲ 1.7▲ 3.583.4

資料:総務省「家計調査」 注:消費支出は全国・二人以上の世帯、可処分所得及び平均消費性向は全国・二人以上の世帯のうち勤労者世帯の結

果による。四半期の数値は対前年同期実質増減率

10~12

Page 6: 第1部 第2節 健全な食生活に向けた取組 (1) 一般経済と食料 ...125 第1部 第1章 第2節 健全な食生活に向けた取組 ア 平成22(2010)年度における経済と食料消費の動向

130

(消費者の食に対する経済性志向は継続)消費者の食に対する志向をみると、平成 19(2007)年末に発生した中国製冷凍ギョー

ザ事件等を受け、平成 20(2008)年に高かった安全志向(食の安全に配慮したい)は、食品メーカーや流通業者の様々な取組により、消費者の食に対する不安感が沈静化してきたことから低下しています(図 1 - 51)。一方で、経済性志向(食費を節約したい)は、平成 22(2010)年 12 月では 1 月から

7 ポイント下落しましたが、景気後退の影響が引き続きあり、37%と依然高くなっています。また、健康志向(健康に配慮したい)、簡便化志向(料理や後片付けの手間を省きたい)はさらに高まっており、それぞれ平成 20(2008)年 12 月の 33%、20%から平成 22(2010)年 12 月には 38%、28%となっています。

図1-50 猛暑の影響で消費支出が大きく増減した食料品等(平成 22(2010)年 8月)

-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40

梅干しうなぎのかば焼き

アイスクリーム・シャーベットゼリー飲料

乾うどん・そばビール

発泡酒・その他の酒等

34.930.1

21.516.4

14.29.89.5

5.9▲ 4.8 食パン

中華そば(外食)生鮮魚介米牛肉すし(外食)他のめん類(外食)

▲ 7.1▲ 7.3

▲ 9.9▲ 13.3▲ 13.7▲ 14.4

資料:総務省「家計調査」を基に農林水産省で作成 注:1) 「他のめん類」は、うどん、日本そば、中華そば以外のめん類 2) 数値は全国・二人以上の世帯の実質消費支出の前年同月比

図1-51 食に対する消費者の志向の変化(複数回答)

資料:(株)日本政策金融公庫「第2回消費者動向調査」 注:全国の 20~60 歳代の男女を対象としたインターネット調査(回答総数2千人)

0

10

20

30

40

50%

32.733.5

健康志向 経済性志向 手作り志向 簡便化志向 安全志向 国産志向 ダイエット志向

38.134.6

43.2

36.5

29.1

39.5

33.1

20.1

平成 22(2010)年 12月

平成 20(2008)年 12月

平成 22(2010)年 1月

23.528.0

31.7

15.6 17.319.7

12.114.1

8.312.1

9.1

第2節 健全な食生活に向けた取組

Page 7: 第1部 第2節 健全な食生活に向けた取組 (1) 一般経済と食料 ...125 第1部 第1章 第2節 健全な食生活に向けた取組 ア 平成22(2010)年度における経済と食料消費の動向

131

第1部

第1章

イ 食料消費の中長期的な動向

(食料消費は減少傾向)消費支出の中長期的な動向について、全国・二人以上の世帯における消費水準指数 1(昭

和 56(1981)年= 100)の推移でみると、平成 4(1992)年の 115.6 まで上昇しましたが、その後低下し平成 21(2009)年では 106.8 となっています(図 1 - 52)。一方、食料については、昭和 56(1981)年から平成 2(1990)年頃まで横ばいで推移し、その後ほぼ一貫して低下しており、平成 21(2009)年には 84.2 となっています。

(米の消費が大きく減る一方、畜産物、油脂類の消費は増加)1 人当たりの品目別消費量(供給純食料)の変化について、昭和 35(1960)年度を100 とした指数でみると、米は、平成 21(2009)年度には 51 と半減しています(図 1- 53)。一方で、肉類・鶏卵は 465、牛乳・乳製品 382、油脂類 305 と大きく増加しています。なお、平成 12(2000)年度以降は、すべての品目において横ばいないし減少傾向で推移しています。

1 消費支出額から世帯人員数、1か月の日数、物価水準の変動、世帯主の年齢等の影響を除去して作成した指数

昭和35年度(1960)

45(1970)

55(1980)

平成2(1990)

12(2000)

21(2009)(概算)

肉類・鶏卵 牛乳・乳製品

油脂類 果実

野菜

魚介類

100

50

200

400

指数

464.9382.0304.7

175.4

107.992.0

50.9

資料:農林水産省「食料需給表」 注: 1) 縦軸は基準(100)からの1/2倍と 2倍の値の距離を同じにするために基数を2とした対数目盛を使用している。 2) 国民 1人 1年当たりの消費量は、国民 1人当たりの供給純食料

図1-53 1人当たりの品目別消費量の推移(昭和35(1960)年=100)

資料:総務省「家計調査」を基に農林水産省で作成

80

90

100

110

120指数

115.6

総合

食料 84.2

106.8

昭和56年(1981)

21(2009)

17(2005)

12(2000)

7(1995)

平成2(1990)

60(1985)

図1-52 消費水準指数の推移(昭和 56(1981)年=100)

Page 8: 第1部 第2節 健全な食生活に向けた取組 (1) 一般経済と食料 ...125 第1部 第1章 第2節 健全な食生活に向けた取組 ア 平成22(2010)年度における経済と食料消費の動向

132

(食の外部化、簡便化が進展)近年、外食産業の市場規模は縮小しているものの、中食の市場規模の拡大により、食の

外部化率 1 は 42%程度と横ばいで推移しています。このようななか、世帯属性別に食料消費支出に占める調理食品と外食の割合をみると、特に 35 歳未満、35 歳以上 59 歳未満の男性単身世帯、35 歳未満の女性単身世帯では過半を占めるとともに、60 歳以上の単身世帯でも男性 41%、女性 26%と、二人以上の世帯よりも高い割合となっています(図 1- 54)。これは、時間がかからない、つくる手間がかからないといった理由によるものと考えられます。JA 総合研究所の試算によると、単身者の 1 食当たりの単価は、内食では 264 円、中食では 372 円 2 でその差は 110 円となっています。内食では、献立を考えたり調理や後片付けをしたりする必要があり、また、余りものが出やすいといった面があります。単価が多少高くても、内食の手間・負担感を考慮すると、単身世帯では中食は魅力的な選択肢であるといえます。なお、近年においては、調理食品のなかでも、弁当、おにぎり、調理パンといった主食

的食品の消費が特に増加しています。また、調理食品のうち支出割合の高い冷凍食品については、全体の生産量は平成 19(2007)年を境に緩やかに減少しているものの、上位 3品目であるコロッケ、うどん、ピラフ・炒飯類では安定的に推移しています。

1(財)食の安全・安心財団附属機関外食産業総合調査研究センターによる推計 食の外部化率=(外食産業市場規模+料理品小売業市場規模)/(家計の食料・飲料・たばこ支出-たばこ販売額+外食産業市場規模)

食の外部化は[用語の解説]を参照 外食産業と中食産業の市場規模については第 3節(1)食品産業の動向と役割(外食産業の市場規模は縮小する一方、中食市場は緩やかに拡大)を参照

2 濱田亮治、和泉真理『食料消費の変動分析』(JA総研研究叢書 3、2010.9)。1食当たりの単価は、内食については「2008年家計調査」の 1週間当たりの家庭内調理素材等の支出金額を 1週間当たりの内食の食数で除したものです。中食については「調理食品」の支出金額を中食の食数で除したものです。内食・中食の食数は、JA 総合研究所「米の消費行動に関する調査」「畜産物等の消費行動に関する調査」で算出されたもので、単身者の週 21食の内訳は、内食12.8 食、外食 2.8 食、中食 3.6 食、欠食 1.8 食となっています。

資料:総務省「家計調査」を基に農林水産省で作成 注: 1) 生鮮食品は米、生鮮魚介、生鮮肉、牛乳、卵、生鮮野菜、生鮮果物、加工食品は生鮮食品、調理食品、外食、

飲料、酒類以外すべて  2) 生鮮食品の割合及び調理食品と外食の割合は食料消費支出額全体に占める割合

0

10

20

30

40

50

60

70%

図1-54 世帯員1人1か月当たりの食料消費支出の種類別割合(平成22(2010)年)

66

58

10

40

23

3439

22

37

23

34

27

30

29

34

24

37

2226

5

35歳未満

35~59歳

60歳以上

58

10

41

24

調理食品と外食の割合

生鮮食品の割合

35歳未満

35~59歳

60歳以上

30歳未満

30歳代

40歳代

50歳代

二人以上の世帯単身世帯(女性)単身世帯(男性)

60歳代

70歳以上

第2節 健全な食生活に向けた取組

Page 9: 第1部 第2節 健全な食生活に向けた取組 (1) 一般経済と食料 ...125 第1部 第1章 第2節 健全な食生活に向けた取組 ア 平成22(2010)年度における経済と食料消費の動向

133

第1部

第1章

(外食や加工食品を中心に低価格化が進行)景気の低迷が続いているなか、外食における客単価が低下傾向にあります。ディナーレ

ストランでは平成 17(2005)年以降緩やかに低下、ファミリーレストランでも平成 20(2008)年以降低下、ファストフードでは平成 14(2002)年までに大きく下がり、その後も低い水準で推移しています(図 1 - 55)。また、食料品の価格についても、平成 12(2000)年と平成 21(2009)年の品目別の

消費者物価指数を比較すると、小麦を原材料にしたスパゲッティ、パン、即席めん等では上昇していますが、米、納豆、ぎょうざ、ヨーグルト、もち、おにぎり、冷凍調理ピラフ、豆腐等多くの品目で低下しています(図 1 - 56)。

図1-56 10 年間で価格の上がったもの、下がったもの

資料:総務省「消費者物価指数」を基に農林水産省で作成 注:1) 平成 12(2000)年と平成 21(2009)年との比較   2) 全 191 品目を対象

品目数

0

5

10

15

20

25

30下がったもの

具体例

加工品

10

~▲10% ▲10 ~▲5% ▲5~▲2% ▲2~ 0% 0 ~ 2% 2 ~ 5% 5 ~ 10% 10%~

上がったもの

25

7 9 8

14

3

10 5

12

3

13

6

19 19

28

生鮮品

・りんご・国産米・納豆・ミネラル ウォーター・炭酸飲料

・レタス・もやし・ぎょうざ・ヨーグルト・もち

・だいこん・おにぎり・牛乳・砂糖・冷凍調理 ピラフ

・いよかん・豆腐・キムチ・しょうゆ・シュー クリーム

・きゅうり・生しいたけ・ゆでうどん・粉ミルク・マヨネーズ

・すいか・メロン・プリン・油あげ・焼酎

・みかん・ハム・あんパン・調理パン・即席めん

・バナナ・小麦粉・食パン・バター・スパゲッ ティ

80

90

100

110指数

平成12年(2000)

13(2001)

14(2002)

15(2003)

16(2004)

17(2005)

18(2006)

19(2007)

20(2008)

21(2009)

101.0

96.7

91.0

ディナーレストラン

ファミリーレストラン

ファストフード

資料:(社)日本フードサービス協会資料を基に農林水産省で作成 注:業種は利用形態、提供内容、客単価で区分される。具体的には、ファストフード(イートインあるいはテイク

アウト、食事中心、客単価やや低い)、ファミリーレストラン(イートイン中心、食事中心、客単価中程度)、ディナーレストラン(イートイン中心、食事中心、客単価高い)

図1-55 外食産業の業種別客単価の推移(平成 12(2000)年=100)

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134

1 社会保障・人口問題研究所の出生中位(死亡中位)推計による

(食料の市場規模は長期的にみれば縮小が懸念)農林水産省(農林水産政策研究所)の推計によると、平成 37(2025)年の人口は平成

17(2005)年比で 6.7%減とされている 1 なかで、平成 37(2025)年家計の食料消費支出額からみた市場規模は、実質で平成 17(2005)年の 73.6 兆円とほぼ同水準を維持する見込みです(図 1 - 57)。これは、高齢化に伴う世代

交代と単身世帯の増加により、家計において、生鮮食品への支出割合が平成 17(2005)年の 27%から平成 37(2025)年に 21%に低下する一方で、加工度の高い調理食品の支出割合が 12%から 17%に高まると見込まれることが主な要因となっています。しかし、その後、より長期

的にみれば、人口減少や高齢化の進行に伴い市場規模の縮小が懸念されます。

図1-57 今後の食料支出の見通し

資料:農林水産政策研究所資料

0

20

40

60

80

0

5

10

15

20

25

30%

兆円73.6

12.012.0

平成17(2005)年

26.8

72.2

37(2025)

16.6

21.3

生鮮食品への支出割合(右目盛)

調理食品への支出割合

市場規模

(右目盛)

そう菜売り場の様子

第2節 健全な食生活に向けた取組