第1章 道路設計...道-1-1 第1章 道路設計 第1節 道路設計 1 設計計画一般...

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道-1-1 第1章 道路設計 第1節 道路設計 1 設計計画一般 道路の設計は、現況の路線が抱える問題を解決しようとするところから始まり、最終的には 道路工事が完了して、一般に供用が開始されて一応の終わりを迎えることとなる。その後は良 好な状態を保つための維持管理が行われていくこととなる。 ここでは道路の計画の始まりから供用開始までの流れを示し、各段階での様々な設計や各種 の調査および協議等の手続き等の一例を示す。 道路の設計は、まず道路改築(整備)の必要性を検証することから始まり、概略ルートの選 定、基本的な構造の検討、用地幅の決定、工事実施のための詳細な設計、工事発注のための設 計書の作成と、概ねこのような手順をたどり、これと並行する様に関係先との協議及び、事業 化に向けての手続き等が行われる。 設計の各段階ではそれぞれの時点での課題と問題点の抽出を行い、各種の検討や検証を行っ てよりよい結果へと導くことが肝心である。そのためには、環境や地質等の各種調査の実施や、 関係先との下協議などを効率よく計画に反映させる必要がある。 道路の設計は、その内容により大きくふたつに分類される。ひとつは道路の目的である人や 車の通行等に供用される路面上の部分の設計であり、もうひとつはその路面上の空間を安全に 確保するための構造部分の設計である。 路面の設計は、経済性に配慮しながらも交通の安全性や快適性、あるいは設定されたサービ スの水準を満足するよう、「道路構造令」に規定される、道路の幅員や線形等「道路の幾何構造」 の設計(路面の設計)であり、また、路面を支えるための構造部分の設計とは、各種の示方書 や指針類によって設計される、道路土工構造や橋梁構造、トンネル構造などの設計である。 1-1 道路設計の種類及び目的 (1) 道路概略設計 空中写真測量地形図を用いて路線選定を行うもので、平面設計、縦断設計、主要構造物 計画を行い、概略工事費を積算し路線の比較検討を行うものとする。 (2) 道路予備設計 空中写真測量地形図又は、実測図に基づき、概略設計で与えられた計画線により、図上 で平面線形を確定して、縦横断の設計を行い、構造物については概略形式及び寸法を決定 し、概略工事費の積算を行い、技術的、社会的、経済的判定を行うものとする。 (3) 道路詳細設計 空中写真測量地形図又は、実測平面図、縦横断図に基づいて道路工事に必要な縦横断の 設計及び小構造物の設計を行い、各工種別数量計算を行うものとする。

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Page 1: 第1章 道路設計...道-1-1 第1章 道路設計 第1節 道路設計 1 設計計画一般 道路の設計は、現況の路線が抱える問題を解決しようとするところから始まり、最終的には

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第1章 道路設計

第1節 道路設計 1 設計計画一般

道路の設計は、現況の路線が抱える問題を解決しようとするところから始まり、 終的には

道路工事が完了して、一般に供用が開始されて一応の終わりを迎えることとなる。その後は良

好な状態を保つための維持管理が行われていくこととなる。

ここでは道路の計画の始まりから供用開始までの流れを示し、各段階での様々な設計や各種

の調査および協議等の手続き等の一例を示す。

道路の設計は、まず道路改築(整備)の必要性を検証することから始まり、概略ルートの選

定、基本的な構造の検討、用地幅の決定、工事実施のための詳細な設計、工事発注のための設

計書の作成と、概ねこのような手順をたどり、これと並行する様に関係先との協議及び、事業

化に向けての手続き等が行われる。

設計の各段階ではそれぞれの時点での課題と問題点の抽出を行い、各種の検討や検証を行っ

てよりよい結果へと導くことが肝心である。そのためには、環境や地質等の各種調査の実施や、

関係先との下協議などを効率よく計画に反映させる必要がある。

道路の設計は、その内容により大きくふたつに分類される。ひとつは道路の目的である人や

車の通行等に供用される路面上の部分の設計であり、もうひとつはその路面上の空間を安全に

確保するための構造部分の設計である。

路面の設計は、経済性に配慮しながらも交通の安全性や快適性、あるいは設定されたサービ

スの水準を満足するよう、「道路構造令」に規定される、道路の幅員や線形等「道路の幾何構造」

の設計(路面の設計)であり、また、路面を支えるための構造部分の設計とは、各種の示方書

や指針類によって設計される、道路土工構造や橋梁構造、トンネル構造などの設計である。

1-1 道路設計の種類及び目的

(1) 道路概略設計

空中写真測量地形図を用いて路線選定を行うもので、平面設計、縦断設計、主要構造物

計画を行い、概略工事費を積算し路線の比較検討を行うものとする。

(2) 道路予備設計

空中写真測量地形図又は、実測図に基づき、概略設計で与えられた計画線により、図上

で平面線形を確定して、縦横断の設計を行い、構造物については概略形式及び寸法を決定

し、概略工事費の積算を行い、技術的、社会的、経済的判定を行うものとする。

(3) 道路詳細設計

空中写真測量地形図又は、実測平面図、縦横断図に基づいて道路工事に必要な縦横断の

設計及び小構造物の設計を行い、各工種別数量計算を行うものとする。

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(4) 橋梁予備設計

地形図、及び地質図、土質図・土質解析等を用いて既存の橋梁各種データを参考にして

も適当と思われる橋梁上下部形式、基礎形式スパン割を決定するもので、このため考えられ

る橋梁上下部基礎の組合せのうち、 良のもの数案にしぼって概略工事費を積算し、技術的

見地から比較検討を行うものとする。

(5) 橋梁詳細設計

予備設計の結果に基づき構造主体、及び附帯構造物全般の形状、寸法、材料の種類、施工

方法等、必要な全設計を行うものとする。

(6) インターチェンジ予備設計

インターチェンジ予備設計は、空中写真地形または実測図に基づき、与えられた位置に形

式の比較検討を行い、決定された形式により図上で平面線形を確定した縦横断の設計を行う。

構造物については概略形式及び寸法を決定し概略工事費の積算を行い、技術的、社会的、経

済的判断を行うものとする。

(7) インターチェンジ詳細設計

予備設計に基づき道路工事に必要な縦横断の設計及び小構造物の設計を行い、各工種別数

量計算を行うものとする。

(8) トンネル詳細設計

空中写真地形図又は実測図、地質図、土質図、土質解析等を用いて坑門、内空断面等施工

に必要な施設の設計及び施工方法等の工事に必要な全設計を行うものとする。尚、概略工事

費については施工方法等の検討結果に基づいて積算するものとする。

(9) 設計事前調査

設計上の事前調査や関係機関との事前協議のうち、用地幅に関係するような基本事項その

他については実施設計作成の時点までに済ますようにすべきであるが、主なる事前調査をあ

げると次の如きものがある。

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表1-1

区 分 調査事項 設計への利用 摘 要

交 通 量

現在及び将来交通量 車道幅員、舗装厚

交差点の方向別交通量 交差点の設計 公安委員会と協議

歩行者数・学校数・自転車数 路肩・歩道・自転車歩行者通行帯の幅

員、横断歩道橋の必要性及び幅員など

バス停 バス停の必要性 バス業者、公安委員

会、陸運局と協議

関連事業

計 画

関連都市計画、沿道の状況及

び発展性

路肩・歩道・自転車歩行者通行帯の幅

員、道路の高さ(FH)、用地幅、側

道の必要性と幅員、交差点の設計など

地 質

軟弱地盤の地質及び高盛土

箇所の地盤地質

地盤処理工法、盛土工法、盛土の

FH、高架橋の必要性

高切土箇所の土質、土取場の

土質

切土法面の勾配、法面処理工法、擁壁

の構造、盛土法面勾配及び法面処理法

構造物の基礎地質 基礎工法及び杭長の決定

橋梁スパン割及び工種決定

路床土設計 CBR 舗装厚、路床土改良工法

路盤材料 路盤工種及び厚さ なるべく現地材料

トンネル地質 トンネル計画、工法、覆工厚

水 理

降雨強度、集水面積、用排水

路の系統、構造、管理者

側溝及び排水溝の大きさ

水路付替の構造、管理方法 管理者との協議

河川の計画高水位、計画法

線、

既往 大水位

橋梁のFH、延長、スパン割

河側擁壁の構造、道路 FH

湛水位 道路FH、擁壁の高さ、避溢橋の延長

など

海岸満潮位、波浪高 海岸擁壁・根固・消波工

地下水位、湧水 法面構造、地下排水、舗装工種、FH 管理者との協議

環 境

騒音、振動、排ガス、日照、

その他環境問題が予想され

る箇所

道路の位置、道路構造への対応

関 連 道

取付道路の幅員、交通量管理

取付及び付替工法(平面・立体・統廃

合、交差点処理など)、管理方法

跨道橋の橋長、クリアランス、FH

管理者との協議

鉄 道 線増計画、電化計画 跨線橋、跨道構の橋長、クリアランス、

FH 鉄道と協議

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1-2 道路計画から管理までの手順

(下記の国土交通省の手順を参考に事業を進める。)

図1-1

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図1-2

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図1-3

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図1-4

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1-3 設計・業務内容

道路および橋梁設計は下記の項目内容を標準とする。

(1) 道路設計業務内容

設計範囲

項 目

概 略 設

1 /10,000 1 /5,000

計 画 概 要 書 ルート選定の経過概要、設計施工上の特筆すべき問題点および結

論を記述する。

設 計 計 算 書

平 面 図

・中心線、測点(原則として 200

m 間隔)のみ記入する。

・平面線形要素

(単曲線を使用する)

・計画すべきトンネル、橋梁の

名称及び延長を記入する。

・計画線に関する国道、都道府

県道、都市計画道路、高速自

動車道路等有料道路その他重

要 な 道 路 を 記 入 す る 。

・中心線、測点(原則として 100

m 間隔)、路肩線、法先線等に

より道路の形状をわかりや

すく記入する。

・平面線形要素

(単曲線を使用する)

・計画すべきトンネル、橋梁そ

の他主要な構造物の名称及

び延長を記入する。

・計画線に関する国道、都造府

県道、都市計画道路、高速自

動車道路等有料道路その他

重 要な道路を記入する。

縦 横 断 面 図

・縦断図は 200m ピッチ以下と

し勾配を記入する。

・横断面図は縮尺 1 /200~1

/500 で問題箇所毎に作成

し、平面図にはりつける。

・縦断図は 100m ピッチ以下と

し、主要な線形諸元を記入す

る。

・横断面図は縮尺 1 /200~1

/500 で断面変化点及び問

題箇所毎に作成し平面図に

はりつける。

構 造 物 図 主要構造物の形状、寸法を記入する。

標 準 断 面 図 土 工 定 規 図

表1-2

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計 予 備 設 計 詳 細 設 計

1 /2,500

線形設定の経過概要、特殊な構

造物の設計を行った場合その計

画意図、その他特筆すべき事項

を記述する。

構造主体の形式、寸法を選定し

うる程度の計算(図集適用可能

なものは不要)

構造物の形式、寸法を選定しう

るための計算(図集適用可能な

ものは不要)

・中心線、測定(原則として 50

m 間隔)、路肩線、法先線等に

より道路の形状をわかりやす

く記入する。

・平面線形要素

(曲線緩和区間にはクロソイ

ド曲線を使用する)

・計画すべきトンネル、橋梁そ

の他主要な構造物の位置、延

長名称を記入する。

・計画線に関する国道、都道府

県道、都市計画道路、高速自

動車道路等有料道路その他重

要な道路を記入する。

・中心線、測定(原則として 20

m 間隔)、路肩線、法先線、中

央分離帯、歩道等により道路

の形状をわかりやすく記入す

る。

・平面線形要素

(曲線緩和区間にはクロソイド

曲線を使用する)

・構造物の形式、位置、寸法名

称等を概略設定する。

・計画線に関する国道、都道府

県道、都市計画道路、高速自

前車道路等有料道路その他

重要な道路を記入する。

・中心線、測点(原則として 20

m 間隔)、路肩線、法先線、中

央分離帯、歩道等により道路

の形状をわかりやすく記入

する。

・平面線形要素

(曲線緩和区間にはクロソ

イド曲線を使用する)

・構造物の形式、位置、寸法等

を箇所ごとに設定する。

・縦断図は 50m ピッチ以下とし、

主要な線形諸元を記入する。

・横断面図は縮尺 1 /200~1

/500 で断面変化点及び問 題

箇所ごとに作成し平面図に張

り付ける。

・縦断図は 20m ピッチ以下とし、

主要な線形諸元を記入する。

・横断面図は縮尺 1 /100 で各

測点ごとに規定断面を記入す

る。

・縦断図は 20m ピッチ以下とし、

必要箇所には必要な諸元をす

べて記入する。

・横断面図は縮尺 1 /100 で各

測点及び必要箇所はすべてに

規定断面を記入する。

主要構造物の形状、寸法を記入

する。

構造物が施工できる現状、寸法

を記入する。

土 工 定 規 図

構 造 物 断 面 図

土 工 定 規 図

構 造 物 断 面 図

表1-3

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表1-4

設計範囲

項 目

概 略 設 計 予 備 設 計 詳 細 設 計

参 考 図

主要交差点処理検討図

(1 /10,000 については検

討不要)

工事目的物以外の間接工

事(足場、支保、締切等)

の施工に必要なもの

数 量 計 算 書

土量および用地補償の概

略数量

土量および構造物、用地

補償の概略数量

土量および構造物数量等

その他積算に必要なすべて

の数量及び用地補償の数量

工事費内訳費

経済的、技術的判定が行な

える程度の概算工事費の積算

で、標準的な単価により算定

する。

事業の実施が可能な程度

の精度をもつ工事費の積算

を行なうものであり、近年

または近傍工事費等の単価

を参考とし算定する。

施工計画概要費

工事施行にあたって問題

となる施工方法順序、注意

事項を記述し、使用機械、

ステージング、仮設備につ

いても記述する。施工上特

に留意すべき点を別途抜す

いし特記事項としてまとめ

る。

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(2) 橋梁設計業務内容

表1-5

設計範囲

項 目

予 備 設 計 詳 細 設 計

計画概要書

当初考えた橋梁上下部基礎の組合せ

と 終案としてしぼられた組合せにつ

いてその経過等を記述する。

設計計算書 構造主体の形式、主要寸法が理解しう

る程度の計算を行う。

構造主体及び附属構造物全般につい

て形式、寸法を確定するための必要な設

計計算を行う。

一般平面図 中心線、曲線半径、位置、選定した形

式、形状寸法の概略設計

中心線、曲線諸元、型式、位置、寸法

の設定を行う。

一般側面及

び断面図

側面図及び標準断面図を作成し主要

寸法を記入する。

構造主体の形状を記入し、併せて地質

図及びボーリング位置等の関連も記入

する。

構 造 図

構造主体及び附帯構造物の必要な寸

法を記入する。形状の似た部分について

は図面を省略し寸法のみで表示するこ

とができる。

参 考 図

工事目的物以外の間接工事(足場、支

保、架設、土留、締切等)で施工に必要

と思われるもの。

数量計算書 型式別の概略数量 数量及び材料表、間接工事等積算に必

要なすべての数量及び用地補償の数量

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表1-6

設計範囲

項 目

予 備 設 計 詳 細 設 計

工事費内訳書

事業実施が可能な精度を持つ工事費

の積算で近年又は近傍工事等の単価を

参考にする。

施工計画概要書

設計上の意図を記し設計と不可分の

関係にある施工順序、施工方法注意点等

を列記する。なお、ステージ施工の範囲

及び問題点も記す。また使用機械、仮設

備等の計画も併せて記載する。

特 記 事 項 施工計画概要書に基づき施工上特に

留意すべき事項を記入する。

(3) インターチェンジ設計業務内容

表1-7

設計範囲

項 目

インターチェンジ設計

予 備 設 計 詳 細 設 計

計画概要書

形式選定の経過概要、特殊な構造物等

の設計を行った場合、その計画意図、そ

の他特筆すべき事項を記述する。

設計計算書

構造主体の形式、主要寸法を選定し得

る程度の計算を行う。

(図集、適用可能なものは不用)

構造物の形式寸法を確定し得るため

の計算

(図集、適用可能なものは不用)

平 面 図

中心線、本線取付道路幅及び敷幅曲線

諸元、構造物の形式、位置、寸法を概略

設定する。

中心線、本線取付道路幅および敷幅曲

線諸元、構造物の形式、位置、寸法を箇

所毎に設定する。

縦横断面図

縦断図は 20m ピッチ以下とし、主要な

線形諸元及び本線取付線形諸元を記入

する。横断図面は各測点ごとに規定断面

を記入する。

縦断図は 20m ピッチ以下とし、必要箇

所には必要な諸元をすべて記入する。横

断図については各測点及び必要箇所に

すべて規定断面を記入する。

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表1-8

設計範囲

項 目

インターチェンジ設計

予 備 設 計 詳 細 設 計

構 造 図 主要構造物の形状寸法を記入する。 構造物が施工できる形状寸法を記入す

る。

標準断面図 土工定規図、構造物断面図 左 同

参 考 図 形式選定の経過平面図、縦断図及び主要

横断図。

工事目的物以外の間接工事(足場支保、

締切等)の施工に必要なもの。

数 量 計 算 書 土量及び構造物用地補償の概略数量 土量及び構造物数量等その他積算に必

要なすべての数量及び用地補償の数量

工事費内訳書

事業の実施が可能な程度の精度をもつ

工事費の積算を行うものであり、近年又は

近傍工事費等の単価を参考として算定す

る。

表1-9

設計範囲

項 目

インターチェンジ設計

予 備 設 計 詳 細 設 計

施工計画概要

工事施工にあたって問題となる施工

方法、順序、注意事項を記述し、使用機

械、ステージング、仮設備についても記

述する。

特 記 事

施工計画概要書に基づき施工上特に

留意すべき事項を記入する。

(4) トンネル設計業務内容

表1-10

設計範囲

項 目

ト ン ネ ル 設 計

詳 細 設 計

計画概要書 坑門位置選定の経過概要(経過平面図及び資料)及びその他特筆すべき事項を記

述する。

設計計算書

構造主体(巻厚、坑門、支保工)等について、形式、寸法を確定するための必要

な設計計算を行う。

必要に応じて換気断面を決定するための計算を行う。

平 面 図 坑門の位置、形式、形状、寸法を設定する。

地質平面及び地質縦断面図を作成する。

縦断面図 縦断図は 20m ピッチ以下とし、必要箇所には必要な諸元をすべて記入する。

標準断面図 主体標準断面図を作成する。

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表1-11

設計範囲

項 目

ト ン ネ ル 設 計

詳 細 設 計

構 造 図 構造主体及び附属構造物の形状寸法を記入する。

一 般 図 標準横断面図及び掘削工法、支保工ピッチ、弾性波速度、巻厚等の表示図面

参 考 図

工事用仮設備(電力設備、コンクリー卜混合設備、スライディングセントルフォ

ーム、ストックパイル、コンプレッサー設備、運搬路、給排水設備、仮設建物の配

置、その他)の施工に必要なもの。

数量計算書 数量及び間接工事等積算に必要なすべての数量

工事費内訳書 事業実施が可能な精度を持つ工事費の積算で近年又は近傍工事等の単価を参考にす

る。

表1-12

設計範囲

項 目

ト ン ネ ル 設 計

詳 細 設 計

施工計画概要書 工事施工にあたって問題(掘削計画、支保工、覆工)となる施工方法順序、注意事

項を記述し、使用機械、仮設備等の計画も併せて記載する。

特 記 事 項 施工計画概要書に基づき施工上特に留意すべき事項(安全対策及び環境対策等)を

記入する。

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2 幾何構造設計

2-1 幾何構造設計一般

道路の構造に関する設計は、道路構造令に示す各規定を満足するよう設計するものとする。

なお、本設計要領においてその運用方法等を示したものについては、特に問題のない限りこ

れによられたい。

2-1-1 道路構造令の趣旨と目的

道路の構造の原則は、道路法第 29 条で、「当該道路の存する地域の地形、地質、気象そ

の他の状況及び当該道路の交通状況を考慮し、通常の衝撃に対して安全なものであるとと

もに、安全かつ円滑な交通を確保することができるものでなければならない。」と規定され

ている。したがって道路の構造は、その道路の機能と自然的外部的諸条件に応じて具体的

に決定する必要がある。道路構造令は、この具体的な決定にあたって遵守しなければなら

ない道路構造に関する一般的技術的基準を定めたのもである。

道路構造令で規定している道路の構造とは、主として、道路の幅員、建築限界、線形、

視距、交差または接続等の構造であり、道路構造の も重要な要素を包含するものである。

道路の構造は、道路の も重要な要素の一つであって、道路法第 30 条では、道路構造の

技術的基準については政令で定めるよう規定しており、道路構造令はこの趣旨に沿って制

定された政令である。このように道路構造に関する技術的基準を政令で定める理由は、

i)道路は、元来道路網の一部を形成し、相互に連絡してはじめてその機能を全うしう

るものであるから、道路の構造については全国的な統一を図る必要があること

ⅱ)道路構造は交通との関係が密接であり、特に車両の規格との間の調整を図る必要が

あること

ⅲ)道路は、公共施設として、土地収用権があり、また、道路の損壊等には罰則が適用

されるなどの国民の権利利益を制約することがあるため、構造面からも道路の範囲

を明確にしておく必要があることなどである。

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2-1-2 道路構造令の適用範囲

道路構造令は、道路を新設し、または改築する場合に適用される。したがって新設また

は改築以外の工事、例えば修繕または災害復旧工事等の場合には、道路構造令の規定によ

らない工事を行うことは差し支えなく、また、道路構造令の規定に適合していない道路を

そのまま存置することも道路構造令の規定には抵触しない。しかし道路構造令は、道路管

理者の計画とは別に、他の工事により受動的に道路工事を行う場合および道路管理者以外

の者が道路工事を行う場合には適用される。他の工事によって生じた道路工事とは、例え

ば、上級道路の工事によって生じた下級道路の工事あるいは、鉄道、河川、ダム等の工事

によって生じた道路工事等であるが、このような場合には、原因のいかんにかかわらず道

路の改築工事に該当し、したがって、改良する道路の構造は道路構造令に適合したもので

なければならない。ただし、これらについては、附帯工事等の特例についての規定も設け

られており、費用負担の問題と併せて、それぞれのケースごとに検討する必要がある。

また、道路工事は通常、一路線の道路を数個の区間に分割して行われ、一区間について

の工事は、当該道路全体の新設または改築ということになるが、道路構造令の適用される

範囲は、一路線全体ではなく、当該区間単位であることは言うまでもない。さらに、道路

の一定区間についてバイパスを建設する場合には、バイパスは当該区間の一部を構成する

ものであるが、道路構造令は当該区間全体には適用されず、バイパス部分にのみ適用され

ることとなる。

2-1-3 一般的技術基準の意味

道路構造令は、道路の構造に関する一般的技術的基準である。一般的技術的基準とは、

道路の通常の機能を確保し、通常の自然的・外部的条件に対応する技術的基準ということ

である。道路の構造は、路線の性格、区間の交通状況等により決定される道路の機能と、

そのおかれている自然的・外的条件により多種多様なものであるから、これらをすべて道

路構造令で規定しようとすると膨大なものとなり、技術の進歩や交通の状況の変化により

時日を待たずに変更しなければならなくなる。また、あまり細部の専門技術的な内容のも

のは、このような政令の規定事項としてはそぐわないものであろう。このような点を考慮

して、道路構造令に定める技術基準は根幹的なもの、一般的なもの、行政上から規定の必

要なものなどにとどめたものである。したがって特殊な車両の通行を目的とする道路のよ

うに一般的道路利用とは異なる機能を必要とするもの、超大規模橋梁や特に急峻な山岳部

に建設される道路などのように通常の自然・外的条件とは異なる条件のもとにあるもので、

構造基準のすべてをそのまま適用することができない場合には、その構造について個別に

検討していく必要がある。

道路構造令の解

説と運用

平成 16 年 2 月

道路構造令の解

説と運用

平成 16 年 2 月

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道-1-17

2-2 道路構造令の一部改正について(平成 15 年7月改正)

2-2-1 改正の趣旨

今般、道路構造に関して、地域に応じた道づくり推進し、道路整備のコスト縮減を図るた

め、小型道路(乗用車専用道路)、高規格幹線道路における追越区間付き2車線構造の導入、

中央帯幅員の特例値の縮小に関する改正を行った。

2-2-2 小型道路(乗用車専用道路)の導入について

(1) 趣旨

土地利用や用地、工費などの問題が懸案となり、抜本的な渋滞対策を行うことができ

ないところ等について、一般の乗用車と小型の貨物車等、一定の規模以下の自動車(以

下「小型自動車等」という。)のみが走行可能な「小型道路(乗用車専用道路)」を導入

することができることとした。

(2) 適用範囲(第3条第4項及び第5項関係)

地形の状況、市街化の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合において、当

該道路の近くに小型自動車等以外の自動車が迂回することができる道路があるときは、

小型自動車等(第三種第一級から第四級まで又は第四種第一級から第三級までの道路に

あたっては、小型自動車等及び歩行者又は自転車)のみの通行の用に供する道路とする

ことができることとした。

当該道路は、通行車両が小型自動車等に限定されることから、沿道の施設への大型車

の出入りが生じないようにするため、沿道への出入りができない構造のものに限ること

とした。

また、小型自動車等のみの通行のように供する道路だけでなく、小型自動車のみの通

行の用に供する車線を他の車線と分離して設けることができるものとした。

(3) 設計車両(第4条関係)

小型自動車等の設計車両の諸元については、道路運送車両法に基づく小型自動車、普

通自動車のうちいわゆる3ナンバーの自動車等を考慮して設定した。

(4) 横断構成及び線形(第5条第4項、第8条第2項から第5項まで及び第9項、第 12

条、第 20 条並びに第 27 条第3項及び第4項関係)

小型自動車等の設計車両の諸元を考慮して、小型道路の車線の幅員、車道に設ける路

肩の幅員、路肩に設ける側帯の幅員、建築限界を規定した。

また、小型自動車等の性能に応じ、小型道路の車道の縦断勾配を規定した。

(5) 立体交差(第 28 条第2項関係)

大型車の誤進入を防止するため、普通道路と小型道路が交差する場合においては、当

該交差の方式は立体交差とした。また、4車線以上である小型道路が相互に交差する場

合も、第 28 条第1項の普通道路と同様に立体交差とするものとした。

(6) 橋、高架の道路の設計自動車荷重(第 35 条関係)

橋、高架の道路その他これらに類する構造の小型道路の設計自動車荷重は、小型自動

車等の荷重を考慮して 30 キロニュートン(3トン)と設定した。

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(7) 交通運用

小型道路については、道路法第47条第3項の規定に基づき、重量制限及び高さ制限を実施するもの

とする。

(8) その他

道路管理者が小型道路を整備しようとするときは、道路管理者と都道府県公安委員会が相互に協力し

て安全かつ円滑な交通の確保を図るため、当該道路の存する地域を管轄する都道府県公安委員会と十分

に連絡調整を図りつつ、その整備を図ることが必要である。

なお、道路構造令で規定するほか、技術的な基準については、別に通知するものとする。

2-2-3 高規格幹線道路等における追越区間付き2車線構造の導入について

(1) 趣旨

一定のサービス速度での走行を可能とするために、完成2車線の高速自動車国道又は自動車専用道路

について、原則往復の方向別に分離するとともに、片側が1車線である場合には、必要に応じて付加追

越車線を設置することができることとした。

(2) 車線の分離等(第6条第1項及び第2項関係)

安全かつ円滑な交通を確保するため、3車線以下の第一種の道路についても原則として、車線を往復

の方向別に分離することとした。

ただし、3車線以下の第一種の道路は、トンネルや橋、高架の道路において、事故時の救急活動や全

体幅員の拡大により施工が困難になる場合等があることを考慮して、地形の状況その他の特別の理由に

よりやむを得ない場合には、車線の分離をしないことができることとした。

なお、第二種及び第三種第一級の道路は、4車線以上であることから、やむを得ない場合の規定は設

けていない。

(3) 付加追越車線(第2条第6項、第5条第4項及び第6条第9項関係)

第一種の道路で片側1車線の車道については、低い速度で走行している自動車を追越せないため、走

行車両全体の速度を低下させ、その結果、交通容量や安全性の低下をもたらす場合があることから、必

要に応じ付加追越車線を設けることとした。

なお、付加追越車線の幅員は、それを設ける車道と同じ設計速度であることから、当該車線の幅員と

同じ値とすることとした。

(4) 左側路肩(第8条第3項関係)

第一種の道路で片側1車線の車道の左側路肩については、自動車が故障等により左側路肩に停車して

も、他の自動車が安全かつ円滑に通行できる幅員を確保するため、大型車が故障等で停車していること

を想定した場合における必要なすれ違い幅員や車線幅員及び側方余裕を考慮し、適切な幅員を設定した。

(5) その他

道路管理者が高規格幹線道路等における追越区間付き2車線構造の道路を整備しようとするときは、

道路管理者と都道府県公安委員会が相互に協力して安全かつ円滑な交通の確保を図るため、当該道路の

存する地域を管轄する都道府県公安委員会と十分に連絡調整を図りつつ、その整備を図ることが必要で

ある。

なお、道路構造令で規定するほか、技術的な基準については、別に通知するものとする。

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2-2-4 中央帯幅員の特例値の縮小について(第6条第4項関係)

防護策の安全性の性能向上、自動車の通行に必要な 低限の側方余裕幅に関する実践結

果を踏まえ、安全性の観点から、 小限確保すべき中央帯の幅員の特例値を縮小できるこ

ととした。

分離帯に、柵その他これに類する工作物を設けるときは、別途「防護策の設置基準の改

定について(平成10年道路局長通達)」を通知しているところであるので、それによられ

たい。

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道-1-20

2-3 道路構造令の改正と対応

道路構造令の一部を改正する政令が平成 15 年7月 24 日に交付され同日から施行された。

よって、今後はこれによって処理されたい。

2-3一1 対応方針(案)

○ 基本的には新構造令を基本とする。

○ 事業の進捗状況により、新構造令の適用が困難な場合は次頁のフロー図「Ⅰ.改築事業

等で既に事業化しているもの」及び「Ⅱ.改築事業等で今後事業化を予定するもの」によ

りそれぞれ、運用するものとする。 ただし、今後道路構造令の改正がなされた場合は

この運用の限りではない。

○ 次頁のフローを運用する場合でも、今後の道路構造のあり方をふまえた場合、ゆ とり

ある道路構造で整備することが望ましいので、新構造令の適用を前提に運用するもの

とする。

○ 構造物(トンネル、橋梁等)については、長期的な視点(沿道の開発計画・土地利用・歩

行者、自転車利用交通等)からの検討を行い、その対応方針を整理し決定する。

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道-1-21

I 改築事業等で既に事業化しているもの

注) 区間の判断は、進捗状況に応じて細分化した区間とする。

ただし、区間設定にあたっては、交差点間とするなど道路構造の連続性に注意する必要が

ある。

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Ⅱ 改築事業等で今後事業化を予定するもの

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2-3-2 道路構造令と都市計画との関係

◎該当箇所

第Ⅳ章 都市計画制度の運用のあり方

Ⅳ-2-2 都市施設 ⅱ)施設別の事項 A-2 道路 2 道路の都市計画の考え方

◎具体的な記述

(5) 道路構造令の適用

都市施設として都市計画に定める道路のうち道路法上の道路として新設又は改築

されるものについては、その計画事項である幅員、線形等が道路構造令(昭和 45 年政

令第 320 号)に適合している必要がある。

また、既に決定されている都市計画道路のうち、整備着手時点における道路構造

令の規定に従って整備されているものについては、現行の道路構造令を遡及して適

用する必要はないが、今後、新設又は改築を行うものについては、都市計画決定さ

れている幅員が現行の道路構造令の一般規定を適用した場合に十分であるかを検証

したうえで、必要に応じ都市計画を変更すべきである。

この場合、沿道に堅固な建築物が立地している等により、道路構造令の一般規定

を適用することが事業費の高騰等社会経済上多大な影響を及ぼすものと判断される

場合には、関連する都市計画道路の変更等を行い、当該道路の機能の一部を代替さ

せることにより、道路構造令の一般規定に適合させて整備することが望ましい。し

かしながら、この方法により道路構造令の一般規定に適合できない場合であって、

上記のように道路構造令の一般規定をそのまま適用することが社会経済上多大な影

響を及ぼすものと判断される場合には、住民の合意形成や技術、費用の面等特別の

理由によりやむを得ない場合に限り、既決定の都市計画道路について道路構造令中

の各例外規定を適用する余地もあると考えられる。

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2-3-3 既施工済みの改正部分

前回、平成5年 11 月 25 日に公布、同日施行された、道路構造令の一部を改正する政令(平

成5年政令第 375 条)のうち、以下に示すものは現行構造令となっているので遺漏のないよ

う注意されたい。

・道路構造令

第十条 3

第十一条の二

第三十五条 2

第三十九条

第四十条

・道路法施行令 第三十四条の三

これらにかかわる内容は次の通り。

○ ベンチ又はその上屋は、様々な歩行者が道路を安全かつ円滑に通行できるようにする

ため、バス利用の利便性の向上、歩行中の休憩需要への対応等の必要性に鑑み、道路の

管理上必要とされたものを、道路附属物として整備することが出来るものとしたもので

ある。

この場合、ベンチ又はその上屋の設置は、単にバス事業者等の要請により行うもので

はなく、道路管理者が安全かつ円滑な道路の交通の確保その他道路の管理上必要なもの

であると判断する場合に行うものであること。

なお、べンチ又はその上屋は固定されたものであることに留意されたい。

また、べンチ又はその上屋を設けようとするときは、当該地域を管轄する警察署長と

協議すること。なお、道路交通法第 80 条に基づく当該地域を管轄する警察署長との協議

については別途行うこと。

○ 自転車専用道路、自転車歩行者専用道路及び歩行者専用道路

自 転 車 専 用 道 路→幅員3m以上とする(但し、地形の状況その他特

別の理由によりやむを得ない場合は 2. 5m まで

縮小することができる)

自転車歩行者専用道路→幅員4m以上とする。

歩 行 者 専 用 道 路→幅員2m以上とする。

○ 歩行者の滞留の用に供する部分

歩道等において横断歩道、乗合自動車停留所等に係る歩行者の滞留により歩行者又は

自転車の安全かつ円滑な通行が妨げられないようにする必要がある場合においては、主

として歩行者の滞留の用に供する部分を設けるものとする。(当該部分を設ける場合に、

その設置場所が道路法施行令第 38 条の2に規定する「道路の交差部分及びその付近の道

路の部分」又は横断歩道設置場所及びその付近の道路に該当するときは、当該地域を管轄

する都道府県公安委員会の意見を聞くこと。)

通達

「道路構造令の一

部改正する政令の

施行について」

平成 5 年 11 月 25

建設省道政発

第 57 号

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道-1-25

○ 車両の大型化について

1 橋・高架の道路等の設計自動車荷重の見直し

車両の大型化に適切に対応するため、橋・高架の道路その他これらに類する構造の

道路設計に用いる設計自動車荷重を引き上げることとしたがその具体的な基準につい

ては、別途「橋・高架の道路等の技術基準について」において通達されたところであ

るので、それによることとされたい。

2 側溝類の取扱い

側溝類についてもT-25 荷重で設計するものとする。

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道-1-26

2-4 計画高(FH)の表示

(1)分離帯道路

図1-5

(2)非分離帯道路

図1-6

(3)単断面より分離断面への移行

図1-7

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道-1-27

(4)ランプ

図1-8

2-5 片勾配のすり付け

(1)すり付けの種別

種類としては、図 1-9~11 を標準とする。

(a)分離帯道路

図1-9

(b)非分離帯道路

図1-10

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道-1-28

(c)単断面より分離断面への移行

図 1 -11

(2)すり付け方法

すり付け方法は道路構造令に基く。

2-6 登坂車線

登坂車線の有無については、下記の条件を目安に検討するものとし、設置長、設置区間等

についでは担当課と打合せの上、決定すること。

(1)設置を検討する目安

(a)縦断勾配が、5%以上を含む区間がある場合。

(b)勾配部始端における速度を設計速度とし、許容 低速度(設計速度×1/2+5km/hr)

を下まわる区間が 200m 以上ある場合。

(2)登坂車線の幅員構成

図 1 -12

(a)登坂車線に設ける左側路肩は、道路構造令の路肩(縮小規定)によるものとする。

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(3)その他

本基準は、既設道路に附加する場合のもので多額の事業費が必要な箇所(トンネル・橋梁・

どう門、地形上大構造物が必要となる箇所等)がある等、上記により難い場合は、適宜検討

し、担当課と協議すること。

2-7 視距の確保

視距の確保は、「道路構造令の解説と運用」に基づいて行うものとする。

2-8 高規格幹線道路幾何構造基準(案)

高規格幹線道路(当面供用区間を含む)の設計に当たっては、「高規格幹線道路幾何構造基準

(案)について」(平成元年9月 28 日付け建設省道路局企画課、道路事業調整官、道路計画調整

官連名による事務連絡)及び「高規格幹線道路暫定2車線の設計基準(案)について」(平成2年

7月 30 日付け建設省道路局企画課、道路事業調整官、道路計画調整官連名による事務連絡)

を参考とすること。

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3 建築限界

3-1 車道の建築限界

車道の建築限界については「道路構造令の解説と運用」によるものとする。

3-2 歩道・自転車道および自転車歩行者道の建築限界

歩道・自転車道および自転車歩行者道の建築限界については「道路構造令の解説と運用」によるものとする。

3-3 建築限界線のとり方

建築限界線のとり方については「道路構造令の解説と運用」によるものとする。

4 地下埋設

4-1 地下埋設物の基本方針

道路の占用は、一定の工作物、物件又は施設について(道路法32条)、道路の敷地外に余地がないために、やむを

得ないものであり、かつ、一定基準に適合する場合に限り許可できるとされている。(道路法33条)。

地下埋設物件は掘返しによる交通規制、道路構造への支障等、道路に与える影響が多大であるため、占用許可に

あたっては、道路管理者、企業者双方の将来計画を考慮し調整の上道路管理上支障のないよう配慮しなければなら

ない。(道路法34条)。

4-2 占用スペースの確保

道路に占用物件を設置する場合の基準については、道路法施行令第2章による。ただし、この通知は、一般的基

準であるため石油管、高圧ガス管等特殊な占用物件の占用位置土被り等は除く。

5 歩道等の整備

5-1 設計一般

歩道等の設計にあたっては、第5章第1節交通安全施設により行うものとする。 高齢者、身体障害者その他の歩

行者(車いす、乳母車を利用する者を含む。)及び自転車の安全かつ円滑な通行を確保するためには、歩道及び自

転車歩行者道(以下「歩道等」という。)ならびに分離帯(交通島を含む。)において、通行に支障となる段差や勾

配を解消し、誰もが利用しやすい構造とする必要がある。このため、本基準は歩道等の横断歩道箇所等における車

道とのすりつけ部及び車両乗り入れ部の一般的構造を定めるものとする。

5-2 歩道等の段差及び勾配

5-2-1 用語の定義

本基準においては、以下に掲げる用語の定義を用いることとする。

(1)歩道等の形式

歩道等は、歩道等面と車道面又は縁石との関係においては以下の形式に分類される。

区画する工作物 歩道等の形式 歩道面と車道面

との関係

歩道等面と縁石

天端との関係

縁 石

マウントアップ形式 歩 道 等 面 が 高 い 同 一 の 高 さ

セ ミ フ ラ ッ ト 形 式 歩 道 等 面 が 高 い 歩 道 等 面 が 低 い

フ ラ ッ ト 形 式 同 一 の 高 さ

歩 道 等 面 が 低 い

さくその他これに

類する工作物 ―

国都街第 60 号の 2

国道企第 102 号の

2

平成 17年 2月 3日

発国土交 通省 都

市・地域整備局長

国土交通省道路局

「歩道の一般構造

物に関する基準等

について」

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道-1-31

(2)車道とのすりつけ部

歩道等面と車道面との間に高低差がある場合に、これを解消し、歩行者及び車両の安全

かつ円滑な通行を確保するための段差又は勾配を設けた箇所をいう。

(3)車両乗り入れ部

車両が道路に隣接する民地等に出入りできるように、縁石等の一部に対して切り下げ又

は開き等の処理を行い、必要に応じ当該箇所において車道とのすりつけ部を設けることに

より車両が民地等に乗入れ可能となる構造をもった箇所をいう。

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道-1-32

5-2-2 歩道等の一般的構造

(1) 歩道等の構造の原則

歩道等の整備にあたっては、道路構造令(昭和 45 年政令第 320 号)の規定によると

ともに、歩行者及び自転車の安全かつ円滑な通行の確保、自動車交通に起因する弊害の

軽減、沿道住民の居住環境の向上、良好な都市環境の形成又は公共公益施設の収容のた

めに十分機能する構造とするよう努めるものとする。

(2) 縁石で区画された歩道等の形成

① 縁石を設置する場合には、その高さは、歩行者及び自転車の安全な通行を確保する

とともに、沿道の状況等に配慮して 15cm を標準とする。ただし、当該歩道等を設置

する一定区間において車両乗入れ部を設けない場合または交通安全対策上必要な場

合には 20cm まで、橋又は、トンネルの区間においては、当該構造物を保全するため

に 25cm まで高くすることができる。

② 上記の規定において、さく、植樹帯又は並木が連続している歩行者及び自転車の安

全通行が確保されている場合であって、雨水の適切な誘導等が確保できる場合には、

必要に応じ縁石の高さを 5cm まで低くすることができる。

③ 歩道等面の高さは、当該地域の地形、気象、沿道の状況及び交通安全施設の設置状

況等を考慮し、雨水の適切な誘導を勘案して決定するものとする。

(3) 歩行環境の確保

① 歩道等面に設ける勾配は、地形の状況その他特別な理由によりやむを得ない場合を

除き、車いす等の安全な通行を考慮して以下を標準とする。

イ)縦断勾配:5%以下(ただし、沿道の状況等によりやむを得ない場合には8%以

下)

ロ)横断勾配:2%以下(ただし、特に車いすの通行に配慮が必要な重点整備地区(交

通バリアフリー法、第2条第7項において定める特例の要件に該当する地区)等

の横断勾配は、透水性舗装等を用いて円滑な排水性を確保したうえで 1%以下と

するものとする。

ハ)縦断勾配を設ける箇所には横断勾配は設けない。

② 歩道等面には、車いす等の安全な通行を考慮して、原則として 1m 以上の平坦な部分

(横断勾配1%を標準とする部分)を連続して設けるものとする。また、当該平坦部

分には、道路標識その他の路上施設又は電柱その他の道路の占有物件は、やむを得ず

設置される場合を除き原則として設けないこととする。なお、歩道等の幅員が十分確

保される場合には、車いすの円滑なすれ違いを考慮して、当該平坦部分を2m 以上確

保するよう努めるものとする。

③ 横断歩道箇所等における車道とのすりつけ部若しくは車両乗入れ部において設けら

れる縦断勾配箇所の間隔が短い場合又は将来の沿道の状況により短くなることが考え

られる場合であって、車いす等の通行に支障をきたす恐れがある場合には、排水施設

の設置、交通安全対策、民地側とのすりつけ等を勘案し、一定区間において歩道等面

を切り下げる等必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

国都街第 60 号の 2

国道企第 102 号の

2

平成 17年 2月 3日

発国土交 通省 都

市・地域整備局長

国土交通省道路局

「歩道の一般構造

物に関する基準等

について」

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道-1-33

④ ①から③のほか、歩道等の整備にあたっては、歩行者及び自転車の快適な通行を考

慮して、水はねの防止のための透水性舗装の実施等必要な措置を講ずるよう努めるも

のとする。

⑤ バス停車帯又はバス停留所に接続する歩道等においては、乗降する車いすの利便性

を考慮して、必要に応じ歩道等面の高さの調節等必要な措置を講ずるよう努めるもの

とする。

(4) 分離帯において車道境界に縁石を設ける場合には、その高さは 25cm 以下とする。

5-2-3 横断歩道箇所等における車道とのすりつけ部

(1) 車道とのすりつけ部の構造

1)歩道等の巻込み部における歩道等と車道とのすりつけ部及び横断歩道箇所における

歩道と車道とのすりつけ部については、次の構造を標準とする。

イ)すりつけ部の縦断勾配

すりつけ部の縦断勾配は、車いす等の安全な通行を考慮して5%以下とする。た

だし、路面凍結や積雪の状況を勘案して、歩行者及び自転車の安全な通行に支障を

きたす恐れがある場合を除き、遠藤の状況等によりやむを得ない場合には8%以下

とする。

ロ)水平区間

イ)の縦断勾配と段差との間には水平区間を設けることとし、その値は 1.5m 程

度とする。ただし、やむを得ない場合にはこの限りでない。

ハ)車道との段差

歩道等と車道との段差は、視覚障害者の安全な通行を考慮して 2cm とする。

2)横断歩道箇所における分離帯は、車道と同一の高さとする。ただし、歩行者及び自

転車の横断の安全を確保するために分離帯で滞留させる必要がある場合には、その段

差を 2cm とする。

(2) その他の留意事項

1)排水施設

歩道等面が低いために強雨時に水の溜まる恐れが生じる箇所では、雨水ますを追加

する等排水に十分配慮するものとする。

2)交通安全対策

歩道等の巻込み部分又は交差点の歩道屈曲部において自動車の乗上げを防止する

ために、主要道路の車道に面してさく若しくは低木の植込みを設置する。又は縁石を

高くする等必要な措置を講ずるよう配慮するものとする。

3)歩道等と民地とのすりつけ

車道とのすりつけによって歩道等と民地との高低差が生じ、歩行者又は自転車の通

行に支障をきたす場合は、当該歩道等における民地側のすりつけ等の処置を行うよう

配慮するものとする。

国都街第 60 号の 2

国道企第 102 号の

2

平成 17年 2月 3日

発国土交 通省 都

市・地域整備局長

国土交通省道路局

「歩道の一般構造

物に関する基準等

について」

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道-1-34

5-2-4 車両乗入れ部

(1) 適用の範囲

1)本基準は、マウントアップ形式及びセミフラット形式の歩道等において、車両乗入れ部を設け

る場合に適用する。ただし、(2)はフラット形式の歩道等における車両乗入れ部についても適用す

る。

2)車両乗入れ部は、原則として次に掲げる①から⑨までの場所以外に設けるものとする。

ただし、民家等にその家屋所有者の自家用車が出入りする場合であって、自動車の出入りの回

数が少なく、交通安全上特に支障がないと認められる場合には、②から④及び⑥は適応しないこ

とができるものとする。

① 横断歩道及び前後5m以内の部分。

② トンネル、洞門等の前後各50m以内の部分。

③ バス停留所、路面電車の停留場、ただし、停留所を表示する標柱又は表示板のみの場合は、

その位置から各10m以内の部分。

④ 地下道、地下鉄の出入り口及び横断歩道橋の昇降口から5m以内の部分。

⑤ 交差点(総幅員7m以上の道路の交差する交差点をいう。)及び交差点の側端又は道路の曲が

り角から5m以内の部分、ただしT字型交差点の突きあたりの部分を除く。

⑥ バスの停車帯の部分。

⑦ 橋の部分。

⑧ 横断防止柵、ガードレール及び駒止めの設置されている部分、ただし交通安全上特に支障が

ないと認められる区間を除く。

⑨ 交通信号機、道路照明灯の移転を必要とする箇所、ただし道路管理者及び占用車が移転を認

めた場合は除く。

(2) 車両乗入れ部の構造

1)植樹帯等の幅員内ですりつけを行う構造

① 植樹帯等(路上施設帯を含む。)がある場合には、当該歩道等の幅員内での連続的な平坦性

を確保するために、当該植樹帯等の幅員内ですりつけを行い、歩道等の幅員内にはすりつけの

ための縦断勾配、横断勾配又は段差を設けないものとする。この場合には、以下の構造を標準

とする。

② ①のすりつけ部の横断勾配は15%以下とする。ただし、特種縁石(歩道等の切り下げ量を少

なくすることができる形状を持つ縁石)を用いる場合には10%以下とする。

③ 歩車道境界の段差は、歩行者及び自転車の安全な通行等を考慮し5cm以下とする。

2)歩道内においてすりつけを行う構造

① 植樹帯がない場合又は植樹帯等があっても1)の構造が取れない場合には、3-

3-2、3)、②に基づき歩道等の平坦部分を確保し、残りの幅員ですりつけを行

うものとする。この場合には、以下の構造基準とする。

② ①のすりつけ部の横断勾配は 15%以下とする。ただし、特種縁石を用いる場合に

は 10%以下とする。

③ 歩車道境界の段差は、歩行者及び自転車の安全な通行等を考慮し5cm 以下とする。

国都街第 60 号の 2

国道企第 102 号の

2

平成 17年 2月 3日

発国土交 通省 都

市・地域整備局長

国土交通省道路局

「歩道の一般構造

物に関する基準等

について」

国都街第 60 号の 2

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物に関する基準等

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3)歩道等の全面切下げを行う構造

① 歩道等の幅員が狭く1)又は2)の構造によるすりつけができない場合には、車

道と歩道等、歩道等と民地の高低差を考慮し、車両乗入れ部を全面切下げて縦断勾

配によりすりつけるものとする。この場合には、以下の構造を標準とする。

② ①のすりつけ部の横断勾配は5%以下とする。ただし、路面凍結や積雪の状況を

勘案して、歩行者又は自転車の安全な通行に支障をきたす恐れがある場合を除き、

沿道の状況によりやむを得ぬ場合には8%以下とする。

③ 歩車道境界の段差は、歩行者及び自転車の安全な通行等を考慮し5cm 以下とする。

その他留意事項

1)排水施設

歩道等面が低いために水の溜まる恐れが生ずる箇所では、雨水ますを追加する等排水

に十分配慮するものとする。

2)交通安全対策

車両乗入れ部から車両乗入れ部以外の歩道等への車両の進入を防止し、歩行者及び自

転車の安全かつ円滑な通行を確保するために、必要に応じさく等の施設により交通安全

対策を実施するよう配慮するものとする。

3)歩道等と民地とのすりつけ

車道とのすりつけによって歩道等と民地との高低差が生じ、歩行者又は自転車の通行

に支障をきたす場合には、当該歩道等における民地側のすりつけ等の処置を行うよう配

慮するものとする。

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5-2-5 参 考 例

Ⅰ 横断歩道箇所等における車道とのすりつけ部

注1)歩道水平区間については、巻込み終点(C)からすりつけ区間との間に 1.5m 程度設ける

ことが望ましい。このように設けられない場合には、巻込み終点(D)から 1.5m 以上設

ける。

注2)縁石は両面加工した特種ブロックを使うなど、歩行者等の安全な通行が確保されるよ

うに配慮する。

※路面凍結や積雪の状況を勘案して、歩行者及び自転車の安全な通行に支障をきたす恐

れがある場合を除き、沿道の状況等によりやむを得ない場合には8%以下とする。

Ⅰ-1 歩道等の巻込み部における構造(歩道等の幅員が狭い場合)

※路面凍結や積雪の状況を勘案して、歩行者及び自転車の安全な通行に支障をきたす恐

れがある場合を除き、沿道の状況等によりやむを得ない場合には8%以下とする。

Ⅰ-2 歩道等の巻込み部における構造(歩道等の幅員が広い場合)

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※路面凍結や積雪の状況を勘案して、歩行者及び自転車の安全な通行に支障をきたす恐

れがある場合を除き、沿道の状況等によりやむを得ない場合には8%以下とする。

Ⅰ-3 横断歩道箇所における構造

※路面凍結や積雪の状況を勘案して、歩行者及び自転車の安全な通行に支障をきたす恐

れがある場合を除き、沿道の状況等によりやむを得ない場合には8%以下とする。

Ⅰ-4 横断歩道箇所における構造(交差点に横断歩道がある場合)

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※路面凍結や積雪の状況を勘案して、歩行者及び自転車の安全な通行に支障をきたす恐

れがある場合を除き、沿道の状況等によりやむを得ない場合には8%以下とする。

Ⅰ-5 横断歩道箇所における構造(交差点部以外に横断歩道がある場合)

Ⅰ-6 横断歩道箇所における構造(中央分離帯がある場合)

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Ⅱ 車両乗入れ部

注1)車両の安全な通行に支所をきたすことのないよう、必要に応じ隅切り等を行う。

Ⅱ-1 植樹帯等の幅員内ですりつけを行う構造

参考図 Ⅱ-2 歩道等内においてすりつけを行う構造

※路面凍結や積雪の状況を勘案して、歩行者及び自転車の安全な通行に支障をきたす恐

れがある場合を除き、沿道の状況等によりやむを得ない場合には8%以下とする。

Ⅱ-3 歩道等の全面切下げを行う構造

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5-2-6 注意事項

1)事業実施体制の確立

① 関係機関との連携

歩道ネットワークとしての機能及び事業時期・構造細目・視覚障害者誘導ブロック設

置等について道路管理者間の連携を図るため「各県バリアフリー歩道推進会議(仮称)」

を設置し、事業調節に努めるものとする。

② PI方式の充実

PI方式の充実をはかり、地域住民(障害者団体含む)の意見を取り入れた設計と施

行施工に努めるものとする。

2)整備方針

・セミフラット形式を基本として整備するものとする。なお、選定にあたっては、「バリ

アフリー歩道推進会議(仮称)」等の活用も図られたい。

・「バリアフリー歩行空間ネットワーク整備地区」を優先的に整備するものとする。

・本技術基準通知日より、実施対応可能なすべての工事に適用する。

3)暫定整備

電線共同溝(CCB)予定箇所等においても、現況歩道の段差・傾斜が著しい箇所において

は、暫定的に段差・傾斜の改善を実施するものとする。

4)参 考 例

Ⅰ 植栽帯等を設けない歩車道境界の防護柵等について

① プレキャストL型側溝+ガードレール

② 現場打ちL型側溝(A型・PL5型)+ガードパイプ(P種)

歩道 車道

歩道 車道

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③ 現場打ちL型側溝(A型・PL5型)+視線誘導標

④ 現場打ちL型側溝(A型・PL5型)+視線誘導標(道路鋲)

※ ①~④の適用にあたっては有効幅員の確保等含め検討を行うこと。

Ⅱ 植栽帯構造について

(イ)環境施設帯箇所

(ロ)一般箇所

(ハ)植栽幅、側道幅及び自・歩道幅については平成5年の道路構造令の改正を踏まえ、

利用交通、自転車、歩行者の量及び性格、沿道土地利用、沿道環境状況、その他を十

分考慮して決定すること。

歩道 車道

車道

歩道 車道

車道

車道

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6 用地幅杭及び用地境界杭の設置

用地幅杭及び用地境界杭の設置場所構造等については、特別の場合を除き、本要領を標準と

する。

ここで「用地幅杭」とは、取得し又は使用しようとする土地の区域を明示するために打設す

る杭をいい、「用地境界杭」とは、用地取得の完了した土地と、これに隣接する土地との境界を

明示するために打設する杭をいう。

6-1 用地幅杭の設置

用地幅杭は直線で結ばれる境界の折点のすべてに設けるほか、同一直線が長くつづく所では、

原則として 20m 間隔に打設するものとする。

6-1-1 用地幅杭の構造及び設置の時期

用地幅杭は用地(幅杭)測量のとき適当な寸法の木杭を打設するものとする。

6-1-2 切土部における用地幅杭の設置

切土部の法肩には道路構造保全に必要な余裕をとって用地幅杭を設置するものとする。

余裕幅は切土の高さによって下記の範囲を標準として土質や地形、地目(宅地、農地、山

地等)に応じて適宜決定するものとする。

腰擁壁がある場合は擁壁より上部の切土高さについて、下表を適用するものとする。

切土の直高(h) 余裕幅(e)

0m~ 1m 0.0m~0.5m

1~3 0.5 ~1.0

3~5 0.8 ~2.0

5~10 1.5 ~3.0

10~15 2.0 ~4.0

15~20 3.0 ~5.0

20m 以上 5.0m 以上

擁壁のみの場合は天端より 3 0cm 程度の余裕をとるものとする。

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6-1-3 盛土部における用地幅杭の設置

1)盛土部の法尻には道路構造保全に必要な余裕をとって用地幅杭を設置するものとす

る。

この幅は 30cm 程度を標準とする。ただし盛土が高い場合や地形の複雑なところでは

50cm~1m 程度の余裕をとってもよい。

2)法先石積を設ける場合は、1)の位置に用地幅杭を設置し、そこに石積の面を合わ

せて施工するものとする。

3)法先コンクリート側溝のある場合は側溝外壁面までを用地境として用地幅杭を設置

するものとする。

4)法先土側溝のある場合は土側溝外肩より 30 cm 程度の余裕をとって用地幅杭を設置

するものとする。

5)擁壁のある場合は、原則として基礎前面に用地幅杭を設置するものとする。

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6-1-4 市街地における用地幅杭の設置

市街部において隣接地が平地であれば特に余裕をとらず、歩道縁石外面(側溝の場合は外

壁外面)を用地境界とし、用地幅杭を設置するものとする。

市街化が予想される箇所で下図のような場合には、土地所有者と調整し、歩道縁石外面

(側溝がある場合は、側購外壁外面)から、外側については無償借地契約を行なうことが望

ましい。

ただし、この場合無償借地分については所有者の同意を得た上で道路法の摘要を受けら

れるように、道路区域として告示をするものとする。なお、民地側か宅造等を行い無償借

地契約の必要がなくなった場合は契約を解除し、併せて区域変更を行うものとする。

また、取付道路等の箇所についても同様とする。

6-1-5 切土、盛土のない部分における用地幅杭の設置

1)切土、盛土のない部分においては前後との関連で若干の余裕をとるものとする。

2)市街部において隣接地が平であれば特に余裕をとらず歩道縁止石外面(側溝がある

場合は側溝外壁外面)を用地境界とし、支障とならない所に用地幅杭を設置するも

のとする。

なお、市街部における用地幅の決定には、都市計画事業等の関連を充分調査のうえ

担当課と協議して決定するものとする。

6-1-6 暫定施工の場合の用地幅杭の設置

4車線計画のうち、まず2車線分を施工したり、又は歩道部分のみ後年度に施工するな

ど暫定施工の場合における用地幅杭は全幅施工の場合は必要な用地を含めて設置するもの

とする。

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6-1-7 橋梁、トンネルにおける用地幅杭の設置

1)高架橋の下は特別の場合を除いて、原則として買収するものとし、橋梁直下の両側

に 50 cm 程度の余裕をとって用地幅杭を設置するものとする。短い橋(又はカルバー

トなど)の場合は前後法尻を延長した線を以て用地境界としてよい。

2)河川、鉄道等を跨ぐ橋梁の場合は夫々の規定に従って占用手続をとるものとし、用

地幅杭の設置の必要はない。

3)トンネルの場合は、用地の買収は行わないものとする。

但し、土かぶりが浅く工事中に影響を及ぼすおそれのある等の場合は、上部土地所

有者の了解を得ておくものとする。

4)地下道の場合は工事の施工方法その他に応じ適正な補償を行い用地の買収は行わな

いものとする。

6-2 用地境界杭の設置

6-2-1 用地境界杭の設置

用地境界杭は、6-1用地幅杭の設置基準に準じて設置するものとする。

なお、用地境界が構造物(法先石積、法先コンクリート側溝、歩道、縁止石等)で明確にさ

れている所でも原則として用地境界杭を設けるものとする。

また、「6-1-3 盛土部における用地幅杭の設置」の 1)、4)及び5)については、小型

擁壁または張りコンクリートの構造物で用地境界を明確にし、用地境界杭を設けるものとす

る。

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6-2-2 用地境界杭の設置時期

用地境界杭は、土地取得後すみやかに設置するものとする。この際、既設の用地幅杭は取

り去るものとする。

ただし、土地取得後、工事着工まで期間が短い場合においては、工事完了後設置すること

ができる。

6-2-3 用地境界杭の構造

用地境界杭は、鉄筋コンクリート杭またはプラスチック杭とする。鉄筋コンクリート杭

は下図に示す構造のものとし、設置場所に応じて根固めで補強するものとする。

また、岩等の場合は、適当な長さに切断し、根入れを浅くしてコンクリートによる根固め

を行うことができる。

(用地境界杭の構造)

図1-13 (その1)

道路側 沖縄県

民地側 用地境界杭

沖縄県

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・用地境界杭が地先境界ブロックと重なる場合

図1-13 (その2)

杭と鋲の使い分け

原則として杭を使用することとし、用地境界線上にコンクリート構造物がある場合について

のみ鋲を使うものとする。

図1-14 用地境界鋲

道路側 沖縄県

民地側 用地境界杭

沖縄県

沖 縄 県

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7 暫定施工

将来4車線以上の計画の道路の、暫定施工については担当課と協議して決定すること。

暫定断面の方式の決定においては、投資効果、施工性、管理面、地域の状況及び交通安全等

を考慮して決定する。なお、暫定供用が長期にわたる場合には、特に交通の安全に対する配慮

を要するので注意する。

以下に、暫定断面の標準的なものを示す。

1)片側部分供用

も多く用いられてきた暫定施工の形で、事業費の面で有利に計画出来る。

構造物の状況や土工バランスの状況を考慮することで、初期投資を抑えることが可能で

あり、また、暫定切土の法面については法面工を要しない勾配での切り取りも計画出来る。

2)両側部分供用

① 沿道利用型

供用直後から活発な沿道利用が見込まれる場合の暫定施工の形で、事業費の面では不

利な点がある。車道部の幅員は、沿道利用者や故障車の停車等により、交通の障害が生

じないよう考慮する必要がある。

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② 沿道開発型

I型

供用後に沿道の開発が見込まれる地域の暫定施工の形で、事業費の面で有利になるこ

とがある。中央分離帯及び、用地境界付近の構造物を省略して暫定供用することを検討

する。

歩道等は設置することが原則であるが、沿道の状況等を判断し、路肩部分を拡幅して

対応するなどにより、当面の間の設置を見合わせることも考慮にいれる。

なお、上下線の交通を分離する場合の車道部の幅員は、『①沿道利用型』と同様の配慮

を要する。

Ⅱ型

供用後に沿道の開発が見込まれる地域の暫定施工の形で、I型に対し交通量が多い

等交通安全に対する配慮が必要な場合に、中央分離帯等必要な施設を設置する。

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8 関係機関との協議

道路改築にあたって生じる、道路、河川、水路、鉄道、等との協議及び設計上の注意点を示

す。実際の協議に当たっては担当課と協議のうえ実施すること。

8-1 河川協議

8-1-1 河川協議の手順

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8-1-2 協議事項

下協議や事前協議においては、実施協議及び協定の締結等に必要な事頃を確認すると共に、

設計上必要な事項を確認し、設計に反映させておくことが必要である。

8-1-3 河川内工事の設計対象水位(仮設工事)

河川内における工事により必要な仮締切及び桟橋等の設計対象水位は下記を標準とするが、

河川管理者と事前に十分協議して決定すること。

なお、出水期の河川内の工事は原則として施工しないものとするが、やむを得ず施工する

場合は不測の事態を考慮し、構造物の被災程度を勘案して決定するものとする。

表1-14 仮締切対象水位

設 計 対 象 水 位 天 端 高

工事施工期間中の過去5年間の 大流量による水位

(時刻ピーク水位)

(締切後の水位上昇を考慮)

設計対象水位

計画高水位 既設堤防高以上

工事期間中の既往 高水位

もしくは

過去の 高流量を締切設置後の断面で流下させ

るための水位

余裕高は構造令 20 条による

感潮区間 過去5ヶ年間の平均朔望満潮位+

(海岸+0.5m、河川+0.3m) 設計対象水位

非感潮区間

施工期間中の過去5ヶ年間の 大

流量による水位

(時刻ピーク水位)

設計対象水位

※1 締切工法は、水深 1.5m 以下は土堤幅4m

水深 1.5m 以上は矢板

2 出水期は別途考慮

3 高潮区間は海岸に準ずる

仮締切堤設置基準(案)

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8-2 鉄道協議

8-2-1 鉄道協議の手順

8-3 交差道路

8-3-1 交差する道路の計画について

交差する道路については、次のような事頃も調べておき設計に反映させる必要がある。

・都市計画道路として計画決定してある道路か否か

・新設又は拡幅等の計画決定はしてある道路か否か

・新設の場合ルートは決定してある道路か否か

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8-4 その他の協議

河川、道路以外の協議については、次のようなものがあげられるが、協議の実際の方法等

については担当課の確認をとることとする。

・合併施行の協議

・公有水面埋め立て法による協議

・海岸法による協議

・都市公園法による協議

・都市緑地保全法による協議

・自然環境保全法による協議

・自然公園法による協議

・森林法による協議

・文化財保護法による協議

・港湾法による協議

・急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する協議

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9 積 算

9-1 設計図書の作成について

設計図書は、決められた様式によって、きれいに作成すること。特に変更の場合の図面は

前後の関係を明確に表示すること。

9-1-1 設計説明

設計説明は下記事頃について記載例を参考に記入する。

イ)工事場所の位置及び延長

○号○○バイパスの起点側、側点 No.0~No.0 間の延長○○mの○○工事(改良、舗装、

構造物先行、橋梁等)を行うものである。

ロ)道路構造規格及び幅員

道路構造令第○種○級で設計速度○○km/hとし、幅員は全体計画 3~1.5~7~3~

7~1.5~3=26mのうち暫定施工として 2~1.5~7~1.5~2=14mを片側施工で左側を

完成させる。(又は完成断面で下部工を完成させる)

ハ)構造及び舗装構成(改良、舗装の場合)

交通区間は○交通とし、路床上のCBRは実測(又は推定)○%であるためFe安定処

理を行い、設計CBR(又は推定)○%としてFeを安定処理○○cm、下層略盤○○cm、

上層路盤○○cm、AS舗装○○cmのうち本工事で○○路盤まで施工する(又は○○路

盤迄は前年度施工済である)

(橋梁の場合)

延長及びスパン割

上部工の構造型式

下部工の躯体及び基礎型式

二)他事業等の関連

本工事は道路公団施工○○インターチェンジと関連するため別途締結した協定書にも

とづき施工するほか、盛土は現在施工中の○○工事より流用土を受入れ本工事で敷均し

締固めを行う。

ホ)図面の作成について(当初設計)

位置図、平面図……工事施工ケ所の外、前後の施工状況がわかるように記入する。

又、土取場土捨場およびその運搬経路その他積算内容で標示すべ

き事頃を記入する。

標準横断図…………工事の も標準的な代表断面を1~2断面選定し(特殊な断面は

さける)、幅員構成、舗装構成、法勾配を明記する。

縦断図………………特に暫定施工で概成とする場合は施工高を明示する。

横断図………………20m間隔を標準とするが、地形の変化がはげしい場合、補足断面

を追加する。

構造図………………必要に応じ天端高、基礎高等を記入する。

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9-2 積算の適正化

材料単価の決定、数量の算出、歩掛りの決定、仮設費等の積算にあたっては、充分な検討

を行い、下記の点は特に留意のこと。

イ)材料単価の決定にはその根拠とした資料を明確にしておくこと。

9-3 運搬路の補修

イ)設計にあたっては運搬路を事前によく調査し特に通園通学路をさけ、市町村道等を対象

とする場合は市町村道の管理者と文書で協議しておく。

ロ)補修については道路管理者が行うのを原則として協議を進めるが、特に簡易舗装程度の

道路に重荷重の土運搬車を通す場合は道路構造上の問題もあると思われるので、原形復旧

程度は計上する。但しこの場合も一般交通による損傷もあるので協議の対象としておく。

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第2節 土 工

1 適 用

土工の設計は本節によるものとするが、記述のないものについては表1-15 の関係図書他

によるものとする。

表1-15 関係図書

関 係 図 書 発行年月 発行者

道路土工-施工指針 S61.11 日本道路協会

道路土工要綱 H21. 6 日本道路協会

道路土工-軟弱地盤対策工指針 H24. 8 日本道路協会

道路土工-切土工・斜面安定工指針 H21. 6 日本道路協会

道路土工-土質調査指針 S61.11 日本道路協会

建設発生土利用技術マニュアル H16. 9 土木研究センター

建設副産物適正処理推進要綱 H14. 5 国土交通省

堤防余生基準について S44. 1 建設省

ジオテキスタイルを用いた補強土の設計施工マニュアル H12. 2 土木研究センター

河川土工マニュアル H21. 4 国土開発技術研究センター

建設汚泥処理土利用技術基準 H18. 6 国土交通省

発生土利用基準 H18. 8 国土交通省

道路土工-カルバート工指針 H22. 3 日本道路協会

道路土工-盛土工指針 H22. 4 日本道路協会

道路土工-擁壁工指針 H24. 7 日本道路協会

(注)使用にあたっては 新版を使用するものとする。

2 土及び岩の分類 2-1 土の分類

表1-16 土の分類 名 称

説 明 摘 要 A B C

礫の混入があって掘削時の能率が低

下するもの。

礫の多い砂、

礫の多い砂質土、

礫の多い粘性土

礫(G)

礫質土(GF)

砂 バケット等に山盛り形状になりにく

いもの。

海岸砂丘の砂

マサ土 砂(S)

(

普通土)

砂質土

掘削が容易でバケット等に山盛り形

状にし易く空隙の少ないもの。

砂質土、マサ土、

粒度分布の良い砂

条件の良いローム

砂(S)

砂質土(SF)

シルト(M)

バケット等に付着し易く空隙の多い

状態になり易いもの。トラフィカビ

リティが問題となり易いもの。

ローム

粘性土

シルト(M)

粘性土(C)

高含水比

バケット等に付着し易く特にトラフ

ィカビリティが悪いもの。

条件の悪いローム

条件の悪い粘性土

火山灰質粘性土

シルト(M)

粘性土(C)

火山灰質粘性(V)

有礫質土(O)

土木工事等

共通仕様書

共通編・土工

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道-1-57

2-2 岩の分類

表1-17 岩の分類

名 称 説 明 摘 要

A B C

岩塊玉石

岩塊玉石

岩塊、玉石が混入して掘削しにくく、バケット等

に空隙のでき易いもの。

岩塊、玉石は粒径 7.5cm 以上とし、まるみのあるのを

玉石とする。

玉石まじり土、岩塊、

破砕された岩、ごろご

ろした河床

軟岩

軟岩

第三紀の岩石で固結の程度が弱いもの。

風化がはなはだしくきわめてもろいもの。

指先で離しうる程度のもので亀裂の間隔は 1~5 cm

くらいのもの及び第三紀の岩石で固結の程度が良

好なもの。

風化が相当進み多少変色を伴い軽い打撃で容易に

割れるもの。離れ易いもので、亀裂間隔は 5~10

cm 程度のもの。

地山弾性波速度

700~2,800 m /sec

凝灰質で堅く固結しているもの。風化が目にそって相

当進んでいるもの。亀裂間隔が 10~30cm 程度で軽い

打撃により離しうる程度、異質の硬い互層をなすもの

で層面を楽に離しうるもの。

地山弾性波速度

700~2,800 m/sec

硬岩

中硬岩

石灰石、多孔質安山岩のように、特にち密でなくても

相当の硬さを有するもの。風化の程度があまり進んで

いないもの。硬い岩石で間隔 30~50cm 程度の亀裂を

有するもの。

地山弾性波速度

2,000~4,000 m/sec

硬岩

花崗岩、結晶片岩等で全く変化していないもの。亀裂

間隔が1m内外で相当密着しているもの。硬い良好な

石材を取り得るようなもの。 地山弾性波速度

3,000m /sec 以上

けい岩、角岩等の石英質に富む岩質で も硬いもの。

風化していない新鮮な状態のもの。

亀裂が少なく、よく密着しているもの。

土木工事等

共通仕様書

共通編・土工

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道-1-58

2-3 土量の変化率

統一分類法により分類した土の各土質に応じた変化率は表1-18 を標準とする。

なお、細分化し難いときは表1-19 を使用してよい。

表1-18 土量の変化率(1)

分 類 名 称 変化率

変化率

C 1/L C/L

主 要 区 分 記 号

レキ質土 レ キ

(GW)(GP)(GPs)

(G-M)(G-C) 1.20 0.95 0.83 0.79

レキ質土 (GM)(GC)(GO) 1.20 0.90 0.83 O、75

砂 質 土

及 び 砂

砂 (SW)(SP)(SPu)(S-M)(S

-C)(S-V) 1.20 0.95 0.83 0.79

砂質土

(普通土) (SM)(SC)(SV) 1.20 0.90 0.83 0.75

粘 性 土

粘性土 (ML)(CL)(OL) 1.30 0.90 0.77 0.69

高含水比

粘性土 (MH)(CH) 1.25 0.90 0.80 0.72

岩 塊 玉 石 1.20 1.00 0.83 0.83

軟 岩 I 1.30 1.15 0.77 0.88

軟 岩 Ⅱ 1.50 1.20 0.67 0.80

中 硬 岩 1.60 1.25 0.63 0.78

硬 岩 I 1.65 1.40 0.61 0.85

表1-19 土量の変化率(2)

分類名称

主要区分

変化率L 変化率C 1/L C/L

レ キ 質 土 1.20 0.90 0.83 0.75

砂質土及び砂 1.20 0.90 0.83 0.75

粘 性 土 1.25 0.90 0.80 0.72

表1-20 土量の変化率の考え方 求めるQ

基準のq 地山の土量 ほぐした土量 締固めた土量

地 山 の 土 量 1 L C

ほぐした土量 1/L 1 C/L

締固め後の土量 1/C L/C 1

土木工事標準

積算基準書

共通工・土工

道路土工要綱

(H21.6)

注)表のLおよびCは、土量の変化率で値は土の種類などによって異なる。

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道-1-59

2-4 島尻層泥岩について

島尻泥岩については、共通編の参考資料-2「沖縄の地形・地質」及び「島尻層泥岩上

の橋梁基礎工設計・施工指針(案)」を参照のこと。

※島尻泥岩におけるオープン掘削の床掘勾配は以下を標準とする。

・床掘勾配

与 那 原 層 新 里 層

風 化 部 未 風 化 部 -

1 :0.7 1 :0.5 1 :0.7

注) 5m毎に小段(幅=1m)をもうける。

・風化、未風化の判定の目安(与那原層)

風 化 部 未 風 化 部

色 灰色、色むらがある 鮮やかな濃紺(暗責黒色)

状 態 泥土状でもろい 岩塊状で堅固

掘 削

(バックホウ) 容 易

困難(掘削土は岩塊状)

削るような感じになる

クラック 多 小

・島尻泥岩における切土法面勾配

地 山 土 質 切 土 勾 配 標 準 値

島 尻 泥 岩 1 :1.2

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道-1-60

3 道路土工の構成 3-1 各部の名称及び標準構成

図1-15 各部の名称

3-2 名称の解説及び機能

(1)道路土工構造物

道路を建設するために構築する土砂や岩石等の地盤材料を主材料として構成される構造

物及びそれらに附帯する構造物の総称をいい、切土・斜面安定施段、盛土、カルパート及

びこれらに類するものをいう。

(2)地山

道路土工構造物の構築の用に供する自然地盤をいう。

(3)盛土部

路床面が原地盤面より高いために原地盤上に盛り立てて築造した道路の部分を盛土とい

う。

(4)切土部

路床面が原地盤面より低いために原地盤を切り下げて築造した道路の部分を切土部とい

う。

(5)盛 土

盛土部において原地盤から路床面までの土を盛り立てた部分を盛土という。

(6)切 土

切土部において原地盤から路床面までの掘削した部分を切土という。なお、対象となる

地山が土砂でなく岩の場合にあっても切土に統一する。

(7)床掘

構造物の築造・撤去を目的に、現地盤線(施工基面)から土砂等を掘り下げる箇所であり

「埋戻し」が伴う箇所である。

(埋戻し)

構造物を地中に構築するときに、あらかじめ掘削して、構造物が築造された後に元の状

態にまで掘削した土を用いて埋めること。

(8)路体

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道-1-61

盛土における路床以外の土部分を路体という。

(9) 路床

舗装の厚さを決定する基礎となる舗装より下の上の部分で、ほぼ均一な厚さ約1mの層

をいう。盛土部においては盛土の上部の、切土部においては原地盤の所定の掘削面下の約

1mの部分がこれにあたる。

また、均等な支持力をもつ路床面を得るために行った局部的な路床土の置換え部分、切

り盛り接続部の緩和区間を埋戻した部分など路床に含めるものとする。

(10) 舗装

セメントコンクリート舗装の道路においてはコンクリート舗装版と路盤を、アスファル

ト舗装の道路においては表層、基層および路盤を舗装という。なお、砂利道においては表

層と路盤を舗装という。

(11) のり面

盛土および切土によって構成される土の斜面をそれぞれ盛土のり面及び切土のり面と

いう。これらのり面には必要に応じて小段を設ける。のり面の上端をのり肩、下端をのり

尻またはのり先という。

(12)自然斜面

自然に形成された斜面をいう。

(13)斜面安定施設

自然斜面の崩壊等による道路への影響を防止又は抑制するために設置する施設をいう。

(14)カルバート

道路の下を横断する道路、水路等の空間を確保するために、盛土又は原地盤内に設けら

れる構造物をいう。

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道-1-62

3-3 長大切土と高盛土

(1)長大切土

切土高が 20m 以上ののり面は、のり面全体の地質が均質であることがまれで、断層など

の弱線を伴っていることが多いため、地質、地下水状況等をより詳細に調査し、のり面の

安定に関して検討を行わなければならない。

※長大のり面を設計する場合は、正確で詳細な情報を知るための調査を行うことが重要

である。特に断層や地下水は、のり面の安定に大きく影響を与えることが多いので、

ボーリング調査の他に、地表踏査や弾性波探査などの調査 を行い、きめ細かな検討

を行わなければならない。

※長大のり面は、施工中の崩壊や変状、推定岩盤線の変更などが生じた場合には手戻り

が大きい。したがって、のり面勾配や法面保護工の検討にあたっては、現地条件を

十分考慮しなければならない。

(2)高盛土

高盛土の設計・施工にあたっては、盛土の安定および圧縮沈下について詳細に検討を行

うとともに、排水対策や盛土材料の選定に十分留意しなければならない。

※一般に盛土高が 15m を超えるような盛土を高盛土という。

※高盛土の設計・施工にあたっては、盛土の安定および圧縮沈下について、過去の実例

を十分調査するとともに、地形・地質および湧水や支持力など基礎 地盤の状況,発

生土の有効利用を考慮した土量配分計画などを総合的に検討し、盛土構造を決定す

る。特に、のり尻付近に重要な施設がある場合や基礎地盤が不安定な場合、および

含水比が高い盛土材料を用いる場合などについ ては十分留意しなければならない。

※高盛土の安定を図るためには、盛土材料の選定および十分な締固め、のり面の緩勾配

化、排水対策の徹底,基礎地盤の強化、のり面保護の強化などが重要である。

(3)維持管理

将来にわたって維持管理が容易にできるよう、点検の動線、点検用施設について十分考

慮しなければならない。

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道-1-63

4 切 土 4-1 標準横断図

図1-16 切土断面図

4-2 設計の基本

(1)切土は、常時の作用として、少なくとも自重によって崩壊しないよう設計する。

また、降雨の作用は、雨水や湧水等を速やかに排除するため、のり面排水工やのり面保

護工の設計等で考慮する。これら設計において、一般的な表面排水施設では、供用期間中

に通常想定される降雨として、概ね3年程度の確率降水を設定すればよい。長大な自然斜

面から流出する水を排除する道路横断排水工など、重要な排水施般においては、計画交通

量に応じて概ね5〜10 年程度の確率降雨を設定すればよい。また、道路管理上、構造上

重要性の高い沢部の盛土等の道路横断排水工については 30 年程度の確率降雨とするのが

よい。地震動の作用としては、レベル1地震動及びレベル2地震動の2種類の地震動を想

定する。 (2)切土の要求性能は、重要度の区分については「重要度1」を基本とし、想定する作用に

対して安全性、使用性、修復性の観点から設定する。さらに、要求性能の設定にあたって

は、対象とする切土に連続又は隣接する構造物等がある場合はその要求性能や相互の構造

物に及ぼす影響を考慮する。

なお、道路土工構造物の要求性能は、当該道路土工構造物の損傷の程度ではなく、災害

等の外部要因に対して、道路の機能をどの程度確保することができるかということに着目

して行うが、道路土工構造物の位置や規模等の設置条件によってその影響が異なることに

留意する。 また、要求性能の照査は、理論的で妥当性を有する方法や実験等による検証がなされた

方法、これまでの経験・実績から妥当とみなせる方法等により行う。

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道-1-64

一般的には、切土の要求性能は表1−21 を目安とし設定する。性能は、図1−17 に切土の

要求性能のイメージを参考に示す。

表1−21 切土の要求性能

重要度

想定する作用 重要度1

常時の作用 性能1

降雨の作用 性能1

地震動の作用 レベル1地震動 性能1

レベル2地震動 性能2

性能 損傷イメージ

性能1

切土のり面は健全である、又は、

切土のり面は損傷するが、当該

切土のり面の存する区間の道路

としての機能に支障を及ぼさな

い性能

性能2

切土のり面の損傷が限定的なも

のにとどまり、当該切土のり面

の存する区間の道路の機能の一

部に支障を及ぼすがすみやかに

回復できる性能

性能3

切土のり面の損傷が、当該切土

のり面の存する区間の道路の機

能に支障を及ぼすが、当該支障

が致命的なものとならない性能

図1-17 切土の要求性能のイメージ

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道-1-65

(3)これまでの経験・実績から妥当と見なせる方法として、標準のり面勾配等の「道路土工

−切土工・斜面安定工指針」に示される方法により設計を行う場合は、一般的に表1−21 の

性能を満たすと考えて差し支えない。

(4)切土のり面は、のり面の浸食や崩壊を防止し、のり面の安定の確保のため、必要なのり

面保護施設を計画する。

(5)のり面の排水は、表流水、湧水等によるのり面の浸食や崩壊を防止するよう計画・設計

する。

(6)切土のり面は維持管理に配慮して、雑草抑制や除草作業ならびにのり面点検の更なる効

率化を目的にのり面の防草対策を行う。また、長大な切土のり面の場合など、必要に応じ

てのり面点検昇降施設を設置するものとする。

道路土工

切土工・斜面安定

工指針

(H21.6)

6-3、8-1

道路土工

切土工・斜面安定

工指針

(H21.6)

7-3

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道-1-66

4-3 切土のり面勾配

自然地盤はきわめて不均一で風化及び割れ目の程度、成層状態、間隙、含水量によってそ

の強度は著しく異なる。したがって現地の状況を十分考慮し、既往ののり面の状況を調査し、

表1-22 の基準値と合わせて総合的判断によってのり面勾配を決定するものとする。

表1-22 切土の標準のり面勾配

地山の土質および地質 切土高 勾配 標 準 値

硬 岩 1:0.3~

1:0.8 硬岩 1:0.3

中硬岩 1:0.5

軟 岩 1:0.5~1:0.7

風化岩 1:0.7~1:1.2 軟 岩

1:0.5~

1:1.2

砂 密実でない粒度

分布の悪いもの 1:1.5 以上 1:1.8

砂 質 土 密実なもの

5m以下 1:0.8~

1:1.0 1:1.0

5~10m 1:1.0~

1:1.2 1:1.2

砂 質 土 密実でないもの

5m以下 1:1.0~

1:1.2 1:1.2

5~10m 1:1.2~

1:1.5 1:1.5

レキ質土

岩塊または

玉石まじり

砂 質 土

密実なものまたは

粒度分布の良いも

10m 以下 1:0.8~

1:1.0 1:1.0

10~15m 1:1.0~

1:1.2 1:1.2

密実でないものま

たは粒度分布の悪

いもの

10m 以下 1:1.0~

1:1.2 1:1.2

10~15m 1:1.2~

1:1.5 1:1.5

粘土・粘質土 10m 以下 1:0.8~

1:1.2 1:1.2

岩塊または

玉石まじり

粘質土・粘

5m以下 1:1.0~

1:1.2 1:1.2

5~10m 1:1.2~

1:1.5 1:1.5

〔注1〕上表は植生などの適切な保護をした場合に適用できる。

4-4 切土小段

(1) 小段の勾配

小段の横断勾配はのり尻方向に向かって 5~10%程度付けるのが普通であるが、小段に

排水施設を設ける場合は排水溝に水が集まる構造とする。

なお、(C)及び(D)の構造については、流末(縦排水)等の検討を行う必要がある。

図1-18 小段の横断勾配

道路土工要綱

(H21.6)

切土工・斜面安定

工指針

(H21.6)

6-3-4

道路土工

切土工・斜面

安定工指針

(H21.6)

6-3-2

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道-1-67

(2) 小段の位置及び幅

切土の小段は原則として 5~10m の間隔で設けるものとし、7m毎を標準とする。小段

の幅は 1.0m(硬岩及び中硬岩)及び 1.5m (軟岩及び土砂)を標準とする。

切土高が低いか(5~6m以下)又は 7~10m 以下の硬岩の場合は単一なのり面勾配と

する。

なお、落石防護柵等を設ける場合や長大のり面の場合は、高さ 20~30m 毎に点検、補

修用の小段(幅3~4m程度)を設けておくことが望ましい。また管理用のはしご、階段

等も当初から考慮しておいたほうが望ましい。

小段の位置は同一土質からなるのり面では、機械的に等間隔としてよいが、土質が異

なる場合には湧水を考慮して土砂と岩、透水層と不透水層との境界などになるべく合わ

せて設置することが望ましい。

図1-19 小段の位置と幅

4-5 のり肩

切土のり面ののり肩は、地山が不安定で植生が定着しにくく、一般にゆるい土砂、風化

岩が分布しているため侵食を受けやすく崩壊しやすい。したがって侵食防止、植生定着及

び景観上からラウンディングを行うことを原則とする。

ラウンディングの形状は図1-20 を標準とする。なお、ラウンディングを行う場合は、

縦断方向についても図1-21 に示すように処理することを原則とする。

ただし、小段のり肩については、小段の幅員確保の面から困難な場合が多いためラウン

ディングは行わない。

道路土工

切土工・斜面安

定工指針

(H21.6)

6-3-3

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道-1-68

図1-20 ラウンディングの形状

図1-21 縦断方向のラウンディング

4-6 特に注意の必要な切土

切土において次に示す(1)~(12)の場含は、原則として土質調査を行って安定計算を行い、

のり面こう配の妥当性を検討する必要がある。

(1)用地事情その他によって切土のり面を表1-21 の標準値より急にする必要のある場合

(2)同一土質で地形、気象、湧水などの条件が同程度と思われる切土がかなり長い場合

(3)透水性の層(たとえば砂レキ層)と不透水性の層(たとえば粘土層)とが互層になっており、

その境界面の傾斜と同一方向になっている場合。(図1-22 参照)

図1-22 透水性の層と不透水性の層とが互層の場合

道路土工要綱

(H21.6)

道路土工

切土工・斜面安

定工指針

(H21.6)

6-2-3

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道-1-69

(4) 透水性の土層(崖錐など)の下に岩盤があり、その境界面の傾斜がのり面の傾斜と同

一方向となっている場合(図1-23 参照)

透水性の土砂と岩との境界面に沿って崩落することが多い。この場合のり面こう配

にあまり関係がない。

図1-23 透水性の層の下に岩盤のある場合

(5) 崖錐部分を切土する場合(図1-24 参照)

崖錐タイ積層は絶えず匍行運動を続けていることもあり、崖錐の中腹部または下端

部を切り取ると大きな崩壊を招くことがある。したがってこのような地盤を切土する

場合は、崖錐層の層厚、崖錐層自体の性質、地下水の浸透状況などを十分調査し、慎

重に安定の検討をしなければならない。

図1-24 崖錐部分の場合

(6)頁岩、粘板岩などの水成岩あるいは石墨片岩、緑色片岩などの変成岩において、そ

れらの層理あるいは片理の傾斜が切土面の傾斜と同方向になっている場合(図1-25

参照)

図1-25 層の傾斜が切土の方に向かっている場合

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道-1-70

(7)蛇紋岩、頁岩、粘板岩などが変質した場合

(8)現在までに地すべりまたは山腹崩壊の履歴があり不安定な状態にある地盤の場合

(9)断層または断層の影響を受けている地質の場合

水を含んだ細粒分の多い砂層、とくにマサ状に風化の進んだ花崗岩類および退化し

た段丘砂レキ層の場合

(10)軟らかい粘土の場合

(11)鏡肌や毛状の亀裂をもった硬い粘土の場合

(12)島尻層泥岩は切土によって露頭面が大気にさらされると、乾燥収縮によってひびわ

れを生じ、その後降雨によって温めるとスレーキングを起こし、細片化、粘土化する

ことがわかっている。このように乾湿の繰り返しにより、被覆されていない切土のり

面は短期間に風化され、風化された表層は強度を失い滑落する。又、島尻層泥岩は土

質特性としてクラック、小断層及び傾斜をもった薄い砂層を含んでおり、不安定な法

面となるので単にN値よりのり面勾配を決定するのではなく、周辺の地山及びのり面

をよく踏査し、地山性状をよく把握し、のり面勾配を決定する必要がある。ただし、

切土のり面の安定計算は盛土の場合に比較して計算にのらない要素(土質の不均一成

層状態、地下水の変動、湧水の有無、地形、気象等)を多くもっており、その上、土

の強度特性の正確な判定が困難な場合が多いことなどから信頼性が落ちるのが普通で

ある。したがって安定計算のみによってのり面こう配を決定することは危険であって、

総合的な判断によってこう配を決定するようにしなければならない。

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道-1-71

5 盛 土 5-1 標準横断図

図1-26 盛土断面図

5-2 設計の基本

(1)盛土の設計は、常時の作用として、死荷重(自重)、活荷量(載荷重)を考慮する。さら

に、降雨の作用、地震動の作用のほか、水辺に接した盛土や地下水位が高い場合には水圧・

浮力について、盛土の設置地点の諸条件、形式等によって適宜選定するものとする。

また、降雨の作用は、盛土の安定性、排水工の断面計算、のり保護工、地下排水工の

設計で考慮する。これら設計において、一般的な表面排水施設では、供用期間中に通常想

定される降雨として、慨ね3年程度の確率降雨を設定すればよい。長大な自然斜面から流

出する水を排除する道路横断排水工、平坦な都市部で内水排除が重要な場所の道路横断排

水工など、重要な排水施設においては、計画交通量に応じて概ね5〜1 0 年程度の確率降

雨を設定すればよい。また、道路管理上、構造上重要性の高い沢部の盛土等の道路横断排

水工については30年程度の確率降雨とするのがよい。地震動の作用としては、レベル 1地震動及びレベル 2 地震動の 2 種類を想定する。

(2)盛土の要求性能は、重要度の区分については「重要度1」を基本とし、想定する作用

に対して安全性、使用性、修復性の観点から設定する。さらに、要求性能の設定にあたっ

ては、対象とする盛土に連続又は隣接する構造物等がある場合はその要求性能や相互の構

造物に及ぼす影響を考慮する。

また、要求性能の照査は、理論的で妥当性を有する方法や実験等による検証がたされ

た方法、これまでの経験・実績から妥当とみなせる方法等により行う。

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-1-2

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-1-3

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-3-4

道路土工構造物

技術基準

P5

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道-1-72

一般的には、盛土の要求性能は表1−23 を目安とし設定する。性能は、図1−27、図1−28

に盛土の要求性能のイメージを参考に示す。

表1−23 盛土の要求性能

重要度

想定する作用 重要度1

常時の作用 性能1

降雨の作用 性能1

地震動の作用 レベル1地震動 性能1

レベル2地震動 性能2

性能 損傷イメージ

性能1

盛土は健全である、又は、盛土

は損傷するが、当該盛土の存す

る区間の道路としての機能に

支障を及ぼさない性能

性能2

盛土の損傷が限定的なものに

とどまり、当該盛土の存する区

間の道路の機能の一部に支障

を及ぼすがすみやかに回復で

きる性能

性能3

盛土の損傷が、当該斜面安定施

設の存する区間の道路の機能

に支障を及ぼすが、当該支障が

致命的なものとならない性能

図1−27 盛土の要求性能のイメージ

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道-1-73

性能 損傷イメージ

性能1

盛土は健全である、又は、盛土

は損傷するが、当該盛土の存す

る区間の道路としての機能に

支障を及ぼさない性能

性能2

盛土の損傷が限定的なものに

とどまり、当該盛土の存する区

間の道路の機能の一部に支障

を及ぼすがすみやかに回復で

きる性能

性能3

盛土の損傷が、当該斜面安定施

設の存する区間の道路の機能

に支障を及ぼすが、当該支障が

致命的なものとならない性能

図1−28 盛土の要求性能のイメージ

(3)これまでの経験・実績から妥当と見なせる方法として、標準のり面勾配等の「道路土

工−盛土工指針」に示される方法により設計を行う場合は、一般的に表1−23 の性能を

満たすと考えて差し支えない。 (4)盛土のり面は、盛土としての要求性能に適合した形状を保つために十分な強度を保持

する構造とするとともに、供用期間中の降雨等の外的要因に対し、浸食や崩壊に対する

耐久性を確保する構造としなければならない。 (5)雨水や地下水等を速やか盛土外に排出し、路面への帯水、水の浸入による盛土の弱体

化を防止することを目的として、現地条件に応じて適切な工種を選定し組み合わせて、

必要な排水施設を計画する。 (6)路床は、上部の舗装と一体となって交通荷重を支持するとともに、交通荷重を均一に

して分散して路体に伝えるため、変形量が少なく、また、水が浸入しても支持力が低下

しにくい材料を用いた構造としなければならない。 (7)盛土の安定性を確保し、盛土の有害な変形を抑制するため、適切な地盤調査を実施し

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-8-1

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-9-1

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-7

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道-1-74

た上で対応が必要な場合には、盛土構造、基礎地盤の状況に応じて適切な処理を施さな

ければならない。 特に、軟弱地盤上の盛土は安定、沈下、側方変形が問題となる。照査の結果、安定性

が満足できない場合、あるいは通常の施工に支障を生じるような場合には、軟弱地盤対

策の実施を検討する。 (8)盛土の織持管理は、盛土及び路面を常時良好な状態に保ち、災害を未然に防止するこ

とを目的として行う。 維持管理では、盛土の微細な変状や湧水等の兆候をできるだけ早期に見出し、必要な

補修・補強対対策等を行うことにより、設計で想定した性能を確保する。

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-5

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

6-1

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道-1-75

5-3 盛土のり面勾配

盛土法面の勾配は盛土材料の種類及び盛土高により原則として表1-24 に示す値を標準

とする。

土に浸水のおそれがある場合、盛土材料の土質が著しく悪い場合、基礎地盤が軟弱である

場合には、土質調査等を行って、安定を確保し得る法勾配を決定する。

表1-24 盛土材料及び盛土高に対するのり面標準勾配

盛 土 材 料 盛土高(m) 勾 配 標準値 摘 要

粒度の良い砂(S)、礫及び

細粒分混じり礫(G)

5m以下 1:1.5~1:1.8 1:1.5

基礎地盤の支持力

が十分にあり、浸

水の影響のない盛

土に適用する。

( )の統一分類

は代表的なものを

参考に示す。

標準のり面勾配の

範囲外の場合は安

定計算を行う。

5~15m 1:1.8~1:2.0 1:1.8

粒度の悪い砂(SG) 10m 以下 1:1.8~1:2.0 1:1.8

岩 塊(ずりを含む) 10m 以下 1:1.5~1:1.8 1:1.5

10~20m 1:1.8~1:2.0 1:1.8

砂質(SF)、硬い粘質土、

硬い粘土(洪積層の硬い粘質

土、粘土、関東ロームなど)

5m以下 1:1.5~1:1.8 1:1.5

5~10m 1:1.8~1:2.0 1:1.8

火山灰質粘性土(V) 5m以下 1:1.8~1:2.0 1:1.8

注1 盛土高とは、のり肩とののり尻の高低差をいう。(図1-29 参照)

図1-29 盛土高

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-3-1

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道-1-76

5-4 盛土小段

小段は、のり肩から垂直高さが5~7m(標準5m)下がるごとに設けるものとする。小

段幅は 1.5m を標準とし、水路は十分検討して設置するものとする。(図1-30 参照。)

小段は盛土の安定を高め、長いのり面を短く区切る事によって、のり面を流下する水の流

速をおとして、浸食が激しくなる事を防ぐのみならず、維持補修の場合には足場として利用

できるなどの効用がある。

図1-30 盛土小段

下図の様な場合は小段の高さを7mまでする事ができる。

1)小段が1段の場合

2)小段が数段ある場合の1番下の小段

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-8-1

4-9-3

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道-1-77

5-5 盛土の安定

盛土の基礎地盤は、盛土、舗装などの重量及び交通荷重を安全に支持しうるもので、かつ

盛土その他の荷重によって生ずる沈下が完成後に悪影響をおよぼすようなものであってはな

らない。

又、つぎに示す特殊な条件ののり面については盛土の安定上問題となることがあるので、

安定計算を主とした安定の検討を行ってのり面こう配や、のり面保護の工法を決定するもの

とする。

(1)盛土自体の条件

1)盛土高さが表1-22 に示すのり面標準こう配を超える場合(高盛土)

2)盛土材料が高含水比の粘土、粘質土、その他剪断強度の低い土からなる場合

3)盛土材料がシルトのような間げき水圧が増加しやすい土からなる場合

(2)外的条件

1)地山からのわき水の影響を受けやすい場合

2)盛土のり面が洪水時などに冠水したり、のり尻付近が侵食されるような場合

(例:池の中の盛土)

3)万一破壊すると隣接物に多大な損失を与える場合

4)盛土の基礎が軟弱地盤や、地すべりのように不安定な場合

5)急な斜面に盛土する場合

5-6 盛土材料

(1) 盛土材料は盛土を構成する主要材料であって、その性質が施工の難易、完成後の盛

土の性質を左右することになるので、なるべく良質な材料を選んで使用することが望

ましい。

(2) 盛土材料として好ましいのは、施工が容易で、剪断強度が大きく、圧縮度が小さい

などの性質をもった土である。

(3) 一般に次のようなものは盛土材料として使用してはならないと言われている。

A ベントナイト、温泉余土、酸性白土、有機土などの吸収性が大で、圧縮性の大きい土。

B 草木、切株、その他、多量の腐蝕物を含んだ土。

(4) 土を捨土の対象にすべきかどうかは、その土質はもちろんのこと、盛土高、盛土の

形状、切盛土量の平衡、対象となる盛土施工法、工期などの工事条件を考慮して経済

性を検討し、箇々の現場に於いて決定しなければならない。

(5) 高含水比の粘土、粘質土についても石灰処理等の処置を講じる事により使用可能な

場合は、捨土との経済比較等、その他の諸条件を検討の上できる限り使用する。

(6) 盛土材料中に大きなレキが含まれていれば、施工が困難であるばかりでなく、締固

めも不十分となるから、材料中に含まれるレキの 大寸法は 30 cm 以上のものは監督

員の承諾を得て路体の下部に使用し、路床面下 40 cm までは 15 cm、それ以下の路床

に対しては、20 cm 程度を標準とする。

(7) 路床部分の材料は、舗装設計の基礎となる部分であるので、得られる材料の中で、

なるべく良質の材料を路床部分に使用することとし、舗装構成を含め経済比較を行っ

て決定すること。

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-3

道路土工要綱

(H21.6)

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-6

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道-1-78

(8) 現道工事において、一般交通を通して嵩上げ(盛土)を行う場合盛土材料として、一般

の材料を使用すると、交通の安全を阻害することがある。このような場合の盛土材料は、

路床についてはその嵩上げ高が 50 cm 以上の場合には砂質土を用い、50 cm 以下の場合

には切込砂利等を使用する。

路体については幅員も広いので、一般の盛土箇所と同じ材料で積算する。

ただし、路床においても、現道の幅員が広い場合とか、一般交通に重大な支障を生

じない場合もあるので、現地の状況をみて、それに対応した設計積算を行うこと。

(9) 沖縄本島中南部に広く分布する島尻層泥岩は未風化で地山の状態では固結している

良好な地盤である。切土、掘削を行うと応力解放や吸水膨張による強度低下、乾湿風

化を受け易い材料であり、粘性土化しやすく、その土性は極めて不安定である。岩塊

が破砕されていない盛土では施工完了後降雨の浸潤、地山からの地下水浸透による岩

塊の軟弱化か盛土の圧縮沈下の原因になるといわれている。このため施工時において

は入念な転圧締固め、水の処理が要求される。

5-7 排水対策

盛土は、雨水や湧水等を速やかに排除する構造となるように設計する。

なお、防草対策として張コンクリートやコンクリート吹付けを実施する場合は、排水対策

を行うこととする

標準のり面勾配を適用し砕石等の土質材料を基盤排水層として用いた場合の盛土断面と

排水対策の例を、図1−31(1)に示す。ただし、岩砕盛土等の盛土材の透水性が高い場合や

平地部の両盛土で基礎地盤の地下水位が深く影響を受ける可能性がない場合には、排水対

策を省略しでもよい。

また、片切り片盛り、腹付け盛土、斜面上の盛土、谷間を渡る盛土等降雨や浸透水の作

用を受けやすい場合の盛土断面と排水対策の例を図1−31(2) に示す。

図1−31(1) 平地部盛土における盛土断面の排水対策例

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-3

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道-1-79

図1−31(2) 地山からの湧水の影響を受けやすい盛土断面の排水対策例

図1−31(3) 地下排水工例

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道-1-80

5-8 土羽土

土羽土は原則として設けるものとする。その厚さは法面直角に 30cm の厚さを標準とする。

シラスについてはシラス土工指針によること。

土羽土の材料は細粒土(F){シルト(M)を除く}を使用することを標準とする。

5-9 軟弱地盤上の盛土

(1)設計

軟弱地盤上に盛土を行う場合は も適した処理工法を設計するため次によること。

(イ)必ず事前に基礎地盤の調査および試験を行うこと。

(口)施工期間、盛土工程を考慮して安定および沈下計算などを行って地盤処理工の必

要性および処理工法を行うこと。

(ハ)盛土のスべリ破壊に対する安全率は 1.2 以上とする。

(ニ) 補修終了時の残留沈下量は、橋梁などの取付盛土部は 10〜30cm の範囲で道路の

特殊性に応じ決定する。その他の区間については、盛土内に設ける構造物の種類

および許容残留沈下量、路面までの土かぶり深さ、路面および沿道に及ぼす沈下

の影響などを十分考慮して目標値を定めるものとする。

なお、軟弱地盤対策の詳細については「道路土工-軟弱地盤対策工指針」による

ものとする。

(2)施工

軟弱地盤上に盛土の施工を行う場合は設計の思想を十分把握し施工管理を行いながら

施工しなければならない。

(イ)盛土施工中は沈下盤等を設置し現地盤の圧密速度を管理しながら盛土の築造を行

わなければならない。

(ロ)盛土の施工速度は沈下と、時間の関係を図示して検討するとよい。

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-8-1

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

3-4-3

5-2,5-11

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道-1-81

(3)設計書作成時の注意事項

軟弱地盤と予想される場合は圧密沈下に対する盛土量の契約変更の有無を特記仕様書

にはっきり明示しておくこと。なお、変更する場合は沈下盤、消石灰等を現地盤上に設

置し沈下の量が施工終了時に確認できるようにしておくこと。

もし前期の設置等を怠った場合は契約変更をできないので注意すること。

5-10 その他の盛土構造

用地の制約や軟弱地盤等の特殊な条件下において用いる盛土構造として、以下のような工

法がある。これらの適用にあたっては、「道路土工-盛土工指針」を参照。

なお、のり面勾配がかなりきつく、土圧を考慮した設計が必要となる補強土壁の設計の考

え方については、「道路土工-擁壁工指針」を参照。

(1)補強盛土工法

ジオテキスタイルのような補強材を盛土中に敷設する工法で、盛土の安定性向上性や、

安定した急勾配盛土を築造し用地縮減を図る目的から施工実績が増加している。

また、排水性を有するジオテキスタイルの敷設により、高含水比粘性土の盛土材の圧

密促進を図る場合もある。

(2)軽量盛土工法

軽量盛土材を採用することにより、盛土を軽くして地盤に加わる負荷を軽減させるこ

とを目的とした工法で、当初は軟弱地盤対策として利用が始まったが、 近では山岳道

路のような急峻な斜面上の盛土に適することで、切土を極力抑え自然の改変を少なくす

る場合に用いられるケースが増加している。軽量盛土材の種類として表1-25 に示すも

のがあげられる。

表1-25 軽量盛土材の種類

軽量盛土材料の種類 単位体積重量

(kN/m3) 特 徴

発砲スチロールブロック 0.12~0.3 超軽量性,合成樹脂発泡体

気 泡 混 合 軽 量 土 5~12 程度 密度調整可,流動性,自硬性,発生土利用可

発 泡 ウ レ タ ン 0.3~0.4 形状対応性,自硬性

発 砲 ビ ー ズ 混 合 軽 量 土 7 程度以上 密度調整可,土に近い締固め・変形特性,発

生土利用可

水 砕 ス ラ グ 等 10~15 程度 粒状材,自硬性

火 山 灰 土 12~15 天然材料(しらす等)

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-11

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道-1-82

(3)変形に対する制限が厳しい箇所や異種構造物との隣接箇所への適用

道路用地に制限のある市街地や都市計画道路等では、構造物の変形に制限を設けるこ

とがある。このような箇所に補強土壁を適用する場合、定められた形状に精度よく施工

し、施工後の変形をできるだけ抑制することが求められる。このため必要に応じて改良

等により強固な基礎地盤を確保し、その上でせん断抵抗角が大きく、圧縮変形量の小さ

い盛土材料を用いて、十分に締固めを行うとともに、確実な施工管理に基づき精度の高

い施工を行うことが必要である。また、補強土壁を他の構造物に隣接して設けると、地

震等の作用に対する挙動の特性の違いにより、壁面材の破損や境界部において開きやズ

レを生じて背後の盛土材がこぼれ出すことが懸念される。このため、他の構造物との境

界部では、緩衝部を設けるなど、壁面材の局部的な損傷を防止し背後の盛土材がこぼれ

出さない適切な対策を行う必要がある。

5-11 盛土のり面におけるのり面保護工

盛土のり面は、のり面の浸食や崩壊を防止する構造となるよう設計する。盛土のり面にお

けるのり面保護工の選定フローを図1−32 に示す。

図1-32 盛土のり面におけるのり面保護工の選定フロー

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-8-2(2)

道路土工

擁壁工指針

(H27.7)

6-1

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道-1-83

6 段切り、片切り、片盛り、切盛境及び腹付盛土

6-1 段切り及び片切り、片盛り

原地盤の地表勾配が、道路横断方向で1:4~0.5 の箇所に盛土を行う場合は表土を除去

した後に段切りを設けるものとする。図1-33 を標準とする。

片切り、片盛りの接合部には図1-33 に示すように1:4程度の勾配をもって緩和区間を

設けるものとする。また、この場合の排水については十分な処置をとることが必要であり、

湧水の恐れのある場合には接続部の切土面に地下排水溝を設ける。地下排水溝の構造は、湧

水の状態、地形、土質等を考慮して定めるが、有孔管を設置すると共に目づまり防止の処置

を行う。

図1-33 片切り片盛り部のすり付けの例

6-2 切盛境の摺付け

切土と盛土の縦断方向の接続部では地盤強度の急激な変化を避けるため、切土の摺付を図

1-34 の(1)~(3)に示すように行い、同質の盛土材料で盛土する。

(1)切土部路床に置換のないとき

図1-34(1) 切盛境の摺付け

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-10

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

5-11

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道-1-84

(2)切土部路床に置換えのあるとき

図1-34(2) 切盛境の摺付け

(3)原地盤が岩で摺付け区間を長くとることが不経済となる場合

図1-34(3) 切盛境の摺付け

6-3 腹付盛土

既設盛土に腹付けすることにより、基礎地盤の沈下や既設盛土の変形等が懸念される場合

は、原則としてあらかじめ基礎地盤の調査を行いその対策工法を検討するものとする。

これらの適用にあたっては、「道路土工-軟弱地盤対策工指針」を参照。

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-10

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道-1-85

7 盛土と構造物の接続部の施工

7-1 盛土の沈下と構造物

橋台、カルバートなどの構造物と盛土との接続部分には不同沈下による段差が生じやすく、

そのため舗装の平坦性が損なわれがちである。

段差の発生は軟弱な基礎地盤の盛土部分に多く見られるが、盛土と構造物の接続部の沈下

の原因に、基礎地盤の沈下、盛土自体の圧密沈下、構造物背面の盛土による構造物の変位な

どが上げられるが、ほかに、施工法にも一因あると思慮される。すなわち、道路工事では一

般に構造物と盛土が工程上並行して施工されるため、構造物の裏込めおよび取付け盛土は構

造物と盛土がほぼ完成した段階で施工されることになる。

(1)接続部の沈下の原因

1)構造物基礎の堀削土がまじり、盛土材料の品質が悪くなりやすいことおよび構造物の

立上がりとの間が乱雑になりやすいこと。

2)裏込めの部分は立上がった橋台、ボックスカルバートおよびそれらの翼壁と盛土とに

囲まれていることが多いので排水が不良になりやすいこと。

3)埋戻し、裏込めが 後に施工されるため高まきになりがちであり、さらに場所が狭い

ため締固めが不十分となりやすいこと。

(2)盛土と構造物の接続部の段差をなくす対策

1)裏込めの材料として、締固めが容易で、非圧縮性、透水性があり、かつ、水の浸入に

よっても強度の低下が少ないような安定した材料を選ぶこと。

2)狭い限られた範囲での施工による締固め不足にならぬよう、施工ヤードを可能な限り

広くとるとともに、一般盛土部と同様に、できるかぎり大型締固め機械を用いて、入念

な施工を行うこと。

3)構造物裏込め付近は、施工中、施工後において、水が集まりやすく、これにともなう

沈下や崩壊も多い。したがって、施工中の排水勾配の確保、地下排水溝の設置 など十

分な排水対策を講じること。

4)必要に応じて構造物と盛土との接合部に踏掛版を設ける。

5)軟弱地盤上の接続部では特に沈下が大きくなりがちであるので「道路土工-軟弱地盤

対策工指針」を参考に必要な処理を行って沈下をできるだけ少なくする。

などが考えられる。

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-10

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道-1-86

7-2 踏掛版

(1)踏掛版の設置基準

橋梁および土かぶりの薄いボックスカルバートと盛土と取付部分に生じる段差によって、

自動車の乗心地が低下することを防ぎ、伸縮装置や床版への衝撃を緩和し、維持補修費の

低減をはかるために、踏掛版を設置することを標準とする。踏掛版は、その上面は路面と

平行であり、設置幅は車線及び路肩を含む幅としなければならない。

図1-35 橋台の踏掛版例

表1-26 踏掛版設置基準例

注)1数字は踏掛版の長さ。

2盛土高とは、フーチング下面から舗装面までの高さとする。

3軟弱地盤箇所については、地盤処理等を行った場合は普通地盤の踏掛版に準ずること。

なお、地盤処理を行わない箇所については担当課と協議の上設置すること。

4カッコのないものは設計速度 80km/h以上の場合に、カッコのあるものは設計速度 80km /h未満の場合に

それぞれ適用する。

道路土工

盛土工指針

(H22.4)

4-10

施設等の有無

地盤の種類

右記以外の区域にある橋台 連絡等施設内もしく

はその前後各 500m

およびトンネルの前

後各 500m 内の区域

にある橋台

普 通 地 盤 軟弱地盤

橋台の形式

裏込め材

種類橋台

切込砂利、硬岩な

ど締固めによっ

て細粒化しない

もの

左記以外の材料 すべての材料

6m未満 設置しない

(設置しない)

(5)

8

(8)

8

(8)

6m以上

12m 未満

5

(5)

(5)

8

(8)

8

(8)

12m 以上 8

(5)

(5)

8

(8)

8

(8)

中抜き盛こぼし

6m未満 5

(5)

(5)

8

(8)

8

(8)

6m以上 8

(5)

(5)

8

(8)

8

(8)

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道-1-87

(2)踏掛版の設置位置および設置幅

1)設置位置

踏掛版はその上面が路面とほぼ平行し、その上面は原則として路面から 40 cm 下に位置す

るように設置する。

2)設置幅

踏掛版の設置幅は原則として車道及び路肩を含む幅とし歩道及び路上施設帯(緑地帯)等

は含まれないものとする。なお路肩部に側溝等がある場合はこれを除く。

(3)アンカーボルト

1)アンカーボルト等

踏掛版と受台はアンカーボルトD22長さ60 cmを 75 cm間隔で設置することを標準とする。

アンカーボルトの周辺には補強筋を設けるものとする。

なお、アンカーバーについては溶融亜鉛メッキを標準とする。

(4)その他

1)目地材

踏掛版とパラペット間、踏掛版と受台間および踏掛版と翼壁間にはそれぞれ目地材を挿入

する。

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(5)構造図

(1)5m及び8m踏掛版の場合

踏掛版は図1-36、表1-27 に示す構造を標準とするが、踏掛板上の舗装厚を 400mm と

し、「道路橋示方書Ⅳ(p.611)」により設計を行い、配筋を決定しているため、舗装厚 400mm

以外の場合は別途考慮すること。

なお8m踏掛版は、( )を用いるものとする。

図1-36

注)A活荷重の8m踏掛版については、踏掛版厚 480 ㎜を変更せず、鉄筋のかぶり 75 ㎜を 70 ㎜とす

ること(下側かぶり)。

表1-27(a) 長さ5mの場合 表1-27(b) 長さ8mの場合

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7-3 裏込め及び埋戻し

盛土における構造物の裏込め部あるいは、切土における構造物の埋戻し部には、良質の材

料を使用し、十分な排水を考慮して入念な施工を行わなければならない。

(1)裏込め及び埋戻しの材料

構造物の裏込め、埋戻しの材料は締固めが容易で圧縮性が小さく、また透水性が良く、

かつ、水の浸入によっても強度の低下が少ない安定したものを選ぶ必要がある。粒度分布

のよい切込砕石、切込砂利及び荒い砂は、裏込め及び埋戻し材料として非常に優れている。

しかし、このような良質材を大量に使用することは工事費の面などから困難な場合が多

いが、表1-28、1-29 は裏込め、埋戻しとして適した材料の性質を示したものである。

なお、大型締固め機械を使用して十分な締固めが可能であるならば、路体部分の裏込め

には、良質の盛土材料(74μ(N0.200)フルイ通過量 O~30%、塑性指数 20 以下、水浸CB

R5以上)を用いれば特別に裏込め材料を求めなくともよい。

また、ソイルセメントも埋戻し、及び裏込め材料としては非常に優れている。埋戻し、

及び裏込め材料として、ソイルセメントを使用する場合には、排水に留意しなければなら

ない。

この場合のソイルセメントの配合は「舗装設計施工指針付録-9、2-3」に準じて行

えばよい。

表1-28 裏込め及び埋戻しに適する材料の粒度と性質

大 寸 法

4,760μ

(No. 4)フルイ通過量

74μ

(No.200)フルイ通過量

塑性指数

100 ㎜

25~100%

O~25%

10 以下

表1-29 参考土質

名 称 土 質 の 程 度 適 要

砂 質 土

砂 質 土

及 び 砂

粒度分布が良い砂またはレキ質の砂、

細粒分はわずかまたは欠如(SW) 砂、砂質ローム、砂利混じり土砂山

土、真砂土、固砂、砂質ローム 粒度分布が悪い砂またはレキ質の砂、

細粒分はわずかまたは欠如(SP)

レ キ 質 土

レ キ 質 土

およびレキ

シルト質のレキ、砂レキ、砂、シルト

混合土 (GM) 砂

砂混じり砂利

土砂又は粘土混じり砂利

砂利 粘土質のレキ、レキ、砂、粘土混合土

(GC)

粒度分布が良いレキまたはレキ砂混合

土、細粒分はわずかまたは欠如

(GW)

玉石又はレキ混じり土砂

玉石又はレキ混じり砂

土砂を含む崖錐

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(2)裏込め及び埋戻しの構造

裏込めは、大形の締固め機械が使用できる構造が望ましく、このような場合には、前述のよ

うに良質の盛土材料であれば特別に裏込め材料を求める必要もなく、工事費も安く、経済的と

なる。しかし、盛土材として良質のものを工事現場近くに得られない時には、裏込め材の使用

量を少なくし、中、小型の締固め機械を用いて十分に締固める構造とする。

基礎掘削及び切土部の埋戻しは、在来地盤の掘削量を 小限とし、良質の裏込め材を中、小

形の締固め機械で十分締固める構造とする。

裏込め及び埋戻し部には雨水が集中し易いので、排水設備を設けることが望ましい。排水設

備としては構造物壁面に沿って地下排水溝を設け、これを地下暗渠で連結し、集水したものを

盛土外に導く。構造物壁面に沿って設置する地下排水溝の材料としては、合成樹脂パイプ、(網

パイプ、有孔パイプ)又はポーラスコンクリートパイプ等がある。

図1-37 ボックスカルバートの裏込構造の一例

図1-38 橋台の裏込構造の一例

図1-37、38 に構造物

の裏込め構造の例を示し

たが、構造については道路

の性格、現場条件及び裏込

め材料の実情を勘案して

定めることが望ましい。

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道-1-91

(3)裏込めの施工

1)裏込めの敷均し厚は仕上り 20 cm とし、締固めは路床と同程度に行う。

2)裏込材は、小型ブルドーザ、人力等により平坦に敷均し、ダンプトラックあるいはブルド

ーザ等による高まきは避けなければならない。

3)締固めはできるだけ大きな締固め機械を使用し、構造物縁部及びウイング部等についても

小型締固め機械により入念に締固めなければならない。

4)裏込め部は雨水の流入や湛水が生じやすいので、工事中は雨水の流入を極力防止し、浸透

水に対しては、地下排水を設けて処理することが望ましい。埋戻し部分等、地下排水が不可

能な箇所の湛水は埋戻し施工時にはポンプ等で完全に排水しなければならない。

5)裏込め材料に構造物掘削土を使用できない場合は、掘削土が裏込材料にまざらないように

注意する。

6)構造物が十分に強度を発揮しないうちに裏込め又は盛土によって構造物に土圧を与えては

ならない。また、構造物が十分な強度を発揮した後でも、構造物に偏土圧を加えてはならな

い。例えばカルバート等の裏込め又はその付近の盛土は、構造物の両側から均等に薄層で締

固め、片方に不均一な荷重が加わらないようにしなければならない。

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道-1-92

8 法面保護工

8-1 法面保護の選択

のり面保護工は、のり面の侵食や風化を防止するため、植生または構造物でのり面を被覆

したり、排水工や土留構造物でのり面の安定を図るために行うもので、標準的な工種を示す

と表1-30 のとおりである。

表1-30 のり面保護工の主な工種と目的

分類 工 種 目 的 ・ 特 徴

種子散布工

客土吹付工

植生基材吹付工

(厚層基材吹付工)

植生シート工

植生マット工

浸食防止、凍上崩落抑制、植生による早期全面被覆

植生筋工 盛土で植生を筋状に成立させることによる浸食防止、

植物の侵入・定着の促進

植生土のう工

植生基材注入工

植生基盤の設置による植物の早期生育

厚い生育基盤の長期間安定を確保

張芝工 芝の全面張り付けによる浸食防止、凍上崩落抑制、早

期全面被覆

筋芝工 盛土で芝の筋状張り付けによる浸食防止、植物の進

入・定着の促進

植栽工 樹木や草花による良好な景観の形成

苗木設置吹付工 早期全面被覆と樹木等の生育による良好な景観の形

金網張工

繊維ネット張工

生育基盤の保持や流下水によるのり面表層部のはく

落の防止

柵工

じゃかご工

のり面表層部の浸食や湧水による土砂流出の抑制

プレキャスト枠工 中詰の保持と浸食防止

モルタル・コンクリート吹付工

石張工

ブロック張工

風化、浸食、表面水の浸透防止

コンクリー卜張工

吹付枠工

現場打ちコンクリート枠工

のり面表層部の崩落防止、多少の土圧を受ける恐れの

ある箇所の土留め、岩盤はく落防止

石積、ブロック積擁壁工

かご工

井桁組擁壁工

コンクリー卜擁壁工

連続長繊維補強土工

ある程度の土圧に対抗して崩落を防止

地山補強土工

グラウンドアンカー工

杭工

すべり土塊の滑動力に対抗して崩落を防止

注)構造物工を植生工の施工を補助する目的で用いる場合は緑化基礎工と定義される。

緑化基礎工は植生工が単独で施工できない場合に用いるものである。植生工と緑化

基礎工の組み合わせの例に関しては道路土工「切土工・斜面安定工指針」の解表

8−2を参照されたい。

道路土工

切土工・斜面

安定工指針

(H21.6)

8-1

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道-1-93

8-2 工法の選定フロー

(1)切土のり面におけるのり面保護工の選定フロー

図1-39

道路土工

切土工・斜面

安定工指針

(H21.6)

8-2

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道-1-94

(2)盛土のり面におけるのり面保護工の選定フロー

図1-40

(道

路土

切土

・斜

面安

定工

指針

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道-1-95

このフローの中で個々の判断を下す際の判断基準としては、下記の事項を参考にする。

注1)地山の土質に応じた安定勾配としては、表1-22 に示した地山の土質に対する標準のり

面勾配の平均値程度を目安とする。また、安定勾配が確保できない場合の対策として、

切直しが可能な場合は切直しを行う。

注2)落石のおそれの有無は「落石の調査」および「落石対策便覧」を参考にして判断する。

注3)地山の分類は、「道路土工-土質調査指針」に従うものをする。

注4)第三紀の泥岩、けつ岩、固結度の低い凝灰岩、蛇紋岩等は切土による応力解放、その後

の乾燥湿潤の繰返しや凍結融解の繰返し作用等によって風化しやすい。

注5)風化が進んでも崩壊を生じないような安定勾配としては、密実でない土砂の標準のり面

勾配の平均値程度を目安とする。

注6)しらす、まさ、山砂、段丘礫層等、主として砂質土からなる土砂は表面水による侵食に

は特に弱い。

注7)自然環境への影響緩和、周辺景観との調和、目標植生の永続性等を勘案して判断する。

注8)主として安定度の大小によって判断し、安定度が特に低い場合にふとんかご工、井桁組

擁壁工、吹付枠工、現場打コンクリート枠工を用いる。

注9)構造物による保護工が施工されたのり面において、環境・景観対策上必要な場合には緑

化工を施す。具体的な工法ついては「環境・景観対策」を参照する。

注 10)ここでいう切直しとは、緑化のための切直しを意味する。

注 11)盛土のり面の安定勾配としては、表1-24 に示した盛土材料および盛土高に対する標準

のり面勾配の平均値程度を目安とする。

注 12)ここでいう岩砕ズリは、主に風化によるぜい弱化が発生しにくいような堅固なものとし、

それ以外は一般的な土質に準ずる。

注 13)侵食を受けやすい盛土材料としては、砂や砂質土等があげられる。

注 14)降雨等の侵食に耐える工法を選択する。

また、崩壊形態別ののり面保護工は、いくつか考えられるが、対策工法の例としては「道路土

工-切土工・斜面安定工指針」を参照する。

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道-1-96

8-3 植生による法面保護工

のり面緑化工は植生工と緑化基礎工とからなり、緑化基礎工は必要な場合に適宜植生工と組

み合わせて用いられる(図1-41)。植生工は、播種工と植栽工に分けられ植栽工には芝等の草

本を用いるものと、木本を用いるものがある。

(1) 路肩法面

路肩法面は、雑草による交通管理施設の視認性の妨げの防止等を目的に行う。

※歩道幅員(3m未満)狭小箇所の有効幅員確保対策としての利用を含む。

(a) 対策箇所

・改築工事等について全箇所で対策を行う。

・維持修繕及び交通対策対応箇所においては、道路交通の影響が大きい箇所等を優先し対

策を実施する。

※ 対策工については、現地の状況等を考慮した対策工を選定すること。

切土部の場合

※ 対策工については、現地の状況等を考慮した対策工を選定すること。

道路土工

切土工・斜面

安定工指針

(H21.6)

8-3

t=70mm

t=70mm

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道-1-97

図1-41 のり面緑化工の分類

8-4 構造物による法面保護工

構造物によるのり面保護工は、無処理で安定が確保できないのり面で植生が不適なのり面、

植生だけでは浸食に対し長期安定が確保できないと考えられるのり面、あるいは崩壊、落石、

凍結等のおそれのあるのり面に対して行うものである。

これらの適用にあたっては、「のり枠工の設計・施工指針」、「道路土工-のり面工・斜面安

定工指針」を参照

8-5 のり面排水工

のり面排水工には、表流水を対象とするものと、地下水・湧水を対象とするものがあり、

目的に応じて適切な施設を選定して速やかに排除するよう設計・施工を行う。

(1)表面排水工 ① のり肩排水溝…のり面内への表流水の流下を防ぐ ② 小段排水溝……のり面内に生じる表流水・湧水等を縦排水溝へ導く ③ 縦排水溝………のり肩排水溝、小段排水溝の水をのり尻へ導く

(2)地下排水工 ① 地下排水溝……のり面内の地下水を排除する ② じゃかご工……地下排水溝と併用してのり尻を補強する ③ 水平排水孔……湧水をのり面の外へ抜く

① 地下排水溝 のり而の湧水や地表面近くの地下水を集めて排水するためには、図1−43 のような地下

排水溝が有効である。地下排水溝は地下水位や湧水状況から位置及び構造を決定する。地

下排水溝はのり面に生じる浸透の状況によって W 形や矢はず形等に配置するが、浸透水

の多い箇所やいくつかの溝が合流する箇所には集水ますや溝の中に穴あき管を埋設する

のが望ましい。 ② 水平排水孔

のり面に小規模な湧水があるような場合には、図1−43 に示すような孔を掘って穴あき

管等を挿入して水を抜く。孔の長さは一般に 2m 以上とする。長大のり面が地下水により

安定性が脅かされると考えられる場合には帯水層まで孔をあけ水を抜く。この場合はボー

リングにより孔をあけ、ストレーナーを付けた管を挿入する。

道路土工

切土工・斜面

安定工指針

(H21.6)

8-4

道路土工

切土工・斜面

安定工指針

(H21.6)

7-3-2

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道-1-98

図1-42 湧水による崩壊例

図1-43 地下排水工の例

(3)現場打吹付法枠工の排水処理

現場打吹付法枠工の枠内排水については、中詰工がモルタル等の密閉型の場合はパイプ

方式を基本とし、初期投資及び長期的な経済性や供用期間中の管理の確実性等を考慮した

うえで、図1−44 を参考に適切な排水方法を選択する。

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道-1-99

図1-44 現場打吹付法枠工の排水方法(参考図)

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道-1-100

9 環境・景観対策 9-1 環境・景観対策の基本的な考え方

のり面工・斜面安定工の環境・景観対策は、「環境・景観の調査」の結果をもとに検討する。

のり面工は、立面的な施工がなされることから、その規模が大きいほど施工後、目に付きや

すく環境への影響も少なくない。設計においては、斜面の改変を抑えたり、のり面勾配の緩

和やのり面の規模を極力小さくすることによって周辺の環境や景観への影響と可能な限り回

避、低減することが基本であり、のり面の造成により改変された部分には積極的に樹林化を

行う等、自然環境の回復を行うことも重要である。しかし、実際の設計においては地形的、

技術的あるいは経済的制約等から必ずしもこのような条件を満足することが難しい場合が少

なくない。そのような場合には、まずのり面工・斜面安定工の第一目的である、のり面・斜

面の安定を図り、その上で周辺の環境や景観への影響を抑えるための対策を講じる必要があ

る。

9-2 環境・景観対策の一般的手法

(1)環境対策

環境対策、特に自然環境対策の一般手法としては、前述したように改変面積を少なくす

ることが基本であるが、場所によっては緩勾配化により自然植生の復元を容易にしたり積

極的に周辺と同様の樹種による樹林化を行う等の手法を採用することが効果的である。ま

た、用地取得から設計・施工・管理まで含めたトータルコストも考慮する必要がある。

自然環境の保全を考慮した計画を行う場合には、次のような点に留意する。

1)自然環境の把握

道路の通過する地域の自然環境は、人為の加わった里山的なものから自然度の高い

天然林まであり、それを構成する生態系は地域毎に大きな差がある。天然林や湿原環

境では、一旦改変が加わると復元が困難なことが多い。ススキ群落やアカマツ林等で

は改変されても年月の経過とともに復元する。このように、地形を改変する影響や自

然環境の復元度合いは、地域の各種条件によって大きく異なる。

以下に、自然環境対策を検討するうえでの考え方の一例を示す。

道路土工

切土工・斜面安

定工指針

(H21.6)

4-4-1

道路土工

切土工・斜面安

定工指針

(H21.6)

4-4-2

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道-1-101

表1-31 自然環境対策の考え方の一例

分 類 対 象 地 域 対策方針

A.特に注意を要

する自然環境

地域

・環境庁植生自然度8以上の自然性の高い

地域(自然草原,自然林,二次林のうち

自然林に近いもの)

・自然環境の保全を目的とする法今により

指定された地域(国立公園,国定公園等

の特別地域)

・学術上の観点から重要と認められる地域

・貴重種,重要種の生息地域

・生物相が多様な地域(例:樹林と水環境

がセット)

・脆弱な自然環境地域,個体群(湿地等)

・改変後の復元性が

低い地域

・改変面積を抑える

工法を採用する

B.上記以外の自

然環境地域 ・二次草原,造林地,二次林

・改変後の復元性に

期待できる地域

・むしろ緩勾配に造成

し植生の侵入を促

すことも有効

C.自然の豊かな

都市環境地域

・Bに準じているが,都市的な建造物が景

観構成要素として存在する地域

2) 改変面積の縮小化

のり面工の計画段階において、切土による自然の改変を 小限にとどめ、貴重な環境を

できる限り残しながら道路を造成する対応である。具体的には、のり面工上方の安定を検

討した上で、切土、盛土の勾配を標準より急にして構造物等で安定化を図ったり、道路の

中心線を谷側に少し移動したりすることによって、土工量とのり面積を減らすこと等があ

げられる(図1-35)。

また、急勾配の岩盤斜面等では、道路の中心線を少し谷側へ移動させて桟橋にしたり、

架橋することによって、土工量とのり面積を減らすこともできる(図1-36)。

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道-1-102

(a)標準勾配による切り盛りの基本形状 (b)構造物等を利用して切・盛土量を減らす

(c)路線を谷側に少し移動して切土量を減らす

図1-45 土工量やのり面積を減じる切り盛りの例

(a)標準勾配による切土の基本形状 (b)路線の移動と桟橋併用により

切土量を減らす

図1-46 桟橋や架橋の利用例

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道-1-103

3)影響の緩和

周辺の環境を保全するために道路建設の影響を極力緩和することも必要な手法である。

隣接する樹林の伐開面から一定範囲の林縁部は、土壌の乾燥、風の吹き込み等の環境の

変化に伴い植生や動植物相が影響を受けやすい状態となる。林縁部を保護するために環境

の変化の緩衝を目的としたマント植栽等の緑化が有効となる。

図1-47 緩衝緑化の概念図

のり面工での対応としては、緩衝機能が発揮されるように十分な植栽と植栽基盤(土壌・

植栽余裕幅等)を確保すること等が挙げられる。

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道-1-104

4) 自然環境との調和

道路建設により改変された環境を周辺環境に調和するものとして修復していくことも必

要となる。のり面を周辺環境に調和させ自然を回復するためには、のり面における植生を

周辺植生に調和したものとすることが必要となる。

のり面の植生を周辺植生に調和されたものにするためには、時間の経過による自然遷移

に任せる方法や積極的に地域の植生を導入する等の方法があり、個々の箇所に求められる

自然環境条件や社会的条件等を考慮して選定しなければならない。ただし、目標とする植

生を導入するためには、のり面構造自体がその植生の成立を可能とするよう、のり面勾配

をゆるくするなどの対応が必要となる場合がある(図1-49)。 積極的に地域の植生を導

入する手法としては、表土を保全し覆土として用いたり周辺植生の構成種である樹木を植

栽する方法がある。

図1-48 ランダム切土による自然景観造成

図1-49 のり面緑化を容易にする土工例

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道-1-105

(2)景観対策

景観対策の手法には、対象を周辺景観から際だたせる対比の手法と周辺景観に埋没させる

調和の手法があり、のり面では周辺と調和させることが原則である(図1-50)。調和を図る

には造景三要素と呼ばれる①形態、②材質、③色彩を周辺の景観と近似のものとすることに

より周辺景観との同化融合を図り目立たなくさせる。また、単に目立つものや周辺景観と調

和しがたいもの等を、周辺景観と馴染むものにより遮蔽し見えなくする手法も調和の手法の

一つとして利用されることが多い。

のり面に施工する構造物のデザインに関しては、次のような点に留意する必要がある。

①介入要素が目立たなければ、介入要素は「地」となり、逆に興味対象が「図」となる。

②介入要素が目立つと、介入要素は「図」となり、興味対象が「地」となる。

図1-50 「地」と「図」

1)統一性

景観整備を図るうえで、 も基本となる概念である。

造景三要素の①形態、②材質、③色彩や様式等の要素のうちのひとつ、またはいくつ

かを統一することによって、景観に統一性をもたせ良好な景観を形成することができる。

具体ののり面景観整備においては、一部の構造物や区間だけが造形的に優れていても全

体として統一性に欠ける場合には奇妙な景観となったり、逆に統一を図りすぎると画一

的になり、単調で「飽き」のくる景観となるため、注意が必要である。

2)連続性

大きくは「統一性」に包含される概念であるが、特に「連続性」は時間の要素を含ん

だシークエンス景観(自動車から外を眺めるように変化していく景色)に用いられる(図

1-51)。

人々の行動が一定の方向性を有している場合、事象(景観)の変化が予測の範囲内に

とどまっているうちは安心感があるが、予測し難い急激な変化あるいは予測に反する変

化は心理的不安定をもたらすため、心理的な安定感を阻害するような景観の急激な変化

の連続は避けなければならない。

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道-1-106

(a)シーン景観の模式図 (b)シークエンス景観の模式図

図1-51

3)円滑性

人々は基本的には丸いもの、滑らかなもの等、円滑な形状のものに安心感を覚え、逆

に尖ったもの、角張ったもの等の鋭敏な形状に対しては本能的に身の危険を感じ、心理

的安定が乱されやすい。このためのり面景観を形成する構造物等は、鋭敏な形状は避け、

円滑な形状を採用することも必要である。

4)一体性

これも広い意味での「統一性であり、素材あるいは材質という言い方ができる。

構造物は一体的に見えることにより安心感を与える。構造物の一部が一つの部品また

は別の物体として認識されることは好ましくない。

5)安定性

視覚的に不安定な構造物に対しては、身の危険を覚え心理的安定感が得られにくい。

安定感の得られやすい形状としては、三角形やピラミッド式、雛壇式等があり、逆三角

形やオーバーハングしたものは安定感を損ないやすい。

6)軽快性

一般的には圧迫感の解消という表現がなされる。ヒューマンスケールを超える巨大な

構造物や空間に架かる構造物は人々に圧迫感を与え心理的な安定が乱される。構造物等

を軽快に見せるために、見られる側の面を小さく又はスマートにする、壁面にスリット

を入れ陰影をつける、周辺と馴染むように材質の色をトーンダウンさせるような彩色を

施す等の手法が考えられるが、いずれも人間の錯視等の視覚特性を利用したものである。

ただし、彩色については、季節・天候等により調和しているかどうかに関して受け止め

方がかなり異なる場合が多いので、慎重に行う必要がある。

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道-1-107

10 斜面安定工

10-1 設計の基本

(1)斜面安定工は、図1−52 のように分類される。このうち、想定される災害の形態や規模

を考慮して対策工を検討する斜面安定工の分類を図1−52 に示す。 斜面崩壊対策工 落石対策工

斜面安定工 岩盤崩落対策工 地すべり対策工

土石流対策工

図1-52 斜面安定工の分類 (2)斜面安定施設は、自然斜面の崩落等による道路への影響を防止または抑制するために設

置する施設である。その設計にあたっては、常時の作用として、自重その他の死荷重のほ

か、その設置目的に応じて斜面崩壊、落石・岩盤崩壊、地すベり又は土石流による影響を

考慮した荷量を設定する。 また、必要に応じて、降雨の作用は、雨水や湧水等を速やかに排除するための表面排水

施設の設計等で考慮する。これらの設計において、一般的な表面排水施設では、供用期間

中に通常想定される降雨として、概ね3年程度の確率降雨を設定すればよい。長大な自然

斜面から流出する水を排除する道路横断排水工など、重要な排水施設においては、計画交

通量に応じて概ね 5〜10年程度の確率降雨を設定すればよい。また、道路管理上、構造

上重要性の高い沢部の盛土等の道路横断排水工については30年程度の確率降雨とする

のがよい。地震動の作用としては、レベル1地震動及びレベル 2 地震動の2種類の地震

動を想定する。 このほか、落石・岩盤崩壊対策施設では落石ないし岩盤崩壊による衝撃力を考慮する。

(3)斜面安定施設の要求性能は、重要度の区分については「重要度1」を基本とし、想定す

る作用に対して安全性、使用性、修復性の観点から設定する。さらに、要求性能の設定に

あたっては、対象とする斜面安定施設に連続又は隣接する構造物等がある場合はその要求

性能や相互の構造物に及ぼす影響を考慮する。 また、要求性能の照査は、理論的で妥当性を有する方法や実験等による検証がなされた

方法、これまでの経験・実績から妥当とみなせる方法等により行う。

道路土工

切土工・斜面

安定工指針

(H21.6)

2-3

道路土工

切土工・斜面

安定工指針

(H21.6)

共通-2-2

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道-1-108

一般的には、斜面安定施設の要求性能は表1−32 を目安とし設定する。性能は、図1−53、

図1−54 に斜面安定施般の要求性能のイメージを参考に示す。

表1−32 斜面安定施設の要求性能

重要度

想定する作用 重要度1

常時の作用 性能1

降雨の作用 性能1

地震動の作用 レベル1地震動 性能1

レベル2地震動 性能2

性能 損傷イメージ

性能1

斜面安定施設は健全である、又は、斜

面安定施設は損傷するが、当該斜面安

定施設の存する区間の道路としての

機能に支障を及ぼさない性能

性能2

斜面安定施設の損傷が限定的なもの

にとどまり、当該斜面安定施設の存す

る区間の道路の機能の一部に支障を

及ぼすがすみやかに回復できる性能

性能3

斜面安定施設の損傷が、当該斜面安定

施設の存する区間の道路の機能に支

障を及ぼすが、当該支障が致命的なも

のとならない性能

図 1−53 斜面安定施設の要求性能のイメージ

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道-1-109

性能 損傷イメージ

性能1

ロックシェッドは健全である、又

は、ロックシェッドは損傷するが、

当該斜面安定施設の存する区間の

道路としての機能に支障を及ぼさ

ない性能

性能2

ロックシェッドの損傷が限定的な

ものにとどまり、当該ロックシェッ

ドの存する区間の道路の機能の一

部に支障を及ぼすがすみやかに回

復できる性能

性能3

ロックシェッドの損傷が、当該ロッ

クシェッドの存する区間の道路の

機能に支障を及ぼすが、当該支障が

致命的なものとならない性能

図1−54 斜面安定施設(シェッド)の要求性能のイメージ

(4)これまでの経験・実績から妥当と見なせる方法として、「道路土工−切土工・斜面安定

工指針」、「道路土工-擁壁工指針」に示される方法により設計を行う場合は、一般的に表

1−32 の性能を満たすと考えて差し支えない。 (5)斜面安定施般は、立地条件や構造により雨水や湧水等が施設の安定性に大きく影響す

る場合があるため、各施設の構造に応じて適切な排水施設を設けるものとする。その設計

にあたっては、「道路土工−切土工・斜面安定工指針」、「道路土工−擁壁工指針」を参照す

ること。 (6)斜面安定工の維持管理は、供用期間中において各構造物の機能を満足した状態にある

かを点検・確認し、変状が確認された場合には、その原因に応じて適切な対応策を実施す

る。

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道-1-110

10-2 斜面崩壊対策

道路に隣接した自然斜面、あるいは切土斜面上部の自然斜面に発生する表層崩壊の対策工は

大きく崩壊発生源の風化・侵食を抑止する予防工と、崩壊により発生した崩土の運動を停止さ

せたり、運動方向を変える防護工に分類される。

予防工には、切土工やのり面保護工が対策工として用いる他、谷地形の不安定土砂を抑える

ための谷止め工や斜面中腹部の不安定土砂を押さえるために擁壁工やふとんかご工等を用いた

山腹土留工法が用いられる場合がある。

防護工には、待ち受け擁壁工や土砂覆工がある。

尚、設計の際は「道路土工-切土工・斜面安定工指針」を参照されたい。

道路土工

切土工・斜面安

定工指針

(H21.6)

9-4

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道-1-111

10-3 落石対策

落石対策工には発生源対策としての落石防止工と、発生した落石による被害を軽減するた

めの落石防護工がある。

10-3-1 落石対策工の選定

落石対策工の選定に際して も基本的なことは、対象斜面のどこから、どんな形態・規模

の落石が発生し、それがどんな運動形態で落下するかを的確に想定し、それに対して、どこ

でどのような止め方をするか、あるいはどのような方法で無害に道路を通過させるかを決め

ることである。この対策工の選定には、対策施工箇所の地盤等の設計・施工条件を把握して

おかなければならない。また、道路構造、交通状況、経済性、景観、周辺環境への影響等を

考慮しておかなければならない。特に、落石対策工の基礎地盤については、地下水や切土に

伴うゆるみ、風化等で、劣化が明らかな湯合は、落石の衝撃に耐える過大な落石対策工は好

ましくない。このような場合には、別の落石対策工を複合するなどして、現地に適する工法

を選定しなければならない。また、機械搬入の制約等、仮設工事を含めた施工方法の難易性

を十分検討し、確実性、経済性等に配慮して、落石対策工を選定しなければならない。

落石対策工は発生源対策としての落石予防工および発生した落石の対策としての落石防護

工の2種類があり、その効果は次のように要約される。

① 発生の原因となる風化浸食を防止する。

② 落石の発生を止める。

③ 落下エネルギーを吸収する。

④ 落下方向を変えて無害なところに導く。

⑤ 衝撃に抵抗して落石運動を止める。

⑥ 崩土の落下、なだれ防止の効果を兼ねる。

この効果と落石対策工の工種の関係を整理したものが表1-33 である。

各種の対策工の機能、耐久性、施工性、経済性、維持管理上の問題等をよく検討して、現

地の道路状況、斜面状況に も適した工種とその組み合わせを選択しなければならない。

図1-55 に工種選定のためのフローチャートを示す。なお、落石防護工のおおよその対応

可能な落石エネルギーの範囲を図1-56 に示すので、併せて参考にするとよい。

フローチャートの適用に当たっては、次の事項に留意する。

① 斜面調査による落石形態の特徴を十分に吟味する。

② 落石は、単独に生じる場合と斜面崩壊として土石混合状態で発生する場合がある。

落石形態を十分に吟味して工法選定に生かす。

③ 防護工と予防工は並列的に比較する。また、各予防工間、各防護工間においても並

列的に比較する。

④ 各防護工は単独だけでなく、たとえば落石防護網+落石防護柵等のように、組み合

わせて用いれば効果的である。同様に各予防工についても、単独だけでなく、たとえ

ば個別処理+風化防止等のように組み合わせて用いることが効果的である。

⑤ 予防工と防護工の組み合わせは単独より効果的で、経済的となる場合が多い。たと

えば、巨岩の個別処理+落石防護柵等があげられる。

⑥ 防護工のみで落石エネルギーに耐えられない場合は、予防工により検討する。

⑦ 予防工が大規模になる場合は、路線変更と比較検討する。

⑧ 対策工の選定は仮設等を含めた施工性や経済性、さらに対策後の景観、周辺環境へ

の影響等も考慮して選定する。

道路土工

切土工・斜面安

定工指針

(H21.6)

10-4

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道-1-112

図1-55 対策工の選定フローチャート

表 1-33、図 1-56

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道-1-113

表1-33 落石対策の適用に関する参考表 (文献 2) に加筆修正)

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道-1-114

注1)本図は既往の施工実績、実験事例等から、各工法の適用範囲の目安を示したものである。

注2)上記工法のうち A)はエネルギー計算により設計される工法、B)は静的な強度計算により設計さ

れる工法であり、工種により設計法が異なるため本来簡単には比較できない。一般には静的な強度

計算により設計されたものは、設計上かなりの安全余裕が含まれていると考えられる。

図1-56 落石防護工の適用範囲の目安

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道-1-115

10-3-2 ポケット式落石防護網の設計の考え方

ポケット式落石防護網は、金網、ワイヤーロープ、支柱、吊ロープ等からな

り、上部に落石の入り口を設け、金網に落石が衝突することにより、構造全体

で落石の持つエネルギーを吸収する機能を持つ。落石エネルギーは、構造部材

の弾性および塑性変形によるエネルギー吸収のほか、部材の振動、落石と部材

との摩擦等の、部材の変形以外によってもエネルギーが消散される。したがっ

て、ポケット式落石防護網の設計にあたっては、これらの吸収エネルギーの総

和が落石エネルギーを上回るように設計を行うこととなる。

10-3-3 ポケット式落石防護網の設計の適用範囲

ポケット式落石防護網の設計においては、各部材の可能吸収エネルギーの総

和が落石エネルギーを上回るよう、各部材の緒元を決定する手法を基本とする。

ただし、従来から施工実績があり、部材及び構造が定型化しているポケット式

落石防護網については、部材それぞれの強度等を算出し設計することは非効率

となってしまうため、簡易式による設計手法を用いてもよい。(下図および<

参考資料-2>参照)

なお、簡易式による設計を行う場合は<参考資料-3>に留意されたい。

START

落石エ ネルギー(EW)の計算 簡易式による設計

可能吸収エネルギーの計算

①金網の吸収エネルギー

②ワイ ヤロープの吸収エネルギー

③支柱の吸収エネルギー

④吊ロープの吸収エ ネルギー 等

可能吸収エネルギー(ET)の計算 ①金網の吸収エネルギー(EN) ②ワイ ヤロープの吸収エネルギー(ER) ③支柱の吸収エネルギー(EP) ④吊ロープの吸収エ ネルギー(EHR) ⑤落石の衝突前後におけるエネルギー差(EL)

NO 可能吸収

エ ネルギー ≧

落石 NO エ ネルギー

YES

ア ンカーの強度及び安定に対する検討

END

図 ポケット式落石防護網の設計の考え方

図1-57 ポケット式落石防護網の設計の考え方

道路土工

切土工・斜面安

定工指針

(H21.6)

10-5

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道-1-116

11 記録の保存

11-1 記録の活用

維持管理においては、防災性を向上させるために、調査から施工段階までにおける地質・

土質等のデー夕、点検結果及び被災履歴、補修・補強履歴等の維持管理上必要となる情報を

長期間に渡って保存し、活用していくことが重要である。

その詳細については、「道路土工各指針の維持管理」を参照すること。

11-2 記録例

各工種の記録例を図1−58〜図1−67 に示す。

道路土工要綱

(H21.6)

基本-2-7