[学位請求論文] 付録b.7 lagrange未定乗数法 謝辞
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[学位請求論文] 三項法と双対推定による構造物の釣り合い形状の探索 付録B.7 Lagrange未定乗数法 謝辞TRANSCRIPT
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B.7. オリジナルの未定乗数法 377
B.7 オリジナルの未定乗数法
Lagrange 未定乗数法の起源ははっきりしており、J. L. Lagrange著「解析力学」第一章におい
て提案されたものである。本節では、オリジナルの未定乗数法や現在最適化において用いられてい
る未定乗数法、双対推定の関係について述べる。
まず、オリジナルの未定乗数法について述べる。「解析力学」第一章と同様、平衡条件
Pdp+Qdq +Rdr = 0 (B.7.1)
を満たす n個の変数 {x1, · · · , xn}の組を見つけることを考える。ここでP = P (x1, · · · , xn)
Q = Q(x1, · · · , xn)
R = R(x1, · · · , xn)
, (B.7.2)
p = p(x1, · · · , xn)
q = q(x1, · · · , xn)
r = r(x1, · · · , xn)
, (B.7.3)
とする。また、
dp =∂p
∂x1dx1 + · · ·+
∂p
∂xndxn (B.7.4)
dq =∂q
∂x1dx1 + · · ·+
∂q
∂xndxn (B.7.5)
dr =∂r
∂x1dx1 + · · ·+
∂r
∂xndxn (B.7.6)
である。さらに、{dx1, · · · , dxn}は自由ではなく
dL = dM = dN = 0 (B.7.7)
なる束縛を受けるとする。このような条件を弱い条件とよぶことにする。ただしdL = ∂L
∂x1dx1 + · · ·+ ∂L
∂xndxn
dM = ∂M∂x1
dx1 + · · ·+ ∂M∂xn
dxn
dN = ∂N∂x1
dx1 + · · ·+ ∂N∂xn
dxn
(B.7.8)
とする。(B.7.1)式と (B.7.7)式は
Pdp+Qdq +Rdr + λdL+ µdM + νdN = 0 (B.7.9)
とすることで一つの条件に統一できる。ここで、λ, µ, ν は Lagrange 未定乗数と呼ばれ、勝手に追
加された未知数である。
今、{x1, · · · , xn}が与えられたとする。このときP,Q,Rの値が定まる。そして、いかなる{dx1, · · · , dxn}に対しても (B.7.9)式が恒等的に満たされるような λ, µ, νが少なくとも一組見つかったとする。こ
のとき、{dx1, · · · , dxn}を (B.7.7)式を満たす組に制限すると常に
Pdp+Qdq +Rdr = 0 (B.7.10)
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378 付録 B 連続体の力学
が満たされる。従って与えられた {x1, · · · , xn}は解くべく問題の解である。逆にそのような λ, µ, ν
が一組も見つからなかったとする。すると常に
Pdp+Qdq +Rdr + λdL+ µdM + νdN ̸= 0 (B.7.11)
であるから、{dx1, · · · , dxn}を (B.7.7)式を満たす組に制限したとき
Pdp+Qdq +Rdr ̸= 0 (B.7.12)
とわかる。よって与えられた {x1, · · · , xn}は解くべく問題の解ではない。以上より {x1, · · · , xn}が与えられた問題の解であることと、(B.7.9)式を満たす {λ, µ, ν}の存在
条件は等価である。このように、オリジナルの未定乗数法は与えられた問題の解の満たすべき条件
を、未定乗数の存在条件へ変換するものである。第 3章で定式化した双対推定は、未定乗数法のこ
のような側面に着目したとき自然と導入される。
実際の問題ではここに L (x1, · · · , xn) = L̄
M (x1, · · · , xn) = M̄
N (x1, · · · , xn) = N̄
(B.7.13)
といった強い条件を追加して {x1, · · · , xn}を決める。
B.8 現代の未定乗数法
最適化において Lagrange 未定乗数法は (B.7.13)式のような強い条件を支配方程式に組み込む標
準的な手続きに位置づけられている。もともとの Lagrange 未定乗数法は強い条件の組み込みには
言及していない。
次に、最適化で頻繁に活用される Lagrange 未定乗数法について述べる。等式制約条件つき最小
化問題
f (x1, · · · , xn) → min (B.8.1)
s.t
L (x1, · · · , xn) = L̄
M (x1, · · · , xn) = M̄
N (x1, · · · , xn) = N̄
(B.8.2)
は付帯条件なしの停留問題
Π(x1, · · · , xn, λ, µ, ν) = f + λ(L− L̄
)+ µ
(M − M̄
)+ ν
(N − N̄
)→ stationary. (B.8.3)
に変換できる。ただし、(B.8.3)式は大域的な最小点ではなく、局所的な最小点、最大点を与える
ので注意を要する。(B.8.3)式の停留条件は
δΠ = 0⇔
∂Π∂x1
= ∂f∂x1
+ θ ∂L∂x1+ λ∂M∂x1
+ ξ ∂N∂x1= 0,
...
∂Π∂xn
= ∂f∂xn
+ θ ∂L∂xn+ λ ∂M∂xn
+ ξ ∂N∂xn= 0,
∂Π∂θ = L− L̄ = 0,
∂Π∂λ =M − M̄ = 0,
∂Π∂ξ = N − N̄ = 0,
(B.8.4)
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B.8. 現代の未定乗数法 379
と書ける。これは先に述べたように、オリジナルの未定乗数法に強い制約条件を追加したものであ
る。よくいわれるように未知数の数が n+ 3であり連立方程式の数も n+ 3本であるので、これは
基本的には解ける。
ただし、Lagrange 未定乗数法それ自体は解き方には言及していない点が重要である。Lagrange
未定乗数法によって得られるのは、オリジナルの未定乗数法により導かれる n本の連立方程式と、
等式制約条件の連立でしかない。つまり等式制約条件は代入されることなく独立に連立されたまま
である。従って、数値解析においては等式制約条件を満たす戦略の選択が必要となる。
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381
謝辞
本論文は修士課程から博士後期課程までの5年間の研究成果をまとめたものです。
本研究を進めるにあたり指導教員である川口健一教授には格別なご指導を賜りました。深く御礼
申し上げます。また、研究室スタッフの鵜原康子技術補佐員、荻芳郎助教、大矢俊治技術専門職員
には、研究を進める上で様々な面からご支援を頂きました。吉中進先生、小澤雄樹先生には、川口
研究室出身の研究者として助言や励ましの言葉を頂くことが多々ありました。5年間の学生生活の
間、この研究室で出会った沢山の仲間との議論から多くを学び、刺激を受けました。筆者の永遠の
宝物です。
学位論文審査会においては、桑村仁教授、高田毅士教授、腰原幹雄准教授、鈴木克幸教授の諸先
生方に厳しいながらも大変貴重なご助言を頂きました。本論文は頂いたご助言を反映し、加筆修正
を行ったものです。
毎年夏に開かれるゼミ合宿では、広島大学大崎純教授、鹿児島大学本間俊雄教授、名古屋大学大
森博司教授、金沢工業大学高山誠教授、金沢工業大学西村督准教授、近畿大学藤井大地教授、大同
工業大学萩原伸幸教授、豊田工業高等専門学校山田耕司准教授、有明工業高等専門学校小野聡子准
教授、東海大学諸岡繁洋准教授の皆様から温かい励ましの言葉を頂きました。昭和女子大学安宅信
行教授には、突然押しかけていったにも関わらず連続体の力学に関する興味深い話を聞かせて頂き
ました。また、コロキウム構造形態の創生と解析の実行委員会の皆様には、修士課程から4年に
わたり発表の機会を与えて頂きました。宇宙構造材料シンポジウムへの参加をきっかけに知り合っ
た宇宙関係の研究者の皆様からは、建築とは全く異なる視点から様々なアドバイスを頂きました。
Noiz Architectsの豊田啓介様、大野友資様、東京大学舘知宏助教にはコンピュテーショナルデザ
インの勉強会RGSSにおいてプレゼンテーションの機会を与えて頂きました。RGSSは筆者にとっ
て意匠設計に携わる人々の感性に触れる貴重な場となりました。以上の皆様に深く感謝の意を表し
ます。
また本論文は、以上の皆様以外にも多数の方々のお力添えがなければ、決して完成しえなかった
ものです。本研究を遂行する上で筆者の出会った総ての人々に深く感謝いたします。
最後に本研究は文部科学省より特別研究員奨励費(10J09407)の助成を受けたものです。厚く
御礼申し上げます。