m tsuchiya+osaka u+2015 12-18 v2

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2015年12月18日講演土谷 大

2

東京出身。1983年生まれ。

2005年 慶應義塾大学理工学部卒業

2009年 ハーバード大学 博士号取得

2009年 SiEnergy Systems社を共同創業

2015年 SiEnergy Systemsが閉鎖され、失職。

現在、次の会社を立ち上げるべく、準備中。

自己紹介

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米国で大学院を卒業し、米国ベンチャーで奮闘した経験を基に

日米のトップ大学の教育制度の違い

博士号取得者が起業家を選択することの意義

日米のビジネス慣行の違い

皆様と議論したい内容

今後、日本からグローバルベンチャーを生み出す為の方法

本日お話する内容

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自らの考えが環境に支配されることへの恐怖 国際学生会議への参加、異なる価値観を体感。

これまで読んでいなかった情報リソースとの出会い(英文メディア)。

深い知識を持つ重要性 具体例と経験に基づく議論の強さ。

若いうちは厳しい環境で実力をつけるべき。

駄目もとでもいいかと思い切れた 失うものはApplication Fee(1校約1万円)のみ。

後悔だけはしたくないと思った。チャレンジしないのは逃げと甘さ。

ふと読んだHarvardの先生が書いた論文に感動してしまった。 「似た結果を見ている」とメールをしてみたら返信があった。

何を思ったか、ボストンに直接行き、ディスカッションをした。

なぜ留学を考えたか?

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米国の大学院教育

研究のメジャーリーグ 世界中から若き才能が集まる場所。国籍による差別はなし。 徹底した競争原理、実力社会(テニュア制度、博士課程資格審査試験) とにかく働く学生、教員が多い。鬼に金棒。

大学院は研究のプロ養成機関 経済的援助(月額20万円程度)を指導教員が負担。 平均5-6年かかるPhDコースに初めから入学(修士号の価値が低い) 社会人を経て入学する学生も多い。同級生は下は19歳、上は30代後半まで。 対等かつオープンな関係 研究室の卒業生が作る強固なProfessional Network。 入学前、卒業後のキャリアは多様。論文博士はない。

濃厚な講義、大量の宿題 徹底した基礎教育を1年目に行う。 レベルが非常に高く、期末の提出課題が出版されることも多々ある。 1学期で3-4科目が限度。ハーバードは12科目取る。平均B以上。 TAの活用が上手。指導者となる教育の一環と考えられている。

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米国留学のPros and Cons

Pros視野が広がる。厳しい環境におかれることで、大きく成長できる。授業を通じ、幅広い分野の基礎学力は確実につく。活躍の場は世界中!刺激的な仲間と知り合える。研究を先導するネットワークの一員となれる。

Cons日本企業(特に製造業)への就職は厳しくなるニッチな研究はやりづらい(成果主義の為)やはり慣れるまでは辛いことも多い。

日本人学生の米国トップ校での存在感は「極めて」薄くなりつつある。

ハーバードの留学生数(学部+大学院) MITの留学生数(学部+大学院)

21世紀は「頭脳流出」ではなく「頭脳循環」の時代。例:新竹(台湾、ハイテク)、テルアビブ(イスラエル、ソフトウェア)、バンガロール(インド、ソフトウェア)、上海(中国、製造)の産業クラスター形成。

米国全体では日本人留学生が最近8年で半減。(IIEの統計) トップ校以外では、近年サウジアラビアの伸びが凄い(国策)。 韓国は優秀な学生を戦略的に奨学金でサポートした影響もかなりある。

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卒業したものの大不況→起業!

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• 少額の投資を受けて1年間大学で研究。

• 薄膜燃料電池のスケール化に世界初成功!

• 追加投資を受けて、実際の会社を立ち上げることに。

卒業式の写真

ハーバードの大学新聞 MIT Tech Review 色々なメディア

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若いときは、厳しい環境に身をおくことで成長すると感じたため。

経営とサイエンスの両方に興味があった為。

ハードウェアのベンチャーを立ち上げられる機会はあまりない。千載一遇のチャンスと思った!

ハードウェアベンチャーの中でも、クリーンテックベンチャーは特に難しいので、良いトレーニングになると思ったので。

大学院時代、大学の技術を事業化するプロセスを学ぶ授業を取り、非常に楽しかった。

投資会社の幹部にスキルを持った人物が多く、小さい会社ながらも成長する可能性を感じたため。

博士号取得後起業した理由

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私の前の会社の紹介

超薄膜技術を用いた固体酸化物燃料電池(SOFC)がコア技術。

2010年:薄膜SOFCを大面積化することに成功。

2011年:大学から会社をスピンオフし、独立研究施設に移る。

2012年:数名の研究開発スタッフを雇用。

2014年:米国エネルギー省のARPA-Eプログラムに選ばれる。

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クリーンテック分野の特徴

ライフサイエンス IT クリーンテック

市場規模 約100兆円 約130兆円 約100兆円

イノベーションの源 生命工学、薬学、有機化学

ソフトウェア開発、創造性、消費者

材料、生命工学、化学工学、機械工学

投資規模 大 小 巨大

研究開発期間 数年 数ヶ月から数年 数年から数十年

価格設定 独占市場 マーケットの適正価格、利益幅が大きい

コモディティ、

利益幅が小さい

政府の影響 大きい、

予想可能

小さい 大きい、

予想困難

参入障壁 高い 低い 高い

通貨は簡素化のため、1ドル100円で換算Ref: http://www.nga.org/files/live/sites/NGA/files/pdf/1110CLEANENERGYROTHSTEIN.PDF

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燃料電池の市場

移動度

出力1 kW 100 kW

業務用

自動車携帯用

特別車両

リモート電源

APU

予備電源

住居

10 W

ポータブル

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燃料電池ベンチャーの例

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一般的なベンチャーの成長サイクル(電池系ベンチャーの場合)

シリーズA

シリーズB

シリーズC

シリーズD 以降

上場、買収等

第一ステージ

研究開発

第二ステージ

プロトタイプ

第三ステージ

生産開始

第四ステージ

規模拡大

第五ステージ

普及技術

数億円 約十億円 約百億円 数百億円 自己資金

投資額

死の谷 死の谷

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燃料電池ベンチャーの面白さ、課題、苦労

面白さ

難しい技術、ビジネスなだけにチャレンジしがいがある。

世界中で我々しか知らないであろう技術課題、物理現象、簡単には真似できない製造プロセスのノウハウがある。

参入障壁は非常に高い。成功すれば市場規模も大きい。

課題、苦労

商業化への時間軸が非常に長い。数十年の経験がないと、業界で信頼を獲得するのが非常に難しい。

失敗した投資例が多くある。利益を上げている企業が少ない。買収された企業の評価額があまり高くない。

知識、経験、リーダーシップ能力に長けている人材の人数が限られていて、コアとなる人材を見つけ、雇用するのは容易でない。

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経営するうえで考えること

技術開発

これが初期は一番大事。技術が思うように動いて、成果が出ていると非常に経営は楽。

資金源、戦略 材料系クリーンテックは息の長い投資が必要。

競争的資金を獲得することは初期において貴重な収入となるが、時間の浪費にもなりかねないので注意。

日々の運営、チーム構造 特に人材を増やす決断は慎重に。

適材適所の人事、チームワーク、風通しの良い職場作り、明確なゴール設定、ボトムアップ型リーダーシップ

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私の仕事=経営者+創業者+科学者

会社のランチ(私がいない日)

米エネルギー省のプログラム

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研究施設の立ち上げ初日

最終日

初日

最終日

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SiEnergyとARPA-Eのチーム

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シリコンバレー、ボストンで会社を立ち上げるメリット

メリット

ベンチャーを育てる生態系がある珍しい土地柄。(投資家、大学、ベンチャー経験者、技術者、弁護士) 米国のVC投資の5割はカリフォルニア、2割はマサチューセッツ。

米国のベンチャーを取り巻く生態系は、大学を中心に作られている。

ベンチャーで働くことが、キャリアの一部として認められている。失敗しても次のベンチャーに行けばよいという気楽さ。

世界中から人を集められる。(特に技術系スタートアップでは非常に重要。)

デメリット

人件費や会社の運営費用が高い。

ビザの発行が容易ではない。

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技術系ベンチャーが必要な理由

イノベーション企業にとって重要なこと• グローバル市場を見据えていること

• 明確なイノベーションがあり、投資が必要だか指数関数的な伸びが期待できること。

中小企業

イノベーションを基軸にしたベンチャー企業

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米国は徹底した結果主義。結果を出せない経営陣はすぐに代えられる。

年齢、性別は全く関係なし。実力勝負。

個人主義の国な為、会社名、出身大学、出身国はあまり関係ない。能力だけが重要な要素。

雇用は「At Will」。雇用者側も従業員側もいつでも雇用契約を解除できる。終身雇用という考えが全くない。

個々の役割分担が明確。学位によって、給与面でも与える責務にも大きな違いがある。

日米のビジネス慣行の違い

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日本からグローバルベンチャーを作れるか?

1996年以降310万の仕事が大企業から失われたが、ベンチャーからは120万の雇用しか生まれていない。新陳代謝を促進しなければ、雇用問題の根源的解決は出来ない。

先進国はイノベーション牽引型経済でなければ成長しない。制度が大きく変わらなければならない時期にある。

日本のイノベーションは大企業牽引型。多くの大企業の研究開発資金が減る中で、新技術の芽をどう育ててゆくかは重要な課題ではないか。大学の役割は大きい。

保守的で安定した大企業があることは重要。一方で、リスクの高い技術に果敢に挑戦し「不可能を可能にする」若いベンチャーも健全な業界発展には必要ではないか。

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