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- 1 - パワーエレクトロニクス 講義資料 8.汎用電子回路シミュレータ使用方法 8.1 LTspiceXVII の基本的操作 LTspiceXVII は、リニアテクノロジー社が提供している無料かつ使用制限の無い電子回路シミュレ ータで、1970 年代中期にカリフォルニア大学バークレイ校で開発されたアナログ回路シミュレータ SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)が元になっている。ここでは、パワーエ レクトロニクスで利用するために、LTspiceXVII の操作手順について解説する。 シミュレータ操作手順(例:CR 過渡現象) 1) 作業ウィンドウを開く LTspiceXVII プログラムがコピーされている ディレクトリ(USB?)を開き、” XVIIx64.exe ” を 左クリックして、起動させる。 ツールボタン を右クリックして作業ウィン ドウを開く。(図1参照) もし、初めて作業ウィンドウを開いた場合は、 Tools→Control Panel →[Netlist Options]で □Convert ‘m’ to ‘u’にチェック入れる。 Tools → Color Preference → [WaveForm] で,Background→白、Axis→黒、Trace V(1) →黒に設定する。(推奨) 2) 解析回路を作成する 作業ウィンドウに抵抗、コンデンサ、電圧源、 グラウンドなどの部品をそれぞれ貼り付ける。 抵抗、コンデンサ、グラウンドはそれぞれツー ルボタン を右クリックして選択し、 作業ウィンドウの適当な場所に貼り付ける。 電圧源は、 をクリックして図2に示すウィン ドウから Voltage を選択し、作業ウィンドウに貼 り付ける。(図3参照) 貼り付けた部品同士を結線する。 ツールボタン を右クリックして結線可能な 状態にし、マウスを使って結線する。(図4) ※部品を回転又は反転させる場合は、まずツ ールボタンで“Drag”を右クリックして選択し、 次いで対象となる部品にマウスポインタを合 わせて[Ctrl]+[R](回転)、[Ctrl]+[R](反転)キ ーを押す。 3) 部品と電圧源のプロパティ設定/変更する 部品(抵抗とコンデンサ)の上にマウスポイン タを合わせて、右クリックすると部品のプロパ ティ設定ウィンドウが開く。(図5参照) 図1 作業ウィンドウ 図2 電圧源の選択 図3 回路部品の貼り付け 図4 各部品の接続(結線)

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Page 1: 8.汎用電子回路シミュレータ使用方法p142/powerelectronics/2019/8.pdf · 作成したLTspice回路を図19に示す。 2) 部品と電圧源のプロパティ設定/変更

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パワーエレクトロニクス 講義資料

8.汎用電子回路シミュレータ使用方法 8.1 LTspiceXVII の基本的操作

LTspiceXVII は、リニアテクノロジー社が提供している無料かつ使用制限の無い電子回路シミュレ

ータで、1970 年代中期にカリフォルニア大学バークレイ校で開発されたアナログ回路シミュレータ

SPICE(Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis)が元になっている。ここでは、パワーエ

レクトロニクスで利用するために、LTspiceXVII の操作手順について解説する。 シミュレータ操作手順(例:CR 過渡現象)

1) 作業ウィンドウを開く

① LTspiceXVII プログラムがコピーされている

ディレクトリ(USB?)を開き、” XVIIx64.exe ” を

左クリックして、起動させる。

② ツールボタン を右クリックして作業ウィン

ドウを開く。(図1参照)

もし、初めて作業ウィンドウを開いた場合は、

Tools→Control Panel→[Netlist Options]で

□Convert ‘m’ to ‘u’にチェック入れる。

Tools → Color Preference → [WaveForm]

で,Background→白、Axis→黒、Trace V(1)

→黒に設定する。(推奨) 2) 解析回路を作成する

③ 作業ウィンドウに抵抗、コンデンサ、電圧源、

グラウンドなどの部品をそれぞれ貼り付ける。

抵抗、コンデンサ、グラウンドはそれぞれツー

ルボタン , , を右クリックして選択し、

作業ウィンドウの適当な場所に貼り付ける。

電圧源は、 をクリックして図2に示すウィン

ドウから Voltage を選択し、作業ウィンドウに貼

り付ける。(図3参照)

④ 貼り付けた部品同士を結線する。

ツールボタン を右クリックして結線可能な

状態にし、マウスを使って結線する。(図4)

※部品を回転又は反転させる場合は、まずツ

ールボタンで“Drag”を右クリックして選択し、

次いで対象となる部品にマウスポインタを合

わせて[Ctrl]+[R](回転)、[Ctrl]+[R](反転)キ

ーを押す。

3) 部品と電圧源のプロパティ設定/変更する

⑤ 部品(抵抗とコンデンサ)の上にマウスポイン

タを合わせて、右クリックすると部品のプロパ

ティ設定ウィンドウが開く。(図5参照)

図1 作業ウィンドウ

図2 電圧源の選択

図3 回路部品の貼り付け

図4 各部品の接続(結線)

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適切な値を入力し、[OK]ボタンで決定する。

⑥ 電圧源 V1 にマウスポインタを合わせて、右ク

リックすると電圧源のプロパティ設定ウィンドウ

が開く。

ここでは、[Advanced]ボタンを選択し、図6に

示すウィンドウを開く。

⑦ 図 6 に 示 す ウ ィ ン ド ウ で は Functions で

PULSE( )をチェックし、以下の空欄に図6に

示すような値を入力する。ここでは、電圧源と

して電圧値が 10 V、幅が 1sec、周期2sec の

パルス波形電圧を指定した。

4) 解析種類の選択と設定

⑧ 図7に示すように、ツールメニュー[Simulate]を

クリックして、[Edit Simulation Cmd]を選択し、

解析の種類選択とその設定ウィンドウを開く。

(図8参照)

ここでは、過渡解析(Transient)を選択し、そ

れぞれ空欄に図8に示すように入力する。

ここでは、10 msec まで最大ステップ時間が

0.01μsec で過渡解析を行い、その結果を 0

から表示させることを指定した。この設定事項

は、作業ウィンドウ内に表示される。

4) シミュレーションの実行

⑨ ツールボタン を右クリックしてシミュレーシ

ョンを開始させる。

シミュレーションが開始されると、作業ウィンド

ウは図9に示すように上下2段に分かれる。上

段が結果を表示するためのウィンドウである。

計算終了後(あるいは計算中)、回路の各部

分のマウスポインタを合わせて左クリックする

と、その部分の電圧波形、電流波形が上段の

ウィンドウに表示される。

図5 抵抗値とコンデンサ容量の入力

図6 電圧源の設定

図7 解析種類の選択、設定

図8 過渡解析の設定

図9 解析結果の表示

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8.2 オペアンプ反転増幅回路

図 10 に、オペアンプ反転増幅回路を示す。

1) 解析回路を作成する

作業ウィンドウに抵抗、グラウンドなどの部品

をそれぞれ貼り付ける。電圧源は、図2に示すウ

ィンドウから Voltage を選択し、作業ウィンドウに

貼 り 付 け る 。 オ ペ ア ン プ は [Component] →

[Opamps] →AD549 を選択する。(図 11 参照)

In 及び Out はラベルで、Label Net を開き、Net

Name を編集して配置する。(図 12 参照)

作成した LTspice サーキットを図 13 に示す。

2) 部品と電圧源のプロパティ設定/変更

① 電源電圧 V1 は信号源であり、図 14 に示す

ように大きさ 1V, 50Hz の正弦波とする。

② V2 及び V3 はオペアンプの直流電源であり、

±15 V に設定する。

③ ツールメニュー[Simulate]をクリックして、

[Edit Simulation Cmd]を選択し、解析の種類

選択とその設定ウィンドウを開く。(図 15)

過渡解析(Transient)を選択し、それぞれ空

欄に図 15 に示すように入力する。100msec ま

で解析する。(入力の 5 サイクル分)

④ ツールボタン を右クリックしてシミュレー

ションを開始させる。解析が終了したら、In 及

び Out のラベルをクリックして解析結果を表

示させる。図 16 に解析結果を示す。

+15V

-15V

10 k

50 kRF

R1

In

V(In)

V2

V3

Out

RoutV(Out) 100 k

図 10 オペアンプ反転増幅回路

図 13 LTspice サーキット

図 14 電源電圧 V1 のプロパティ設定

図 15 LTspice サーキット

図 11 オペアンプの選択

図 12 Label Net

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解析結果を見ると、V(Out)/V(In)はほぼ 10 であ

り、RF/R1 に等しいことが分かる。

8.3 サイリスタ回路

図 17に、サイリスタ回路を示す。

1) 解析回路を作成する

作業ウィンドウに抵抗、グラウンドなどの部品

をそれぞれ貼り付ける。電圧源は、図2に示すウ

ィンドウから Voltage を選択し、作業ウィンドウに

貼り付ける。

サイリスタ U1 は[Component]→[Misc] →SCR を

選択する。

In 及び Out はラベルで、Label Net を開き、Net

Name を編集して配置する。(図18参照)

作成した LTspice 回路を図19に示す。

2) 部品と電圧源のプロパティ設定/変更

① 電源電圧 V1 は信号源であり、図20に示す

ように□SINE にチェック、Amplitude が 141.

4V(実効値 100V), 50Hz の正弦波とする。

② V2 はサイリスタ U1 のゲート電源であり、図2

1に示すようにピーク値 1V(1msec 幅)で

5msec 遅れの方形波に設定する。

③ 表 1 に示すサイリスタのサブサーキットをテ

キストファイル(x2N4171.txt)で保存し、回路

ファイルと同一ディレクトリにおく。

図 16 解析結果

x2n4171

In Out

Rout

100RG

U1V(In) V(Out)

100

L1

50 mH

V2

V1

図 17 サイリスタ回路

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④ U1 にカーソルを合わせて右クリックすると、

図22に示すように設定画面が現れる。ここで、

Value 欄を SCR → x2N4171 に変更せよ。

図 19 サイリスタの LTspice 回路

図20 電源電圧 V1 のプロパティ設定

図21 電源電圧 V2 のプロパティ設定

図 18 Label Net

図22 SCR の設定

表 1 サイリスタ(x2N4171)のサブサーキット

図23 サブサーキットの読み込み設定

図24 解析時間設定

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⑤ サブサーキット読み込み設定 .OP ボタンを押して”Edit Text on the Schematic:”窓を開いて、.inc x2N4171.txt を入力(サブサー

キットファイル場所指定)。図23は再度確認(右クリック)した小窓を示す。

⑤ ツールメニュー[Simulate]をクリックして、[Edit Simulation Cmd]を選択し、解析の種類選択とその

設定ウィンドウを開く。(図 24)

過渡解析(Transient)を選択し、それぞれ空欄に図15に示すように入力する。ここでは 50msec ま

で解析する。(入力の 2.5 サイクル分)

⑥ ツールボタン を右クリックしてシミュレーションを開始させる。解析が終了したら、 In 及び Out

のラベルをクリックして解析結果を表示させる。図 25 に解析結果を示す。

V(In), V(Out)はそれぞれラベル In , Out の電圧であり、I(L1)は L1 を流れる電流である。

8.4.演習課題

1.RLC 直列回路についてシミュレーションを実行せよ。(RLC 値は任意)

2.電圧源の正弦波とした場合についてシミュレーションを実行せよ。(Help を参照して)

3.上記8.2のオペアンプシミュレーションを実行せよ。 4.上記8.3のサイリスタシミュレーションを実行せよ。

※課題は、回路図と解析結果が表示されている LTspice 窓全体を[Ctrl] + [Alt] + [PrintScreen]を同

時に押してクリップボードに取り込み、ワード文書に画像として貼り付けた後、余白に学籍番号と

氏名を入力して提出すること。

図25 解析結果