74-75 haccp 05当・惣菜工場の設計など食品工場の haccp 導 入支援に従事。1996...

12 12 1963 年生まれ、神奈川県出身。1982 年総合建 設会社入社、商業ビル、店舗などの設計・設計 監理に従事。1994 年食品関連商社に出向、弁 当・惣菜工場の設計など食品工場の HACCP 入支援に従事。1996 年食品専門エンジニアリ ング & コンサルタント部を立ち上げ、食品製造 施設の企画設計や衛生管理手法の構築支援に 従事。2008 年㈱食品施設デザイン設立、食品 製造施設の企画、実施設計、設計監理、コンサ ルタントなどを行う。 [プロフィール] NPO HACCP 実践研究会 理事 幹事 ㈱食品施設デザイン 代表取締役 小島 克人 Katsuto Kojima 2 号にわたり説明した手順 4 「フローダイアグラム作成」を経て、今回は手順 5 「フローダイアグラムの現場検証」を解 説します。作業と作成書類の重要性を理解するため、フローダイアグラムの正確さが必要な理由と、ゾーニングの考 え方について、 2 回に分けて説明します。 HACCP手順5 「フローダイアグラムの現場検証」とゾーニング[前編] HACCP 誌上コンサルティング HACCP 導入 5 HACCP の導入準備 7 原則 12 手順 手順 原則 項目 実作業 作成文書 1 HACCP チームの設置 チームの編成、チームリーダー任命、トップ宣言 組織図、品質管理 目標宣言書 2 製品についての記述 商品名称、商品の種類、原材料の来歴、添加物の名 称及び使用量、アレルゲン、容器包装の形態及び材 質、性状及び特性、製品の規格、消費期限及び保存 方法、対象となる消費者、喫食及び保存方法 製品説明書 3 意図する用途の確認 4 フローダイアグラムの 作成 作業工程の再確認 フローダイアグラム 現場見取図 ゾーニング・動線図 5 フローダイアグラムの 現場検証 作成したフローダイアグラムでの現場確認 6 原則 1 製造工程の各段階に係る 危害要因分析 作成したフローダイアグラム上での、物理的要因、 化学的要因、生物学的要因の想定 ・危害分析表 CCP 管理表 CL 設定根拠 ・総合衛生管理 製造過程総括表 HACCP プラン ・必要記録、文書 7 原則 2 CCP の決定 ディシジョンツリーの活用 8 原則 3 CCP についての管理基準 CL)の決定 科学的根拠または文献に基づき CL を設定する 9 原則 4 CCP についての監視方法 の決定 科学的根拠または文献に基づく情報の収集 10 原則 5 逸脱発生時に係るべき 修正措置の決定 修正後再利用、廃棄などの選択 危機管理マニュアルの作成と訓練 11 原則 6 HACCP 方式の検証方法 の決定 作成した HACCP プランの見直しと修正及び 維持管理 12 原則 7 記録保存及び文書作成 要領の決定 管理方法の選択 2017.8 74

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Page 1: 74-75 HACCP 05当・惣菜工場の設計など食品工場の HACCP 導 入支援に従事。1996 年食品専門エンジニアリ ング&コンサルタント部を立ち上げ、食品製造

■フローダイアグラムと

 見取り図

 HACCPシステム構築の準備とし

て、7原則12手順に「手順1〜5」の

作業があります(表)。HACCPシス

テムでは、手順12「記録保存及び文書

作成要領の決定」が大変重要な要素に

なりますが、この記録を書類上で確実

にかつ正確に再現する項目が、手順5

「フローダイアグラムの現場検証」に当

たります。

 手順5では、手順4で作成したフロ

ーダイアグラムを持って工程通りに実

際の作業現場を歩き、間違いがないか

1963年生まれ、神奈川県出身。1982年総合建設会社入社、商業ビル、店舗などの設計・設計監理に従事。1994年食品関連商社に出向、弁当・惣菜工場の設計など食品工場のHACCP 導入支援に従事。1996年食品専門エンジニアリング &コンサルタント部を立ち上げ、食品製造施設の企画設計や衛生管理手法の構築支援に従事。2008年㈱食品施設デザイン設立、食品製造施設の企画、実施設計、設計監理、コンサルタントなどを行う。

[プロフィール]

NPO HACCP実践研究会 理事 幹事㈱食品施設デザイン 代表取締役

小島 克人 Katsuto Kojima

を照合する必要があります。その際に

必要になるのが施設の見取り図(工場

平面図)です。フローダイアグラムに

示された原料の入荷から出荷までの手

2号にわたり説明した手順4「フローダイアグラム作成」を経て、今回は手順5「フローダイアグラムの現場検証」を解説します。作業と作成書類の重要性を理解するため、フローダイアグラムの正確さが必要な理由と、ゾーニングの考え方について、2回に分けて説明します。

HACCP手順5「フローダイアグラムの現場検証」とゾーニング[前編]

HACCPHACCP誌上コンサルティングHACCP導入第 5回

順が、現場を表す見取り図と一致して

いることが重要です。一致していない

場合は手順4に戻ってフローダイアグ

ラムを訂正し、現場作業に合わせる必

表 HACCPの導入準備 7原則 12手順

手順 原則 項目 実作業 作成文書

1 HACCPチームの設置 チームの編成、チームリーダー任命、トップ宣言 組織図、品質管理目標宣言書

2 製品についての記述 商品名称、商品の種類、原材料の来歴、添加物の名称及び使用量、アレルゲン、容器包装の形態及び材質、性状及び特性、製品の規格、消費期限及び保存方法、対象となる消費者、喫食及び保存方法

製品説明書3 意図する用途の確認

4フローダイアグラムの作成 作業工程の再確認 フローダイアグラム

現場見取図ゾーニング・動線図5

フローダイアグラムの現場検証 作成したフローダイアグラムでの現場確認

6 原則 1製造工程の各段階に係る危害要因分析

作成したフローダイアグラム上での、物理的要因、化学的要因、生物学的要因の想定

・危害分析表・CCP管理表・CL設定根拠・総合衛生管理 製造過程総括表・HACCPプラン・必要記録、文書

7 原則 2 CCPの決定 ディシジョンツリーの活用

8 原則 3 CCPについての管理基準(CL)の決定 科学的根拠または文献に基づき CLを設定する

9 原則 4 CCPについての監視方法の決定 科学的根拠または文献に基づく情報の収集

10 原則 5逸脱発生時に係るべき修正措置の決定

修正後再利用、廃棄などの選択危機管理マニュアルの作成と訓練

11 原則 6 HACCP方式の検証方法の決定

作成した HACCPプランの見直しと修正及び維持管理

12 原則 7記録保存及び文書作成要領の決定 管理方法の選択

HACCPの準備

HACCP

2017.8 74

Page 2: 74-75 HACCP 05当・惣菜工場の設計など食品工場の HACCP 導 入支援に従事。1996 年食品専門エンジニアリ ング&コンサルタント部を立ち上げ、食品製造

2

内容器洗浄室

肉冷凍庫

野菜冷蔵庫

ドライ庫

野菜下処理室

調味料調合室

冷蔵庫

冷蔵庫

冷蔵庫

検品・開梱室受入

前室

生ゴミ庫

ダンボール庫空缶類

前室

コールドキッチン

前室

前室

入退場室

魚冷凍庫

廃水処理施設埋設

通路

出荷前冷蔵庫

出荷準備室カート置場

㎡洗浄室 冷蔵庫

調理準備室㎡

加熱調理室

一時保管冷蔵庫

容器保管室

盛付・パック室

通路(見学通路兼用)

肉冷蔵庫㎡

㎡魚冷蔵庫

建築面積   ㎡  坪

階床面積   ㎡  坪

階床面積   ㎡  坪

延床面積   ㎡  坪

面積表

動線

人(一般)

人(作業者)

原材料・製品

容器

ゴミ

清潔区域

準清潔区域

汚染区域

非管理区域

ゾーニング

凡例

敷地面積   ㎡  坪

HACCP要があります。フローダイアグラムと

現場作業が一致していないと、次の手

順6「危害要因分析」や手順7「重要

管理点の決定」で見落としが生じ、不

十分なマニュアルや記録になる場合が

あります。

 見取り図には次の要素について、現

場に則した内容を記入する必要があり

ます。

①部屋の配置(建築平面図)

②生産機器配置図

③ゾーニング区分

④原料↓製品、作業員、包装材料、廃

 棄物、空気の流れの動線(図1・2)。

■ゾーニングと

 空気の動線(陽圧管理)

 ゾーニングは、食品の製造工程にお

図 1 ゾーニングと人・原料・製品・包材・廃棄物の動線

図 2 ゾーニングと空気の動線

図 3 ゾーニングと気流・室圧(陽圧管理)

ける食品の3危害(物理的危害、化学

的危害、生物学的危害)を考慮した上

で、その危害レベルを制御すべき環境

管理をすることを目的とします。衛生

レベルが違うのはもちろんですが、新

築時の設計では室圧レベルもそれぞれ

変えて設計するため、基本的には「清

潔作業区域>

準清潔作業区域>

汚染作

業区域>

外部」の順で室圧レベルが変

わる換気設計(陽圧管理)が施されま

す。従って、隣り合う部屋(出入り口

のある部屋)が上記の順番で隣り合う

配列が理想的となります(図3)。

       ◇

 次号では、ゾーニングの定義や動線、

新築と増改築の考え方について解説し

ます。

下処理室(野菜・肉・魚)

便所-

加熱調理室(野菜・肉・魚)

++

仕分け・出荷準備室

(野菜・肉・魚)++

原料受け入れ・検品

(野菜・肉・魚)+

原料保管庫(冷蔵・冷凍・常温庫)+

冷却・カット室(野菜・肉・魚)

+++

包装・盛り付け室(野菜・肉・魚)

++

外部±

外部±

FFU

製品出荷+

原料納品+

凡例

原料・製品の流れ

空気の流れ

負圧大気圧正圧中正圧最も正圧

生産外区域汚染作業区域準清潔作業区域清潔作業区域

-±++++++

入事例

凡例動線 ゾーニング

清潔区域

準清潔区域

汚染区域

非管理区域

人(一般)

人(作業者)

原材料・製品

容器ゴミ

凡例動線 ゾーニング

清潔区域

準清潔区域

汚染区域

非管理区域

空気の流れ

凡例動線 ゾーニング

清潔区域

準清潔区域

汚染区域

非管理区域

人(一般)

人(作業者)

原材料・製品

容器ゴミ

凡例動線 ゾーニング

清潔区域

準清潔区域

汚染区域

非管理区域

空気の流れ

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