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特集「成績評価の在り方」

岡山大学教育開発����

������広報専門委員会

二��四年三月一日発行

岡山大学µOU-Voiceµ第6号

編集・発行

岡山大学教育開発センター広報専門委員会

所在地・連絡先

岡山市津島中2-1-1 〒700-8530

電話:086-252-1111(代表)µFax:086-251-8440

E-mail:[email protected]

66

1

目   次

目 次目 次目 次

議論の広場

お知らせ

特集:「成績評価の在り方」

 『成績評価の在り方』の特集にあたって  広報専門委員会委員長 神崎 浩 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1

 FD専門委員会 勉学環境WG検討事項 -厳格な成績評価と成績の素点開示の必要性-  FD専門委員会 勉学環境WG 小野文久 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 2  (理学部物理学科 教授)

 ** 学生・教員からの提言 **

 納得の出来る成績評価  法学部2年次生 小山智子【学生・教員FD検討会 シラバスWGリーダー】. . . . . . . . 3

 成績評価の問題点  経済学部2年次生 土井優貴 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4

 理想と現実  理学部化学科2年次生 吉澤成司【学生・教員FD検討会】. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5

 成績評価の意義  歯学部2年次生 本村剛士【学生・教員FD検討会】. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6

 魅力的な授業は出席しないと損する授業  薬学部2年次生 山中 文【学生・教員FD検討会】. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 7

 「成績評価の方法」と「評価済み成績の扱い」への意見  工学部通信ネットワーク工学科3年次生 水田沙也可 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 8

 求む!意義ある成績評価  農学部2年次生 黒木美沙緒【学生・教員FD検討会】. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 9

 成績評価と授業の在り方  経済学部教授 建部和弘 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 10

 大人数クラスで出欠をとる場合  理学部物理学科教授 小野文久 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 11

 早期卒業と成績評価の一例  大学院自然科学研究科教授 山本峻三 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 12  (理学部化学科)

 「厳格な成績評価」を実践してみると…  大学院医歯学総合研究科教授 松尾龍二 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 13  (歯学部)

 成績評価-今後の必要性  薬学部教授 岡本敬の介 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 14

 能動的な学習を評価するために  大学院自然科学研究科教授 野木茂次 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15  (工学部電気電子工学科)

 成績評価に関連して思うこと  農学部教授 稲垣賢二 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 16

「岡山大学法科大学院設置決まる」

 法学部教授 中村 誠 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 17

「岡山大学の独立法人化」

 副学長 松畑煕一 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18

「シラバスアンケートから」

 学生・教員FD検討会 副委員長 竹内靖雄 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 19  大学院自然科学研究科 助教授  (薬学部)

「編集後記」 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 21

( )

1

広報専門委員会 委員長

神崎  浩  今年度の広報専門誌 OU-Voice6号を発刊するに当たり、広報

専門委員会で検討した結果、特集のテーマを『成績評価の在り方』

とすることになりました。

 岡山大学教育開発センターでは、よりよい岡山大学の教育をめざ

してさまざまな取り組みを行ってきており、その一環として『厳密

な授業評価』の実施をしてきています。しかしながら、この問題に

ついての教員と学生間はもちろん、教員同士においても理解に差が

あるように見受けられます。

 そこで、本号ではFD専門委員会・勉学環境WGの小野先生に【厳

密な成績評価と成績の素点開示】に関するワーキンググループにお

けるこれまでの検討経過をご報告いただくとともに、学生7名、教

員7名、合計14名から、成績評価に関して非常に示唆に富んだ投

稿をいただきました。投稿いただきました全ての皆さんは岡山大学

の教育について非常に前向きに考えておられ、このような意見が集

められ議論が進めば教育改善は着実に進むと考えられます。しかし

ながら今回の投稿にもありましたように、現在の状況は教員側、学

生側ともに十分に教育について考えずに授業に臨んでいる例がまだ

まだ多いように感じられます。学生・教員どちらの立場のみなさん

も本投稿をお読みいただき、自分はもちろん、近くの人たちと議論

できるようになり、今後の岡山大学の教育改善に生かされることを

希望いたします。

 学生の皆さん:大学は単位を取りに来ているところですか?

 教員の皆さん:学生に評価方法を十分に理解させていますか?

みんなで、『大学における成績評価』についてもう一度考えてみま

せんか?

 また、次の3項目について【お知らせ】として掲載させていただ

きました。

(1)岡山大学法科大学院設置について

(2)岡山大学独立法人化について

(3)シラバスアンケートの結果について

 来年度からは岡山大学全体が大きく変わろうとしており、それに

伴って岡山大学における教育もさらなる変革が求められることと思

います。従ってOU-Voiceでは、これまで以上に多くの情報を提供

するとともに、皆さんの意見公表の場を提供していきたいと考えて

おりますので、本号に関するコメント・今後取り上げてもらいたい

テーマなどについて、どしどし意見をお寄せ下さい。

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特集�����

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「成績評価の在り方」

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「成績評価の在り方」

FD専門委員会 勉学環境WG検討事項-厳密な成績評価と成績の素点開示の必要性-

 大学生の陥りやすいパターン―「聞くだけの授業」を聴き、予習・復習を

することなく、課外の時間のほとんどをアルバイトやサークル活動に費やし、

試験期間の直前になり、やっとノートを見直す。この期間だけ大学の図書館

はにぎわう。高校時代には、自分はこの大学のこの学部に入ってこれがやり

たいという意志を持っていたのに、大学生活を送る間に意欲が薄れていく。

卒業生を受け入れる企業は、専門家として育てるための「研修」を行う。その間に「ふるい」にかけ

られ、やがて何人かはフリーターと化す。

 大学が社会的責任を果たすために、送り出す学生の「厳密な成績評価」と、「その道のプロ」とし

て通用する学生を育てるための対策の必要性、「いかにして学生に目的意識を持たせ、勉強させるか」

をより真剣に考える―過去5年間の教員研修「桃太郎フォーラム」を通じてより深く認識してきたこ

とです。試験で「山が当たった・はずれた」ではなく、毎回の授業の積算として成績評価がなされる

よう、各教員が工夫をこらすようになりました。具体的にはFD専門委員会・勉学環境WGを中心に

その必要性を検討してきました。

 さらに、熱心に受講し勉強し、良い成績を取った人に早期卒業を認める学部が増えてきました。他

の人より1年早く卒業した場合、学資低減と給料を早くもらうことで経済的にも(数)百万円の得に

なり、また同時に社会で認められることになります。成績優秀者を顕彰する制度を設ける学部、学科

も増えてきました。良い成績をめざす人がクラスに数人出てくれば、クラス全体の勉強へのムードが

上がると期待されます。このような制度の基底には「厳密な成績評価」がなければならず、また、そ

れは絶対評価だけでは機能しないことは明らかで、相対評価と組み合わせる必要があります。この点、

第5回フォーラムの議論で強調されました。早期卒業をめざす人にとって、自分の成績を明確に認識

することが努力目標を定めるために必要であり、成績の素点開示が要求されています。

 クラス全体を勉強ムードにするために、授業の目的・必要性を明確にすること、できるだけ演習、

事例検討、討論などを授業に取り入れ、宿題、レポートを課すなどの努力が必要であることが強調され、

これを全学に提示することになりました。我々教員は学生に「より勉強する雰囲気と場を作る」には

どのようにすればよいかを考え、実行して行く必要があります。

FD専門委員会  勉学環境WG

小 野 文 久理学部物理学科

教 授( )

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「成績評価の在り方」

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「成績評価の在り方」

納 得 の 出 来 る 成 績 評 価

 私は、学生・教員FD検討会、シラバスWG(ワーキング・グループ)に

所属しています。シラバスに関して、ここ1年ほど先生・学生を含めたWG

で話し合ってきました。私は、成績評価については、先生の主観によるもの

であるから、他者が入るべきではないと思っています。ただ、シラバスWG

で活動していることで、学生側と教員側の意識の違いに気づきました。それ

に基づいて、私なりに成績評価について述べようと思います。

 極論を言えば、学生がどんなに努力したところで、成績をつける側の先生が、講義内容を理解して

いないと思えば、単位を得ることは出来ないのです。つまり、当たり前ではありますが、ここで言う

努力はあくまでも学生側の考える努力であり、先生の考える努力ではありません。勿論、成績は先生

がつけるわけですから、先生に成績評価について権限があります。でも、自分の努力は先生の要求す

る努力ではなかった、若しくは足りなかったと、学生はすぐに納得できるでしょうか? 

 私は、先生には学生を納得させる必要があるように思うのです。学生の甘えに聞こえるかもしれま

せんが、結果に納得できなければ、先に進みにくくなるのではないかと考えるからです。選択科目な

らともかく、必修科目ならなおさらです。

 では、どうすればいいでしょうか。それには、私が知る限り、最初から試験の内容をある程度明確

にする方法と、試験の後で採点基準を公表する方法が存在します。

 前者は、医学部・歯学部・薬学部が行っているのですが、「~できる」、「目標とする」と言った風に、

シラバスの到達目標の主語を受講学生にして、具体的に明示する方法です。つまり、目標に到達でき

ない場合は「不可」だということを、最初から明示しているわけです。最初からこれを分かっていれ

ば、学生は無駄な努力をしなくてもいいのです。ただし、今のシラバスのシステムでは、早ければ授

業が始まる1年前にシラバスの原稿を提出しなければならないため、実行するのは先の3学部以外は

難しいかと思います。後者は、模範解答等を公表する方法です。

 成績評価が厳しくても、学生を納得させる授業は事実存在しています。また、一律に出席が~%と

最初から明示しなくても、期末試験のみで成績評価しても、私はそれで構わないと思うのです。ただ、

生じた結果としての、成績評価について納得させて欲しいだけなのですから。

法学部2年次生

小 山 智 子

【学生・教員FD検討会 シラバスWGリーダー】

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「成績評価の在り方」

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「成績評価の在り方」

成 績 評 価 の 問 題 点

 現在成績評価には多様な方法があるが、大きく三つの形態に分類できると

思う。『中間・期末型』、『複数レポート型』、『出席点・期末型』の三つである。

 初回の講義で、「最近は一つの評価材料からだけで評価してはいけないと

かいう変な制度ができちゃって…」というような教員の言葉をよく聞くが、

このような教員の多くは『中間・期末型』である場合が多いようだ。これな

らば試験100点満点で評価したい教員の希望にかなったものであり、学生としても期末試験時期に無

理な範囲を勉強しなくて済むので望ましい。しかし、中間で(60点-期末試験の配点)が取れなかっ

た場合、つまり期末で満点をとっても不可になってしまう場合にどうしようもないというデメリット

がある。が、それは自己責任なのでいたしかたないとして、本年度の前期にそれを逆に利用した学生

を何人か見かけた。この前期、ある講義の中間試験が集中講義の履修届の締切日より先に行われた。

そのため彼らは、「どうせ駄目なら集中にすればいいし…」と、ろくに勉強せずに中間試験を受験して

しまった。(集中講義は上限に含まれるので、履修届の変更が認められる。)実際何人も集中に履修変

更したのだが、これは『単位上限制をしいて、一つ一つの授業の質を向上させる』という大学側の趣

旨と著しくかけ離れてはいないだろうか。

 『複数レポート型』は、個人的に好きではない。文章を書くことになり、国語能力のない私には不

利だからである。それに、他の学生のレポートを写す学生がいるので、真面目に取り組むのがばから

しい。また教員の主観のみで評価されてしまい、評価に対する不信感も残るので、素点の開示をする

べきだと思う。

 そして最後に学生の好きな、『出席点・期末型』である。出席代りに小テストをする教員もいる。

何人かの学生が出欠をとる時間帯だけ出てきてすぐに退出するというようなことを行っており、問題

視されている。しかし私は別に構わないと思う。なぜなら、そのような学生が本当に内容を理解せず

に試験に臨めば、良い成績はとれないであろ

うし、逆に内容を理解していれば、授業に出

るのは無駄だからである。ただ、期末試験が

持ち込み可の場合は問題である。理解してい

なくても他人のノートの写しを持ち込めば、

ある程度良い成績が望めるのでフェアではな

い。

経済学部

2年次生

土 井 優 貴

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「成績評価の在り方」

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「成績評価の在り方」

理 想 と 現 実

 今回成績評価に関してということで書くのではあるがやはり、学生が成績

評価に対して客観的に要望するのは難しいのではないかと思われる。さらに、

各教科によってもその成績評価の基準が大いに違うであろうから、統一させ

て欲しいなどという要望は困難を極めるものに成りかねないように思う。

 成績評価には色々あると思うが、主にあるのは「出席点」「レポート点」「小

テスト点」「試験点」の4つではないだろうか。大体が出席とレポート、小テスト点がほぼ同じに扱われ、

試験点が中間試験と期末試験に分かれていると思う。これらを基準に例えばわれわれ理系学部におい

て欠かせない実験や演習を考えてみると、正直これは出席し実際やってみることに重点に置くことが

多く、終わった後実験ならレポートを提出するだろうが、演習でレポートと言うのはあまり聞かない。

小テストと言われても、実験は実験し、そのやり方や原理を知ること。演習は実際説明を自分でして

みることが先程も述べたように重要であろうから、何度も何度も確認をして実際の作業時間を短縮す

るというのは個人的にはどうだろうかと思う。それは期末試験も同じだと思われる。しかし、単なる

講義科目になると、確かに出席もあるだろうが内容を進行するに当たって学生全員がどこまで理解し

ているかを調べる必要性があると思う。だから多少進行が遅れたとしても小テストや試験などを行っ

てその理解度を見、成績へとつなげて行かなければならないだろう。

 以上よりやはりそれぞれの科目によっても違い、教員の考え方もこれに加わって違ってくるので一

概に要望するのは難しいと思われる。だから学生も文句は言うが要望としては中々挙げないのではな

いだろうか。

 ではどうすればいいのか。恐らく多くの学生が考えることはほぼ同じだと思うが、それぞれの科目

毎に参加している学生と担当している教員が講義の初めにお互いがその成績評価に関して理解し合う

ことだと思う。話し合うとまでは

いかないにしてもせめて教員が学

生に詳しく説明をし、せめてシラ

バスと相違はないか程度は最低限

していってもらいたいと思う。

理学部化学科2年次生

吉 澤 成 司【学生・教員FD検討会】

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「成績評価の在り方」

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「成績評価の在り方」

成 績 評 価 の 意 義

 成績評価において重要なのは「在学中に得た成果が網羅されているもの」

「学生を励ますもの」であることだと、私は考える。GPA制度も成績評価の

厳格化も、卒業生の質を保証する、という社会的観点から採用されたものだ

と思われる。ならば、在学時においても単位のために成績をつけるのではな

く、できるだけ純粋に成績のみで学生を評価する事はできないだろうか。単

位という括り方では、努力してもしなくても、基準に乗っていればよいとする考えが蔓延し、学生の

学問離れを加速するのではないだろうか。また、シラバスに掲載されている成績評価項目を重要視し

ていると、その項目のみを充足すれば単位修得が可能となるため、先に述べた学生の質という点にお

いて必ずしも保証されない可能性がある。現状の成績評価について体験から述べるとするなら、現状

の評価方法は、間接的な「状況証拠」により単位を与えている例があまりにも多いことが特徴に挙げ

られる。シラバス記載の評価項目をみても、出席点は演習的な授業ならある程度の指標にはなるが、

講義では代返さえすれば「目的が達成」される。期末試験は、その授業(あるいは学問)の延長に資

格取得や国家試験があるのならば学生にも参考程度になるし、教員側にとっても学生の理解度を知る

ことは重要である。しかし、試験が範囲を設定する性質のものであるゆえに、仮に範囲外に手が及ぶ

程までに学生がその学問に魅力を感じたとしても、その学生の学問に取り組む本来的な姿は評価され

にくい。伝統的成績評価方法に難癖をつけてきたわけだが、その方法は伝統的であると同時に成績を

数値化するのに好都合なものでもあった。成績の数値にさして重要な意味が込められないのなら数値

化の必要性は特にないのではないだろうか。必要なのは、卒後もその学生の質を保証できる評価手段

としての「成績」の位置付け、つまりJABEE的機構の全学的

普及と、それに付随して学内の修学意識を高め、授業外での

学生の「有志」の学習について評価するシステムではないだ

ろうか。そういった制度が整ってこそ、成績の数値化が意味

を為してくるのではないだろうか。制度が整い、学生の成績

への関心が深まった時には、現在検討されている素点開示等

は必須となることが予想されるし、教育改革としても及第点

なのではないだろうか。

歯学部2年次生

本 村 剛 士【学生・教員FD検討会】

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「成績評価の在り方」

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「成績評価の在り方」

魅力的な授業は出席しないと損する授業

 出席を評価の対象にすることについて考えてみた。私は出席を成績に入れ

ることはいいと思う。私の出ている授業に関しては少なくとも入れる価値の

ある内容の授業ばかりだからだ。教科書には書いていない最新研究内容や抽

象的なことしか書いていない教科書の内容を具体的な事例を挙げて詳しく教

えてもらえるのは授業しかない。テストでは「結果よければすべてよし」と

いうことも多いが、結果に至るまでの方法や研究者の苦労談など勉強がおもしろいと感じられる要素

がたくさん詰まっているのは、やはり授業だと思う。授業に出ただけでも得られるものは多いから、

これを少しでも出席点という形で成績に反映してもらえたらうれしい。それは努力に対する評価でも

あると思う。

 授業に出ても仕方がない授業がある、と言う友達もいる。先生が、教科書を棒読みするという授業

らしい。内容によってはそうせざるを得ない授業もあるかもしれない。しかし、先生が楽しいと思う

研究をもっと語って欲しいし、すべての授業に出席する楽しさが欲しい。出席する楽しさのある授業

とは、新しい発見、感動があること、自分が参加している、と感じられることだと思う。先生の話し

てくださることを進んでノートしたくなるような授業が好きだ。そして、授業の目標が明確な授業で

ある。自分はこんなことを知りたいのだと目標をもって取り組めば、楽しさはどんどん増してくると

思う。私自身、積極的にがんばろうと思う。

 私はFD検討会の新授業WGで今、H16年度後期に開講される『大学授業改善論』という学生と教

員が共同で企画する主題科目の計画を橋本先生と練っている。実際、受講生が受けたことのある授業

を徹底解析しよう、というものだ。この授業の中でも「理想の成績評価を考える」というテーマも設

けられている。受講する学生が楽しく知識や考える力を付けられる授業というのは、企画する側にも、

教える側にも魅力的な授業だと思う。出席の

配点はどうであれ、学生にとっては出席しな

ければ点数も低くなるばかりでなく、自分が

損した気分になる授業。先生にとっても、出

席点をあげたくなるような授業ができたら最

高だ。

薬学部2年次生

山 中   文【学生・教員FD検討会】

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「成績評価の在り方」

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「成績評価の在り方」

「成績評価の方法」と「評価済み成績の扱い」への意見

 「成績評価の在り方」というテーマから、「成績評価の方法」と「評価済み

成績の扱い」の2つについて意見を書きたいと思います。

 まず1つ目、成績評価の方法で私が良いと思うものは、テスト・レポート・

出席の全てで評価する方法です。具体的には、テストは最低、中間・期末の

2回で、レポートは提出点・内容点どちらも評価し、出席は出席表への記名

ではなく、講義内容に関する意見などを書いて提出する、というものです。

 テストは1度きりだという授業は結構ありますが、これでは失敗した場合に挽回の余地がないので

よくないと思います。それに、テストの回数が少なければ、問題数も限られてくるので、単元によっ

ては出ないところが出てきたりもするでしょう。ですから、極端に言えば、単元ごとにテストをやっ

た方が、範囲が狭くて勉強もしやすいし、理解度も増すような気がします。

 出席点は、ない授業もあるのですが、学生の立場から言うと少しでもあったほうが励みになります

し、出席率もたぶん上がると思います。講義室に「いるだけ」の学生に出席点などあげたくない、と

いうならば、講義の最後に講義内容についてのアンケートのようなものを提出することで出席点がつ

く、というようにすればいいかもしれません。これなら授業中寝ていたら何も書けないし、出席表だ

け書いて帰る、ということもできないでしょう。

 成績評価の方法はいろいろありますが、やはり、一発勝負のテストさえできればいいというもので

はなく、真面目に取り組んだ学生が良い評価を受ける、そんな方法が一番だと思います。

 次に、評価済み成績の扱いについてですが、1つおかしいと思っていることがあります。それは、

不可の場合の扱いです。現状では、可か不可か、という状態から頑張って滑り込んだ人よりも、その

時はあきらめて再履修で良を取った人の方が成績評価としては良いことになっています。不可の記録

が残らないというのは、不可を取った学生には優しい措置だと思いますが、それなら本人にとっては

不本意な成績で単位を修得してしまった科目の再履修も認めて欲しいのです。

 私自身、1年生時の専門基礎科目は、テスト期間中の病気や自身の怠慢で可ばかりです。単位はな

んとか取れたものの、成績表を見るたびに取り直せたらなぁと思っています。全力で取った可なら諦

めもつくのですが、やればもう少しなんとかなったのではないかという思いが、現状への不満を生む

のです。

 この点については、ぜひ再考して欲しいと思います。

工学部通信ネットワーク工学科

3年次生

水 田 沙 也 可

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「成績評価の在り方」

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「成績評価の在り方」

求む!意義ある成績評価

 とある大学1年生の1年間。1年生は教養教育科目に出会う。自分の専門

分野とは異なる、初めて知る学問分野。1年生は新しい考え方を知り、新し

い知識を得、感動を覚えた。講義も休むことなく熱心に受講した。

 夏季休業。初の成績表に愕然とした。1年生は後期から、教養科目を選ぶ

時には成績評価で選ぶことにした。

 なんだか悲しい話ではないですか?上記の学生の場合、成績評価はレポートのみでした。一生懸命

学んだことをレポートにし、どの内容が悪かったのか分からず納得のいかないまま成績をつけられ、

それによってその後の講義のとり方が「どの講義が良い成績を得られるだろう」というふうになって

しまったのです。

 また別の話ですが、近年、成績評価の在り方が問われ、成績評価が厳格になっています。出席は筆

跡を確認して行なわれたり、「お情け」が通じないように点数がコンピュータ処理されたり。「それが

どうしたというのだ。楽勝科目に逃げようとするんじゃない」と言われるかもしれません。では先生

方は成績に困った学生達がどのようにしているかご存知でしょうか?(出席のごまかし方、テストの

乗り切り方…) いくら成績評価を厳格にしたって学生はそれに勝るずるがしこいサボり手段を編み

出すだけです。

 本当に岡山大学の学生の知識を育てたいのならば、もっと意義のある成績評価をすべきです。答え

のないレポートや提出したきり答えのわからないテストによってなされた成績評価だけでは次につな

がることがありません。また、文献をうつしただけのレポート、寝ているだけの出席点で良い成績を

得て何が残るのでしょう。どのような成績であろうと、その一つの講義に費やした時間を無駄にしな

いアフターケア(?)が成績評価と一体になっているべきではないか、言い換えるなら、「先生、成

績評価をしているんだから、それだけ分私たちがどれだけのことを得られたかに責任をもって!」で

す。(す、すみません、失礼なことを言いました)

 例えば、実験レポートやテストの答えは何だったのか(こんな珍答があったがそれはここが違うの

だよ、でも良いですね)、レポートはどのような内容をどう評価したのか(私ならこのように書くよ、

など)を示す。それだけでも「遅刻何分につき減点何点!」と言って学生を厳しく見張るより、ずっ

と学生のためになると私は思います。

 いろいろな講義があって、「成績評価はこう在るべきだ」という一つの答えなど、どう頑張っても

出せるわけがありません。ただ、講義内容の難易度、学生の受講数、どのように学ばせるか、などを

考えた上での成績評価ってまだまだ見直す余地があるのではないでしょうか?

農学部2年次生

黒 木 美 沙 緒【学生・教員FD検討会】

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「成績評価の在り方」

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「成績評価の在り方」

成績評価と授業の在り方

 多様な成績評価方式の導入後、筆者は期末試験(語句説明等の小問と論

述式の大問各50点)のみによる評価から、S-Tシャトルカード提出に基

づく出席点30点、宿題(レポート)提出10点、及び期末試験(同上各30点)

による評価へと在り方を切り替えた。

 この転換は、ほぼ同時期に経済学部で制度化された単位の上限制 (前期・

後期各20単位)とともに、授業の在り方に多大の影響を及ぼした。影響の内容は、

・カードで学生の理解度を確かめ必要に応じて次回始めに補いを行う、

・講義室の席に余裕がある場合受講生を少なくとも一列置きに着席させる、

・予習用に次回の資料を配布する、

・復習や自習の重要性を再三強調する、

・可能な限りカードに赤ペン・メモを書く、

・自習の勧めを兼ねて試験の準備用に作成した自筆のメモ(A4またはB4 1枚)の試験時持ち込

みを認める(早期予告)、

等という形に次第に煮詰まっていった。今年度前期末試験では、小問と大問の各解答例、受験者の各

得点と分布、及び講評を掲示した。しかしこれらは大幅に時間と労力を増大した。この方法によって、

以前よりも受講比率の上昇(挫折者の減少)と良好な成績修得者の増加が生じた。予想外なことに、

難しい科目として定評があるにもかかわらず、以前よりも受講生が増えた。その結果困った事態が生

じることになった。一部、二部(夜)とも受講生がかなり増加して、150枚以上にも達するカード・チェッ

クの負担が過重になり、返信コメントの余裕が無くなったのである。

 成績評価について考えさせられる点は、小問と大問の出来具合が (多くの学生ではほぼ対応してい

るのだが)、かなりの学生でズレがみられることである。大抵の場合、小問はできても大問はできな

いと思われがちだが、必ずしもそうではなく逆のタイプの学生もある程度存在するのである。このこ

とは試験の在り方や成績評価の在り方にかかわる重要な問題であることを示唆しているのではないか。

 授業や宿題を通じて、学習内容に興味をもつ学生が増えたことに相応の手応えを感じている筆者で

はあるが、こうした学生の多くが上記の逆のタイプの学生であるかもしれないこと、また大半の学生

の思考と行動は、資格取得などどちらかというと小問に強いタイプに傾く状況にあること等を考える

と、筆者としては、論述式の問題提出を困難にしかねない成績評点の開示などの風潮が広がることに

深い憂慮を禁じえない。

経済学部

教 授

建 部 和 弘

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「成績評価の在り方」

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「成績評価の在り方」

大人数クラスで出欠をとる場合

 成績評価は期末試験だけでなく、小テスト、演習、討論、宿題、レポート、

出席状況、受講態度などを総合的に評価することが望ましいと考えられます。

ここで、出欠、受講態度のチェックがある程度重要な要素となりますが、代

返のし放題、他人のレポートのまる写しなどを放置するわけにはゆきません。

受講学生の間で不平等であったり、不正が許されることを容認することなど、

あってはならないものです。特に100人を越えるクラスで出席をとる場合、通常の方法ではそれだけ

で少なくとも10分以上の時間を費やしてしまい、代返や受講態度のチェックも困難です。対策として、

出席チェックの意味で、授業の途中に、短時間で可能な小テストあるいは小アンケートの提出を求め、

後で出席票と照合することがよく行われています。また、シャトルカードを利用して受講状況を把握

すると同時に質問への対応や指導も行うという方法もよく採られています。この場合、大人数クラス

では、教員の負担が大きくなってしまいます。

 大人数クラスにおける効果的な方法として、座席表を利用することもできます。座席の配置図を拡

大コピーして、各座席群ごとの縦の列に対応する座席表を用意して、各列の後部から順番に自分が座っ

ている座席に対応する位置に学部、学籍番号、氏名を書くようにします。各列の最前部で記入が終わっ

たら、教員の手元に置いておきます。途中で抜けた人、受講態度の悪い人など、講義の合間に、対応

する記号でマークしておけば、後で短時間に集計できます。ただ、別人が受講する場合の判別、遅刻

者への対応はできません。いったん座席表に記入した後はその時間内に席を移動しないように注意し

ておく必要があります。場合によっては、受講態度を座席位置、前、中、後で判定することも可能と

なります。一つの方法ですが、ご参考下さい。

理学部物理学科

教 授

小 野 文 久

12

「成績評価の在り方」

13

「成績評価の在り方」

早期卒業と成績評価の一例

 理学部では平成14年度入学生から早期卒業制度を導入しているが、この

早期卒業制度の前提になっているのが登録単位数の上限制である。上限制と

は単に履修単位数を制限するだけではなく、その成績評価を厳格におこなう

ことが必要条件である。厳格な成績評価のもとでの成績優秀者に次年度の登

録単位数の増加分を認めている。これにより3年次終了時に卒業要件単位の

修得が可能になり、認定基準を満たした学生に早期卒業を認めることになっている。したがって理学

部教員は「厳格な成績評価」をおこなうことになっている。

 私自身は「厳格な成績評価」を強く意識して成績評価をおこなっているわけではないので、この原

稿を書くのにふさわしいとは思わないが、あえて批判覚悟で、以下に現況を書くこととする。

 今までに教養教育科目の講義の担当は一度あるだけなので、ここでは専門科目についての話に限る

こととする。毎年担当している講義は必修科目と選択必修科目がそれぞれ一つずつである。いずれも

シラバスには「中間試験40点、最終試験50点、レポートおよび出席状況により10点で総合的に評価

する」と書いてある。試験の配点が高いのは問題が基本的で広範囲にわたったものであると考えてい

るからである。講義日程の半ば頃に中間試験をおこない、40点満点で評価する。この試験で成績不

良の場合、以後の学習意欲を喪失する恐れがあり、またわからなかった問題を自分で確認させる意味

もあって、各自、できなかった問題の解答をレポートとして提出させている。20 ~ 30点の学生に1

問、20点以下の学生には2問を課している。これにより最大10点(ただし総計30点を超えないように)

加算している。レポート課題は3、4回与え、それに対する評価は計10点である。遅刻や欠席に関

しては減点法で評価している。最終試験の評価は50点満点でおこなうが、実はこれには+αがある。

中間試験等の成績がよくない学生の中にも最終試験で良い点を取る学生がいる場合があるので、(50

+α)点満点で評価し、最終成績を出すことがある。講義の目的が「学生の力が最終的にあるレベル

に達することである。」と考えているからである。

 評価に柔軟性を持たせたところがかえってあいまいな点になっているように思える。このようなや

り方が「厳格な成績評価」にかなっているか再考しなければならないと思っている。

大学院自然科学研究科(理学部化学科)

教 授

山 本 峻 三

12

「成績評価の在り方」

13

「成績評価の在り方」

「厳格な成績評価」を実践してみると…

 「厳格な成績評価」という言葉を4~5年前耳にしたとき、「厳しい試験を

するのか」と思いました。しかし私は現在むしろその逆の結果?に辿り着い

てしまいました。

 その経緯は以下の通りです。まずあらゆる評価には不公平は許されません。

厳格かつ公平な評価が不可欠です。厳格で公平な評価をするには厳格で公平

な試験をすべきです。間違っても「学生の裏をかく」問題などは出せなくなります。あくまで講義内

容に即したしかも肝要な部分に関する厳格な問題を作らなければなりません。また講義では肝要な部

分が解るような講義をしなければなりません。そしてそのためには第一に理解し易い講義をすること

になります。もちろん理解しやすいと言っても解り切ったことだけ話すわけにはいかず、新しい知識・

肝要な部分を吹き込む必要があります。

 さて、そこからが実は問題なのです。新しい知識を理解し易く講義するためには、それ相応の準備

が必要です。スライドだけを使った講義では、その場では解ったつもりでも試験になると学生は忘れ

てしまうことが多いのです。そこで講義資料を毎回作成して配布することになりました。また講義の

最後には「解らなければいつでも質問に来なさい」と言うことになりました。お陰で学生に拘束され

る時間も多くなります。大変です。学生にとっては講義の要点は良く解る様ですが、裏を返せば試験

問題がバレバレです。問題を難しくしようとも考えましたが、それでは講義内容や到達目標を逸脱す

る可能性があります。いっそのこと試験回数を増やして勉強さ

せようとしました。しかし特定の科目だけが学生の自己学習の

時間を占有する訳にはいきません。あくまで教育は複数の科目

のチームワークで行う必要があるからです。 

 と言う訳で、恐らく学生にとって私の講義では出席してある

程度の自己学習があれば「厳しい試験」は待っていない様です。

今のところ内心これで良いのではないかと思っています。今後

は到達目標をやや高く設定することも可能でしょう。

大学院医歯学総合研究科(歯学部)

教 授

松 尾 龍 二

14

「成績評価の在り方」

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「成績評価の在り方」

成績評価-今後の必要性

 成績評価はその科目の点数であり、点数は受講者(学生)のその科目で

の能力を示す物差しです。それらの点数が合わされればその人の学力評価に

なってきます。

 これまでの日本の社会では、人物の評価をする際に「○○大学卒」が大き

な幅をきかせていました。有名大学卒であれば「能力有り」と考え、社会は

優遇していました。過去の例にならって物事を無事にすすめておれば、生活が営まれてきた社会では、

これでよかったのでしょう。もっと以前の時代は世襲制ですから、社会は個人の能力をそれほど必要

としていなかったのでしょう。

 しかし今や経済は長期低迷し、市場には外国製品があふれています。文化も外国から直輸入です。

このような変化が激しい社会では、事態に対して素早く対応でき、指導力のある人が必要です。そう

なれば○○大学卒だけでは少しあやしく、「本当に能力があり、社会を豊かにしてくれる人」を人々

は求めるようになります。まずその物差しとして「○○大学でどの様な事を学び、大学でどの様に評

価(成績評価)を受けた人物なのか」を知りたくなってきます。

 今後大学は益々グローバル化され、国の内外の大学との交流がすすみます。そうなると単位の互換

性が日常的に行われるようになってきます。このような制度がすすんできますと、自ずと大学が行っ

た成績表が外に出てゆきます。他大学の学生が岡山大学に来て単位を取得し、自分のホームグランド

の大学に帰ります。もし学生の実力がないのに、岡山大学での成績が「優」であったら、「岡山大学

ではこの程度の学力で優なのか?岡山大学はまじめに教育に取り組んでいるのであろうか。」と思わ

れます。それはそのまま岡山大学の教育評価になります。また社会にあっては、大学が優秀と成績評

価した学生が、何の仕事も出来ないとなると、税金をたくさん使って(つかわせてあげて)教育した

のに、この様な学生を優秀とみとめる様な教育を大学は行っているのか、と言った批判が出てきます。

 将来起こりうる事を思いますと、今後の成績評価はただ一夜漬けで得たペーパーテストの点だけで

なく、学生の能力、姿勢を総合的に表した点でなくては、社会の要望・批判に応えることは出来ない

と思います。今後入学試験も多様化され、色々な経歴を持った学生が入学してきます。そのような意

味からも成績評価に対する関心は益々高まると思います。

薬学部

教 授

岡 本 敬 の 介

14

「成績評価の在り方」

15

「成績評価の在り方」

能動的な学習を評価するために

 当学科の教育プログラムは、平成14年度にJABEE(日本技術者教育認定

機構)の審査を受けて認定された。認定されるために満たすべき基準の一つ

として、大学に入学して卒業するまでの間に、教員の指導の元に行う勉強時

間(コンタクトタイム)が1,800時間以上であることが要請されている。こ

のコンタクトタイムは実時間で計算し、講義の2単位分すなわち15コマは

22.5時間に対応する。卒業要件が128単位の場合、この割合で単純に計算すると総計1,440時間になっ

て、遠く及ばない。ただし、学生実験の時間は講義の場合よりもはるかに長いし、特別(卒業)研究

は10単位しかないが学生は数百時間以上を費やすので、これらを考慮するとJABEE基準を満たすこ

とができる。

 一方、JABEEが手本にしている米国の認定機構であるABETの基準では、このような細かい勉強時

間の要請は設けられていない。米国の大学の講義では、レポートが何回も課され、中間試験、期末試

験と学生は必死になって勉強しなければついていけない。米国の学生は講義を待つ間に友達と談笑す

るものはほとんどおらず、テキストに目を通している者が多い。それでも、工学部の学生は卒業する

のに平均4年半程度かかるというし、良い成績を取らないと就職や大学院進学に直ぐに響く。レポー

トも、他の学生と相談するのはよいが、写すと処罰が厳しい。このようなことが前提になって、勉強

時間に関する基準は特には設けられず、また厳格な成績評価が可能になっていると考えられる。

 日本の大学生の勉強時間が少ない、ことは世界的に知られているので、JABEEでは認定基準にコン

タクトタイムの最低限度を加えたと思われる。しかし、日本の大学では、授業で専ら受け身に徹する

学生が多い。講義の試験成績は良いが、卒業研究では教員に指示されたことだけしか行えず、卒業後

も能動的に仕事に取り組めない、というタイプの学生は少なからずいる。学生を能動的にするのには、

講義で学生の興味を引き出すのと共に、学生自身に考えさせ実際的な課題との関連を見つけださせ

るように、適当な数のレポートを課し、また、最新の設計課題などを与える、米国でプロジェクトと

呼ばれる科目を比較的早い時期に導入することが有益である、と思われる。米国では充分な数のTA

(ティーチング・アシスタント)がこのような教育のサポートに当たっているが、日本でも同様のこ

とを是非実現してほしいものである。筆記試験による評価だけでなく、学生が能動的に考え、解決す

べき課題を見出し、取り組むための内容を増やし、能動性という視点からの評価を増やしていくこと

が必要と考える。

大学院自然科学研究科(工学部電気電子工学科)

教 授

野 木 茂 次

16

「成績評価の在り方」

17

成績評価に関連して思うこと

 昨年度まで全学のFD専門委員会委員でしたので、この間、成績評価に関

連して考えてきたことを列挙したいと思います。

 まず、現在どのような成績評価をしているかということですが、専門科

目の「遺伝生化学」(3年前期)は、ここ数年出席状況を含めた平常点30

点、中間テスト30点、期末テスト40点で評価しています。学生の授業への

積極的な参加を促すとともに、出席状況が掌握できるので、昨年からシャトルカードを用いています。

40名程度の受講者の質問や意見に対して毎回コメントを記入していますが、学生には大変好評です。

同じ農学部の木村吉伸教授と2人で担当している「生物化学」(2年前期)は2人で50点ずつで評価

しています。こちらは120名を越える受講生で出席を取る時間的余裕がないので、昨年までは出席を

全く評価していませんでしたが、出席状況も評価して欲しいという学生からの要望に応える意味もあ

り、今年初めてシャトルカードを導入しました。私も木村先生も毎回全員のカードに目を通しました。

大変でしたが効果はあったと思います。さて現在素点の開示について議論がなされています。基本的

には賛成なのですが、成績評価の基準が教員1人1人でバラバラの状況では問題があるように思えま

す。まず講義形態ごとに全学的な基準を作ることが必要ではないでしょうか。講義、演習、実験それ

ぞれについての標準的な成績評価の基準案をFD専門委員会等で議論した後に公開、教員はそれらを

基に各自の成績評価基準を作成し学生に明示する。教官によって、若干のバリエーションはあっても

もちろん構わないと思います。

 次に成績評価に関連して、成績評価の基準をシラバスに載せることに疑問を感じています。なぜな

らシラバスの原稿を提出するのが前年の11月頃で、早すぎるからです。前期の授業はもちろん済ん

でいますが、次の年度の授業までは時間がありすぎ、講義の準備を始めてから、その状況に合わせて

成績評価基準を変えるということが難しい。後期の授業の場合には今年度の授業をしながら、来年度

のシラバスを提出せざるを得ないので、今年度の総括に基づく授業計画は不可能です。ですから11

月に載せるのは前年度の成績評価基準としておいて、実際の授業開始時に今年度の成績評価をどのよ

うに行うか、きちんと説明するようにした方が良いと思います。

 最後に「授業評価アンケート」が来年度から回収方法も含めて変更になるようですが、おおむね賛

成です。授業評価アンケートは授業の点検、改善に役立てるために始まりました。こうした点から、

教員と学生の信頼関係に立脚して、教員が回収し、授業改善に積極的に活用すべきで、教員の「評価」

に使用する段階ではありません。一部の学部で行われている、アンケートの得点最優秀者を表彰する

等の取り組みは、「評価」の面のみが誇張されてしまいどうかと思います。

農学部

教 授

稲 垣 賢 二

16

「成績評価の在り方」

17

岡山大学法科大学院設置決まる

「 お 知 ら せ 」

 岡山大学では、大学院法務研究科(法科大学院)の設置を平成16年度の

最重点課題と位置付け、全学的協力の下に諸準備を進めてきましたが、平成

15年11月27日、文部科学省より設置が認められました。法科大学院創設に

関しましては、岡山弁護士会には教員の派遣、本学教員の実務研修の受入れ、

学生の実習教育の受入れなどについて全面的協力をいただきました。また、

岡山県はじめ地元自治体、経済界、関係団体等におかれては、設置に向けた

力強い御支援をいただきました。また、設置決定後も、学生への奨学金支給等に御支援いただくこと

について合意いただきました。

 平成15年初め頃は、「設置が認められる大学は少数にとどまるのではないか」という憶測が流れ、

いかに充実した教育を行うかを考え、そのための準備に全力で当たりました。念願が実現したのも、

皆様の御協力のおかげであり、厚く御礼申し上げます。

 本研究科では、「地域に奉仕し、地域に根ざした法曹の養成」を目標とします。入学定員は60名で

あり、少人数教育できめ細かい指導を行うために、20名の専任教員を置きます。このうち実務家教

員は、元裁判官1名、元検察官1名、弁護士2名の計4名です。この他、27人の大学教員、28人の

実務家教員が多様な分野の授業を担当します。

 本研究科の教育では、次の4点に力を入れています。

 第一に、法曹として必要とされる法律の専門的能力・知識を確実に身につけさせることです。

 第二に、法曹にふさわしい倫理観、人権感覚、社会的正義感を養うことです。

 第三に、地域で活躍する法曹にとって必要性が高い内容を身につけさせるという観点から、市民生

活上あるいは企業活動上の重要性が高く、今後需要が多くなると見込まれる次の分野に重点を置きま

す。

 ①  地域に住む人々の生活に密接にかかわる問題の解決に貢献するという観点から、特に医療・福

祉をはじめ、身近な生活にかかわる法律問題

 ②  地域経済の発展や地域の企業活動を支えるという観点から、経済法、税法等を含む広い意味で

のビジネス法

 第四に、岡山弁護士会はじめ実務家と密接な連携をして、実務に関する教育や学生の実習を重視し、

実務法曹としての高度な能力・技術・倫理の教育を行います。

 平成16年4月の学生受入れをひかえ、教育内容・方法の研究、教材の準備、施設など教育環境の

整備に全力を挙げているところです。

 平均年齢45歳の働き盛りの教員スタッフをそろえ、法曹を目指す学生の期待に応えることができ

ると確信しています。

 引き続き、学内外の皆様の御指導、御支援をお願いいたします。

法学部

教 授

中 村   誠

18 19

「 お 知 ら せ 」

岡 山 大 学 の 独 立 法 人 化

 国立大学法人法等関係6法が平成15年7月に成立し、国立大学は、16年

4月から法人化することになっている。これを機に、学問や文化を通じての

国際社会への価値の発信を最重要課題の一つとし、教育研究環境の充実に格

段の努力をしようとするものである。個性豊かな大学づくりと国際競争力の

ある教育研究、大学運営の活性化と社会への説明責任の重視など、重要課題

の解決を目指したものである。国立大学法人制度の概要は、次の5点にまとめることができる。

 ①「大学毎に法人化」し、自律的な運営を確保

 ②「民間的発想」のマネジメント手法の導入

 ③「学外者の参画」による運営システムの制度化

 ④「非公務員型」による弾力的な人事システムへの移行

 ⑤「第三者評価」の導入による事後チェック方式への移行

 法人化後の大学は、自主性・自律性を運営の基本とし、民間的経営手法も活用して、魅力ある教育

研究を展開してゆくことになる。法人化後も国が引き続き必要な財政措置を行うことになっているが、

第三者評価の結果による適切な資源配分と競争的な資金の積極的活用が図られねばならない。講座や

学科などの教育研究組織の編成や教職員の配置は、学内手続きにより、適時適切な見直しが可能とな

り、学長のリーダーシップの下に各大学の個性化が進展し、互いに切磋琢磨する環境が創出される。

 学生生活面については、法人化後も、学生の身分、教育課程、学位、授業料、奨学金などに基本的

変更はないが、授業の内容・方法、課外活動、就職支援など、キャンパスライフの一層の充実に努力

する。

 本学の目標は、教育面では、「学生が主体的に学ぶ」、研究面では、「自然と人間の共生」を総合スロー

ガンとしている。教育内容の点検・評価を不断に行って魅力ある教育を展開し、常に世界最高水準の

研究成果を生み出す「知の府」の実現に努めねばならない。法人化を実質的な大学改革の大きなチャ

ンスと捉え、世界のフロントランナーとして国際社会に価値を発信し、知的リーダーシップを発揮す

るため教職員・学生が連帯・協働して、「活力と魅力のある岡山大学」を創ってゆきたいものである。

副学長

松 畑 熙 一

18 19

「シラバスアンケートから」

「 お 知 ら せ 」

 平成14年に引き続き、平成15年の7月および11月の2回にわたって、教

養教育科目受講学生を対象にした「シラバス改善のためのアンケート」を行

いました。協力していただいた学生はもとより、講義時間を割いてアンケー

トの配布・回収をしていただいた先生方に改めてお礼を申し上げます。本ア

ン ケ ー ト の 集 計 結 果 は、 検 討 会 のHPよ り 公 開 し て い ま す(http://

cfd.cc.okayama-u.ac.jp/stfd/wg/syllabus/index.htm)。貴重な夏休み等を使って検討会の学生委員が集

計したものです。一読していただければ幸甚です。これらのアンケート結果から、学生が現行のシラ

バスをどのように利用しているかが仄かに見えてきましたので、ご報告したいとおもいます。

 シラバスには、学生・教員共に根強い誤解があります。日本のシラバス(別名:デンワチョウ)は、

アメリカを起源とするそれとは根本的な相違があります(http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~tanakahi/

syllabus/syllabus.pdf)。アメリカ起源のシラバスは単に履修届を書くために使用するものではなく、

予習・復習も可能であるように記述された最小単位のカリキュラム書です。また、学生との契約書の

要素を含んでいるため、学生全員に開示するべきものではなく、第一回目の授業の最初に受講学生の

みに提示するべきものです。

 岡山大学の現状は、アンケート結果が示しているように、シラバスは、そのほとんどが履修届を書

くためだけに使用されており、それ以外の使用法としても試験前後に成績評価基準を確認するためが

主です。残念ながら、教員が望んでいるような毎回の講義内容の確認(できれば予習)に役立ててい

る学生はまれであるという結果がでています。さらに、現行のシラバスの記述項目の中で最も充実が

求められているものは、成績評価項目です。結局、教員や事務方が膨大な時間・労力・費用をかけて

作成する現行のシラバスは、「楽勝科目の品定めカタログ」としてしか捉えられていません。履修届

を書くためだけならば、「学生の手引き」や「授業時間割」で充分と考えます。これで、後期授業の

半分も消化していない時期に、来年度のシラバスを書かなければならず、挙げ句の果てには授業評価

アンケートではシラバスと異なると酷評される矛盾からも開放されます。逆に、シラバスを予習・復

習に使用させるのならば、その内容がA4用紙1枚に納まるはずもありません。結局、中途半端に終

止しているのが「デンワチョウ」です。検討会シラバスWGは「シラバスの二元化」を訴えています。

講義科目を選択するための全員に公開するシラバスは、現行よりもっとスリムに、一方、講義の最初

に受講者のみに公開するシラバスはもっと詳細にです。 

 「学生のためを思うならば学生に聞け」。これが教育に双方向性を求める鉄則であると信じています。

学生・教員FD検討会副委員長

竹 内 靖 雄大学院自然科学研究科

(薬学部)助教授( )

20 21

「 お 知 ら せ 」

この点からシラバスは、まさしく学生のために公開するためのものであり、その出来不出来を学生に

問うことは自明と考えます。FD専門委員会や教育開発センターで練られ、毎年充実しているように

思える記述項目や内容も、実際に使用する学生の感想からは、「空振り」が多いのが現状です。平成

16年度の教養教育科目のシラバスデータは発生源入力で収集されました。1割もの講義科目が締切

期限に間に合いませんでした。シラバスに対する教員の意識のほうにも大きな問題を抱えています。

 計画(シラバス)、実行(講義)、評価(授業評価)は、教育の3本柱です。評価ばかりが肥満化し

ている教育論議は聞き飽きました。冒頭を飾るシラバスの担う役割について、学生も教員ももう少し

考えるべきではないでしょうか。

● シラバスに関するアンケート結果(抜粋)

到達目標・学習目標 6%

受講要件 5%

発展科目 2%テキスト等 4%

授業概要・計画 28%

成績評価 32%

コメント 7%

無回答 16%

シラバスで充実させてほしい項目(平成15年7月実施:回収率69%)

シラバスの使用方法(平成15年11月実施:回収率59%)

履修登録時のみ 73%履修登録時以外 26%

使わない 1%

20 21

編集担当

教育開発センター広報専門委員会

神崎 浩  横尾昌紀  小野文久  成松鎭雄  舩曵信生  矢野正昭

表 紙 構 成 監 修

橋ヶ谷佳正

表 紙 イ ラ ス ト

教育学研究科 美術教育専攻 平成12年度修了 下山章子

学務部教務課教務係

 今回で6回目の発刊となりました

OU-Voiceの特集テーマを、「成績評価の

在り方」と致しました。成績評価は、大

学としての基盤を構成する上での最重要

課題の一つであり、厳密性、公平性、客

観性が求められます。同時に、主観的な

観点からの評価を行わざるを得ない場合

があることも確かです。本冊子では、「成

績評価の在り方」について、学生、教員、

それぞれの立場からの意見を集約しまし

た。これを機に、より望ましい「成績評

価の在り方」についての議論が盛んとな

ることを編集担当一同願っております。

特集「成績評価の在り方」

岡山大学教育開発����

������広報専門委員会

二��四年三月一日発行

岡山大学µOU-Voiceµ第6号

編集・発行

岡山大学教育開発センター広報専門委員会

所在地・連絡先

岡山市津島中2-1-1 〒700-8530

電話:086-252-1111(代表)µFax:086-251-8440

E-mail:[email protected]

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