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5.多様な住まい方の提案 まちの場のデザイン 〇集住のありかた、家づくりの提案、環境共生 〇公園、鎮魂の場、中心施設、まちづくりセンター、…

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5.多様な住まい方の提案 まちの場のデザイン

〇集住のありかた、家づくりの提案、環境共生

〇公園、鎮魂の場、中心施設、まちづくりセンター、…

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安全保障住宅・まちづくり(Human Security Housing)の提案 岩村和夫(東京都市大学)+

㈱岩村アトリエ

安全保障住宅・まちづくり(HSH: Human Security Housing)の提案

~災害を克服しつつ、住み手と地域の安全を保障し、心地よく持続する暮らしを実現するために~

)

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コミュニティ集住住宅によるまちの再建 林一則(NPO アーバンデザイン研究体)

コミュニティ集住住宅によるまちの再建~新たな公的賃貸住宅事業をまちの再建の柱に

沿岸集落、小都市地域では次のような状況があるでしょう。

・人口 2/3~1/2 程度への減に

・高齢化の進行が一気に加速化 自力住宅再建をあきらめざるをえない方、将来の空き家化も

・地形的に住宅移転適地が不足

・公共住宅供給主体が即応できない

そこで、まちの再建の核にもなる

集約居住をすすめる複合集住住宅を、新たなコミュニティ事業体により建設、経営

していくことにチャレンジすべきだと考えます。

○スキーム開発

・住めなくなった土地の集約と換地による

・高齢者が終身居住権(終身型定期借家権)で入居できる 土地買い取りと家賃相当との相殺

・若い世代も安価で入居でき、場合によっては長期の利用権の買い取りも出来る

・将来は他の用途(宿泊施設等)にも転用もできる

○コンパクトな立体集落的集住住宅

各地域に応じたスタイルを模索する

地元が選択できるいくつかのイメージを示すことは必要

一例として

・ケア拠点、近隣作業場といった「まちの居場所」をとりこむ

・バルコニーアクセス、路地、縁側のある立体長屋的集合住宅

・3~4階建て程度のハイブリッド構造 RC+木造

・高台、丘への避難経路と連結

・耐震的なライフライン幹線を組み込み、更新も容易に

○推進実現のために

・現地に事業型NPOなどを設立し計画推進

~数年間程度、他県公社や民間コンサルなどから出向、人材募集+地元での人材発掘と育成

→経営、管理を地元に移行していけるプロセスをとる

・地元建設業者、不動産業者が参加できる

・県が地域レベルでの事業調整

・国による事業費、計画費支援

私たちのNPOでは戦後復興期横浜市等で建設された防火帯共同住宅の見直し作業をおこなっていると

ころですが、かたちを変えて新たな公民連携型、街並み形成型住宅事業を構築すべきだと考えます。

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未来の子どもたちの為に循環型建築社会~グリーン建築~

未来の子どもたちの為に循環型建築社会~グリーン建築~

未来の子どもたちの為に循環型建築社会~グリーン建築~

未来の子どもたちの為に循環型建築社会~グリーン建築~

未来の子どもたちの為に循環型建築社会~グリーン建築~

今回の震災により多くの住宅が被害を受け、美しい街並みがなくなってしまいました。これから街と、そこに住む人々のコミュニュティを復興するにあたり、未来の子どもたちに引き継げる価値ある街並みを創り出さなければなりません。その為に私たちが今できる事は…私たちが提案する「グリーン建築の家を建てる」事は循環型社会の創造です。新しく建築する住宅には再生可能な循環型建築資材を活用し、持続可能な建築物として未来の子どもたちへ伝えるとともに、二酸化炭素を削減し地球環境に貢献する建築物が建てられる社会を目指します。

・魅力をもった街並みを創る

グリーン建築では、伝統資財施工士資格者が、住む方の希望に添った住宅設計までをおこないます。京都や昔の古い日本では当たり前で、海外では今も大切にされている統一した外観や素材を使用した美しい街並をデザインする事で将来に渡って愛着のある街並みを提案します。

・地産地消で地域活性化

新しい木材は地元の木材ではなく輸入材が使用されます。これは地元の林業にとって経済効果はありません。グリーン建築では国産木材で、自然乾燥された木材を使用していきます。地産地消をはかり、その上で地元を愛する心を育む事がまちづくりにつながると考えます。

・地球温暖化の防止

解体した産業廃棄物の増加は地球環境温暖化を促進させています。木材を産業廃棄物として処分せずに再活用する事で、木材に含まれている二酸化炭素を大気中に放出しないですむのです。

・古材の再利用「リユース」

古い木材は新しい木材より経年変化により強度が増しているので、古い木材を再利用する事は建物の強度をあげる事につながります。グリーン建築認定の家では、50年後もし不要となった時に建設時の木材の買取りをおこなう証明書を発行しております。

循環型建築(グリーン建築)で建てる復興住宅の街並み     グリーン建築推進協議会

グリーン建築協議会とは1、新しく建築をするにあたり、全てを捨てることなく生かせる資材(伝統資財)を活用する2、新しい建築をするにあたり、将来再利用できる資材を使用する3、使える建物に関しては、出来るだけ長期間使用できる提案を行う活動している全国組織です。

・ 古材の再利用「リユース」

・ 地産地消で経済活性化

・地球温暖化の防止

・魅力をもった街並みを創る

循環型建築社会

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日本では現在、高齢化が進んでいる。 今回震災に合った地域は特に高齢化が進んでいてなお、2009 年時点で、東北 3

今回震災に合った地域は高齢化が進んでいて 2009年時点で、東北3県では 65歳以上人口の割合が 24.2%、15歳~64歳人口

の割合が 62.5%であった。また、日本全体では平均年齢は 45歳、この3県あっては 46歳である。

阪神・淡路大震災の際は、高齢者を助ける手段として「コレクティブ住宅」が企画された。

現在、10年以上たち、高齢者が後期高齢者になり、年寄り同士で支え合うのは限界が見えているという。

そこで、若者を呼び込み、一緒に再生計画を行い、建設し、生活する「コウハウジング」形式の集落再生プランを提案する。

コウハウジングはアメリカで生まれの住民による、5戸から 15戸単位の小規模な自発的集落づくりである。

あてがわれた建物を使うのでは無く、自らが計画し、建設する多世代住民による「事業」である。

大規模団地では出来ない、地元住民の要望をそれぞれに取り上げ実現することが可能だ。

米国では、20年以上の培われたノウハウがあり、現在までの住民自治と管理の経験が蓄積されている。

○生きる場としての「コウハウジング」… 自ら参画して作る集落の 特徴

1.若い人々の居住・就業の場の確保としてのコウハウジング

(オフィス、作業場、高齢者ケア施設など就業場所を自分たちで創設できる。)

2.老若男女のミックスコミュニティでの持続する支え合い。

(世代間での支え合うため、住み替え可能な賃貸住宅・単身用住宅などのタイプの違う住宅をミックス)

3.現場の意志を生かす、初期段階からの事業参加と、その結果の住民本位の新しいコミュニティの誕生

(ワークショップ方式での意志決定は分かりやすく、記録として残り、その後の管理運営の基礎となる。)

◆再生のための 参加のプロセス

◆高齢化に対応する グループホームのあるコウハウジング集落 イメージ案

生きる場としての「コウハウジング」…自ら参画して作る集落事業

山本典子NPO コウハウジングパートナーズ

計画する スタートする 設計する 建設する。 住まう。

◆完成までの工程

を知る。◆合意す

る方法を学ぶ。◆

仕事の分担を決め

る。など

◆ゴールをはっき

りさせ、優先させ

る事項を決める。

◆用地を確保す

る。◆スケジュー

ルを作る。など

◆概要を皆で決める

◆デザインを決定す

る。◆プランを決め

る。◆融資を確実にす

る。◆建設会社と契約

する。

◆コモンハウスを最初

に作る。◆建設会社の仕

事のチェック。◆一部を

自分たちで作る。◆自主

管理のルールを決める。

◆外構を自分たちで作

る。◆メンテナンスを行

う。◆コモンハウスの運

営と管理 ◆作業部会

での活動

ファミリー世帯

子育て家族

ファミリー世帯

介護者 家族

単身

ケアスタッフ

単身貸与

ボランティア

ファミリー世帯

子育て家族

ファミリー世帯

家族がホーム者

単身 賃貸

ケアスタッフ 単身高齢者

賃貸住宅

ファミリー世帯

ケアスタッフ ファミリー世帯

賃貸住宅

一般世帯

コーディネーター

単身高齢者

集落外

グループホーム

(高齢者・障害

者)など

コモンハウス

集会場・作業場・デイ

ケア・オフィスなど

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「雨水活用建築」による雨水自立型まちづくりの提案

神谷 博

雨水活用建築普及小委員会

主査

水環境運営委員会・雨水建築規格化小委員会(2010 年度終了)において、「雨水活用建築ガイドライン」

を作成し、2011 年 6 月に AIJES として日本建築学会から出版を予定しています。「雨水活用建築」は災

害時における「雨水自立」を可能とする提案であり、今回の災害復興にも役立つことを願っています。

[提案主旨]

上下水道の復旧に時間がかかることが課題となっている中、住宅の再築を急ぐ方法として、建築時に生

活に十分な量の雨水を貯水できる構造とします。水質は、用途に応じて浄化し、飲用レベルの用途には

逆浸透膜浄水器を用います。使用後の汚水は浄化槽を設けて処理し、中水として雑用用途に再利用しま

す。余水は浸透若しくは蒸発散により処理します。

[効用]

ライフラインが復旧するまでの間、ライフポイントとして順次個別に着工でき、それだけで完結したシ

ステムとなり得ます。自立型のシステムが先行することにより、再建する上下水道の負荷を減らし、安

価にかつ早急に復旧させることができます。これまでの一元的な給排水システムから、多元給排水シス

テムに転換することにより、将来的にも災害に強いまちをつくることができます。

[コスト]

1 軒の住宅のコストは高くなりますが、インフラシステムが軽減できます。将来にわたっての設備の維

持管理費も、インフラシステムの更新が楽になり、自立システムの管理も集中することなく小回りが利

きます。トータルコストとしては、雨水産業を新たに育成することにより、産業活性化のもたらす利益

によっても社会的コストに還元されます。

[付加システム]

雨水活用建築は個別システムではあっても、インフラシステムの一部を担う社会システムであり、補助

金システムを整えて支援する妥当性があります。浄水器やポンプの電源は、太陽光発電などの自然エネ

ルギーを充てることで、より災害対応の能力が高まります。電気や機械に頼らなくとも使えるシステム

としておくことも大事な要素です。

[まちづくりに活かす]

建築における雨水活用の取り組みは、公園や広場、道路などでも同様な方法で展開できます。地下水の

水質も損なわれる中、小さなブロックやまち並み単位で、雨水をライフポイントとして整備していくこ

とにより、まち全体の安全性、自立性を高めて行くことができます。

<雨水活用システム図>

この図は今回の被災地向けのものでは

ありませんが、「雨水活用建築ガイド

ライン」で示している基本的な考え方

です。被災地において、下水道が復旧

するまでの間は浄化槽を用い、下水接

続後に浄化槽を使用しない場合は、雨

水タンクへの転用ができます。これは、

今回の被災地における特殊な対策とし

てではなく、今後の地球温暖化に伴う

気象異変に対応するための市街地にお

ける建築の基本型の見直しという意味

があります。

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津波シェルター付き建築物などを使った津波安全街づくり 仙台市若林区荒浜 高梨 哲彦

政府では『復興構想会議』を発足させ、今回の地震・津波災害からの復興ビジョンを描き始めたが、それが真に国

民・住民のためになるためには、より多くの人手と工夫と時間を投入していかねばならない。 今回被災した沿岸地域の復興の方法として、『高所移転』や『高所造成』などの方法が、既に当会議の議長によって

も挙げられている。しかし、それらの方法が、これまでそれぞれの土地に暮してきた人々にとって、唯一最善の解で

あろうか? 私は、これら以外に、人々の“生命の安全”を保ちながらなおかつ“海と共生”するような、もっと別なやり方が

あると考え、ここに提案するものである。 三陸地方など地形的条件や住民の暮し方・意思などが合致すれば、確かに“高所移転”という考え方も選択肢のひ

とつであろう。しかし、“住居”は高所に移転したとしても、“仕事場”までは海から離れることができない場合が多

い。その場合、鉄筋コンクリート十階建てのビルが林立する港町を構築することを、果たして住民が望むのだろうか? また、海抜10メートル以下の土地が延々と数千ヘクタールも広がる仙台平野のような場合は、新たな『高所造成』

ということになるのだろうが、その規模はどれほどのものになるのであろうか? また、その天文学的とも思える“建設費用”。確率年1000年の災害に対応するためのやむを得ぬコストとして、

果たして国民・住民が負担するに妥当なものであるのだろうか? なお、一説に唱えられているような“がれきを利用した高所造成”というものは、全く論外であることを強く言っ

ておきたい。そもそも今回の災害で一般に“がれき”と表現されているものは、決して文字通りの“瓦礫”、瓦や小石

などの“無機物”などではなく、柱・梁・壁・床など建物の一部であった“木材”、松の木などの“樹木”、布団や衣

類などの“繊維製品”、さまざまな“動植物残渣”…など“有機質素材の廃棄物”がほとんどである。これを埋立て処

分する際には、コンクリートガラなどの“安定型処分地”ではなく、“管理型処分地”において有機物の腐敗や浸出液

の処理・覆土面の沈下管理など長期間の管理を行っていかなければならないものである。法律などで“大災害時での

特例”としていっしょくたの埋立てを許可したとしても、化学変化・微生物学的変化は“特例扱い”してくれる訳で

はない。 今回の地震でも、丘陵地の宅地造成地で土砂崩れや地盤の液状化が多発したが、人工的に新しく盛土した地盤は“超

軟弱地盤”と化す。ましてや、“災害廃棄物”を基礎とする上に建つ住居や道路などの都市は、まさに“砂上の楼閣”

でしかない。 では、どうするか? 第3の道は、以下に示す、“津波シェルター付き建築物などを使った津波安全街づくり”である。 『津波シェルター』とは、建物の一部を重量鉄骨などの強固な部材で構築して津波の衝撃にも耐え得るものとした

うえで、その内部に津波の衝撃と水圧に耐えさらに気密・水密構造とした小部屋を設けて、津波襲来時は素早くそこ

に避難して津波をやり過ごし、“命だけは助かる”ための施設である。シェルターの高さをはるかに超えるような大津

波の際でも、シェルターの小部屋内に水が入り込むことはなく、小部屋の中の避難者に危険は及ばない。 『津波シェルターなどを使った津波安全街づくり』とは、365日24時間いつでも遠慮なく5分以内に避難でき

るように、このような緊急避難の施設を地区内に多数配置した街づくりのありかたを言う。 このような“津波シェルター”は、軸組み在来工法の木造住宅内などにも設けることができ、その設置に必要な費

用もそれほど大きな金額にはならず、住民自らの個人負担でも可能で、しかも鉄筋コンクリートの高層ビルが林立す

るような形にはならず、これまでどおりの懐かしい街並みを再現することも可能である。 “高所移転”や“高所造成”という方法は、失敗に終わった“高く長い防潮堤”と同じく、人々を海から隔絶し、

遠ざけ、海との交流を妨げ、結果として海の優しさも恐ろしさも知らない無機質な住民を創り出してしまう。 海の波を身近に感じ海の風を受け海の“気配”の中で普段の生活を営み、千年に一度いざという時には、すぐ近く

にあるシェルターに逃げ込み一時息をひそめて津波をやりすごす…。 このような街づくり・“人間の暮し方”を、今回の『まちづくり展』の検討のまな板のうえに上げていただければ幸

いである。 数百戸の家屋が津波で押し流され集落が“壊滅”した仙台市若林区荒浜地区に住み、辛うじて生き延びた住民のひ

とりとして、穏やかな気候風土に育まれて暮す心優しい人々、“半農半漁の海辺の集落”の復活を目指して、ここに提

案するものである。

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冬季の津波避難施設の計画要件 南 慎一(北海道立総合研究機構建築研究本部) 積雪寒冷地においては、冬季の津波避難に多くの問題・課題を抱えています。このため、建築学会北海道支部で

は「冬季の津波避難対策研究委員会(平成 21-22 年度)」を設置し、津波避難施設の実態調査等を踏まえて冬季の

津波避難施設の計画要件として以下のようにとりまとめました。

【基本方針】

①地区の津波浸水危険性の把握

②災害時要援護者の避難対策の確立

③遠地津波と近地津波を想定した避難計画

④緊急的避難施設(津波避難ビル)、一時的避難場所(高台等)、収容機能を有する避難施設の機能と配置の連携

【立地計画要件】 ①津波浸水危険性、人口密度分布を考慮した避難施設の配置、避難経路の設定 ②津波避難カバーエリアの移動困難者、介護者、健常者など避難者属性を考慮した避難アクセス ③支援に容易な移動を考慮したアクセス

【施設計画要件】 ①施設建物の耐震強度の確保 ②漂流物に対する外周部の強度の確保 ③津波の方向性を考慮した建物の向きや形状 ④雪荷重の考慮 ⑤建物の断熱性能の確保 ⑥非常時を考慮した暖房設備の選定 ⑦冬季卓越風向を考慮した出入り口の防風壁の設置 ⑧高床式構造による出入口の堆雪防止 ⑨外部の入口・階段の積雪・凍結対策 ⑩緊急時の容易な解錠方法 ⑪日常的機能からの転用を考慮した建築計画 ⑫緊急時の自立機能(電源、通信、水、熱供給等)の確保

風雪を考慮した避難施設のイメージ図

【運営管理要件】 ①緊急時の施設管理者の対応の明確化 ②冬季避難に備えた避難者の支援体制 ③地区における避難施設、避難通路の運用・管理の仕組みづくり ④津波避難施設に関する普及啓発

◆冬季の津波避難対策研究委員会(平成 21-22 年度)

主査:南 慎一(北総研)、麻里哲広(北大)、岡村隆夫((株)ドーコン)、加藤雅也(釧路高専)、草苅敏夫(釧路高専)、

竹内慎一(北総研)、堤 拓哉(北総研)、森 太郎(北大)、

高床式避難施設

吹き払いによる除雪軽減

風上側には吹き込み防

止の防風板を設置 出入口が風下側の場合

出入口が風上側の場合

防風壁 側面の出入口は吹きだまりの影響が少ない

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〇公園、鎮魂の場、中心施設、まちづくりセンター、…

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ランドスケープによるガレキの再生 震災復興記念公園「海の森」

柳沢伸也、永野聡 (早稲田大学 都市・地域研究所)

「ガレキ」は単なるゴミではない、土地の記憶が詰まった塊 被災地で、倒壊した家屋などの大量のガレキ処理が課題となっています。復旧作業を進めるためにも早期に撤去しなければなりませんが、地域によっては集積場の確保すら見通しが立っていない状況です。一方、「ガレキ」は被災者にとっては単なるゴミではなく、土地の記憶が詰まったかけらの塊ともいえます。そこで、土地の記憶が詰まった「ガレキ」を、ランドスケープの視点に立ったデザインで活用し、防災拠点を兼ねた震災復興記念公園を作ることを提案します。 かつて横浜では、関東大震災のガレキを埋め立てて、山下公園を形成しました。山下公園はその後、地域のブランドイメージを向上させる観光名所となり、今なお人々を惹きつけています。こうした知恵を継承し、震災復興記念公園「海の森」をつくることによって、ガレキの処理と被災の記憶を風化させないシンボルの形成を図ります。

Photo:関東大震災のガレキを埋め

立て建設した横浜市山下公園

提案1:ガレキ利用の震災復興記念公園「海の森」の整備 仙台平野の沿岸部に、土地の記憶がつまった「ガレキ」を土台として敷き詰め、その上に盛り土し、ランドスケープ的にデザインし広大な震災復興祈念公園を「海の森」として整備します。仙台平野の荒浜・井土地区など津波被害が甚大な場所では建物のほぼすべてが壊滅し、復旧可能な建物は小学校と数十件の民家くらいしかありません。そこには、被災した人々が帰って来たくなるような魂のより所が必要と考えられます。 荒浜・井土地区はかつて産業廃棄物の処理場(沼)でしたが、仙台市が買い取って海岸公園として整備してきた経緯があります。今回もまた、大量なガレキを処理しながら、地域の人々の生活を豊かにする空間を創造します。

提案2:貞山運河一帯に「水と緑のネックレス」

貞山堀は美しい景観を呈し、地域住民が身近な自然を楽しむ場として古くから親しまれてきました。震災復興記念公園「海の森」は、貞山堀のサイクリングロードや遊歩道とつなぎ、水と緑と地形の変化に富んだ美しい景観を生み出します。貞山運河の拡幅/浚渫を利用し、その土砂を瓦礫の上に土盛りします。砂地にはアカマツを植林し、土盛りした場は芝生、雑木林を整備し新しい風景を造ります。竹林は水や風を防ぐ効果があるため、積極的に植林を進めます。既存の公園緑地と新設する公園緑地を有機的に連続させ、水と緑のネックレス(連鎖)を整備します。

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自然の良さも怖さも知ることのできる集落復興 薬袋奈美子(日本女子大学)

1 日常的に被害がある場所をつくる

~津波の水の強さ、水害時の水の流れの強さ、等がたまには体験できるよう~

【危険を見せる・体験できる場を】

今回の最大の問題点の一つは、避難行動をとることが遅れた人が多かったことの指摘がされている。地震が来たら、

“てんでんこ”に逃げるというのは、地元の古老の言葉だという。奥尻の時にも、インド洋の時にも、とにかく逃げた

年寄りが助かったという話は聞く。防潮堤を過信しない行動が、命を救っている。 河川の堤防や、急傾斜地の斜面対策、砂防ダム等、頻発してきた自然災害の被害を軽減するのに多いに役立ってき

た。しかしそれにより自然災害を人々から遠いものにしてしまい、逃げる余裕があったにも関わらず、ある時突然多く

の命を奪うような事態に陥った。これまでにも様々な防災訓練があり、呼びかけがあったが、それでも逃げないという

選択をする人が多いのであれば、もっと早めに避難行動に結びつくための“危険を見せる”工夫が必要である。そして

自然が怖いという気持ちを持ち続けられるような防災対策を講じる必要がある。 【海や山とうまく付き合う暮らしを大切に】

高台などに集落移転するというアイディアが出ており、実施する集落も少なくないであろう。農漁村集落の建築禁

止区域を設けても、暫くしたらやはり漁業等の生活のしやすい場所に次第に集落は戻っていくかもしれない。海ととも

にある暮らしの魅力を大切にし、フル活用したいと思うのは当然であろう。そこに地域ならではの魅力も生まれる。公

園や漁業関連施設のみをゆったりと創るなどの危険地域に住まわせないための仕掛けで“埋める”ことはできるであろ

うが、海の良さも怖さも忘れてしまわない工夫が必要であろう。 2 農業・漁業をする人のすそ野を増やし、自然と付き合う生き方をする人の層を増やす

【自然の恵みを活かす生業】

自然の営みに耳を傾けながら行う伝統的な農業の知恵が、見直されている。集約的に効率的に行う量を賄う農業も

勿論大切であるが、有機栽培等をきっかけに、周辺の環境へ目を向ける農家も増えている。またそういったことに関心

のある新規就農者も多い。生業としての農林漁業従事者が中心となり、これらの地域に住む人が自然の恵みを享受し、

楽しむことは、森から海までの自然の循環に気配りにつながる。このような住民が新たに地域に受け入れられる状況づ

くりが必要だ。そのためには従来の就農への支援だけではなく、土地の所有・利用制度の検討、住宅供給方法の検討が

必要となろう。実際に利用することのできる人が、利用しやすい状況づくりが必要であろう。長い時間をかけて培う土

や環境を大切にしてくれる人に親切な状況づくりである。 【生業を円滑にする復興住宅】

また住居の確保も大切である。住宅の流失した地域では従来からの住民、そして新しく地域に入ってくる住民のた

めに復興住宅が供給されることとなろう。能登半島での取り組み等を踏まえ柔軟な対応がされることであろうが、その

形が農村・漁村での生活に見合ったものとなる必要があろう。単に暮らせるというだけではなく、農業を支える器とし

て、農村での生活を十二分にできるような、農作業、貯蔵、また倉庫等を十分に備えなければ、暮らしづらい。新しい

生活が円滑になる空間を考えなくてはならない。そうでなければ、地域の復興には寄与しづらい。 3 子供達が自然の怖さを知りながら、育つことのできる空間と仕組づくり

田舎の子供が日常的に周囲の自然を利用した遊びをしているとは限らない。遊び仲間が十分にいない、防災工事で

水面や山が遠くなり、また自然の中での遊び方や危険個所の伝授をしてくれる異年齢間での遊びの共有がままならない

こと等がその背景にあるようだ。集落に住む子供だけでなく、たまに来訪する都市部の子供達も含めて、気軽に自然の

中で遊び、その恐ろしさ力強さも含めて体験する場が用意されることが必要だ。それはお膳立てされた自然教育施設と

いうことではなく、日常生活の中で川遊びや山遊びができる河川整備や雑木林の整備、或は子供たちを見守り遊び方や

危険を伝えられるシステムと人づくりが必要なのである。