5gでのサービス保証型 ネットワーク・スライシング ホワイ...

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5Gでのサービス保証型 ネットワーク・スライシング ホワイトペーパー 版数 Ver. 1.0 日付 2017-07-04 チャイナ・モバイル・コミュニケーションズ・コーポレーション、ファーウェイ、ドイツ・テレコム、フォルクスワーゲン

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5Gでのサービス保証型

ネットワーク・スライシング

ホワイトペーパー

版数 Ver. 1.0

日付 2017-07-04

チャイナ・モバイル・コミュニケーションズ・コーポレーション、ファーウェイ、ドイツ・テレコム、フォルクスワーゲン

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概要

過去数世代のモバイル・ネットワークでは、音声、データ、動画など、生活を一変させるようなサービスが実現さ

れました。これに対し、5Gでは、通信のエコシステムを垂直産業に開放することで、社会の変革を目指していま

す。5Gは、「Internet of Everything(IoE)」を垂直産業が実現する原動力となるでしょう。IoEは、膨大な数のデ

バイスに対して、信頼性が高く、超低遅延のサービスをユビキタスに提供するというビジョンです。本ホワイト

ペーパーで紹介するサービス保証型ネットワーク・スライシングは、5Gによってこのビジョンを実現するうえで欠

かせない機能のひとつです。通信事業者、ベンダー、垂直産業のキープレイヤー各社は、ビジョン、エンド・ツー・

エンド(E2E)のソリューション、主要な実現技術、垂直産業に対する影響という点で、サービス保証型ネットワー

ク・スライシングについての共通の理解を形成しました。本ホワイトペーパーでは、5Gにおけるネットワーク・スラ

イシングについての考え方を説明します。

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目次

1 業界のトレンドと各種要件 .................................................................................................................................. 4

2 サービス保証型ネットワーク・スライシングのビジョン ....................................................................................... 5

3 サービス保証型ネットワーク・スライシングの全体アーキテクチャ ................................................................... 6

3.1 概念 ..................................................................................................................................................... 6

3.2 概念の明確化 ..................................................................................................................................... 7

3.3 アーキテクチャ .................................................................................................................................... 7

4 サービス保証型ネットワーク・スライシングを実現する主要技術 ..................................................................... 8

4.1 ネットワーク管理システム ................................................................................................................... 8

4.1.1 ネットワーク・スライス管理(NSM)アーキテクチャ .................................................................... 8

4.1.2 BSSによるネットワーク機能の開放 ........................................................................................... 9

4.1.3 サードパーティ・アプリケーション .............................................................................................. 10

4.2 セキュリティ ....................................................................................................................................... 10

4.2.1 インフラ・セキュリティ ................................................................................................................ 10

4.2.2 ネットワーク管理セキュリティ .................................................................................................... 10

4.2.3 NSIのセキュリティ ..................................................................................................................... 11

4.3 さまざまな技術ドメイン向けの実現技術 .......................................................................................... 11

4.3.1 アクセス・ネットワーク ............................................................................................................... 11

4.3.1.1 アクセス・ネットワーク・アーキテクチャ ...................................................................... 11

4.3.2 コア・ネットワーク ....................................................................................................................... 12

4.3.2.1 コア・ネットワークのアーキテクチャ .......................................................................... 13

4.3.3 トランスポート・ネットワーク ...................................................................................................... 13

4.3.4 端末 ........................................................................................................................................... 15

4.4 技術の進化 ....................................................................................................................................... 15

5 サービス保証型ネットワーク・スライシングのユースケース ........................................................................... 15

6 まとめと提言 ...................................................................................................................................................... 17

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1 業界のトレンドと各種要件

5Gネットワークは、単に「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」をサポートするものではなく、かつてな

い規模で新たな産業を生み出し、将来の通信業界に計り知れない活力をもたらすと考えられています。IoTは、e

ヘルス、IoV(Internet of Vehicles:自動車のインターネット)、スマート・ホーム、産業制御、環境監視などの多種

多様なサービスへの対応が求められています。こうしたサービスによってIoTの急速な成長と無数のデバイスの

接続が促進されることになります。また、そのことが特に垂直産業での「Internet of Everything」というビジョンの

構想につながるのです。

IoTサービスに対する要件もまた極めて多様です。スマート・ホーム、スマート・グリッド、スマート農業、スマート・

メーターなどのサービスでは、膨大な数のネットワーク接続と頻繁に送信される少量のデータ・パケットに対応す

る必要があります。スマート・カーや産業制御などのサービスでは、ミリ秒レベルの遅延と100%に近い信頼性が

求められるのに対し、インフォテインメント・サービスで必要とされるのは、固定/モバイルによる超広帯域のネット

ワーク接続です。こうした要件が示しているのは、5Gネットワークでは、特性の異なる大量のネットワーク接続に

対応できるフレキシビリティとスケーラビリティを向上させる必要があるということです。一方、通信事業者は、土

管サービスから垂直産業のニーズへの対応に向けて徐々に舵を切るでしょう。

サービスの多様性

5G時代で想定されるサービスは、3つの代表的なユースケースに分けられます。具体的には、eMBB

(enhanced Mobile Broadband:高度モバイル・ブロードバンド)、URLLC(Ultra-Reliable and Low

Latency Communications:超高信頼・低遅延通信)、mMTC(massive Machine Type Communications:

大量のマシン・タイプ通信)の3つです。eMBBは、HD(High Definition:高精細度)ビデオ、VR(Virtual

Reality:仮想現実)、AR(Augmented Reality:拡張現実)、FMC(Fixed Mobile Convergence:固定通信

とモバイル通信の融合)などの高速データ通信を特徴とするサービスに重点を置いたものです。URLLCは、

自動運転、遠隔手術、ドローンの操縦など、遅延の影響を受けやすいサービスに重点を置いたものです。

mMTCは、スマート・シティやスマート農業など、接続密度に対する要件が厳しいサービスに重点を置いた

ものです。ユースケースごとに求められるネットワーク・サービスが全く異なるため、提示されるサービス要

件は根本的に異なったもので、相反する場合さえあります。

性能保証

いくつかのKPI(key performance indicator)は、上記の一部のサービスに対して、同時に達成する必要が

あります。例えば、VRやARは、遅延だけでなく通信速度に対する厳しい要求が課されます。通常、こうした

要求は性能の低下がほとんど許されない「マシン」が対象端末となる垂直産業ではより厳しくなります。

迅速な展開とTTMの短縮

従来のモバイル・ネットワーク展開におけるプロセスは、時間を要するものです。簡単なサービスの更新で

も10か月から18か月かかることもあります。このような長いサイクルでは、垂直産業におけるカスタマイズさ

れたサービスの迅速なプロビジョニングやTTMの短縮に関する要求に応えることは非常に困難になりま

す。

リソースの多重化と分離

現在の通信業界の慣例とは異なり、垂直産業が専用のネットワーク機能(専用ルーティング、モビリティへ

の対応、カスタマイズされたフロー処理、ネットワーク内部パケット処理など)の構築に関与する可能性が高

くなります。運用効率を落とすことなくこうした多様性に対応するために、通信事業者はリソース多重化のア

プローチ(それぞれが分離した状態で安全にプロビジョニングを実施)を選択します。

自動化

フレキシビリティとスケーラビリティは、5Gネットワークの鍵となります。5Gネットワークでは、手動による管

理に頼るわけにはいきません。自己診断、自己回復、自動設定、自己最適化、自動インストールやプラグア

ンドプレイなどの全自動ネットワーク管理技術は、効率的なネットワーク運用の実現とサービスの動的な組

み合わせによる提供には欠かせません。ネットワークの自動管理技術の進歩によって、管理の俊敏性と適

応力が向上します。こうした管理には新たなツールが必要です。5Gネットワークでは特に、人工知能(AI)や

自動学習技術を考える必要があります。

新しいエコシステムとビジネスモデル

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5Gネットワークは、ネットワーク・インフラ提供者、通信事業者(MNOやMVNOなど)、垂直サービス提供者

を巻き込んだ新たなロールモデルとビジネスモデルに対応します。こうした新しいロールとビジネス関係に

よって、通信業界は新たなエコシステムを垂直産業と共同で構築できるようになります。

固定アクセスとモバイル・アクセスの融合

ユーザーは通信規格を問わず、同じユーザー体験を期待しているため、FMCも非常に重要な要件になりま

す。現在、固定ネットワークとモバイル・ネットワークでは、アーキテクチャ、サービス概念、エコシステムが

多くの点で異なりますが、5Gが導入されれば、これらは融合すると考えられています。固定/モバイルのあ

らゆるアクセス技術にネイティブに対応できるアーキテクチャが、真に融合した5Gネットワークというデザイ

ン目標の実現に大いに寄与することになります。

2 サービス保証型ネットワーク・スライシングのビジョン

5G時代では、垂直産業が従来の「人間中心」のサービスから「マシン中心」のサービスに向けたネットワークの

移行をリードします。これによって通信業界は、新たなエコシステムを構築できるようになるだけでなく、次のよう

なコア・ビジョンで社会的経済を推進する新たなエンジンとなります。

ビジョン1:垂直産業の基本的なサービス要件を満たすための性能を保証する

基本的な接続サービスによって、性能(遅延、通信速度、信頼性、接続性、消費電力など)が保証されるため、

通信事業者は垂直産業を5Gのエコシステムに取り込めるようになります。性能保証で重要なのは、QoS

(Quality of Service:サービスの品質)だけではなく、カスタマイズされたネットワーク機能や多様なサービスに対

応できるリソースも含まれます。例えば、V2X(Vehicle-to-Everything)サービス向けにカスタマイズしたモビリ

ティ管理を提供するような場合です。

ビジョン2:サービスのカスタマイズで垂直産業の競争力を強化する

性能保証をプロビジョニングすることは、5Gにおいて垂直産業と協業するための基本命題にすぎません。成功

に向けたさらなる重要な一歩は、サービス運用コストや資本コストの低減やTTMの短縮をはじめとしたより明確

な価値を垂直産業にもたらすことです。垂直産業の競争力強化を支援することは、5Gエコシステムの非常に重

要な側面となります。

通信事業者は基本的な接続サービスをベースとして、次のようなサービスをカスタマイズして提供することで、企

業の潜在能力を引き出す必要があります。具体的には次のような例が挙げられます。

ネットワーク・サービス:キャッシングなどのネットワーク機能を利用することで、垂直産業サービスのパ

フォーマンスを向上できます。

リソース・サービス:垂直産業は、自社のサービスを通信事業者のエッジDCとコアDCに展開することが推奨

されます。これによって、通信事業者がエッジ・コンピューティングに加え、ネットワークやクラウド上のリソー

スをオーケストレーションできるためです。

ネットワークの運用保守(O&M)サービス:ポリシーのカスタマイズによる独自のO&Mサービスは、垂直産業

にとって魅力的な機能です。

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Core DC

Network Service

Resource Service

Network O&M Service

Vertical third-party servicesTerminal

V2X APPs

Industry Control APPs

Smart-meter APPs

Connectivity Service

Customized Service

Edge DC

図1 サービス保証型ネットワーク・スライシングのビジョン

前述したように、コア・ビジョンにおけるフレキシビリティや多様性に対する期待は、現実的かつ壮大なものです

が、問題は、その期待にどのようにして応えるかです。サービスのフレキシビリティが求められる一方で、多様な

ネットワーク・テクノロジーも求められます。このことが、ネットワークの設計、制御、運用管理に難題をもたらしま

す。こうしたシステムは、システム自体の複雑性により崩壊するという高いリスクを負っています。こうした課題を

克服し、将来予想される要求に応えるために、本書でサービス保証型ネットワーク・スライシングを紹介し、上記

のコア・ビジョンの実現を目指します。本書では、ネットワーク・サービスやプロビジョニング、メカニズム、保証レ

ベルが異なる複数の論理ネットワークを同じインフラ上で運用することを提唱しています。これにより、垂直産業

はサポート対象のサービスに対して、ネットワーク・スライシングごとのプロビジョニング(期待するサービスと緊

密に結合)の管理に専念するだけでよくなります。ビジネスのニーズに注力することで、垂直産業の利益や競争

力を確保し、また、こうしたネットワークの設計、展開、テスト、運用に関する複雑な検討が不要になります。

3 サービス保証型ネットワーク・スライシングに向けたアーキテクチャの全体像

3.1 概念

「ネットワーク・スライシング」という言葉が5Gに登場して以来、この言葉から「ネットワーク・スライシング・インス

タンス」や「ネットワーク・スライス・タイプ」など、複数の概念が生まれました。本セクションでは、こうした概念の

定義とその対応関係を明確にしていきます。

ネットワーク・スライシング:ネットワーク・スライシングは、サービスごとに専用の論理的なNaaS(Networks

as a Service)を構築するための一連の技術の集合体で、ネットワーク・サービスの差別化を実現し、垂直

産業の多様な要件を満たすものです。各機能の柔軟な設計とカスタマイズ、分離メカニズム、O&Mツール

によって、ネットワーク・スライシングは、共通インフラ上に論理的な専用ネットワークを実現できます。

ネットワーク・スライス・インスタンス(NSI):ネットワーク・スライシングの概念を実現するのがNSIです。これ

はE2Eの論理ネットワークで、ネットワーク機能、リソース、接続関係のグループから構成されます。通常、

NSIでは端末、AN(Access Network:アクセス・ネットワーク)、TN(Transport Network:トランスポート・

ネットワーク)、CN(Core Network:コア・ネットワーク)をはじめとする複数の技術ドメイン、ならびに垂直産

業のサードパーティ・アプリケーションをホスティングするDCドメインをカバーしています。NSIごとにネット

ワーク機能やリソースも異なりますが、一部のネットワーク機能やリソースを共有することもあります。

ネットワーク・スライス・タイプ:ネットワーク・スライス・タイプは、NSIの上位レベルのカテゴリーであり、ネッ

トワーク・ソリューションに対する個別の要求が反映されています。5Gの基本的なネットワーク・スライス・タ

イプとして、eMBB、mMTC、URLLCの3つが想定されていますが、こうしたタイプは、通信事業者のポリ

シーや5Gの展開などによって今後さらに増える可能性があります。

ネットワーク・スライス・テンプレート:ネットワーク・スライス・テンプレートは、スライス設計段階で生成され、

NSIを作成する際に使用されます。

テナント:テナントは、通信事業者のお客様(垂直産業のお客様など)や通信事業者自身です。テナントは

NSIを利用して自身のユーザーにサービスを提供します。通常、テナントごとに独自のO&M要件があり、

NSIに一意に適用できます。

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3.2 概念の明確化

前述の主要な概念には、次のような関係があります。

ネットワーク・スライス・タイプとテナントはNSIを作成するための重要な基準:NSIは、特定のネットワーク・

スライス・タイプを持つ1つのネットワーク・スライス・テンプレートからインスタンス化されます。さまざまな

サービス・タイプを提供するテナントは、ネットワーク・スライス・タイプの異なる複数のNSIを使用することも

あります。また、同じ種類のサービスを提供するテナントの場合でも、ネットワーク・スライス・タイプが同じ

ネットワーク・スライス・テンプレートをカスタマイズすることで、NSIの差別化が可能です。

ネットワーク・スライス・テンプレートの設計とNSIの運用を分離:設計段階では、技術ドメインごとのネット

ワーク機能とテナント固有の要件に基づいて、ネットワーク・スライス・テンプレートが生成されます。運用段

階では、ネットワーク・スライス・テンプレートに基づいて、NSIがインスタンス化され、さまざまな技術ドメイン

の関連ネットワーク機能や関連リソースの展開と構成が実施されます。ネットワーク・スライスの設計と運用

が分離されているため、ネットワーク・スライス・テンプレートを繰り返し利用できます。

NSIには多次元管理が必要:通常、NSIは複数の技術ドメインから構成されます。また、NSIには、さまざま

な通信事業者に属する複数の管理ドメインも含まれます。NSIの迅速な展開を保証するには、こうしたドメイ

ン間の連携・協調による効率的な多次元的な管理が不可欠です。

NSIはSLAの遵守を保証:テナントが通信事業者と締結するSLA(Service Level Agreement:サービスレ

ベル契約)には、セキュリティおよび機密性、可視性および管理性、個別のサービス特性(サービス・タイプ、

無線インターフェース標準、カスタマイズ機能)、該当する性能指標(遅延、スループット、パケット損失率、

呼切断率、信頼性/可用性)に関連する要件についての合意事項が記載される場合があります。

端末によるNSIの選択:端末は、1つまたは複数のNSIにアクセスできます。端末がネットワーク・スライス・

タイプに基づいてNSIの選択を支援する場合などもありますが、最終的な選択の決定はネットワーク側で行

います。通常、NSIと1対1の静的な関係にあるセンサーなどの単純な端末では、コストや消費電力の要求

によって端末の能力に制限があるため、NSIの選択はネットワーク側だけで行われます。

3.3 アーキテクチャ

5Gでネットワーク・スライシングを実現するには、システム・アーキテクチャ全体でのネイティブなサポートが必要

です。図2に示すように、アーキテクチャ全体は、インフラ・レイヤ、ネットワーク・スライス・レイヤ、ネットワーク管

理レイヤの3つの基本的なレイヤで構成されます。インフラ・レイヤでは、コンピューティング・リソース、ストレー

ジ・リソース、コネクティビティなどの物理リソースおよび仮想リソースが提供されます。ネットワーク・スライス・レ

イヤは、インフラ・レイヤ上で動作し、必要なネットワーク機能、ツール、メカニズムを提供して、NSIによるE2Eの

論理ネットワークを形成します。ネットワーク管理レイヤは、汎用のBSS(Business Support System:ビジネス

支援システム) /OSS (Operation Support System :運用サポート・システム)とNSM (Network Slice

Management:ネットワーク・スライス管理)システムから構成され、ネットワーク・スライシングの設計と管理を実

施することに加え、SLA要件も保証します。

アーキテクチャ全体では、主に次のような特徴があります。

共通のインフラ:物理的に分離された静的なネットワークを使用してテナントをサポートする専用ネットワー

ク・ソリューションとは異なり、ネットワーク・スライシングでは、同一の通信事業者のテナント間で共通のイン

フラの利用が促進されます。これによって、リソースの利用効率が向上し、サービスのTTMを短縮できます。

さらに、こうした設計は、健全な産業エコシステムの形成だけでなく、長期的なテクノロジーの発展にも効果

的です。

オンデマンドのカスタマイズ:NSIの各技術ドメインにあるさまざまなカスタマイズ機能は、ネットワーク・スラ

イス・テンプレート設計やNSIの展開、O&Mといったプロセスを通じてNSMシステムから協調できます。各技

術ドメインでは、商用で求められるシンプルさとアーキテクチャの複雑性の絶妙なバランスを実現できるよう

な設計方式を考慮して独自のカスタム処理を行います。

分離:リソースの分離やO&Mの分離、セキュリティの分離といったNSIの分離がアーキテクチャ全体でサ

ポートされており、NSIを物理的または論理的にさまざまなレベルで分離可能です。

性能保証:ネットワーク・スライシングは、さまざまなドメインをシームレスに統合し、業界で定義された5Gの

性能仕様を満足・保証し、垂直産業の要件にも対応します。

スケーラビリティ:ネットワーク・スライシングの主要なイネーブラーとなる仮想化によって、NSIが利用するリ

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ソースを動的に変更できます(スケールインやスケールアウトなど)。

O&M機能の開放:テナントは、専用のNSI、共有のNSI、または一部共有のNSIを利用する可能性がありま

す。さらに、テナントごとに独自のO&Mニーズを有することもあります。NSMシステムによってテナントは

NSIの複数のO&M機能を利用できるようになり、ポリシーなどのNSI関連パラメータを設定できます。

マルチベンダー環境およびマルチオペレータ環境への対応:ネットワーク・スライシングによって、異なるベ

ンダーが提供するネットワーク機器で構成される複数の技術ドメインを単一の通信事業者で管理できます。

さらに、このアーキテクチャでは、テナントのサービスで各通信事業者が所有する異なる管理ドメインを網羅

するような環境をサポートする必要があります。

図 2 ネットワーク・スライシングを実現するアーキテクチャの全体像

4 サービス保証型ネットワーク・スライシングを実現する主要技術

4.1 ネットワーク管理システム

4.1.1 ネットワーク・スライス管理(NSM)アーキテクチャ

NSMシステムは、システム・アーキテクチャ全体の中で重要な役割を果たしています。NSMシステムでは、以下

のようなサービスを提供します。

設計:ネットワーク機能とSLA要件に基づいてネットワーク・スライス・テンプレートを設計します。

プロビジョニング:スライスのインスタンス化、構成、アクティベーションで構成されます。

実行時間の保証:NSIの動作状態を監視し、SLAを保証します。

サービスの停止:サービスが利用されなくなった場合にNSIを削除します。

NSMは、ネットワーク・スライシングをサポートする高度な機能を備えた最先端のクラウド管理技術をベースにし

たものである必要があります。NSMは、前述の一連のサービスを利用してO&M機能を実現しており、従来の

ネットワーク管理システムの欠点(例えば、TTMが長い、O&Mの自動化手法がないなど)に対処できます。さら

に、NSMシステムによって通信事業者は今後、オープンなエコシステムを構築し、新たな商機を創出できるよう

になるでしょう。

図3は、「レイヤベース管理とドメインベース管理」の設計原則を採用したNSMシステムのアーキテクチャ全体を

表しています。「レイヤベース」管理では、NSMにスライス・サポート・システム(SSS)とドメイン・スライス・サポー

ト・システム(DSS)の2つのレイヤが定義されています。「ドメインベース」管理とは、基本機能が技術ドメインごと

に用意されていることを意味します。DSSとSSSの連携によってE2EのSLAが保証されます。

スライス・サポート・システム(SSS)

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SSSは、主として「Network Slice Template Designer」と「Cross Domain Slice Manager」という2つの機能

ブロックから構成されます。Network Slice Template Designerは、各技術ドメインのネットワーク機能とテナ

ントの機能と性能に対する要件に基づいてネットワーク・スライス・テンプレートを生成します。Cross

Domain Slice Managerは、NSIのライフサイクル管理(プロビジョニング、実行時間保証、サービスの停止)

を行います。SLAはさまざまなドメイン間の多次元的な連携によって保証されます。SSSは、技術ドメインご

との機能に基づいて、SLAを要件セットに従って分解し、分解されたSLAの各部分を対応する技術ドメインに

マッピングします。SLAを総合的に保証するために、SSSは技術ドメインごとにネットワーク・サービスのパ

フォーマンス・データを収集します。このデータに基づいて、SSSは必要な調整と設定を実施し、閉ループ制

御を実現します。

各通信事業者に対して、異なる管理ドメインで管理を実現するには、SSS間の連携が不可欠となります。

ドメイン・スライス・サポート・システム(DSS)

DSSは、さまざまな技術ドメイン用のドメイン・スライス・マネージャ(DSM)で構成されます。具体的には、

AN-DSM(Access Network DSM)、CN-DSM(Core Network DSM)、TN-DSM(Transport Network DSM)

から構成されます。論理エンティティとして、DSMは、単一の技術ドメインのサブネット設計、プロビジョニン

グ、実行時間の保証、サービス停止を実施します。DSSは、監視や障害の局所化などによって、ドメインごと

に分解されたSLA機能のリアルタイム性を保証します。各ドメインには、機能とリソースに対するSLA別の独

自の閉ループ制御が備わっており、迅速なサービスのスケジューリングとリソースの最適化を実現します。

NSMシステムのタスクで重要なのは、高度なAIアルゴリズムを使ってSLAをシームレスに管理・保証することだ

けではなく、ネットワークの状態変化を予測し、事前に特定の管理処理や制御処理を実施できるようにすること

です。NSMシステムはスタンドアローン型(新たな管理エンティティ)または、非スタンドアローン型(OSSに統合)

のいずれかになります。

図3 ネットワーク・スライス管理(NSM)アーキテクチャ

4.1.2 BSSによるネットワーク機能の開放

通信事業者のBSSは、直接テナントに対応するシステムです。そのため、ユーザビリティが不可欠な要素となり

ます。通信事業者は、BSSを利用してテナントに抽象化されたネットワーク機能を提供します。サポートされてい

る主な機能は、設計、購入、展開、監視です。

設計:ネットワーク・スライシングに関連する商品の設計と販売が含まれます。SLAはサービス・タイプと

テナントの要件に基づいて策定されます。テナントの各種サービスに対応するために、1つまたは複数

のNSIを使用して購入可能な商品を提供する場合もあります。NSIがパッケージ化されたこうした商品は、

テナント向けのサービスとして使用され、価格付けや販売領域といった商品の販売上の属性に焦点を

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絞っています。

購入:テナントのユーザー体験の鍵を握ります。例えば、BSSが商品紹介用の優れたデザインのストア

ページやパーソナル・センターを用意して、購入の進捗を監視してアップグレード処理に関連するネット

ワーク・サービスを実現することは非常に重要です。

展開:製品の展開は、お客様の購入完了後にBSSによって実施されます。

監視:監視とは、テナントからサービスの実行に関する運用情報と性能関連情報(特定のNSIのスルー

プットや遅延など)を表示できるようにするBSSの機能を示します。

4.1.3 サードパーティ・アプリケーション

ネットワーク・スライシングのフレキシビリティとカスタマイズ性は、サードパーティ・アプリケーションにおいても維

持されます。通信事業者が提供する各種のネットワーク機能に加えて、サードパーティ・アプリケーションをNSI

に導入して、テナントの個別の要件を満たすことも可能です。こうしたサードパーティ・アプリケーションは、テナン

トが直接導入することもあれば、テナントのお客様やプロバイダなどのテナント以外が導入することもあります。

サードパーティ・アプリケーションの導入をサポートする主な理由は、特定の要件を備えたサービス(超低遅延を

必要とするURLLCサービスなど)を実現することです。エッジ・コンピューティングの利点を活用するなどして、

ネットワーク機能とサードパーティ・アプリケーションをANに近づけて、伝送距離を短縮することは効果的です。

さらに、サードパーティ・アプリケーションは、ユーザーによってカスタマイズされた認証やモビリティ管理など、独

自のサービスをサポートするために専用に設計されたネットワーク機能を代わりに提供することも可能です。コン

トロール・プレーン関連のネットワーク機能を除けば、テナントのサービス・ゲートウェイなどのユーザー・プレーン

のカスタマイズされたネットワーク機能を通信事業者のネットワーク内に展開することも可能です。これによって

膨大なデータ(センサーからのデータなど)に対して事前にフィルタリングや集約を実施することができます。その

ため、NSMシステムでも、サードパーティ・アプリケーションの展開をサポートする必要があります。サードパー

ティ・アプリケーションを展開する場所については、ANやCNなどに固定するか、ネットワーク・スライス設計段階

でサービス要件やネットワーク条件に基づいてSSSによって動的に決定することが可能です。

4.2 セキュリティ

前項で定義したアーキテクチャ全体は、インフラ・レイヤ、ネットワーク・スライス・レイヤ、ネットワーク管理レイヤ

の3つの基本的なレイヤから構成されます。各レイヤで個別にセキュリティ・リスクと保護メカニズムを考慮する

必要があります。さらに、すべてのドメインを有機的な存在と捉え、包括的なセキュリティを提供する必要があり

ます。一般に、ネットワーク・スライス・セキュリティの全体的な枠組みには、次の3つの側面があります。

4.2.1 インフラ・セキュリティ

NSIは、同じインフラを共有しているため、NSI同士を適切に分離して相互に悪影響を及ぼしたり情報を漏洩した

りすることを防ぐ必要があります。これは特に、NFVを使用する場合に該当します。例えば、ネットワーク機能ご

とに異なる仮想マシンやコンテナが使用されている場合、各NSI専用のVNFを接続する仮想リンクは論理的に

分離する必要があります。

4.2.2 ネットワーク管理セキュリティ

セキュリティ・リスクは、ネットワーク管理レイヤのNSIライフサイクル管理のあらゆる段階に存在します。悪意の

ある攻撃では、マルウェアを使用してネットワーク・スライス・テンプレートが不正に利用されると、そのテンプレー

トで作成されたすべてのNSIが脅威にさらされるおそれがあります。また、攻撃がNSIの実行時に設定用イン

ターフェースをすり抜けるおそれもあります。NSIの処理が不適切な場合、サービス停止段階で機密データを盗

まれることも考えられます。そのため、NSIのライフサイクル管理の各段階でセキュリティを考慮する必要があり

ます。

一部のネットワーク機能やインターフェースをテナントに開放する際、通信事業者側でテナントごとに付与する機

能を定義できます。テナントに対して、こうした機能やインターフェースへのアクセスを許可する前に認証と承認

を実施する必要があります。

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4.2.3 NSIのセキュリティ

NSIが提供するネットワーク・サービスのセキュリティを保証するためには、セキュリティ・メカニズムとセキュリ

ティ・プロビジョニング・エンティティ(セキュリティ・アンカーやセキュリティ機能など)をNSIの論理ネットワーク・

アーキテクチャに組み込む必要があります。

セキュリティ分離:セキュリティが分離されていないと、悪意のある攻撃を受けた1つのNSIが、他のNSIに対する

攻撃の踏み台として利用されるおそれがあります。例えば、別のNSIのリソースを不正に占有するといったケー

スです。さらに、機密データの漏洩やデータ改ざん攻撃を引き起こすこともあります。

スライスのアクセス制御:端末は、特定のNSIにアクセスするために認証と承認を受ける必要があります。端末と

割り当てられたNSIとの間の通信を攻撃から保護しなくてはなりません。

セキュリティ・メカニズムのカスタマイズ:端末ごとに必要とされるセキュリティ保護レベルが異なる可能性があり

ます。eMBBタイプのNSIにアクセスする端末では、認証と暗号化/復号化に関して、LTEで採用されるメカニズム

と同様の厳格なセキュリティ要件が設定されます。mMTCタイプのNSIにアクセスする低価格のセンサーのよう

な端末は、コンピューティング能力が限られているため、軽量の認証アルゴリズムや暗号化//復号化アルゴリズ

ムのみを必要とします。URLLCタイプのNSIにアクセスする端末には、迅速なアクセス認証と強力な暗号化アル

ゴリズムが要求されます。

4.3 さまざまな技術ドメイン向けの実現技術

性能保証によってサービスを強化するネットワーク・スライシングは、あらゆる技術ドメインの実現技術とE2Eの

運用管理に基づいて実現されます。以下の項では、AN、CN、TN、端末の観点から重要な技術とアーキテク

チャについて説明します。

4.3.1 アクセス・ネットワーク

5Gの発展とともに、新しいRAT(Radio Access Technology:無線アクセス技術)も登場しつつあります。その狙

いは、4GのRATよりもアクセス性能を向上させることです。新しいANアーキテクチャには、固定アクセスとモバイ

ル・アクセスが含まれ、ネットワーク・スライシングにネイティブで対応することが期待されています。そのため、分

離やカスタマイズ機能、ANでのSLA保証を実現すると同時に無線リソースを効率的に管理する方法を理解する

ことが不可欠です。

上記の目標を達成するために、AN設計時には以下のような特性を考慮する必要があります。

アクセス・リソースの論理的分離:ANには、さまざまなリソース・タイプが存在します。こうしたリソースの分離レベ

ルは、通信事業者やテナントごとの要求によって異なります。ANのリソースは、周波数帯、時間、コード、装置/

基地局、ソフトウェアのレベルで分離可能です。リソースの論理的な分離にはリソースの多重化が必要です。リ

ソースの割当量は各NSIのトラフィック負荷に応じてスケールアップ/ダウンが可能で、利用効率を向上させること

ができます。

アクセスの差別化:3GPPのサービス連携の仕様によると、新しいRAT機能は、RT(Real Time:リアルタイム)

機能とNRT(Non-Real Time:非リアルタイム)機能から構成されます。ANでNSIを実現するうえで、オーダーメ

イドのアクセス機能や構成の差別化といったカスタマイズ要求に応えるために、NRT機能でクラウド化技術や

オーケストレーション技術を適用できます。これに対し、RT機能は、リソースの利用率を最適化し、NSIのセキュ

リティと分離に関する要件を確実に満たす必要があります。具体的に言えば、RT機能は、柔軟な構成によってリ

ソースを排他的に占有することもあれば、一部のリソースを共有することもあるということです。各種のRT機能は、

PHY(Physical Layer:物理レイヤ)のNumerology(フレーム関連パラメータなど)ごとに適用可能で、NSI別に

機能を差別化できます。NRT機能がCU(Centralized Unit:集中型装置)に展開できるのに対し、RT機能は端

末に近いDU(Distributed Unit:分散型装置)に展開することが推奨されています。完全に統合された5Gを実現

するために、固定回線とモバイル・アクセスの両方に対応したシームレスなリソース管理が求められています。

4.3.1.1 アクセス・ネットワーク・アーキテクチャ

図4は、RANにおいてネットワーク・スライシングをサポートする場合の論理アーキテクチャを示しています。この

アーキテクチャには、次のような特性があります。

独自機能と共有機能の共存:図4に示すように、異なるNSIで同じ機能を共有したり、各NSI専用の機能を備える

こともあります。新しいRATでは、柔軟な無線インターフェース設計とMACスケジューリングの統合が可能で、さ

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まざまなネットワーク・スライス・タイプに対応できます。こうした機能を組み合わせることで、リソースの効率性を

犠牲にすることなく時間領域と周波数領域のリソース分離を実現できます。

オーダーメイドの機能:プロトコル・スタックは、NSIごとの多様なサービス要件に合わせてカスタマイズできます。

例えば、図4に示すように、L3のRRC(Radio Resource Control:無線リソース制御)機能はネットワーク・スライ

スの設計段階でカスタマイズ可能です。L2もNSIごとに異なる構成が可能で、無線ベアラの個別の要件を満た

すことができます。さらに、L1は、柔軟なNumerologyを採用し、さまざまなネットワーク・スライス・タイプに対応し

ています。

多種多様なアクセス:NSIでは、3GPPの新しいRATや3GPP以外のWLANなど、さまざまな種類のANが含まれ

る場合があります。5Gにおける固定回線とモバイル・アクセスの統合は、望ましいアプローチですが、アーキテ

クチャ設計のさらなる更新が必要です。

Electricity

123456

NSI (URLLC) 2# NSI (mMTC) 3#NSI (eMBB) 1#

PHY/MAC

RLC/PDCP/RRCCommon PDCP

RRCE-UTRA RRC

E-UTRA RLC

E-UTRA PHY/MAC PHY/MAC

RLC/PDCP

Unified NR Radio Resource Scheduler

RLC

PHY/MAC

Terminal (Access One or Multi-NSIs)

Signaling link

NR Slice Common RRCE-UTRA Slice Common RRC

E-UTRA Scheduler

RRC

Data link

Non-RT

Net

wo

rk S

lice

RA

N p

art

RT

Flexible Shared Radio Resource

図4 ネットワーク・スライシングに対応したRANアーキテクチャの例

ビジネスの側面からは、NSIの柔軟な展開が望まれます。そのため、NSIがネットワークの一部でのみ利用され

る場合もあります。アクセス・ノードは1つまたは複数のNSIに対応することが可能で、アクセス・ノードで動的に

NSIを追加・削除できます。また、アクセス・ノードがサポートするNSIは、隣接するNSIとは大きく異なる場合もあ

ります。サービスの継続性を保証するために、端末とアクセス・ノードはスライスの可用性を認識可能である必要

があります。これは特に、モビリティ機能を有する端末をサポートする場合に必要になります。

4.3.2 コア・ネットワーク

コア・ネットワーク(CN)は、ネットワーク・スライシングで最も重要で必要不可欠な要素と考えられています。CN

では、テナントとそのエンド・ユーザーに対して、コントロール・プレーンの各種機能(モビリティ管理、セッション管

理、ポリシー制御、課金)やユーザー・プレーンの各種機能(データ転送)などのネットワーク・サービスを提供し

ます。垂直産業の多様な要求に応えるためには、ネットワーク・サービスのカスタマイズとオンデマンドでの展開

は、CNの設計に反映すべき重要な概念です。CNには、以下のような特性が想定されます。

クラウド化:クラウド・ネイティブのテクノロジーを採用することで、将来のCNは3層のDCネットワーク・モードを

ベースにした共通インフラ上で大量のNSIをサポートできるようになります。最下層は、アクセス基地局の近くま

たはアクセス基地局上に配置されるエッジDCです。中間層は、ローカルDCで、最上位層は、リージョナルDCで

す。クラウド化と仮想化を活用することで、NSIは、呼吸をするように実際のトラフィックの必要性に応じてリソー

スを拡張・縮小できます。

モジュール化:4GのCNに比べて、コントロール・プレーン機能とユーザー・プレーン機能は、より粒度の高い機

能モジュールに細分化されます。NSIでこうしたモジュール群をカスタマイズして柔軟に組み合わせることで、個

別の機能要件や性能要件を満たすことができます。

サービス指向:5GのCNは、サービスベースのアーキテクチャを採用し、ネットワーク機能、サービス、ならびに

性能を柔軟にオーケストレーションすることで、高いネットワーク運用効率とテナントごとの多様な要件を満たす

ことを目指しています。

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4.3.2.1 コア・ネットワークのアーキテクチャ

CNのアーキテクチャでは、さまざまなネットワーク要素により提供されるサービスとその対応関係が定義されて

います。こうしたサービスには、コントロール・プレーンのサービスやユーザー・プレーンのサービスなどがありま

す。図5で説明しているように、5G向けに定義されたCNでは、共通のインフラ上でテナントごとに論理的に分離

された複数のNSIが共存できることになっています。CNがネットワークに接続する端末のNSIを決定しますが、

端末の支援に基づいて決定することもあります。NSIごとに固有のネットワーク・トポロジとネットワーク機能を備

え、各NSIでリソースが割り当てられています。CNで採用されたサービスベースのアーキテクチャ設計手法では、

一元的なデータベースを利用して、表示の一貫性とネットワーク・スライシングに対応したプログラマブルなユー

ザー・プレーンを実現しています。このCNアーキテクチャは、シグナリングの通信を簡素化し、ネットワーク機能

の分散化を実現して、ネットワーク機能の自由な配置を可能にします(例えば、AN近くに配置して遅延を低減す

るなど)。同じCNを利用して無線と有線接続を統合するためには、CNの機能とアーキテクチャの設計において、

「アクセス方式非依存」を考慮することにもつながります。

図5 ネットワーク・スライシングに対応したCNアーキテクチャの例

4.3.3 トランスポート・ネットワーク

トランスポート・ネットワーク(TN)は、フロントホール、バックホール、MAN(Metropolitan Area Network)、バック

ボーン・ネットワークなどさまざまなセグメントから構成されます。ネットワーク・スライシングに対応したTNの論理

アーキテクチャを図6に示します。このアーキテクチャでは、データ経路上のさまざまなネットワーク・セグメントで

使用される複数のプロトコルを協調させることで、リソース共有によるソフト・スライシング手法や専用リソースに

よるハード・スライシング手法など、さまざまな分離タイプをサポートできます。

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図6 ネットワーク・スライシングに対応したTNアーキテクチャの例

図6に示した論理アーキテクチャには以下のような特徴があります。

複数の技術の融合:単一の技術では、垂直産業の多様な要求に応えられない場合があるため、複数の技術を

組み合わせて使用します。例えば、TNドメインではIP技術と光技術が融合されて使用されます。各セグメントは、

異なる伝送技術を同時に利用できるため、光WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)、

Ethernet over Fiber、各種のPON(Passive Optical Network:受動光ネットワーク)技術をベースとした転送な

どが可能です。さまざまな技術の特徴に基づいて、TNはNSIごとに分離、通信速度、遅延の差別化を実現でき

ます。

チャネル化とパケット化の融合:パケット化による統計多重効果で、ネットワークの利用効率が向上します。これ

に対し、チャネル化は、サービス間で必要な分離を実現します。複数のNSIで種類の異なるサービスを提供でき

るようにするには、こうした2つの技術を統合する必要があります。これにより、物理イーサポートを複数のサブ

チャネルに分割して伝送できます。例えば、Flex-E(Flexible Ethernet:フレキシブルイーサ)などの技術がこれ

に該当します。

低遅延を実現する技術:ネットワーク・スライシングの恩恵を主に受けるのは、超低遅延を保証するような非常に

高いQoS要求を持つネットワークです。TNでは、遅延短縮におけるブレークスルーを実現するために、さらなる

技術革新が必要です。例えば、遅延指向のリソース・プランニングとルーティング、フレキシブルイーサ、チップの

キューイング処理の最適化、光ネットワーク技術などはその一例です。ただし、こうした実現技術はコストが高く

つくことが多く、少数のNSIのみに実装されることがあります。現在の研究では、プロトコル・スタック・サイズの縮

小や、伝送距離の短縮、輻輳の解消、単一点の処理時間の削減に向けたさまざまなテクノロジーに注力してい

ます。

TNとコンピューティングの統合:DCのコンピューティング・リソースをTNと緊密に統合することで、ネットワーク・

サービス配信のさらなる最適化と新たな選択肢を実現できます。これは、固定ネットワークとモバイル・ネット

ワークのさまざまな見解の違いを解決することにも役立ち、FMCの重要な構成要素となります。

仮想化とリソース・プールによるリソースの分離:TNでは、仮想化とリソース・プールをベースとしたネットワーク・

スライシングをサポートしています。この2つは、TNの異なるレイヤに属しています。例えば、VPNやVLANなど

の仮想化技術は、加入者のデータ通信をTN内で分離できます。論理ルータは、単一のルータ内に複数のルー

ティング・システムを作成できます。これもこうしたネットワーク仮想化の別の例です。SDN(Software-Defined

Networking:ソフトウェア定義ネットワーキング)技術によって、SDNコントローラで仮想ネットワークの運用が可

能になります。リソース・プールでは、WDMによって1本の光ネットワークに複数の光伝送チャネルが作成されま

す。Flex-Eも、1つのイーサネット・ポートを複数のサブチャネルに分割することでリンク・リソースをプールするソ

リューションのひとつに数えられます。

カスタマイズ性:TNには、論理トポロジや経路選択、プロトコル設計に関して、ネットワーク・スライシング用のさ

まざまなカスタマイズ手法が用意されています。TNによってNSIのテナントは、トポロジを論理的なノードとリンク

を使用してカスタマイズできます。経路もカスタマイズ可能なため、NSIごとに異なるルーティング・ポリシーを採

用でき、ルーティング・プロトコル・スイートごとに、複数のサービスの固有の要件を満たすことができます。TNの

プロトコルもカスタマイズ可能です。例えば、加入者データ基盤としてさまざまな種類のIPやイーサネットが利用

可能です。

オープンな運用機能:SDN技術によってTNにノースバウンド・インターフェースを提供できます。テナントはノース

バウンド・インターフェース経由でTNの論理リソースを利用できます。これは、テナントによってアプリケーション

とネットワークを自動的に統合する際に特に有効です。オープンな運用機能には、トポロジ、ノード、リンクの取

得プロセス、ならびに経路転送ポリシー、ノード転送エントリ、ポートのオペレーションが含まれます。

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4.3.4 端末

端末は、ネットワーク・スライシングにとって必要不可欠な要素です。5Gの端末は、低価格な機器からハイエンド

の機器まで多様化するでしょう(スマートフォン、自動車、産業ロボット、ドローンなど)。端末がネットワーク・スラ

イシングに対応する方法も多様化するでしょう。基本的には、図7に示した以下の3つのシナリオを想定していま

す。

最初のシナリオとして想定されるのは、機能が制限された単純な端末です(センサーなど)。これは、端末が

複数のNSIに同時に接続できる2番目、3番目のシナリオで想定される端末とは対照的です。このシナリオ

では、ネットワーク・スライシング関連の情報は、端末に事前に設定される可能性があります。

2番目のシナリオが提示するソリューションは、1つの物理端末に複数の論理端末が含まれ、論理端末ごと

に1つのNSIに関連付けられているというものです。OSとアプリケーションは、すべてネットワーク・スライシ

ング専用です。

3番目のシナリオでは、OSとアプリケーションでNSIの違いを認識できます。端末は、自身のリソースを構

成・スケジューリングし、NSIごとにSLA要件を満たすことができます。そのため、このシナリオでは、ネット

ワーク・スライシングの対応にOSが極めて重要になります。これは特に、さまざまなセキュリティ要件を満た

す必要がある場合に利用されます。

図7 ネットワーク・スライシングに対応する端末設計シナリオ 端末は、ネットワークへの接続に加えて、D2D(Device-to-Device)通信によって他の端末と直接通信することも可能です。

4.4 技術の進化

ネットワーク・スライシング導入の初期段階では、NSIの数はごくわずかでしょう。導入は半自動モードで行われ

ることもあります。NSIの数が増加し、NSIの動的インスタンス化や展開済みのNSIの実行時適応などのシナリオ

が登場するにつれて、ネットワーク・スライシングとそのさらなる進化に対応するため、より高度な技術が求めら

れるようになります。具体的には以下のようなことが求められます。

管理機能がリアルタイム化します。すなわち、それは管理と制御の差が徐々になくなることを意味します。

一部の管理機能は、NSIやネットワーク・インフラと緊密に統合されるでしょう。

現在のネットワークでは、通常、技術ドメインは集中型ネットワーク管理システム経由で連携されます。

5Gでは、コントロール・プレーンのような分散された下位層を通して異なるドメイン間のリアルタイムでの

連携が可能で、さまざまなドメインの制御ロジックが統一化される可能性があります。

一元的(「ホリスティック」)なネットワークでは、高度な自動化とAIアルゴリズムを適用できます。そうなれ

ば、スケーラビリティとフレキシビリティが実現され、NSIの実行時展開・適応が可能になるかもしれませ

ん。

5 サービス保証型ネットワーク・スライシングのユースケース

自動車業界は、5Gの主要なテナントのひとつです。V2Xサービスは、一般に認められている5Gのユースケース

です。こうしたサービスは、次の3つの典型的なカテゴリーに分けられます。

エンターテインメント:典型的なユースケースは、乗客向けの車載ビデオ・サービスです。

運転支援:遅延と信頼性に関する要件が高いサービスです。典型的なユースケースには、見通しや周

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囲の状況を認識したHDの動的な地図サービスの提供、センサー情報のリアルタイム共有などがありま

す。

全自動運転の効率性と快適性:URLLCのサービスです。典型的なユースケースとしては、高密度隊列

走行、協調型交差点制御などがあります。

上記に基づき、ここでは以下のユースケースを取り上げます。自動車サービス・プロバイダは、エンド・ユーザー

に対し、車載サービスのcVideo(エンターテインメント)、cMap(運転支援)、cDrive(全自動運転の効率性と快適

性)を提供します。自動車サービス・プロバイダは、図8に示すように通信事業者と連携します。通信事業者が自

動車サービス・プロバイダに提供するネットワーク・ソリューションは次のとおりです。

ステップ1:自動車サービス・プロバイダは、通信事業者にサービス要件を提示し、これに基づいて両者

が交渉し、通信事業者のBSS経由でSLA契約を締結します。これで自動車サービス・プロバイダは通信

事業者のテナントになります。

ステップ2:BSSは、SSSのNetwork Slice Template Designerを使用して設計段階を開始します。通信

事業者は、テナントの要件に基づいて、cDrive、cMap、cVideo、テナントによるサービスのそれぞれを

収容するために、NSI 1、NSI 2、NSI 3の3つのNSIのいずれかを使用することを決定します。これら3つ

のNSIは、機能、構成、ANへの展開、トポロジ、SLA、O&M要件、リソース利用戦略が異なる場合があ

ります。例えば、URLLCサービスをサポートするためには、NSI 1は、AN内でカスタマイズされたプロト

コル・スタックが必要です。一例を挙げれば、L1のTTI(Transmission Time Interval:伝送時間間隔)を

短縮したり、L2およびL3でいくつかの機能を断念することで、こうした要件を満たすことができます。NSI

1のCN機能の一部は、ANの近くに展開されます。これに対し、NSI 2とNSI 3は、ANに特別な要求を課

すことはないため、同じANを共有できます。ただし、NSI 2とNSI 3には、個々の要求に合う個別のCNが

必要です。

ステップ3:設計段階が終わると、BSSは、SSSのCross Domain Slice Managerを起動して、NSIを展

開します。

ステップ4:テナントが通信事業者の複数の管理ドメインをまたいでサービスを運用する計画の場合、国

を横断する運用が必要となる場合もあります。SSSは、他の管理ドメインの複数のSSSとドメイン間で連

携して、NSIを展開します。

ステップ5:TNのカスタマイズが必要な場合は、SSSとTN-DSMがまずネットワーク・プランニングにおい

て協調します。TNで使用される装置が異なるベンダーから提供されている場合、複数のTN-DSMが必

要になります。TNのカスタマイズが不要な場合、このステップは省略できます。

ステップ6:SSS、AN-DSM、CN-DSMが連携して、ANドメインとCNドメインにそれぞれNSIを展開します。

SSSは、NSIで保証型サービスを提供するために、異なる技術ドメイン間の総合的なマッピングと協調を

実現します。

ステップ7:NSIが正常に展開できたら、BSSはNSIの使用をアクティベーションします。

自動車サービス・プロバイダのエンド・ユーザーは、認証に成功した後、展開されたNSIにアクセスできます。通

信事業者が自動車サービス・プロバイダにNSIごとにO&Mシステムを利用できるようにする場合もあります。自

動車サービス・プロバイダは、オンラインでのサービス更新と監視を実施できます(例えば、NSIに接続している

エンド・ユーザーの数、アラーム、エンド・ユーザーの地理的分布、データ・トラフィックの負荷、遅延など)。

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3rd Party APP

Edge DC

Transport Network

Central DC

cDrive

CN CN

cMAP

Automotive ProvidercDrive cMAP cVideo

cVideo

RAN RAN

VLAN1VLAN2

Terminal 1

CN

3rd Party Service

NSI 1

NSI 2 NSI 3

Terminal 2

D2D (e.g. PC5)

RAN sites

図8 V2Xサービス用NSIの展開

6 まとめと提言

サービス保証型ネットワーク・スライシングは、将来性のある5G技術です。この技術に必要となる複合システム

のサポートには、多数の実現技術、充実した規格、より成熟した産業チェーンが求められます。こうした困難な目

標を達成するためには、通信事業者、ベンダー、垂直産業における緊密な異業種間の連携が求められます。以

下のような点において共同で連携することによって、5G産業と社会的経済の成長を加速するとともに、よりオー

プンで健全なエコシステムの構築を支援できます。

異業種間で共通の認識を形成

第一に、垂直産業パートナー、サービス提供者、通信事業者、ベンダーは、一連の要件、シナリオ、テクノロジー、

戦略を明確に定義することで、サービス保証型ネットワーク・スライシングの礎を築く必要があります。しかし、垂

直産業と通信業界では、技術面の知識やビジネスに関する理解という点で大きな溝があります。ネットワーク・ス

ライシング技術とビジネスの発展においてコミュニケーションと協業を効果的に実現するには、ネットワーク・スラ

イシングの産業プラットフォームなどによって、バックグラウンドの異なる参加者間での共通の理解を確立するこ

とが重要です。

技術革新を促進

第二に、ネットワーク・スライシングには、システム・アーキテクチャやプロトコルの設計における新たな考え方が

必要です。すなわち、柔軟性と効率性に優れ、将来の変化に耐えられる設計である必要があります。想定される

クロスレイヤ技術では、AN、CN、TNなどのマルチドメインでの協調が可能です。これらのドメインはそれぞれ、

機能、プラットフォーム、サードパーティ・アプリケーションから構成されます。グローバルな通信事業者やベン

ダーは、ネットワーク・スライシングに対する需要や課題の増大を受けて、技術革新のペースを加速する必要が

あります。

標準化団体間の連携を促進

さらに、標準化団体やオープン・ソース・コミュニティは、ネットワーク・スライシングの技術標準やリファレンス実

装のリリースに協力する必要があります。サービス保証型ネットワーク・スライシングでは、サービス間、レイヤ

間、ドメイン間での管理が必要とされますが、現在、各種ドメインごとに異なる標準化団体が規格を策定していま

す。例えば、3GPPは、モバイル・ネットワークのAN、CN、セキュリティ、ネットワーク管理についての規格を定め

ています。IETF、ITU-T、BBFは、TNの仕様策定に取り組む見込みです。ETSI NFVは、NFVの枠組みと管理メ

カニズムを策定するのに対し、OPNFV(Open Platform for NFV)のような他のオープン・ソース・プロジェクトは、

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NFVの実装フレームワークを設定しています。異なるドメイン間における統一の規格と連携が、ネットワーク・ス

ライシングの展開を促進するために必要です。

異業種間の協業促進

垂直産業ごとにネットワーク・スライシングによるサービス提供への理解が異なるため、すべての垂直産業に同

時に成功をもたらすことは不可能です。まず、少なくとも1つの垂直産業にトライアルまたは商用展開でサービス

保証型ネットワーク・スライシングを導入することが極めて重要です。大規模展開は、デモ用途に利用されるだけ

でなく、ネットワーク・スライシングによる技術革新の可能性を通信業界のみならず、垂直産業にも広げるための

ものです。1つの垂直産業での成功体験が他の垂直パートナーをさらに呼び込み、その結果、ネットワーク・スラ

イシングの完全な商用化が加速することになります。異業種間の協業は、相互運用テストや認証の促進を支援

し、ネットワーク・スライシングのエコシステムを発展させます。

5Gのサービス保証型ネットワーク・スライシングは、垂直産業の「Internet of Everything」というビジョンを実現

する重要な原動力と考えられています。すべてのステークホルダーがこの実り多い技術の探求に参加すること

で、5Gという新たな時代に、ネットワーク・スライシングとその関連技術の実現を成功させることができるのです。

Page 19: 5Gでのサービス保証型 ネットワーク・スライシング ホワイ …エンド(e2e)のソリューション、主要な実現技術、垂直産業に対する影響という点で、サービス保証型ネットワー

用語

頭文字 定義

AI Artificial Intelligence

AN Access Network

AR Augmented Reality

BSS Business Support System

CN Core Network

CU Centralized Unit

DC Data Center

DSS Domain Slice Support System

DU Distributed Unit

E2E End to End

eMBB Enhanced Mobile Broadband (a.k.a. extreme Mobile Broadband)

Flex-E Flexible Ethernet

FMC Fixed Mobile Convergence

HD High Definition

IoT Internet of Things

IoV Internet of Vehicles

KPI Key Performance Indicator

MAC Media Access Control

MAN Metropolitan Area Network

mMTC Massive Machine Type Communications

MPLS Multiprotocol Label Switching

NaaS Networks as a Service

NFV Network Functions Virtualization

NSI Network Slice Instance

NSM Network Slice Management

O&M Operation and Maintenance

OS Operating System

OSS Operations Support System

PHY Physical Layer

RAT Radio Access Technology

RRC Radio Resource Control

SDN Software-Defined Networking

SDO Standards Developing Organization

SLA Service Level Agreement

SSS Slice Support System

TN Transport Network

TTI Transmission Time Interval

TTM Time To Market

URLLC Ultra-Reliable and Low Latency Communications

V2X Vehicle to Everything

VLAN Virtual Local Area Network

VNF Virtual Network Function

VPN Virtual Private Network

VR Virtual Reality

WDM Wavelength Division Multiplexing

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主な担当者

会社名 担当者

チャイナ・モバイル ウェイ・チェン(Wei Chen): [email protected]

シャオウェン・サン(Xiaowen Sun): [email protected]

ドイツ・テレコム ブルクハルト・アルフェルト(Burkhard Alfert):

[email protected]

フランツ・サイサー(Franz Seiser): [email protected]

ファーウェイ シュエリ・アン(Xueli An): [email protected]

シュオ・ワン(Shuo Wang): [email protected]

フォルクスワーゲン トルシュテン・ヘーン(Thorsten Hehn): [email protected]

テオドール・ブブルザン(Teodor Buburuzan):

[email protected]

シュテッフェン・シュミッツ(Steffen Schmitz):

[email protected]

ロマン・アリエイエフ(Roman Alieiev): [email protected]

アンドレアス・クォツェク(Andreas Kwoczek):

[email protected]