4.ハンズオン支援の実施 本事業では、専門家派遣によるハンズ … ·...
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4.ハンズオン支援の実施
本事業では、専門家派遣によるハンズオン支援を5件程度実施するため、以下の8件から選定
作業を実施した。
図表Ⅱ-33 ハンズオン支援対象の候補 業種(所在地) 支援ニーズ 経緯
ホテル業A社 (山口県長門市)
○客室清掃をはじめとする諸業務の効率化。
○需要変動に応じた柔軟な人員配置の実現。
○中小企業基盤整備機構のセミナーで生産性向上に関心を抱くようになった。
○山口産業振興財団からの推薦により、本事業に申し込んだ。
物流業B社 (鳥取県米子市)
○保管・ピッキング・仕分け・配送の業務の効率化。
○B社から相談を受けた山陰の地方銀行が中国地域ニュービジネス協議会に支援を要請し、同協議会が中小企業基盤整備機構に専門家の派遣を依頼した。
タクシー業C社 (広島県広島市)
○数年前に導入したITシステムの活用(需要予測や顧客ニーズの分析など)。
○生産性向上に関心を抱いていたC社から、中国経済産業局及び中小企業基盤整備機構に経営上の相談があり、それをきっかけとして本事業に申し込んだ。
スーパーD社 (広島県広島市)
○業務用スーパーのFC加盟店に提供する商品力の強化
○バックヤードにおける業務の効率化
○知人からの紹介により、D社が中小企業基盤整備機構に経営上の相談をしたことがきっかけで、本事業に申し込んだ。
ドラッグストアE社 (広島県福山市)
○在庫削減の早期実現 ○MD(マーチャンダイジング:棚割等)の改善
○次期幹部候補社員と店長の育成
○中国地域ニュービジネス協議会が地域力連携拠点事業の相談業務を通じてE社の支援ニーズを知り、サービス産業生産性向上運動の運営合議体に連絡。
高齢者介護E社 (山口県岩国市)
○医療と介護が連携した業務のあり方の検討
○介護部門の職員の時間管理の見直し
○中国経済産業局主催のサービス・イノベーション・セミナーを聴講し、生産性向上に関心を抱く。 ○中国地域ニュービジネス協議会の推薦により、本事業に申し込んだ。
インテリア用品F社 (広島県広島市)
○独創的なインテリア用品の販路開拓支援
○地域力連携拠点である広島県の地方銀行から、サービス産業生産性向上運動の運営合議体に連絡があった。
学習塾G社 (鳥取県鳥取市)
○講師の生産性向上 ○個別指導を中心とした運営方法の確立
○生産性向上のニーズを有していたG社を、山陰地区の地方銀行が中小企業基盤整備機構に紹介し、本事業に申し込んだ。
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前ページの8社について検討した結果、下表の5社をハンズオン支援の対象とすることに決定
した。個別の支援の具体的な内容は、次ページ以降で紹介する。
平成 21 年中程から専門家による現地指導を始めたばかりであるにも関わらず、すでに成果が顕
在化しつつある。なお、このうち数社については、平成 22 年度から、中小企業基盤整備機構中国
支部の専門家派遣事業で継続して支援を行う予定である。
図表Ⅱ-34 ハンズオン支援対象企業
企業名 業種 専門家 主な分析・改善手法
㈱油谷湾温泉ホテル楊貴館
(山口県長門市)
ホテル (独)中小企業基盤整備機構中国
支部
アドバイザー 泉 旦茂 氏
KJ法
標準作業分析、作業時間分析
アンケート
(データマイニング)
(独)中小企業基盤整備機構中国
支部
アドバイザー 長村 俊則 氏
3S、5S
仕分け工程の改善
ピッキングリストの改善
レイアウト変更による改善
共同物流の検討
服島運輸㈱
(鳥取県米子市)
物流
㈱ナスカ
代表取締役 宇野 正章 氏
仕分け工程の
デジタル作業分析
第一タクシー㈱
(広島県広島市)
タクシー ㈱ファインサポート
代表取締役 児玉 学 氏
戦略マップ
(バランススコアカード)
配車需要予測
顧客データベース
従業員データベース
アクト中食㈱ 小売 (独)中小企業基盤整備機構中国
支部
チーフアドバイザー
綿岡 英幸 氏
経営戦略の策定
(チェーンストア理論)
アンケート
(データマイニング)
㈱ププレひまわり 小売 (独)中小企業基盤整備機構中国
支部
チーフアドバイザー
綿岡 英幸 氏
在庫システム
MD(マーチャンダイジング)システム
業務の棚卸し
支援対象企業 株式会社油谷湾温泉ホテル楊貴館
創業:昭和48年 設立:平成16年所在地:山口県長門市油谷伊上資本金:6000万円 従業員数:45人客室数:39室 収容人数:190人料金:1泊 15,750~23,100円アクセス:長門・萩・下関の観光へも30分~1時間圏内にあり、
●企業概要
福岡・北九州から日帰りも可能特長:22時間ステイ、多彩な客室
オペレーションの効率化
●現状の課題
組織運営と人材育成
1.清掃・メーキングの効率化と品質向上
2.平日休日の差を鑑みたサービスの見直し
3.施設リニューアルのためのレイアウト検討
オペレ ションの効率化 組織運営と人材育成
1.地元人材の雇用とその人材育成
2.見える化による組織運営の定着
3.新サービスの展開
想定される支援内容 ⇒ 実態調査により内容を深めていく●オペレーションの効率化に向けて、製造業のノウハウを取り入れた現地指導
(作業動線の検討、ムダ取り、業務平準化のための作業計画、人材配置、人材育成などの改善)(施設、装備品などのレイアウト最適化)(各部門における業務の見える化と社員の目標管理)
●ワークフロー支援などの業務効率化を図るITの活用検討
地域の観光サービス業である温泉旅館を支援する意義は大きい
(資料)本ページは(独)中小企業基盤整備機構中国支部経営支援部が作成
●ワ クフロ 支援などの業務効率化を図るITの活用検討●山口産業振興財団からの推薦もあり、プロジェクト連携を図る
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ホテル業界では、宿泊や宴会などの需要変動が大きい一方で、お客様が少ない時間帯に人員を
少なくするとサービスの水準が低下してしまうため人件費の調整は容易ではない。しかし、ホテ
ルが経費を節減する上で、人件費を需要にあわせて調整することは、重要なテーマである。この
ように、需要に応じた人員の柔軟な調整が、ホテル業界において、大きな課題となっている。 このような課題に対応するため、(独)中小企業基盤整備機構の泉氏は、ホテル楊貴館の魅力や
真の課題を抽出するため、若手リーダー職員を集めてKJ法によるグループディスカッションを
開催した。この結果、自分達が強みと思っていることや課題と感じていたことなどを顕在化・共
有化することが出来、取組の方向性を明確にすることができた。 次いで、客室清掃と食器洗い作業について、ものづくりの現場改善の視点を用いて、現場の担
当者を追跡し、所要時間を 100分の 1秒単位で計測したり、作業導線を調べたりした。この結果をもとに、職場の担当者や責任者と一緒に、理想的な作業手順や効率的な動線を検討するなど、
従業員の主体性を引き出しながらものづくり現場の手法を活用した改善を実施した。
《支援のポイント》 標準時間・標準作業分析による業務の効率化
お客様が楊貴館スタッフと交流したい。
接客がいい。(2票)△
お客様にスタッフの笑顔が良かったと言われた。
お客様に接客が良かったと聞いた。
親戚が集まる行事を安心できる施設で行いたい。
冠婚葬祭を行いたい。
美味しく新鮮な料理が食べたい。
料理がおいしい。(3票)
料理内容がいい。 ◯△
料理が多い。(品数)◯△
中華が食べたい。 ◯
地物の食材(特に刺身)を期待している。◯
近海で獲れる魚が食べられる。 ◯
良質の温泉に入りたい。
風呂の泉質が良い。(2票)
温泉が良い。(2票)
温泉に入りたい。
海を見ながら露天風呂に入りたい。 ◯
油谷の景観を楽しみたい。
夕日がきれい。
海のそばで眺めが良い。
海も山もある。
きれいな景色を楽しみたい。
高級感があるお部屋に泊まりたい。
客室がきれい。(2票) ◯
部屋が広い。
露天風呂付きのお風呂が素晴らしい。
お客様に「TVで観てすごく感じが良かったので、泊まってみたいと思った」と言われた。
大事な人と大事な時間を過ごしたい。
家族、恋人、友人とゆっくり過ごしたい。
エステ、岩盤浴がある。
岩盤浴がある。
エステがしたい。
きれいになりたい。
健康になりたい。△
きれいで健康になりたい。
新しい物が見たい。 △
わくわくしたい。
何か新しい物を探したい。
値段や評判の高い宿に泊まってみんなに自慢したい。
好奇心とステイタスを満足させたい。
癒されたい。
のんびりして癒されたい。
何もせずにのんびりしたい。(上げ膳、据え膳)
何をしても笑顔で許して欲しい。 ◎
元気になって明日からの活力を補充したい。
現実逃避がしたい。
非日常が欲しい。(2票) △
ふだんできないこと(音楽鑑賞、読書)をしたい。
嫌なことを忘れたい。
時間(生活)を忘れたい。
「お客が魅力と感じる楊貴館はなに?」 2009年11月4日Bチーム
時間観測資料
観測者
作業者名 泉 旦茂
機械名称
0 0
村上さん, 川村みさとさん
台に置く
1.00
0.03
0.20
0.40
0.55
0.75
0.95
0.55
箱を置く
洗浄機ローラーより中皿5枚取り出し置く
同じく6枚取り出し重ねる
同じく5枚取り出し重ねる
同じく6枚取り出し重ねる
手待ち
№
0.03
0.20
0.40
1要 素 作 業(B)
0.75
0.95
1.00
箱を取り出し
5
6
7
8
中皿(黄)10枚洗浄(油汚れ)
中皿(白)12枚洗浄(汚れ小)
食器置き場に運ぶ
№ 1
湯呑み28個洗浄
食器の箱引き込み
1
2
3
4
備 考
食器搬入
洗浄機SW. On 待ち0.80
1.00
1
2
要 素 作 業(A)
3.40
4.00
4.30
0.80
1.00
2.40
2.50
4.30
2.40
2.50
3.40
4.00
3
4
5
6
7
職 場 名
部 品 名
8
食器洗い作業(配膳室横)パントリー
機 械 №
支援対象企業 服島運輸株式会社
創 業:昭和48年 社長は昭和60年当社入社。平成20年10月、実父(会長)の後を継ぎ就任。所在地:鳥取県米子市和田町600資本金:4,200万円 従業員数:240人保有車両:160台、クレーン社も保有特 長:長距離貨物運送中心。大型倉庫を保有し、仕分け業務まで行う当地中堅企業。
●企業概要
仕分け業務の効率化
●現状の課題
組織運営と人材育成
1.仕分け業務の効率化、見える化導入と推進
2.事務作業のムダ取りと分析手法の確立
3.宅配事業への展開を鑑みた実車率・積載率・稼働率の向上と営業戦略を構築
仕分け業務 効率化 組織運営と人材育成
1.新たな運行管理システムによる経営戦略構築
2.新サービスの展開を支える社内整備と人材育
成
3.IT活用のための専門人材の育成と実施
想定される支援内容 ⇒ 実態調査により内容を深めていく●オペレーションの効率化に向けて、製造業のノウハウを取り入れた現地指導
(作業動線の検討、ムダ取り、業務平準化のための作業計画、人材配置、人材育成などの改善)(施設、装備品などのレイアウト最適化)(各部門における業務の見える化と社員の目標管理)
●業務効率化を図るITの活用検討とIT人材の育成●中小機構と協定関係にある地域金融機関からの推薦
地域から都市部への配送を担う地元中堅運送業を支援する意義は大きい
(資料)本ページは(独)中小企業基盤整備機構中国支部経営支援部が作成
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物流業の配送センターでは、たくさんの人と貨物が頻繁に行き交うため、気がつかないうちに
無駄な設備・在庫・スペースが発生し、従業員の動きにも無駄が多くなる傾向がある。また、従
業員の入れ替わりが頻繁にある職場では、習熟度の向上が難しくなったり、新人教育に多大な時
間と労力を費やしてしまう。このように、物流業界では、配送センターの無駄をなくし、作業を
効率化することが、共通の課題となっている。 (独)中小企業基盤整備機構の長村氏は、ものづくりの現場改善の視点を用いて、5S(整理、
整頓、清掃、清潔、躾)から着手し、仕分け作業の見直し、配送センターのレイアウトの見直し
など、広範にわたる支援を実施した。 仕分け作業の見直しには、㈱ナスカの宇野氏も参加し、動画システムによる作業分析を実施し
た。その結果、動作の 48%が無駄であることが判明し、6名体制から4名体制への変更をテストし、良好な結果を得た。
《支援のポイント》 5S、倉庫レイアウト改善、動画システムによる作業分析
6人体制?
改善前 改善後
4人体制
人員が多過ぎて、1パレットの周囲で手待ちになる。(4人~5人)
改善前 改善後
適正人員で、手待ちの無い正確な作業が進む。(2人)
支援対象企業 第一タクシー株式会社
創 業:昭和43年所在地:広島市安佐南区相田2-5-18資本金:1,000万円 従業員数:260人保有車両:125台、タクシー、観光バス、路線バス、他特殊車両も保有
●企業概要
特 長: 電話予約による配車が9割を超える地域に密着したタクシー・バスの運行をする中堅企業。
●現状の課題と支援の進め方
サービスの高度化と新事業開発の可能性検討
地域旅客運送業の顧客データを活用したサービスレベルの向上と新事業創出支援
●現状の課題と支援の進め方
方向性と課題を明確にする
サービスの高度化を支える社内整備
実践に向けた支援
1.お客様との「 ONEtoONE 」マーケティングを目指した顧客データの活用状況確認
2.既存の顧客データを有効活用した新事業開発の可能性検討
方向性と課題を明確にする
1.顧客データベースの構築と戦略的活用による新事業構築
2.サービス管理目標の設定と成果(評価・業績)の見える化とその活用を図る部門リーダーの育成
実践に向けた支援
(資料)本ページは(独)中小企業基盤整備機構中国支部経営支援部が作成
3.サービスの高度化を目指した品質管理課題の整理
3.乗員・車両のサービス品質高度に
むけた管理体制の整備
12月 経済産業局調査事業 2月 要望に応じた支援制度の活用
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第一タクシー㈱は、2年前にリアルタイムでエリア別の空車状況などを把握できる配車・デジ
タル無線システムなどを導入しているが、これらで蓄積されたデータが有効に活用されていない
ため、そのポテンシャルを最大限に活用し、実車率の引き上げとサービス品質の向上を図ること
が課題となっていた。 これに対し、(独)中小企業基盤整備機構の児玉氏は、同社のシステムで乗務員が車両から顧客
情報を入力できる点などに注目し、顧客ランクのデータベースを構築することを提案した。さら
に、乗務員の勤務評価のデータベースも構築したうえで、評価の高い従業員に優良なお客様を対
応させることで、顧客満足と従業員満足を結びつける独創的なITの活用方法を提案した。 さらに、同システムのデータを分析することにより需要の予測手法を確立し、実車率をアップ
させることも提案した。このような一連の取り組みにより、「実車率のアップ」、「サービスレベル
の向上」、「マーケティングの強化」を図り、生産性向上につなげていく計画の具体的実施を検討
している。
《支援のポイント》ITの有効活用・データ分析による顧客満足と従業員満足の向上
支援対象企業 アクト中食株式会社
創業:明治44年 設立:昭和53年所在地:本社/広島市西区草津港 業務用食品スーパーFC本部/広島市南区宇品西資本金:7000万円 従業員数:372人支店:松山、西条、東中国物流センター事業所:本社、FC本部、FC東京本部、米穀事業部、フードビジネスソリューション営業品目:業務用食品 冷凍食品 ドライフーズ 米穀 酒類
店舗 プ 等 店舗
●企業概要
FC店舗数(プロマート等):76店舗
●アクト中食グループの概要
業食事業部 米穀事業部 ストア事業部
食材企業グループ
食品スーパーグループ
㈱F.B.Sモバイルによる飲食店向け販促情報の提供
ジェイフーズネット㈱商品開発・製造
㈱アクトロジスティクス配送ネットワーク情報の統合管理
㈱中国トーヨー無洗米の精米・販売東洋精米機製作所合弁
アグリプロデュース㈱生産農家との契約提携
●現状の課題
地域密着業務用卸
顧客数4000件
米卸
全国から調達量販店・飲食店
への販売
チェーン本部運営・業務用食品スーパー・PROMART
2形態展開FC・直営76店舗
ソフトバンク合弁
マザース㈱広告プランニング
㈱ユーアイシステムズシステム開発
コーディネート
㈱ハマタニカット野菜、惣菜キット
有限責任事業組合神の瀬工房環境保全型農業法人 100%出資 共同出資
1.バックヤードにおける
生産性の向上
オペレーションの効率化 情報活用展開
1.FC店に貢献できる商材情報の活用展開
2.FC店とのリレーション運営の仕組み構築
チェーンにおける組織運営と人材育成
1.本部機能の一層の充実・強化
2.FC店との新ビジネス形態
確立と関係強化
3. FC店舗の意識改革と
そ 教育 構築運営の仕組み構築
想定される支援内容 ⇒ 実態調査により内容を深めていく●オペレーションの効率化に向けて 製造業のノウハウを取り入れた現地指導
地域発の先進的食材卸売サービス業の支援
その教育システム構築
(資料)本ページは(独)中小企業基盤整備機構中国支部経営支援部が作成
●オペレーションの効率化に向けて、製造業のノウハウを取り入れた現地指導(作業動線見直し、ムダ取り、作業効率化のための作業計画、施設、装備品などのレイアウト最適化)
●FC店との情報共有を促進するIT活用検討(FC店への教育・連携の仕組み作りとシステム化)
●FCチェーンにおける組織運営と人材育成のための本部機能強化、FC店活性化策の検討
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小売業界では、大型専門店やショッピングセンターの進出など競合が一段と激化しており、自
社の優位性を活かしたビジネスモデルの構築が、各社共通の課題となっている。 大手チェーンは、「チェーンストア理論」に立脚して経営を展開している。具体的には、下図の
①と②のスケールメリット、③の機能分担、④IT導入により効率化を推進している。しかし、
近年では、「少量のお買い得商品仕入れが弱い」など、チェーンストア理論の弱点も指摘されるよ
うになっている。 そこで、同社は、(独)中小企業基盤整備機構の綿岡氏の支援により、チェーンストア理論の弱
点に焦点を当てた新たな戦略づくりを進めている。その戦略では、FC店や飲食店にコンサルテ
ィングできる社員の能力を活かした「商品開発力やこだわり商品発掘」、業務用スーパーならでは
の「効率的な生産のため生産性改善提案」にさらに磨きをかけ、独自のビジネスモデルの構築を
目指す。
《支援のポイント》 チェーンストア理論に対抗したキメ細かい経営展開
支援対象企業 株式会社ププレひまわり
設 立:昭和59年所在地:広島県福山市西新涯町資本金:4614万円 従業員数:1200人店舗数:73店舗(平成22年2月時点)特 長:兵庫、岡山、倉敷、広島地区でドミナント(地域集中出店)戦略を実施
●企業概要
特 長 兵庫、岡山、倉敷、広島地区でドミナント(地域集中出店)戦略を実施
●現状の課題
1.在庫削減の早期実現
2.MD(棚割等)の改革
3.ローコストオペレーション手法の確立
オペレーションの効率化 人材育成
1.次期幹部候補社員の育成
2.店長および店長候補社員の育成
地域密着型で成長著しいドラッグストアを支援する意義は大きい
想定される支援内容 ⇒ 実態調査により内容を深めていく●オペレーションの効率化に向けて現地指導を実施
(本社と店舗の在庫の実態把握および削減策提案、MDの実態把握および改善策提案、ローコストオペレーションに向けた手法の提案)
●人材育成(次期幹部候補社員に本プロジェクトで中心的な役割を担わせる)●地域力連携拠点を設置している中国地域ニュービジネス協議会からの推薦
(資料)本ページは(独)中小企業基盤整備機構中国支部経営支援部が作成
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ドラッグストア業界では、近年、店舗網を急拡大してきた有力チェーンがみられており、在庫
管理やマーチャンダイジング(棚割等)の改善や人材育成は業界共通の課題となっている。 このような課題に対し、ププレひまわりでは、新たな在庫自動発注システムの導入を起点とし
た経営改革を、(独)中小企業基盤整備機構の綿岡氏とともに推進。これにより、医薬品、日曜雑
貨品、化粧品など多岐にわたる商品を、各店舗の特性にも対応しながら自動発注するとともに、
在庫も削減できる体制が整うこととなる。 同社では、新しい在庫自動発注システムとあわせてマーチャンダイジング(棚割等)の手法も
強化し、両者を統合する新しい情報システムの構築を通じて、ローコストオペレーションや社内
の情報共有・方針伝達改革にまで展開する計画を検討している。
《支援のポイント》 柔軟な在庫自動発注システム
各店舗の特性にも対応できる品・群別のキメ細かい在庫自動発注システムの開発
モデル店での導入実験
全店舗への展開
在庫自動発注システムの導入イメージ
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5.モデル研修開催
中国地域におけるサービス産業生産性向上運動の3つの「柱」のうち「トライアルの重
層化」を図るため、本事業では生産性向上等に関心を持つ産業分野・業界等と連携して実
践的研修(以下モデル研修)を行った。研修後には聴講者を対象とするアンケート調査を
実施し、本研修の評価や成果を確認した。開催したモデル研修の内容は以下の通りである。
(1)開催内容
①ビルメンテナンス業の生産性向上研修
労働集約型のサービス産業の生産性向上において不可欠なESの向上事例について、業
種・業態を超えた他業種の成功事例から社員のモチベーションアップの手法の取得を目的
とした。
■対 象:ビルメンテナンス会社の経営者、経営幹部、部門管理者など
■日 時:平成 22 年 2 月 20 日(土)13:00~17:00
■場 所:広島ビルメンテナンス協会(広島市中区千田町3-6-8)
■参加人数:41 名
図表Ⅱ-35 スケジュール
時刻 講師 テーマ
13:05 株式会社MATコンサルティ
ング
代表取締役社長 望月広愛氏
『組織を活性化させる 4 つの理念と 8 つの視点
(1)』~永続的に卓越した業績を上げるために~
14:30 株式会社MATコンサルティ
ング
代表取締役社長 望月広愛氏
『組織を活性化させる 4 つの理念と 8 つの視点
(2)』
16:00 株式会社J・ARTレストラン
システムズ
営業部長 今津美砂江氏
『㈱J・ARTレストランシステムズの現場で
の取り組み』
17:00 終了
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■講義の概要
顧客満足の前提は従業員第一であり、このために必要な企業風土作りへの取り組み
イタリアンレストラン・ロッソえびすやを運営する㈱J・ARTレストランシステ
ムズで経営を立て直し、2005 年度には日本経営品質賞中小規模部門を受賞した経験
にもとづいた経営品質についての講演である。人口減少から今後の成長が厳しい日本
にあって、これからは近江商人のいう「三方良し」だけではなく、4本目の柱である
「独自能力」が必要である。この「独自能力」には技術、技能、風土と3つあるが最
も大切なのは風土である。良い企業風土で価値観を共有したやる気のある社員が多く
なれ生産性は上がり、業績は上向く。業績を向上させるには顧客満足が重要だが、顧
客を満足させるのは従業員のやる気である。したがって従業員第一主義が最も重要で
ある。
カードを用いた従業員のモチベーションアップの実際の紹介と質疑応答
㈱J・ARTレストランシステムズでは従業員を採用する際、8つの約束を会社と
取り交わす。会社からも従業員に対して約束をし、相互の信頼関係を築くのに役立
っていると同時にこうした理念を共有することでやる気のある社員が集まり、前向
きな組織にしていった。大切なのはこうした理念を共有することで社員のやる気を
引き出し、それによって顧客満足を図るということである。他にも業員が顧客に褒
められたよい行動や、従業員同士で助かった行動などよいことをカードに書き込ん
で皆に紹介する取り組み行っており、この取り組みも従業員のやる気の向上に大き
く貢献している。
『組織を活性化させる4つの理念と8つの視点』
『㈱J・ARTレストランシステムズの現場での取り組み』
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②建設コンサルタント業の生産性向上研修
知識集約型産業である建設コンサルタント業では、案件ごとに業務内容が異なっている
ため生産性向上は難しいという固定観念があるが、実際に同業での先進事例を学ぶことに
よって実は製造業の工程管理の適用等により改善の余地が十分にあることを理解し取り組
みを促すことを目的とした。
■対 象:建設コンサルタント会社の経営者、経営幹部、部門管理者など
■日 時:平成 22 年 2 月 22 日(月)13:00~17:00
■場 所:ひろしまハイビル21(広島市中区銀山町3-1)
■参加人数:21 名
図表Ⅱ-36 スケジュール
時刻 講師 テーマ
13:05 株式会社五星
取締役副社長 神原孝行氏
『TOC-CCPM と現場力の引き出し方』
14:00 株式会社五星
取締役副社長 神原孝行氏
『生産性向上の事例演習』
15:30 京都大学工学研究科
准教授 古阪秀三氏
『何が PM/CM か、なぜ PM/CM か』
17:00 終了
■講義の概要
建設コンサルタント会社で大幅な工期短縮を実現した作業工程の「見える化」に
ついて実際の社内での取り組みをもとに紹介
CCPM(クリティカル・チェーン・プロジェクト・マネジメント)の背景にある
TOC(Theory of Constraints:制約条件の理論)」とは、企業活動の制約条件に着
目し、そこを集中的に強化・改善することにより、大きな成果を上げようとするマネ
ジメント手法である。CCPMの取り組みでは、プロジェクトの中の各工程のバッフ
ァ(安全余裕)を切り取りプロジェクトの最後に持ってくる。プロジェクトは進捗率
ではなく残日数で管理していく。こうすることで各工程でバッファを使い果たすこと
を防ぎ、生産性の向上を図るというものである。プロジェクトの中では社員相互の助
け合いがあり、コミュニケーションが円滑になる効果もある。
『TOC-CCPM と現場力の引き出し方』
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受講者に複数の作業を異なった方法で実際に行わせ、かかった時間にどのくらい
差があったか実感することにより何が効率的な作業方法なのかを考えさせる演習
複数の業務を平行して行うマルチタスクは効率的に見えて実は非効率であること
を、聴講者が“マルチタスク体感ゲーム”を実際に作業をしながら体感していった。
聴講者が 20 個の作業からなる3つの異なったプロジェクトを同時並行して作業した
ケースと1つのプロジェクトを終えたら次のプロジェクトに取り組んで1つ1つの
プロジェクトを終えながら個別に作業していくケースをそれぞれ作業時間を計って
比較した。結果は同時並行して作業したケースは個別に作業してケースと比べて概ね
1.5 倍の時間が掛かった。人間の脳は本当の意味でのマルチタスクはできず、複数の
対象の間を行ったり来たりしているに過ぎない。業務の改善にもこうした視点が必要
である。
今後の公共工事の方向性を見据えた上で建設コンサルタント業界として取り組む
べきPM・CMについての紹介
建築の場合、大きくは企画・設計・施工の3つに分かれる。昭和 30 年~40 年はど
の段階でも全体の流れを把握していて一貫してプロジェクトを管理する者がいたが、
現在は分業体制が確立されていて、一貫したプロジェクトのマネジメントが出来にく
くなっている。そのため、PM(プロジェクトマネジメント)、CM(コンストラク
ションマネジメント)といった手法が必要になっている。建設コンサルタントが主に
かかわる土木の世界でも今後、公共工事がの変化やそれに伴った競争の激化が予想さ
れ、こうしたPM、CMの手法は重要になってくる可能性がある。
(2)アンケート結果(2日間の合計)
研修後に行ったアンケートでは、研修の感想、今後の研修の参加について、今後の関連
情報の送付可否について尋ねたところ、以下のような結果となった。
図表Ⅱ-37 研修の講演の感想(2日間、計6講義の合計)
項目 回答数 構成比
非常によい 60 52.6
良い 46 40.4
普通 4 3.5
物足りない 4 3.5
非常に物足りない 0 0
全体 114 100
無回答 12 件
『生産性向上の事例演習』
『何が PM/CM か、なぜ PM/CM か』
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図表Ⅱ-38 今後の研修の参加について
項目 回答数 構成比
参加したい 33 94.3
参加しない 0 0
どちらとも言いえない 2 5.7
全体 35 100
無回答 7件
図表Ⅱ-39 今後の関連情報の送付可否
項目 回答数 構成比
はい 25 83.3
いいえ 5 16.7
全体 30 100
無回答 12 件
(自由記述欄の意見)
・ 人が基本のサービス業として共通する考え方、理念があり参考になった。
・ お客様第一ではなく、従業員の幸せ、満足→WINWIN の関係へつながる点は強く理解でき
た。
・ 組織を活性化させるためのヒントを得た。
・ 今回のような研修の開催をどんどんお願いいたします。参加したいです。
・ 全体的にわかりやすい内容だったので聞きやすく理解しやすいものでした。
講義の感想については「非常によい」及び「よい」とした聴講者の割合が9割を越えて
おり、高い評価を得ることができた。研修の開催にあたっては、(社)広島ビルメンテナン
ス協会、(社)建設コンサルタンツ協会 中国支部と連携を取り、協会員の希望する講師や
テーマを話し合いながら研修の内容を策定したことが良い結果につながったと思われる。
今後の研修についても9割超の受講者が参加したいとしており、サービス産業のイノベ
ーション・生産性の向上に対する関心の高さが窺える。
また今後の関連情報の提供についても8割以上の聴講者が希望しており、今回のような
実践研修が有効なものであることが確認できた。
中国地域の生産性向上運動を浸透させるにあたり、個社へのハンズオン支援だけでなく
業界・協会単位でのこうした普及啓発・意識醸成は必要かつ有効であるものと思われる。
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6.まとめ
「トライアルの重層化」の「現状」と「課題・方向性」をまとめると、次の通りである。
図表Ⅱ-40 トライアルの重層化の「現状」と「課題・方向性」 現状 課題・方向性
○「作業ごとの所要時間分析を通じた効率化」など 11 項目について対応できるか尋ねたところ、「窓口相談」を実施できるとの回答が3~4割にとどまった。
〔窓口相談の強化〕 ○平易な案件は窓口で対応し、専門家派遣が必要な案件は専門家へ円滑に取り次げるように、窓口担当者の対応力を高める必要がある。
○サービス産業の支援に必要な人材を尋ねたところ、自機関や他機関に登録している「専門家」との回答が上位を占めた。
〔専門家の発掘〕 ○専門家に関する情報を、支援機関が望む内容や方法で提供する仕組みを構築する必要がある。
○支援拡大における問題点を尋ねたところ、「ニーズのある企業を発掘する情報が少ない」、「支援ノウハウの情報が少ない」との回答が多かった。
〔ニーズがある企業の発掘〕 ○ニーズのある企業を発掘するルートを開拓・拡大することが必要である。その対応策の一つとして、税理士、公認会計士、金融機関との連携が考えられる。 〔モデル事例の情報発信〕 ○支援ノウハウの情報として、モデル事例に関する情報を、支援機関が望む形式で出来る限り詳細に発信する必要がある。
○情報交換や連携を深める際の問題点を尋ねたところ、「情報交換の定型的な手法が確立されていない」、「顧客情報の守秘義務があるため十分な情報交換ができない」との回答が最も多かった。
〔情報交換の仕組みづくり〕 ○支援情報に関する情報を、定期的あるいは定型的に交換できる方法を「仕組み」として定着させる必要がある。 〔情報交換の仕組みづくり〕 ○情報漏洩にならない情報交換の手法を確立する必要がある。
支援機関への アンケート調査
○小規模企業や零細企業が多かったり、経営者の高齢化が進んだりしているため、生産性向上になじまないとの意見(アンケートの自由記述欄)が複数みられた。
〔小規模・零細企業の支援〕 ○中小企業、特に小規模・零細企業においても活用しやすい事例や手法を普及していく必要がある。 〔高齢な経営者の支援〕 ○今後、本格的な高齢化社会を迎えるため、高年齢層の経営者への普及方法についても検討が必要である。
○アンケート調査や電話ヒアリングなどで支援事例を見つけようとしたが、あまり多く見られなかった。
〔サービス産業生産性向上の認知度拡大〕 ○支援機関によるサービス産業の生産性向上の支援は、まだ実績や取り組みが少ない。生産性向上の重要性、本運動自体の認知度などを高める必要がある。
○支援を要望している企業の情報が、金融機関から支援機関へ提供された事例が9件のうち3件みられた。
〔ニーズがある企業の発掘〕 ○金融機関は支援対象企業を発掘する上で重要な情報提供者であり、今後、緊密な連携体制を構築する必要がある。
○KJ法、動画撮影による作業分析、営業週報シート、生産工程の標準化、管理会計、接客マニュアルなど、多様な分析手法が採り入れられていた。
〔多様な支援手法のとりまとめ〕 ○どのような分析手法があり、それがどのような手順で進められ、どのような成果をもたらすかを整理し、支援機関に情報を提供する必要がある。
支援事例の ヒアリング調査
○支援機関のマネージャーやコーディネーター自身が、KJ法や管理会計による支援を実施していた。
〔支援機関マネージャーのスキルアップ〕 ○支援機関のマネージャーやコーディネーターが、KJ法、バランス・スコア・カード、管理会計などを習得する場を設けることが望ましい。
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図Ⅱ-41 トライアルの重層化の「現状」と「課題・方向性」 現状 課題・方向性
○経営者と従業員が率直に意見交換を行う場が、従業員が期待するほどには設けられていなかった。
〔モチベーション向上〕 ○自社の課題や方向性について、経営者と従業員が意見交換する場を設けると、経営改革に向けた従業員の参画意欲が高まる。モチベーション向上の具体的手法を、企業に情報提供する必要がある。
○現場での作業量を数量で把握していない(例:厨房で1日に何枚の皿を洗い、1枚の皿洗いに何秒かかっているか)。
〔ものづくり手法の応用〕 ○作業を数量化して把握するという考え方を、サービス業に理解していただく必要がある。
○3Sや5Sの本来の意味が理解されていない(単なる整理整頓と勘違いしている可能性もある)。
〔付加価値業務・非付加価値業務〕 ○先ず、何が付加価値であり、何が無駄であるかの定義そのものを、企業に理解していただく必要がある。 〔3S、5S〕 ○従業員が整理整頓を行うことが、設備や業務内容の点検につながることや、ルールを遵守する社風の確立に発展することを認識していただく必要がある。
○お客様のニーズ情報を持っていても、分析や活用ができていない。
〔ITの活用〕 ○自社のITシステムやアンケート等、顧客ニーズを聞き取る仕組みを再確認し、それを最大限に活用するための支援が望まれる。
ハンズオン支援
○(中小企業基盤整備機構以外の専門家で)サービス産業の生産性向上を支援できる専門家をほとんど確認できていない。
〔専門家の発掘〕 ○各地域の産業振興財団や商工会議所・商工会などの専門家で、サービス産業を支援できる人材を確認かつ育成し、中国地域全体で支援ネットワークが機能する体制をつくる必要がある。
○ビルメンテナンス業界では、従業員のモチベーション向上が最大の課題となっている。これは、他のサービス産業にも通じることであると思われる。
〔モチベーション向上〕 ○社内的なモチベーション向上の手法(経営者と従業員の意見交換、人事・業績評価、経営情報の従業員への開示など)をとりまとめる必要がある。この手法は、支援機関のマネージャーなどが支援・実施できる可能性がある。 〔モチベーション向上〕 ○社外とのつながりの中でのモチベーション向上の手法(お客様に従業員が褒めていただける仕組みづくり、社会貢献活動への参加など)の専門家を発掘する。
○建設コンサルタント業のように、各担当者へ工程管理が任されがちな業種では、業務の負荷と余力の有無が各個人および全社として正確に把握できていないことがある。
〔会社全体の業務量平準化の専門家〕 ○作業の標準化とプロセスの視える化を図り、会社としての作業最適を明らかにし、余裕のある従業員が別の従業員を応援する仕組みづくりが支援できる専門家を発掘する必要がある。
モデル研修
○法制度の改正により、生産性向上の進め方が大きな影響を受けることがあるにも関わらず、企業がその情報を知らないことがある。
〔法制度改正の影響〕 ○業界団体と行政が一体となって、法制度の改正とそれに伴う影響などの情報を、企業に発信する。