平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係...

19
平成 27 年度サービス産業事業者の 生産性向上に係る課題及び解決事例調査 報告書(概要版) 平成28年3月 近畿経済産業局

Upload: others

Post on 29-Jun-2020

0 views

Category:

Documents


0 download

TRANSCRIPT

Page 1: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

平成 27 年度サービス産業事業者の

生産性向上に係る課題及び解決事例調査

報告書(概要版)

平成28年3月

近畿経済産業局

Page 2: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

《 目 次 》

I. はじめに .................................................................................................................................... 1

II. 本調査の背景 ............................................................................................................................ 1

1. 人口減少および高齢化の状況 ............................................................................................... 1

2. サービス産業の生産性向上の必要性 .................................................................................... 2

III. 人口変化とサービス産業の生産性の維持に向けた着眼点 ....................................................... 2

1. 生産性の定義 ........................................................................................................................ 2

2. 生産性の構造 ........................................................................................................................ 2

3. 面的生産性の着眼点 ............................................................................................................. 4

4. 個別生産性の着眼点 ............................................................................................................. 4

5. 小括 ...................................................................................................................................... 4

IV. サービス産業の生産性に係るデータ分析 ................................................................................ 5

1. サービス産業の生産性と産業規模 ........................................................................................ 5

2. 業種特性についての分析結果 ............................................................................................... 6

3. 面的生産性(地域効果)についての分析結果 ...................................................................... 7

4. 個別生産性(個別事業者の努力効果)についての分析結果 ............................................... 10

事業所の生産性格差の分析 ............................................................................................. 10 (1)

生産性に影響を与える要因の分析 ................................................................................... 11 (2)

5. 小括 .................................................................................................................................... 12

V. 近畿地域におけるサービス産業事業者の生産性向上に関するアンケート調査 ..................... 12

1. アンケート調査の概要 ........................................................................................................ 12

2. 調査結果のまとめ(業種特性) ......................................................................................... 12

VI. ヒアリング調査 ..................................................................................................................... 16

VII. 総括 ...................................................................................................................................... 17

1. サービス産業の生産性向上に向けた新たな施策展開の必要性 .............................................. 17

2. 個別事業者・業種特性に対する施策施策展開 ....................................................................... 17

3. 「面的生産性」の改善に着目した施策展開 ............................................................................. 17

Page 3: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

1

I.はじめに

日本の GDP の約7割を占めるサービス産業は、「無形性」、「同時性」等の性質を有し、

製造業に比して生産性が低い傾向にある。人口減少・高齢化に伴う労働力不足が顕著とな

る中、日本経済の更なる振興と地方創生には、地域経済の主要なプレイヤーであるサービ

ス産業事業者の生産性向上が喫緊の課題である。「『日本再興戦略』改訂 2015-未来への

投資・生産性革命-」の中では、「サービス産業の活性化・生産性の向上」を、重要な施

策と位置付け、サービス産業の労働生産性のの伸び率を 2020 年までに 2.0%(2013年:0.8%)とすることを KPI に掲げている。 他方、サービス産業においては、同一業種内における事業者間の生産性の格差が大きく、

低生産性事業者の底上げが産業全体の生産性改善に寄与する余地を多く残している。この

為、サービス産業全体の生産性向上には個々の事業者による生産性改善の取組が不可欠で

あり、また、地域の事業者全体に共通する要因は、地域において対応することが求められ

る。 本調査では、各種統計(地域経済分析システム(RESAS)のデータ元となる経済セン

サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

地域サービス産業事業者の持続的成長に向けた方策の提言を行うことを目的とする。

II.本調査の背景 1. 人口減少および高齢化の状況

我が国の総人口は、2008 年から減少に転じ、2060 年には 8,674 万人にまで減少し、2100年には 5,000 万人を下回ると推計されている(図表Ⅱ-1)。また、急速な少子高齢化によ

り、1950年の時点では4.9%であった総人口に占める65歳以上の割合は、2060年に39.9%まで上昇する見通しとなっている。

人口減少や人口構成の変化により、社会保障政策や国土政策、産業政策といった行政運

営や、国民の経済活動に大きな影響を及ぼすことは避けられない状況にある。

図表 II-1 将来推計人口・65 歳以上人口の割合

(資料)国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」より作成。

8,320万人

12,806万人

8,674万人

4.9%

23.0%

39.9%

0.0%

5.0%

10.0%

15.0%

20.0%

25.0%

30.0%

35.0%

40.0%

45.0%

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

1950 60 70 80 90 2000 10 20 30 40 50 60

総人口 65歳以上人口割合

(万人)

(年)

Page 4: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

2

2. サービス産業の生産性向上の必要性

我が国では、全産業に占めるサービス産業の GDP、就業者のシェアが 7 割以上と非常

に高く、経済、雇用環境等において大きなウエイトを占めている(図表Ⅱ-12)。 人口減少及び労働力人口の減少は、モノやサービスを生産し供給する「サプライサイド」

への影響と、モノやサービスを国民が購入し消費する「デマンドサイド」の双方に大き

く影響する。 人口減少によるサービス需要の減少が生産の減少につながり、雇用の受け皿としての機

能が衰退する可能性がある。そのため、今後ますます進行する人口減少や高齢化に対応

したニーズに応え、労働生産性を高めていくことが求められている。

図表 II-2 経済活動別のGDP及び就業者数のシェア(2012 年)

(GDP) (就業者数)

(就業者数)

(資料)内閣府「サービス産業の生産性(平成 26 年 4 月)」

III.人口変化とサービス産業の生産性の維持に向けた着眼点

サービス産業は同時性、無形性の制約により、域外への市場拡大や、設備投資による自

動化が進みにくい。そのため、製造業と比べて生産性の伸びは低調に推移してきた。今後

総人口減少及び労働力人口の減少が進行するなか、サービス産業の生産性のさらなる低下

が危惧されている。本章では、人口変化のなかでサービス産業の生産性を維持・向上させ

るための観点について確認する。

1. 生産性の定義

本調査では、1年間の事業活動で得られた付加価値額と、従業者数を用いて以下のよう

に労働生産性を算出する。(本報告書では、労働生産性を単に「生産性」と示す場合があ

る)

労働生産性(円/人)付加価値額(円)

従業者数(人)

2. 生産性の構造

各事業者の労働生産性は、付加価値額の増大と投入労働力の減少の効果により決定され

るため、事業者ごとの取組によって労働生産性が変化する。

Page 5: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

3

しかし、周辺地域における消費者の集積や、供給者間の競合状況、地理的特性、施策等

によって、域内の事業者が共通して影響を受ける要素が存在すると考えられる。それらは

域内の事業者全体の生産性を増減させるため、地域による効果と考えることができるだろ

う。 さらには、我が国全体を 1 地域として捉えた場合、地域の効果は均され、業種ごとの特

性を把握しやすくなる。通常は業種ごとに事業構造が異なり、社会経済情勢から受ける影

響が異なってくる。したがって、事業者の生産性は、業種ごとにも受ける影響が異なる。 以上を整理すると、事業者の生産性は、「業種特性(業種ごとの全国平均値)」に加えて、

「面的生産性(地域効果)」と、「個別生産性(個別事業者の努力効果)」によって構成さ

れていると考えることができる。

図表 III-1 生産性の構造

本調査では、生産性の構成要素である、「業種特性」、「面的生産性」、「個別生産性」に

対する影響要因のうち以下に示すものを対象として調査、分析を行う。

図表 III-2 本調査の調査範囲と調査方法

地域

業種特性(全国平均)

面的生産性(地域効果)

個別生産性(個別事業者の努力効果)

生産性

企業

a

企業b

企業c

企業d

企業e

企業f

統計データ

統計データ

業種B業種A

業種特性(全国平均)

面的生産性(地域効果)

個別生産性(個別事業者の

努力効果)

• 人口

• 新陳代謝

• 副業比率

• 非正規雇用比率

• 事業所規模

本調査が対象とする、生産性の影響要因

• 売上拡大の取組(商圏拡大、多角化、高付加価値化 等)

• 効率化の取組(IT導入、事業プロセスの改善 等)

• 事業者間格差

• 域内の事業

調査方法

• 統計データ分析

• 統計データ分析

• アンケート調査

• ヒアリング調査

• 各事業者データ分析

• ヒアリング調査

Page 6: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

4

3. 面的生産性の着眼点

地域内の人口規模は、域内の事業者に共通して関わる事業環境である。そのため、今後

進展する人口減少、高齢化による生産年齢人口の変化は、先述の面的生産性に大きな影響

を与えると予想される。 人口減少と人口構成の変化は、それぞれ異なる課題を引き起こす。 サービス産業には域内市場産業が多く含まれるため、地域の人口減少は需要量(生産量)

の減少に直接つながる。そのため、総人口の減少に対しては、域外需要の取り込み、市場

拡大、事業多角化、サービスの高付加価値化等による売上拡大が必要な対策となる。 高齢化により生産年齢人口比率が低下することは、域内需要に対して必要な労働投入量

が確保できなくなることを意味する。そこで、対策として事業プロセスの改善や IT 導入、

人材の多能工化を通じた事業の効率化が必要になる。また、誰もが働きやすい環境を整え

ることで、労働力率を高める取組も重要である。

図表 III-3 人口減少と高齢化への対策

4. 個別生産性の着眼点

個別事業者の努力効果は、事業者間の生産性格差(個別生産性)として現れる。しかし、

統計データから利用可能な生産性のデータは、地域ごとに平均されており、事業者間の格

差を把握することはできない。そのため、これまでも事業者間の生産性格差は注目される

ことが多くなかった。 そこで本調査では、各事業者の生産性のデータを用いて、生産性の格差の分析を行う。

各事業所のデータを用いることで、生産性に影響を与える要因を統計データよりもクリア

に見出すこともできると考えられる。

5. 小括

人口減少、人口構成の変化といった、サービス産業の生産性に負の影響を与える展望が

見込まれる。サービス産業の生産性を維持、向上させるためには、業種ごとの特性を踏ま

えながら、地域、個別事業者が適切な取組を実施することが重要になる。

①総人口の減少

②生産年齢人口比率の低下 (高齢化)

域内需要の縮小 対策:売上拡大

需要に対する供給力の低下

労働生産性 =従業者数

付加価値額=

対策:事業の効率化

労働投入量

生産量

Page 7: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

5

IV.サービス産業の生産性に係るデータ分析

1. サービス産業の生産性と産業規模

サービス産業の生産性は、業種ごとに大きな差がみられる。特に生産性が低いのは、大

分類業種では「宿泊業,飲食サービス業」であり、全国平均が 200 万円/人を下回ってい

る。中分類および小分類業種についてみると、同一大分類に属す業種であっても、業種に

よって生産性に差がある場合がある。 サービス産業の産業規模は、大分類についてみると、「卸売業,小売業」、「医療,福祉」

の規模が大きくなっている。中分類でみると、大分類で同じ業種として扱われる「卸売業」

と「小売業」の生産性に格差があることがみてとれる。同様に、大分類「生活関連サービ

ス業」に含まれる中分類業種は格差が大きくなっている。

図表 IV-1 産業規模(事業従事者シェア)と労働生産性(中分類)

(資料)総務省「平成 24 年経済センサス-活動調査」より作成。

情報サービス業

道路貨物運送業

郵便業(

信書便事業を含む)

道路旅客運送業

運輸に附帯するサービス業

飲食料品卸売業

その他の卸売業

各種商品小売業

織物・衣服・身の回り品小売業

飲食料品

小売業

機械器具小売業

その他の小売業

無店舗小売業

保険業

不動産賃貸業・管理業

技術サービス業

(

他に分類されないもの)

飲食店

洗濯・理容・美容・浴場業

娯楽業

宿泊業

持ち帰り・配達飲食サービス業

その他の生活関連サービス業

学校教育

その他の教育,学習支援業

医療業

社会保険・社会福祉・介護事業

職業紹介・労働者派遣業

宗教

機械器具卸売業

その他の事業サービス業

(%)

(万円/人)

産業規模(事業従事者シェア)

Page 8: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

6

2. 業種特性についての分析結果

業種ごとの特性を明らかにするために、統計データを用いて、業種別に整理を行った。

以下にその概要を示す。

図表 IV-2 業種特性の分析結果概要(中分類)

生産性

産業規模

事業所規模と

生産性の関係

新陳代謝

副業比率

非正規雇用比率

1 情報サービス業 高 中 中 大 中 低2 道路旅客運送業 低 小 大 中 中 低3 道路貨物運送業 中 中 小 中 低 中4 運輸に附帯するサービス業 中 小 小 大 中 中5 郵便業(信書便事業を含む) 低 小 小 小 低 高6 飲食料品卸売業 高 中 大 中 中 中7 機械器具卸売業 高 中 中 中 中 低8 その他の卸売業 高 中 中 中 中 低9 各種商品小売業 低 中 小 中 低 高

10 織物・衣服・身の回り品小売業 低 中 小 大 低 高11 飲食料品小売業 低 大 小 大 低 高12 機械器具小売業 中 中 大 中 中 低13 その他の小売業 低 大 小 大 中 高14 無店舗小売業 中 小 大 中 低 中15 保険業(保険媒介代理業,保険サービス業を含む) 高 中 大 大 低 低16 不動産賃貸業・管理業 高 中 小 中 中 中17 技術サービス業(他に分類されないもの) 中 中 中 中 高 低18 宿泊業 低 中 中 中 中 高19 飲食店 低 大 小 大 中 高20 持ち帰り・配達飲食サービス業 低 小 小 大 中 高21 洗濯・理容・美容・浴場業 低 中 小 中 高 中22 その他の生活関連サービス業 低 小 小 大 高 高23 娯楽業 中 中 小 大 中 高24 学校教育 中 中 小 小 高 中25 その他の教育,学習支援業 低 中 大 大 高 高26 医療業 中 大 中 中 低 中27 社会保険・社会福祉・介護事業 中 大 小 中 低 中28 職業紹介・労働者派遣業 中 小 小 大 中 高29 その他の事業サービス業 低 中 小 中 高 高30 宗教 低 小 小 小 高 中

業種

Page 9: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

7

3. 面的生産性(地域効果)についての分析結果

人口密度と生産性の関係を以下に示す。業種によって傾向が大きく異なることが分かっ

た。程度差はあるが、多くの業種は、人口密度と生産性に正の関係があることがみてとれ

る。一方、人口密度と生産性の関係が弱い業種としては「製造業」、「情報通信業」、「宿泊

業,飲食サービス業」、「医療,福祉」、「複合サービス業」があげられる。これらの業種で

は、生産性は人口の集積に影響を受けにくいため、過疎化が進んだ地域においても生産性

を維持、向上する余地が高いと考えられる。 また、以下のグラフにおいて、エラーバーの大きさは生産性の地域間のばらつきを示し

ている。生産性のばらつきの大きさは業種間で大きく異なっていることが分かり、ばらつ

きが大きい業種ほど格差が大きく、生産性の向上余地が高いと考えられる。 人口密度が高いほど生産性が高くなるメカニズムは、あまり単純ではないと考えられる。

人口密度が高いほど増える域内の顧客獲得機会と、同様に増加する競合者のバランスに依

存する。また、人口密度が高い地域は総人口も多いことが想定され、人口密度が高いほど

大規模企業が立地しており、その結果業務の標準化や設備投資が生産性を高めている可能

性も考えられる。

図表 IV-3 人口密度と労働生産性の関係(大分類、全市区町村)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

農林漁業(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

建設業(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

製造業(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

電気・ガス・熱供給・水道業(万円/人)

(人/㎢)

Page 10: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

8

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

情報通信業(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

運輸業,郵便業(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

卸売業,小売業(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

金融業,保険業(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

不動産業,物品賃貸業(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

学術研究, 専門・技術サービス業(万円/人)

(人/㎢)

Page 11: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

9

(資料)総務省「平成 24 年経済センサス-活動調査」(生産性データ)、総務省「平成 22 年国勢調査」(人口デ

ータ)、国土交通省国土地理院「平成 25 年全国都道府県市区町村別面積調」(面積データ)より作成。 (注1)「鉱業,採石業,砂利採取業」はデータ数が少ないため省略した。 (注2)「金融業,保険業」、「医療,福祉」は生産性が最も高い地域が他を圧倒している。極端に高い値が存

在することで、エラーバーの大きさが大きくなっている箇所が存在する。「金融業,保険業」では、1位がさいたま市南区(13,861 万円/人)、2 位が横浜市港北区(5,813 万円/人)、3 位がさいたま市

中央区(4,326 万円/人)となっている。「医療,福祉」では、1 位が東京都千代田区(13,385 万円

/人)、2 位が福島県安達郡大玉村(1,413 万円/人)、3 位が愛知県刈谷市(1,239 万円/人)となっ

ている。

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

宿泊業,飲食サービス業(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

生活関連サービス業,娯楽業(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

教育,学習支援業(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

医療,福祉(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

複合サービス事業(万円/人)

(人/㎢)

-200

-100

0

100

200

300

400

500

600

労働生産性

人口密度(可住地面積あたり)

サービス業(他に分類されないもの)(万円/人)

(人/㎢)

Page 12: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

10

4. 個別生産性(個別事業者の努力効果)についての分析結果

平成 24 年経済センサス-事業所統計の個票データ(卸売業・小売業)を用いて、「事業

者間の生産性のばらつきの把握」「生産性が高い事業所の特性の分析」を実施した。

事業所の生産性格差の分析 (1)

中・小分類ごとに生産性の分布を確認すると、業種によって分布の形状(生産性の平均

値、生産性のばらつき)が異なることが確認できた。「機械器具卸売業」など、業種によ

っては生産性の分布が正規分布に近い業種が存在するが、「その他の小売業」など、多く

の業種では、生産性が低い事業所数が多くなっており、分布に偏りが生じている。一般的

に事業所の規模が小さいと生産性が低いと考えられ、事業所数は小規模なものほど多いこ

とから、分布の偏りが生じていると推測される。

図表 IV-4 卸売業・小売業の生産性の分布(中分類)

(資料)総務省「平成 24 年経済センサス-活動調査」 個票データより作成。 (注) 縦軸は事業所数。枠外の数字は、全事業所データのうち、労働生産性が-500~2,000 万円/人の範

囲に収まるデータの割合。

飲食料品卸売業

労働生産性(万円/人)

-500 0 500 1000 1500 2000

0

2000

4000

6000

8000

10000

( 97.3 %)

機械器具卸売業

労働生産性(万円/人)

-500 0 500 1000 1500 2000

0

2000

4000

6000

8000

10000

( 97.5 %)

その他の卸売業

労働生産性(万円/人)

-500 0 500 1000 1500 2000

0

2000

4000

6000

8000

( 97.3 %)

各種商品小売業

労働生産性(万円/人)

-500 0 500 1000 1500 2000

0

200

400

600

800

( 99.5 %)

その他の小売業

労働生産性(万円/人)

-500 0 500 1000 1500 2000

0

20000

40000

60000

( 99.4 %)

無店舗小売業

労働生産性(万円/人)

-500 0 500 1000 1500 2000

0

2000

4000

6000

8000

( 98.6 %)

織物・衣服・身の回り品小売業

労働生産性(万円/人)

-500 0 500 1000 1500 2000

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

( 99.4 %)

飲食料品小売業

労働生産性(万円/人)

-500 0 500 1000 1500 2000

0

20000

40000

60000

80000

( 99.5 %)

機械器具小売業

労働生産性(万円/人)

-500 0 500 1000 1500 2000

0

5000

10000

15000

( 99.1 %)

Page 13: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

11

生産性に影響を与える要因の分析 (2)

平成 24 年経済センサス-事業所統計の個票データ(卸売業・小売業)を用いて「営業時

間」「事業所規模」「非正規雇用比率」「事業所開設からの経過年数」「設備投資の有無」「売

上高に占める電子商取引の割合」の各項目と事業所別の生産性との関係性の分析を行った。

概要版では、例として、事業所規模について結果を示す。 業所規模と生産性の関係を確認すると、生産性が低い事業所ほど、事業所規模が小さい

傾向がある。しかし、グループ C、D 間では差がない、もしくは逆の傾向がみられる業種

も多くある。つまり、事業所が大規模になると、ある程度まで生産性が高まるが、さらな

る高生産性を達成するには、事業所規模の効果だけでない取組が必要になることを示唆し

ている。高生産性グループ(グループ D)にも、多数の零細事業所が属していることから、

小規模事業所も取組次第で高生産性を狙うことができる。ただし、事業所規模が生産性に

与える影響の程度は業種別に違いがあるため、小規模事業者の生産性向上幅は業種別に異

なると考えられる。

図表 IV-1 生産性と事業所規模の関係(中分類)

(資料)総務省「平成 24 年経済センサス-活動調査」 個票データより作成。

(注) 横軸: 生産性の低い方から事業所を 25%ずつ A、B、C、D の4グループに分けた。

A B C D

その他の小売業

0

20

40

60

80

100

人以上50人30-49人20-29

人10-19人5-9人1-4

( N = 328955 )

A B C D

無店舗小売業

0

20

40

60

80

100

人以上50人30-49人20-29

人10-19人5-9人1-4

( N = 31707 )

A B C D

飲食料品卸売業

0

20

40

60

80

100

人以上50人30-49人20-29

人10-19人5-9人1-4

( N = 63603 )

A B C D

機械器具卸売業

0

20

40

60

80

100

人以上50人30-49人20-29

人10-19人5-9人1-4

( N = 80782 )

A B C D

その他の卸売業

0

20

40

60

80

100

人以上50人30-49人20-29

人10-19人5-9人1-4

( N = 72398 )

A B C D

各種商品小売業

0

20

40

60

80

100

人以上50人30-49人20-29

人10-19人5-9人1-4

( N = 2781 )

A B C D

織物・衣服・身の回り品小売業

0

20

40

60

80

100

人以上50人30-49人20-29

人10-19人5-9人1-4

( N = 123217 )

A B C D

飲食料品小売業

0

20

40

60

80

100

人以上50人30-49人20-29

人10-19人5-9人1-4

( N = 275777 )

A B C D

機械器具小売業

0

20

40

60

80

100

人以上50人30-49人20-29

人10-19人5-9人1-4

( N = 114995 )

(%)

割合

(%)

割合

(%)

割合

(%)

割合

(%)

割合

(%)

割合

(%)

割合

(%)

割合

(%)

割合

Page 14: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

12

5. 小括

本調査による統計データの分析により、業種ごとに種々の特性の違いのほか、人口と売

上高の関係や、人口密度と生産性の関係を確認することで、人口減少の影響を受けやすい

業種、人口減少局面でも生産性向上が期待される業種が明らかとなった。

図表 IV-2 統計データ、各事業者データの分析内容

V.近畿地域におけるサービス産業事業者の生産性向上に関するアンケート調査 1. アンケート調査の概要

・調査対象:近畿経済産業局管内(福井県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、

和歌山県)のサービス産業事業者(非製造業)3,498 事業者。 ・調査方法:郵送で配布し、ファクシミリにより回収。 ・調査時期:平成 28 年 2 月 4 日(木)~2 月 17 日(水) ・回収数:

発送数 回収数 回収率

3,498 587 16.8%

2. 調査結果のまとめ(業種特性)

市場環境の見込みや経営課題を業種別に比較すると、業種ごとに異なった傾向が見

られた。 一部の小売と旅館・ホテル、洗濯・理容・浴場、医療では市場規模が拡大すると見

込むと同時に経営課題として人材確保を挙げている。他方、市場が縮小すると答えた

企業の割合が高い、卸売業、小売業の一部、不動産業、道路貨物運送などの業種にお

いては人材不足の課題は相対的に少ない一方で、新規顧客の開拓や人材の育成が課題

となっている。

業種特性(全国平均)

面的生産性(地域効果)

個別生産性(個別事業者の

努力効果)

• 企業間格差の把握(卸・小売業)• 高生産性事業者の特徴の分析(卸・小売業)

• 人口と売上高の関係• 人口密度と生産性の関係

• 現状把握:生産性、産業規模、生産性の推移

• 生産性に与える影響の分析:事業所規模、新陳代謝、副業比率、非正規雇用比率

Page 15: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

13

図表 V-1 業種別 問 1~問 3

業種 市場規模の見込み 競争環境の見込み 経営課題

卸売 卸売(医薬品・食品・機械等) 縮小>拡大 激化>変化なし 新規顧客

卸売(金属・木材・紙等) 縮小>拡大 激化>変化なし 新規顧客

小売

各種商品小売 縮小>拡大 激化>変化なし 既存顧客

織物・衣服小売 拡大>縮小 激化>変化なし 人材確保

飲食料品小売 拡大>縮小 激化>変化なし 人材確保

飲食店 縮小>拡大 激化>変化なし 人材確保

自動車自転車小売 縮小>拡大 激化>変化なし 既存顧客

家具・什器等小売 縮小>拡大 激化>変化なし 新規顧客

その他の小売 縮小>拡大 激化>変化なし 人材確保

不動産 不動産 縮小>拡大 激化>変化なし 人材育成

運輸

道路旅客運送 縮小>拡大 激化>変化なし -

道路貨物運送 縮小>拡大 激化>変化なし 新規顧客

倉庫 - - -

運輸サービス 拡大>縮小 激化>変化なし 新規顧客

物品賃貸 物品賃貸 拡大>縮小 激化>変化なし 新規顧客

宿泊業 旅館・ホテル 拡大>縮小 激化>変化なし 人材確保

サービス

家事サービス - - -

洗濯・理容・浴場 拡大>縮小 激化>変化なし 人材確保

他の個人サービス 拡大>縮小 激化>変化なし 新規顧客

映画・ビデオ制作 - - -

娯楽 - - -

放送 - - 新規顧客

自動車整備駐車場 拡大>縮小 激化>変化なし 新規顧客

その他の修理 - - -

協同組合 縮小>拡大 激化>変化なし 既存顧客

広告、情報サービス 拡大>縮小 激化>変化なし 新規顧客

他の事業サービス 縮小>拡大 激化>変化なし 新規顧客

専門サービス 縮小=拡大 激化>変化なし 人材確保

医療福祉 医療 拡大>縮小 激化>変化なし 人材確保

保健衛生廃棄物処理 - - -

Page 16: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

14

図表 V-2 業種別 問 4

業種

正規従業員

充足度

非正規従業員

充足度

採用活動

の状況

卸売 卸売(医薬品・食品・機械等) 適正>不足 適正>不足 適材不足

卸売(金属・木材・紙等) 適正>不足 適正>不足 -

小売

各種商品小売 適正>不足 適正>不足 希望者不足

織物・衣服小売 適正>不足 適正=不足 希望者不足

飲食料品小売 不足>適正 不足>適正 希望者不足

飲食店 不足>適正 不足>適正 希望者不足

自動車自転車小売 適正=不足 適正>不足 希望者不足

家具・什器等小売 適正=不足 適正>不足 希望者不足

その他の小売 適正>不足 適正>不足 希望者不足

不動産 不動産 適正>不足 適正>不足 -

運輸

道路旅客運送 - - -

道路貨物運送 不足>適正 適正>不足 希望者不足

倉庫 - - -

運輸サービス 適正>不足 適正>不足 -

物品賃貸 物品賃貸 適正>不足 - -

宿泊業 旅館・ホテル 不足>適正 不足>適正 希望者不足

サービス

家事サービス - - -

洗濯・理容・浴場 適正>不足 -

他の個人サービス 不足>適正 不足>適正 -

映画・ビデオ制作 - - -

娯楽 - - -

放送 適正>不足 - -

自動車整備駐車場 適正>不足 適正>不足 -

その他の修理 - - -

協同組合 適正>不足 適正>不足 -

広告、情報サービス 適正>不足 適正>不足 適材不足

他の事業サービス 適正>不足 適正>不足 希望者不足

専門サービス 不足>適正 適正>不足 希望者不足

医療福祉 医療 適正>不足 適正>不足 -

保健衛生廃棄物処理 - - -

Page 17: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

15

図表 V-3 業種別 問 5

Page 18: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

16

VI.ヒアリング調査

近畿管内の事業者を対象に、生産性向上の取組についてヒアリング調査を実施した。 ヒアリング調査では、中小運送事業者が大手運送業者等から過疎地への2次配送を請け負

うことにより、取引先の配送効率の改善にも大きく寄与している事例や、国内専用ECサイトの海

外発送手続を請け負うことにより、取引先の海外受注に貢献する事例など、当該事業者の事業

活動が自身の生産性を高めるだけではなく、他の事業者の生産性向上に寄与するような特

徴的な事業活動(※本調査では「面的生産性の改善」と表現している)の存在が確認でき

た。 また、サービスの海外展開やインバウンドの取り込み、新たな業態への挑戦、簡易に導

入可能な ICT ソリューションの活用など、生産性向上の取組により事業活動を活性化さ

せる事例が確認できた。 いずれの事例も、人口減少社会にあって、今後サービス産業事業者が生産性向上に向け

取り組むべき方向性を示唆するものといえる。

Page 19: 平成27年度サービス産業事業者の 生産性向上に係 …...サスなど)、企業データ等の分析から、生産性向上に向けて取り組むべき課題を明確化し、

17

VII.総括

1. サービス産業の生産性向上に向けた新たな施策展開の必要性

我が国において、サービス産業の GDP、就業者のシェアは 7 割以上と大きく、活力ある日本経

済、地域経済を作り上げていくには、サービス産業の活性化が不可欠である。一方、国内の人口

はすでに減少局面に転じており、人手に依存するところが大きいサービス産業においては、生産

性の向上が他の産業以上に重要となる。

このようにサービス産業の生産性向上は、我が国全体の喫緊の課題であり、従前以上の伸び

率で生産性を向上させるには、より効果的な施策展開に加えて、新たな視点での支援施策展開

が求められる。本調査では今後の施策の方向性として大きく以下の2点を示す。

2. 個別事業者・業種特性に対する施策展開

本調査では、商業統計(卸売業・小売業の全事業所)個票データを用いて事業所の生産性を

分析した結果、業種によって生産性の平均値、ばらつきが異なることを確認した。理論上、業種

内における企業間の生産性の格差(ばらつき)が大きいほど、低生産性企業の生産性を業種平

均程度に向上させた場合に、その底上げ効果が大きくなる。

また同様に、サービス産業全体(大分類)の労働生産性の引き上げについては、より生産性が

低く規模(従業員数、企業数、付加価値額総額等)が大きい業種(中分類・小分類)の生産性を

改善することが、サービス産業全体の生産性向上に寄与する余地が大きいと考えられる。

また、アンケート調査結果からは、事業規模や業績とのクロス分析により様々な傾向が浮き彫り

になっている。

このように、個別生産性や業種特性の改善にあたっては、より詳細なデータ分析に基づくきめ細

かい施策展開や政策資源投入対象の絞り込みが有用と考えられる。

3. 「面的生産性」の改善に着目した施策展開

本調査では、統計データ分析、企業ヒアリング等の調査を実施した。これら調査結果から「面的

生産性」に影響を与える要素が明確になっている。

統計データ分析結果からは、人口密度と生産性に相関が高い業種と、相関の低い業種の存在

が明らかになった。生産性が地域の人口密度に依存しない業種(相関の低い業種)の事業者によ

る事業活動の存続・拡充については、過疎化が進行する地域や、今後の人口減少局面において

面的生産性に寄与する要素と考えられる。

ヒアリング調査からは、当該事業者の事業活動が、他の事業者の生産性の向上や、地域全体の

生産性の向上に資する事業者の存在が明らかになった。新たな事業者間取引関係構築により地

域内全体の生産性を改善する事業者の取組は、注目に値する。

こうした自社の生産性を高めながら、地域全体の生産性向上に裨益する事業活動の推進は、

政策資源の投入先として高い効果を期待できるものである。

図表Ⅸ-1 生産性の構造(再掲)

地域

業種特性(全国平均)

面的生産性(地域効果)

個別生産性(個別事業者の努力効果)

生産性

企業

a

企業b

企業c

企業d

企業e

企業f

統計データ

統計データ

業種B業種A