平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

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末木 (和光大学) インターネットにおける自殺予防の実践と その可能性

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Health & Medicine


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Page 1: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

末木 新 (和光大学)

インターネットにおける自殺予防の実践とその可能性

Page 2: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

Agenda

先行研究:インターネットと自殺

夜回り2.0は若者に届くか?

実践:夜回り2.0

3

2

1

Page 3: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

東京杉並に住む女性が宅配便で届いた青酸カリを飲んで自殺。送り主も青酸カリを服毒して自殺。

2002年10月に大阪から家出した32歳女性がメール相手の30歳男性と東京・練馬の男性宅であるマンションで練炭をたいて心中。以後,断続的に類似事件が現在まで続いている。

2006年3月,2chメンヘル板にて「【ムトウハップ】硫化水素で逝こう!【サンポール】」スレがたつ。2008年にはTVでの報道も拍車をかけ,群発自殺化する。 2008年の自殺者数は1000人超。

自殺サイトにまつわる事件

1998年

Dr.キリコ事件

2007年頃~

硫化水素自殺

2000年代前半

ネット心中

Page 4: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

自殺サイトの利用動機

自殺 予防的

自殺 誘発的

• 効果的な自殺方法を探す

• ネット心中相手を探す

• 共感的やりとり

• メンタルヘルスの相談

※ Sueki, et al. (2012). Suicide bulletin board systems comparison

between Japan and Germany. Death Studies, 36 (6), 565-580.

Page 5: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

縦断調査から分かったこと

※ Sueki, H. (2013). The effect of suicide-related Internet use on

users’ mental health: A longitudinal study. Crisis, 34 (5), 348-353.

• 自殺に関するネット利用(例:自殺方法を見る)は、自殺念慮・抑うつ/不安感を悪化させる

• 自殺念慮を低減する効果を持つネット利用はなかった

• 850人のネット利用者に対する2波のパネル調査

調査デザイン

結果

Page 6: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

現時点での私なりの結論

• 確かにポジティブな面もあるが、ネガティブな影響も大きい

• 利用者間での共感的やりとりだけでは足りない

→ ネットの外部/対面でのつながり、

専門的援助も必要ではないか?

ネットは自殺を防ぐ? 防がない?

Page 7: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

※ 詳細はこの本を参照

末木新 (2013). インターネットは自殺を防げるか

東京大学出版会

• 自殺率と自殺関連語の検索ボリュームの間に時系列的な関連がある (Yang et al, 2011; McCarthy, 2009)

• 自殺企図歴と自殺関連語の検索歴の間には関連がある

(Sueki, 2011)

• 自殺サイト利用者の約6割が1回以上の自殺企図歴を有する

(Sueki et al, 2012)

インターネットは自殺予防の最前線

Page 8: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

Agenda

先行研究:インターネットと自殺

夜回り2.0は若者に届くか?

実践:夜回り2.0

3

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1

Page 9: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

自殺に関するウェブサイトの例

Page 10: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

自殺に関する検索行動の例

Page 11: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

「死にたい」の検索結果

Page 12: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

リンク先の画面 (東京の場合)

このページは援助要請行動を引き起こすだろうか?

Page 13: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

アセスメント & 援助要請の促進

(例: 精神科に対する偏見の低減)

• 精神科の受診

• 法律・経済問題の相談

インターネットを使った自殺予防を 改善するために

検索連動型

広告

援助要請

行動

インターネットゲートキーパー

Page 14: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

「夜回り2.0」の概要

Step.1

検索広告 Step.2

ウェブサイトへ

Step.3 インターネット・ゲートキーパー

Group name: OVA

Representative: Jiro ITO (Social Worker) 相談者

死にたいです...

助けて下さい...

どうされましたか?

1クリックで

メーラー起動!

Page 15: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

活動の概要

• 期間: 2013年7月14日~10月31日(110日間)

• 広告費: 16,820円

• サイト訪問者: 3,356人(アドワーズからのみ)

• 平均 CPC(1クリックあたりの単価): 5円

• 相談者数:123名

• 相談率:3.7%(=123人÷3,356人)

• 自殺ハイリスク相談者獲得単価:

約137円(=16,820円÷123人)

Page 16: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

相談者の属性①

• 年齢:

n Min Max Mean SD 54 12.5 49.0 23.1 8.6

• 性別:

男 女 MTF 不明 11 61 1 33

※ これ以降は、フィルタリングで返信できなかった者等を除外した106

名が分析対象

Page 17: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

相談者の属性②

割合

精神科・心療内科受診歴あり 16%以上

自殺念慮あり 65.1%以上

自殺企図歴あり 11.3%以上

初回メールでの自殺念慮の表明 60.4%

相談継続率 66.0%

Page 18: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

メールのやりとりの量

n Min Max Mean SD

初回文字数 106 0 2947.0 219.1 399.4

全体文字数 106 0 10985.0 2205.3 2476.4

総相談メール数 106 1.0 25.0 4.5 5.1

総メール数 106 2.0 48.0 8.6 9.6

Page 19: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

活動の成果

• 相談成功率: 20.7%(=22÷106人)

■「成功」の定義

1. これまでつながっていなかった新たな援助資源とつながった(援助要請行動の生起)

2. 感情のポジティブな変化に関する言及

※援助要請意図の生起まで含めると26.4%が成功に

Page 20: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

Agenda

先行研究:インターネットと自殺

夜回り2.0は若者に届くか?

実践:夜回り2.0

3

2

1

Page 21: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

若者の支援は難しい?①

0 500

1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000

30歳未満 30歳以上 30歳未満 30歳以上

初回文字数 全体文字数

文字数

統計的

有意差なし

(p=0.485)

統計的

有意差なし

(p=0.569)

Page 22: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

若者の支援は難しい?②

成功率

(%)

統計的

有意差なし

(p=0.754)

0

10

20

30

40

50

30歳未満 30歳以上

Page 23: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

若年層相談者の特徴

• 年齢に関する情報が取得できる程度にまでつながらない相談者が若年層の可能性は?

限界

特徴

• 有意差が出た項目は、精神科・心療内科受診歴のみ

• インターネットは若者のものではない?

Page 24: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

ここだけの話(?)

特定された個人情報と危機介入と

倫理的問題と・・・

Page 25: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

全体のまとめと今後の課題

• 効果の検証

• より効果的なアウトリーチ方法の開発

今後の課題

まとめ

• インターネットは自殺ハイリスク者を特定することを可能としている

• ゲートキーパー活動を通じて、彼ら/彼女らへの自殺予防活動を展開し、手ごたえを得た

Page 26: 平成25年度第2回メディアカンファレンス 末木新発表資料

ご清聴ありがとうございました