2020 数学演習Ⅰ mathematics with exercise i 准教授,喜多村 ......1 2020 年度...

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1 2020 年度 数学演習Ⅰ Mathematics with Exercise I 担当:山崎徹 教授,高野敦 准教授,喜多村竜太 助教,楠山純平 助教 【到達目標】 大学で学修するためには,大きく次の 2 つの点が重要である. 1) 学生ということを認識した学修 独習 高校生までは生徒と呼ばれ,大学生は学生と呼ばれる.「生徒」は教えてもらう立場,「学生」は自ら 学ぶ・研究する立場である.したがって,自分が意識し,自分で学ぶこと,その方法を身につけるこ とは重要である. 2) 新しいことを見出す学修 研究 生徒と学生の違いを別の視点から見ると,生徒は既知のことを学ぶ立場,学生は新たなことを見出し 確認する立場,とも言える.講義などで既存の事柄を教員から教わるだけでなく,どのようにその事 柄が見出されてきたのかの過程を意識することが重要である. そこで,本演習においては,1)の「独習」を意識し,学生が自分自身でやるしか身につけられない数学 の基礎およびその学修方法の取得を目指す. すなわち,本演習の到達目標は,受講生が,高校数学および大学数学の各種問題について, 独力で例題を理解すること,② 例題を参考に類題を解くこと, 類題を制限時間内に独力で解けるようになること,などを通じて, 機械工学を学ぶ上で強力な武器となる「数学」の基礎力および独習力を身につけることである. 【授業内容】 高校数学および大学数学を題材に,例題とその解答から内容の意味を自力で解釈し,その応用として類題 に取り組む.教員は教えることはせず,学生が自身で学修する,いわゆる,ドリル形式で演習を進める. 【各章の内容】 関数(三角関数・指数関数・対数関数)(5/11) 関数(三角関数・指数関数・対数関数)に関する例題と類題を解く. 方程式・不等式(その1)(5/18) 方程式・不等式に関する例題と類題を解く. 方程式・不等式(その2)(5/25) 方程式・不等式について例題と類題を解く. 微分・偏微分(その1):基本的な微分演算(6/1) 基本的な微分演算に関する例題と類題を解く. 微分・偏微分(その2):微分演算とその応用(6/8) 微分演算およびその応用に関する例題と類題を解く. 微分・偏微分(その3):高階微分/偏微分(6/15) 高階微分,偏微分に関する例題と類題を解く. 微分・偏微分(その4):Taylor 級数・Maclaurin 級数(6/22) Taylor 級数・Maclaurin 級数に関する例題と類題を解く. 積分・多重積分(その1)(6/29) 積分・多重積分に関する例題と類題を解く. 積分・多重積分(その2)(7/6) 積分・多重積分について例題と類題を解く.

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Page 1: 2020 数学演習Ⅰ Mathematics with Exercise I 准教授,喜多村 ......1 2020 年度 数学演習Ⅰ Mathematics with Exercise I 担当:山崎徹 教授,高野敦 准教授,喜多村竜太

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2020 年度 数学演習Ⅰ Mathematics with Exercise I

担当:山崎徹 教授,高野敦 准教授,喜多村竜太 助教,楠山純平 助教

【到達目標】

大学で学修するためには,大きく次の 2 つの点が重要である.

1) 学生ということを認識した学修 独習

高校生までは生徒と呼ばれ,大学生は学生と呼ばれる.「生徒」は教えてもらう立場,「学生」は自ら

学ぶ・研究する立場である.したがって,自分が意識し,自分で学ぶこと,その方法を身につけるこ

とは重要である.

2) 新しいことを見出す学修 研究

生徒と学生の違いを別の視点から見ると,生徒は既知のことを学ぶ立場,学生は新たなことを見出し

確認する立場,とも言える.講義などで既存の事柄を教員から教わるだけでなく,どのようにその事

柄が見出されてきたのかの過程を意識することが重要である.

そこで,本演習においては,1)の「独習」を意識し,学生が自分自身でやるしか身につけられない数学

の基礎およびその学修方法の取得を目指す.

すなわち,本演習の到達目標は,受講生が,高校数学および大学数学の各種問題について,

① 独力で例題を理解すること,② 例題を参考に類題を解くこと,

③ 類題を制限時間内に独力で解けるようになること,などを通じて,

機械工学を学ぶ上で強力な武器となる「数学」の基礎力および独習力を身につけることである.

【授業内容】

高校数学および大学数学を題材に,例題とその解答から内容の意味を自力で解釈し,その応用として類題

に取り組む.教員は教えることはせず,学生が自身で学修する,いわゆる,ドリル形式で演習を進める.

【各章の内容】

1 関数(三角関数・指数関数・対数関数)(5/11)

関数(三角関数・指数関数・対数関数)に関する例題と類題を解く.

2 方程式・不等式(その1)(5/18)

方程式・不等式に関する例題と類題を解く.

3 方程式・不等式(その 2)(5/25)

方程式・不等式について例題と類題を解く.

4 微分・偏微分(その1):基本的な微分演算(6/1)

基本的な微分演算に関する例題と類題を解く.

5 微分・偏微分(その2):微分演算とその応用(6/8)

微分演算およびその応用に関する例題と類題を解く.

6 微分・偏微分(その3):高階微分/偏微分(6/15)

高階微分,偏微分に関する例題と類題を解く.

7 微分・偏微分(その4):Taylor 級数・Maclaurin 級数(6/22)

Taylor 級数・Maclaurin 級数に関する例題と類題を解く.

8 積分・多重積分(その1)(6/29)

積分・多重積分に関する例題と類題を解く.

9 積分・多重積分(その2)(7/6)

積分・多重積分について例題と類題を解く.

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10 積分・多重積分(その3)(7/13)

積分・多重積分に関する例題と類題を解く.

11 積分・多重積分(その4)(7/20)

積分・多重積分に関する例題と類題を解く.

12 Fourier 級数(7/27)

Fourier 級数に関する例題と類題を解く.

【授業運営】

演習の進め方

✓ 高校数学および大学数学に関する例題を読み,原則,自力で理解し,自力で類題を解く.

✓ 教員は,演習内容などに関わる事柄に関する講釈・コメントを 20分程度行う.

(Zoom 使用可能になり次第)

この資料は DotCampus にアップロードする.

✓ 枠内に記載の基本的な公式など,どのように導出されたかを考えることが望ましい.

これらについての質問は制約しない.

演習のやりかた

✓ テキストに従って,各自で演習を進める.そのため,DotCampus の「数学演習Ⅰ」からテキス

トをダウンロードする.

✓ B5 サイズのノート(ルーズリーフなど分離するものは不可)に解答する.

✓ ノートの表紙に,「学籍番号・氏名・クラス・郵便番号・住所・メールアドレス」を記載する.

✓ 全ての回の例題・類題・小テスト問題をノートに解くこと.

テスト

✓ 各章の小テスト問題を Google フォームにて解答する.

✓ 解答期限:原則として次の章に関する授業日前日(1週間)

例;第1章「関数」の小テスト問題の解答期限は5月17日

第7章「微分・偏微分(その4):Taylor 級数・Maclaurin 級数」の解答期限は6月28日

✓ 第12章の小テスト問題の解答期限は8月1日とする.

✓ ネットワークの不調、PC の故障等,やむを得ない事態が生じ解答ができない場合は個別に相談す

ること.

ノート提出

✓ 全ての例題,類題,小テスト問題を解いた学生は郵送で大学にノートを送付する.この際,Google

フォームのアンケートで郵送した旨を教員に報告する.

万が一,郵送に手違いが発生した場合を考慮して,クリックポストや配達証明の使用を推奨する.

クリックポスト:https://www.post.japanpost.jp/service/clickpost/

配達証明:https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/haitatsu/index.html

✓ 郵送宛先

〒221-8686 横浜市神奈川区六角橋 3-27-1 神奈川大学工学部機械工学科

A 組:喜多村竜太,B 組:楠山純平 TEL:045-481-5661

✓ 提出期限

2020年8月1日まで(消印有効) ★未提出の場合,単位は与えられない

期限内に提出しても,解答が十分になされていない場合,単位は与えられない.

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【評価方法】

以下により最終評価を行う.

1) 提出期限までにノートを提出していること: 60点

2) 各章の小テスト問題の解答に応じて配点する:40点

3) 欠席回数が3回以内であること.遅刻は3回で1回の欠席とみなす.(Zoom 使用可能時)

4) 小テスト未解答が3回以内であること.

【オフィスアワー】

質問などは下記メールで受け付ける.件名を「数学演習:質問」とすること.本文に学籍番号と氏名を

必ず記載すること.

A 組 山崎 徹 教授 [email protected]

喜多村 竜太 助教 [email protected]

B 組 高野 敦 准教授 [email protected]

楠山 純平 助教 [email protected]

【使用書】

なし.各自,参考書などを参照すること.

【参考書】

例えば,つぎのようなものが挙げられる.各自,好みの参考書を探し,持参されたい.

○ 高等学校などで使用していた教科書. ▶ 使い慣れたものが一番.検定教科書には誤記がほぼない.

○ 『チャート式 基礎と演習 数学Ⅲ』,数研出版.▶ 通称,白チャート.数Ⅲの微積分初学者向け.

○ 『基礎からのシグマベスト これでわかる数学Ⅲ』,文英堂.▶ 数Ⅲの微積分初学者向け.

○ 現在受講している「微分積分学」「幾何学」などの教科書. ▶ 使い慣れたものが一番.

○ 『機械工学のための数学』,日本機械学会,丸善出版. ▶ 機械工学で必要な数学が網羅されている.

○ 『工業数学』,ワイリー(富久泰明 訳),ブレイン図書出版. ▶ 古典的名著.

○ 『工学のための力学』,ベアーほか(長谷川節 訳),ブレイン図書出版. ▶ 古典的名著.

○ 『理工系の数学入門コース』,岩波書店. ▶ 代表的な数学の分野が網羅されている.

○ 『数学:物理を学び楽しむために』,田崎晴明. ▶ web で公開されている(無料).非常に丁寧な記述.

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/mathbook/index.html

○ 『新基礎数学』,新井一道ほか,大日本図書. ▶ 高専の教科書.

○ 『新線形代数』,井川治ほか,大日本図書. ▶ 高専の教科書.

○ 『新微分積分Ⅰ』,新井一道ほか,大日本図書. ▶ 高専の教科書.

○ 『新微分積分Ⅱ』,齋藤純一ほか,大日本図書. ▶ 高専の教科書.

○ 『新応用数学』,佐藤志保ほか,大日本図書. ▶ 高専の教科書.

○ 『神奈川大学教育用アニメーション』▶ 神奈川大学工学部数学教室 矢島幸信教授

https://www.youtube.com/playlist?list=PLRojOljVZvFsoiM-4TbkEJdabghpMgpMx

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〔参考〕数学演習Ⅱシラバス抜粋

2019年度 数学演習Ⅱ Mathematics with Exercise II

【到達目標】

前期科目「数学演習Ⅰ」に引き続き,本演習の到達目標は,

受講生が,高校数学および大学数学の各種問題について,

① 独力で例題を理解すること,② 例題を参考に類題を解くこと,などを通じて,

機械工学を学ぶ上で強力な武器となる「数学」の基礎力および独習力を身につけることである.

=== 数学演習Ⅰのシラバスから抜粋 =================

大学で学修するためには,大きく次の2つの点が重要である.

1) 学生ということを認識した学修 独習

2) 新しいことを見出す学修 研究

そこで,この演習においては,1)の「独習」を意識し,学生が自分自身で

やるしか身につけられない数学の基礎およびその学修方法の取得を目指す.

====================================

【授業内容】

高校数学および大学数学を題材に,例題とその解答から内容の意味を自力で解釈し,その応用として

類題に取り組む.教員と TAは教えることはせず,学生が自身で学修する,いわゆる,ドリル形式で

演習を進める.

【授業計画】

各回の演習内容は,以下を予定している.

1 ガイダンス/事前テスト/複素数(その1:基本演算)

2 複素数(その2:複素平面)

3 ベクトル(その1:基本演算)

4 ベクトル(その2:応用)

5 べクトル(その3:力学問題への適用)

6 行列(その1:基本演算)

7 行列(その2:写像・変換,固有値)

8 中間テスト

9 微分方程式(その1:1階常微分方程式)

10 微分方程式(その2:2階常微分方程式)

11 微分方程式(その3:Laplace 変換の基礎)

12 微分方程式(その4:Laplace 変換を用いた微分方程式の解法)

13 数列・級数

14 最終テスト

【授業運営】

基本的に,「数学演習Ⅰ」に同じであるが,前期の演習状況を踏まえて運営方法を変更する.

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なぜ,数学を学ぶのか?

「機械をつくりたくて機械工学科に入ったのに,どうして数学なんかやるんだ」と思うかもしれません.

それに対する我々教員の回答は決まっています,「機械工学を学ぶ上で必要だから」です.【到達目標】に

おいても述べていますが,「数学」は機械工学を学ぶ上で強力な武器となります.逆に,数学という基礎な

しには,機械工学を学ぶことはできません.

機械と機械工学の関係

「数学は大切だから学べ」と言われても納得できない学生の皆さんも多いことでしょう.そこで,ここか

ら,「機械と機械工学の関係」を述べたのちに,機械工学を学ぶ上で数学を学習することの必要性について

説明していきます.

「機械工学」を学ぶ前の学生の皆さんは,「機械工学とは何か」と問われると,ロボットや自動車などの「機

械」をイメージするかもしれません.しかしながら,これら機械そのものは,「機械工学」という学問の一

部分に過ぎません.これら「機械」を構成するために必要な「要素技術」について基礎的に深く学んでい

くことが,学問としての機械工学です.これら,「要素技術」を支えるのが,基本法則とその上に積み上げ

られた体系的な知識や手法です.これらは,人類が非常に長い時間をかけて,試行錯誤しながら発展させ

てきたものです.そして,機械工学科おいて学生の皆さんは,「要素技術」を支える知識体系を「専門科目」

としていくつかの分野ごとに分けて学習していくことになります.

それでは,自動車を例として,「要素技術」とそれを支える主な専門分野を巧みに組み合わせたうえで「機

械」が成立していることを具体的に見ていきます.図Aに示すように,エンジンでは「熱力学」や「伝熱

工学」,サスペンションでは「機械力学」,車のボデーでは「材料力学」や「機械材料学」,リアウィングで

の空気の流れでは「流体力学」というように,それぞれの「要素技術」には密接に関連する専門分野が存

在します.もちろん,「要素技術」だけでは「機械」は成立せず,「設計」や「加工」に関する知識や考え

方も大事になります.

機械工学と数学・力学の関係

先ほど例示したような専門分野では,数学と力学を基礎としているため,ベースとなる考え方はお互いに

類似しています.力学を基礎としていることは,専門分野名に「力学」というキーワードが入っているこ

とからもわかります.そして,その力学は数学を知らないと解くことができません.これは,Newtonの

運動方程式において,質点の位置を 2階時間微分したもの(加速度)が用いられていることからも想像で

きると思います.機械工学の各専門分野では,この「力学」を中心とした物理現象を数学の言葉で表現す

る(モデリング)を考えていくことになります.このように,「機械工学」を学んでいくためには,「数学」

が必要不可欠であるといえるでしょう.ここまで述べた「機械工学と数学・力学」の関係を図Bに示しま

す.高校までの数学,そして大学での基礎数学の基盤の上に,機械工学において必須となる「材料力学」,

エンジン熱力学・伝熱工学 サスペンション機械力学

ボデー材料力学・機械材料学 リアウィング流体力学

図A 自動車における要素技術と機械工学の専門分野の関係.

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「機械力学」,「熱力学」,「流体力学」(通称,四力)があり,これらを足掛かりにさらなる専門分野を学ん

でいきます.そして,いずれ皆さんは研究室に所属し,人類がまだ解決するに至っていない問題と格闘し

ていくことになります.このとき「より所」になるのが,最先端の知識ばかりではなく,四力などの機械

工学の基礎,そして数学です.これらを支える数学の基礎の自主トレーニングを「数学演習Ⅰ・Ⅱ」で行

っていきます.参考までに,これから皆さんが「数学演習Ⅰ・Ⅱ」で行う内容とこれから皆さんが学習す

る専門科目との関連を表Aに示します.「数学演習Ⅰ・Ⅱ」で取り扱う数学を用いる専門科目に○印がつけ

られており,専門科目では様々な数学が必要とされていることがわかります.

それでは,「機械工学」を学び,楽しむために,数学を学んでいきましょう.

図B 機械工学と数学・力学の関係([ ]内は対応する授業科目名を示す).

高校数学

関数,微分・積分,複素数,ベクトル,行列

大学基礎数学

微分積分・線形代数[微分積分学A・B][幾何学A・B]

工業力学

物理現象モデリングの基礎[工業力学Ⅰ・Ⅱ]

熱力学

[工業熱力学Ⅰ・Ⅱ]

材料力学

[材料力学Ⅰ・Ⅱ]

機械力学

[機械力学Ⅰ・Ⅱ]

流体力学

[流体力学Ⅰ・Ⅱ]

四力(よんりき)

数学演習Ⅰ・Ⅱ

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表A 数学演習で取り上げる数学と機械工学の基礎で用いる数学の関係.

四力

機構学

制御工学

伝熱工学

加工学

機械材料学

材料力学

機械力学

熱力学

流体力学

数学演習Ⅰ

関数(三角・指数・対数関数) ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

方程式・不等式 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

微分・積分 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

偏微分 ○ ○ ○ ○ ○

重積分 ○ ○ ○

Fourier級数 ○

数学演習Ⅱ

複素数 ○ ○ ○

ベクトル ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

行列 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

微分方程式 ○ ○ ○ ○ ○

Laplace変換 ○ ○ ○

数列・級数 ○

専門分野 本学での授業科目名

材料力学 材料力学Ⅰ 材料力学Ⅱ

機械力学 機械力学Ⅰ 機械力学Ⅱ

熱力学 工業熱力学Ⅰ 工業熱力学Ⅱ

流体力学 流体力学Ⅰ 流体力学Ⅱ

機構学 機械要素 ロボット工学

制御工学 自動制御Ⅰ 自動制御Ⅱ

伝熱工学 工業熱力学Ⅱ

加工学 加工学Ⅰ 加工学Ⅱ

機械材料学 機械材料

Galileoのはりの問題* サスペンション†

自動車用エンジン‡ Kármán渦§

* Galileo Galilei『新科学対話』, † 日本機械学会『振動学』‡本田技研工業webページ,§種子田定俊『画像から学ぶ流体力学』

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1 関数(三角関数・指数関数・対数関数)

機械工学においては,材料力学,機械力学,流体力学,熱力学といった力学が重要な役割を果たす.

これら力学は数学によって記述されており,したがって数学について十分な理解を得ることは必須

である.ここでは使用頻度の高い,三角関数,指数関数,対数関数といった関数について復習する.

【三角関数】

三角関数は高校物理で習ったように,角度によって力の分配を行うことや,波や振動といった物理

現象を表すために用いられる.また,三角関数を扱う際には,角度はラジアン(弧度)[rad] を用い

るのが一般的である.

360 ° 2 rad

° 180 radx x

例えば,右図のように振り子が運動を行う場合(小さな振動の範囲)

を考える.この振り子の角変位 は時間 tとともに変わり,下の式の

ように表わすことができる.

2 2cos sinA t A t

T T (周期T ,角速度

2

T,振幅A,位相差

2)

この式を時間tに対して描くと正弦波となる.このような運動を単振動という.

【三角関数の性質】

正弦定理: 2sin sin sin

a b cR

余弦定理: 2 2 2 2 cosa b c bc ,

2 2 2 2 cosb c a ca ,

2 2 2 2 cosc a b ab

加法定理:sin sin cos cos sin , cos cos cos sin sin

倍角の公式:sin2 2sin cos , 2 2cos2 cos sin ,2

2tantan2

1 tan

半角の公式: 2 1 cossin

2 2, 2 1 cos

cos2 2

, 2 1 costan

2 1 cos

θ

θ

cosmg sinmg

mg

θ

sinmg

cosmg

mg

θ

A

B Ca

bc

RO

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積和の公式: ( ) ( ) 1

sin cos sin sin2

= + + − , ( ) ( ) 1

cos sin sin sin2

= + − − ,

( ) ( ) 1

cos cos cos cos2

= + + − , ( ) ( ) 1

sin sin cos cos2

= − + − −

和積の公式:sin sin 2sin cos2 2

, sin sin 2cos sin2 2

cos cos 2cos cos2 2

, cos cos 2sin sin2 2

【例題 1-1】

0 180≦ ≦ とする. 1

sin5のとき,cos と tan の値を求めよ.

【解答 1-1】 2

2 2 1 24cos 1 sin 1

5 25 より,

24 2 6cos

25 5

0 180≦ ≦ かつ sin 0 のとき, を第1象限あるいは第2象限のいずれかに限定することはで

きず,したがって cos の符号は と のどちらの場合もあり得ることに注意する.

sin 1 5 1 6tan

cos 122 6 5 2 6

【例題 1-2】

5sin

6x のとき, sin2x の値を求めよ.ただし,0

2x とする.

【解答 1-2】 2

2 2 5 11cos 1 sin 1

6 36x x

02

x より cos 0x なので,11 11

cos36 6

x

倍角の公式より,5 11 5 11

sin2 2sin cos 26 6 18

x x x

【例題 1-3】

△ABC において, A 60 , B 45 , 3b のとき,辺の長さ a と c, sin C を求めよ.

【解答 1-3】

代表的な角度の三角関数の値

3sin cos

3 6 2,

1sin cos

6 3 2,

1sin cos

4 4 2

を思い出せば,辺の長さ a と c はつぎのように求まる.

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【類題 1-1】

0 180≦ ≦ とする.つぎの式を満たす を求めよ.

(1) 2

sin2

(2) 3

cos2

(3) tan 1

【45 と135 ,150 ,135 】

sin sin4 3

a b より,

3sin 3

3 23 21 2

sin4 2

ba となる.

よって,3 3

cos cos3 4 2 2

c b a

また, C 75 30 45 rad6 4

より,加法定理を用いて sin C を計算すると,

1sin sin sin cos cos sin 2 6

6 4 6 4 6 4 4C

【例題 1-4】

つぎの式を三角関数の和の形に直せ.

cos3 sinx x

【解答 1-4】

積和の公式 ( ) ( ) 1

cos sin sin sin2

= + − − より,

( ) ( ) ( )1 1

cos3 sin sin 3 sin 3 sin 4 sin 22 2

x x x x x x x x= + − − = −

【例題 1-5】

2つの波の合成を考える.振幅は等しいが振動数が異なる2つの単振動 1 2,x x の式を合成せよ.

1 1cosx A t,

2 2cosx A t

【解答 1-5】

和積の公式 cos cos 2cos cos2 2

より,

1 2 1 21 2 1 2

cos cos 2 cos cos2 2

x x x A t t A t t

特に振動数1と

2がきわめて近い場合,振幅が緩やかに増減する1つの振動となる.

このような現象をうなりという.

同一振幅で振動数比が異なる2つの単振動の合成

1 1cosx A t=

2 2cosx A t= (:包絡線)

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【類題 1-2】

0 180≦ ≦ とする.1

tan2

のとき,sin と cos の値を求めよ.

【5

sin5,

2 5cos

5】

【類題 1-3】

4sin

5x のとき,つぎの値を求めよ.ただし,0

2x とする.

(1) sin2

x (2) cos2x

【1

5, 7

25】

【類題 1-4】

△ABC についての以下の各問いに答えよ.

(1) 3a , 3c , C 30 のとき, A, B,bをそれぞれ求めよ.

【 A 60 , B 90 , 2 3b 】および【 A 120 , B 30 , 3b 】

(2) A 30 , 3b , 3c のとき,a , B,△ABC の面積をそれぞれ求めよ.

【 3a , B 120 ,△ABC の面積3 3

4】

【類題 1-5】

つぎの式を三角関数の和の形に直せ.

(1) sin4 cosx x (2) cos2 cos3x x

【1

sin5 sin32

x x ,1

cos5 cos2

x x 】

【類題 1-6】

つぎの2つの波 1 2,x x を合成した波 x を求めよ.

(1) 1 2

sin4 , sin2x t x t (2) 1 2

cos2 , cos7x t x t

【 2sin3 cosx t t,9 5

2sin sin2 2

x t t】

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12

【べき演算】

指数法則: 0 1a ,1x

xa

a, x y x ya a a ,

y xxy x ya a a ,

x x xab a b

指数の大小関係:1 aのとき,x yならば, x ya a ,

0 1a のとき,x yならば, x ya a

特に指数が1 2の場合, 1 2a a

平方根: 2a a

0, 0a b のとき a b ab ,b b

aa

有理化:b b a b a

aa a a,

1 a b a b

a ba b a b a b

二重根号: 0a b のとき,2

2a b ab a b a b

【指数関数】

指数が変数となる関数 xa を指数関数と呼ぶ.とりわけ底が Napier 数(ネイピア数)e となる

指数関数 ex を狭義の意味で指数関数(自然指数関数)と呼ぶ.

指数関数は機械工学において頻繁に現れる.例えば,空気抵抗を受ける物体の運動を記述する際に

現れる.時刻 0 において質量 m の物体を原点から初期速度 0 0 0,

x yv v v で投げ上げたとする.

この物体は速度 ,x y

v v v に比例する空気抵抗 ,x y

F cv cv (cは比例定数)を受けることに

なる. x 方向および y 方向の運動方程式を立てると,

xx

dvm cv

dt, y

y

dvm cv mg

dt (時刻t,重力加速度 g )

計算の過程は省略するが,これらの運動方程式を解くと時刻 tにおける変位 ,x x y が以下のよう

に求まる.

0 1 ec

tx m

mvx

c,

01 e

ct

my

mg m mgy v t

c c c

上式中には指数関数e−(𝑐 𝑚)𝑡⁄ が含まれていることが見て取れる.

【例題 1-6】

つぎの値を計算せよ.

(1) 2

38 (2) 3 5

12 23 27 9

【解答 1-6】

(1) ( )22 2 3

3 233 31

8 2 2 24

−− −

− = = = =

(2)

3 5 3 3 3 31 5

5 52 2 2 2 2 23 27 9 3 3 3 3 3

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13

【類題 1-7】

つぎの値を計算せよ.

(1) 2

327 (2) 1

1225 (3)

211

325 25

【9,125,3

1

5】

【類題 1-8】

つぎの方程式を解け.

(1) 2 4x

(2)

11

93

x

x

【4, 1】

【例題 1-7】

つぎの方程式を解け.

3 19 27x x

【解答 1-7】

3 19 27x x を変形する.

( ) ( )3 1

2 33 3x x−

=

( )3 163 3xx −

=

指数を比較すると,

( )6 3 1x x= −

1x

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14

【対数関数】

対数法則: log log loga a a

XY X Y , log log loga a a

XX Y

Y, log logy

a aX y X ,

loglog

logc

a

c

bb

a

対数の大小関係:1 aのとき,x yならば, log loga a

x y,

0 1a のとき,x yならば, log loga a

x y

対数関数の例

1.デシベル [dB]

(デシベル)10

10log (比較対象の値/基準とする値) ⇒ 物理量の基準とする量に対する比の対数

底が 10 である常用対数により物理量を表現する場合の単位をベル[B]という.

日常よく使われる範囲を表すために, 110 の単位であるデシベル[dB]が用いられる.

例:・電力などのエネルギー比

・音は圧力波であり,音圧の単位は[Pa]であるが,音の大きさは一般にデシベルで表わされる.

音圧比,電流比,電圧比の場合,これらの量の 2 乗がエネルギー比になることに注意.

→(電圧比,電流比,音圧比のデシベル)10

20log (比較対象の値/基準とする値)

・アンプ(増幅器)の利得(増幅度)を表すゲインの単位にも用いられる.

(「制御工学」の中でもよく用いられる.)

2.マグニチュード ⇒ 地震の(エネルギーの)大きさを表す単位.

震源から 100 km 離れたところの地震計の振幅を A [μm ]としたとき,10

logM A で表わされる.

(このマグニチュードの定義はリヒタースケールと呼ばれ,ニュース等で聞くマグニチュードの単位とは少々異なる.)

例:震源から 100 km 離れたところで,M7 の地震は M6 の地震のゆれの何倍の大きさか?

マグニチュード 7 の場合 10

7 log A 710A [μm ]

マグニチュード 6 の場合 10

6 log B 610B [μm ]

7 6/ 10 /10 10A B よって,10 倍

3.対数グラフ

軸が対数であるグラフを対数グラフという.特に,縦軸横軸共に対数のものを両対数グラフ,ど

ちらかが対数のものを片対数グラフと呼ぶ.対数グラフを用いれば,桁の違う値を比較でき,工学

でよく現れる指数関数( xy a b )やべき関数( ny ax )の特徴が把握できる.

例: ny ax の両辺の log をとれば,10 10 10 10

log log ( ) log logny ax n x a .ここで,

10 10 10log , log , logY y X x A aとすれば,この式は,Y nX Aと表される.

⇒ べきの違いが傾きの違いとして現れる.

xと X の対応関係

右図: 1 2 3, ,y x x x

の線形グラフ・両対数グラフ

における見え方の違い

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15

【類題 1-9】

つぎの値を計算せよ.

(1) 3log 3 2 (2)

2 3 5log 3 log 5 log 8 (3)

7

2

1log 98

log 7

【 3

11 log 2

2,3,

72 2log 2】

【類題 1-10】

つぎの対数関数の底を変換せよ.

(1) 9 3

15 3log log

16 4(底が 3 の対数を用いて表せ) (2)

1 64

8

1log 6 log

12(底が 2 の対数を用いて表せ)

【 3

1 1log 5

2 2, 2

2 1log 3

3 2】

【例題 1-8】

つぎの値を計算せよ.

(1) 4

log 8 (2) 2 2 2

log 15 log 10 2log 6

【解答 1-8】

(1) 3

24 4 4

3 3log 8 log 4 log 4

2 2

(2)

( ) ( ) ( )

( ) ( ) ( )

2 2 2 2 2 2

2 2 2 2 2 2

2

log 15 log 10 2log 6 log 3 5 log 2 5 2log 2 3

log 3 log 5 log 2 log 5 2 log 2 log 3

1 3log 3

− + = − +

= + − + + +

= +

【例題 1-9】

つぎの対数関数の底を変換せよ.

8log 1000 (底が 2 の対数を用いて表せ)

【解答 1-9】

( )23 2 2 28 8 8 23

2 22

log 2 5log 10 log 2 log 5log 1000 log 10 3log 10 3 3 3 1 log 5

log 8 3log 2log 2

+= = = = = = +

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16

2 方程式

【2 次方程式の解法】

2 次方程式 「𝒂𝒙𝟐 + 𝒃𝒙 + 𝒄 = 𝟎」 (← 𝑎 ≠ 0であることに注意)

① 因数分解による解法: (𝑥 − 𝛼)(𝑥 − 𝛽) = 0と変形されるならば,解は 𝑥 = 𝛼, 𝛽となる.

② 解の公式による解法:𝛼, 𝛽 =−𝑏±√𝑏2−4𝑎𝑐

2𝑎

ただし 判別式 D=b2-4ac が…

𝐷 > 0 2 つの実数解

𝐷 = 0 重解

𝐷 < 0 2 つの虚数解

③ グラフによる解法:𝑦 = 𝑎𝑥2 + 𝑏𝑥+ 𝑐と𝑥軸(つまり𝑦 = 0)との交点が解となる.

【例題 2-1】解の公式によると,2 次方程式 𝑎𝑥2 + 𝑏𝑥 + 𝑐 = 0の解は𝛼, 𝛽 =−𝑏±√𝑏2−4𝑎𝑐

2𝑎である.こ

れを検算して確かめよ.

【解答 2-1】

𝑎𝑥2 + 𝑏𝑥 + 𝑐 = 0を因数分解すると(𝑥 − 𝛼)(𝑥 − 𝛽) = 0となる.

ここに解の公式による解を代入すると

(𝑥 −−𝑏 + √𝑏2 − 4𝑎𝑐

2𝑎)(𝑥 −

−𝑏 − √𝑏2 − 4𝑎𝑐

2𝑎) = 0

𝑥2 − (−𝑏 +√𝑏2 − 4𝑎𝑐 − 𝑏 −√𝑏2 − 4𝑎𝑐

2𝑎) 𝑥 +

−𝑏 +√𝑏2 − 4𝑎𝑐

2𝑎∙−𝑏 −√𝑏2 − 4𝑎𝑐

2𝑎= 0

𝑥2 +𝑏

𝑎𝑥 +

𝑐

𝑎= 0

𝑎𝑥2 + 𝑏𝑥 + 𝑐 = 0

【例題 2-2】2 次方程式 2𝑥2 − 5𝑥 + 2 = 0 を解け.

【解答 2-2】

① 因数分解による解法: 2𝑥2 − 5𝑥 + 2 = 2(𝑥 − 2) (𝑥 −1

2) = 0 より,解は𝑥 = 2,

1

2.

② 解の公式による解法:判別式𝐷 = (−5)2 − 4 × 2 × 2 = 9 (> 0)→ 解は 2 つの実数解を持つ.

よって解の公式より 𝛼, 𝛽 =−(−5)±√(−5)2−4×2×2

2×2= 2,

1

2

③ グラフによる解法:𝑦 = 2𝑥2 − 5𝑥 + 2と𝑦 = 0(𝑥軸)との交点は,下図より,点 (2, 0) (1

2, 0)で

ある.したがって方程式の解は𝑥 = 2,1

2となる.

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17

【類題 2-1】次の 2 次方程式を解け.

(1) −2𝑥2 − 3𝑥 + 5 = 0 (2) 3𝑥2 + 5𝑥 + 1 = 0 【(1,−5

2),

−5±√13

6】

(3) 1

6𝑥2 − 𝑥 +

1

2= 0 (4)

2

5𝑥2 −

6

5𝑥 − 4 = 0 【3 ± √6,(−2, 5)】

【類題 2-2】次の方程式を解け.

(1) 3

𝑥+2= 2𝑥 − 1 (2)

2

𝑥+1+

1

𝑥+2= −2 【(1,−

5

2),(−3,−

3

2)】

(3) √2𝑥 + 5 = 2𝑥 − 1 (4) √𝑥2 − 1 =1

2(𝑥 + 1) 【2,(−1,

5

3)】

【類題 2-3】2 次方程式の解が{ }内に示された数値となるように,a,b の値を求めよ.

(1) 𝑥2 − 𝑎𝑥 + 𝑏 = 0 {3, −1} (2) 𝑎𝑥2 + 𝑏𝑥 + 1 = 0 {1

2, 3}

【(2,−3), (2

3, −

7

3)】

(3) 𝑥2 − 𝑎𝑥 + 𝑏 = 0 {1−√3

2,1+√3

2} (4) 𝑥2 + 𝑎𝑥 + 𝑏 = 0 {2√3} 【(1,−

1

2), (−4√3, 12)】

【連立方程式の解法】

連立方程式 {𝑓(𝑥, y) = 0

𝑔(𝑥, 𝑦) = 0

① 代入法:1 つの式から"𝑥 = "もしくは"𝑦 = "を求め,もう 1 つの式に代入して𝑥と𝑦を求める.

② 加減法:𝑥もしくは𝑦の係数を揃え,2つの式を加減することで,𝑥と𝑦を求める.

③ グラフによる方法: 𝑦 = 𝐹(𝑥)と𝑦 = 𝐺(𝑥)の交点を求める.

[注意]連立方程式は基本的に変数(𝑥や𝑦のこと)の数だけ方程式がないと解けない.

【例題 2-3】連立方程式 {𝑥 + 𝑦 = 32𝑥 + 5𝑦 = 9

を解け.

【解答 2-3】

① 代入法:第 1 式より𝑦 = −𝑥 + 3,これを2𝑥 + 5𝑦 = 9に代入すると𝑦の項が消去されて,2𝑥 +

5(−𝑥 + 3) = 9となる.よって,𝑥 = 2となり, 𝑦 = 1と求められる.

② 加減法:第 1 式の両辺に× 5をして,𝑦の係数を揃えて{5𝑥 + 5𝑦 = 152𝑥 + 5𝑦 = 9

とする.

上式から下式を引くと5𝑦の項が消去されて3𝑥 = 6となる.ゆえに𝑥 = 2となる.これをいずれ

かの式に代入すると𝑦 = 1が求められる.

③ グラフによる方法:

𝑦 = −𝑥 + 3と𝑦 = −2

5𝑥 +

9

5のグラフを

それぞれ右図のように描き,これらの

交点(2, 1)を得る.

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18

【類題 2-4】次の連立方程式を解け.

(1) {

𝑥 + 2𝑦 + 𝑧 = −33𝑥 + 𝑦 + 2𝑧 = 42𝑥 − 3𝑦 − 5𝑧 = 1

(2) {𝑥2 + 𝑦2 = 1

𝑦 − 𝑥 =1

5

【(1,−3, 2), (−4

5, −

3

5)&(

3

5,4

5)】

(3) {𝑦 = 2𝑥2 − 13𝑥 + 21

3𝑥 − 𝑦 = 3 (4) {

𝑥2 + 𝑦2 = 52𝑥 + 𝑦 = 3

【(2, 3)&(6, 15), (2,−1)&(2

5,11

5)】

【類題 2-5】2 次方程式3𝑥2 − 6𝑥 − 4 = 0の 2 つの解が𝛼, 𝛽であるとき,次を求めよ.

(1)𝛼𝛽 (2) 𝛼+𝛽 (3) |𝛼 − 𝛽| (4) 𝛼3+𝛽3 【−4

3, 2,

2

3√21, 16】

【類題 2-6】2 次方程式𝑥2 − 7𝑥 + 11 = 0の 2 つの解が𝛼, 𝛽であるとき,次の問いに答えよ.

(1) (𝛼+𝛽 − 2)2 (2) (𝛼 − 2)と(𝛽 − 2)を解とする 2 次方程式

(3) (𝛼 − 𝛽)2, (𝛼 + 𝛽)2を解とする 2 次方程式 【25,𝑥2 − 3𝑥 + 1 = 0,𝑥2 − 54𝑥 + 245 = 0】

【2 次方程式の解と係数の関係】

2 次方程式𝑎𝑥2 + 𝑏𝑥 + 𝑐 = 0の 2 つの解を𝛼, 𝛽とすると,

𝛼 + 𝛽 = −𝑏

𝑎, 𝛼𝛽 =

𝑐

𝑎 が成り立つ.

【例題 2-4】2 次方程式𝑎𝑥2 + 𝑏𝑥 + 𝑐 = 0の 2 つの解を𝛼, 𝛽とするとき,係数と解𝛼, 𝛽とに次の関係

があることを証明せよ. 𝛼 + 𝛽 = −𝑏

𝑎, 𝛼𝛽 =

𝑐

𝑎

【解答 2-4】

2 つの解を𝛼, 𝛽とする 2 次方程式は

(𝑥 − 𝛼)(𝑥 − 𝛽) = 0 ⇔ 𝑥2 − (𝛼 + 𝛽)𝑥 + 𝛼𝛽 = 0 (1)

また 2 次方程式の両辺を𝑎で割ると(𝑎 ≠ 0)

𝑥2 +𝑏

𝑎𝑥 +

𝑐

𝑎= 0 (2)

(1)(2)の係数を比較すると

𝛼 + 𝛽 = −𝑏

𝑎 𝛼𝛽 =

𝑐

𝑎

【例題 2-5】2 次方程式 0622 =−+ xx の 2 つの解を𝛼, 𝛽とするとき,次を求めよ.

(1) 𝛼 + 𝛽 (2) 𝛼𝛽 (3) 𝛼2 + 𝛽2 (4) 1

𝛼+

1

𝛽

【解答 2-5】

(1) 解と係数の関係より, 𝛼 + 𝛽 = −2

1= −2

(2) 解と係数の関係より, 𝛼𝛽 =−6

1= −6

(3) 𝛼2 + 𝛽2 = (𝛼 + 𝛽)2 − 2𝛼𝛽 = (−2)2 − 2(−6) = 16

(4) 1

𝛼+

1

𝛽=

𝛼+𝛽

𝛼𝛽=

−2

−6=

1

3

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19

3 不等式

【類題 3-1】次の不等式を解け.

(1) −3𝑥 + 5 > −𝑥 − 7 (2) |𝑥 − 3| ≦ 2 【 6x , 51 ≦≦x 】

(3) 2(1

3𝑥 +

1

6) > 3(

1

2𝑥 − 1) 【𝑥 < 4】

【不等式の解法】

不等式𝑓(𝑥) > 0,連立不等式

① 展開による方法:式展開により x に対する不等式を導く.

② グラフによる方法:𝑦 = 𝑓(𝑥)のグラフを描き,𝑦 = 0(𝑥軸)より大きいとなる𝑥の範囲を求め

ればよい.【おすすめの解法】(グラフの形状をイメージする)

[注意]不等式の扱いは以下の点で注意が必要である.

1. 両辺に同じ値を加算・減算(移項)しても不等号は変わらない.

例)3 > −1 →両辺に+1を加算→ 4 > 0 (逆転しない)

3 > −1 →両辺に−1を加算→ 2 > −2 (逆転しない)

2. 両辺に同じ負の値を掛けると,不等号が逆転することがある.

値の正負が不確かな場合は,両辺に値を掛けない.

例)3 > −1 →両辺に+1を掛ける→ 3 > −1 (逆転しない)

3 > −1 →両辺に−1を掛ける→ −3 < 1 (逆転)

3. 右辺または左辺が負の場合,両辺を累乗すると不等号が逆転することがある.

値が不確かな場合は,両辺を累乗しない.

例)4 > −3 →両辺を 2 乗する→ 16 > 9 (逆転しない)

3 > −4 →両辺を 2 乗する→ 9 < 16 (逆転)

−3 > −4 →両辺を 2 乗する→ 9 < 16 (逆転)

【例題 3-1】不等式2𝑥 + 3 < 9を解け.

【解答 3-1】

① 展開による方法:2𝑥 + 3 < 9より,2𝑥 < 6.したがって,𝑥 < 3.

② グラフによる方法:2𝑥 + 3 < 9より2𝑥 − 6 < 0.𝑦 = 2𝑥 − 6のグラフを描くと下図となる.

このグラフが負,すなわち,𝑦 = 2𝑥 − 6 < 0,となる𝑥の範囲を求めると,𝑥 < 3となる.

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20

【類題 3-2】次の 2 次不等式を解け.

(1) 𝑥2 + 5𝑥 + 6 ≦ 0 (2) 2𝑥2 − 6𝑥 + 5 ≦ 0 【 23 −− ≦≦x ,解なし】

(3) −3𝑥2 + 4𝑥 − 2 ≦ 0 (4) 𝑥2 − 4𝑥 + 4 ≦ 0 【すべての実数, 2=x 】

【類題 3-3】次の不等式を解け.

(1) {8𝑥 + 3 ≧ 3𝑥 − 2−2𝑥 + 5 ≦ 7 − 5𝑥

(2) {2𝑥 + 5 ≧ 4𝑥 + 83𝑥 − 6 ≧ 𝑥 − 9

【−1 ≦ 𝑥 ≦2

3,𝑥 = −

3

2】

(3) {3𝑥−5

2<

5𝑥+6

2

𝑥 − 5(3𝑥 + 4) ≦ 𝑥 − 12 (4) { 3𝑥 − 4 ≦ 7𝑥 − 1

9𝑥 + 5 < −3𝑥 − 4 【𝑥 ≧ −

8

15,解なし】

【類題 3-4】次の連立不等式を解け.

(1) {𝑥2 − 4 ≦ 0𝑥2 + 𝑥 ≧ 0

(2) 5

4≦ −𝑥2 + 3𝑥 ≦ 3 【( 12 −− ≦≦ x , 20 ≦≦x ),

1

2≦ 𝑥 ≦

5

2】

(3) {𝑥2 − 3𝑥 − 4 < 0−2𝑥 + 3 < 7

(4) {|2𝑥 − 5| < 5

4𝑥2 − 16𝑥 + 15 > 0 【 41 − x ,(0 < 𝑥 <

3

2,

5

2< 𝑥 < 5)】

【連立不等式の解法】

連立不等式 {𝑓(𝑥) > 0

𝑔(𝑥) > 0

① 展開による方法:式展開により,𝑥に対するそれぞれの不等式を導く.

② グラフによる方法:【おすすめの解法】

𝑦 = 𝑓(𝑥)と𝑦 = 𝑔(𝑥)のグラフをそれぞれ描き,𝑦 = 0(𝑥軸)より大きい,小さい不等式を

満たす共通の範囲となる𝑥の範囲を求めればよい.

【例題 3-2】連立不等式 {−5𝑥 + 4 ≦ −7𝑥 + 123𝑥 + 4 > 2𝑥 + 5

を解け.

【解答 3-2】

① 展開による方法:それぞれ𝑥について整理すると{𝑥 ≦ 4𝑥 > 1

となる.したがって,1 < 𝑥 ≦ 4.

② グラフによる方法:それぞれ𝑥について整理すると {𝑦 = 𝑥 − 4 ≦ 0𝑦 = 𝑥 − 1 > 0

となる.したがって,

𝑦 = 𝑥 − 4 ≦ 0と𝑦 = 𝑥 − 1 > 0の共通の𝑥の範囲は,下図より, 1 < 𝑥 ≦ 4となる.

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21

【類題 3-5】𝑥の 2 次不等式2𝑎𝑥2 + 2𝑏𝑥 + 1 ≦ 0の解が𝑥 ≦ −1

2,3 ≦ 𝑥となるような𝑎,𝑏の値を求めよ.

【𝑎 = −1

3,𝑏 =

5

6】

【類題 3-6】𝑥の 2 次不等式𝑥2 +𝑚𝑥 +𝑚 + 3 < 0について答えよ.

(1) この不等式が解をもたないような𝑚の範囲を求めよ. 【−2 ≦ 𝑚 ≦ 6】

(2) この不等式の解の範囲がすべて正であるような𝑚の範囲を求めよ. 【−3 < 𝑚 < −2】

【類題 3-7】0 ≦ 𝑥 < 2π のとき,次の関数の最大値,最小値とそれらをとる𝑥の値を求めよ.

(1) 𝑦 = sin2 𝑥 + sin 𝑥 + 1 【 𝑥 =𝜋

2 のとき最大値 3,𝑥 =

7

6𝜋,

11

6𝜋 のとき最小値

3

4】

(2) 𝑦 = √3cos 𝑥 + sin𝑥 【𝑥 =𝜋

6 のとき最大値 2,𝑥 =

7

6𝜋 のとき最小値 −2】

【類題 3-8】次の方程式と不等式を解け.

(1) 27𝑥−3 = 92𝑥+1 (2) 32𝑥+1−1

2> −3𝑥 (ヒント:3𝑥 = 𝐴とおく)【−11,𝑥 > −1 】

【類題 3-9】次の方程式と不等式を解け.(ヒント:対数関数の底の変換公式)

(1) log2(𝑥 + 3) + log2(𝑥 − 3) = 4 (2) log13

(𝑥 − 2) ≧ log91

𝑥 【5,2 < 𝑥 ≦ 4】

【類題 3-10】0 ≤ 𝑥 < 2π のとき,次の方程式と不等式を解け.

(1) 2 sin2 𝑥 − 5sin 𝑥 + 2 = 0(ヒント:sin𝑥 = 𝐴とおく) (2) cos 2𝑥 − 5 sin 𝑥 + 2 ≦ 0

【(𝑥 =𝜋

6,5

6𝜋),(

π

6≦ 𝑥 ≦

5

6𝜋)】

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22

4 微分・偏微分(その1): 基本的な微分演算

時間や空間による変化を伴う現象を数学的に記述するには「微分」が有用である.第4~7講目で

は微分の基本的な演算方法を学ぶ.

【導関数の定義】

関数 ( )y f x= の導関数は, ( )( ) ( )

0limh

f x h f xf x

h→

+ − = ,で定義される.

「y を x で微分」の表し方 : y(ワイプライム), ( )y x ,dy

dx

※ ( )y t の時間 tでの微分は慣例的に y (ワイドット)と表すことが多い

【和・差・積・商の微分公式】

定数倍の微分: ( )c x c x = ,ただしcは定数

和・差の微分: ( )u v u v =

積の微分: ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )f x g x f x g x f x g x = +

商の微分:( )

( )

( ) ( ) ( ) ( )

( ) 2

f x f x g x f x g x

g x g x

− =

合成微分: ( )( ) ( )( ) ( )f g x f g x g x

= または dy dy dt

dx dt dx=

【べきの微分】

( ) 1n nx nx −= ,ただしnは定数

===============================================================================

【例題 4-1】質点の運動を考える.速度 ( )[m/s]v t は,時刻 [s]t における位置 ( )[m]x t x[m]の瞬時の

変化率,つまり,x の t による微分 )( xx = で定義される.つまり,

( )( ) ( )

0lim

t

x t t x t dxv t x x

t dt →

+ −= = = =

( t は tの変化分).

それでは,位置 ( )x t が 23 1x t= + のように表される場合の速度を求めよ.

【解答 4-1】

① 導関数の定義による導出:( )

( )

2 22

0 0 0

3 1 3 16 3( )

lim lim lim 6 3 6t t t

t t tt t t

v t t tt t → → →

+ + − + +

= = = + =

② べきの微分公式よる導出: ( )2 2 13 1 3 2 0 6v t t t−= + = + = .

【例題 4-2】加速度 ( ) 2[m/s ]a t は,速度 ( )[m/s]v t の時刻 tにおける瞬時の変化率で定義される.つま

り,.

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23

【類題 4-1】次の関数の導関数を,①定義に従って,②べきの微分公式を用いて求めよ.

(1) 24 3 5y x x= − + (2) y a= (a は定数)

(3) 3 21 3 5

6 4 2 9

ay x x x= − + + (a は定数) (4) ( ) ( )

2 21 1y x x= + −

【8 3x − ,0,2

3

22

1 2 +− xa

x , ( )( )4 1 1x x x− + 】

【類題 4-2】次の関数を微分せよ.

(1) 2( 2 3)y x= − + (2)

3 3(3 2)y x x= − (3) 5

5

1y x

x= +

(4) 2

2 1

1

xy

x

−=

+ (5) 4 1y x= +

【 128 −x ,2 26 (3 2) (3 1)x x x− − , 4

6

55x

x− ,

2

2 2

2( 1)

( 1)

x x

x

− + +

+,

2

4 1x +】

【類題 4-3】次の関数を微分せよ.

(1) 2x

yx

+= (2)

2

2

1

2

xy

x

+=

− (3)

3

2

( 3)

3

xy

x

−=

+ (4)

4

2

13y

x

= −

(5) 3 2 1y x x= + + (6) 1 6y x x= − (7)

2 4

xy

x=

+ (8)

2

2

xy

x

−=

+

【2

2

x− ,

2 2

6

( 2)

x

x−

−,

2 2

2 2

( 3) ( 3)

( 3)

x x

x

− +

+,

3

3 2

8 13

x x

2 23

2 1

3 ( 1)

x

x x

+

+ +,

1 9

1 6

x

x

−,

2 3

4

( 4)x +,

3

2

( 2)( 2)x x− +】

( )( ) ( ) 2

20lim

t

v t t v t dv d dx d xa t x

t dt dt dt dt →

+ −= = = = =

それでは,速度 ( )v t が2 2(3 2)v t t= − のように表される場合の加速度を求めよ.

【解答 4-2】積の微分より, ( ) −+−=

−+−

= 2222222 )23()23(2)23()23( tttttttta

合成微分→ 3)23(2)23(2)23()23(2)23(2 221222 −+−=−−+−= − ttttttttt

)13)(23(4)26)(23(23)23()23(2 −−=−−=+−−= tttttttttt .

【例題 4-3】𝑦 = 3𝑥2(3𝑥 − 2)3 を𝑥で微分せよ.

【解答 4-3】𝑓(𝑥) = 3𝑥2,𝑔(𝑥) = (3𝑥 − 2)3とおくと,𝑦 = 𝑓(𝑥) ∙ 𝑔(𝑥) となる.

よって積の微分公式より,

𝑦′ = 𝑓′(𝑥) ∙ 𝑔(𝑥) + 𝑓(𝑥) ∙ 𝑔′(𝑥)

= 6𝑥 ∙ (3𝑥 − 2)3 + 3𝑥2 ∙ 3(3𝑥 − 2)2 ∙ 3 = 3𝑥(15𝑥 − 4)(3𝑥 − 2)2

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24

【類題 4-4】次の関数を微分せよ.ただし, ,a bは定数とする.

(1) 10 5y x x= − + (2)

2( )y x a b= − + (3) 2 2(3 10) ( 2 3)y x x x= + − +

(4) 3

by

x=

− (5)

2 1y x= +

【 910 1x − ,2( )x a− ,2(3 10)(2 1)(3 1)x x x+ + − ,2(3 )

b

x−,

2 1

x

x +】

【初等関数の微分】

三角関数の微分: ( )sin cosx x = , ( )cos sinx x = − , ( ) 2

1tan

cosx

x =

指数関数の微分: ( )x xe e

= , ( )( ) ( ) ( )f x f x

e f x e

= , ( ) ( )logx xa a a

= ( aは定数)

ネイピア数 𝑒 = lim𝑛→∞

(1 +1

𝑛)𝑛

= 2.71828 18284 59045 23536 02874 71352 …

対数関数の微分: ( )1

loge xx

= , ( )( )( ) ( )

loge

f xf x

f x

= ,( )

( )

log 1log

log log

e

a

e e

xx

a a x

= =

10log x を常用対数, loge xを自然対数という.

loge xは, log xや ln xと略されることがある.ただし, log x は分野によっ

ては常用対数を表すことがあるので注意.

log xについては第1講目【対数関数】を参照

==============================================================================

【例題 4-4】第1講目で見たように,角変位 の小さい振り子は単振動として近似され,

( )cosA t = − ( A:振幅,2

T

= :角振動数,T :周期, :初期位相)

と表される.単振動の角速度を求めよ.

【解答 4-4】

角速度は,角変位 を時間 tで微分したものである.つまり, ( )sind

A tdt

= = − − ,である.

【例題 4-5】次の関数を微分せよ.

(1) 2sin( 1)y x= + (2)

23xy e= (3) ( )2log 3y x=

【解答 4-5】

(1) sin と合成微分より, 2 2 2 2cos( 1) ( 1) cos( 1) 2( 1) 2( 1)cos( 1)y x x x x x x

= + + = + + = + + .

(2) 指数の微分より, ( )2 22 3 33 6x xy x e xe

= = .

(3) 対数と合成微分より, ( )2

2 2

1 6 23

3 3

xy x

x x x

= = = .

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25

【類題 4-5】次の関数を微分せよ.

(1) 2cos( 1)y x= + (2) sin cosy x x= (3)

2xy e= (4) log x

yx

=

【2)1sin()1(2 ++− xx , x2cos ,

xe22 ,2

log1

x

x−】

【類題 4-6】次の関数を微分せよ.

(1) 1 siny x= − (2) sin 2y x= (3) ( )2 2tany x x= − (4) 7

2

x

y

=

(5) log3 xy = (6) ( )

2log 2y x= (7)

2

2log 1y x= −

【cos

2 1 sin

x

x

−,

cos 2

2

x

x, 2 22 tanx x ,

7(log 7 log 2)

2

x

log3 log 3x

x,

2log 2x

x,

( )2

2

1 log 2

x

x −】

【類題 4-7】次の関数を微分せよ.

(1) 2 1siny x

x= (2) sin3xy e x= (3)

1 log xy

x

+=

(4) 2 24 4log 4y x x x x= + + + +

【1 1

2 sin cosxx x

− , (sin 3 3cos3 )xe x x+ ,2

log x

x− ,

22 4x + 】

【類題 4-8】次の式で定められる xの関数 y についてdx

dyを求めよ.

(1) 2 2( 1)y x x− = + (2) 3 2( 1) 3 1x x y+ + = − (3) sin cosx y y=

【2 1

2( 1)

x

y

+

−,

3( 1 2)

4

x

y

+ +,

cos cos

1 sin sin

x y

x y+】

【例題 4-6】2 22 1x y+ = で定められる xの関数 y について

dy

dxを求めよ.

【解答 4-6】「 y を xで微分」はdy

dxで表される.したがって,両辺を x で微分すると,

𝑑

𝑑𝑥(2𝑥2 + 𝑦2) =

𝑑(1)

𝑑𝑥

024 =+dx

dyyx となる.よって,

y

x

dx

dy2−=

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5 微分・偏微分(その2): 微分演算とその応用

【類題 5-1】次の関数を微分せよ.

(1) ( )2

0xy x x= (2) ( )log 0xy x x= (3)

2

2 3

( 1)

( 4)

xy

x

−=

+

【2 1(2log 1)xx x+ + , log 12 logxx x− ,

2

2 5

( 1)( 3 8)

( 4)

x x x

x

− − + +

+】

【類題 5-2】次の関数についてdy

dxを求めよ.

(1) 2

2

2

2

1

1

1

tx

t

ty

t

= −

+ =

(2)

( )

( )

cosh2

sinh2

t t

t t

e ex t

e ey t

+= =

− = =

【2

2

1

t

t+,

t t

t t

e e

e e

+

−】

【参考】sinhx,coshx は双曲線関数である.

双曲線関数の微分は, ( )cosh sinhx x = , ( )sinh coshx x = ,である.

【対数微分法】

【例題 5-1】 xy x= ( 0)x で定められる xの関数 y についてdy

dxを求めよ.

【解答 5-1】両辺の logをとると, log log logxy x x x= = となる.ここで両辺を x で微分すると,

1 1log

dyx x

y dx x= + となり, ( )log 1

dyy x

dx= + となる.したがって, ( )log 1xdy

x xdx

= + .

※ 対数の真数( log aの aのこと)は, 0a でしか定義されないことに注意!

【例題 5-2】関数2

2

(2 1)

( 2)

x t

y t

= −

= −について

dy

dxを求めよ.

【解答 5-2】 2(2 1)x t= − について, t で微分すると, 2(2 1) 2(2 1) (2 1) 4(2 1)dx

t t t tdt

= − = − − = − .

また, 2( 2)y t= − についても t で微分すると, 2( 2) 1 2( 2)dy

t tdt

= − = − .

したがって,1 2

2( 2)4(2 1) 2(2 1)

dy dy dt tt

dx dt dx t t

−= = − =

− − となる.

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27

【接線・極値】

接線の方程式:

関数 ( )xfy = 上の点 ( )( )afa, における接線は,

( ) ( )( )axafafy −=−

(参考)傾きが m で,点 ( )ba, を通る直線の方程式は,

( )axmby −=− で表せる.

極大・極小:

関数 ( )xfy = において, ある点 x=c で

( ) 0= cf , かつ,x=c を境に ( )xf の符号が変化する

が満たされるとき,点 c を極値と呼ぶ.特に,x=c の近傍で c 以外の

すべての x に対して ( ) )(cfxf ( ( ) )(cfxf )が成り立つとき,

( )xfy = は c で極小値(極大値) )(cf をとるという.

変曲点:

関数が,「下に凸である状態から,上に凸である状態に変わる点」,

「上に凸である状態から,下に凸である状態に変わる点」を変曲点という.変曲点 x=d では,

𝑓′′(𝑑) = 0, かつ,x=d を境に𝑓′′(𝑥)の符号が変化する

(𝑓′′は 2 階微分を表す.第6講目参照)

==============================================================================

【例題 5-3】3 次関数 ( ) 3 3 1f x x x= − + について,次の問いに答えよ.

(1) ( )xfy = を微分せよ.

(2) ( )xfy = のグラフ上の点(0, 1)における接線の方程式を求めよ.

(3) ( )xfy = の増減表を作成してグラフをかけ.

【解答 5-3】

(1) ( ) 23 3y f x x = = − .

(2) 接線の方程式の公式 ( )( )001 −=− xfy より xy 31 −=− .したがって, 13 +−= xy .

(3) 極値を求める➔ ( ) 0= xf ,つまり, ( ) ( )( ) 011333 2 =−+=−= xxxxf を満たすのは, 1=x .

変曲点を求める➔ ( ) 0= xf ,つまり, ( ) 06 == xxf を満たすのは, 0=x .

増減表を作成する➔

x -1 0 1

( )xf + 0 ― 0 +

( )xf ― 0 +

( )xf 3 1 -1

極大値 変曲点 極小値

グラフを描く➔

変曲点

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【類題 5-3】次の曲線について,〔 〕内の条件での接線の方程式を求めよ.

(1) 𝑓(𝑥) = 𝑥2 − 4𝑥 + 3[(1, 𝑓(1))における接線] 【𝑦 = −2𝑥 + 2】

(2) 𝑓(𝑥) = −𝑥3 − 2𝑥2 − 𝑥 + 3 [(−2, 𝑓(−2))における接線] 【𝑦 = −5𝑥 − 5】

(3) 𝑓(𝑥) = −𝑥2 + 3𝑥 + 2 [(−1, 2)を通る接線] 【𝑦 = 9𝑥 + 11 , 𝑥 + 3】

【類題 5-4】関数の極値を求め,グラフをかけ.

𝑦 = 3𝑥3 − 3𝑥2 + 𝑥 − 1

【極値なし】

【類題 5-5】次の問いに答えよ.

(1) 𝑦 = 𝑥3 − 𝑎𝑥 が極値をもつような a の範囲を求めよ. 【𝑎 > 0】

(2) 𝑦 = 2𝑥3 − 𝑥2 − 4𝑥 − 2 の −1 ≤ 𝑥 ≤ 2 の範囲での最大値,最小値とそれらをとる 𝑥 の値を求

めよ.

【{𝑥 = 2のとき 最大値 2

𝑥 = 1のとき 最小値− 5】

【例題 5-4】次の関数のグラフの凹凸,変曲点,漸近線,x 軸および y 軸との交点を調べて増減表を

作成し,グラフの概形をかけ.

𝑦 = 𝑥4 + 2𝑥3 − 2𝑥2 − 6𝑥

【解答 5-4】𝑦 = 𝑓(𝑥) = 𝑥4 + 2𝑥3 − 2𝑥2 − 6𝑥とおく.

𝑓′(𝑥) = 4𝑥3 + 6𝑥2 − 4𝑥 − 6 = 2(2𝑥 + 3)(𝑥 − 1)(𝑥 + 1)

→ 𝑓′(𝑥) = 0を満たす解は,𝑥 = −3

2 , 1 , −1 (極値) …(1)

𝑓′′(𝑥) = 12𝑥2 + 12𝑥 − 4

→ 𝑓′′(𝑥) = 0を満たす解は,𝑥 =−3±√21

6 (変曲点) …(2)

また、 lim𝑥→∞

𝑓(𝑥) = ∞ , lim𝑥→−∞

𝑓(𝑥) = ∞ , 𝑓(0) = 0(原点を通る) …(3)

(1)から(3)をもとに増減表を描くと,

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29

… …

… … …

… …

{

𝑥 = −3

2のとき 極小値

45

16

𝑥 = 1のとき 極小値− 5

𝑥 = −1のとき 極大値 3

【類題 5-6】次の関数のグラフの凹凸,変曲点,漸近線, x軸および y 軸との交点を調べて増減表を作成

し,グラフの概形をかけ. 𝑦 = 𝑥4 + 8𝑥3 + 18𝑥2

【類題 5-7】次の関数のグラフの凹凸,変曲点,漸近線, x軸および y 軸との交点を調べて増減表を作成

し,グラフの概形をかけ. 𝑦 =𝑥

𝑥2+1

𝑥 −3

2

−3 −√21

6 −1 0 −3+ √21

6 1

𝑦′ = 𝑓′(𝑥) − 0 + + + 0 − − − − − 0 +

𝑦′′ = 𝑓′′(𝑥) + + + 0 − − − − − 0 + + +

𝑦 = 𝑓(𝑥) 45

16 3 0 −5

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30

【類題 5-8】次の関数のグラフの凹凸,変曲点,漸近線, x軸および y 軸との交点を調べて増減表を作成

し,グラフの概形をかけ. 𝑦 = 𝑥𝑒−𝑥

【類題 5-9】関数𝑦 = 𝑥 +4

𝑥−1のグラフの凹凸,変曲点,漸近線, y 切片を調べて増減表を作成し,グラ

フの概形をかけ.

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31

6 微分・偏微分(その3) 高階微分

【高階導関数】

関数 )(xfy = の導関数 yが微分可能であるとき, yの導関数:

== )()(2

2

xydx

ydxy

を y の 2 階導関数という.

一般に,2 階以上の導関数を総称して,高階導関数という.

同様に n 階導関数

=

n

nn

dx

ydy )( も定義される.

基本的な微分: ( )

+−−=

)(0

)()1()1()(

mn

mnxnmmmx

nmnm

n は定数

===============================================================================

【例題 6-1】ある物体の位置 ( )[m]x t が時刻 [s]t の関数として次のように与えられているとき,速度

( ) ( )( ) [m s]v t x t= と加速度 ( ) ( ) 2( ) ( ) [m s ]a t v t x t= = を求めよ.

( ) 2

0 02

gx t x v t t= + − . (*)

ただし、0 0, ,x v g は定数とする.

【解答 6-1】速度 ( )tv は x の t に関する.1 階微分なので,

( ) gtvtg

tvxtt

txtv −=

−+== 0

2

002d

d

d

)(d

となる.同様に,加速度 ( )ta は x の t に関する 2 階微分なので,

( ) ( ) ggtvtt

tv

t

txta −=−=== 02

2

d

d

d

)(d

d

)(d

【参考】力 F が働いている質量 m の質点の運動方程式はF ma= で表される.

重力のみが働いている場合は, x− 方向の加速度 a− は重力加速度29.8[m s ]g

となる.すなわち,式(*)は,一様重力下の物体の自由落下運動を表している.

0 0,x v は 0t = のときの位置および速度であり,それぞれ初期位置,初速度と呼ばれ,これらを初期条

件という.

【例題 6-2】 3 cos( )y ax b x cx= + + の 2 階微分を求めよ.ただし,a, b, c は定数とする.

【解答 6-2】1 階微分は 23 sin( )

dyax b bx c

dx= − + ,2 階微分は )cos(6 2

2

2

bxbaxdx

yd−= となる.

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32

【類題 6-1】次の関数の 2 階微分を求めよ.ただし,a, b は定数とする.

(1) 2( )y x a b= − + (2)

2

2

2

( 1)

x axy

x

−=

− (3)

2 3

1

(2 1)y

x=

+

【2,4

(8 2 ) 4 4

( 1)

a x a

x

− + −

−,

2

2 5

12(14 1)

(2 1)

x

x

+】

【類題 6-2】次の関数の 2 階微分を求めよ.ただし, ,a bは定数とする.

(1) 2(cos ( ))y a x= (2) log (3 2)y x= −

(3) sin cosy x x x= − (4) 1

xey bx

x= +

+

【22 cos(2 )a ax− ,

2

9

(3 2)x−

−,sin cosx x x+ ,

2

3

( 1)

( 1)

xe x

x

+

+】

【例題 6-3】なめらかな平面上に置かれ,ばね定数 k のばねに結ばれた質点を考える.静止状態での

質点の位置を x=0 とし,ばねを0x だけ引き伸ばして時刻 t=0 で手を離す.すると質点は x=0 を中心

とした単振動を行う.このとき,質点にかかる力は-kx であるので,運動方程式は,

xkxm −=

である.この方程式を満たす x は,

)(cos)(sin tBtAx += ・・・(*)

であることを確かめよ.ただし, mk /= ,A,B は定数とする.

【解答 6-3】運動方程式 xx 2−= の解が(*)であることを確かめる.

( )

)()(cos)(sin

)(sin)(cos)(

222

2

2

右辺

左辺

=−=−−=

−=

===

xtBtA

tBtAdt

d

dt

dx

dt

d

dt

xdx

よって,式(*)で表される x が運動方程式の解であることが確かめられた.

【参考】 係数 A, B は初期条件から決められる.初期位置が0x で,初速度(質点から手を離すとき

の速度)を0v とすると, )(cos)(sin tBtAx += と cos( ) sin ( )v A t B t = − で, 0t =

として,0(0)x B x= = ,

0 0(0) /v A v A v = = = が得られる.つまり,単振動している質点

の位置は,次のように表される. )(cos)(sin 00 txt

vx

+=

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33

偏微分

2 変数関数 ( )yxf , の微分を考える.変数が x,y の2種類あるため,変数 y を一定に保ちながら x を

変化させたときの微分と,変数 xを一定に保ちながら yを変化させたときの微分の2つの微分がある.

xに関する偏導関数の定義:( ) ( ) ( )

0

, , ,limx

y

f x y f x x y f x y

x x →

+ −=

yに関する偏導関数の定義:( ) ( ) ( )

0

, , ,limy

x

f x y f x y y f x y

y y →

+ −=

添字は,その変数が一定に保たれることを意味する.明らかな場合は省略することもある.

※3 変数以上の関数の場合も同様である

===============================================================================

【例題 6-4】熱力学によると,ある一種類の気体の状態は2つの変数によって決まる.例えば,圧力

P は,体積 V,温度 T の 2 つの変数によって,次の式から決定される:

NRTPV = (理想気体の状態方程式)

ここで,N はモル数, R は気体定数と呼ばれる定数である.

気体にかかる圧力に対して体積がどの程度変化するかを表す量として圧縮率と呼ばれるものがあ

る.温度が一定の条件下での圧縮率(等温圧縮率)T を求めよ.なお

T は以下のように定義される:

1T

T

V

V P

= −

【解答 6-4】理想気体の状態方程式より,P

NRTV = となり,体積 V は圧力 P と温度 T によって表

される.これを考慮すれば,等温圧縮率は次のように計算される:

PP

V

VP

NRT

VP

P

NRT

VP

V

V

T

T

T

111112

=

−−=

−−=

−=

−= .

【例題 6-5】関数 ( , ) log sin( )f x y x xy= + の偏導関数を求めよ.

【解答 6-5】(log sin( )) log sin( ) 1

cos( )f x xy x xy

y xyx x x x x

+ = = + = +

(log sin( )) log sin( )cos( )

f x xy x xyx xy

y y y y

+ = = + =

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34

【類題 6-3】次の関数の偏導関数を求めよ.(各変数について微分する.) ただし,a は定数とする.

(1) ( , )f x y x y= + 【 1, 1f f

x y

= =

(2) 3 3( , )f x y x axy y= − + (a は定数) 【 2 23 , 3

f fx ay ax y

x y

= − = − +

(3) ( , )y

f x yx y

=+

【2 2

,( ) ( )

f y f x

x x y y x y

= − =

+ +】

【例題 6-6】長さ 2L[m]の棒を考え,その中で温度 ),( xtT が時間 t と場所 x によってどのように変

化するかを考える.両端の温度は T0=0[℃]に保たれているとする(境界条件).

また,この棒の内部は,時刻 t=0 のとき(すなわち初期条件),

= x

LxT

2cos),0(

であるとする.

ここで,棒の中心を x 軸の原点とおいた.棒内部では

発熱していないとすると, ),( xtT は次の式によって

良く表される:

2

2

T T

t x

=

(熱伝導方程式)

ここで,2

2

x

T

は T を x で 2 階偏微分したものである.また, は温度拡散率を表し,定数であると

する.温度 ),( xtT が次のように表されるとき,上の熱伝導方程式が満たされることを確かめよ.

2

( , ) cos exp2 2

T t x x tL L

= −

【解答 6-6】簡単のため,L

p2

= とおくと,温度は, ( ) ( )tppxxtT 2expcos),( −= と表される.

熱伝導方程式の左辺,右辺それぞれに ),( xtT を代入し,両辺が等しいことを確かめる.

( ) ( ) ( ) ( )

( ) ( )

( ) ( ) ( ) ( )

( ) ( ) )(

cosexp

cosexpexpcos)(

expcos

expcosexpcos)(

222

22

2

2

222

22

左辺 

右辺

左辺

=

−=−−=

−=

=

=

−=−−=

=−

=

=

Tppxptp

pxxx

tptppxxxx

T

Tptpppx

tpt

pxtppxtt

T

【参考】棒内部の温度は,初期の状態から時間が経つにつれ

て時間的・空間的に一様な状態(平衡状態)に近づいていく.

実際, →t で 0=T となる.

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35

【類題 6-4】次の関数の偏導関数を求めよ.

(1) ( , ) xyf x y e= 【 ,xy xyf fye xe

x y

= =

(2) ( , ) cos ( )f x y x y= + 【 sin( ) , sin( )f f

x y x yx y

= − + = − +

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36

7 Taylor 級数・Maclaurin 級数

【類題 7-1】以下の関数について,指定された xの値の周りにおける Taylor 級数を求めよ.

(3次の項まで求め、n次の項がどのようになるか考えること.)

(1) 2 2 1x x− + ( 1x = の周り) 【 ( )2

1x − 】

(2) 1

1 x− ( 2x = の周り) 【 ( ) ( ) ( ) ( ) ( )

2 3 1

1 2 2 2 1 2n n

x x x x+

− + − − − + − − + − − + 】

(3) cos ( = の周り) 【 ( ) ( )( )

( )1

2 4 211 11

2! 4! 2 !

n

n

n

+

−− + − − − + + − + 】

(4) xe ( 1x = の周り) 【 ( ) ( ) ( ) ( )2 31 1 1

1 1 1 1 12! 3! !

n

e x x x xn

+ − + − + − + + − +

Taylor(テイラー)級数および Maclaurin(マクローリン)級数に関する説明

関数 ( )f x が x a= の近傍で n 回微分可能であれば,

( ) ( )( )

( )( )

( )( ) ( )

( )2

1! 2! !

n

nf a f a f af x f a x a x a x a

n

= + − + − + + − + (1)

が成り立つ.この定理を Taylor の定理と呼び,右辺の展開式を Taylor 展開(Taylor 級数)と呼ぶ.

特に 0a = の場合,

( ) ( )( ) ( ) ( ) ( )

20 0 0

01! 2! !

n

nf f f

f x f x x xn

= + + + + + (2)

となる.この定理を Maclaurin の定理と呼び,右辺の展開式を Maclaurin展開(Maclaurin 級数)と呼

ぶ.

すなわち,どんな関数(信号)も x のべき乗の重ね合わせ(和,級数)で表すことができ,

Taylor 展開あるいは Maclaurin 展開により得られた級数を用いることで,関数を近似することができる.

=============================================================================

【例題 7-1】関数 ( ) 2 2 1f x x x= − + について 1x = − の周りにおける Taylor 級数を求めよ.

【解答 7-1】まず関数 ( )f x の導関数を求める.

( ) ( )2

22 2, 2, 0 3

n

n

df d f d fx x n

dx dx dx= − = =

1x = − の周りにおける関数 ( )f x の Taylor 級数は

( ) ( ) ( )( ) ( )( ) ( )( )

( ) ( )

2 32 3

2 3

2

1 1 11 1 1 1 1 1 1

1! 2! 3!

4 4 1 1

df d f d ff x f x x x

dx dx dx

x x

= − + − + + − + + − + +

= − + + +

となる.

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37

Maclaurin 級数の適用例

Taylor 展開あるいは Maclaurin 展開により得られた級数を用いることで,関数を近似することができ

る.ここでは例として,「機械力学 I」で扱われるような振り子の運動の問題,機械力学Ⅱで扱われるよ

うな自動車エンジン内のピストンの運動に関する問題について考える.

=============================================================================

【例題 7-2】関数 ( ) sinf x x= についてマクローリン展開せよ.(第五項まで計算し,n 次の項を考える.)

【解答 7-2】Maclaurin 級数は ( ) ( )( )

( )( )

( )( ) ( )

( )20 0 0

01! 2! !

n

nf f ff x f x x x

n

+ + + + +

( ) sinf x x=

,( ) cosf x x =

,( ) sinf x x = −

,( ) cosf x x = −

より,

( )0 0f =

,( )0 1f =

,( )0 0f =

,( )0 1f = −

さらに, ( ) ( ) ( )4sinf x x f x= = より, ( ) ( ) ( )4

0 0 0f f= = .(もとの関数に戻ってくる)

よって, ( )3 5

sin3! 5!

x xf x x x= − + となる.

一般的な形(n 次の項を考える)にすると, ( ) ( )( )

2 1

0

sin2 1 !

1n

n

n

xf x x

n

+

=

=+

− と書ける.

✓ sin と Maclaurin 展開したものを比較すると

0 = 近傍では大体近似できている!

EXCEL を使って,高次の項までマクローリン

展開をしたグラフを書いてみると,sinθの波

形に近づいていくことがわかる.

【例題 7-3】図のような長さ l ,質量mの振り子の運動を考え

る.この振り子は点 O を中心とした円弧運動を行

う.この円弧の接線方向の運動方程式を立てなさ

い.ただし,振れ角が小さいと仮定して方程式を

線形化すること.

【解答 7-3】円弧の接線方向の運動方程式は次のようになる.

sinml mg = −

ここで記号 g は重力加速度, は振り子の振れ角を表

す.右辺の外力項には sin が含まれており, に関

して非線形( に比例しない形)となっている.

mg

T

cosmg

sinmg

l

O

-5

-3

-1

1

3

5

-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5

siny =

y = 31

3!y = −

3 51 1

3! 5!y = − +

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38

そこで sin を Maclaurin 展開とすると,(例題 7-2 より)

( )

( )3 5 7 2 1

11 1 1sin

3! 5! 7! 2 1 !

n

n

n +

−= − + − + + +

+ となる.

振れ角 sinml mg = − は十分に小さいと仮定すると, sinml mg = − の高次の項は無視できて,

sin と近似できる.

これにより外力項は線形( sinml mg = − に比例する形)となり,運動方程式は次の形に変形(線形化)

できる.(この方程式の解 θ(t)は第 1,4 講目で学んだものである.)

ml mg = −

【例題 7-4】上死点からのピストンの位置 s を求めよ.ただし,Maclaurin 展開を用いて,平方根を含

まない形へと近似しなさい.

【解答 7-4】コンロッド長を l ,クランク径を r とする.上死点か

らのピストンの位置 s は

( ) ( )0

A O AO

cos cos

s

l r l r

= −

= + − + (1)

となる.ただし,

sin sinr l = (2)

であり, r l を導入すると,

2 2

sin sin

cos 1 sin

=

= − (3)

となる.式(1)と式(3)より,

と変形できる.

一般に =1/3~1/5 の範囲にあり,したがって2 2sin <<1 と考えることができる.ここで,

( ) 1f x x= − ,2 2sinx = として関数 ( )f x の Maclaurin 級数を求める.

( ) ( )( ) ( )

2

2

0 00

1! 2!

1 11

2 8

f ff x f x x

x x

= + + +

= − − −

(5)

x=2 2sin <<1 より x の二次以上の項を無視すると,

( )

2 2 2 2

11

2

11 sin 1 sin

2

f x x

− −

(6)

と近似できる.よって式(4)と式(6)より,上死点からのピストンの位置 s は

( )

2 21 11 cos sin

2

1 cos 1 cos 24

s r

r

− +

= − + −

(7)

と書き表すことができる.

「機械力学Ⅱ」では,この s を時間 t で微分することでピストンの速度や加速度を求め,

ピストンの運動方程式を立てる.上記のように Maclaurin 級数を用いてピストンの位置 s

の式を予め近似しておくことで,以後の解析が容易なものとなる.

l l

rr

s0A

0B

O O

B

A

上死点

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【類題 7-2】以下の関数の Maclaurin 級数を求めよ.

(3次の項まで求め、n次の項がどのようになるか考えること.)

(1) 2 3 2x x− + 【 22 3x x− + 】

(2) 2 xe 【 ++++++ nn

xn

xxx!

2

!3

2

!2

2

!1

21 3

32

2

(3) ( )log 1x + 【 2 3

1( 1)2 3

nnx x x

xn

+− + − + − + 】

【類題 7-3】Maclaurin 級数(ただし 5x の項までの部分でよい)を用いて,以下の値の近似値

を求めよ.

(1) log 2e

[関数 1log

1e

x

x

+

−を展開し, 1

3x = とする.] 【 0.6930 】

(2) sin 0.1 [関数 sin xを展開し, 0.1x = とする.] 【 0.09983 】

【類題 7-4】Maclaurin 級数を用いて,以下の近似式を導出せよ.ただし,(1), (2), (3)において

は 1x とし,(4)においては正の実数 aに対して ax とする.

(1) ( )5

1 1 5x x+ + (2) ( )2

1 1 2x x− − (3) ( )3

1 1 3x x−

+ −

(4) ( )2 2 1 2

xa x a

a

− − + −

【 各式の左辺を Maclaurin 展開して,xあるいは x aの高次の項を十分に小さいとして無視す

る.詳細は略.】

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40

8 積分・多重積分(その1)

不定積分の定義: ( ) ( ) ( ) ( )f x dx F x C F x f x= + = ただし,C は積分定数.

定積分の定義: ( ) ( ) ( ) ( )b b

aaf x dx F x F b F a = = −

基本的な不定積分: 0dx C= , ( )111

1

n nx dx x C nn

+= + −+

================================================================================

定積分と面積(参考:第10章の演習)

定積分 dxxfb

a )( ⇔ 曲線 f(x),x 軸,x=a,x=b がつくる領域の面積.

================================================================================

【例題 8-1】 「6 微分・偏微分(その3)」の演習で扱ったように,質点の運動において加速度 a(t)

[m/s2],速度 v(t) [m/s],位置 x(t) [m]の間には v(t)=x’(t), a(t)=v’(t)=x’’(t)の関係がある.その逆の関係とし

て以下が成り立つ.

( ) ( ) 21 )(,)( CdttvtxCdttatv +=+=

ただし C1, C2は t=0 の時の位置 x(t)=x(0)および速度 v(t)=v(0)で決まる.このように t=0 の時の条件を初

期条件と呼ぶ.

加速度 a(t)が g(ただし g は定数)のように表される場合の速度 v(t)および位置 x(t)を求めよ.t=0 の

時の位置および速度はそれぞれ x(0)=0 および v(0)=0 とする.

【解答例 8-1】

( ) 111)( CgtCdtgCdttatv +=+=+=

t=0 の時 v(0)=g×0+C1=0 より C1=0.よって,v(t)=gt.

( ) 2

2

222

1)( CgtCdtgtCdttvtx +=+=+=

t=0 の時 x(0)=1/2×g×02+C2=0 より C2=0.よって, ( ) 2

2

1gttx = .

【例題 8-2】 x 方向に力 F(x)が働いている物体を考える.物体の位置が力の方向に x1から x2まで変化

したとき,力 F が物体にした仕事 W は,次式で定義される: dxxFWx

x=2

1

)( .

ばねに繋がれている物体を考える.自然長から x 伸ばした時に物体に働く力は,フックの法則より

F=-kx (k:ばね定数)である.自然長から x1伸びている状態から自然長に戻すときにばねがする仕事を求

めよ.

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【類題 8-1】次の不定積分を求めよ.ただし,a は定数とする.

(1) ∫(2x-1)dx (2) −+− dxxxx )562( 23

(3) ∫(2a-x)(a + x)dx

【x2-x + C , 1

2x4-2x3 +

1

2x2-5x + C ,-

1

3x3 +

1

2ax2 + 2a2x + C 】

【類題 8-2】次の定積分を求めよ.ただし,α,β は定数とする

(1) ∫ (3𝑥 − 2)𝑑𝑥2

0 (2) ∫ (−𝑥3 + 3𝑥2 + 𝑥 − 2)𝑑𝑥

2

−1 (3) ∫ (𝑥 − 𝛼)(𝑥 − 𝛽)𝑑𝑥

𝛽

𝛼

【2, 3

4, ( )

31

6 − − 】

【類題 8-3】次の等式を満たす関数𝑓(𝑥)や実定数 α の値を求めよ.

(1) f(x) = 3x2-x + ∫ f(t)dt2

0

(ヒント: ( )2

0f t dt A= とおいて上式を積分し,A の値を求める.)【f(x) = 3x2-x-6】

(2) ∫ f(t)dtx

α= x3 + x2-2

(ヒント:両辺を微分して f(x)を求める.その上で左辺の積分を行い a の方程式を立てる.)

【f(x) = 3x2 + 2x, α = 1】

【解答例 8-2】

2

1

02

0

2

1

2

1)(

11

kxkxdxkxW

xx=

−=−=

【例題 8-3】次の不定積分および定積分を求めよ.

(1) ( )( )2 3x x dx+ − =

(2) ( )2 2

16 4 5x x dx

−− − =

【解答例 8-3】

(1) ( )( ) ( )2 2 1 1 1 0 1 3 21 1 1 1 12 3 6 6 6

2 1 1 1 0 1 3 2x x dx x x dx x x x C x x x C+ + ++ − = − − = − − + = − − +

+ + +

ただし,C は積分定数.

(2)

( ) ( ) ( ) ( ) 2

2 3 22 3 2 3 2

11

1 16 4 5 6 4 5 2 2 2 2 5 2 2 1 2 1 5 1

3 2

2 1 3

x x dx x x x−

− − = − − = − − − − − − − −

= − − = −

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42

【類題 8-4】次の不定積分を求めよ.

(1) xdx2tan (2) −−

dxx

xx2

)12)(1(

(3) +−

dxx

xx 12 (4) −+ dxexx )22( 2

【 Cxx +−tan , Cxx

x +−− log31

2 , Cxxx ++− 223

2 3 , Ce xx

+−+

22log

2 2

【類題 8-5】次の定積分を求めよ.

(1) −

+−1

2 2

2 )2)(1(dx

x

xx (2)

−−

3

1

2 1dx

xe x

(3) +

1

0 122

1dx

x (4) +

−2

1 )1(

1dx

xx

x

【 2log2

1+− , 3log

1−−

ee ,

2log16

3,

8

9log 】

主要な積分公式 ただし,C は積分定数

1logdx x C

x= + ,

log

xx a

a dx Ca

= + , x xe dx e C= + ,

sin cosxdx x C= − + , cos sinxdx x C= + , 2

1tan

cosdx x C

x= +

================================================================================

【例題 8-4】次の不定積分および定積分を求めよ.

(1) ( )2sin 3cosx x dx+ =

(2) ( )1

02 3t te dt+ =

【解答例 8-4】

(1) ( )2sin 3cos 2 sin 3 cos 2cos 3sinx x dx xdx xdx x x C+ = + = − + + ただし,C は積分定数.

(2) ( )1

1

0

0

3 3 1 12 3 2 2 2 2 1

log3 log3 log3 log3

tt t te dt e e e

+ = + = + − + = − +

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43

9 積分・多重積分(その2)

【類題 9-1】次の不定積分を求めよ.

(1) +

dxx

x

42 (2) − dxxx 2)1(sincos

(3) +

−dx

x

x

tan1

tan1 (4) − dxee xx 322 )3(

【 Cx ++ 42, Cx +− 3)1(sin

3

1, Cxx ++ cossinlog , Ce x +− 42 )3(

8

1】

【類題 9-2】次の定積分を求めよ.

(1) +2

0 1cos

sin

dxx

x (2)

−e

dxx

x

1

22 )1)(log(

(3) +1

0

2 1dxxx (4) +

1

0 21

1dx

x

【 2log , 3

1,

3

12

3

2− ,

4

置換積分

【例題 9-1】不定積分 2 3( 1)x x dx+ を求めよ.

【解答例 9-1】 2 1t x + とおく.両辺を x で微分すると, 2dt

xdx

= となるので,1

2xdx dt= となる.

したがって, 2 3 3 3 4 2 41 1 1 1( 1) ( ) ( 1)

2 2 8 8x x dx t dt t dt t C x C+ = = = + = + + .

【例題 9-2】定積分 1

2 3

0( 1)x x dx+ を求めよ.

【解答例 9-2】先と同様に, 2 1t x + とおく.両辺を xで微分すると, 2dt

xdx

= となるので,1

2xdx dt= .

また積分区間は,0≦x≦1 より,1≦t≦2 となる.

したがって,

21 2 2

2 3 3 3 4

0 1 11

1 1 1 1 15( 1) 2

2 2 8 8 8x x dx t dt t dt t

+ = = = = − =

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44

【類題 9-3】次の不定積分を求めよ.

(1) −

dxx 1

12

(2) + dxxx )1log( 2 (3) xdxx cos2

【 1 1log

2 1

xC

x

−+

+, 2 2 21 1

( 1) log( 1)2 2

x x x C+ + − + , 2( 2)sin 2 cosx x x x C− + + 】

【類題 9-4】次の定積分を求めよ.ただし, , は実数とする.

(1) −−

dxxx )()( 2

(2) +

1

0

22 xdxx

(3) +1

0

2 )1log( dxx

【 4)(12

1 −− ,

2)2(log

4

2log

8− ,

222log

+− 】

【類題 9-5】次の定積分を求めよ.ただし,n は自然数とする. (参考:12 Fourier 級数)

(1) −

dxnx)sin( (2) −

dxnx)cos(

(3) −

dxnxx )sin( (4) −

dxnxx )cos(

(5)

0)cos()sin( dxnxx

【0 ,0 , ( )n

n1

2−− ,0 ,

( )21

11

n

n

−+】

部分積分 u vdx u v u v dx = −

【例題 9-3】不定積分 sinx xdx を求めよ.

【解答例 9-3】 ( ) ( ) ( ) ( )sin cos cos cosx xdx x xdx x x x x dx = − = − − −

cos cos cos sinx x xdx x x x C= − + = − + + .

【例題 9-4】定積分 0

sinx xdx

を求めよ.

【解答例 9-4】 ( ) ( ) ( )00 0 0

sin cos cos cosx xdx x xdx x x x dx = − = − − −

0

cos 0 cos0 sin sin sin 0x

= − + + = + − = .

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45

10 積分・多重積分(その3)

積分の応用 面積,体積

面積 ( )b

aS f x dx= 体積 ( )2

b

aV f x dx=

【積分とは?】微小部分に注目して,全体を知る

① 微小部分を考える

任意の点 x にある微小幅 dx,高さ f(x)の矩形部分の面積

dS は, ( )dS f x dx= である.

② 全体に拡張する ➔「積分する」という

区間 a から b まで dS を足し合わせる.つまり,

( )b b

a adS f x dx= よって,公式 ( )

b

aS f x dx= が得られる.

多重積分の応用 重心,慣性モーメント,断面 2 次モーメント

重心:一点で自身を支えられる点. 断面二次モーメント,慣性モーメント

詳しくは工業力学Ⅰ,工学解析で学ぶ. 断面二次モーメント:曲げにくさ.

詳しくは,工学解析.材料力学Ⅰで学ぶ.

慣性モーメント:回転運動の変えにくさ.

詳しくは,工業力学Ⅱで学ぶ.

dA は微小部分の面積,

dw は微小部分の重量 密度,長さ l を掛けると慣性モーメントとなる.

x x dx+

dS

a b

( )y f x=

x

y

0

S

( )f x

=A

y dAzI 2

=A

z dAyI 2

w

zdw

dw

zdwzG

==

w

ydw

dw

ydwyG

==

w

xdw

dw

xdwxG

==

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46

【例題 10-1】円 222 =+ yx と放物線2xy = で囲まれた部分の面積を求めよ.

【解答例 10-1】まずは,フリーハンドでよいので図を描いて状況を確認する.

図のように,円は(x,y)=(1,1)と(-1,1)を通る.放物線も(1,1)と(-1,1)を通るのでこの点で交わることが分

かる.したがって,積分の範囲は-1≦x≦1 とすればよい.

積分するためには,円の方程式を「y=」の形, 22 xy −= に変形する.この問題では図より上側の半円

を表す, 22 xy −+= ,を用いればよい.

したがって,面積 S は次式となる.

( ) 1 1 1 1

2 2 2 2

1 1 1 12 2S f x dx x x dx x dx x dx

− − − −= = − − = − −

ここで,この式の最右辺の第一項の積分はそのままでは計算できない.もとが円の方程式であったこと

から, sin2=x 注 1と置き替え積分する(置換積分).

2 cosdx d = → ddx cos2= , -1≦x≦1 → -π/4≦θ≦π/4, 2 22 2 1 sin 2 cosx − = − = より,

( ) ===−−−−

4/

0

24/

4/

24/

4/

1

1

2 cos4cos2cos2cos22

ddddxx

なお,上式の最後では,被積分関数が θ の偶関数であり,積分範囲が 0 を挟んで等間隔で

あることから,積分範囲を -π/4≦ θ≦ π/4 から 0≦ θ≦ π/4 の半分を求め,2倍している.

よって,

/4 /4 /42

00 0

cos2 14cos 4 sin 2 2 1

2 2d d

+ = = + = +

したがって,

11 1

2 2 3

1 11

1 2 12 1 1

2 3 2 3 2 3S x dx x dx x

− −

= − − = + − = + − = +

となる.

注 1: cos2=x と置き替えても計算はできるが,-1≦x≦1→3/4≧≧/4(不等号の向きに注意)

となって,積分範囲が 0 を挟まなくなり,下線部のような簡略化ができなくなり計算が面倒とな

る.さらに積分範囲を ( ) −=−−

4/

4/3

1

1

2 sin2sin22

ddxx のように 3/4 からはじめなけれ

ばならなくなり,間違いやすい.

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47

【例題 10-2】図のように,横荷重を受ける壁から張り出したはりを「片持ちはり」と呼ぶ.

はりの断面が円の場合の片持ちはりのたわみを求めなさい.ただし,円の半径 r は 10mm とし,端部の

荷重 W は 10N,はりの長さ l は 400mm,はりのヤング率 E は 73000N/mm2とする.

なお,片持ちはりのたわみは,3

3y

z

Wl

EI = で求められる.これらは材料力学Ⅰで学ぶ.ヤング率 E は材料

の変形のしにくさ(剛性),Izは z 軸(紙面に垂直な軸)まわりの「断面二次モーメント(曲げにくさ)」

である.

【解答例 10-2】まず,断面二次モーメント =A

z dAyI 2 を

求める.

yz 平面上の円の方程式は 222 ryz =+ .dA は右図より

dA=bdy である.これを計算するために b を求めると

22 yrz −= より 222 yrb −= となる.

したがって,断面二次モーメント Izは, −−−===

r

r

r

rAz dyyrybdyydAyI 22222 2

となる.二重積分であるが,この場合には,y 方向にのみ全体に拡張しているため,通常の積分となる.

これを計算するためには,例題 1 と同様に,置換積分 siny r = を行う.

cos/ rddy = → drdy cos= ,-r≦x≦r → -≧≧, cos22 ryr =− より,

( ) ( ) −−−==−=

2/

2/

2242/

2/

2222 cossin2coscossin22

drdrrrdyyryI

r

rz

=2/

0

224 cossin4

dr (偶関数,積分範囲が 0 を挟んで等間隔より)

また倍角の公式,2sin cos sin 2 = ,2 1 cos2

sin2

−= を用いて計算すると,

( )4

/2 /2 /2 /24 2 2 4 2 4

0 0 0 0

1 cos44 sin cos sin 2 1 cos4

2 2z

rI r d r d r d d

−= = = = −

( )/24 4 4

0

sin 4 10 0 0

2 4 2 2 4 4

r r r

= − = − − − =

.よって,r=10mm より Iz= ×104/4=2500 [mm4]となり,

片持ちはりのたわみは,3 310 400

0.3721mm3 3 73000 2500

y

z

Wl

EI

= = =

となる.

注 1:例題1と同様の理由で cosry = としていない.

y

b

dy

dA=bdy

z

y

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48

【類題 10-1】次の面積を求めよ.

(1) 放物線y = -x2 + 4x + 2と x 軸で囲まれた部分の面積を求めよ. 【8√6】

(2) 放物線y = x2-2x-3(x>0)と x 軸,y 軸で囲まれた部分の面積を求めよ. 【9】

(3) 2 つの放物線y = x2-x + 1とy = -x2 + 3x + 5で囲まれた部分の面積を求めよ.【8√3】

【類題 10-2】曲線y = |x2-4|と直線y = x + 2で囲まれた部分の面積を求めよ. 【17

2】

【類題 10-3】曲線 593 23 +−+= xxxy と点(2, 7)における接線とで囲まれた部分の面積を求めよ.

【4

2187】

【類題 10-4】曲線xxey −= と点(2, 2 2−e )における接線および y 軸とで囲まれた部分の面積を求めよ.

【 19 2 −−e 】

【類題 10-5】2xy = と xy = で囲まれる部分を x 軸のまわりに回転し得られる立体の体積を求めよ.

【 15

2】

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49

11 積分・多重積分(その4)

【類題 11-1】曲線xxey = と x軸と 2 直線 1=x , 3=x で囲まれる部分を x軸のまわりに回転し得られる立

体の体積を求めよ. 【 )13(4

26 ee −

【類題 11-2】曲線 xxy 44 2 +−= と y 軸,および直線 1=y で囲まれる部分を y 軸のまわりに回転し得られる

立体の体積を求めよ. 【24

【類題 11-3】次の微分方程式を解け.

(1) 1dy

xdx

= + (2) 3 0xy − =

【21

2y x x C= + + , 3logy x C= + 】

(3) 2 3y y = − −

【2 3

2

xy Ce−= − 】

積分の応用 ➔ 微分方程式の解法

1階常微分方程式:( )

( )

f xdy

dx g y= の解の求め方 ➔ 変数分離形

変数分離形による解法 ➔ x と y に関する項をそれぞれ左辺,右辺に分けて解く方法.

( )

( )

f xdy

dx g y= ➔ 変数を分離 ➔ ( ) ( )g y dy f x dx= ➔ 積分 ➔ ( ) ( )g y dy f x dx C= +

===============================================================================

【例題 11-1】微分方程式dy

ydx

= で表される関数 y を求めよ.

【解答例 11-1】変数を分離して, 1dy dx

y= .積分して, 1

dy dxy

= .

両辺をそれぞれ計算すると, log y x C= + .よって, log log x Cy e += .

したがって, x Cy e += より, x C x C C x xy e e e e e De+= = = = (ただし,D は初期条件な

どによって定まる定数)と求められる.

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50

12 Fourier 級数

■ Fourier(フーリエ)級数展開に関する説明

ある周期 T で繰り返されている(周期的な)関数 f(x) は,様々な cos波と sin 波の重ね合わせ

(足し合わせ)によって,次のように表すことができる.

( ) 0

1 1

2 2cos sin

2n n

n n

a n nf x a x b x

T T

= =

= + + 1, 2,3,n (A)

関数 f(x)を式 (A)のように展開することを Fourier級数展開,式 (A)を Fourier 級数という.

係数 a0,an,bn は Fourier 係数といい,それぞれ以下で求められる.

( )2

0

2

2T

T

a f x dxT

= , ( )2

2

2 2cos

T

n

T

na f x x dx

T T

= , ( )

2

2

2 2sin

T

n

T

nb f x x dx

T T

=

弦の振動,音波,電子回路中の電気信号など,周期的な変化を伴う現象は工学の至るところに現れる.

これらの現象を解析するときに,Fourier級数展開は有用な手法である.

=================================================================================

【例題 12-1】右図の波形の Fourier 級数を求めよ.

【解答 12-1】周期は 2T で,関数は,

( ) ( )

( ) ( )

1

0 ,

f t a t a

f t t a a t

= −

= − −

である.

Fourier 係数を求めるために,上公式に代入・演算する..

( )0

2 1 21

2

a

a

aa f t dt dt

− −

= = =

( )2 2 1 1 1 2

cos cos sin sin2 2

aa

n

aa

na f t t dt nt dt nt na

n n

−− −

= = = =

( )2 2 1 1 1

sin sin cos 02 2

aa

n

aa

nb f t t dt nt dt nt

n

−− −

= = = − =

奇関数のため 0 となる.

したがって,Fourier 級数は,

( )1

2 2 2sin cos sin cos sin 2 cos 2

2n

a af t na nt a t a t

n

=

= + = + + +

となる.

【Hint】

☆奇関数とは? ( ) ( )f x f x− = − を満たす関数.例) ( )f x x= , ( ) 3f x x= , ( ) sinf x x= ,など.

☆偶関数とは? ( ) ( )f x f x− = を満たす関数.例) ( ) 2f x x= , ( ) 4f x x= , ( ) cosf x x= ,など.

【例題 12-2】右図の様な矩形波信号は以下の関数 ( )f x で表される.

この信号は周期が 2T である.この関数を Fourier 級数展開せよ.

( )( )( )

01

01

xf x

x

− −=

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51

【類題 12-1】右図のように,周期が 2T の関数 ( )( )( )

0 0

0

xf x

x x

− =

Fourier 級数展開せよ.

【2 2 2 2

1

2 cos cos3 cos5 cos(2 1)( )

4 1 3 5 (2 1)

sin sin2 sin3 sin( 1)

1 2 3

N

x x x N xf x

N

x x x Nx

N

【解答 12-2】f(x) の一周期平均は 0 なので 00a である.また,奇関数なので 0

na である.

よって,n

b のみを求めればよい.上公式より,

( ) ( ) ( ) ( )

( )

( )( )

2 0

2 0

0

0

2, 4, 6,

1, 3

2 2 1 1 1sin sin 1 sin 1 sin

1 1 1 1 1 1 1 1 1 1cos cos cos0 cos cos cos0

02 2

1 cos 1 1 4

T

n

T

n

n

n

nb f x x dx f x nx dx nx dx nx dx

T T

nx nx n nn n n n n n

nn n

n

− − −

=

=

= = = − +

= + − = − − + − +

= − = − − =

( ), 5,

したがって,Fourier 級数は,

( )( )sin 2 14 sin3 sin5

sin3 5 2 1

N xx xf x x

N

− + + + + + −

( 1, 2,3,N )

【参考】N を 1 まで,2 まで…100 までとしたときの波形 N が大きくなるにつれ元の波形に近づく

【例題 12-3】交流電流において,正・負方向に流れている電流のど

ちらか一方だけを流す回路を半波整流器と呼ぶ.ここでは,右図の

ように,正弦波電圧の負の部分を除去するものを考える.

このときの周期関数 f t は,

0 02

( )2

sin 02

Lt

f tL

E t tL

で表される.

この関数を Fourier 級数展開せよ.

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52

【解答 12-3】

( )

( ) ( )

22 20

0

02 2 0

2 2 2 2 2 20 sin cos

2

2 2cos cos0 cos cos0 1 1

2 2

LL L

L L

La f t dt dt E tdt E t

L L L L L L

L L E E EE E

L

− −

= = + = −

= − − − = − − − = − − =

( )2 20

2 2 0

2 2 2 2 2 2 2cos 0 cos sin cos

L L

n

L L

n n na f t t dt tdt E t tdt

L L L L L L L

− −

= = +

[積和の公式: ( ) ( ) 1

sin cos sin sin2

A B A B A B= + + − を用いて]

( ) ( )2 2

0 0

2 1 2 12 2 2 2sin sin sin sin

L Ln nE n n E

t t t t dt t t dtL L L L L L L L

+ − = + + − = −

( )

( )

( )

( )2

0

2 1 2 1cos cos

2 1 2 1

L

n nE L Lt t

L n L n L

+ −= − +

+ −

····································· (A)

となるので,n=1 と n≠1 のときで分けて考える必要がある.

同様に,

( )2 20

2 2 0

2 2 2 2 2 2 2sin 0 sin sin sin

L L

n

L L

n n nb f t t dt tdt E t tdt

L L L L L L L

− −

= = +

[積和の公式: ( ) ( ) 1

sin sin cos cos2

A B A B A B= − + − − を用いて]

( ) ( )2 2

0 0

2 1 2 12 2 2 2cos cos cos cos

L Ln nE n n E

t t t t dt t t dtL L L L L L L L

+ − = − + − − = − −

( )

( )

( )

( )2

0

2 1 2 1sin sin

2 1 2 1

L

n nE L Lt t

L n L n L

+ −= − −

+ −

····································· (B)

となるので, 1n と 1n のときで分けて考える必要がある.

(i) 1n のとき

( )2 22

1

0 00

4 4sin sin 0 cos cos 2 cos0 0

4 4

L LLE E L E L

a t dt tL L L L L

= − = − = − − =

( )22

1

00

4 4cos cos0 sin sin 2 0 0

4 4 2 2

LLE E L E L L E

b t dt t tL L L L L

= − − = − − = − − − − =

(ii) 1n のとき

( )( )

( )( )

( )( )

( )( )

( ) ( )

cos 1 cos0 cos 1 cos02 1 2 1

cos 1 cos 12 1 2 1 2 1 2 1

n

E L La n n

L n n

E L L L Ln n

L n n n n

= − + − + − −

+ −

= − + + − + −

+ − + −

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53

( )( )

( )( )

( )( )cos 1 cos 1

2 1 2 1 1 1n

E L L Ea n n

L n n n n

= − + + − −

+ − + −

ここで,n が偶数であるか,奇数であるかで,cos の値が 1, 1 となるので,正の整数 1, 2,3,m

を用いて, 2n mのとき, 2 1n m のときを考え,以下となる.

( ) ( ) ( )( ) ( )( )

( ) ( ) ( )( )( )

2

22

2 2 1 2 2 1 2 1 2 1 4 1

0 2 12 2 2 2 2 2 2 2

n

E L L E En m

L m m m m π ma

E L L En m

L m m m m

− − = − =

+ − + − − =

− + − = = +

+ +

また,

( )( )

( )( )

( )( )

( )( )

sin 1 sin 0 sin 1 sin 02 1 2 1

sin 1 sin 1 02 1 2 1

n

E L Lb n n

L n n

E L Ln n

L n n

= − + − − − −

+ −

= − + − − =

+ −

となる.したがって,Fourier 級数は,以下となる.

0 1 1

2 2

21

2 2 2 2( ) cos sin cos sin

2 2 1 4sin cos

2 4 1

n n

n n

m

n nf t a a t b t a t b t

L L L L

E E E mt t

L m L

【参考】Fourier 変換

非周期的な関数は Fourier 級数展開できない.そこで,非周期的な関数を周期が無限大の周期的関数で

あると考えて,Fourier 級数の考え方を拡張したものが Fourier 変換である.関数 ( )f x を Fourier 変

換することで,周波数 を持った波がどのくらい含まれているかを表す関数 ( )F を得られる.

偶関数 f(x)の Fourier 変換(Fourier余弦変換):0

2( ) ( )cos df x x xF ,

奇関数 f(x)の Fourier 変換(Fourier正弦変換):0

2( ) ( )sin df x x xF ,