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2016-A 電気回路理論第一 前半
教員: 藤本 入力: 高橋光輝
September 25, 2017
第 1回
1 直流回路
1.1 電気回路とは
回路要素 (抵抗、コンデンサ、インダクタ、トランジスタ、etc)が導体によって接続されたループで、電源によって電流が流れるもの。
クーロン力
F =1
4πε
q1q2r2
は重力F = −G
m1m2
r2
に対応する。
1
静電ポテンシャル
V =1
4πε
q1r
は位置エネルギーU = −G
m1
r
に対応する。
電圧 (電位、ポテンシャル) 記号 V, E 単位 [V]ボルト
静電界 E のなか単位電荷を a → bに移動させるのに必要な仕事量
Vba = −∫ b
a
Edl
電流 記号 I 単位 [A]アンペアある面 Aを単位時間に通過する電荷量
電力 記号 P 単位 [W]ワット
V × I =dw
dq× dq
dt=
dw
dt=(単位時間あたりのエネルギー量
)
2
1.2 線形電気回路
理想化された抵抗、コンデンサ、インダクタ、電源などの線形素子から構成された回路。
線形回路は理論的に取り扱いやすい。
この講義の扱う範囲。
(出力
)= a×
(入力
)係数 aが分かれば全ての入力に対する出力が分かる。→線形性の強み。
例: オームの法則 I = 1RV
非線形回路 ex) 非線形抵抗 (電球など)、トランジスタ、MOSFET
狭い範囲で見れば線形に近似できる。
1.3 直流及び交流信号
・直流
3
・交流
線形回路の場合、直流と交流で (ほぼ)全ての波形を表現できる。→フーリエ級数展開、フーリエ変換
1.4 回路要素
補足プリント (1)参照
インダクタ補足
V =dϕ
dt
磁束 ϕ = Li
コンダクタ補足Q = CV
I = dQdt より
4
補足プリントの続き 2端子では、この 3素子しか出てこない。(線形回路では)
直流回路では抵抗成分しか扱われない。直流では安定状態 (十分に時間がたった状態)で、
コイル=短絡 (ショート) V = Ldidt = 0
コンデンサ=開放 (断線) I = C dVdt = 0
だから。
JIS表記について 本講義では旧表記を用いる。
1.5 電源
理想電圧源
電流に無関係に電圧が E
5
ショート禁止 I = ∞となり、萌える。
理想電流源
電圧に無関係に電流が I
開放禁止 I を無理やり流そうとして V = ∞
一般の電源
6
内部抵抗があるため電流が大きいと出力電圧が低下。
1.6 キルヒホッフの法則 (Kirchho's Law)
第 1法則 (電流則) Kirchha's Current Law = KCL 節点への流入電流の和=節点からの流出電流の和
n∑k=1
ik = 0
電荷保存則
第 2法則 (電圧則) Kirchho's Voltage Law = KVL 任意の閉路 (ループ)を一巡する際の電位上昇の和=電圧降下の和
7
n∑k=1
vk = 0
電圧の一位則
直流回路はオームの法則、KCL、KVLで解くことができる。
ex1) T型回路
節点 B に KCLを適用
I1 − I2 − I3 = 0 (1)
閉路 1に KVLを適用
V −R1I1 −R2I2 = 0 (2)
8
閉路 2に KVLを適用
R2I2 −R3I3 = 0 (3)
(1), (2), (3) を連立して下記を得る。(自習) I1I2I3
=1
R1R2 +R2R3 +R3R1
(R2 +R3)VR3VR2V
1.7 合成抵抗
補足プリント (2)参照
ex1の別解1
R 2/3︸︷︷︸2 と 3 の並列の意
=1
R2+
1
R1
Rtotal = R1 +R2/3
= R1 +R2R3
R2 +R3
I1 =V
Rtotal=
R2 +R3
R1R2 +R2R3 +R3R1V
簡単に求まる。回路の直感的理解に役立つ。
9
1.8 ブリッジ回路
合成抵抗より、
I1 =V
R1 +R2
I2 =V
R1 +R2
ここで節点 BC間の電圧を計算すると、
VCB = −R2I1 +R4I2 = − R2V
R1 +R2+
R4V
R3 +R4
=−R2R3 +R1R4
(R1 +R2) (R1 +R4)V
つまり、R1R4 = R2R3(ブリッジの平衡条件)のとき入力電圧 V によらす BC間の電圧は 0になる。
→ BC間に検流計をつないでも電流は流れない。高精度抵抗測定などに応用。
1.9 ∆ ↔ Y 変換
10
回路をブラックボックスと考えたとき、外から見た時の両回路が等価となる条件を考える。まず∆回路について考える。各節点に KCLを適用すると、
I1 − I12 + I31 = 0
I2 − I23 + I12 = 0
I3 − I31 + I23 = 0
オームの法則により、接点間電流を表すと、
I1 =V12
R12− V31
R31(4)
I2 =V23
R23− V12
R12(5)
I3 =V31
R31− V23
R23(6)
11
一方、Y 回路を考えると、節点N に KCLを適用して、
I1 + I2 + I3 = 0 (7)
各節点にオームの法則を適用
V12 = R1I1 −R2I2 (8)
V23 = R2I2 −R3I3 (9)
V31 = R3I3 −R1R1 (10)
(7)を使って (10)の I3 を消去
I2 = −V31
R3− R1 +R2
R3I1
となるので、これを (8)に代入して I2 を消す。
I1R3V12 −R2V31
R1R2 +R2R3 +R3R1
この式と (4), (5), (6)を比較すると次の関係が得られる。
R12 =R1R2 +R2R3 +R3R1
R3(11)
R31 =R1R2 +R2R3 +R3R1
R2(12)
同様に
R23 =R1R2 +R2R3 +R3R1
R1
これらの関係をみたとき、∆回路は Y 回路と等価となり互いに変換できる。
また (11), (12)を 2つずつ掛け合わせる。 1R12R23
1R23R31
1R31R12
=1
(R1R2 +R2R3 +R3R1)
R3R1
R1R2
R2R3
(13)
(13)を足し合わせる。
12
R12 +R23 +R31
R12R23R31=
1
R1R2 +R2R3 +R3R1
(12)に代入する。 R1
R2
R3
=1
R12 +R23 +R31
R12R31
R23R12
R31R23
第 2回
2 回路方程式
節点方程式 節点電位を変数にとり、KCLにより方程式をつくる。節点電位: KVLは自動的に満たされる。
閉路方程式 閉路電流を変数にとり、KVLにより方程式をつくる。閉路電流: KCLは自動的に満たされる。
2.1 節点方程式
回路のグラフ 回路要素を明示せずに、相互接続だけを表した図。
グラフ化するとき、電流源を開放、電圧源を短絡させる。
13
カットセット グラフを 2つの部分に分離することができる枝の組み合わせ。
カットセットの枝電流の総和=0(KCLそのもの): カットセット方程式
→ KCLを適用すると、節点方程式が得られる。
n個の節点→ n− 1個の独立した方程式 (基準の節点=0だから)
節点 aに KCLを適用I − I1 − I2 = 0 (14)
節点 bに KCLを適用I2 − I3 = 0 (15)
(1), (2) の電流 I1, I2 を節点電位 Va, Vb で表現すると、
I − Va
R1− Va − Vb
R2= 0
Va − Vb
R2− Vb
R3= 0
14
行列で表すと、 [ 1R1
+ 1R2
− 1R2
− 1R2
1R2
+ 1R3
] [Va
Vb
]=
[I0
]対角要素: 自己コンダクタンス
非対角要素: 相互コンダクタンス
右辺: 節点電流源ベクトル
対角要素 (yii): 自己コンダクタンス i番目の節点に接続されている全ての枝のコンダクタンス
非対角要素 (yij): 相互コンダクタンス i番目と j 番目の節点を結ぶすべての枝のコンダクタンスの和に負の符号をつけたもの。
節点電流ベクトル 各々の節点に接続される等価電流源
節点に流れ込むものに+, 流れ出るものに-符号をつける。
教科書 p.29 例題 1.7
電圧源を含む場合 ex)
節点 aに関してI1 − I2 − I3 = 0
I1 =V − Va
R1
とすればよい。
15
I1 =V
R1− Va
R1
= I
等価的な電流源に変換
→ノートンの定理 (来週)の特殊例
2.2 閉路方程式
グラフの木で補木 木: 全ての節点を含み、かつ閉路のないような枝で連結されているグラフ。
n個の節点→木の枝数 n− 1
補木: (元のグラフ数)-(木の枝)
グラフの枝数 b→補木の枝数 b− (a− 1)
次の例では n = 4, b = 5
16
タイセット グラフの閉路を構成する 1組の枝。
木に補木の枝を一つ追加すると、1つのタイセットができる。
木を 2, 3, 5として、+ 枝 1→閉路 11, 2, 5- 枝 4→閉路 23, 4, 5各閉路に対して KVLを適用することで、閉路方程式を得ることができる。
互いに独立した閉路の数=補木の数=b− (n− 1)
例) T型回路
17
各閉路のループ電流 I1, I2 とする。
閉路 1に KVLを適用V −R1I1 −R2 (I1 − I2) = 0 (16)
閉路 2に KVLを適用R2 (I1 − I2)−R3I2 = 0 (17)
次に (3), (4)を行列の形で書くと、閉路方程式が得られる。(R1 +R2 −R2
−R2 R2 +R3
)(I1I2
)=
(V0
)対角要素: 自己抵抗
非対角要素: 相互抵抗
右辺: 閉路電圧源ベクトル
対角要素 (zii): 自己抵抗 i番目の閉路のすべての抵抗の和
非対角要素 (zij): 相互抵抗 i番目と j 番目の閉路が共通に持つ全ての抵抗の和
2つの閉路が同じ向きなら正符号、逆なら負符号
閉路が網目 (内側に枝がない)の場合は、必ず負符号
ループ電流は通常右回りを正にとる。
閉路電圧源ベクトル 各閉路に含まれる等価電圧源の和
閉路電流の向きに電流を流す電圧を正符号とする。
18
電流源を含む場合
V1 = RI −RI1
RI: 等価な電圧源に変換
鳳・テブナンの定理 (来週)の特殊な例
2.3 節点方程式の数式的表現
19
節点 a: i1 + i2 = 0
節点 b: −i2 + i3 = 0
節点 c: −i1 − i3 = 0
これを行列表示にすると、 +1 +1 00 −1 +1−1 0 −1
i1i2i3
=
000
(18)
左辺左項: 接続行列 A: グラフを数式的に表したもの
左辺右項: 枝電流ベクトル
+1: 枝電流が流れ出るとき
-1: 枝電流が流れ入るとき
(1行目)+(2行目)=-(3行目) からも分かるように、節点が n個のとき、独立なカットセット数 n− 1=回路の階数 (rank)
節点 cを基準 (vc = 0)とすると、接続行列 Aの最後の行は不要。
20
既約接続行列 A′ =
(+1 +1 00 −1 +1
)で記述できる。
式 (5)は Aib = 0とかける。枝電流を節点電位で表せば、節点方程式が得られる。
k番目の枝
ik =vkRk
+ isk − vskRk
→行列表示
ib = Gvb + isb −Gvsbi1i2...ib
=
G1 0
G2
. . .
0 Gb
v1v2...vb
+
is1is2...isb
−
G1 0
G2
. . .
0 Gb
vs1vs2...vsb
Gk =
1
Rk
注: 電圧源は抵抗に直列に、電流源は並列に挿入する。(電圧源に並行に抵抗があっても、出力電圧は抵抗によらず抵抗の意味がない。電流源に直列に抵抗があっても、抵抗値によらず電流は同じ。)
21
よってAib = AGvb +Aisb −AGvsb = 0
また、枝電圧と節点電圧の関係を求めると、 v1v2v3
=
+1 0 −1+1 −1 00 +1 −1
vavbvc
vb = AT vn
を代入すると、AGAT︸ ︷︷ ︸
Yn
vn = AGvsb −Aisb︸ ︷︷ ︸js
Yn: 節点コンダクタンス行列js: 節点電流源ベクトルいま
G = diag
(1
R1,1
R2,1
R3
)
=
1R1
0 0
0 1R2
0
0 0 1R3
22
なので、
Yn = AGAT
=
1 1 00 −1 1−1 0 −1
1R1
0 0
0 1R2
0
0 0 1R3
1 0 −11 −1 00 1 −1
=
1R1
+ 1R2
− 1R2
− 1R1
− 1R2
1R2
+ 1R3
− 1R3
− 1R1
− 1R3
1R1
+ 1R3
電流源ベクトルのみしかないので、js は、
js = 0−Ajsb
= −
1 1 00 −1 1−1 0 −1
−is1−is20
=
is1 + is2−is2−is1
よって節点方程式は 1
R1+ 1
R2− 1
R2− 1
R1
− 1R2
1R2
+ 1R3
− 1R3
− 1R1
− 1R3
1R1
+ 1R3
vavbvc
=
is1 + is2−is2−is1
節点 C を基準にすると vc = 0なので最後の行は不要。
結局、 ( 1R1
+ 1R2
− 1R2
− 1R2
1R2
+ 1R3
)(vavb
)=
(is1 + is2−is2
)
第 3回
3 線形回路の諸定理
3.1 重ね合わせの理
複数の電源を含む回路において、任意の枝の電流または枝電圧は、電源が 1個ずつしか存在していない場合のすべてを重ね合わせたものに等しい。
∵キルヒホッフの法則が電流、電圧について線形だから。
23
証明 前回の講義より節点方程式は一般的に
Ynvn = jn
回路の解がある場合には逆行列 Y −1n が存在するので、
vn = Y −1n jS
いま jS を個別の電源で書き表すと、
jS =∑n
jSn
jS1 =
j10...0
, jS2 =
0j20...0
よって
vn = Y −1n
∑n
jSn
=∑n
Y −1n jSn
これより節点電圧 vn は、個別の電源のみの節点電位 Y −1n jSn の重ね合わせで表現す
ることができることがわかる。
ex
24
I ′2 =V
R1 +R2
I ′′2 =1R2
1R1
+ 1R2
I
=R1
R1 +R2I
よって全電流は重ね合わせの理より
I2 = I2′ + I ′′2 =V +R1I
R1 +R2
通常の解法 KCLと KVLより
I1 − I2 + I = 0
25
V = R1I1?R2I2
∴ I2 =V +R1I
R1 +R2
とやり確かに重ね合わせの理が成り立っている。
(直流+交流)=(直流)+(交流)として計算できる。
I ′2 =V
R1 +R2
3.2 等価電源の定理
鳳・テブナンの定理
26
R0: 電源を除去した時の端子 1-1'から見た抵抗V0: 端子 1-1'開放時の電圧抵抗R接続時の V, Iは、電圧 V0、内部抵抗R0の等価電源に接続した時と同じである。
I =V0
R0 +R
V =R
R0 +RV0
電源 E を 0から増加させて I ′ = 0となるようにする。→開放と同じなので E = V0
I ′′ = − V0
R1 +R
I + I ′′ = I ′ = 0
より、
I =V0
R0 +R
27
これは電源 V0、内部抵抗 R0 の電源をつないだ時の電流と同じ。
注: R0 + R = V0
I において、短絡時 R = 0を考えると、内部抵抗 R0 = 開放電圧 V0
短絡電流 と書ける。測定可能な電圧、電流から求められるので便利。
端子 abの開放時の I1 は、25 = 5I1 + 20 (I1 + 3)
より I1 = −1.4A
よって開放電圧V0 = 20 (−1.4 + 3) = 32V
また電源を全て除去すると、
端子 abから見た合成抵抗は1
15 + 1
20
+ 4 = 8Ω
よって元の回路は
28
と等価。
ノートンの定理 鳳・テブナンの定理において、
開放電圧 V0 →短絡電流 I0
抵抗 R0 →コンダクタンス G0
に置き換えたもの。
29
G0: 電源を除去した時の端子 1-1'から見たコンダクタンス (端子 1-1'開放時)
I0: 端子 1-1'短絡時の電流
コンダクタンス G接続時の V, I は、電流源 I0、内部コンダクタンス G0 の等価電流源に接続したときと同じになる。
V =I0
G0 +G, I =
G
G0 +GI
証明は同様に行える (省略)。
*鳳・テブナンの定理、ノートンの定理を用いて、電圧源、電流源を相互に変換可能。
ex) 回路簡略化の例
30
31
*電圧源に並列抵抗 Rp
*電流源に直列抵抗 RS
3.3 供給電力最大の法則
抵抗 Rで消費される電力 P を最大にするには?
等価電源に置き換えると、
32
P = RI2 =RV 2
0
(R0 +R)2
∂P
∂R=
(R0 +R)2 − 2R (R0 +R)
(R0 +R)2 V 2
0
=R0 −R
(R0 +R)3V
20
よって R = R0 のとき負荷抵抗 Rに最大の電力が供給される。
Pmax =R0V
20
(2R0)2 =
V 20
4R0
効率
η =RI2
V0I=
RI
V0=
1
1 + R0
R
33
Plose = R0I2 =
R0V20
(R0 +R)2
3.4 補償の定理
電圧、電流の変化分は、元の回路の電源を除去して、代わりに電圧源 V = RI0を挿入した時の電圧電流に等しい。
∆V = V ′,∆I = I ′
証明
34
図 (c)は元の回路と同等。よって
V +∆V = V ′ + V
I +∆I = I ′ + I
よって∆V = V ′,∆I = I ′
ex)
35
∆I = − RI
R0 +R
(別解)
通常の KVLで解くと、
I =V0
R0
I +∆I =V0
R0 +R
よって
∆I =V0
R0 +R− V0
R0
= − R
R0 +RI
補償の定理の結果と一致する。
(*)応用: 抵抗値の誤差の影響を調べるのに有効。
36
ex) いま、抵抗Rの値が設計値の 120%大きかったとする。この時の電流の変化∆Iを求めたい。
I0 = 2A
また∆R = 6× 0.2 = 1.2Ω
よって補償電源 V = 1.2× 2 = 2.4V
よって∆I ≃ −0.25A
6Ωに対して鳳・テブナンの定理を適用すると開放
18V × 3
1 + 3= 13.5V
除去1
1 + V3= 0.75Ω
I0 =13.5V
6 + 0.75= 2A
1Ωに対して鳳・テブナンの定理を適用すると開放
2.4× ×3
6 + 1.2 + 3= 0.705V
除去1
11.2 + 1
3
= 2.11
∴ ∆I =−0.705
1 + 2.11= −0.226A
37
補償の定理と双対な定理
抵抗→コンダクタンス
電流→電圧
電圧源→電流源
に置き換えても、同様のことが成立。
このとき電圧、電流の変化分∆V,∆I は、元の回路の電源を除去して、代わりに電流源 I = GV0 を挿入した時の電圧、電流に等しい。
証明は同様 (省略)
このように電圧⇔電流などの置き換えができることを、回路の双対性と呼ぶ。
電流⇔電圧
抵抗⇔コンダクタンス
抵抗の直列接続⇔抵抗の並列接続
電流源⇔電圧源
KCL⇔ KVL
38
3.5 相反原理
このときE1
I2=
E′2
I ′1
が成立。
閉路方程式z iloop︸︷︷︸閉路電流ベクトル
= vloop︸︷︷︸閉路電圧源
zは対称行列zT = z
Y = z−1 とすると、iloop = Y vloop
39
N 内に電源がないので、
iloop = Y ·
v1v20...0
のって
i1 = Y11v1 + Y12v2
i2 = Y12v1 + Y22v2
いま v2 = 0とすると、i2 = Y12v1
また v1 = 0のとき、i′1 = Y12v
′2
∴ v1i2
=v′2i′1
=1
Y12
第 4回
4 交流回路
平均値零の正弦波を入力した時の定常解を扱う。→ほとんどの波形は異なる周波数の正弦波の重ね合わせで表現可能 (フーリエ変換)。
定常解 十分に時間がたった時の周期を持つ解
単一正弦波
v (t) = Vm cos (ωt+ θv)
i (t) = Im cos (ωt+ θi)
Im: 振幅ω: 角周波数θi: 位相角
40
電源が単一正弦波で表せるなら、線形回路の全ての電圧、電流成分は各周波数 ωの正弦波で表すことができる。よって定常状態の交流回路の動作で重要なのは、
振幅
位相
である。
4.1 微分を表す回路方程式の一般解
例 1
vs = Vm cos (ωt+ θ)
回路方程式は、
Ri (t) + Ldi (t)
dt= Vm cos (ωt+ θ) (19)
41
一般解は、i (t) = I0e
−RL t︸ ︷︷ ︸
固有解
+A1 cosωt+A2 sinωt︸ ︷︷ ︸特解
固有解→過渡解 t → ∞で 0
特解→定常解 ωで振動ただし、I0 は t = 0における回路の初期状態によって与えられる量。
微分方程式の復習
1. 固有解 (19)の右辺=0とおく。解を i1 (t) = I0ept とおくと、
(R+ Lp) I0ept = 0 ⇒ p = −R
L
2. 特解 解を i2 (t) = A1 cosωt+A2 sinωtとおき (19)に代入。
R (A1 cosωt+A2 sinωt)+L (−ωA1 sinωt+ ωA2 cosωt) = Vm (cosωt · cos θ − sinωt sin θ)
cosωtと sinωtの係数を比較して、[R ωL
−ωL R
] [A1
A2
]=
[Vm cos θ−Vm sin θ
]
42
∴[
A1
A2
]=
Vm
R2 + ω2L2
[R cos θ + ωL sin θωL cos θ −R sin θ
](20)
一般解は i1 (t) + i2 (t)
定常解を簡単に求める方法 (その 1) 式 (19)の定常解を求めるには、これを解く代わりに、
Ri (t) + Ldi (t)
dt= Vmej(ωt+θ) (= Vm [cos (ωt+ θ) + j sin (ωt+ θ)]) (21)
とおく (下線強調)。式 (21)の特解 i (t)を Iejωt と仮定し、(21)に代入。
RIejωt + jωLIejωt = Vmej(ωt+θ)
I =Vm
R+ jωLejθ
I を複素表示という。ドットは複素数の意味。式 (21)の特解 (定常解)は、
i (t) = Iejωt =Vm
R+ jωLejθ
式 (19)の定常解は、
i2 (t) = ℜ [i (t)] = ℜ[
Vm
R+ jωLej(ωt+θ)
]
= ℜ
Vmej(ωt+θ)√R2 + (ωL)
2ejα
=
Vm√R2 + (ωL)
2ℜ[ej(ωt+θ−α)
]=
Vm√R2 + (ωL)
2cos (ωt+ θ − α)
ただし α = tan−1 ωLR
この係数が (20)と一致することを確認せよ。(自習)
ヒント: a cosβ + b sinβ =√a2 + b2 cos (β − φ) , φ = tan−1 b
a
43
4.2 正弦波の複素表示
複素数の指数関数表示 オイラーの公式
ejθ = cos θ + j sin θ
より、複素数x+jyを二次元座標に表すと、x+jy = rejθ: 指数実数表示 (r =√
x2 + y2)
v (t) = Vm cos (ωt+ θv)
= ℜ
Vmejθv︸ ︷︷ ︸=Vm電圧ベクトル
ejωt
Vm∠θv とも表記
i (t) = Im cos (ωt+ θi)
= ℜ
Imejθi︸ ︷︷ ︸=Im電流ベクトル
ejωt
振幅、位相を一つの複素数で表記=フェーザー (Phaser)
44
複素平面上のベクトルを上図のように表記。(フェザーダイアグラム)
交流回路の定常解を考えるとき、電圧・電流ベクトルの変化だけを考えればよい。
4.3 回路要素のインピーダンス
z =Vm
Im=
Vmejθv
Imejθi=
Vm
Imej(θv−θi)
(θv − θi): 電圧と電流の位相のずれ (インピーダンスの偏角)
抵抗 交流でもオームの法則が成り立つことから、
zR = R
←インピーダンスは抵抗の概念を拡張したもの。
インダクタンス
45
電流を iL (t) = Im cos (ωt+ θi)としたときに、
vL (t) = LdiL (t)
dt= LImω − sin (ωt+ θi)
= LImω cos(ωt+ θi +
π
2
)よって VL = LImωej(θi+
π2 ), IL = Imejθi となり、
zi =VL
IL= ωLej
π2 = jωL
電圧に対して電流の位相が 90度遅れる。
キャパシタンス
46
電圧をvC (t) = Vm cos (ωt+ θv)
としたとき、
iC = Cdvc (t)
dt= CVmω − sin (ωt+ θv)
= CVmω cos(ωt+ θv +
π
2
)よって VC = Vmejθv , IC = CVmωej(θv+
π2 ) なので、
zC =1
ωCejπ2=
1
jωC
電圧に対して電流の位相が 90度進む。
4.4 アドミッタンス (admittance)
Y =1
z
インピーダンスの逆数、コンダクタンスに相当。
4.5 フェーザー表示でのキルヒホッフの法則
電圧則より、任意の閉路で
v1 (t) + v2 (t) + · · ·+ vn (t) = 0
47
Vm1 cos (ωt+ θ1) + Vm2 cos (ωt+ θ2) + · · ·+ Vmn cos (ωt+ θn) = 0
ℜ[Vm1e
jθ1ejωt]+ · · ·+ ℜ
[Vmne
jθnejωt]= 0
ℜ[(Vm1e
jθ1 + Vm2ejθ2 + · · ·+ Vmne
jθn)ejωt]= 0
ℜ[(
V1 + V2 + · · ·+ Vmn
)ejωt]= 0
これが ∀tで成り立つので、
Vm1 + Vm2 + · · ·+ Vmn = 0
(電圧則)
同様に任意の節点に対して
Im1 + Im2 + · · ·+ Imn = 0
(電流則)
直流→交流
電圧、電流→電圧ベクトル、電流ベクトル
抵抗→インピーダンス
コンダクタンス→アドミッタンス
とすれば直流回路の解析手法がそのまま適用可能。
4.6 交流回路の計算
複素領域での解析法 Step1: 変数、電源、回路要素を複素表示する。(V , I
),(Vmejθv , Imejθi
),
(R, jωL,
1
jωC
)Step2: ノート 3章までの抵抗網の解析法を用いて解析する。Step3: 実電圧、実電流を求める。
v (t) = ℜ[V ejωt
], i (t) = ℜ
[Iejωt
]
48
例 1の定常解を簡単に求める方法 (その 2)
回路は上図に書き換える。
KVLより、RI + jωLI = Vmejθ
I =Vm
R+ jωLejθ
実電流は、
i (t) = ℜ[Iejωt
]= ℜ
[Vm
R+ jωLej(ωt+θ)
]= (その 1)の解と同じ
(例 2)
49
e (t) =√2 cosωtn
(a) 網目解析
(2 + 1
jω − 1jω
− 1jω 3 + 2jω + 1
jω
)(J1J2
)=
( √20
)(b) ω = 1rad/secのとき定常状態における定電圧を求める。
ω = 1より (2− j jj 3 + j
)(J1J2
)=
( √20
)(
J1J2
)=
1
8− j
(3 + j −j−j 2− j
)( √20
)
J2 =−j
√2
8− j=
√2
8j + 1
V = 3J2 =3√2
1 + 8j=
3√2√65
e−jϕ
ϕ = tan−1 8
∴ v (t) = ℜ[V ej1t
]= 3
√2
65cos (t− ϕ)
50
4.7 交流における等価電流変換
(例)
IS =40
1 + 3j=
40 (1− 3j)
(1 + 3j) (1− 3j)=
40 (1− 3j)
10= 4− 12j
4.8 共振
例 1) 直列共振
51
I =V
z=
V
R+ j(ωL− 1
ωC
)入力電圧の角周波数 ωを変化させた時の電流の変化を考える。
明らかに、分母の虚数部が零になったときに電流が最大になる。
この角周波数は、
ωrL =1
ωrC
∴ ωr =1√LC
この時の回路全体のインピーダンスは、
z = R+ j
(ωrL− 1
ωrC
)= R
と純抵抗となる。
Lと C のインピーダンスが打ち消し合っているため。(直列状態)
52
また共振時の電流 Ir は
Ir =V
R
ここでインピーダンス zを共振角周波数 ωr で書き表すと、
z = R
[1 + j
1
R
(ωL− 1
ωC
)]= R
[1 + jQ
(ω
ωr− ωr
ω
)]ただし、
Q =1
R
√L
C
(=
|VL||V |
∣∣∣∣ω=ωr
=|VC ||V |
∣∣∣∣ω=ωr
)は共振回路の Qと呼ばれる。共振の鋭さを表すパラメータ。
∵
VL = jωrLIr
=jL√LC
V
R
= j1
R
√L
CV
よって |VL| = Q |V |
53
これより共振時の電流mI_r で規格化された電流の大きさは、
|I||Ir|
=1√
1 +Q2(
ωωr
+ ωr
ω
)2これをグラフにすると、
電流の振幅が 1√2になる (電力が 1
2 になる)角周波数 ω1, ω2 を求めると、
Q2
(ω
ωr− ωr
ω
)2
= 1
ω
ωr− ωr
ω= ± 1
Q
∴ ω
ωr=
√1 +
1
4Q2± 1
2Q
ここで Q ≫ 1と仮定すると、
ω1
ωr≃ 1− 1
2Qω2
ωr≃ 1 +
1
2Q
54
∆ω
ωr=
1
Q
つまり Qが大きいほどピークの幅 (半値幅)が狭くなり、より鋭い共振を表すことが分かる。
4.9 交流における電力
v (t) = Vm cos (ωt+ θv)
i (t) = Im cos (ωt+ θi)
なので、瞬間電力
P (t) = v (t) i (t) = VmIm cos (ωt+ θv) cos (ωt+ θi)
=VmIm
2
cos (θv − θi)︸ ︷︷ ︸定常分
+cos (2ωt+ θv + θi)︸ ︷︷ ︸時間変動分 (平均は 0)
平均電力
p (t) =1
T
∫ T
0
P (t) dt =VmIm
2cos (θv − θi)︸ ︷︷ ︸力率 (交流ならでは)
直流のときと異なり 12 が出てしまう。
そこで交流信号
v (t) = Vm cos (ωt+ θv)
i (t) = Im cos (ωt+ θi)
55
に対して、実効値
V ≡ Vm√2
I ≡ Im√2
を定義する。今後は実効値表示により、電圧・電流ベクトルを表すことにする。
V = V ejθv
I = Iejθi
交流における平均電力は、
P = ℜ[V · I
]= ℜ
[V Iej(θv−θi)
]= V I︸︷︷︸皮相電力 [VA]
cos (θr − θi)︸ ︷︷ ︸力率
I: 複素共役進み力率: 電流が電圧より位相が進む。 (θi > θv)
戻り力率: 電流が電圧より位相が遅れている。 (θi < θv)
第 5回
中間試験 11/22 13:45集合761教室学生証持参持込禁止
P = ℜ[V · ¯I
]= ℜ
[V Iej(θv−θi)
]= V I cos (θv − θi)
V I: 皮相電力cos (θv − θi): 力率実効値を導入することで、ほぼ直流と同じ形式で電力を表すことができる。
56
例 コイル、コンデンサは力率=0なので、電力は消費しない。
[注] ノート 4.6の step1で電源を実効値表示した場合には、step3で実電圧、実電流を求めるときに、
v (t) = ℜ[√
2V ejωt], i (t) = ℜ
[√2Iejωt
]と
√2を忘れないこと。
実効値をより一般に表現すると、
V ≡
√1
T
∫ T
0
v2 (t) dt
I ≡
√1
T
∫ T
0
i2 (t) dt
2乗平均根 (Root mean square-RMS)
4.10 複素電力
W = V · ¯I = V ejθv · Ie−jθi
= V I cos (θv − θi) + jV I sin (θv − θi)
P = V I cos (θv − θi): 有効電力 [W]
Q = jV I sin (θv − θi): 無効電力 [var]
θv = 0のしてフェーザー表示すると、
57
例
58
V =ZL
ZS + ZLE =
(RL + jXL)E
(RL +RS) + j (XS +XL)
I =E
ZS + ZL=
E
(RL +RS) + j (XS +XL)
よって複素電力は
W = V I =RL |E|2
(RL +RS)2+ (XL +XS)
2 + jXL |E|2
(RL +RS)2+ (XL +XS)
2
実際に負荷で消費されるのは、実部の有効電力。
有効電力を最大にするには、まずXL = −XS である必要がある。
また RL に関しては、
d
dRL
RL |E|2
(RL +RS)2 =
(RS −RL)
(RL +RS)3 |E|2
∴ RL = RS の時最大。
結局負荷のインピーダンスが
ZL = ZS = RS − jXS
のとき、負荷に最大の電力が供給される。(インピーダンスマッチング)
このときの消費電力は
Pmax =|E|2
4RS
59
電源の発生電力は
PS = EI =|E|2
2RS
より半分が電源の内部抵抗 RS で消費され、電源供給の意味では効率が悪い。(50%)
5 変圧器および三相交流
5.1 変圧器
相互インダクタンス 他方から伝わってくる磁束 (鎖交磁束)により起電力が発生。
v1 =dΨ11
dt+
dΨ12
dt= L1
di1dt
+Mdi2dt
v2 =dΨ22
dt+
dΨ21
dt= L2
di2dt
+Mdi1dt︸ ︷︷ ︸
相互インダクタンスによる起電力
起電力が +/−の向きになるかを・で表現。
インピーダンス表示
V1 = jωL1I1 + jωMI2
V2 = jωL2I2 + jωMI1
60
変圧器の電力
P = v1i1 + v2i2
= L1di1dt
i1 +Mdi2dt
i1 + L2di2dt
i2 +Mdi1dt
i2
=d
dt
[1
2
(L1i
21 + 2Mi1i2 + L2i
22
)]よって変圧器に蓄えられるエネルギーは
W =
∫ t
−∞Pdt =
1
2
(L1i
21 + 2Mi1i2 + L2i
22
)=
1
2L1
[(i1 +
M
L1i2
)2
+1
L21
(L1L2 −M2
)i22
]
ただし t = −∞で i1 = 0, i2 = 0
W > 0より、L1 > 0, L2 > 0
L1L2 ≧ M2
磁束の漏れがないとき、L1L2 = M2 または
a =M
L1=
L2
M=コイルの巻き数比
=コイル 2の巻き数コイル 1の巻き数
密結合変圧器
61
磁束の漏れがない場合、L1L2 = M2
右図の・はコイルを巻いている方向を表す。・の方向から電流が流れ込んだときの磁束の向きが一致する。電流の向きに注意して回路方程式をたどると、
jωL1I1 − jωMI2 = E
−jωL2I2 + jωMI1 = RI2
これを解くと、
I1 =R+ jωL2
jωL1R− ω2 (L1L2 −M2)E
I2 =M
L1R+ jω (L1L2 −M2)E
L1L2 = M2(密結合)なので、
I1 =R+ jωL2
jωL1RE
I2 =M
L1RE
a = ML1
= L2
M で書き直すと、
入力側: V1 = E, I1 =(
1jωL1
+ a2
R
)E
出力側: V2 = RI2 = aE, I2 = aER
と表すことができる。これを入力側・出力側を別々に回路図で表すと、
62
理想変圧器 密結合変圧器の L1 → ∞としたもの。
密結合変圧器
密結合でない変圧器 (L1L2 > M) L′1 (< L1)で L′
1L2 = M2 となる L′1 を考える。
63
理想変圧器で表現すると、
a =M
L′1
現実の変圧器 text p.75 図 2.19
64
5.2 対称 3相交流
images/CircuitTheory1/5-11.jpg
images/CircuitTheory1/5-12.jpg
V1, V2, V3 は振幅・周波数が等しく位相が 13 周期ずれているものとする。
V1 = E, V2 = Ee−j 23π, V3 = Ee−j 43π
負荷インピーダンスは等しいものとする。
z1 = z2 = z3 = z(|z| ejθ
)このとき、
I1 =E
|z|e−jθ
I2 =E
|z|e−j(θ+ 2
3π)
I3 =E
|z|e−j(θ+ 4
3π)
b1, b2, b3の配線を一括することを考える。一括した線 (破線)の電流は I1+ I2+ I3 = 0
従って、この線は不要 (三相 3線式)、導線は半分になる。(つまり銅損も半分)
65
発電・送電に利用。
3相は線間電圧、線電流で表現する。
Vline = |V2 − V3| =√3E
Iline = |I2| =E
|z|
images/CircuitTheory1/5-13.jpg
3相交流の電力
images/CircuitTheory1/5-14.jpg
注: 単相交流電力は 2ωtで脈動
images/CircuitTheory1/5-15.jpg
66
v1 (t) =√2E cosωt
v2 (t) =√2E cos
(ωt− 2
3π
)v3 (t) =
√2E cos
(ωt− 4
3π
)線電流
i1 (t) =√2I cos (ωt− θ)
i2 (t) =√2I cos
(ωt− 2
3π − θ
)i3 (t) =
√2I cos
(ωt− 4
3π − θ
)瞬時電力
P (t) =v1 (t) i1 (t) + v2 (t) i2 (t) + v3 (t) i3 (t)
=EI cos θ + cos (2ωt− θ)
+ EI
cos θ + cos
(2ωt− θ − 4
3π
)+ EI
cos θ + cos
(2ωt− θ − 8
3π
)=3EI cos θ
=√3VlineI cos θ
脈動なく一定である。注: 上式の力率角 θは相電圧と線電流の位相差。線間電圧ではない。
第 6回
P (t) =√3VlineI cos θ
単相と同様に三相も有効電力
P =√3VlineI cos θ [W]
無効電力Q =
√3VlineI sin θ [Var]
67
結線方法
電源∆-負荷∆
電源∆-負荷 Y
電源 Y -負荷 Y
電源 Y -負荷∆
Y -Y 結線は先に示した通り。
∆-∆結線
68
各負荷を流れる電流は、
I1 =V1
Z, I2 =
V2
Z, I3 =
V3
Z
よって線間電圧、線電流は、
Vline = |V | , Iline = |I2 − I1| =√3I
6 フーリエ級数展開による一般の周期波形の取り扱い法
正弦波でない波形 (ひずみ波)の取り扱い。
6.1 フーリエ級数展開
関数 f (t)が周期 T をもち、区分的に滑らかならば、以下のようにフーリエ級数によって表すことができる。
f (t) = a0
∞∑i=1
(ai cos iω0t+ bi sin iω0t)
電気回路において、直流や制限は信号の扱いは既に学んだ。
任意の周期的の入力⇒フーリエ級数展開⇒各周波数についての出力を求めて足し合わせる。
69
「区分的になめらか」な関数
フーリエ級数の求め方 m ≧ 1, n ≧ 1のとき、三角関数の直交性より、∫ T
0
cosmω0tdt = 0∫ T
0
sinmω0tdt = 0
∫ T
0
sinmω0t cosnω0tdt = 0
∫ T
0
cosmω0t cosnω0tdt =
0 (m = n)T2 (m = n)
70
∫ T
0
sinmω0t sinnω0tdt =
0 (m = n)T2 (m = n)
[証明]
cosα cosβ =1
2cos (α+ β) + cos (α− β)
より、 ∫ T
0
cosmω0t cosnω0tdt =1
2
∫ T
0
[cos (m+ n)ω0t+ cos (n−m)ω0t] dt
=1
2
∫ T
0
dt
=
0 (m = n)T2 (m = n)
よって、∫ T
0
f (t) cosnω0tdt =
∫ T
0
[a0 +
∞∑i=1
(ai cos iω0t+ bi sin iω0t)
]cosnω0tdt
=
∫ T
0
an cosnω0t cosnω0tdt
=an2T
よって n ≧ 1に対しては、
an =2
T
∫ T
0
f (t) cosnω0tdt, bn =2
T
∫ T
0
f (t) sinnω0tdt
ただし直流成分に対しては、
a0 =1
T
∫ T
0
f (t) dt
(m = n = 0のとき∫ T
0cosmω0t cosnω0tdt = T だから)
71
メモ
v = xi+ yj + zkの x成分を求めるのに、
v · i = xi · i+ yj · i+ zk · i = x
と直交ベクトルの性質を利用して内積から成分を求めるのと同じ。
例) 方形波
a0 =1
T
∫ T
0
f (t) dt = 0
72
an =2
T
∫ T
0
f (t) cosnω0tdt
=2
T
[∫ T2
0
f (t) cosnω0tdt+
∫ T
T2
f (t) cosnω0tdt
]
=2
T
[∫ T2
0
cosnω0t−∫ T
T2
cosnω0tdt
]= 0
一般に、
f (t): 奇関数→ cosnω0tの成分が 0
f (t): 偶関数→ sinnω0tの成分が 0
一方、
bn =2
T
∫ T
0
f (t) sinnω0tdt
=2
T
[∫ T2
0
sinnω0tdt−∫ T
T2
sinnω0tdt
]
=2
T× 2
∫ T2
0
sinnω0tdt
=4
T
[− 1
nω0cosnω0t
]T2
0
=4
T
[− 1
nω0
(cosnω0
T
2− cos θ
)]=
4
2πn(1− cosnπ)
(∵ ω0 =
2π
T
)=
4nπ
(nが奇数
)0
(nが偶数
)
73
つまり、
f (t) =4
π
(sinω0t+
sin 3ω0t
3+
sin 5ω0t
5+
sin 7ω0t
7+ · · ·
)=
4
π
∞∑n=1,3,5,7···
sinnω0t
n
中間試験 11/22 13:45集合
761教室
学生証持参
持ち込み不可
6.2 フーリエ級数展開を利用した回路解析
V0 =Vi
i+ jωRC
74
vi (t) =4Vm
π
∞∑n=1,3,5···
sinnω0t
n
=4Vm
π
∞∑n=1,3,5···
cos(nω0t− π
2
)n
重ね合わせの理より、各周波数成分について計算すればよい。
n = 1 Vi1 = 4Vm
π e−jπ2 より、
V01 =4Vm
πe−jπ2
1
1 + jω0RC
=4Vm∠
(−β1 − π
2
)π√
1 + ω20R
2C2
ただし β1 tan−1 (ω0RC)
時間波形に戻すと、
v01 =4Vm
π√1 + ω2
0R2C2
sin (ω0t− β1)
n = 3 (3ω0 の成分) Vi3 = 4Vm
3π e−jπ2 より、
V03 =4Vm
3πe−jπ2
1
1 + 3jω0RC
=4Vm∠
(−β3 − π
2
)3π√
1 + 9ω20R
2C2
ただし、β3 = tan−1 3ω0R
時間波形に戻すと、
v03 =4Vm
3π√1 + 0ω2
0R2C2
sin (3ω0t− β3)
v0 =4Vm
π
∞∑n=1,3,5···
sin (nω0t− βn)
n
√1 + (nω0RC)
2
75
βn = tan−1 (nω0RC)
仮に C が十分に大きいと、
v0 ≃ 4Vm
πω0RC
∞∑n=1,3,5···
sin (nω0t− βn)
n2
=−4Vm
πω0RC
∞∑n=1,3,5···
cos (nω0t)
n2
つまり入力波形よりも 1n 早く高周波数が減衰→ローパスフィルタ
6.3 平均電力
cos関数のみで級数展開することも可能。
f (t) = a0 +∞∑
n=1
(an cosnω0t+ bn sinnω0t)
= a0 +
∞∑n=1
An cos (nω0t− θ1)
ただし、
an + jbn =√
a2n + b2nejθn , An =
√a2n + b2n, θn = tan−1 bn
an
電圧、電流をフーリエ級数展開すると、
v = V0 +
∞∑n=1
Vn cos (nω0t− θvn)
i = I0 +∞∑
n=1
In cos (nω0t− θin)
76
この時の平均電力は、
P =1
T
∫ T
0
vidt
= V0I0 +
∞∑n=1
1
T
∫ T
0
VnI cos (nω0t− θvn)× cos (nω0t− θin) dt
= V0I0 +1
T
∞∑n/1
VnIn2
∫ T
0
[cos (θvn − θin) + cos (2nω0t− θvn − θin)] dt
= V0I0 +∞∑
n=1
VnIn2
cos (θvn − θin)
平均電力は、各周波数成分の平均電力の和。
6.4 実効値
Vrms =
√1
T
∫ T
0
v (t)2dt
=
√√√√ 1
T
∫ T
0
[V0 +
∞∑n=1
Vn cos (nω0t− θn)
]2dt
=
√√√√V 20 +
∞∑n=1
(Vn√2
)2
←各周波数成分の実効値の 2乗平均
6.5 皮相電力と力率
皮相電力=VrmsIrms
よって力率
pf =P
VrmsIrms
6.6 ひずみ率
正弦波からの変形 (ひずみ)を考える。
77
例 電力系統、音声
v (t) = V1 cos (ω0t− θ1) + V2 cos (2ω0t− θ2) + V3 cos (3ω0t− θ3)
ひずみ率 =
(高調波の実効値
)(基本波の実効値
)=
√∑∞n=2
(Vn√2
)2√(
V1√2
)2report4 節点方程式 2j + 1 + 1
2j −2j − 12j
−2j 2j + 1 + 2j −1
− 12j −1 3j + 1 + 1
2j
Va
Vb
Vc
=
21
3− 1
1 + 3
2 j −2j j2
−2j 1 −1j2 −1 1 + 5
2 j
Va
Vb
Vc
=
212
例 クラメルより、
Vb =1
∆
∣∣∣∣∣∣1 + 3
2 j 2 j2
−2j 1 −1j2 2 1 + 5
2 j
∣∣∣∣∣∣ ,∆ = |A|
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