在宅緩和ケアにおける薬剤師同行の役割と実際:2013/9新潟
TRANSCRIPT
在宅緩和ケアにおける薬剤師往診同行の役割と実際
桜新町アーバンクリニック在宅医療部 薬剤師 大須賀悠子
1
在宅緩和医療の課題2
1.在宅薬物治療についての問題 刻々と変化する薬歴の把握 抗がん剤や麻薬などの副作用の管理
2.麻薬調達の問題 麻薬取扱薬局が少なく、その情報も乏しい モルヒネ皮下注開始時の手配 痛みの変化に伴う、より迅速な薬剤の入手
3.患者・家族 ‘ 麻薬’への不安 日々変わりうる症状、経過への不安 傾聴相手の不在
月 火 水 木 金
1ライン
2ライン
3ライン
精神科
4ライン
緩和
バックアップ
桜新町アーバンクリニック在宅医療部看護師・ドライバー同行
3
永田看護師井手看護師
症例1
4
87歳男性、独居 小細胞肺がん 転移性肝がん COPD 服薬状況: ご家族管理 院外薬局利用
オピオイドの初回服薬時に嘔気。以後の服薬を拒否された経緯あり。その後服薬再開→貼付剤→持続皮下注へ
診療体制:
週 3-4回訪問診療 複数の医師が関わる
看護、介護体制:
ご家族が介護のために患者宅に泊まり込み。ヘルパー、訪問看護導入
5
家族との関わり医師看護師が患者の診察・看護をしている間に薬剤師が家族と薬について話す時間を設けた。
服薬管理:オピオイドの管理経時的変化の把握と詳細なヒアリング、服薬指導を実施。貼付剤から持続皮下注への変更。開始時期の検討。ポンプレンタル、麻薬発注、訪問薬剤師との時間合わせ。
症例1
⇒ 適切な副作用管理、家族との密な関わりを行うことで 約 1ヶ月半に及ぶ娘さん一人での介護であったが、 ご自宅で看取ることが出来た。
症例2
6
90歳男性 すい臓がん 転移性肝がん 腹水貯留
服薬状況: ご家族、ナース管理 訪問服薬指導導入
診療体制週 2回訪問診療: 2名の医師が関わる
看護、介護体制ご家族が介護のために帰国24時間常駐型のナース及びヘルパー導入、訪問入浴等
7
服薬指導意識クリアで薬識もあり、新規薬剤追加時 /中止時には十分な情報提供の元、ご本人と相談の上変更が必要であった。
医療者、介護者間の情報交換どの薬が飲めたか、などの情報が日単位で変化していた。
⇒ お薬カレンダーの活用⇒ レポートの作成
服薬状況レポート:定期往診○山○男 男性 90歳膵臓癌、転移性肝癌、前立腺癌、硬膜外血腫< 2013年 6月 6日現在の投薬状況>現在使用中の薬フェントステープ (1) 1日 1枚オキノーム散 (5) レスキューレンドルミン D 1錠 1× 眠前タケプロン OD(30) 1錠 1× 朝ラキソベロン液 便秘時頓用アセトアミノフェン末 0.8g 2×プレドニゾロン散 10mg 1× 朝ムコダイン DS50% 1g 2×ソラナックス (0.4) 不安時 1回 1錠 粉砕指示新規処方ナウゼリン坐剤 (60) 吐き気時 1回 1個 6回分アンペック坐剤 (10) 痛むとき 1回 1個 10回分
< 2013年 6月 6日現在までの疼痛管理、処方歴>5/29 往診開始 ○○大学病院 退院処方オキシコンチン 5mg 2T2× 9時 21時オキノーム 5mg 頓服レンドルミン D錠 0.25mg 1T1×就寝前アセトアミノフェン末 0.8g2×ネキシウム 10mg 1T1×朝食後 脱カプセルムコソルバンシロップ 4mL 2× 朝夕食後 (冷所 )アローゼン 便秘時 ミヤ BM 下痢時エンシュアリキッド 食欲不振時ベネトリン・ビソルボン・生食 (ネブライザー用:冷所保存 )※院内で服薬していた薬と退院処方に違いがあり、薬の説明も退院時指導はなかったようでご家族不安あり。当院からの新規追加薬プレドニン 10mg 1× 朝 ※食欲不振時
5/30 ムコソルバンシロップが苦くて飲めないということで、処方変更ムコダイン DS50% 1g 2×
5/31 不安 日中にも落ち着かないとレンドルミン Dを服用していたため抗不安薬を処方 ソラナックス (0.4) 不安時 頓服※就寝前はレンドルミン D、不安時・中途覚醒時はソラナックスと指導
6/3 錠剤がのみにくいとのことで薬を OD錠、散剤、シロップ剤に変更オキシコンチン→フェントス 1mgネキシウム→タケプロン OD(30)アローゼン→ラキソベロン液アセトアミノフェン末→カロナールシロップ☆プレドニン、ムコダイン DSは (飲めないようなら )一旦中止指示。
6/4 カロナールシロップ苦味あり、→アセトアミノフェン末に戻っている。6/6 週末の対応のため、追加で、吐き気時ナウゼリン坐薬と疼痛時アンペック坐薬を処方。スーパーナースが入られるということで、症状があった際には坐薬はナースに入れていただくこともできると説明。 服薬状況:娘さん管理。経口可だが、満足に食事はとれていない状況。病院で一度むせてしまった経験から、薬はご自分で粉砕して飲んでいた。むせ込みを避けるため出来る限り、溶けやすい散剤やパッチ剤に変更を。
他院からの処方:なし併用禁忌薬等:特に問題なし副作用歴:特になし薬局:○○薬局。訪問服薬指導。ケアに関わる全員がわかりやすいよう、おくすりカレンダー管理。
以上 (大須賀)
現在の服薬内容
これまでの薬歴変更の経緯
服薬状況
併用禁忌、副作用
薬剤管理方法、注意点8
9
医療用麻薬の手配内服剤→貼付剤→持続皮下注へと変更患者宅に 24時間必ず医療者がいる体制であったため、時間の調整は容易であった。
症例2
⇒ 薬局との密な連携と、経時的な服薬情報を関わるすべての医療者・家族と共有できたことで穏やかな看取りが可能となった。
薬剤師同行のメリット10
患者さんの症状や生活に即した服薬指導 処方の経緯、医師の説明内容把握 医師看護師だけではなく、関わる他の介護者からの情報も入手可能:地域連携システム
患者側の受け入れが寛容 訪問服薬指導を依頼していない患者への薬剤指導
チーム医療の強化 薬剤師が関わることで、業務の分担化が可能となる。 色々な医師に横断的に同行⇒約束処方の標準化
11
医療的にも高度化している中、薬剤の管理や服薬指導の 必要性も増大している。
特に在宅緩和ケアにおける薬剤管理、副作用管理は情報の一元化と素早い対応、正確さが求められる。
他業種の職務内容の把握、包括的な知識を持つことが必須。
薬剤師の視点からの提案、情報共有の充実 ⇒医療の質の底上げ
一人でも多くの患者さんの希望を叶えられる医療を。
在宅緩和医療における薬剤師