20120428 ニコニコ学会β スケルトニクス製作委員会

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スーツを目指して作りました.スケルトニクスの語源は,Skeleton(骨格)と Mechanics(構造)を組み合わせた造語です.動力は人力の ,アクチュエータは搭載されておらず,装着された人間にはスーツの重量と拡大率に比例した負荷がかかります.拡大率は上半身 2半身 15 倍です.このように上下で不ぞろいなのは下半身 2 倍では負荷が大きすぎたためです.ニコニコに挙げた動画のコメントにも 摘がある通り,15 倍でもかなり大きい負荷なので実のところ連続稼働時間は操縦者阿嘉の体力的に 5 分程度が限界です.動力を搭 してこのあたりを解決したいという思いはやっぱり強くありますが,先立つものの都合がなかなかつきません.この活動はもともと高専ロ ンに出場していたメンバーで構成されていて,言いだしっぺは阿嘉です.曰く,高専ロボコンを終えてからの何倍にも希釈されたスープの な日々を壊すために,「なんかしようぜ」とのことでした.別に最初はどんな活動でも良かったのですが,もともとモノを作る事に特化したメ ーなので,スケルトニクスを作ることになりました.腕部の設計は阿嘉を中心に行いました.用いた技術はリンク機構であり,2008年度の 専ロボコンの際に培った技術を基礎に構成されています.スケルトニクスのコンセプトの一つとして拡大された骨格が極力人体のパーツ と同じであるという点があります.そのことはただ単に脚が長くなったり腕が長くなったりしただけではなく四肢の拡大の比と同等に座高 幅も大きくすることを意味します.スケルトニクスを見て分かる通り操縦者の肩の場所とロボットの肩の位置は一致しておりません.3つ 由度を持つ肩の関節に加えて肘の関節をリンク機構により同期を取ることが課題とされました.設計を行う上で特に要求されたことは, 節の可動範囲:出来るだけ人体と同じ可動域を持ちたい,重量 :出来るだけ軽くしたい,強度 :出来るだけ強靭にしたいの三つの要素に ていかにバランスよく構成するかであったと思います.これらの要素はどれかの機能を高めるとそれに応じて他の要素の機能が低下す 向を持っており,三つの機能を同時に引き上げるのは限界があります.したがって三つの要素それぞれが実用の範囲に収まるような適 配分に注力しました.前述した三つの条件以外にも,リンク機構の構成のスマートさ,使用可能な材料,施行可能な加工方法,外観,作 すさ,製作時間,製作コスト,投入可能労力など様々な要素を視野にいれながらの設計になりました.私の記憶では試作として右腕を製 それを経て実装可能であると確信した最初の部位であったと記憶しています.製作された試作機は右腕で外装もハンドもなくフレームの りのような外観でした.不安を覚えながら加工済みの部品の組み立てを行ったのを覚えています.組みあがった右腕は非常にすんなり 倍に拡大した骨格と言ってしまえばそれまで .製作を行っていた私たちでさえ予想以上のインパクトのある動きにみなで興奮して盛り上がったと記憶しています.ぶっちゃけた話,最 作るつもりはありませんでした.というのは,当初の目標は”動力なしでの四肢の拡大”であり,上半身で言うとマスター側(操縦者)の腕 作に対し,スレーブ側(スケルトニクス)の腕の動作が拡大されていれば目標が満たされるので,指の動きは想定していなかったのです 日)」に出演したときでした.こ 回行ったデモンストレーションでは来場者 のですが,だんだん期待を裏切るのが申し訳ないというか,いややりますとも,ぜひやらせてください!と思い,イベント終了後のミーティ でハンドの製作開始することが決まりました.そのとき決めたハンド製作における条件は以下の通りです..スケルトニクスのコンセプト ,動力は使わない.の入力を受け付ける.しいため小指の同期は行わない.6.子どもとの握手,じゃんけん,お菓子を持てる程度の能力.これらを踏まえすぐに浮上した案が,自 のブレーキに使われているワイヤによる伝達機構でした.マスター側とスレーブ側の間にワイヤ伝達機構を配置し,指の握り動作を伝え .指の開き動作については,スレーブ側の指に 05mm 厚のプラスチック板(ポリプロピレン)を使用し,その弾性を利用することで,マス ー側の入力が無ければ自然にスレーブ側の指が開くという仕組みです.この方法により,製作条件の1.,2.,3.を満たすことができま た,ゴツゴツした見た目になるように切断したアルミフレームを 1 つの指につき 3 つ設置することで 4.を,スレーブ側(スケルトニクス)の 4 本とすることで 5.を満たします.あとは,6.が行える程度に各部位に強度を持たせて完成です.ハンドの初披露は,プロジェクト始 3 回目のイベント「キッズカーニバル 2010201011 21 日)」でした.沖縄こどもの国という動物園で行われたイベントということも ,会場には子どもたちが多くいました.デモンストレーションの一部である握手パフォーマンスを行ったとき,前回と違い,「え,指動く PROJECT SKELETONICS 2012/4/28 ニコニコ学会β 第四セッション「燃える男の未来の乗り物」 スケルトニクス製作委員会

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2012年4月に幕張メッセで開催されたニコニコ学会βにて発表した資料.製作過程の写真が主.

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なスーツを目指して作りました.スケルトニクスの語源は,Skeleton(骨格)と Mechanics(構造)を組み合わせた造語です.動力は人力のみで,アクチュエータは搭載されておらず,装着された人間にはスーツの重量と拡大率に比例した負荷がかかります.拡大率は上半身 2倍,下半身 1.5 倍です.このように上下で不ぞろいなのは下半身 2 倍では負荷が大きすぎたためです.ニコニコに挙げた動画のコメントにもご指摘がある通り,1.5 倍でもかなり大きい負荷なので実のところ連続稼働時間は操縦者阿嘉の体力的に 5 分程度が限界です.動力を搭載してこのあたりを解決したいという思いはやっぱり強くありますが,先立つものの都合がなかなかつきません.この活動はもともと高専ロボコンに出場していたメンバーで構成されていて,言いだしっぺは阿嘉です.曰く,高専ロボコンを終えてからの何倍にも希釈されたスープのような日々を壊すために,「なんかしようぜ」とのことでした.別に最初はどんな活動でも良かったのですが,もともとモノを作る事に特化したメンバーなので,スケルトニクスを作ることになりました.腕部の設計は阿嘉を中心に行いました.用いた技術はリンク機構であり,2008年度の高専ロボコンの際に培った技術を基礎に構成されています.スケルトニクスのコンセプトの一つとして拡大された骨格が極力人体のパーツの比と同じであるという点があります.そのことはただ単に脚が長くなったり腕が長くなったりしただけではなく四肢の拡大の比と同等に座高や肩幅も大きくすることを意味します.スケルトニクスを見て分かる通り操縦者の肩の場所とロボットの肩の位置は一致しておりません.3つの自由度を持つ肩の関節に加えて肘の関節をリンク機構により同期を取ることが課題とされました.設計を行う上で特に要求されたことは,各関節の可動範囲:出来るだけ人体と同じ可動域を持ちたい,重量 :出来るだけ軽くしたい,強度 :出来るだけ強靭にしたいの三つの要素についていかにバランスよく構成するかであったと思います.これらの要素はどれかの機能を高めるとそれに応じて他の要素の機能が低下する傾向を持っており,三つの機能を同時に引き上げるのは限界があります.したがって三つの要素それぞれが実用の範囲に収まるような適切な配分に注力しました.前述した三つの条件以外にも,リンク機構の構成のスマートさ,使用可能な材料,施行可能な加工方法,外観,作りやすさ,製作時間,製作コスト,投入可能労力など様々な要素を視野にいれながらの設計になりました.私の記憶では試作として右腕を製作しそれを経て実装可能であると確信した最初の部位であったと記憶しています.製作された試作機は右腕で外装もハンドもなくフレームの集まりのような外観でした.不安を覚えながら加工済みの部品の組み立てを行ったのを覚えています.組みあがった右腕は非常にすんなりと動きました.そして感動的にもその動きは予想以上に衝撃的なものでした.右腕の大きさを 2 倍に拡大した骨格と言ってしまえばそれまでなのですが,実際に完成し装着し動かしてみると拡大された骨格は操縦者の右腕に忠実に同期し非常にスムーズでダイナミックな動きをしました.製作を行っていた私たちでさえ予想以上のインパクトのある動きにみなで興奮して盛り上がったと記憶しています.ぶっちゃけた話,最初は作るつもりはありませんでした.というのは,当初の目標は”動力なしでの四肢の拡大”であり,上半身で言うとマスター側(操縦者)の腕の動作に対し,スレーブ側(スケルトニクス)の腕の動作が拡大されていれば目標が満たされるので,指の動きは想定していなかったのです.気が変わったのはプロジェクト始動後,初めてのイベント「第 26 回やんばるの産業祭り(2010 年 10 月 10 日)」に出演したときでした.この頃の上半身は右腕のみで,スレーブ側の手先には動かないダミーの指をつけていました.1 日 5 回行ったデモンストレーションでは来場者への握手パフォーマンスを行いました.そのとき,お客様に,「え,指動かないの?」と言われ,「指のほうは動きませんねー」とお答えしていたのですが,だんだん期待を裏切るのが申し訳ないというか,いややりますとも,ぜひやらせてください!と思い,イベント終了後のミーティングでハンドの製作開始することが決まりました.そのとき決めたハンド製作における条件は以下の通りです.1.スケルトニクスのコンセプト通り,動力は使わない.2.上半身のリンク機構と干渉しない.3.ぶつかっても痛くないように,バックドライバビリティを有する.つまり,外界からの入力を受け付ける.4.拡大型スーツにふさわしいゴツゴツした指.5.人の手の構造上,くすり指と小指を独立させて器用に動かすのは難しいため小指の同期は行わない.6.子どもとの握手,じゃんけん,お菓子を持てる程度の能力.これらを踏まえすぐに浮上した案が,自転車のブレーキに使われているワイヤによる伝達機構でした.マスター側とスレーブ側の間にワイヤ伝達機構を配置し,指の握り動作を伝えます.指の開き動作については,スレーブ側の指に 0.5mm 厚のプラスチック板(ポリプロピレン)を使用し,その弾性を利用することで,マスター側の入力が無ければ自然にスレーブ側の指が開くという仕組みです.この方法により,製作条件の1.,2.,3.を満たすことができます.また,ゴツゴツした見た目になるように切断したアルミフレームを 1 つの指につき 3 つ設置することで 4.を,スレーブ側(スケルトニクス)の指を 4 本とすることで 5.を満たします.あとは,6.が行える程度に各部位に強度を持たせて完成です.ハンドの初披露は,プロジェクト始動後 3 回目のイベント「キッズカーニバル 2010(2010年 11 月 21 日)」でした.沖縄こどもの国という動物園で行われたイベントということもあり,会場には子どもたちが多くいました.デモンストレーションの一部である握手パフォーマンスを行ったとき,前回と違い,「え,指動くの!?」という反応を子どもたちからもらい,とても嬉しかったのをよく覚えています.その後のイベントでも,じゃんけんやお菓子を運ぶパ

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「ロボットに

乗ってみたい。」

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Dream Factory 設計,製作,組立, 全てここで行った. 特にお世話になった機械 ・ボール盤 ・フライス盤 ・旋盤 ・縦鋸盤

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寸法 2.5m×2.0m×0.5m (高さ×幅×奥行き)

質量 上半身:20kg

下半身:20kg

動力 人力

拡大率 上半身:2倍

下半身:1.5倍

自由度 上半身:16自由度

下半身:10自由度

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Demonstration

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「がちゃがちゃと

変形して,

移動したい。」

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EXONNECS20 12/ 1~20 15/ 3

TEAM SKELETONICS

プロジェクト エグゾネクス

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活動拠点と担当 (東京,大阪,沖縄)

な か の けいじゅ

中野 桂樹 (19)

担当:インターフェース

たましろ こ う き

玉城 光輝 (22)

担当:ビークルモード あ か ともひろ

阿嘉 倫大 (22)

し ろ く たつる

白久 レイエス樹 (22)

担当:全体構想,パワードシステム

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TEA SKELETONICS http://skeletonics.seesaa.net/